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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103151
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20220630BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20220630BHJP
   B60K 6/405 20071001ALI20220630BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20220630BHJP
   B60K 6/387 20071001ALI20220630BHJP
   B60W 10/30 20060101ALI20220630BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20220630BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20220630BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B60K6/40
B60K6/442 ZHV
B60K6/405
B60K6/547
B60K6/387
B60W10/30 900
B60W20/15
F16H57/04 N
F16H1/06
F16H57/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211652
(22)【出願日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2020217701
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】常松 功
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴義
(72)【発明者】
【氏名】松原 光将
(72)【発明者】
【氏名】西久保 僚輝
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 直也
(72)【発明者】
【氏名】行時 大地
(72)【発明者】
【氏名】平野 雅人
【テーマコード(参考)】
3D202
3J009
3J063
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202BB61
3D202EE00
3D202EE13
3D202EE16
3D202EE21
3D202EE23
3D202FF08
3J009DA15
3J009EA11
3J009FA04
3J063AA01
3J063AB02
3J063BA11
3J063XD03
3J063XD16
3J063XD23
3J063XE37
3J063XF14
(57)【要約】
【課題】出力部材が回転しない状態においても、潤滑対象箇所に対して適切に油を供給することができる車両用駆動装置を実現する。
【解決手段】車両用駆動装置100は、第1軸A1に配置された入力部材と、出力部材と、第1回転電機1と、第2回転電機2と、これらの間で動力を伝達する動力伝達機構とを備える。第1回転電機1及び第2回転電機2の何れか一方である対象回転電機は、第1軸A1と平行、且つ第1軸A1よりも上方V1に配置された第2軸A2に配置されている。
車両用駆動装置100は、対象回転電機の下方V2に配置され、対象回転電機から落下する油を受ける第1油受け部7と、第1油受け部7に溜まった油を、入力部材を支持する第1軸受、及び入力部材と一体的に回転する入力ギヤG10に供給する第1油供給路70とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
車輪に駆動連結される出力部材と、
第1回転電機と、
第2回転電機と、
前記入力部材と前記出力部材と前記第1回転電機と前記第2回転電機との間の動力伝達状態を変更して、これらの間で動力を伝達する動力伝達機構とを備え、
前記入力部材と前記第1回転電機との間で駆動力が伝達され、前記第2回転電機と前記出力部材との間で駆動力が伝達される状態となる動作モードをシリーズモードとし、
前記入力部材と前記第2回転電機と前記出力部材との間で駆動力が伝達される状態となる動作モードをパラレルモードとして、
前記動力伝達機構が、少なくとも前記シリーズモードと前記パラレルモードとの2つの動作モードを実行可能である車両用駆動装置であって、
前記第1回転電機及び前記第2回転電機の何れか一方を対象回転電機として、
前記対象回転電機は、前記入力部材が配置された第1軸とは別軸であって前記第1軸と平行な第2軸に配置され、
前記第2軸は、前記第1軸よりも上方に配置され、
前記車輪と連動せずに動作するオイルポンプから前記対象回転電機に供給されて前記対象回転電機から落下する冷却用の油を受けるように、前記対象回転電機の下方に配置された第1油受け部と、
前記第1油受け部に溜まった油を、前記入力部材を支持する第1軸受及び前記入力部材と一体的に回転する入力ギヤに供給する第1油供給路と、を備える車両用駆動装置。
【請求項2】
前記対象回転電機は、前記第2回転電機であり、
前記第1回転電機は、前記第1軸及び前記第2軸とは別軸であってこれらの軸と平行な第3軸に配置され、
前記第3軸より上方に配置された第2油受け部と、
前記第1油供給路から前記入力ギヤに供給されて前記入力ギヤにより掻き上げられた油を、前記第2油受け部に導く導油路と、
前記第2油受け部に溜まった油を前記第1回転電機の回転軸を支持する第2軸受に供給する第2油供給路と、を備える請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
軸方向に沿う軸方向視で、前記第3軸は、前記第1軸に対して、水平方向における前記第2軸とは反対側に、前記第1軸に隣接して配置され、
前記第2油受け部は、上下方向に沿う上下方向視で、前記入力ギヤ及び前記第2軸受と重複するように配置され、
前記第2油受け部の底部は、前記入力ギヤの上端よりも下方に配置されている、請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記第1回転電機、前記第2回転電機、及び前記動力伝達機構を収容するケースを備え、
前記ケースは、前記第1回転電機及び前記第2回転電機を収容する第1室と、前記動力伝達機構を収容する第2室とを区画する区画壁を備え、
前記第1油受け部は、前記第1室に配置され、
前記第1油供給路は、前記区画壁を貫通して前記第1室と前記第2室とを連通するように設けられている、請求項1から3の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
差動入力ギヤの回転を一対の前記出力部材に分配する差動歯車装置を備え、
前記動力伝達機構は、前記第1回転電機と前記入力部材とを駆動連結すると共に、前記入力部材と前記差動入力ギヤとを駆動連結する第1ギヤ機構と、
前記第2回転電機と前記差動入力ギヤとを駆動連結する第2ギヤ機構と、を備え、
前記第1ギヤ機構は、前記入力部材とそれぞれ同軸に配置される第1ギヤ及び第2ギヤと、第1カウンタギヤ機構と、を備え、
前記第1カウンタギヤ機構は、第1カウンタ軸と、前記第1ギヤと噛み合う第3ギヤと、前記第2ギヤと噛み合う第4ギヤと、前記第1カウンタ軸と一体的に回転すると共に前記差動入力ギヤと噛み合う第5ギヤと、を備え、
前記第1ギヤと前記第3ギヤとのギヤ比は、前記第2ギヤと前記第4ギヤとのギヤ比と異なり、
前記第2ギヤ機構は、前記第2回転電機と同軸に配置される第6ギヤと、第2カウンタギヤ機構と、を備え、
前記第2カウンタギヤ機構は、第2カウンタ軸と、前記第6ギヤと噛み合う第7ギヤと、前記第2カウンタ軸と一体的に回転すると共に前記差動入力ギヤと噛み合う第8ギヤと、を備え、
