(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103436
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】液体紙容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20220630BHJP
B65D 5/40 20060101ALI20220630BHJP
B65D 5/74 20060101ALI20220630BHJP
【FI】
B65D83/00 K
B65D5/40
B65D5/74 020Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083727
(22)【出願日】2022-05-23
(62)【分割の表示】P 2017235953の分割
【原出願日】2017-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 規行
(57)【要約】
【課題】浴室など、高湿度あるいは湯水が降り注ぐ環境下においても水の滲み込みによって外観を損なったり、内容物のくみ出しなどの機能を失うことのない、液体紙容器を提供することを提供すること。
【解決手段】天面板と底面板と複数の側面板とを備え、紙を基材として表面および裏面全体にプラスチックフィルム層を有する積層体からなる液体紙容器であって、前記複数の側面板が、側面折込板が重ねられた第1の側面板と、側面折込板を有しない第2の側面板とで構成されており、該紙容器本体は、基材とする紙のエッジウイックが0.5g/1000mm
2以下のものを用いた積層体で構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面板と底面板と複数の側面板とを備え、紙を基材として表面および裏面全体にプラスチックフィルム層を有する積層体からなる液体紙容器であって、
前記複数の側面板が、側面折込板が重ねられた第1の側面板と、側面折込板を有しない第2の側面板とで構成されており、
該紙容器本体は、基材とする紙のエッジウイックが0.5g/1000mm2以下のものを用いた積層体で構成されていることを特徴とする液体紙容器。
【請求項2】
前記積層体中にはガスバリア層が積層されて、紙容器本体を構成していることを特徴とする請求項1に記載の液体紙容器。
【請求項3】
前記基材とする紙の坪量は20g/m2~500g/m2であり、かつ、密度は0.6g/cm3~1.1g/cm3であることを特徴であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙容器に関するものである。特に紙容器に備えられた手押し式のポンプディスペンサにより内容液をくみ出すことが可能な、ポンプディスペンサ付き液体紙容器に関するものである。
【0002】
容器本体と、容器本体の上部に形成された貫通孔に挿入して取り付けられた、ポンプヘッドを押圧することにより、内容液をくみ出すことのできるポンプディスペンサを備えた包装容器が知られている。
【0003】
このような機構の包装容器としては、シャンプーやコンディショナー、また液体石鹸などのトイレタリー用品、あるいは台所用洗剤などにも用いられており、プラスチックボトルにポンプディスペンサを取り付けたものが商品化されて広く用いられている。
【0004】
最近では、環境問題などを背景としてプラスチックボトルに代えて、紙を基材とする紙製の容器を用いたものも見られるようになっている。たとえば特許文献1には、紙を基材としたシート材を用いて、箱型に形成された容器本体を有し、容器本体に取り付けられたポンプディスペンサを備えて、内溶液を定量づつ注ぎ出し可能な液体容器が開示されている。
【0005】
しかしながら紙基材を用いることの、問題点は紙基材が、水の滲み込み等によって軟化し、剛性を失い、この場合にはポンプディスペンサの固定が不十分になり、注ぎ出しに支障をきたしたり、しみこんだ水分がカビなどの発生を招くなどの不具合を招くことに繋がり、商品として致命的な欠陥となるおそれがある。
【0006】
水の滲み込みに関して、特許文献1には、紙基材の断面が底面に接しないよう、一定の配慮は見られるものの、ポンプディスペンサ付き液体紙容器が浴室で使用される場合には、環境自体が高湿度であり、時にはシャワーの湯水や浴槽からの湯水が頻繁にかかることは避けられず、十分な対策とはいえない状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであって、浴室など、高湿度あるいは湯水が降り注ぐ環境下においても水の滲み込みによって外観を損なったり、内容物のくみ出しなどの機能を失うことのない、液体紙容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
