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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103105
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】保護デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/04 20130101AFI20220630BHJP
   A61F 2/844 20130101ALI20220630BHJP
【FI】
A61F2/04
A61F2/844
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206666
(22)【出願日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020216458
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】中谷 誠一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一帆
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA14
4C097BB01
4C267AA42
4C267CC23
(57)【要約】
【課題】デバイス内に流体を滞留させにくくする。
【解決手段】生体管腔6に留置される保護デバイス1であって、生体管腔6の処置部7を覆うように配設される被覆部3を備える。被覆部3は、処置部7に対向配置され、膜体12により筒状に形成された第一被覆部4と、第一被覆部4よりも生体管腔6を流れる流体の流れ方向の下流側に設けられ、筒状に形成されて内腔を開口状態に維持可能な第二被覆部5と、を有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体管腔に留置される保護デバイスであって、
前記生体管腔の処置部を覆うように配設される被覆部を備え、
前記被覆部は、
前記処置部に対向配置され、膜体により筒状に形成された第一被覆部と、
前記第一被覆部よりも前記生体管腔を流れる流体の流れ方向の下流側に設けられ、筒状に形成されて内腔を開口状態に維持可能な第二被覆部と、を有する
保護デバイス。
【請求項2】
前記第二被覆部は、膜体と、前記膜体に取付けられ、自己拡張可能な骨格とを有する
請求項1に記載の保護デバイス。
【請求項3】
前記第二被覆部は、前記骨格を形成する線材が当該第二被覆部の軸方向に螺旋状に巻回されてなる
請求項2に記載の保護デバイス。
【請求項4】
前記処置部よりも前記流れ方向の上流側に配設され、当該保護デバイスを前記生体管腔内に固定する固定部を更に備える
請求項1~3のいずれか一項に記載の保護デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消化管に発症した悪性腫瘍などを治療する際に、消化管を切断・切除したのちに吻合術が実施される場合があるが、術後に吻合不全のために消化物が漏出し、腹膜炎や膿瘍などの合併症を発症する虞がある。これらの合併症を予防するために、術後に吻合部を一時的に保護する外科用装置として、半硬質の縦長中空部材である一時アンカー部と、柔軟性のある筒状壁を有するシースとを備えた装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5547213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の外科用装置は、柔軟性のあるシースで吻合部を覆うように消化管内に留置される。しかし、消化管はぜん動運動や分節運動などを組み合わせた複雑な動きをするため、シースが潰れたり、ねじれたりすることにより、シース内に消化物などの流体が詰まる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであって、デバイス内に流体を滞留させにくくする保護デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、生体管腔に留置される保護デバイスであって、生体管腔の処置部を覆うように配設される被覆部を備える。被覆部は、処置部に対向配置され、膜体により筒状に形成された第一被覆部と、第一被覆部よりも生体管腔を流れる流体の流れ方向の下流側に設けられ、筒状に形成されて内腔を開口状態に維持可能な第二被覆部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、デバイス内に流体を滞留させにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の保護デバイスの構成例を示す図である。
