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特開2022-103216樹脂用炭酸カルシウム填料、及びそれを含有してなる樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103216
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】樹脂用炭酸カルシウム填料、及びそれを含有してなる樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/18 20060101AFI20220630BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220630BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20220630BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20220630BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20220630BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20220630BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
C01F11/18 J
C08L101/00
C08K3/26
C08L9/00
C08L67/00
C08L81/02
C08L23/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073869
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2018550047の分割
【原出願日】2017-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2016219422
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390008442
【氏名又は名称】丸尾カルシウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100076820
【弁理士】
【氏名又は名称】伊丹 健次
(72)【発明者】
【氏名】山本 和矢
(72)【発明者】
【氏名】笠原 英充
(57)【要約】
【課題】粒子が均一で、分散性や熱安定性が高く、特に平滑性、剥離性や耐脱落性等に優れたアンチブロッキング材として有用な樹脂用炭酸カルシウム填料を提供する。
【解決手段】表面に表面処理剤からなる被覆層が形成されている炭酸カルシウム粒子からなり、下記の式(a)~(e)を満足することを特徴する樹脂用炭酸カルシウム填料。
(a)1.0≦Sw≦12.0(m/g)
(b)0.1≦Dx≦5.0(μm)
(c)0.1≦Dy≦5.0(μm)
(d)0.8≦Dy/Dx≦3.5
(e)0.1≦Tw≦0.8(重量%)
Sw:BET比表面積測定装置にて測定したBET比表面積(m/g)、Dx:算出式=6/(2.7・Sw)で表されるBET比表面積Swから算出される1次粒子直径(μm)、Dy:レーザー回折式粒度分布測定装置にて実測した体積粒度分布において、小さな粒子側から累積した50%直径(μm)、Tw:示差熱天秤装置にて測定した100~300℃の熱減量(重量%)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に表面処理剤からなる被覆層が形成されている炭酸カルシウム粒子からなり、下記の式(a)~(e)を満足することを特徴する樹脂用炭酸カルシウム填料。
(a)1.0≦Sw≦12.0(m/g)
(b)0.1≦Dx≦5.0(μm)
(c)0.1≦Dy≦5.0(μm)
(d)0.8≦Dy/Dx≦3.5
(e)0.1≦Tw≦0.8(重量%)
但し、
Sw:BET比表面積測定装置にて測定したBET比表面積(m/g)、
Dx:算出式=6/(2.7・Sw)で表されるBET比表面積Swから算出される1次粒子直径(μm)、
Dy:レーザー回折式粒度分布測定装置にて実測した体積粒度分布において、小さな粒子側から累積した50%直径(μm)、
Tw:示差熱天秤装置にて測定した100~300℃の熱減量(重量%)。
【請求項2】
炭酸カルシウム粒子が、表面に表面処理剤からなる被覆層が形成されている炭酸カルシウム粒子を粉砕メディアの非存在下で粉砕したものであることを特徴する請求項1記載の樹脂用炭酸カルシウム填料。
【請求項3】
表面処理剤が、アルカリ土類金属にキレート能を有する化合物及び/又は界面活性剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂用炭酸カルシウム填料。
【請求項4】
樹脂と、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂用炭酸カルシウム填料とからなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂がフィルム系合成樹脂であることを特徴とする請求項4記載の樹脂組成物。
【請求項6】
フィルム系合成樹脂がポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリオレフィンから選ばれる請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂用炭酸カルシウム填料が、アンチブロッキング材用であることを特徴とする請求項4記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂用炭酸カルシウム填料及びそれを含有してなる樹脂組成物に関し、更に詳しくは、特定の比表面積と特定の粒度特性と特定の熱減量に調整することにより、粒子が均一で分散性や熱安定性が高い、樹脂用炭酸カルシウム填料及びそれを配合してなる樹脂組成物に関する。
本発明の樹脂用炭酸カルシウム填料は、高濃度配合される従来のシーラント、床材、接着剤用途はもちろん、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の汎用プラスチックや、ポリ乳酸(PLA)、ポリカーボネート(PC)やポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の加工温度が高いエンジニアリングプラスチック等へ配合した樹脂フィルム用途において、滑り性や耐脱落性等に優れたアンチブロッキング材として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品包装用及び工業用(光学用、磁気記録用)等の合成樹脂フィルム機能を発現するために、シリカや、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無機粒子や、ポリスチレンやポリアクリレート等の有機粒子を用いてフィルム同士の密着を防止する目的で、アンチブロッキング材が広く使われている。