天面板と底面板と複数の側面板とを備え、紙を基材として表面および裏面全体にプラスチックフィルム層を有する積層体からなる液体紙容器であって、
前記複数の側面板が、側面折込板が重ねられた第1の側面板と、側面折込板を有しない第2の側面板とで構成されており、
該紙容器本体は、基材とする紙のエッジウイックが0.5g/1000mm2以下のものを用いた積層体で構成されていることを特徴とする液体紙容器である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、
前記積層体中にはガスバリア層が積層されて、紙容器本体を構成していることを特徴とする請求項1に記載の液体紙容器である。
また、請求項3に記載の発明は、
前記基材とする紙の坪量は20g/m2~500g/m2であり、かつ、密度は0.6g/cm3~1.1g/cm3であることを特徴であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体紙容器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、浴室など、高湿度あるいは湯水が降り注ぐ環境下においても水の滲み込みによって外観を損なったり、内容物のくみ出しなどの機能を失うことのない、液体紙容器を提供することが可能である。
【0012】
すなわち、基材の端部が露出しないように側面に側面折込板を含むこと、かつ、基材とする紙のエッジウイックが0.5g/1000mm2以下のものを用いた積層体で構成されていることによって、浴室など、高湿度あるいは湯水が降り注ぐ環境下においてもその機能を失うことのない、剛性のある液体紙容器の実現が可能になる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、浴室など、高湿度あるいは湯水が降り注ぐ環境下においても水の滲み込みによって外観を損なったり、内容物のくみ出しなどの機能を失うことのない、液体紙容器を提供することが可能であることに加えて、製品の段階、あるいは使用の段階において、内容物の外部環境による変化、変質を防止することが可能になり、内容物の長期保存性を向上させることに効果的である。
請求項3に記載の発明によれば、内部と外部の気圧差がなくても、内用液の残存量によらず形状を維持できる程度の剛性を有した、液体紙容器の実現が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器の一実施形態を説明するための、斜視模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器の一実施形態に関して、ポンプディスペンサ部分を説明するための、斜視模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器の一実施形態を説明するための、
図1に示すA-B線で垂直に切断した、断面模式図である。
【
図4】
図4は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器の、他の実施形態を説明するための、斜視模式図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器を実現するためのブランクスを説明するための、平面展開模式図である。
【
図6】
図6は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器を構成する、積層体の一実施形態においてその層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【
図7】
図7は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器の実施例、および比較例を説明するための斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって限定されるものである。
【0016】
図1は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器の一実施形態を説明するための、斜視模式図である。
【0017】
本発明は、紙を基材として、表面および裏面全体にプラスチックフィルム層を有する積層体からなる紙容器本体(20)、およびプラスチック部材からなるポンプディスペンサ(30)から構成される、ポンプディスペンサ付き液体紙容器(1)である。
【0018】
ここで、プラスチックフィルム層は、予め成膜されたプラスチックフィルムであってもよく、あるいは押出機などで膜状に押し出された溶融状態のプラスチックフィルムで積層体の表面、または裏面、またはその両面に層を形成するのでもよい。
