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  • 特開-廃棄PET樹脂再生濾過方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103131
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】廃棄PET樹脂再生濾過方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 36/02 20060101AFI20220630BHJP
   B01D 39/12 20060101ALI20220630BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B01D36/02
B01D39/12
B29B17/02 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209656
(22)【出願日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2020216508
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】597082304
【氏名又は名称】協栄産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】古澤 栄一
(72)【発明者】
【氏名】金丸 敦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 透
【テーマコード(参考)】
4D019
4D116
4F401
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA02
4D019BB02
4D019BB03
4D019BB06
4D019CA05
4D019CB06
4D116AA24
4D116BB01
4D116BC05
4D116BC75
4D116DD04
4D116EE02
4D116EE04
4D116EE06
4D116EE09
4D116EE10
4D116EE12
4D116FF12B
4D116FF15B
4D116GG02
4D116GG21
4D116KK04
4D116TT02
4D116TT07
4D116VV16
4D116ZZ03
4F401AA22
4F401AB10
4F401AC11
4F401BA13
4F401BB09
4F401CA25
4F401CA48
4F401CA51
4F401CB18
4F401DC07
4F401FA20Z
(57)【要約】
【課題】本発明は、PET樹脂の再生製品にバースト等の欠陥を生じさせる微細な異物を対象とし、これを可及的に効率良く捕集・除去できる廃棄PET樹脂の再生濾過方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明廃棄PET樹脂再生濾過方法は、回収したPETボトル樹脂製品を溶融して再生する濾過方法において、a)溶融したPET樹脂が押し出される上流側に40~500メッシュの金網で形成された金網フィルタを配して、予め微細粒子以上の大きさの異物粒子を濾過し、b)該金網フィルタの後に加圧ポンプを配して、上流側から下流側へのPET樹脂の流れを促し、c)該加圧ポンプの下流側にバブルポイント630~1850Paの不織布製の焼結金属で形成された不織布焼結金属フィルタを配して微細異物粒子を濾過することを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収したPETボトル樹脂製品を溶融して再生原材料を得るに際し、混入した異物を除去しブロー成形にてPETボトル製品を再生する廃棄PETボトル樹脂の再生濾過方法において、
a)溶融したPET樹脂が押し出される上流側に40~500メッシュの金網で形成された金網フィルタを配して、予め微細粒子以上の大きさの異物粒子を濾過し、
b)該金網フィルタの後に加圧ポンプを配して、上流側から下流側へのPET樹脂の流れを促し、
c)該加圧ポンプの下流側にバブルポイント630~1850Paの不織布製の焼結金属で形成された不織布焼結金属フィルタを配して、
微細異物粒子を濾過することを特徴とする廃棄PETボトル樹脂の再生濾過方法。
【請求項2】
金網フィルタは、中央フィルタの上流側に、該中央フィルタよりメッシュ値の小さなサブフィルタを重層的に配したことを特徴とする請求項1記載の廃棄PET樹脂再生濾過方法。