例えば、特許文献1では、水酸化カルシウムと炭酸ガスとの湿式反応で得た特定粒度の合成炭酸カルシウムをエチレングリコール(EG)と懸濁させ、湿式粉砕機で特定粒度になるよう微分散化して得た炭酸カルシウムのグリコール系分散体は、テレフタル酸やジメチルテレフタル酸との重合及び製膜で調整したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとされ、優れたアンチブロッキング性能を得ている。
また、特許文献2では、水溶性カルシウムと水溶性炭酸塩との水溶液系での炭酸化反応や、メタノールと水との混合溶媒中で生石灰を消化(水酸化カルシウム化)させた系での炭酸ガス反応において、均一なバテライト型炭酸カルシウムや、カルサイト型炭酸カルシウムを調整して、優れたアンチブロッキング性能を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64-4240号公報
【特許文献2】特開平5-117443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、合成樹脂フィルム表面の平滑化は目覚ましく、例えば積層セラミックコンデンサーにおけるセラミックシート成型用樹脂フィルムは、小型・高容量化のために、セラミックシート層の厚さをより薄膜化することが要望されている。セラミックシート層の厚みは、従来の7~10μm程度から、現在では3~5μm程度まで薄くなってきており、さらには1~2μm程度の厚みのものや1μm未満の厚みにまで、セラミックシートの薄膜化が進んできている。
そのため、用いるアンチブロッキング材も、粒子の均一性や分散性の向上が求められるのはもちろん、樹脂フィルム中でボイド発生による粒子の脱落やアンチブロッキング性の低下が起こらないよう、従来以上に樹脂フィルムとアンチブロッキング材の密着性(耐脱落性)を向上させる必要があり、ボイドの発生要因の一つである熱安定性が高い粒子が求められている。
本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意検討した結果、特定のBET比表面積、特定の粒度特性及び特定の熱減量に調整した熱安定性の高い炭酸カルシウム填料は、樹脂フィルムの平滑性に有効なアンチブロッキング性を発揮できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、表面に表面処理剤からなる被覆層が形成されている炭酸カルシウム粒子からなり、下記の式(a)~(e)を満足することを特徴とする樹脂用炭酸カルシウム填料である。
(a)1.0≦Sw≦12.0(m/g)
(b)0.1≦Dx≦5.0(μm)
(c)0.1≦Dy≦5.0(μm)
(d)0.8≦Dy/Dx≦3.5
(e)0.1≦Tw≦0.8(重量%)
但し、
Sw:BET比表面積測定装置にて測定したBET比表面積(m/g)、
Dx:算出式=6/(2.7・Sw)で表されるBET比表面積Swから算出される1次粒子直径(μm)、
Dy:レーザー回折式粒度分布測定装置にて実測した体積粒度分布において、小さな粒子側から累積した50%直径(μm)、
Tw:示差熱天秤装置にて測定した100~300℃の熱減量(重量%)。
本発明の他の特徴は、炭酸カルシウム粒子が、表面に表面処理剤からなる被覆層が形成されている炭酸カルシウム粒子を粉砕メディアの非存在下で粉砕したものである上記の樹脂用炭酸カルシウム填料である。
本発明の他の特徴は、表面処理剤が、アルカリ土類金属にキレート能を有する化合物及び/又は界面活性剤である上記の樹脂用炭酸カルシウム填料である。
本発明の他の特徴は、樹脂と、上記の樹脂用炭酸カルシウム填料とからなる樹脂組成物である。
本発明の他の特徴は、樹脂がフィルム系合成樹脂である上記の樹脂組成物である。
本発明の他の特徴は、フィルム系合成樹脂がポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリオレフィンから選ばれる上記の樹脂組成物である。
本発明の他の特徴は、樹脂用炭酸カルシウム填料が、アンチブロッキング材用である上記の樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂用炭酸カルシウム填料は、特定の比表面積、特定の粒度特性、特定の熱減量に調整した、粒子が均一で分散性及び熱安定性の高い炭酸カルシウム粒子からなり、加工温度が高い合成樹脂フィルム等に配合されても、樹脂フィルムの滑り性や親和性に優れており、粒子の脱落を抑制する効果が高いことから、特に、樹脂フィルムのアンチブロッキング材として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の樹脂用炭酸カルシウム填料(以下、単に炭酸カルシウム填料と記す)は、表面に表面処理剤からなる被覆層が形成されている炭酸カルシウム粒子からなり、下記の式(a)~(e)を満足することが必要である。
(a)1.0≦Sw≦12.0(m/g)
(b)0.1≦Dx≦5.0(μm)
(c)0.1≦Dy≦5.0(μm)
(d)0.8≦Dy/Dx≦3.5
(e)0.1≦Tw≦0.8(重量%)
但し、Sw:BET比表面積測定装置にて測定したBET比表面積(m/g)、
Dx:算出式=6/(2.7・Sw)で表されるBET比表面積Swから算出される1次粒子直径(μm)、
Dy:レーザー回折式粒度分布測定装置にて実測した体積粒度分布において、小さな粒子側から累積した50%直径(μm)、
Tw:示差熱天秤装置にて測定した100~300℃の熱減量(重量%)。
【0008】
本発明の(a)式は、炭酸カルシウム填料の個々の大きさをBET比表面積(Sw)として表しており、1.0~12.0m/gであることが必要である。一般的に樹脂用アンチブロッキング材で使用される炭酸カルシウムの場合、粒子径は比較的小さく、より分散性の高い粒子が使われるため、BET比表面積も高くなりがちである。しかしながら、BET比表面積値が高すぎると、凝集の原因になるため、1.0~12.0m/gの範囲が適当である。Swが12.0m/gを超えると、炭酸カルシウム一次粒子が小さく凝集しやすいという問題があり、また、樹脂フィルム用アンチブロッキング材として使用する際、適正のアンチブロッキング性を得るには、炭酸カルシウムを多量に添加する必要が生じ、炭酸カルシウム中に含有する揮発成分が樹脂を劣化させる等の問題がある。一方、Swが1.0m/g未満の場合、一次粒子が大き過ぎるため、粗大粒子や樹脂フィルムから粒子が脱落したり、適正なアンチブロッキング性が得られない問題がある。従って、より好ましくは1.5~10.0m/g、さらに好ましく2.0~8.0m/gである。
【0009】
なお、BET比表面積測定装置としてはMountech社製Macsorbを用い、下記の方法で測定した。<BET比表面積(Sw)の測定方法>炭酸カルシウム填料0.2~0.3gを測定装置にセットし、前処理として窒素とヘリウムの混合ガス雰囲気下で200℃で5分間の加熱処理を行った後、液体窒素の環境下で低温低湿物理吸着を行い、比表面積を測定した。
【0010】