【0019】
紙容器本体(20)は、内部と外部との気圧差がなくても、内容液の残存量によらず形状を維持できる程度の剛性を有している。
【0020】
使用できる紙質は、剛性に配慮すれば限定を加えるものではないが、たとえば坪量200g/m2~500g/m2の範囲で、密度0.6g/cm3~1.1g/cm3の範囲のものを好適に使用することができる。
【0021】
本発明において、紙容器本体(20)は、基材とする紙のエッジウイックが0.5g/1000mm2以下のものを用いた積層体で構成されている。
【0022】
すなわち我々は、本発明において鋭意検討を重ねた結果、この範囲であれば、浴室など、高湿度あるいは湯水が降り注ぐ環境下においてもその機能を失うことのない、ポンプディスペンサ付き液体紙容器(1)を提供することにおいて、最適であることを見出した。
【0023】
エッジウイックは紙の端面からの水の滲み込みを評価する方法であって、本発明において下記の方法によって測定される値である。
【0024】
まず、原紙サンプルの表裏をプラスチックフィルムで覆い、これを40mm×15mm(幅)にカットする。
【0025】
次にこのカットしたサンプルの重量を測定後、室温の蒸留水の中に60分間浸漬する。続いて、蒸留水の中から取り出して、余分な水分を拭き取ったうえで、再度重量を測定する。
【0026】
浸漬の前後の重量の差と、紙の断面積よりエッジウイックを求める。すなわち、単位はg/1000mm2となる。
【0027】
基材とする紙のエッジウイックを0.5g/1000mm2以下にする方法については、既知の方法の中から任意に選択可能であって、たとえば製紙工程において内添サイズ剤として、ロジン系、あるいはアルキルケテンダイマー(AKD)系、あるいはアルケニル無水コハク酸(ASA)系を添加する方法がある。また含浸コート剤として、イソシアネート樹脂をコーティングすることも可能である。
【0028】
また、表面および裏面全体にプラスチックフィルム層を有する積層体は、紙を基材として、たとえば表面にポリエチレン樹脂層を配することができる。ここで用いることのできるポリエチレン樹脂層は、たとえば低密度直鎖状ポリエチレン樹脂、または低密度ポリエチレン樹脂などである。
【0029】
表面にポリエチレン樹脂層を形成するには、たとえば押し出し加工によって行なうことができる。また、表面に印刷層を設ける場合には、印刷インクとの密着性向上を目的としてコロナ放電処理などの表面処理を行なうことができる。
【0030】
裏面に設けるプラスチックフィルム層は、シーラント層として設けることができる。これら表裏のプラスチックフィルム層は、熱可塑性樹脂であって、紙容器本体(20)はヒートシールによって、箱型、すなわち
図1に示す例においては、直方体に組み立てることができる。
【0031】
以下、裏面のプラスチックフィルム層、すなわちシーラント層について詳細に説明する。紙容器本体(20)を構成する積層体のシーラント層は、2枚の積層体をシーラント層同士が対向するように重ねて、加熱、加圧してヒートシールすることによって互いを接着させ、箱型に形成することを可能にする。
【0032】
シーラント層の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂を用いることができる。
【0033】
また、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0034】
シーラント層の形成には、前述の材料を主として、押出機などを用いて、溶融した樹脂を製膜して積層体上にシーラント層を形成することができる。
【0035】
あるいは、あらかじめフィルムの状態に製膜してある材料を、ラミネートによって積層することによって、積層体裏面にシーラント層を形成することも可能である。
【0036】
このように、紙容器本体(20)は、積層体のヒートシールによって箱型に組立てられ、高さ(H)、幅(W)、奥行き(D)を持つことができる。このとき、たとえば
図1に示す例においては、積層体端面(21)が図中太線で示す部分に露出している。
【0037】
図2は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器の一実施形態に関して、ポンプディスペンサ部分を説明するための、斜視模式図である。
【0038】
ポンプディスペンサ(30)は、紙容器本体(20)の上部に形成された貫通孔に挿入されて紙容器本体(20)側のスパウトと、ポンプディスペンサ(30)側の取り付け部(36)とによって固定されて、ポンプディスペンサ付き液体紙容器(1)を構成している。
【0039】