前記入力部材と前記第1カウンタ軸との間で前記第1ギヤと前記第3ギヤとの第1ギヤ対を介して駆動力が伝達される状態と、前記入力部材と前記第1カウンタ軸との間で前記第2ギヤと前記第4ギヤとの第2ギヤ対を介して駆動力が伝達される状態と、前記入力部材と前記第1カウンタ軸との間で駆動力が伝達されない状態と、を切り替える切替機構が、前記第1ギヤ機構に設けられている、請求項1から4の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、2つの回転電機と、出力部材と、これらの間で動力を伝達する動力伝達機構と備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-114477号公報(特許文献1)には、内燃機関と2つの回転電機とを備えたハイブリッド車両における車両用駆動装置の潤滑についての技術が開示されている。この車両には、車輪の駆動力源とは別の駆動力源によって駆動されるオイルポンプ(電動オイルポンプ)が搭載されており、車両用駆動装置の一部の機構は、このオイルポンプから供給される油によって潤滑される。尚、これには、あるギヤを潤滑した後の油によって別のギヤなどの他の潤滑対象箇所が潤滑されることも含まれる。例えば、回転するギヤによって掻き上げられた油によって別の潤滑対象箇所を潤滑するように構成することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-114477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、内燃機関と回転電機とを備えたハイブリッド車両では、車輪の停止中に内燃機関によって回転電機を回転させて発電を行う場合がある。この場合、動力伝達機構は、車輪を駆動するギヤが回転しないように制御される。このため、掻き上げによって潤滑用の油が供給される潤滑対象箇所には油が供給されず、潤滑が不十分となる可能性がある。別途、オイルポンプからの油の供給路を設けると車両用駆動装置の構造が複雑化し、また、オイルポンプの吐出能力も高くしなければならない場合がある。
【0005】
上記背景に鑑みて、出力部材が回転しない状態においても、潤滑対象箇所に対して適切に油を供給することができる車両用駆動装置を実現することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた車両用駆動装置は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第1回転電機と、第2回転電機と、前記入力部材と前記出力部材と前記第1回転電機と前記第2回転電機との間の動力伝達状態を変更して、これらの間で動力を伝達する動力伝達機構とを備え、前記入力部材と前記第1回転電機との間で駆動力が伝達され、前記第2回転電機と前記出力部材との間で駆動力が伝達される状態となる動作モードをシリーズモードとし、前記入力部材と前記第2回転電機と前記出力部材との間で駆動力が伝達される状態となる動作モードをパラレルモードとして、前記動力伝達機構が、少なくとも前記シリーズモードと前記パラレルモードとの2つの動作モードを実行可能である車両用駆動装置であって、前記第1回転電機及び前記第2回転電機の何れか一方を対象回転電機として、前記対象回転電機は、前記入力部材が配置された第1軸とは別軸であって前記第1軸と平行な第2軸に配置され、前記第2軸は、前記第1軸よりも上方に配置され、前記車輪と連動せずに動作するオイルポンプから前記対象回転電機に供給されて前記対象回転電機から落下する冷却用の油を受けるように、前記対象回転電機の下方に配置された第1油受け部と、前記第1油受け部に溜まった油を、前記入力部材を支持する第1軸受、及び前記入力部材と一体的に回転する入力ギヤに供給する第1油供給路と、を備える。
【0007】
この構成によれば、第1油受け部を設けることによって、オイルポンプから供給されて対象回転電機を冷却した後に流れ落ちる油を有効に溜めることができる。また、第1油供給路を設けることによって、第1油受け部に貯留された油を潤滑対象箇所に供給することができる。発電は、車輪の停止中にも行うことができるので、動力伝達機構を構成するギヤには回転していないものもあるが、内燃機関に駆動連結された入力部材及び入力ギヤは、例えば回転電機を発電機として動作させる場合に機械的エネルギーを回転電機に供給するために回転する。上記のように、入力部材を支持する第1軸受及び入力ギヤに油を供給可能とすることによって、これらを適切に潤滑することができる。即ち、本構成によれば、出力部材が回転しない状態においても、潤滑対象箇所である第1軸受及び入力ギヤに対して適切に油を供給することができる車両用駆動装置を実現することができる。
【0008】
車両用駆動装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両用駆動装置のスケルトン図
図2】車両用駆動装置の部分断面図
図3】軸方向に沿って区画壁に対向する側から第1室を見た模式的断面図
図4】軸方向に沿って区画壁に対向する側から第2室を見た模式的断面図
図5】本体ケースにおける第1油受け部の部分拡大斜視図
図6】本体ケースにおける第2油受け部の部分拡大斜視図
図7】伝達機構側カバーケースにおける第2油受け部の部分拡大斜視図
図8】第1油受け部の他の構成例を示す、軸方向に沿って区画壁に対向する側から第1室を見た模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、車両用駆動装置の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、以下の説明における各部材についての方向は、それらが車両用駆動装置に組み付けられた状態での方向を表す。また、各部材についての寸法、配置方向、配置位置等に関する用語は、誤差(製造上許容され得る程度の誤差)による差異を有する状態を含む概念である。
【0011】
本明細書では、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力(トルクと同義)を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材(例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等)が含まれ、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置(例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等)が含まれていてもよい。
【0012】
また、本明細書では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線に直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。また、本明細書では、2つの部材の配置に関して、「軸方向の配置領域が重複する」とは、一方の部材の軸方向の配置領域内に、他方の部材の軸方向の配置領域の少なくとも一部が含まれることを意味する。
【0013】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、第1回転電機1と、第2回転電機2と、内燃機関3に駆動連結される第1入力部材11と、車輪4に駆動連結される出力部材5と、第2回転電機2に駆動連結される第2入力部材12と、第1回転電機1に駆動連結される第3入力部材13と、を備えている。内燃機関3は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。第1回転電機1及び第2回転電機2は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置(図示せず)と電気的に接続されており、蓄電装置から電力の供給を受けて力行し、或いは、車両の慣性力や内燃機関3の駆動力等により発電した電力を蓄電装置に供給して蓄電させる。第1回転電機1及び第2回転電機2は、共通の蓄電装置に電気的に接続されており、第1回転電機1が発電した電力によって第2回転電機2を力行させることが可能となっている。