本発明の(b)式は、Kozeny-Carmanの算出式=6/真比重・Swで表される炭酸カルシウムの真比重2.7と炭酸カルシウムのBET比表面積(Sw)から理論的に求められる球体換算の1次粒子直径(Dx)を表したもので、Dxは0.1~5.0μmであることが必要である。一般的に樹脂用アンチブロッキング材で使用される炭酸カルシウムの填料の場合、Dxが0.1μm未満の場合、1次粒子間の凝集が強固であるため粒子間の凝集力が強く、分散性の面で不適当である。一方、5.0μmを超えると、前記したように、粗大粒子やフィルムから粒子が脱落する問題があり、適正なアンチブロッキング性が得られない。従って、好ましくは0.2~4.0μm、さらに好ましくは0.3~3.0μmである。
【0011】
本発明の(c)式は、レーザー回折式粒度分布測定装置にて実測した体積粒度分布において、小さな粒子側から累積した50%直径(Dy)を実測したもので、Dyは0.1~5.0μmであることが必要である。Dyが0.1μm未満の場合、1次粒子間の凝集力が強固であるため、アンチブロッキング材には不適当である。一方、5.0μmを超えると、粗大粒子や樹脂フィルムから粒子が脱落する問題があり、適正なアンチブロッキング性が得られない問題がある。従って、好ましくは0.2~4.0μm、さらに好ましくは0.3~3.0μmである。上記のDx、Dyで表される粒子は、0.1~5.0μmの範囲内であれば、粒子径の異なる粒子を2種以上組み合わせてよい。なお、レーザー回折式粒度分布測定装置としては日機装社製マイクロトラックMT-3300EXIIを用い、50%直径は下記方法で測定した。
<50%直径(Dy)の測定方法>
媒体としてメタノールを用い、前処理としてビーカー(100ml)に炭酸カルシウム填料0.1~0.3gとメタノール溶媒50mlを加え懸濁させ、チップ式超音波分散機(US-300T;日本精機製作所製)を使用し、300μA-1分間の一定条件で予備分散した後に測定した。
本発明の(d)式は、前記したDy(実測径)をDx(理論径)で除したもので、Dy/Dxは0.8~3.5の範囲である必要がある。一般的に樹脂用アンチブロッキング材で使用される炭酸カルシウムの場合、Dyの実測径とDxの理論径が近い値になることが、樹脂フィルム中での分散性に影響しやすい。Dy/Dxが0.8未満の場合、実測径が理論径より小さいことになるため、そのような粒子性状は凝集粒子の集合体を意味し、アンチブロッキング材には不適当である。一方、3.5を超えると、粒子の均一性に問題があり、アンチブロッキング材には不適当である。従って、より好ましくは0.8~3.0、さらに好ましくは0.8~2.5である。
【0012】
本発明の(e)式は、示差熱天秤装置にて測定した100~300℃の熱減量(Tw)で、Twは0.1~0.8重量%である必要がある。一般的に樹脂用アンチブロッキング材で使用される炭酸カルシウムの場合は、熱減量があまりに高いと、炭酸カルシウムと樹脂とを混練する際や、混練物をフィルムに製膜する際に、炭酸カルシウムの水分等の揮発物と樹脂が反応して黄変劣化や、空孔ボイド形成により粒子自体が脱落する問題がある。従って、Twが0.8重量%を超えると、樹脂との混練や製膜において揮発物が樹脂を攻撃して樹脂劣化や製膜時のガスマークを誘発する問題がある。一方、Twが0.1重量%未満の場合、物性上は特に問題はないが、炭酸カルシウムの結晶度を引き上げるのに多大な生産負荷が必要となるため、より好ましくは0.1~0.6重量%、さらに好ましくは0.1~0.5重量%である。
【0013】
なお、示差熱天秤装置としては島津製作所製DTG-60Aを用い、下記の方法で測定した。
<熱減量(Tw)の測定方法>
炭酸カルシウム填料30mgを直径5mmの白金パンに秤量し、示差熱天秤装置にセットし、30℃/分の昇温速度で昇温し100~300℃の熱減量を測定した。
【0014】
本発明で用いる炭酸カルシウムは、炭酸カルシウムの分散性や異物の観点から、微粉粒子や不純物を多く含有している天然の白色糖晶質石灰石(重質炭酸カルシウム)を粉砕法で調整したものではなく、天然の灰色緻密質石灰石を焼成する合成法で調整したものが好ましい。合成法で調整した合成品(軽質・コロイド炭酸カルシウム)は、粒子を均一に制御でき、比較的粗大粒子の元となる塩酸不溶物である鉱石を取り除くことができるためである。また、合成品の結晶形態は、水系や熱力学的に最も不安定なバテライト結晶、準安定なアラゴナイト結晶、安定なカルサイト結晶の3結晶が例示できるが、カルサイト結晶が熱安定性等の面で好ましい。
【0015】
炭酸カルシウム粒子の調整方法は、天然の炭酸カルシウムを粉砕分級するか、炭酸カルシウムを合成して加工するか、どちらでも良い。炭酸カルシウムの合成法は、一般的に石灰石を焼成して得た生石灰に水を加えて得た石灰乳と、焼成時に排出される炭酸ガスを導通して反応させる炭酸ガス法であり、炭酸ガス法で反応した炭酸カルシウム水スラリーを、オストワルド熟成方法等で粒子を所望のBET比表面積や粒子径に調整することができる。本発明の目的用途においては、粒子の均一性や分散性が重要であることから、天然の炭酸カルシウムを粉砕分級するよりは、合成法で粒子径を所望の範囲に微調整する手法の方が好ましいと言える。
【0016】
本発明の炭酸カルシウム填料は、粉体の分散性、耐アルカリ性、樹脂との相溶性の改善や、炭酸カルシウム填料の特性を向上させる目的で、各種表面処理剤で表面処理(被覆)することができる。
表面処理剤は特に限定されないが、炭酸カルシウム填料の分散性を改善する目的とする、アルカリ土類金属にキレート能を有する化合物(A)(以下、キレート化合物(A)と記す場合がある)や、耐アルカリ性の改善や樹脂との安定性や相溶性の改善を目的とする界面活性剤(B)のどちらか一方、あるいは両方が挙げられる。
【0017】
キレート化合物(A)としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸やニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸等に代表されるアミノカルボン酸系キレート剤、ヒドロキシエチリデン二亜リン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸等の有機リン系、ポリ塩化アルミ等のアルミニウム化合物からなる水処理剤、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリクロトン酸等で代表される多価カルボン酸やその塩類や共重合体、あるいは、ヘキサメタリン酸やピロリン酸等の縮合リン酸等のポリリン酸類に代表される無機リン系やその塩類等が例示できる。これらは、単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0018】
上記キレート化合物(A)の中では、本発明の目的用途である合成樹脂用アンチブロッキング材としては、樹脂との親和性や分散性の観点からは、縮合リン酸系、及び多価カルボン酸系が特に好ましく、中でもポリアクリル酸塩系が最適である。
また、上記キレート化合物(A)の使用量は、炭酸カルシウムの比表面積や用いる樹脂やその配合量に応じて変わるので一概には規定し難いが、通常、炭酸カルシウムのBET比表面積Sw/10を基準に0.03~3重量%が好ましい。使用量が0.03重量%未満では充分な分散効果が得られ難く、一方、3重量%を越えて添加しても効果の更なる向上が認められ難い。従って、より好ましくは0.05~2.5重量%、さらに好ましくは0.1~2.0重量%である。
【0019】