図2】保護デバイスが生体管腔内に留置された状態を模式的に示す図である。
図3】保護デバイスの一端側の斜視図である。
図4】(a)は保護デバイスの他端側の斜視図であり、(b)は図4(a)のIVb-IVb断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る保護デバイスの構成例について説明する。
ここで、図面における各部の形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。図面において、部材の軸方向Axを必要に応じて矢印で示す。また、軸方向Axと略直交する方向を径方向と定義する。なお、図面において部材の一端側を必要に応じて符号Fで示し、一端側と対向する他端側を必要に応じて符号Bで示す。
【0010】
図1は、本実施形態の保護デバイス1の構成例を示す図である。図2は、保護デバイス1が生体管腔内に留置された状態を模式的に示す図である。図3は、保護デバイス1の一端側の斜視図である。図4(a)は、保護デバイス1の他端側の斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のIVb-IVb断面図である。
【0011】
本実施形態の保護デバイス1は、生体管腔における吻合・縫合を伴う手術後の吻合不全を予防するために、生体管腔の内側から吻合部をカバーして保護するデバイスである。図2では、生体管腔の一例として、消化管6(例えば、小腸や大腸など)において吻合・縫合などが施された処置部7に保護デバイス1が留置される例を示している。
【0012】
本実施形態の保護デバイス1の全体形状は、軸方向Axの両端部に開口が形成され、これらの開口が連通する筒状をなしている。保護デバイス1の内部には、保護デバイス1が消化管6内に留置されたときに消化管6を流れる物(流体など)が通過可能な流路が軸方向Axに沿って形成される。
なお、消化管6を流れる物は、例えば、全く消化が行われていない摂取された直後の食物、食物が消化管6を通ることで分解処理された物、消化管6を通っても消化されなかった物(例えば、便等)などを含み、物質の状態は問わない。
【0013】
図1に示すように、保護デバイス1は、一端側の端部に形成されるステント部2と、ステント部2の他端側に接続されるスリーブ部3とを備えている。ステント部2は固定部の一例であり、スリーブ部3は被覆部の一例である。
【0014】
図3に示すように、ステント部2は、筒状の第一骨格部10と膜体11とを有している。ステント部2の第一骨格部10は、径方向内側に収縮した収縮状態から径方向外側に拡張した拡張状態へと変形可能である。
【0015】
図2に示すように、保護デバイス1を消化管6に留置するときには、ステント部2は消化管6の処置部7よりも消化管6の流れ方向の上流側(口側)に配設される。保護デバイス1は、ステント部2が径方向内側に収縮された状態(不図示)で消化管6内に導入され、消化管6内に導入された後にステント部2が自己拡張する。なお、ステント部2は、内側からバルーン(不図示)を拡張させて押圧することで径方向外側に拡張させてもよい。
【0016】
また、図2に示すように、拡張状態のステント部2は、処置部7よりも口側に位置する消化管6の内壁を内側から押圧し、消化管6に密着した状態で留置される。これにより、ステント部2は、保護デバイス1を消化管6内に位置決めして固定する機能を担う。
【0017】
ステント部2の第一骨格部10は、例えば、金属素線からなる線材が周方向に環状をなすように配置されて構成される。第一骨格部10の線材の材料としては、例えば、Ni-Ti合金、ステンレス鋼、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金等が挙げられる。第一骨格部10を構成する材料としてNi-Ti合金を用いる場合、第一骨格部10を拡張状態の形状に整えた後、所定の熱処理を施すことにより、その拡張状態の形状を第一骨格部10に記憶させることができる。なお、第一骨格部10は、金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されていてもよい。
【0018】
図1図3に示す第一骨格部10は、一例として、ステント部2の周方向に沿うようにジグザグ状に折り返される金属細線で管状に形成した2つの骨格片で構成され、これらの骨格片は軸方向Axに沿って並設されている。隣接する骨格片同士は、連結部材(不図示)で連結されていてもよい。
もっとも、第一骨格部10の構成は上記に限定されるものではない。例えば、第一骨格部10は、金属素線をフェンス状、格子状または螺旋状に編み込んで構成してもよい。あるいは、上記の各種金属からなる薄肉円筒体をレーザーカットし、金属細線がジグザグに折り返されながら螺旋状に巻回されるパターン等で第一骨格部10を形成してもよい。