【請求項3】
金網フィルタは、複数個を並列に配設したことを特徴とする請求項1又は2記載の廃棄PET樹脂再生濾過方法。
【請求項4】
不織布金属焼結フィルタは、複数個を並列に配設したことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の廃棄PET樹脂再生濾過方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回収されたPET樹脂の廃棄物を溶融してPETボトルとして再生させる際に、溶融させた樹脂の中からバーストの原因となる微細な異物を除去し、適正な再生原料となるPET樹脂を得るための廃棄樹脂再生濾過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、回収されたPETボトル等のPET樹脂廃棄物は、溶融して、PET樹脂製品に再生処理されている。
この再生処理にあって、回収されたPETボトル等の廃棄物の中には、ガラス片、砂などの微細粒子の異物が混入していることが多い。
この異物混入があると、その再生品がPETボトルの場合には、バースト等の不具合が発生する虞がある。
例えば、PETボトルの再生においては、一旦試験管の形状のプリフォームに成形し、次いでブロー成形で最終的なボトルの形に成形するが、溶融樹脂内に異物が存在すると、ブロー成形で薄く引き延ばされた膜面に、バーストが発生する虞がある。
【0003】
ここでバーストとは、上記プリフォームを加熱しながら延伸ロッドで金型内にさし入れて高圧空気を吹き込んでブロー成形する際に、混入した異物粒子等によって空気洩れ等が惹起され、ボトル成形品に孔が開いて欠陥品となってしまう現象をいう。
【0004】
斯かる回収PET樹脂をPETボトルとして再生させる際のブロー成形時に起こるバーストに対して、これを解消しようとする技術は従来技術には見い出せず、一方、樹脂の濾過に対する従来技術としては、金網や焼結金属フィルタ等が使用された濾過装置がある。
例えば、特許文献1には、焼結金属フィルタを使用した装置として、金属繊維焼結フィルタと金属粒子焼結フィルタとを2段に直列させた濾過装置が示され、そこには濾過精度の悪いフィルタで巨大異物をカットし、後に高精度の濾過を行うものであり、その結果、濾過効率が向上し、濾過寿命が延長されると説明されている。
【0005】
しかしながら、これら装置は、上記ペットボトルでのバーストの問題は想定されておらず、これらの原因となる極めて微細な粒子としての異物の除去については、何らの技術的手段が示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭54-162981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、PET樹脂の再生製品にバースト等の欠陥を生じさせる微細な異物を対象とし、これを可及的に効率良く捕集・除去できる廃棄PET樹脂の再生濾過方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明廃棄PET樹脂再生濾過方法は、回収したPETボトル樹脂製品を溶融して再生原材料を得るに際し、混入した異物を除去しブロー成形にてPETボトル製品を再生する廃棄PETボトル樹脂の再生濾過方法において、a)溶融したPET樹脂が押し出される上流側に40~500メッシュの金網で形成された金網フィルタを配して、予め微細粒子以上の大きさの異物粒子を濾過し、b)該金網フィルタの後に加圧ポンプを配して、上流側から下流側へのPET樹脂の流れを促し、c)該加圧ポンプの下流側にバブルポイント630~1850Paの不織布製の焼結金属で形成された不織布焼結金属フィルタを配して、微細異物粒子を濾過する。
【0009】
請求項2記載の廃棄PET樹脂再生濾過方法は、金網フィルタにあって、中央フィルタの上流側に該中央フィルタよりメッシュ値の小さなサブフィルタを重層的に配したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の廃棄PET樹脂再生濾過方法は、金網フィルタを複数個並列に配設したことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の廃棄PET樹脂再生濾過方法は、不織布焼結金属フィルタを複数個並列に配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、回収された廃棄PET樹脂が、洗浄、押出機による加熱、混練を経て溶融樹脂となって押し出されてくると、40~500メッシュの金網フィルタに掛かり、ここで後述する不織布焼結金属フィルタで捕集されるより大きな粒子の異物が予め除去される。