【0014】
本実施形態では、第3入力部材13は、第1回転電機1(具体的には、第1回転電機1が備えるロータ、以下同様)と一体的に回転するように第1回転電機1に連結され、第2入力部材12は、第2回転電機2(具体的には、第2回転電機2が備えるロータ、以下同様)と一体的に回転するように第2回転電機2に連結される。また、本実施形態では、第1入力部材11は、トルクリミッタTL(図2参照)を介して内燃機関3(具体的には、内燃機関3が備えるクランクシャフト等の出力部材、以下同様)に連結される。トルクリミッタTLは、第1入力部材11と内燃機関3との間で伝達されるトルクの大きさを制限して過大なトルクの伝達を遮断する。トルクリミッタTL付きのダンパ装置(ダンパ機構とトルクリミッタTLとを備えたダンパ装置)を用いる場合、第1入力部材11は、トルクリミッタTL及びダンパ機構を介して、内燃機関3に連結される。
【0015】
図2に示すように、車両用駆動装置100は、ケース9を備えており、第1入力部材11、第2入力部材12、及び第3入力部材13のそれぞれは、ケース9に収容されている。ここで、「収容する」とは、収容対象物の少なくとも一部を収容することを意味する。第1入力部材11、第2入力部材12、及び第3入力部材13のそれぞれは、ケース9に対して回転可能にケース9に支持されている。ケース9には、後述する差動歯車装置6、第1カウンタギヤ機構31、及び第2カウンタギヤ機構32も収容されている。
【0016】
ケース9は、図2に示すように、第1回転電機1及び第2回転電機2を収容する第1室91と、動力伝達機構20を収容する第2室92とを備えている。第1室91と第2室92とは、区画壁95によって区画されている。尚、ケース9は、区画壁95が形成された本体ケース97と、軸方向第1側L1から本体ケース97に当接して本体ケース97と共に第1室91を形成する不図示の回転電機側カバーケースと、軸方向第2側L2から本体ケース97に当接して本体ケース97と共に第2室92を形成する伝達機構側カバーケース96とを備えている。
【0017】
車両用駆動装置100は、差動歯車装置6を備えている。図1に示すように、差動歯車装置6は、差動入力ギヤGDを備え、差動入力ギヤGDの回転を、それぞれ車輪4に駆動連結される一対の出力部材5に分配する。一方の出力部材5が駆動連結される車輪4を第1車輪とし、他方の出力部材5が駆動連結される車輪4を第2車輪とすると、第1車輪及び第2車輪は、左右一対の車輪4(例えば、左右一対の前輪、又は左右一対の後輪)である。本実施形態では、出力部材5はドライブシャフトであり、出力部材5のそれぞれは、連結対象となる車輪4と同速で回転するように当該車輪4に連結される。出力部材5は、例えば等速ジョイント(図示せず)を介して、連結対象となる車輪4に連結される。出力部材5を介して伝達されるトルクによって車輪4が駆動されることで、車両(車両用駆動装置100が搭載される車両、以下同様)が走行する。
【0018】
図2に示すように、本実施形態では、差動歯車装置6は、傘歯車式の差動ギヤ機構40と、差動ギヤ機構40を収容する差動ケース41と、を備えている。差動ケース41は、ケース9に対して回転可能にケース9に支持されている。差動入力ギヤGDは、差動ケース41と一体的に回転するように差動ケース41に連結されている。具体的には、差動入力ギヤGDは、差動ケース41から径方向(後述する第4軸A4を基準とする径方向)の外側に突出するように、差動ケース41に取り付けられている。
【0019】
差動ギヤ機構40は、ピニオンギヤ43と、ピニオンギヤ43にそれぞれ噛み合う一対のサイドギヤ44と、を備えている。ピニオンギヤ43(例えば、2つのピニオンギヤ43)は、差動ケース41に保持されたピニオンシャフト42に対して回転可能にピニオンシャフト42に支持されている。差動ギヤ機構40は、差動入力ギヤGDの回転を一対のサイドギヤ44に分配する。サイドギヤ44のそれぞれは、連結対象となる出力部材5と一体的に回転するように当該出力部材5に連結(ここでは、スプライン連結)される。
【0020】
図1及び図2に示すように、第1入力部材11は、第1軸A1上に配置され、第2入力部材12は、第2軸A2上に配置され、第3入力部材13は、第3軸A3上に配置され、差動歯車装置6は、第4軸A4上に配置され、後述する第1カウンタギヤ機構31は、第5軸A5上に配置され、後述する第2カウンタギヤ機構32は、第6軸A6上に配置されている。これらの第1軸A1、第2軸A2、第3軸A3、第4軸A4、第5軸A5、及び第6軸A6は、互いに異なる軸(仮想軸)であり、互いに平行に配置される。これらの各軸(A1~A6)に平行な方向(すなわち、各軸の間で共通する軸方向)を軸方向Lとする。また、軸方向Lの一方側を軸方向第1側L1とし、軸方向Lの他方側(軸方向Lにおける軸方向第1側L1とは反対側)を軸方向第2側L2とする。
【0021】
図1に示すように、第1入力部材11は、内燃機関3に対して軸方向第1側L1に配置される。また、第3入力部材13は、第1回転電機1に対して軸方向第2側L2に配置され、第2入力部材12は、第2回転電機2に対して軸方向第2側L2に配置される。
【0022】
図1に示すように、車両用駆動装置100は、第1入力部材11と第3入力部材13とを駆動連結すると共に、第1入力部材11と差動入力ギヤGDとを駆動連結する第1ギヤ機構21を備えている。第1ギヤ機構21は、第1入力部材11を介して第3入力部材13と差動入力ギヤGDとを駆動連結する。即ち、第1ギヤ機構21は、内燃機関3に駆動連結される第1入力部材11と第1回転電機1との間で駆動力を伝達する。第3入力部材13と第1入力部材11との間の動力伝達経路である第1動力伝達経路と、第1入力部材11と差動入力ギヤGDとの間の動力伝達経路である第3動力伝達経路とを、第1ギヤ機構21を用いて接続することができる。第3動力伝達経路は、後述する第1切替機構51によって選択的に接続される(すなわち、接続又は遮断される)。一方、本実施形態では、第1動力伝達経路は、常時接続される。
【0023】
また、車両用駆動装置100は、第2入力部材12と差動入力ギヤGDとを駆動連結する第2ギヤ機構22を備えている。第2ギヤ機構22は、第2入力部材12と差動入力ギヤGDとを、第1ギヤ機構21を介さずに駆動連結する。第2入力部材12と差動入力ギヤGDとの間の動力伝達経路である第2動力伝達経路を、第2ギヤ機構22を用いて接続することができる。即ち、第2ギヤ機構22は、第2回転電機2と出力部材5との間で駆動力を伝達する。本実施形態では、第2動力伝達経路は、後述する第2切替機構52によって選択的に接続される。
【0024】
第3動力伝達経路が遮断されると共に第2動力伝達経路が接続された状態で、車両用駆動装置100において電動走行モード及びシリーズモードを実現することができる。電動走行モードは、第2回転電機2の駆動力により出力部材5を駆動して車両を走行させる走行モードである。シリーズモードは、内燃機関3の駆動力により第1回転電機1に発電させると共に第2回転電機2の駆動力により出力部材5を駆動して車両を走行させる走行モードである。電動走行モード及びシリーズモードでは、第3動力伝達経路は遮断され、第1回転電機1及び内燃機関3は出力部材5から分離される。
【0025】