また、第一骨格部10の軸方向Axに沿って並設されている2つの骨格片のうち、下流側(他端側B)の骨格片の拡張力を、上流側(一端側F)の骨格片の拡張力よりも弱くなるようにしてもよい。これにより、ステント部2により消化管6の内壁が押圧された状態で処置部7にかかる負荷を軽減することができる。
【0019】
ステント部2の膜体11は、生体適合性を有する可撓性の膜体であって、第一骨格部10の隙間部分を閉塞するように第一骨格部10に筒状に取り付けられている。ステント部2の膜体11は、保護デバイス1を消化管6に留置したときに、消化管6を流れる物が第一骨格部10の隙間を通って処置部7へ流れ込むことを抑制する機能を担う。
【0020】
ステント部2の膜体11の材料としては、例えば、シリコン樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。膜体11は、第一骨格部10の外周側または内周側のいずれか一方に取り付けられていてもよく、2枚の膜体を用いて第一骨格部10を内周側と外周側から挟み込んでもよい。
【0021】
スリーブ部3は、消化管6の内側から処置部7を覆う筒状部材であり、一端側から順に第一領域4と、第二領域5とを有している。スリーブ部3は、保護デバイス1の留置時に図2に示すように消化管6の処置部7を跨いで消化管6内に配設され、消化管6を流れる物が処置部7と接触することを抑制する。ここで、スリーブ部3は消化管6の内壁に接触してもよいし、接触しなくてもよいが、例えば、スリーブ部3の径寸法などの仕様は、保護デバイス1を留置する消化管6の大きさや、スリーブ部3に使用される膜体(膜体12、22;後述)の剛性などに基づいて適宜設定される。
【0022】
スリーブ部3の第一領域4は、保護デバイス1の留置時に処置部7に対向配置され、処置部7を内側から覆って保護する部位である。第一領域4は、第一被覆部の一例であり、筒状に形成された膜体12によって構成されている。また、第一領域4の一端側はステント部2の他端と接続され、第一領域4の他端側は第二領域5と接続されている。
【0023】
第一領域4の膜体12は、生体適合性を有する可撓性の膜体であって、例えば、PTFE等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等の材料で構成される。第一領域4の軸方向の寸法は、少なくとも処置部7を覆うことが可能となる範囲で適宜設定される。
【0024】
一方、スリーブ部3の第二領域5は、第二被覆部の一例であり、第二骨格部21と、膜体22とを有している。第二領域5は、保護デバイス1の留置時に第一領域4よりも消化管6の流れ方向の下流側(肛門側)に配置され、保護デバイス1の内腔を開口状態に維持する機能を担う。第二領域5の長手方向の長さは、具体的には、例えば、その下流側(他端側B)の端部が肛門の外側(体外)に配置される程度であってもよいし(図2参照)、肛門の内側(体内)に配置される程度であってもよい。
【0025】
第二骨格部21は、保護デバイス1、特にスリーブ部3の第二領域5の内腔の開口状態を維持するために設けられる筒状の骨格であり、径方向内側に収縮した状態から径方向外側に拡張するように自己拡張が可能である。第二骨格部21の拡張力は、少なくとも第二領域5の内腔の開口状態を維持できる程度の大きさに設定される。そのため、第二骨格部21の拡張力は、保護デバイス1を固定する第一骨格部10の拡張力よりも小さく設定される。
また、第二骨格部21の径は、例えば、拡張状態において消化管6の径と同程度となるように設定されるが、消化管6を流れる物が詰まらずに内側を通過可能であれば、消化管6よりも小さい径であってもよい。
【0026】
図4(a)に示すように、第二骨格部21は、1本の線材を軸方向Axに間隔をあけて螺旋状に巻回して構成されている。第二骨格部21の線材の材料としては、上述の第一骨格部10と同様に、例えば、Ni-Ti合金、ステンレス鋼、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金等が挙げられる。なお、第二骨格部21は、例えば、Ni-Ti合金からなる薄肉円筒体をレーザーカットすることによって形成されてもよい。
【0027】
第二骨格部21は、1本の線材が螺旋状に斜めに巻回された構成であるので、径方向の内側へ押し込む力が骨格に作用するときに線材が周方向に突っ張りにくい。そのため、第二骨格部21は、径方向の内側に骨格を収縮させやすい。また、第二骨格部21は、1本の線材が螺旋状に斜めに巻回された構成であるので、骨格のアキシャルフォースも小さくなり軸方向に対して骨格を曲げやすい。
【0028】
第二領域5の膜体22は、第二骨格部21の隙間部分を閉塞するように第二骨格部21に筒状に取り付けられる。図4(b)に示すように、第二領域5の膜体22は、第二骨格部21の外周側に筒状に取り付けられた外側膜体23と、第二骨格部21の内周側に筒状に取り付けられた内側膜体24とを含んでいる。つまり、第二領域5は、第二骨格部21が外側膜体23と内側膜体24により外周側と内周側から挟み込まれた構成となっている。