ポンプディスペンサ(30)、および取り付け部(36)、また紙容器本体側のスパウトは、プラスチックの成形品のパーツから構成することができる。
【0040】
またポンプディスペンサ(30)は、ポンプ部(31)および支持部材(32)から構成されており、ポンプ部(31)は、上部にポンプヘッド(33)と、それに接続するピストン(35)、およびシリンダ部(37)を備えている。
【0041】
また、支持部材(32)は、ポンプディスペンサ(30)が紙容器本体(20)に取り付けられた状態において、紙容器本体(20)の内部に配置され、ポンプ部(31)から下方に延伸し、紙容器本体(20)底面に到達して、ポンプ部(31)を下方から支えることができる。支持部材(32)の下部には、内溶液吸引のための切り欠き(38)が設けてある。
【0042】
図3は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器の一実施形態を説明するための、
図1に示すA-B線で垂直に切断した、断面模式図である。
【0043】
前述のように、本発明においてポンプディスペンサ(30)は、紙容器本体(20)の上部に形成された貫通孔に挿入されて紙容器本体(20)側のスパウト(22)と、ポンプディスペンサ(30)側の取り付け部(36)とによって固定されて、ポンプディスペンサ付き液体紙容器(1)を構成している。
【0044】
また、底面(25)に接する支持部材(32)の下部には、内溶液(23)吸引のための切り欠き(38)が設けてある。すなわちポンプディスペンサ(30)は、ポンプヘッド(33)を鉛直方向下方へ向かって押し下げることにより、支持部材(32)下部からの内容液(23)の吸引、ポンプ部(31)への送り出しによって、液体紙容器外部への内容液(23)のくみ出しが可能となる機構である。
【0045】
図4は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器の、他の実施形態を説明するための、斜視模式図である。
【0046】
図4に示す例は
図1に示す例とは、紙容器本体(20)の組立て方が異なる例である。すなわち積層体端面(21)の位置が、紙容器本体(20)において底部より上方に位置する例である。
【0047】
図4に示す例においては、天面板(42)、側面板(46)、側面矩形板(76)、側面矩形板(80)、側面折込板(70)、側面折込板(72)、側面折込板(68)、側面折込板(66)が、可視となっている。本発明において、
図4に示す例の紙容器本体(20)を実現するための、平面展開図については
図5を用いて後述する。
【0048】
図5は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器の、
図4に示す例を実現するためのブランクスを説明するための、平面展開模式図である。
【0049】
ポンプディスペンサ取り付け孔(2)を有する天面板(42)から、山折罫線を介して側面板(44)、底面版(48)、側面板(46)、シール部(82)が連接されている。天面板(42)の左右には、山折罫線を介して側面矩形版(74)、側面矩形版、(76)が連接され、底面版(48)の左右には、山折罫線を介して側面矩形版(78)、側面矩形版(80)が連接されている。
【0050】
側面板(44)、および側面板(46)には、それぞれ左右に側面三角板(50)、側面三角板(52)、と側面三角板(54)側面三角板(56)が、谷折線を介して連接している。
【0051】
さらに、側面板に接しない三角板の各辺には、側面折込板(58)、側面折込板(60)、側面折込板(62)、側面折込板(64)、側面折込板(66)、側面折込板(68)、側面折込板(70)、側面折込板(72)が、いずれも山折罫線を介して連接されている。
【0052】
側面折込板(62)、側面折込板(66)、側面矩形版(78)には、側面シール部(84)が谷折罫線を介して連設されており、同様に、側面折込板(64)、側面折込板(68)、側面矩形版(80)には、側面シール部(86)が谷折罫線を介して連設されている。
【0053】
図5に示したブランクスから、
図4に示した紙容器を成形するには、まず、
図5の垂直方向の罫線をすべて山折りして、シール部(82)を天面板(42)、側面矩形版(74)、側面矩形版(76)の裏面にヒートシールし、四角柱状にする。
この時事前に、シール部(82)の内容物に触れる紙端面を、既知の方法(スカイブ、テープ貼り等)でエッジプロテクトしてよい。
【0054】
次いで側面シール部(84)部分を、相対する側面矩形板(74)、側面折込板(58)、側面折込板(70)と合掌させてヒートシールする。側面三角板(50)、側面三角板(54)の山形の罫線が山折りになるように折畳んでヒートシールし、折込側面を形成する。次に反対側の側面シール部(86)についても同様にして、折込側面を形成する。