また、第2動力伝達経路及び第3動力伝達経路が接続された状態で、車両用駆動装置100においてパラレルモードを実現することができる。パラレルモードは、少なくとも内燃機関3の駆動力により出力部材5を駆動して車両を走行させる走行モードである。パラレルモードでは、必要に応じて第2回転電機2の駆動力を出力部材5に伝達させて、内燃機関3の駆動力を補助する。パラレルモードにおいて第2回転電機2を停止させる場合(例えば、車両の高速走行時)には、第2動力伝達経路を遮断することで、第1入力部材11を介さずに差動入力ギヤGDに駆動連結される第2回転電機2を、差動入力ギヤGDから切り離すことができる。よって、パラレルモードにおいて第2回転電機2を停止させる場合に、第2回転電機2の連れ回りを回避することができ、この結果、第2回転電機2の引き摺りによるエネルギー損失の発生を抑制することができる。尚、パラレルモードにおいて、第2回転電機2の駆動力に加えて或いは第2回転電機2の駆動力に代えて、第1回転電機1の駆動力を出力部材5に伝達させて、内燃機関3の駆動力を補助してもよい。
【0026】
第1ギヤ機構21及び第2ギヤ機構22は、第3入力部材13と出力部材5と第1回転電機1と第2回転電機2との間の動力伝達状態を変更して、これらの間で動力を伝達する動力伝達機構20に相当する。また、上述したように、シリーズモードは、第1入力部材11と第1回転電機1との間で駆動力が伝達され、第2回転電機2と出力部材5との間で駆動力が伝達される状態となる動作モードである。また、パラレルモードは、第1入力部材11と第2回転電機2と出力部材5との間で駆動力が伝達される状態となる動作モードである。動力伝達機構20は、少なくともシリーズモードとパラレルモードとの2つの動作モードを実行可能である。
【0027】
図1に示すように、第1ギヤ機構21は、第3入力部材13と同軸に配置される第3入力ギヤG9(第9ギヤ)と、第1入力部材11と同軸に配置されると共に第3入力ギヤG9と噛み合う第1入力ギヤG10(第10ギヤ)と、を備えている。本実施形態では、第3入力ギヤG9は、第3入力部材13と一体的に回転するように第3入力部材13に連結され、第1入力ギヤG10は、第1入力部材11と一体的に回転するように第1入力部材11に連結されている。すなわち、本実施形態では、第3入力部材13と第1入力部材11とは、第3入力ギヤG9と第1入力ギヤG10とのギヤ対を介して常時連結されるため、第3入力部材13と第1入力部材11との間の第1動力伝達経路は、常時接続される。
【0028】
図1図2に示すように、本実施形態では、第3入力ギヤG9は、第1入力ギヤG10よりも小径に形成されている。すなわち、第3入力ギヤG9と第1入力ギヤG10とのギヤ比は、第3入力部材13の回転が減速して第1入力部材11に伝達されるように(言い換えれば、第1入力部材11の回転が増速して第3入力部材13に伝達されるように)設定されている。
【0029】
第1ギヤ機構21は、更に、第1入力部材11とそれぞれ同軸に配置される第1ギヤG1及び第2ギヤG2と、第1カウンタギヤ機構31と、を備えている。第1ギヤG1は、第2ギヤG2に対して軸方向第1側L1に配置されている。第1カウンタギヤ機構31は、第1カウンタ軸31aと、第1ギヤG1と噛み合う第3ギヤG3と、第2ギヤG2と噛み合う第4ギヤG4と、第1カウンタ軸31aと一体的に回転すると共に差動入力ギヤGDと噛み合う第5ギヤG5と、を備えている。第3ギヤG3は、第4ギヤG4に対して軸方向第1側L1に配置されている。そして、本実施形態では、第5ギヤG5は、第3ギヤG3と第4ギヤG4との軸方向Lの間に配置されている。
【0030】
図1図2に示すように、本実施形態では、第5ギヤG5は、差動入力ギヤGDよりも小径に形成されている。すなわち、第5ギヤG5と差動入力ギヤGDとのギヤ比は、第1カウンタ軸31aの回転が減速して差動歯車装置6(具体的には、差動入力ギヤGD)に伝達されるように設定されている。
【0031】
第1入力部材11と第1カウンタ軸31aとの間で第1ギヤG1と第3ギヤG3との第1ギヤ対GP1を介して駆動力が伝達される状態と、第1入力部材11と第1カウンタ軸31aとの間で第2ギヤG2と第4ギヤG4との第2ギヤ対GP2を介して駆動力が伝達される状態と、第1入力部材11と第1カウンタ軸31aとの間で駆動力が伝達されない状態とを切り替える第1切替機構51が、第1ギヤ機構21に設けられている。
【0032】
以下では、第1入力部材11と第1カウンタ軸31aとの間で第1ギヤ対GP1を介して駆動力が伝達される状態(すなわち、第1入力部材11と第1カウンタ軸31aとが第1ギヤ対GP1を介して連結された状態)を、「第1連結状態」とする。また、第1入力部材11と第1カウンタ軸31aとの間で第2ギヤ対GP2を介して駆動力が伝達される状態(すなわち、第1入力部材11と第1カウンタ軸31aとが第2ギヤ対GP2を介して連結された状態)を、「第2連結状態」とする。また、第1入力部材11と第1カウンタ軸31aとの間で駆動力が伝達されない状態を、「非連結状態」とする。差動入力ギヤGDと噛み合う第5ギヤG5は、第1カウンタ軸31aと一体的に回転するように第1カウンタ軸31aに連結されている。そのため、第1連結状態及び第2連結状態では、第1入力部材11と差動入力ギヤGDとの間で駆動力が伝達される状態となり(すなわち、第3動力伝達経路が接続され)、非連結状態では、第1入力部材11と差動入力ギヤGDとの間で駆動力が伝達されない状態となる(すなわち、第3動力伝達経路が遮断される)。
本実施形態では、第1切替機構51が「切替機構」に相当する。
【0033】
本実施形態では、第3ギヤG3及び第4ギヤG4は、第1カウンタ軸31aと一体的に回転するように第1カウンタ軸31aに連結されている。そして、第1切替機構51は、第1ギヤG1及び第2ギヤG2のうちの第1ギヤG1のみが第1入力部材11に連結された状態と、第1ギヤG1及び第2ギヤG2のうちの第2ギヤG2のみが第1入力部材11に連結された状態と、第1ギヤG1及び第2ギヤG2の双方が第1入力部材11から切り離された状態と、を切り替えるように構成されている。すなわち、第1ギヤG1及び第2ギヤG2は、第1切替機構51によって選択的に第1入力部材11に連結される。
【0034】
第1ギヤG1及び第2ギヤG2のうちの第1ギヤG1のみが第1入力部材11に連結された状態では、第1連結状態が実現される。また、第1ギヤG1及び第2ギヤG2のうちの第2ギヤG2のみが第1入力部材11に連結された状態では、第2連結状態が実現される。また、第1ギヤG1及び第2ギヤG2の双方が第1入力部材11から切り離された状態では、非連結状態が実現される。尚、第1連結状態では、第2ギヤG2は、第1入力部材11に対して相対回転可能に第1入力部材11に支持され、第2連結状態では、第1ギヤG1は、第1入力部材11に対して相対回転可能に第1入力部材11に支持され、非連結状態では、第1ギヤG1及び第2ギヤG2が、第1入力部材11に対して相対回転可能に第1入力部材11に支持される。
【0035】
第1入力部材11と第1カウンタ軸31aとの回転速度比は、第1連結状態では第1ギヤG1と第3ギヤG3とのギヤ比に応じて定まり、第2連結状態では、第2ギヤG2と第4ギヤG4とのギヤ比に応じて定まる。そして、第1ギヤG1と第3ギヤG3とのギヤ比は、第2ギヤG2と第4ギヤG4とのギヤ比と異なるように設定されている。よって、第1連結状態と第2連結状態とを第1切替機構51を用いて切り替えることで、第1入力部材11と第1カウンタ軸31aとの回転速度比が異なる値に切り替えられる。
【0036】
差動入力ギヤGDの回転速度に対する第1入力部材11の回転速度の比を変速比として、本実施形態では、第1連結状態での変速比が第2連結状態での変速比よりも大きくなるように、第1ギヤG1と第3ギヤG3とのギヤ比、及び第2ギヤG2と第4ギヤG4とのギヤ比が設定されている。よって、第1連結状態では、低速段が形成され、第2連結状態では、高速段が形成される。第1ギヤG1と第3ギヤG3とのギヤ比、及び第2ギヤG2と第4ギヤG4とのギヤ比がこのように設定されるため、本実施形態では、第1ギヤG1は、第2ギヤG2よりも小径に形成され、第3ギヤG3は、第4ギヤG4よりも大径に形成されている。
【0037】