次いで、溶融樹脂が加圧ポンプを経て、不織布焼結金属フィルタに入るが、この樹脂に障害を引き起こす原因となる微細粒子が含まれていると、その微細粒子は周りを溶融樹脂に取り囲まれ、それがPET樹脂特有の粘弾性を備えたものとなっている。
この異物粒子を核とした粘弾性のPET樹脂が上記不織布焼結金属フィルタに入ると、これが金属繊維を交絡状に絡ませた3次元構造を有するものなので、内部に曲りくねった経路が形成されたものとなり、この経路を粘弾性を備えた樹脂がレオロジー的特性を伴いつつ流動し、その透過の過程で異物がフィルタに捕捉されるものとなる。
このPET樹脂特有の粘弾性を備えた樹脂中異物の捕捉に適した不織布焼結金属フィルタのバブルポイントは、630~1850Paであることが実験的に確認された。
【0013】
即ち、回収PET樹脂をPETボトルとして再生させる際のブロー成形時に起こるバーストに対して、バブルポイント630~1850Paの範囲にある不織布金属焼結フィルタによって樹脂中に混入した異物が有効に除去され、バーストの発生確率が大幅に低減されると共に、黄変等の樹脂の熱変性にも耐えうることが実証された。
又、40~500メッシュとした金網フィルタの網目を上流側に配することで、不織布金属焼結フィルタへの負担が軽減され、不織布金属焼結フィルタの交換時間を適切に保つことができ、全体的な濾過の効率を向上させることが可能となった。
その間、金網フィルタと不織布焼結金属フィルタとの間に介設した圧力ポンプによって、上流側から下流側へのPET樹脂の流れが円滑なものとなった。
【0014】
請求項2記載の廃棄PET樹脂再生濾過方法は、金網フィルタを中央フィルタの上流側によりメッシュ値の小さなサブフィルタを重層的に配することで、中央フィルタ部で捕集される粒子より大きな異物粒子を予め除去することができ、異物大きさのバラツキ度に応じて金網フィルタ全体の除去効率を高めることができる。
【0015】
請求項3記載の廃棄PET樹脂再生濾過方法は、金網フィルタを複数個並列に配設することで、溶融樹脂の量に応じて金網フィルタの処理能力を高めることができる。
【0016】
請求項4記載の廃棄PET樹脂再生濾過方法は、不織布焼結フィルタを複数個並列に配設することで、溶融樹脂の量に応じて不織布焼結金属フィルタの処理能力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明方法に用いられる工程を示す模式的正面図である。
図2】本発明方法の要部となる工程を示す模式的拡大図である。
図3】本発明に用いられるフィルタの模式的拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の廃棄樹脂再生濾過方法を実施するための形態を図面を基に、以下説明する。
本発明を実施するにあたっての濾過装置として、図1に示す如く、押出機Sからの樹脂の流れを受けて、先ず、金網フィルタを配した第1フィルタ部10と、不織布焼結金属フィルタを配した第2フィルタ部20と、その第1フィルタ部10と第2フィルタ部20との間に配する加圧ポンプ30とから成る濾過装置を用いることができる。
該押出機Sは、対象となる再生用PET樹脂、例えば廃棄PETボトル樹脂を粉砕したものを、混練り、溶融させるもので、スクリュウ状の回転羽根を備えた押出機を利用することができる。
そして、上述の如く、該押出機Sからの溶融樹脂の流れを受けて、先ず、上流側に、溶融樹脂に含まれるであろう比較的大きな異物を除去すべく金網フィルタ11、12、13、14を備えた第1フィルタ部10を配する。
又、成形機へとつながる下流側には、障害の原因となるより微細な異物を除去すべく不織布焼結金属フィルタ21、22、23、24を備えた第2フィルタ部20を配する。
そして、該第1フィルタ部10と第2フィルタ部20との間には、フィルタの最大耐圧力以下に制御しつつ上流側から下流側へのPET樹脂の円滑な流れを促す加圧ポンプ30を配設する。
【0019】
第1フィルタ部10には、図3に示す如く、金網フィルタ11が配され、中央に40~500メッシュで、線径0.21Φmm~25Φmmの中央金網フィルタ11aを配設し、必要に応じて、その前後によりメッシュが小さく、線径の大となるサブフィルタ11b、11bを配し、両端部には支持フィルタ11c、11cを配設した重層構造とすることができる。