【0029】
第二領域5の膜体22は、第一領域4の膜体12と同様に、生体適合性を有する可撓性の膜体であって、例えば、PTFE等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等の材料で構成される。なお、外側膜体23および内側膜体24は、同じ材料を用いてもよく、それぞれ異なる材料を用いてもよい。
【0030】
第二領域5の膜体22は、第一領域4を通過した消化管6を流れる物を下流側に導き、処置部7への接触を抑制する機能を担う。また、外側膜体23は、第二骨格部21を外周側から被覆して第二骨格部21と消化管6との接触を防ぎ、消化管6の内壁の損傷を抑制する機能も担う。内側膜体24は、第二骨格部21を内周側から被覆し、消化管6を流れる物が第二骨格部21に引っ掛かって詰まることを抑制する機能も担う。
【0031】
ここで、スリーブ部3においては、第一領域4の膜体12および第二領域5の膜体22を一体に形成してもよい。例えば、第一領域4および第二領域5がいずれも外側膜体23および内側膜体24を有する構成としてもよい。あるいは、第二領域5の外側膜体23または内側膜体24の一方と第一領域4の膜体12を一体に形成し、第二領域5には外側膜体23または内側膜体24の他方をさらに設ける構成としてもよい。
【0032】
なお、第二骨格部21よりも下流側で膜体22が重なって閉塞が生じなければ、スリーブ部3の第二領域5において、第二骨格部21は必ずしも下流側の端部まで設けられていなくてもよい。
【0033】
次に、本実施形態の保護デバイス1の使用方法として、消化管6の病変部位を摘出する手術における適用例を説明する。
【0034】
まず、消化管6から病変部位を摘出する手術が行われる。病変部位を摘出した後に、スリーブ部3が折り畳まれ、ステント部2が収縮状態にある保護デバイス1が切除断端から消化管6内に挿入される。保護デバイス1は、術者が手で直接挿入してもよく、治具等に取り付けて挿入してもよい。
【0035】
保護デバイス1のステント部2を切除断端よりも上流側の留置部位に合わせた後、消化管6の切除断端が吻合される。この状態では、保護デバイス1のステント部2は自己拡張力により拡張するが、スリーブ部3は折り畳まれた状態のままである。
【0036】
消化管6が吻合された後、スリーブ部3を折り畳まれた状態から下流側に展開する。スリーブ部3の展開は、例えば消化管6内に内視鏡(図示略)を挿入し、内視鏡に設けた把持部等を操作してスリーブ部3を把持して引き出してもよい。あるいは、消化管6内に自動吻合機(図示略)を挿入して上記の吻合を行う場合には、スリーブ部3を自動吻合機と紐等で結びつけて自動吻合機を引き出す際にスリーブ部3が展開されるようにしてもよい。
【0037】
スリーブ部3が下流側に展開されることで、図2に示すように、保護デバイス1の消化管6内への留置が完了する。このとき、ステント部2は、吻合された処置部7よりも上流側に位置し、保護デバイス1を消化管6に固定する。また、スリーブ部3の第一領域4は処置部7を跨いで配設され、スリーブ部3の第二領域5は処置部7よりも下流側に配設されている。なお、スリーブ部3が展開されると、スリーブ部3の第二領域5は、第二骨格部21の自己拡張力で拡張する。
【0038】
消化管6内に留置された保護デバイス1は、スリーブ部3の第一領域4で処置部7を内側から覆い、消化管6を流れる物が処置部7と接触することを抑制する。これにより、術後において処置部7がスリーブ部3によって消化管6を流れる物から保護されるので、腹膜炎や膿瘍などの合併症を発症する虞が低減する。また、スリーブ部3の第一領域4は骨格を有していないため、吻合された処置部7に対しては骨格との接触による負荷が生じることはない。
【0039】
また、スリーブ部3の第一領域4は、上流側にはステント部2が接続され、下流側には第二骨格部21を有する第二領域5が接続されている。スリーブ部3の第一領域4は、拡張したステント部2および第二骨格部21によって軸方向Axの両端が拡げられるので、留置時において内腔の開口状態を維持できる。これにより、スリーブ部3の第一領域4では、消化管6を流れる物が滞留することを抑制できる。
【0040】
一方、スリーブ部3の第二領域5は、第二骨格部21によって径方向外側に拡張される。第二骨格部21は1本の線材が螺旋状に斜めに巻回された構成であって、径方向の内側に骨格を収縮させやすく、軸方向に対して曲げやすい性質を有する。消化管6は、ぜん動運動、分節運動、振子運動やこれらを組み合わせた複雑な動きをするが、第二骨格部21は消化管6の収縮や曲げなどに応答して変形することができる。そのため、第二領域5ではキンクによる流体の滞留を抑制できる。
【0041】
また、スリーブ部3の第二領域5は、消化管6の収縮や曲げによって変形しても骨格の反発力で変形前の状態に復元される。このとき、第二領域5の膜体22は、第二骨格部21とともに動くので膜体22どうしが貼りついて閉塞が生じることもない。このように、スリーブ部3の第二領域5では、第二骨格部21により内腔の開口状態を維持することが可能であり、消化管6を流れる物が滞留することを抑制できる。