本発明で使用できる界面活性剤(B)としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、樹脂酸やそれらの塩又はエステル、リン酸エステル、アルコール系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系やアミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルフォン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩、カップリング剤やオイル等が例示され、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0020】
飽和脂肪酸としては、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられ、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、脂環族カルボン酸としては、シクロペンタン環やシクロヘキサン環の末端にカルボキシル基を持つナフテン酸等が挙げられ、樹脂酸としてアビエチン酸、ピマル酸、ネオアビエチン酸等が挙げられる。
【0021】
リン酸エステルとしては、官能基がトリメチル、トリエチル、トリブチル、トリフェニル等で代表される正リン酸エステルや、官能基がメチル、エチル、ブチル、エチルヘキシル、イソデシル等で代表される酸性リン酸エステルや、フォスファイト系亜リン酸エステル等が挙げられる。
【0022】
アルコール系界面活性剤としては、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられ、ソルビタン脂肪酸エステル類としては、ソルビタンモノラウレートやポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等が挙げられ、アミド系やアミン系界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられ、ベタイン系としては、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等が挙げられる。
【0023】
アミンオキサイドとしては、アルキルアミンオキサイド等が挙げられ、アルキルアミン塩としては、ステアリルアミンアセテート等が挙げられ、第四級アンモニウム塩としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドや第四級アンモニウムサルフェート等が挙げられる。
【0024】
カップリング剤やオイルとしては、ビニルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等で代表されるシランカップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートで代表されるチタネートカップリング剤、メチルハイドロジェンで代表されるシリコーン系オイル等が挙げられる。
【0025】
上記の各種酸の塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられ、具体的にはラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の飽和脂肪酸塩、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等の不飽和脂肪酸塩、ナフテン酸鉛、シクロヘキシル酪酸鉛等の脂環族カルボン酸塩、アビエチン酸カリウムやナトリウムが挙げられる。
【0026】
また、上記の各種酸のエステルとしては、例えば、カプロン酸エチル、カプロン酸ビニル、アジピン酸ジイソプロピル、カプリル酸エチル、カプリン酸アリル、カプリン酸エチル、カプリン酸ビニル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、イソオクタン酸セチル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸ラウリル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸イソセチル、ベヘニン酸メチル、ベヘニン酸ベヘニル等の飽和脂肪酸エステル、オレイン酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オリーブオレイン酸エチル、エルカ酸メチル等の不飽和脂肪酸エステルが挙げられ、他に長鎖脂肪酸高級アルコールエステル、ネオペンチルポリオール(長鎖・中鎖を含む)脂肪酸系エステルおよび部分エステル化合物、ジペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステル、コンプレックス中鎖脂肪酸エステル、12-ステアロイルステアリン酸イソセチル、12-ステアロイルステアリン酸イソステアリル、12-ステアロイルステアリン酸ステアリル、牛脂脂肪酸オクチルエステル、多価アルコール脂肪酸アルキルグリセリルエーテルの脂肪酸エステル等の耐熱性特殊脂肪酸エステル、安息香酸エステル系に代表される芳香族エステルが挙げられる。
【0027】
これらの界面活性剤(B)については、合成樹脂用アンチブロッキング材用の樹脂との安定性や相溶性の改善の面からは、特にリン系界面活性剤が炭酸カルシウムとの相性が良く、リン含有量が比較的多く効率の良いトリメチルホスフェートやトリエチルホスフェートや、メチルアシッドホスフェートやエチルアシッドホスフェートが好ましい。
【0028】
界面活性剤(B)の使用量は、炭酸カルシウムの比表面積や用いる樹脂やその配合量に応じて変わるので一概には規定し難いが、通常、炭酸カルシウムのBET比表面積Sw/10を基準に0.03~10重量%が好ましい。使用量が0.03重量%未満では充分な分散効果が得られ難く、一方、10重量%を越えて添加しても効果の更なる向上が認められ難い。従って、より好ましくは0.05~5重量%、さらに好ましくは0.1~4重量%である。
【0029】
次に、表面処理方法としては、キレート化合物(A)や界面活性剤(B)を用いた表面処理方法において、例えばスーパーミキサーやヘンシェルミキサー等のミキサーを用い、粉体に直接表面処理剤を混合し、必要に応じて加熱して表面処理する一般に乾式処理と呼ばれる方法でもよく、また例えば、水または湯に溶解し、攪拌している炭酸カルシウムの水スラリーに添加して表面処理後、脱水、乾燥する一般に湿式処理と呼ばれる方法でもよく、その両者の複合でもよいが、炭酸カルシウム粒子表面への処理の度合いと経済的な観点から、主として湿式処理が好ましい。
【0030】
本発明の炭酸カルシウム填料は、樹脂との分散性をさらに改善するため、各種粉砕機を使用することができる。本発明で使用することができる粉砕機は特に限定するものでないが、ガラスやジルコニア、酸化チタン、アルミナ等を利用して粉砕メディアを利用した粉砕機や、粉砕メディアを利用するのではなく、気流もしくは液流を利用したメディアレス粉砕機などが例示できる。また前記メディア式粉砕機は、例えばコンタミネーションレベルで混在する数μm以上の粗大な粒子を破壊させる際に、水や有機溶媒に懸濁させて湿式系にて粉砕するのに有用である。一方、メディアレス粉砕機はコンタミネーションの影響が少なく、粒子破壊を抑制し易くマイルド分散に適している。