該金網フィルタは、中央金網フィルタ11aを主体とし、前後にサブフィルタ11b、11bを配するが、前側のサブフィルタ11b、11bは中央金網フィルタ11aよりメッシュの小さなものとし、中央金網フィルタ11aに先だって、より大きな異物を除去し、その後に40~500メッシュとした中央フィルタ11bにより狙いとする異物の除去を図る。
後ろ側となるサブフィルタ11bは、濾過作用は少ないが、その外側の支持フィルタ10c、10cと共に中央フィルタ10aを支持する機能を果たす。
例えば、このフィルタには、目開き190μm、空間率39%、線径0.12Φmmのフィルタを使用することができる。
【0020】
この金網フィルタは、機能がメッシュと線径とに影響されるが、そのメッシュ及び線径等が設定し易く、ある一定の大きさの異物除去を狙いとする場合には精度良く設定することができる。
一方、メッシュが大きい程除去物が細かいものとなるが、より細かいものを濾過しようとメッシュを大きくすると、線径を細めねばならならず、すると、耐久性の劣るものとなり、一定限度を超えると圧力に耐えられなくなる傾向にある。
従って、本発明にあっては、該金網フィルタと後述する不織布焼結金属フィルタとの組合せが重要となる。
即ち、本発明にあっては、より微細な異物の除去は主に不織布焼結金属フィルタによるが、それに先立って、より大きな粒子となる異物を除去できる金網フィルタのメッシュを設定し、全体の捕集効率を高めようとするものである。
【0021】
次いで、第2フィルタ部20には、図3に示す如く、上記不織布焼結金属フィルタが形成され、中央に不織布製の焼結金属で形成された中央不織布焼結金属フィルタ21aを配し、その前後に支持フィルタ21b、21bを配設することができる。
例えば、このフィルタには、バブルポイント630Pa、平均透過性1350L/dm/min、透過係数1.24-E10m、厚み0.60mm、重量750g/m、空隙率86%のものが使用できる。
【0022】
不織布焼結金属フィルタ21は、ステンレス等の金属繊維を交絡状に絡ませた3次元構造を形成するもので、接合を焼結により結合させたもので、線径等によらず強い耐性を備える。その濾過作用は、表面濾過によらず内部濾過に基づくもので、内部の交絡状の経路で捕捉し、深さ内に蓄積することができる。
斯かる構造特性から、微細な粒子の捕捉に好適なものであり、本発明にあっては、バーストの原因となる異物が微細粒子であることから、ここに不織布焼結金属フィルタの活用を試みた。
しかし、一旦溶融PET樹脂内に混じった異物の粒径や、それが捕捉可能なフィルタの特性は、溶融樹脂の温度や粘度及び圧力状態等によって変化し、必ずしも除去に適した条件を割り出すことは容易ではない。
即ち、障害を引き起こす原因となる微細粒子が溶融樹脂内に含まれると、その周囲を溶融樹脂が取り囲み、それがPET樹脂特有のレオロジー的特性を発揮するものとなり、一方、不織布焼結金属フィルタ21は、金属繊維を交絡状に絡ませた3次元構造を備えた構造特性を有する。
従って、この中央不織布焼結フィルタ21aに粘弾性を備えた樹脂に取り囲まれた異物が入ると、これが交絡状の曲りくねった経路をレオロジー的特性を伴いつつ流動し、その透過の過程でフィルタに捕捉されるという複雑な過程を経るからである。
【0023】
そこで、本発明は、不織布焼結金属フィルタの空隙率や厚み等から、そのバブルポイントと異物除去の効果との関係を探り、該バブルポイントと現実に起こる異物除去の効果とを比較考量し、好適な結果をもたらす条件を求めた。
ここで不織布金属焼結フィルタの指標特性をバブルポイントとしたのは、バブルポイントはフィルタの性能評価にあたって孔径表示の指針となるものであり、本法に用いる不織布フィルタの濾過性能を評価するに最も適した指標特性となるからである。
このバブルポイントの異なる不織布製の焼結金属で形成された不織布焼結金属フィルタを下流側に配し、それを下記バースト試験にかけた。
【0024】
<バースト試験>
(目的)
本発明方法のバーストを抑制する効果を、金網フィルタのみで濾過した場合と比較して検討する。
(試験方法)
比較法:網目500メッシュの金網フィルタを選び、この金網フィルタを配した濾過用フィルタとして用いる方法を比較対象とする。
本法:上記500メッシュの金網フィルタの後に、上限圧力を1.5MPaとした加圧ポンプを配し、その後(下流側)にバブルポイント630Paとした不織布焼結金属フィルタを配した構成とする。焼結フィルタはステンレス製の金属繊維を不織布状に焼結させたものとする。