本実施形態では、第1ギヤG1は、第3ギヤG3よりも小径に形成されている。すなわち、第1ギヤG1と第3ギヤG3とのギヤ比は、第1入力部材11の回転が減速して第1カウンタ軸31aに伝達されるように設定されている。また、本実施形態では、第2ギヤG2は、第4ギヤG4よりも大径に形成されている。すなわち、第2ギヤG2と第4ギヤG4とのギヤ比は、第1入力部材11の回転が増速して第1カウンタ軸31aに伝達されるように設定されている。
【0038】
本実施形態では、第1切替機構51は、噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)を用いて構成されている。具体的には、第1切替機構51は、軸方向Lに移動可能な第1スリーブ部材51aと、第1入力部材11と一体的に回転する第1係合部E1と、第1ギヤG1と一体的に回転する第2係合部E2と、第2ギヤG2と一体的に回転する第3係合部E3と、を備えている。第1スリーブ部材51a、第1係合部E1、第2係合部E2、及び第3係合部E3は、第1軸A1上に配置されている。すなわち、第1切替機構51(具体的には、少なくとも、第1スリーブ部材51a、第1係合部E1、第2係合部E2、及び第3係合部E3)は、第1入力部材11と同軸に配置されている。
【0039】
第1スリーブ部材51aの軸方向Lの位置は、軸方向Lに移動可能にケース9に支持された第1シフトフォーク51b(図2参照)によって切り替えられる。第1シフトフォーク51bは、第1スリーブ部材51aの回転(第1軸A1回りの回転)を許容する状態で第1スリーブ部材51aと一体的に軸方向Lに移動するように、第1スリーブ部材51a(具体的には、第1スリーブ部材51aの外周面に形成された溝部)に係合している。第1シフトフォーク51bは、電動アクチュエータや油圧アクチュエータ等のアクチュエータの駆動力によって軸方向Lに移動される。
【0040】
本実施形態では、第1スリーブ部材51aの内周面には、内歯が形成されており、第1係合部E1、第2係合部E2、及び第3係合部E3のそれぞれの外周面には、外歯が形成されている。第1スリーブ部材51aは、第1係合部E1に外嵌するように配置された状態で、第1係合部E1に対して相対回転不能に且つ第1係合部E1に対して軸方向Lに相対移動可能に、第1係合部E1に連結されている。第1係合部E1(具体的には、第1係合部E1に形成された外歯)は、第1スリーブ部材51aの軸方向Lの位置によらずに、第1スリーブ部材51a(具体的には、第1スリーブ部材51aに形成された内歯)に係合する。一方、第2係合部E2(具体的には、第2係合部E2に形成された外歯)及び第3係合部E3(具体的には、第3係合部E3に形成された外歯)は、第1スリーブ部材51aの軸方向Lの位置に応じて、第1スリーブ部材51a(具体的には、第1スリーブ部材51aに形成された内歯)に選択的に係合する。
【0041】
第1切替機構51は、第1スリーブ部材51aの軸方向Lの位置に応じて、第1連結状態と、第2連結状態と、非連結状態と、を切り替えるように構成されている。具体的には、第1スリーブ部材51aが、第1係合部E1に係合し且つ第2係合部E2及び第3係合部E3に係合しない軸方向Lの位置に移動した状態で(図1図2参照)、非連結状態が実現される。また、第1スリーブ部材51aが、第1係合部E1及び第2係合部E2に係合し且つ第3係合部E3に係合しない軸方向Lの位置(図1及び図2に示す第1スリーブ部材51aの位置よりも軸方向第1側L1の位置)に移動した状態で、第1連結状態が実現される。また、第1スリーブ部材51aが、第1係合部E1及び第3係合部E3に係合し且つ第2係合部E2に係合しない軸方向Lの位置(図1及び図2に示す第1スリーブ部材51aの位置よりも軸方向第2側L2の位置)に移動した状態で、第2連結状態が実現される。
【0042】
図2に示すように、本実施形態では、第1入力部材11は、一対の第1軸受B1により、軸方向Lの2ヶ所でケース9に支持されている。上述したように、本体ケース97と、本体ケース97に軸方向第2側L2から当接する伝達機構側カバーケース96とにより、第2室92が形成されている。一対の第1軸受B1は、一方が本体ケース97に形成された区画壁95に支持され、他方が伝達機構側カバーケース96に支持されている。第2室92に収容される第1入力ギヤG10、第1ギヤG1、及び第2ギヤG2は、一対の第1軸受B1の軸方向Lの間に配置されている。
【0043】
同様に、第3入力部材13は、一対の第2軸受B2により、軸方向Lの2ヶ所でケース9に支持されている。一対の第2軸受B2は、一方が本体ケース97に形成された区画壁95に支持され、他方が伝達機構側カバーケース96に支持されている。第2室92に収容される第3入力ギヤG9は、一対の第1軸受B1の軸方向Lの間に配置されている。
【0044】
また、本実施形態では、第1カウンタ軸31aは、一対の第3軸受B3により、軸方向Lの2ヶ所でケース9に支持されている。第1軸受B1、第2軸受B2と同様に、一対の第3軸受B3は、一方が本体ケース97に形成された区画壁95に支持され、他方が伝達機構側カバーケース96に支持されている。第3ギヤG3、第4ギヤG4、及び第5ギヤG5は、一対の第3軸受B3の間に配置されている。
【0045】
図1に示すように、第2ギヤ機構22は、第2入力部材12と同軸に配置される第6ギヤG6(第2入力ギヤ)と、第2カウンタギヤ機構32と、を備えている。第2カウンタギヤ機構32は、第2カウンタ軸32aと、第6ギヤG6と噛み合う第7ギヤG7と、第2カウンタ軸32aと一体的に回転すると共に差動入力ギヤGDと噛み合う第8ギヤG8と、を備えている。本実施形態では、第6ギヤG6は、第7ギヤG7よりも小径に形成されている。すなわち、第6ギヤG6と第7ギヤG7とのギヤ比は、第2入力部材12の回転が減速して第2カウンタ軸32aに伝達されるように設定されている。また、本実施形態では、第8ギヤG8は、差動入力ギヤGDよりも小径に形成されている。すなわち、第8ギヤG8と差動入力ギヤGDとのギヤ比は、第2カウンタ軸32aの回転が減速して差動歯車装置6(具体的には、差動入力ギヤGD)に伝達されるように設定されている。本実施形態では、第7ギヤG7は、第8ギヤG8よりも大径に形成されている。
【0046】
第2入力部材12と第2カウンタ軸32aとの間で第6ギヤG6と第7ギヤG7とのギヤ対を介して駆動力が伝達される伝動状態と、第2入力部材12と第2カウンタ軸32aとの間で駆動力が伝達されない非伝動状態と、を切り替える第2切替機構52が、第2ギヤ機構22に設けられている。差動入力ギヤGDと噛み合う第8ギヤG8は、第2カウンタ軸32aと一体的に回転するように第2カウンタ軸32aに連結されている。そのため、伝動状態では、第2入力部材12と差動入力ギヤGDとの間で駆動力が伝達される状態となり(すなわち、第2動力伝達経路が接続され)、非伝動状態では、第2入力部材12と差動入力ギヤGDとの間で駆動力が伝達されない状態となる(すなわち、第2動力伝達経路が遮断される)。
【0047】
本実施形態では、第6ギヤG6は、第2入力部材12と一体的に回転するように第2入力部材12に連結されている。そして、第2切替機構52は、第7ギヤG7が第2カウンタ軸32aに連結された状態と、第7ギヤG7が第2カウンタ軸32aから切り離された状態とを切り替えるように構成されている。すなわち、第7ギヤG7は、第2切替機構52によって選択的に第2カウンタ軸32aに連結される。第7ギヤG7が第2カウンタ軸32aに連結された状態では、伝動状態が実現される。また、第7ギヤG7が第2カウンタ軸32aから切り離された状態では、非伝動状態が実現される。尚、非伝動状態では、第7ギヤG7は、第2カウンタ軸32aに対して相対回転可能に第2カウンタ軸32aに支持される。
【0048】