【0042】
以上のように、保護デバイス1は、消化管6を流れる物から処置部7を保護しながら、消化管6を流れる物を滞留させずに消化管6の下流側に流すことができる。なお、留置された保護デバイス1は、吻合から所定期間経過後に消化管6から取り外される。
【0043】
以下、本実施形態の保護デバイス1の効果を述べる。
本実施形態において、消化管6(生体管腔)に留置される保護デバイス1は、消化管6の処置部7を覆うように配設されるスリーブ部3(被覆部)を備える。スリーブ部3は、処置部7に対向配置され、膜体12により筒状に形成された第一領域4(第一被覆部)と、第一領域4よりも消化管6を流れる流体の流れ方向の下流側に設けられ、筒状に形成されて内腔を開口可能に維持可能な第二領域5(第二被覆部)とを有する。
本実施形態によれば、第二領域5によりスリーブ部3における流れ方向下流側の内腔を開口状態に維持でき、消化管6を流れる物から処置部7を保護する保護デバイス1内に流体を滞留させにくくすることができる。
【0044】
また、本実施形態の第二領域5(第二被覆部)は、膜体22と、膜体22に取付けられ、自己拡張可能な第二骨格部21とを有する。第二領域5を自己拡張可能とすることで、スリーブ部3における流れ方向下流側の内腔を開口状態に維持することが容易となる。
【0045】
また、本実施形態の第二領域5(第二被覆部)は、第二骨格部21を形成する線材が当該第二領域5の軸方向に螺旋状に巻回されてなる。上記の構成により、径方向の内側に第二骨格部21を収縮させやすく、軸方向に対して第二骨格部21を曲げやすくなって、消化管6の動きに応じた第二領域5の応答性を高めることができる。
【0046】
また、本実施形態の保護デバイス1は、処置部7よりも流れ方向の上流側に配設され、当該保護デバイス1を消化管6(生体管腔)内に固定するステント部2(固定部)を更に備える。ステント部2により、第一領域4で処置部7を覆った状態で保護デバイス1を消化管6内に留置することが可能となる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
例えば、保護デバイス1は、消化管6に限られず、他の生体管腔に留置されるものであってもよい。また、図1では、直筒形状の保護デバイス1を示しているが、保護デバイス1の形状は、例えば、弓状に湾曲した形状や捻れを有する形状であってもよい。
【0048】
また、第二骨格部21の骨格形状や寸法は、スリーブ部3の第二領域5の内腔の開口状態を維持可能なものであれば如何なる構成であってもよく、第二領域5が消化管6の動きに応答できるものが好ましい。また、例えば、スリーブ部3は、消化管6の内壁に接触する構成の場合には、内壁に接触しない構成と比べて生体管腔の運動の影響を受けやすくなるため、第2骨格部21やスリーブ部3の膜体は、消化管6の動きを考慮した設計とすることが好ましい。
例えば、第二骨格部21は、軸方向に山部と谷部とが交互に形成されるように線材がジグザグ状に屈曲しながら螺旋状に巻回された構成であってもよいし、フェンス状、格子状または螺旋状に線材を編み込んだものであってもよい。また、第二骨格部21は、材料がプラスチックで構成されていてもよい。
さらに、第二骨格部21の骨格形状や寸法は、軸方向の位置に応じて、例えば、上流側(一端側F)、中央側、下流側(他端側B)で異ならせてもよい。また、例えば、第一領域4の上流側に第二領域(第二骨格部)を設けてもよく(図示略)、具体的には、ステント部2と第一領域4との間に第二領域を設けてもよい。つまり、第一領域4の上流側は必ずしもステント部2の下流側と接続されている必要はなく、第一領域4の軸方向の両側に第二骨格部が接続される構成であっても良い。
【0049】
また、スリーブ部3の筒状の膜体として、可撓性を有するプラスチックホースを用いて、スリーブ部3の膜体の剛性を高めるようにしてもよい。
【0050】
また、消化管6に対する保護デバイス1の位置ずれをより確実に防止するために、ステント部2には、図示を省略するが、消化管6の内壁に引っ掛かる係止ピン(バーブなど)を設けてもよい。また、上記の係止ピンは紐状部材を取り付けて操作可能とし、保護デバイス1を抜去するときには紐状部材を引っ張ることで係止ピンを消化管6から離脱させて係止を解除できるようにしてもよい。
【0051】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1…保護デバイス、2…ステント部(固定部)、3…スリーブ部(被覆部)、4…第一領域(第一被覆部)、5…第二領域(第二被覆部)、6…消化管(生体管腔)、7…処置部、10…第一骨格部、11,12,22…膜体、21…第二骨格部、23…外側膜体、24…内側膜体

図1
図2
図3
図4