【0055】
本発明に係る液体用紙容器の容器形状については、ここに示す例にのみ限定されるものではなく、紙容器本体が同様の箱型形状を形成できるものであれば、目的を達成することができる。
【0056】
図6は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器を構成する、積層体の一実施形態においてその層構成を説明するための、部分断面模式図である。
【0057】
本発明において、積層体(10)中にはガスバリア層(14)が積層されて、紙容器本体を構成することができる。たとえば内容物の保存性を向上させることなどを目的として、必要な場合には、紙を基材とする積層体(10)中にガスバリア層(14)を設けることができる。
【0058】
たとえば、ガスバリア層(14)として、プラスチックフィルムの表面に無機化合物層を蒸着などして設けたガスバリアフィルムを用いることができる。またガスバリア層(14)としてアルミニウムなどの金属箔を用いることができる。いずれの場合においても内容物の保存性向上に有効である。
【0059】
ガスバリアフィルムの場合には、用いられるプラスチックフィルムは、高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、たとえばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロンー6、ナイロンー66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。
【0060】
特にポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートをプラスチックフィルム基材とする場合は、フィルム強度と価格においてより好ましい。
【0061】
ガスバリアフィルムの場合、ガスバリア層は無機化合物の蒸着層、コーティング法によるコーティング層で構成することができ、プラスチックフィルムにアンカーコートを設けた後、蒸着層、コーティング層を順次設ける。
【0062】
ガスバリアフィルムのアンカーコート層には、例えばウレタンアクリレートを用いることができる。アンカーコート層の形成には、樹脂を溶媒に溶解した塗料をグラビアコーティングなど印刷手法を応用したコーティング方法を用いるほか、一般に知られているコーティング方法を用いて塗膜を形成することができる。
【0063】
蒸着層を形成する方法としては,SiOやAlOなどの無機化合物を真空蒸着法を用いて、アンカーコート層を設けたプラスチックフィルム上に膜形成し、真空蒸着法による無機化合物層を形成することができる。ちなみに蒸着層の厚みは15nm~30nmが良い。
【0064】
コーティング層を形成する方法としては、水溶性高分子と、(a)一種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、または両者、あるいは(b)塩化錫の、少なくともいずれかひとつを含む水溶液あるいは水/アルコール混合水溶液を主剤とするコーティング剤をフィルム上に塗布し、加熱乾燥してコーティング法による無機化合物層を形成しコーティング層とすることができる。
【0065】
このときコーティング剤にはシランモノマーを添加しておくことによってアンカーコート層との密着の向上を図ることができる。
【0066】
無機化合物層は真空蒸着法による塗膜のみでもガスバリア性を有するが、コーティング法による無機化合物層であるコーティング層を真空蒸着法による無機化合物層である蒸着層に重ねて形成し、ガスバリア層とすることができる。
【0067】
これら2層の複合により、真空蒸着法による無機化合物層とコーティング法による無機化合物層との界面に両層の反応層を生じるか、或いはコーティング法による無機化合物層が真空蒸着法による無機化合物層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥あるいは微細孔を充填、補強することで、緻密構造が形成される。
【0068】
そのため、ガスバリアフィルムとしてより高いガスバリア性、耐湿性、耐水性を実現するとともに、外力による変形に耐えられる可撓性を有するため、液体紙容器としての適性も具備することができる。
【0069】
図6に示す例においては、紙基材層(12)の容器表側には、表面プラスチックフィルム(11)層が設けられている。表面にポリエチレン樹脂層を設ける場合には、たとえば低密度直鎖状ポリエチレン樹脂、または低密度ポリエチレン樹脂などを用いることができる。
【0070】
積層体(10)表面にポリエチレン樹脂層を形成するには、たとえば押し出し加工によって行なうことができる。あるいは、予めフィルムに成膜されたものを、ラミネートによって積層することもできる。