本実施形態では、第2切替機構52は、噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)を用いて構成されている。具体的には、第2切替機構52は、軸方向Lに移動可能な第2スリーブ部材52aと、第2カウンタ軸32aと一体的に回転する第4係合部E4と、第7ギヤG7と一体的に回転する第5係合部E5と、を備えている。第2スリーブ部材52a、第4係合部E4、及び第5係合部E5は、第6軸A6上に配置されている。すなわち、第2切替機構52(具体的には、少なくとも、第2スリーブ部材52a、第4係合部E4、及び第5係合部E5)は、第2カウンタギヤ機構32と同軸に配置されている。このように、第2切替機構52は、第2スリーブ部材52aを、第2カウンタギヤ機構32と同軸に備えている。後述するように、第2スリーブ部材52aは、軸方向Lに移動して伝動状態と非伝動状態とを切り替える。
【0049】
第2スリーブ部材52aの軸方向Lの位置は、軸方向Lに移動可能にケース9に支持された第2シフトフォーク52b(図2及び図3参照)によって切り替えられる。第2シフトフォーク52bは、第2スリーブ部材52aの回転(第6軸A6回りの回転)を許容する状態で第2スリーブ部材52aと一体的に軸方向Lに移動するように、第2スリーブ部材52a(具体的には、第2スリーブ部材52aの外周面に形成された溝部)に係合している。詳細は後述するが、第2スリーブ部材52aを軸方向Lに駆動する駆動機構は、第2シフトフォーク52bを用いて構成されている。
【0050】
本実施形態では、第2スリーブ部材52aの内周面には、内歯が形成されており、第4係合部E4及び第5係合部E5のそれぞれの外周面には、外歯が形成されている。第2スリーブ部材52aは、第4係合部E4に外嵌するように配置された状態で、第4係合部E4に対して相対回転不能に且つ第4係合部E4に対して軸方向Lに相対移動可能に、第4係合部E4に連結されている。第4係合部E4(具体的には、第4係合部E4に形成された外歯)は、第2スリーブ部材52aの軸方向Lの位置によらずに、第2スリーブ部材52a(具体的には、第2スリーブ部材52aに形成された内歯)に係合する。一方、第5係合部E5(具体的には、第5係合部E5に形成された外歯)は、第2スリーブ部材52aの軸方向Lの位置に応じて、第2スリーブ部材52a(具体的には、第2スリーブ部材52aに形成された内歯)に選択的に係合する。
【0051】
第2切替機構52は、第2スリーブ部材52aの軸方向Lの位置に応じて、伝動状態と、非伝動状態と、を切り替えるように構成されている。具体的には、第2スリーブ部材52aが、第4係合部E4に係合し且つ第5係合部E5に係合しない軸方向Lの位置に移動した状態で(図1図2参照)、非伝動状態が実現される。また、第2スリーブ部材52aが、第4係合部E4及び第5係合部E5に係合する軸方向Lの位置(図1及び図2に示す第2スリーブ部材52aの位置よりも軸方向第1側L1の位置)に移動した状態で、伝動状態が実現される。
【0052】
図2に示すように、本実施形態では、第2入力部材12は、一対の第4軸受B4により、軸方向Lの2ヶ所でケース9に支持されている。第1軸受B1等と同様に、一対の第4軸受B4は、一方が本体ケース97に形成された区画壁95に支持され、他方が伝達機構側カバーケース96に支持されている。第2室92に収容される第6ギヤG6は、一対の第4軸受B4の軸方向Lの間に配置されている。
【0053】
ところで、車両用駆動装置100を構成する第1回転電機1、第2回転電機2、動力伝達機構20、差動歯車装置6は、油によって潤滑されている。潤滑用の油は、車輪4の駆動力源である内燃機関3、第1回転電機1、及び第2回転電機2のいずれか1つ以上を駆動力源として駆動される不図示の機械式オイルポンプ、並びに、車輪4の駆動力源とは別の駆動力源(例えば第1回転電機1及び第2回転電機2とは別の回転電機(モーター))により駆動される不図示の電動オイルポンプの少なくとも一方から車両用駆動装置100に供給される。本実施形態では、対象回転電機(第2回転電機2)に冷却用の油を供給する、車輪と連動せずに動作するオイルポンプは、電動オイルポンプである。なお、車輪と連動せずに動作するオイルポンプは、この他にも、例えば、車輪の停止中に発電行う場合に回転する第1回転電機1及び内燃機関3の少なくとも一方により駆動される機械式オイルポンプであっても良い。車両用駆動装置100には、各機構部への油路が形成され、これらのオイルポンプからの油が供給される。但し、全ての機構部への油路を形成すると、油路が複雑化し、車両用駆動装置100が大型化する可能性がある。また、油路が多くなると、オイルポンプの吐出能力を高くする必要が生じる場合がある。
【0054】
そこで、油路を形成してオイルポンプから直接的に油を供給するだけではなく、車両用駆動装置100の一部の機構に対して油を供給し、その機構を潤滑した後の油を使って他の機構を潤滑することがしばしば行われる。例えば、車両用駆動装置100が備える各種のギヤなどの回転部材により、油を掻き上げたり、遠心力によって油を飛ばしたりすることによって、当該他の機構を潤滑するように構成される場合がある。なお、このような回転部材としては、例えば、差動入力ギヤGDが主に用いられる。
【0055】
ここで、回転部材が回転する場合には、当該回転部材によって潤滑対象箇所へ油を供給することができるが、当該回転部材が回転しない場合には、十分に油を供給することができない。上述したように、車両用駆動装置100は、動力伝達機構20の状態によって、少なくともシリーズモードとパラレルモードとの2つの動作モードで動作可能である。シリーズモードでは、例えば、車輪の停止中に内燃機関3を駆動し、第1回転電機1を回生動作させて発電し、蓄電装置を充電することができる。このとき、内燃機関3からの駆動力が車輪4に伝達しないように、第1ギヤ機構21が制御されている。また、第2ギヤ機構22も、第2回転電機2の駆動力が車輪4に伝達されないように制御されている。即ち、車輪の停止中に発電を行う際には、動力伝達機構20を構成する多くの回転部材が回転しておらず、掻き上げ等によって油が充分に供給されない可能性がある。
【0056】
車輪停止中における発電の際には、少なくとも第1入力部材11、第1回転電機1、第3入力ギヤG9、及び第1入力ギヤG10が回転しており、これらとこれらを支持する軸受が適切に潤滑されることが好ましい。本実施形態に係る車両用駆動装置100は、このような場合にも、これらが適切に潤滑されるように構成されている。
【0057】
上述したように、ケース9は、第1回転電機1及び第2回転電機2を収容する第1室91と、動力伝達機構20を収容する第2室92と、第1室91と第2室92とを区画する区画壁95とを備えている。図3は、軸方向Lに沿って区画壁95に対向する側から第1室91を見た模式的断面図を示しており、図4は、軸方向Lに沿って区画壁95に対向する側から第2室92を見た模式的断面図を示している。以下の説明においては、車両用駆動装置100を車両に取り付けた状態において軸方向Lが水平方向に沿うものとし、水平方向に直交する方向を上下方向Vとする。また、軸方向L及び上下方向Vに直交する方向を幅方向Hとし、幅方向Hにおける一方側を幅方向第1側H1、他方側を幅方向第2側H2と称する。幅方向Hは、水平方向に沿う方向である。
【0058】
詳細は後述するが、車両用駆動装置100は、図3に示すように、第2回転電機2の下方V2に配置され、第2回転電機2から落下する油を受ける第1油受け部7を備えている。第1油受け部7は、第1室91に配置されている。具体的には、第1油受け部7は、本体ケース97における区画壁95から回転電機側カバーケースの側へ突出したリブ(第1本体側リブ75)と、回転電機側カバーケースの壁面から本体ケース97の側へ突出したリブ(第1カバー側リブ:不図示)とが当接して、第1室91内に形成されている。第1油受け部7は、油を貯留できるように、椀状に形成されている。なお、本実施形態において、第1油受け部7、第2油受け部8、第3油受け部73等を形成する「リブ」には、ケース9の内面から突出する突出壁の他、ケース9の外壁を構成する部分も含まれる。また、図3及び図4に示すように、車両用駆動装置100は、第1油受け部7に溜まった油を、第1入力部材11を支持する第1軸受B1、及び第1入力部材11と一体的に回転する第1入力ギヤG10に供給する第1油路71(第1油供給路70)を備えている。第1油路71は、区画壁95を貫通して第1室91と第2室92とを連通するように設けられている。