従って、本発明の目的用途である薄膜フィルム用アンチブロッキング材として使用する際は、メディア式粉砕機よりはメディアレス粉砕機の方がコンタミネーションの影響が少なく、粒子の均一分散の点で好ましい。
【0031】
本発明の樹脂用炭酸カルシウム填料は、最終製品の荷姿により、湿式系か乾式系かを選択することができる。即ち、最終製品が粉末系の場合は乾式系が、水やエチレングリコールのようなスラリー系の場合は、湿式系を使用することができる。特に最終製品が粉末系の場合は、炭酸カルシウム填料の荷姿や沈降を気にする必要がなく、汎用性の面で好ましい。
【0032】
次に、本発明の樹脂組成物について説明をする。
本発明で使用される樹脂は、特に限定するものではないが、目的用途がアンチブロッキング材等の場合、加工温度の低い各種樹脂でもよいが、加工温度が比較的高い樹脂が有用である。
例えば、アクリル樹脂(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリブタジエン(PBD)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等で代表される汎用樹脂や、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂(FR)、液晶ポリマー(LCP)等のエンジニアリングプラスチック、フェノール、尿素、メラミン、アルキッド、不飽和ポリエステル、エポキシ、ジアリルフタレート、ポリウレタン、変性シリコーン、ポリサルファイド、反応アクリル、ポリイソブチレン、シリル化ウレタン、変性エポキシ等の熱硬化樹脂が例示できる。更に、ポリ乳酸樹脂、ポリブチレンサクシネート、ポリアミド11、ポリヒドロキシ酪酸等の生分解性プラスチックやバイオマスプラスチックも使用可能である。
これらの中でも、PET、PBT、PEN、PC、LCP等のエステル結合を有するポリエステル系樹脂は、シート・フィルム加工製品として汎用性が高く、特にPETは本発明の目的用途に好適である。
【0033】
本発明の樹脂用炭酸カルシウム填料と樹脂との配合割合は、樹脂の種類や用途、所望する物性やコストによって大きく異なり、それらに応じて適宜決定すればよいが、例えばアンチブロッキング材を目的とした場合、通常、樹脂100重量部に対して0.05~30重量部であり、より好ましくは0.1~15重量部、さらに好ましくは0.3~10重量部である。炭酸カルシウム填料が30重量部を超えると、樹脂との混練性の低下や樹脂劣化により色相(白色度)の低下が起こり易く、0.05重量部未満の場合、十分なアンチブロッキング性が得られない場合がある。
【0034】
また、本発明の樹脂組成物の効能を阻害しない範囲で、必要に応じて、樹脂組成物の特性を向上させるため、脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ソルビタン脂肪酸エステル等の滑剤、可塑剤及び安定剤、酸化防止剤等を添加してもよい。さらには、一般にフィルム用樹脂組成物に用いられる添加物、例えば滑剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、スリップ剤、着色剤等を配合してもよい。
【0035】
本発明の炭酸カルシウム填料と各種添加剤を樹脂に配合する場合は、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー等の公知の混合機を用いて混合される。樹脂組成物は混合機で混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダーミキサー、バンバリーミキサー等で加熱混練し、一旦、マスターバッチと称される、本発明の炭酸カルシウム填料を始めとする各種添加剤を含有するペレットを作製し、Tダイ押出、あるいはインフレーション成形等の公知の成形機を用いて、溶融、製膜する。その後、必要に応じて一軸または二軸に延伸して均一な微孔径を有するフィルム製品としてもよい。
さらに、必要に応じて、上記工程中のTダイ押出までの工程を複数組み、押出時にフィルムを多層構造にしたり、あるいは、延伸時に貼り合わせて再度延伸するような工程を導入して多層フィルムにしたり、常温より高温でかつ樹脂の溶融温度より低い温度条件でフィルム養生することも可能である。
また、上記フィルムに印刷適性を付与する目的で、フィルム表面にプラズマ放電等の表面処理を施しインク受理層をコートさせたり、フィルムの少なくとも片面に保護層として、芳香族パラ系アラミド、芳香族メタ系アラミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂などの耐熱樹脂の有機溶媒液を塗工液として塗布しても差し支えない。
【実施例0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。
【0037】
実施例1
比重1.070の石灰乳3mにCO濃度25%の炉ガスを12m/分の流速で炭酸化反応を行い、炭酸カルシウムを合成した。該合成炭酸カルシウム水スラリーをオストワルド熟成によりBET比表面積9m/gまで粒子成長を行った後、フィルタープレスで固形分60重量%に脱水後、脱水ケーキに対して表面処理剤としてポリアクリル酸ナトリウムとリン酸トリエチル(TEP)を炭酸カルシウム固形分に対し純分として各々0.9重量%添加し、固形分50重量%以上の高濃度水スラリーを調整した。
次に、該水スラリーを500ml/minの流量で湿式粉砕機(スギノマシン社製スターバーストラボ型;粉砕圧力条件245MPa)で粉砕を行った後、スプレー乾燥機で粉末化して炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0038】
実施例2
実施例1のオストワルド熟成でBET比表面積を5m/gまで熟成を行い、表面処理剤の添加量を各々0.5重量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0039】
実施例3
実施例2の熟成品を、さらに比重1.070の石灰乳を0.1m/時間の流量を滴下しながら、同時にCO濃度25%の炉ガスを同通し、系のpH10.0±0.5の撹拌条件下炭酸化反応を行った。石灰乳の滴下総量が2.5mであった。次に、表面処理剤の添加量を各々0.3重量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0040】
実施例4
実施例3で石灰乳滴下の総量を4mに変更し、表面処理剤の添加量を各々0.2重量%に変更した以外は、実施例3と同様の方法で炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0041】
実施例5
実施例3の石灰乳滴下の総量を10mに変更し、表面処理剤の添加量を各々0.1重量%に変更した以外は、実施例3と同様の方法で炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0042】
実施例6