【0071】
図6に示す例においては、表面プラスチックフィルム層(11)の表面に印刷インク層(17)を設けてあり、このような場合には印刷インク層(17)との密着性向上を目的として、表面プラスチックフィルム層(11)の表面にコロナ放電処理などの表面処理を行なうことができる。
【0072】
印刷インク層(17)は、必要に応じて商品としてのイメージアップや、内容物についての必要な情報を積層体(10)中の、外側から見える層に設けることができる。
【0073】
ここで印刷方法および印刷インクにはとくに制約を設けるものではないが、既知の印刷方法、印刷材料の中からプラスチックフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、内溶液への影響、安全性などを考慮すれば、液体紙容器の目的に応じて適宜選択することができる。
【0074】
たとえばグラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、シルクスクリーン印刷法などから選択して用いることができる。中でもグラビア印刷法は、生産性や絵柄の高精細度において好ましく用いることができる。
【0075】
紙基材層(12)の容器内側には、接着樹脂層(13)を介して、ガスバリア層(14)が設けてある。ガスバリア層(14)として、プラスチックフィルム表面に無機化合物層を設けたガスバリアフィルムを用いることができる。ガスバリアフィルム以外にも、ガスバリア層(14)としてアルミニウム箔を用いることも可能である。ガスバリア層(14)は、無機化合物層を、積層体(10)中において、容器外側に向けて積層しても、容器内側に向けて積層してもよい。
【0076】
シーラント層(16)は、積層体(10)の容器最内層に配置されるのであって、
図6に示す例においては、ガスバリア層(14)の容器内側に、接着剤層(15)を介して積層されている。
【0077】
このように本発明によれば、浴室など、高湿度あるいは湯水が降り注ぐ環境下においてもその機能を失うことのない、ポンプディスペンサ付き液体紙容器を提供することが可能である。
【0078】
すなわち、液体紙容器本体(20)が、基材とする紙のエッジウイックが0.5g/1000mm2以下のものを用いた積層体で構成されていることによって、浴室など、高湿度あるいは湯水が降り注ぐ環境下においてもその機能を失うことのない、ポンプディスペンサ付き液体紙容器の実現が可能になる。
【0079】
また、積層体中にガスバリア層を設けることが可能であって、浴室など、高湿度あるいは湯水が降り注ぐ環境下においてもその機能を失うことのない、ポンプディスペンサ付き液体紙容器を提供することが可能であることに加えて、製品の段階、あるいは使用の段階において、内容物の外部環境による変化や変質を防止することが可能になり、内容物の長期保存性を向上させることに効果的である。
【実施例0080】
以下、本発明に関して、実施例1~実施例4、および比較例1~比較例4によって更に具体的な説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって限定されるものである。
【0081】
また、
図7は、本発明に係るポンプディスペンサ付き液体紙容器の、実施例、および比較例を説明するための斜視模式図である。
【0082】
<実施例1>
図7に示す形状のポンプディスペンサ付き液体紙容器を試作し評価した。
寸法は、紙容器本体は、
高さ(H)=85mm、幅(W)=85mm、奥行き(D)=85mm
ポンプディスペンサの長さ(L)は、
L=135mm
である。
【0083】
積層体(10)の層構成、材料構成は
図6に示すとおりである。
積層体表側から、
印刷インク層/表面プラスチックフィルム層(ポリエチレン樹脂)/紙基材層(エッジウィック0.2g/1000mm
2)/接着樹脂層/ガスバリアフィルム層(ポリエチレンテレフタレートフィルム+無機化合物蒸着)/接着剤層(ドライラミネート用接着剤)/シーラント層(低密度直鎖状ポリエチレン樹脂)。
【0084】
<実施例2>
図7に示す形状のポンプディスペンサ付き液体紙容器を試作し評価した。
寸法は、紙容器本体は、
H=85mm、W=85mm、D=85mm
ポンプディスペンサは、
L=135mm
である。
【0085】
積層体(10)の層構成、材料構成は
図6に示すとおりである。
積層体表側から、
印刷インク層/表面プラスチックフィルム層(ポリエチレン樹脂)/紙基材層(エッジウィック0.3g/1000mm
2)/接着樹脂層/ガスバリアフィルム層(ポリエチレンテレフタレートフィルム+無機化合物蒸着)/接着剤層(ドライラミネート用接着剤)/シーラント層(低密度直鎖状ポリエチレン樹脂)。