【0059】
また、図4に示すように、第2室92には、第2油受け部8と、第1油路71(第1油供給路70)から第1入力ギヤG10に供給されて第1入力ギヤG10により掻き上げられた油を第2油受け部8に導く導油路88と、第2油受け部8に溜まった油を第1回転電機1の回転軸である第3入力部材13を支持する第2軸受B2に供給する第2油路81(第2油供給路80)とが形成されている。第2油受け部8は、本体ケース97における区画壁95から伝達機構側カバーケース96の側へ突出したリブ(第2本体側リブ85a)と、伝達機構側カバーケース96の壁面から本体ケース97の側へ突出したリブ(第2カバー側リブ85b:図7参照)とが当接して、第2室92内に形成されている。第2油受け部8は、油を貯留できるように、椀状に形成されている。尚、第2油受け部8の底部89は、第1入力ギヤG10の上端よりも下方V2に配置されている。
【0060】
以下、図5から図7の模式的斜視図も参照して、油の流れも含めて説明する。図5は、本体ケース97における第1油受け部7の部分拡大斜視図である。図6は、本体ケース97における第2油受け部8の部分拡大斜視図である。図7は、伝達機構側カバーケース96における第2油受け部8の部分拡大斜視図である。
【0061】
例えば、電動オイルポンプから供給された油は、第2回転電機2の冷却のため、第2回転電機2の上方V1から第2回転電機2に向けて供給される。より具体的には、油は、第2回転電機2のステータコイルに向けて供給される。第2回転電機2を冷却した油は、重力に従って下方V2へ流れる。第2回転電機2から落下した油は、図3及び図5に示すように、第2回転電機2の下方V2に配置された第1油受け部7によって受け止められ、第1油受け部7に貯留される。第1油受け部7には、区画壁95を貫通して第1室91と第2室92とを連通するように設けられて、第1油受け部7に溜まった油を第2室92へ供給する第1油路71(第1油供給路70)が形成されている。本実施形態では、車輪4の停止中に第1回転電機1が発電している状態では、第2回転電機2は駆動されないが、油路の構成上、第1回転電機1と共に第2回転電機2にも冷却用の油が供給されるようになっている。
【0062】
第1油受け部7を形成するリブ(第1本体側リブ75)には、上下方向Vにおいて第1油路71と同じ位置に、第1油路71と隣接するように、分岐油路72が形成されている。第1油路71と分岐油路72とは、上下方向Vにおける同じ位置に形成されているため、第1油受け部7に溜まった油は、ほぼ同じ割合で両油路を通って流れる。尚、分岐油路72は、第1本体側リブ75に当接する第1カバー側リブに形成されていても良いし、第1本体側リブ75と第1カバー側リブとの双方に形成されていてもよい。第1油受け部7の下方V2には、分岐油路72からの油を受ける第3油受け部73が形成されている。第3油受け部73も第1油受け部7と同様に本体ケース97に形成されたリブ(第3本体側リブ76)と回転電機側カバーケースに形成されたリブ(第3カバー側リブ;不図示)との当接によって形成されている。第3油受け部73には、区画壁95を貫通して、第1室91と第2室92とを連通する第3油路74が設けられている。第3油路74を通った油は、後述するように第1入力部材11の第1軸受B1を潤滑する。第3油受け部73に貯留される油は、第1油受け部7から供給されているから、第3油路74は、第1油受け部7に溜まった油を、入力部材を支持する第1軸受B1に供給している。つまり、第3油路74は、第1油路71と共に第1油供給路70を構成している。また、図2に示すように、第3油路74を通った油は、図示左側の第1軸受B1(符号B1a)を潤滑した後、第1入力部材11の軸内空間11eに供給される。この油は、軸内潤滑を行うと共に、軸内空間11eから径方向に設けられた油路を介して他の部位の潤滑にも用いられる。
【0063】
第1油路71を通って第2室92へ供給された油は、第1入力ギヤG10を潤滑する。図4及び図6に示すように、第1入力ギヤG10の回転により、第1油路71を通って供給された油は掻き上げられる。油は、第1入力ギヤG10の外周に沿って形成されたガイドリブ86の径方向外側へ遠心力によって運ばれ、ガイドリブ86の径方向外側を通って、第2油受け部8へと流れる。即ち、ガイドリブ86の径方向外側には、第1油路71から第1入力ギヤG10に供給されて第1入力ギヤG10により掻き上げられた油を、第2油受け部8に導く導油路88が形成されている。
【0064】
図4図6図7に示すように、第2油受け部8には、第2油受け部8に溜まった油を第1回転電機1の回転軸である第3入力部材13を支持する第2軸受B2(図2参照)に供給する第2油路81が接続されている。上述したように、第2油受け部8は、本体ケース97における区画壁95から伝達機構側カバーケース96の側へ突出した第2本体側リブ85aと、伝達機構側カバーケース96の壁面から本体ケース97の側へ突出した第2カバー側リブ85bとが当接して、第2室92内に形成されている。第2油路81は、第2本体側リブ85aと第2カバー側リブ85bとのそれぞれに1つずつ形成されている。図4及び図6に示すように第2本体側リブ85aに本体側第2油路81aが形成され、図7に示すように、第2カバー側リブ85bにカバー側第2油路81bが形成されている。図4及び図6に示すように、第2油受け部8は、第1回転電機1が配置される第3軸A3よりも上方V1に配置されており、第1回転電機1の第2軸受B2に適切に油を供給することができる。
【0065】
上述したように、一対の第2軸受B2は、区画壁95及び伝達機構側カバーケース96により支持されている。第2油路81が、区画壁95の側、伝達機構側カバーケース96の側にそれぞれ形成されていることで、一対の第2軸受B2のそれぞれを適切に潤滑することができる。
【0066】
また、伝達機構側カバーケース96の側のガイドリブ86には、第2油受け部8に溜まった油を第1入力ギヤG10及び第1軸受B1に供給する第4油路83も形成されている。また、上述した第3油路74は、図2図4及び図6に示すように、第1軸受B1の径方向内側において開口しており、第3油路74を通って供給された油は、第1軸受B1を潤滑する。上述したように、第3油路74は、第1油路71と共に第1油供給路70を構成している。
【0067】
図5及び図6に示すように、第2油受け部8は、上下方向Vに沿う上下方向視で、第1入力ギヤG10及び第2軸受B2と重複するように配置されている。また、第2油受け部8の底部89は、第1入力ギヤG10の上端よりも下方V2に配置されている。これにより、第1入力ギヤG10によって掻き上げられた油を適切に第2油受け部8で受け止め、第2油受け部8に貯留させることができる。
【0068】
上記においては、電動オイルポンプから第2回転電機2に供給された油が第1油受け部7で受け止められ、貯留されて流通する形態を例示して説明した。即ち、第1入力部材11が配置された第1軸A1とは別軸であって第1軸A1と平行、且つ第1軸A1よりも上方V1に配置された第2軸A2に配置された第2回転電機2に、電動オイルポンプから油が供給される形態を例示した。しかし、車両用駆動装置100における各機構の配置は、上述した例には限らない。例えば、第1回転電機1が第1軸A1よりも上方V1の第2軸A2に配置されている場合には、対象回転電機を第1回転電機1とし、電動オイルポンプから第1回転電機1に供給された油が第1油受け部7で受け止められるように、第1油受け部7が第1回転電機1の下方に配置された構成としてもよい。
【0069】