実施例2で、固形分50重量%以上の高濃度水スラリーを調整した後、スプレー乾燥で粉末化してから、乾式粉砕機(NETZSCH社製CGS50型;粉砕圧力0.3MPa)で粉砕を行った以外は、実施例2と同様の方法で炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0043】
実施例7
実施例2で調整した固形分50重量%以上の高濃度水スラリーを、粉砕機を通すことなくスプレー乾燥にて粉末化し炭酸カルシウム填料を調整した。次に該填料50kgと、エチレングリコール50kgを混合スラリー化させ、500ml/minの流量で湿式粉砕機(スギノマシン社製スターバーストラボ型;粉砕条件245MPa)で粉砕を行い、炭酸カルシウムのエチレングリコール分散体を得た。表1に該填料の特性を示す。
【0044】
実施例8
実施例6の表面処理剤として、ポリアクリル酸ナトリウムをヘキサメタリン酸ナトリウムに変更し、リン酸トリエチル(TEP)をラウリン酸に変更した以外は、実施例6と同様の方法で炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0045】
実施例9
実施例6の表面処理剤として、リン酸トリエチル(TEP)をN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)に変更した以外は、実施例6と同様の方法で炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0046】
実施例10
実施例6の表面処理剤として、リン酸トリエチル(TEP)をリン酸トリメチル(TMP)に変更した以外は、実施例6と同様の方法で炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0047】
実施例11
実施例6の表面処理剤をポリアクリル酸ナトリウムのみに変更した以外は、実施例6と同様の方法で炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0048】
実施例12
実施例9の表面処理剤をリン酸トリメチル(TMP)のみに変更した以外は、実施例9と同様の方法で炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0049】
実施例13
実施例6の表面処理剤を添加しなかった以外は、実施例6と同様の方法で炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0050】
比較例1
特公平1-4240号公報の実施例3と同様の手法で、石灰乳と炭酸ガスとの炭酸化反応及を行い滴下化合により、BET比表面積4.86m/gの炭酸カルシウム生地スラリーを作製した。
該合成炭酸カルシウム水スラリーを、フィルタープレスを用いて脱水し、得られるプレスケーキ(固形分60重量%)を温調付処理槽に投入し、炭酸カルシウム固形分に対し表面処理剤として純分として1.0重量%のポリアクリル酸ナトリウムを添加しながら強力に撹拌し、高濃度水スラリーを調整した。
該水スラリーをスプレー乾燥機で粉末化し炭酸カルシウム填料を調整した。次に、該填料50kgとエチレングリコール50kgを投入撹拌し、湿式粉砕原料のエチレングリコールスラリーを調整した。
次に、該エチレングリコールスラリーを250ml/minの流量で湿式粉砕機(WAB社製ダイノーミルPilot型;粉砕条件メディア0.6~0.9mmφのガラスビーズ、メディア充填率80%、回転数1500rpm)で粉砕を行い、エチレングリコール分散体を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0051】
比較例2
特開平7-196316号公報の実施例8の如く、1.0mol/Lの濃度の炭酸ナトリウム溶液、0.6mol/Lの濃度の塩化カルシウム溶液、及び0.03mol/Lの水酸化ナトリウム溶液(反応緩衝剤)を各々100L調整した。該水酸化ナトリウム溶液と炭酸ナトリウム溶液を混合し混合液を調整し、該混合液と塩化ナトリウム溶液の液温を共に17℃に調整した。次に塩化ナトリウム溶液100Lを、水酸化ナトリウム溶液と炭酸ナトリウム溶液の混合液200Lに滴下し、撹拌条件下で炭酸化反応を行い、滴下開始270秒後に滴下供給を終了した。滴下終了180秒後、反応系内に存在する炭酸カルシウム理論生成量の0.3重量%相当量のヘキサメタ燐酸ナトリウムを添加し、さらに5分間撹拌した。以上のようにして調整された炭酸カルシウムの水スラリーを、遠心脱水機を用いて蒸留水を用いて脱水濾液が電気電導度30μS/cmになるまで洗浄した。脱水ケーキ(固形分60重量%)を、表面処理剤としてポリアクリル酸ナトリウムとリン酸トリエチル(TEP)を炭酸カルシウム固形分に対し純分として1.0重量%添加し、固形分50重量%以上の高濃度水スラリーを調整後、スプレー乾燥機で乾燥粉末化させ炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0052】
比較例3
特開平5-117443号公報の実施例7の如く、生石灰濃度3.0重量%のメタノールと水の混合スラリーを42℃に調整後、純度99%以上の炭酸ガスを0.082mol/分の導通速度で導電率100μS/cmに達するまで炭酸化反応を行った。
得られた炭酸カルシウムメタノールと水の混合スラリーに、表面処理を添加することなく、エチレングリコールを所定量加えた後、ロータリーエバポレーターでフラッシングによるメタノールと水の除去を行い、20重量%濃度のエチレングリコール分散体を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0053】
比較例4
粉砕分級された重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製;商品名カルテックス7)粉末に、表面処理剤としてポリアクリル酸ナトリウムを炭酸カルシウム固形分に対し純分として1.0重量%と水を加えながら固形分50重量%濃度の炭酸カルシウムスラリーを調整し、スプレー乾燥機で乾燥粉末化し炭酸カルシウム填料を調整した。表1に該填料の特性を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
応用例1(ポリエステル樹脂フィルム)
応用実施例1~12、応用比較例1~4
実施例7、比較例1と3のエチレングリコール分散体を用い、下記の配合に基づき、ポリエステル樹脂フィルムを調整した。
得られたポリエステル樹脂フィルムの評価結果を表2に示す。
(配合例1)
填料含有ポリエステルマスターペレットA及び填料非含有ポリエステルホモペレットBの作製
実施例7、比較例1と3のエチレングリコール分散体を用い、下記の手順に基づき、マスターペレットAを調整した。
ジメチルテレフタレート(DMT)に、1モルのDMTに対し1.9モルのエチレングリコールおよび酢酸マグネシウム・4水塩をDMT100重量部に対し0.05重量部、リン酸を0.015重量部加え加熱エステル交換後、実施例7、比較例1と3のエチレングリコール分散体をDMTに対し炭酸カルシウム填料として0.5重量部を添加し、引き続き三酸化アンチモンをDMTに対し0.025重量部を加え、加熱昇温し真空下で重縮合反応を行い、固有粘度0.62dl/gの填料含有ポリエステルマスターペレットAを得た。