押出機から送り出された溶融樹脂を比較法及び本法による濾過を経て一旦プリフォームに成形し、そのプリフォームをブロー成形して再生PETボトルへと加工する際に、そのブロー成形時に起こるバーストの回数を測定する。ブロー成形のエアー圧力は35mbarとし、PETボトルの厚み(胴厚)は140μmとする。
このとき、不織布焼結金属フィルタの特性をバブルポイントで代表させたのは上述の通りであるが、それを630Paとしたのは、バーストを起す異物粒子の口径等を考慮したとき630Pa以上のものに適正な濾過効果が期待されるからである。
(結果)
比較法によれば、ブロー成形22万回あたり45回のバーストが発生した。
45/220000=0.02%
一方、本法によれば、ブロー成形22万回あたり5回のバーストが発生した。
5/220000=0.002%
比較法がバースト率0.02%であったのに対し本法では0.002%となり、バースト率が約1/10以下に低減されることが示され、不織布焼結金属フィルタバブルポイント630Pa以上で本法が極めて有効であることが確認された。
【0025】
<黄変試験>
(目的)
上記バースト試験で不織布焼結金属フィルタがバブルポイント630Pa以上で本法がバーストに対して有効であることが確認されたので、次にその不織布焼結金属フィルタの630Pa以上での適性範囲を検証する。
即ち、不織布焼結金属をフィルタのバブルポイント630Pa以上とすれば捕集率を上げる効果が期待できるはずであるが、しかし、バブルポイント630Pa以上とすると、それだけ濾過処理に時間がかかることとなり、樹脂は比較的高温状態にあるため、その間に樹脂に熱変性のおそれが生じてくる。そこで、その熱変性を黄変値を指標とし、その黄変に耐え得るであろうフィルタのバブルポイントの適性範囲を検討することとした。
(試験方法)
黄変試験の試験方法は、日本工業規格JISZ8781により、結晶後のペレットを反射法でb値を測定した。装置は金網フィルタを500メッシュとし、加圧ポンプを1.5MPaとし、不織布フィルタのバブルポイントを630から始めて、925、1235、1480、1850、2470の各点で結晶b値を測定した。表中、平均透過性、空隙率は、各バブルポイントに従う不織布焼結金属フィルタの属性である。
(結果)
実施例1から実施例5までは、結晶b値が3.8~4.9へと変化し、再生使用に耐え得る適正な黄変値であると判断した。
従って、バブルポイント630~1850Paを不織布焼結金属フィルタの適性範囲と決定した。
【0026】
次いで、上記不織布焼結金属フィルタでの試験結果に基づいて、溶融した樹脂が押し出される上流側に金網フィルタを配し、その適切なメッシュ値を求めることとした。
即ち、第1フィルタとしての金網フィルタの役割は、第2フィルタとしての不織布焼結金属フィルタが捉えるであろう微細粒子より大きな径の粒子を捉え、それを予め除去することにより、不織布焼結金属フィルタへの負荷を軽減させ、全体の捕捉効率を高めようとするものである。
そこで、上記不織布焼結金属フィルタのバブルポイント630~1850Paの範囲にあって、上流となる金網フィルタ網目の適性なメッシュ値を検討することとした。
【0027】
<金網フィルタ試験>
(目的)
上記バースト試験及び黄変試験より不織布焼結金属フィルタの有効範囲がバブルポイント630~1850Paと決定されたが、この有効範囲にあって、逆に、上流側となる金網フィルタの許容される網目範囲が問題となる。
即ち、金網フィルタがより細かい網目であれば不織布焼結金属フィルタへの負荷は少ないが、粗い網目であれば負荷の大きいものとなる。従って、不織布焼結金属フィルタのバブルポイントの範囲を630~1850Paとすると、逆に、上流側の金網フィルタの網目によって、不織布焼結金属フィルタの交換時間が影響を受けることになる。
そこで、この不織布焼結金属フィルタの交換時間から、金網フィルタの適性な網目範囲を探ることとした。
(試験方法)
金網フィルタの最大メッシュを500メッシュとし、より小さなメッシュにしたときの不織布焼結金属フィルタの交換時間を測定する。このとき試験に用いる不織布焼結金属フィルタは、630Paとした。
尚、金網フィルタのメッシュ500メッシュ以上については、これ以上細かな粒径は不織布焼結金属フィルタの捕集機能に任せるものとした。
(結果)
実施例1の金網メッシュを500とした場合には不織布焼結金属フィルタの交換時間は24時間となり、1日(昼夜続行)あたり1回の交換で済み、作業効率及び経済的観点からも十分に使用に耐え得ることが判明した。実施例5では交換時間が6時間となるが、作業効率及び経済的に不織布フィルタへの負担軽減の効果は認められ合格値とした。一方、それを下回るものは負担軽減の効果が薄く不合格とした。