即ち、第1回転電機1及び第2回転電機2の何れか一方を対象回転電機として、対象回転電機が、第1入力部材11が配置された第1軸A1とは別軸であって第1軸A1と平行、且つ第1軸A1よりも上方V1に配置された第2軸A2に配置されていればよい。そして、車両用駆動装置100は、車輪4と連動せずに動作するオイルポンプから対象回転電機に供給されて対象回転電機から落下する冷却用の油を受けるように、対象回転電機の下方V2に配置された第1油受け部7と、第1油受け部7に溜まった油を、第1入力部材11を支持する第1軸受B1、及び第1入力部材11と一体的に回転する第1入力ギヤG10に供給する第1油供給路70とを備えていればよい。
【0070】
上記において例示した形態では、対象回転電機は、第2回転電機2である。そして、第1回転電機1は、第1軸A1及び第2軸A2とは別軸であってこれらの軸と平行な第3軸A3に配置されている。また、第2室92には、第3軸A3より上方V1に配置された第2油受け部8と、第1油供給路70(第1油路71)から第1入力ギヤG10に供給されて第1入力ギヤG10により掻き上げられた油を、第2油受け部8に導く導油路88と、第2油受け部8に溜まった油を第1回転電機1の回転軸を支持する第2軸受B2に供給する第2油路81(第2油供給路80)とが備えられている。
【0071】
第1油供給路70から供給された油が、第1軸受B1、第1入力ギヤG10を潤滑するだけではなく、さらに導油路88、第2油受け部8、第2油路81を介して第2軸受B2に供給され、これを潤滑する。即ち、より多くの潤滑対象箇所に、油を供給することができる。しかし、導油路88、第2油受け部8、第2油路81(第2油供給路80)は、必ずしも備えられていなくてもよい。
【0072】
当然ながら、対象回転電機は、第1回転電機1であってもよい。また、上述した形態では、第1回転電機1と第1入力部材11とが常時連結されている形態を例示した。しかし、第1回転電機1と第1入力部材11とが、分離可能に連結されている形態を妨げるものではない。
【0073】
また、上記において例示した形態では、図3及び図4に示すように、軸方向Lに沿う軸方向視で、第3軸A3が、第1軸A1に対して、幅方向H(水平方向)における第2軸A2とは反対側に、第1軸A1に隣接して配置されている。そして、第2油受け部8は、上下方向Vに沿う上下方向視で、第1入力ギヤG10及び第2軸受B2と重複するように配置されており、第2油受け部8の底部89が第1入力ギヤG10の上端よりも下方V2に配置されている形態を例示した。
【0074】
第1軸A1と第3軸A3とが隣接して配置されていることで、第1軸A1に配置されている第1入力ギヤG10を潤滑した油を効率よく第3軸A3の側に流すことができる。また、第2油受け部8の底部89が第1入力ギヤG10の上端よりも下方V2に配置されているので、第1入力ギヤG10によって掻き上げられた油を第2油受け部8に導き易い。また、第2油受け部8は、第1入力ギヤG10及び第2軸受B2と上下方向V視で重複するように配置されているので、第2油受け部8に貯留された油は重力によって適切に第2軸受B2に供給される。尚、第1入力ギヤG10は回転しており、その遠心力によって第1入力ギヤG10を潤滑した油は第1入力ギヤG10の外周よりも径方向の外側まで飛ぶため、第2油受け部8が第1入力ギヤG10の上端よりも上方V1に配置されることを妨げるものではない。
【0075】
上記においては、第1回転電機1、第2回転電機2、及び動力伝達機構20を収容するケース9が、第1回転電機1及び第2回転電機2を収容する第1室91と、動力伝達機構20を収容する第2室92とを区画する区画壁95を備え、第1油受け部7が、第1室91に配置され、第1油供給路70が、区画壁95を貫通して第1室91と第2室92とを連通するように設けられている形態を例示した。
【0076】
ケース9に剛性を持たせつつ、ケース9を小型化するためには、このように区画壁95を備えてケース9を構成することは好適である。このような区画壁95が設けられている場合であっても、第1油供給路70が区画壁95を貫通して第1室91と第2室92とを連通することによって、効果的に油を流通させることができる。当然ながら、このようにケース9が区画されておらず、区画壁95等が設けられていない場合には、第1油供給路70がケース9内の部材を貫通することなく形成されていてもよい。
【0077】
また、上述したように、動力伝達機構20が第1カウンタギヤ機構31及び第2カウンタギヤ機構32の2つのカウンタギヤ機構を備えているような場合には、少なくともそのうちの1つに、潤滑用の油を供給することができる。図4に示すように、第1カウンタギヤ機構31が配置される第5軸A5は、第1軸A1よりも下方に配置されている。また、第1カウンタギヤ機構31の第5ギヤG5は、幅方向Hにおける配置位置が第1入力ギヤG10と重複している。従って、第1入力ギヤG10を潤滑した油が下方へ落下することで、第5ギヤG5や、第1カウンタ軸31a、第1カウンタ軸31aを回転可能に支持する第3軸受B3を効率的に潤滑することができる。
【0078】
また、上記においては、図3図5等を参照して、第1油供給路70(第1油路71、第3油路74)から供給される油を貯留するための油受け部として、第1油受け部7と、第3油受け部73との2つの油受け部を有する形態を例として説明した。しかし、第1油供給路70から供給される油を貯留するための油受け部は、図8に示すように第1油受け部7だけであってもよい。図8では、図3図5に例示した第1油受け部7と区別するために、異なる参照符号「7A」を付し、第2の第1油受け部7Aと称して説明する。
【0079】
図8に示すように、この形態では、第1本体側リブ75が図3に例示した形態に比べて幅方向第1側H1に延伸しており、第2の第1油受け部7Aは、第1油路71の開口部よりも幅方向第1側H1に広がるように形成されている。第1油路71の幅方向第1側H1には、第1油路71と上下方向Vにおける同程度の位置(高さ)に、第5油路77が設けられている。第5油路77も、第1油路71及び第3油路74と同様に、区画壁95を貫通して、第1室91と第2室92とを連通するように設けられている。第5油路77を通った油は、第3軸A3上に配置された第2軸受B2や第3入力ギヤG9を潤滑する。尚、第5油路77を通った油が第1軸受B1や第1入力ギヤG10に供給されてもよく、この場合には、第5油路77も第1油供給路70に含まれる。
【0080】
尚、第1油路71と第5油路77とは、上下方向Vにおける同程度の位置に配置され、区画壁95に対する加工孔として形成されると好適である。第1油路71及び第5油路77の大きさを加工時に調整することが容易であり、第1油路71及び第5油路77を流れる油の流量の調整も容易である。
【符号の説明】
【0081】
1:第1回転電機、2:第2回転電機、3:内燃機関、4:車輪、5:出力部材、6:差動歯車装置、7:第1油受け部、7A:第2の第1油受け部(第1油受け部)、8:第2油受け部、9:ケース、11:第1入力部材(内燃機関に駆動連結される入力部材)、20:動力伝達機構、21:第1ギヤ機構、22:第2ギヤ機構、31:第1カウンタギヤ機構、31a:第1カウンタ軸、32:第2カウンタギヤ機構、32a:第2カウンタ軸、70:第1油供給路、71:第1油路(第1油供給路)、74:第3油路(第1油供給路)、80:第2油供給路、81:第2油路(第2油供給路)、88:導油路、89:底部、91:第1室、92:第2室、95:区画壁、100:車両用駆動装置、A1:第1軸、A2:第2軸、A3:第
3軸、B1:第1軸受、B2:第2軸受、G1:第1ギヤ、G10:第1入力ギヤ(入力部材と一体的に回転する入力ギヤ)、G2:第2ギヤ、G3:第3ギヤ、G4:第4ギヤ、G5:第5ギヤ、G6:第6ギヤ、G7:第7ギヤ、G8:第8ギヤ、GD:差動入力ギヤ、GP1:第1ギヤ対、GP2:第2ギヤ対、H:水平方向、L:軸方向、V:上下方向
図1
図2
図3
図4
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図6
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