次に、エチレングリコール分散体を含有させない以外は、上記と全く同様の方法で、固有粘度0.62dl/gの填料非含有ポリエステルホモペレットBを得た。
【0056】
(配合例2)
填料含有ポリエステルマスターペレットCの作製
実施例1~6、9~13、比較例2と4の炭酸カルシウム填料を用い、下記の手順に基づき、填料含有ポリエステルマスターペレットCを調整した。
実施例1~6、9~13及び比較例2と4の炭酸カルシウム填料0.5重量部と前記した固有粘度0.62dl/gの上記填料非含有ポリエステルホモペレットBを99.5重量部とをスーパーミキサーで混合した後、30mm径の二軸のスクリューを有するベント押出機に供給し、温度290℃で溶融した。この溶融物を金属繊維からなる95%カット孔径10μmのフィルタに通して瀘過した後、2mm孔径ダイから押し出し、ガット状の樹脂組成物を得た。さらに該組成物を約3mm長に裁断し、炭酸カルシウム填料を0.5重量%含有する固有粘度0.62dl/gの填料含有ポリエステルマスターペレットCを得た。
【0057】
(製膜例)
応用実施例7及び応用比較例1、3については、前記した填料含有ポリエステルマスターペレットAと填料非含有ポリエステルホモペレットBを、また、応用実施例1~6、8~12及び応用比較例2、4については、前記した填料含有ポリエステルマスターペレットCと填料非含有ポリエステルホモペレットBを、それぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、275℃で溶融押出して高精度濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、ポリエステルA層/ポリエステルB層/ポリエステルA層、または、ポリエステルC層/ポリエステルB層/ポリエステルC層からなる3層積層体とした。その後、285℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。
この未延伸積層フィルムを縦方向に3.8倍延伸し、続いてステンタにて110℃の熱風下で横方向に3.9倍延伸し、該ステンタにて230℃で熱処理を行い、厚み23μm(ポリエステルA層またはC層の厚みが1.5μm、ポリエステルB層の厚みが20μm)の二軸配向ポリエステル樹脂フィルム(3層)を得た。
下記表に示されるように、実施例のポリエステル樹脂フィルムは表面が高平滑性で欠陥が少なく、スリット性にも優れることから薄膜セラミックシート等の離型フィルムとして有用である。
【0058】
ポリエステル樹脂フィルムの評価
(1)アンチブロッキング性
ポリエステル樹脂フィルムを重ね、100kg/cmの荷重をかけた状態で100℃×1日保持した。
JIS-K6732に準じ、引張強度測定器(東洋精機社製ストログラフVE1D)を用いて引張強度200mN/分の条件で剥離強度を求め、以下の基準で評価した。
○:剥離強度は200mN/10cm幅未満である。
△:剥離強度は200mN/10cm幅以上で400mN/10cm幅未満である。×:剥離強度は400mN/10cm幅以上である。
【0059】
(2)表面粗度(SRa、SRz)
ポリエステル樹脂フィルムの平滑性を確認するのに、三次元表面粗さ測定器(小坂研究所製ET-359K)を用いて測定し、得られる表面のプロファイル曲線より、JIS-BO601に準じ、算術平均粗さSRa値、十点平均面粗さSRz値を求め、以下の基準で評価した。
○:SRa=50nm未満、SRz=500nm未満である。
△:SRa=50nm以上100nm未満、SRz=500nm未満である。
×:SRa=100nm以上、SRz=500nm以上である。
【0060】
(3)粗大突起数
10cm四方の大きさのポリエステル樹脂フィルムを測定する面同士を2枚重ね合わせて、印可電圧をかけて静電気力で密着し、フィルム表面の粗大突起により発生する干渉縞から高さを測定する。干渉縞が1重環で0.270μmであり、2重環で0.540μm及び3重環で0.810μm以上の粗大突起数(個/cm)を測定して、以下の基準で評価した。なお、光源は、ハロゲンランプに564nmのバンドパルスフィルターをかけたものを用いた。
○:粗大突起は5(個/cm)未満である。
△:粗大突起は5又は6(個/cm)である。
×:粗大突起は7(個/cm)以上である。
【0061】
(4)セラミックシートのピンホール
溶媒(トルエン)、セラミック原料(BaTiO、堺化学社製)、結合剤(エチルセルロース)、可塑剤(フタル酸ジオクチル)などを混合し、ペースト状にした後、ボールミルで分散させ、セラミックスラリーを得た。次に、ポリエステル樹脂フィルムの表面にドクターブレード法にて、上記セラミック厚みが乾燥時1μmとなるようにコートし、100℃の雰囲気温度のオーブン中に5分間で乾燥し、セラミックシートを得た。このシート10cmの面積の範囲にシートの反対面から光をあて、ピンホールの発生状況を目視観察し、下記基準により評価した。
○:ピンホールが観察されない。
△:ピンホールが僅かに観察される。
×:ピンホールが多数観察される。
【0062】
【表2】
【0063】
表2の結果より、実施例1~7、9~13の炭酸カルシウム填料をアンチブロッキング材としてポリエステル樹脂フィルムに使用した場合、フィルムの平滑性や剥離性が高いことから、各種離型材用の剥離フィルム、電気絶縁フィルム等に有用である。
【0064】
応用例2(PPS樹脂フィルム)
応用実施例13~24、応用比較例5、6
実施例1~7、9~13、比較例2と4の炭酸カルシウム填料を用い、下記の配合に基づき、PPS樹脂フィルムを調整した。得られたPPS樹脂フィルムの評価結果を表3に示す。
(配合例)
填料含有PPSマスターペレットA及び填料非含有PPSホモペレットBの作製
実施例1~7、9~13、比較例2と4の炭酸カルシウム填料を、スーパーミキサーを用いてPPS樹脂ペレットに、炭酸カルシウム填料の含有量が0.5重量%となるよう混合した。得られた混合物を、30mm径の二軸のスクリューを有するベント押出機に供給し、温度320℃で溶融した。この溶融物を金属繊維からなる95%カット孔径10μmのフィルタに通して瀘過した後、2mm孔径ダイから押し出し、ガット状の樹脂組成物を得た。さらに該組成物を約3mm長に裁断し、炭酸カルシウム填料含有量0.5重量%の填料含有PPSマスターペレットAを得た。
上記した炭酸カルシウム填料を含有させない以外は、上記と同様の方法で填料非含有PPSホモペレットBを得た。
【0065】
次に、填料含有PPSマスターペレットA、填料非含有PPSホモペレットBをそれぞれ160℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、310℃で溶融押出して高精度濾過した後、矩形の3層用合流ブロックで合流積層し、PPSのA層/PPSのB層/PPSのA層からなる3層積層とした。その後、320℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。
この未延伸フィルムを縦方向に3.3倍延伸し、続いてステンタにて110℃の熱風下で横方向に3.6倍延伸し、該ステンタにて240℃で熱処理を行い、厚み23μm、PPSのA層の厚みが1.5μm、PPSのB層の厚みが20μmの二軸配向PPS樹脂フィルム(3層)を得た。
【0066】
(PPS樹脂フィルムの評価)