従って、金網フィルタの適性範囲は、500~40メッシュの範囲と決定した。
【0028】
さてこのとき、上記異物の粒径にバラツキがあるときは、そのバラツキの度合いに応じて、金網フィルタの層をより重層構造とすることができる。
例えば、異物の粒径にバラツキがあまりない場合には、上記中央金網フィルタ11a一枚のみで、両側に支持フィルタ11c、11cを配すれば良い。しかし、バラツキが大きい場合には、中央フィルタ11aの前に、よりメッシュの小さなサブフィルタ11bを配し、必要に応じて、更にその前に更にメッシュの小さなサブフィルタを配することができる。
例えば、溶融樹脂に異物が存在し、その大きさにバラツキがあるとき、先ず、一番の上流側となるサブフィルタ11bが一番大きな径の異物に対峙し、例えば、500メッシュで0.025Φmm線径としたとき、その開き目に相当するサイズの異物が濾過される。
サブフィルタの数は、相対的で異物の径のバラツキに応じて重層的とすることで、そのバラツキ度に応じて段階的に異物を濾過することができ、金網フィルタ全体の除去効率を高めることができる。
【0029】
上記第1フィルタ部10の金網フィルタの数は、1つに限らず、金網フィルタ11の他に金網フィルタ12、金網フィルタ13、金網フィルタ14・・と増やすことができる。それは求められる処理量に応じたもので、押出機Sから連通管を分岐させて、それらを並列関係に配設する。
第2フィルタ部20も同様で、加圧ポンプ30から延びた連通管を分岐させて、それらを不織布焼結金属フィルタ21、不織布焼結金属フィルタ22、不織布焼結金属フィルタ23、不織布焼結金属フィルタ24と互いを並列関係に配設する。
第1フィルタ部10と第2フィルタ部20とは、その処理量が対応したものであるから、並列させる金網フィルタ及び不織布焼結金属フィルタの数は原則等しいものとなる。
【0030】
又、上記上流側の金網フィルタと下流側の不織布金属フィルタとの間には、加圧ポンプ30を配設する。
これは濾過作用の間に起こるPET樹脂のレオロジー的特性を活かそうとするものである。
即ち、上記濾過の前に、再生PET樹脂が押し出し機で混練されると、270~290℃程度の温度にまで昇温し、これが第1フィルタ部10及び第2フィルタ部20の2段階の濾過作用を経る間に溶融状態となる。すると、そこにPET樹脂特有のレオロジー的特性が生まれることになり、これが上流側の金網フィルタ及び下流側の不織布金属フィルタに及ぶことになるから、該樹脂の流れにはフィルタによる負荷が生じることになるが、両者の間に加圧ポンプ30を介設することで、このフィルタの負荷に抗して円滑な樹脂の流れを促すものとなる。
【0031】
上記の加圧ポンプ30の圧力は、加圧ポンプ30の入口に圧力センサ31を配設し、フィルタの最大耐圧力以下に制御しつつPET樹脂の流れを促すに適切な圧力値を得るものとする。その圧力値は、例えば1.5Mpaとすることができる。
【0032】
上記2段の濾過作用を経た溶融樹脂は、図1に示す、ストランドダイK等に送られ、これよりは、例えば、押し出されたストランドを裁断し、ペレットとして出荷することができる。
【0033】
本発明は以上の如くで、バブルポイント630~1850Paの不織布焼結金属フィルタと40~500メッシュの金網フィルタとを加圧ポンプを介設させつつ全体を有機的に連携させた結果、異物混入から生じるバーストの発生確率を著しく低減させると共に、その間に起こるであろう樹脂の熱変性にも耐え得るものとし、さらに、不織布焼結金属フィルタの交換時間を適正なものとすることで作業及び経済効率を向上させることができ、廃棄PET樹脂をPETボトルに再生させるにあたっての諸課題を解決し得るものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、この濾過廃棄PET樹脂を利用して、各種のPETボトル再生製品に広く活用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 第1フィルタ部
11、12,13、14 金網フィルタ
11a 中央金網フィルタ
11b サブ金網フィルタ
11c 支持フィルタ
20 第2フィルタ部
21、22、23、24 不織布焼結金属フィルタ
21a 中央不織布焼結フィルタ
21b 支持フィルタ
30 加圧ポンプ
31 圧力センサ
S 押出機
K ストランドダイ
図1
図2
図3