(1)アンチブロッキング性
PPS樹脂フィルムを重ね、100kg/cmの荷重をかけた状態で60℃×1日保持した。JIS-K6732に準じ、引張強度測定器(東洋精機社製ストログラフVE1D)を用いて引張強度200mN/分の条件で剥離強度を求め、以下の基準で評価した。
○:剥離強度は200mN/10cm幅未満である。
△:剥離強度は200mN/10cm幅以上400mN/10cm幅未満である。
×:剥離強度は400mN/10cm幅以上である。
【0067】
(2)表面粗度(SRa、SRz)
PPS樹脂フィルムの平滑性を確認するのに、三次元表面粗さ測定器(小坂研究所製ET-359K)を用いて測定し、得られる表面のプロファイル曲線より、JIS-BO601に準じ、算術平均粗さSRa値、十点平均面粗さSRz値を求め、以下の基準で評価した。
○:SRa=50nm未満、SRz=500nm未満である。
△:SRa=50nm以上100nm未満、SRz=500nm未満である。
×:SRa=100nm以上、SRz=500nm以上である。
【0068】
(3)粗大突起数
10cm四方の大きさのPPS樹脂フィルムを測定する面同士を2枚重ね合わせて、印可電圧をかけて静電気力で密着し、フィルム表面の粗大突起により発生する干渉縞から高さを測定して、干渉縞が1重環で0.270μmであり、2重環で0.540μm及び3重環で0.810μm以上の粗大突起数(個/cm)を測定して、以下の基準で評価した。
なお、光源は、ハロゲンランプに564nmのバンドパルスフィルターをかけたものを用いた。
○:粗大突起は5(個/cm)未満である。
△:粗大突起は5又は6(個/cm)である。
×:粗大突起は7(個/cm)以上である。
【0069】
(4)セラミックシートのピンホール
溶媒(トルエン)、セラミック原料(BaTiO、堺化学社製)、結合剤(エチルセルロース)、可塑剤(フタル酸ジオクチル)などを混合し、ペースト状にした後、ボールミルで分散させ、セラミックスラリーを得た。
次に、PPS樹脂フィルム表面にドクターブレード法にて、上記セラミック厚みが乾燥時1μmとなるようにコートし、100℃の雰囲気温度のオーブン中に5分間で乾燥し、セラミックシートを得た。このシート10cmの面積の範囲にシートの反対面から光をあて、ピンホールの発生状況を目視観察し、下記基準により評価した。
○:ピンホールが観察されない。
△:ピンホールが僅かに観察される。
×:ピンホールが多数観察される。
【0070】
【表3】
【0071】
表3の結果より、実施例1~7、9~13の炭酸カルシウム填料をアンチブロッキング材としてPPS樹脂フィルムに使用した場合、フィルムの平滑性や剥離性が高いことから、各種離型材用の剥離フィルム、電気絶縁フィルム等に有用である。
【0072】
応用例3(ポリプロピレン系樹脂フィルム)
応用実施例25~28、応用比較例7、8
実施例3~5、8、比較例2、4の炭酸カルシウム填料を用い、下記の配合に基づき、ポリプロピレン系樹脂フィルムを調整した。得られたポリプロピレン系樹脂フィルムの評価結果を表4に示す。
【0073】
内層用ポリプロピレン系マスターペレットA及び外層用ポリプロピレン系ホモペレットBの作製
実施例3~5、8、比較例2、4の炭酸カルシウム填料を、スーパーミキサーを用いてプロピレン-エチレンランダム共重合体と、エチレン・ヘキセン-1共重合体が60/40の重量比で配合したものに、炭酸カルシウム填料の含有量が0.5重量%となるよう混合した。得られた混合物を、30mm径の二軸のスクリューを有するベント押出機に供給し、温度170℃で溶融した。この溶融物を金属繊維からなる95%カット孔径10μmのフィルタに通して瀘過した後、2mm孔径ダイから押し出し、ガット状の樹脂組成物を得た。さらに該組成物を約3mm長に裁断し、炭酸カルシウム粒子含有量0.5重量%の填料含有内層用ポリプロピレン系マスターペレットAを得た。
また、上記した炭酸カルシウム填料を含有させないプロピレン-エチレンブロック共重合体からなる填料非含有外層用ポリプロピレン系ペレットをBを得た。
次に、填料含有内層用ポリプロピレン系マスターペレットA、填料非含有外層用ポリプロピレン系ペレットBをそれぞれ60℃で8時間減圧乾燥した後、別々の押出機に供給し、200℃で溶融押出して高精度濾過した後、矩形の2層用合流ブロックで合流積層し、ポリプロピレン系内層A/ポリプロピレン系外層Bからなる2層積層とした。
その後、200℃に保ったスリットダイを介し冷却ロール上に静電印可キャスト法を用いて表面温度25℃のキャスティングドラムに巻き付け冷却固化して未延伸積層フィルムを得た。
この未延伸フィルムを縦方向に5.0倍延伸し、続いてステンタにて110℃の熱風下で横方向に10倍延伸し、該ステンタにて140℃で熱処理を行い、厚み30μm(ポリプレピレン系内層Aの厚みが9μm、ポリプロピレン系外層Bの厚みが21μm)の二軸配向ポリプロピレン樹脂フィルム(2層)を得た。
【0074】
(ポリプロピレン系樹脂フィルムの評価)
(1)アンチブロッキング性
ポリプロピレン系樹脂フィルムを重ね50kg/cmの荷重をかけた状態で60日×1日保持した。JIS-K6732に準じ、引張強度測定器(東洋精機社製ストログラフVE1D)を用いて引張強度200mN/分の条件で剥離強度を求め、以下の基準で評価した。
○:剥離強度は200mN/10cm幅未満である。
△:剥離強度は200mN/10cm幅以上400mN/10cm幅未満である。
×:剥離強度は400mN/10cm幅以上である。
【0075】
(2)シールバーへの融着
ヒートシール強度測定のためのヒートシール時に、シールバーを観察してシールバーへの融着の有無を目視観察し、下記基準により評価した。
○:シールバーへの融着が観察されない。
△:シールバーへの融着が僅かに観察される。
×:シールバーへの融着が多数観察される。
【0076】
(3)ヒートシール部再シール性
ヒートシール強度測定のためのヒートシールと同様の方法でヒートシールを85℃で行った後、剥離するために2枚のフィルムの両端部を互いに反対方向へ引っ張り、次の基準で判定した。
○:フィルムを破損せずに剥離することができ、再度ヒートシールができる。
△:フィルムを破損せずに剥離することができ、再度ヒートシールができるが、シール跡が残る。
×:フィルムを剥離する際、破損しやすく、再度ヒートシールができない。
【0077】
【表4】
【0078】
表4の結果より、本願実施例3~5、8の炭酸カルシウム填料をアンチブロッキング材としてポリプロピレン系樹脂フィルムに使用した場合、フィルムの平滑性や剥離性が高いことから、各種包装材用のヒートシールフィルム等に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の樹脂用炭酸カルシウム填料は、高濃度配合される従来のシーラント、床材、接着剤用途はもちろん、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の汎用プラスチックや、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の加工温度が高いエンジニアリングプラスチックス等へ配合した樹脂フィルム用途において、平滑性、耐剥離性や耐脱落性等に優れたアンチブロッキング材として有用である。