【0086】
すなわち、紙基材層の坪量350g/m2、紙厚0.42mmは同じで、紙基材層(エッジウィック0.3g/1000mm2)の部分のみが、実施例1と異なる。
【0087】
<実施例3>
図7に示す形状のポンプディスペンサ付き液体紙容器を試作し評価した。
寸法は、紙容器本体は、
H=85mm、W=85mm、D=85mm
ポンプディスペンサは、
L=135mm
である。
【0088】
積層体(10)の層構成、材料構成は
図6に示すとおりである。
積層体表側から、
印刷インク層/表面プラスチックフィルム層(ポリエチレン樹脂)/紙基材層(エッジウィック0.4g/1000mm
2)/接着樹脂層/ガスバリアフィルム層(ポリエチレンテレフタレートフィルム+無機化合物蒸着)/接着剤層(ドライラミネート用接着剤)/シーラント層(低密度直鎖状ポリエチレン樹脂)。
【0089】
すなわち、紙基材層の坪量350g/m2、紙厚0.42mmは同じで、紙基材層(エッジウィック0.4g/1000mm2)の部分のみが、実施例1と異なる。
【0090】
<実施例4>
図7に示す形状のポンプディスペンサ付き液体紙容器を試作し評価した。
寸法は、紙容器本体は、
H=85mm、W=85mm、D=85mm
ポンプディスペンサは、
L=135mm
である。
【0091】
積層体(10)の層構成、材料構成は
図6に示すとおりである。
積層体表側から、
印刷インク層/表面プラスチックフィルム層(ポリエチレン樹脂)/紙基材層(エッジウィック0.5g/1000mm
2)/接着樹脂層/ガスバリアフィルム層(ポリエチレンテレフタレートフィルム+無機化合物蒸着)/接着剤層(ドライラミネート用接着剤)/シーラント層(低密度直鎖状ポリエチレン樹脂)。
【0092】
すなわち、紙基材層の坪量350g/m2、紙厚0.42mmは同じで、紙基材層(エッジウィック0.5g/1000mm2)の部分のみが、実施例1と異なる。
【0093】
<比較例1>
図7に示す形状のポンプディスペンサ付き液体紙容器を試作し評価した。
寸法は、紙容器本体は、
H=85mm、W=85mm、D=85mm
ポンプディスペンサは、
L=135mm
である。
【0094】
積層体(10)の層構成、材料構成は
図6に示すとおりである。
積層体表側から、
印刷インク層/表面プラスチックフィルム層(ポリエチレン樹脂)/紙基材層(エッジウィック0.6g/1000mm
2)/接着樹脂層/ガスバリアフィルム層(ポリエチレンテレフタレートフィルム+無機化合物蒸着)/接着剤層(ドライラミネート用接着剤)/シーラント層(低密度直鎖状ポリエチレン樹脂)。
【0095】
すなわち、紙基材層の坪量350g/m2、紙厚0.42mmは同じで、紙基材層(エッジウィック0.6g/1000mm2)の部分のみが、実施例1と異なる。
【0096】
<比較例2>
図7に示す形状のポンプディスペンサ付き液体紙容器を試作し評価した。
寸法は、紙容器本体は、
H=85mm、W=85mm、D=85mm
ポンプディスペンサは、
L=135mm
である。
【0097】
積層体(10)の層構成、材料構成は
図6に示すとおりである。
積層体表側から、
印刷インク層/表面プラスチックフィルム層(ポリエチレン樹脂)/紙基材層(エッジウィック0.7g/1000mm
2)/接着樹脂層/ガスバリアフィルム層(ポリエチレンテレフタレートフィルム+無機化合物蒸着)/接着剤層(ドライラミネート用接着剤)/シーラント層(低密度直鎖状ポリエチレン樹脂)。
【0098】
すなわち、紙基材層の坪量350g/m2、紙厚0.42mmは同じで、紙基材層(エッジウィック0.7g/1000mm2)の部分のみが、実施例1と異なる。
【0099】
<比較例3>
図7に示す形状のポンプディスペンサ付き液体紙容器を試作し評価した。
寸法は、紙容器本体は、
H=85mm、W=85mm、D=85mm
ポンプディスペンサは、
L=135mm
である。
【0100】
積層体(10)の層構成、材料構成は
図6に示すとおりである。
積層体表側から、
印刷インク層/表面プラスチックフィルム層(ポリエチレン樹脂)/紙基材層(エッジウィック0.8g/1000mm
2)/接着樹脂層/ガスバリアフィルム層(ポリエチレンテレフタレートフィルム+無機化合物蒸着)/接着剤層(ドライラミネート用接着剤)/シーラント層(低密度直鎖状ポリエチレン樹脂)。
【0101】
すなわち、紙基材層の坪量350g/m2、紙厚0.42mmは同じで、紙基材層(エッジウィック0.8g/1000mm2)の部分のみが、実施例1と異なる。
【0102】
<比較例4>
図7に示す形状のポンプディスペンサ付き液体紙容器を試作し評価した。
寸法は、紙容器本体は、
H=85mm、W=85mm、D=85mm
ポンプディスペンサは、
L=135mm
である。
【0103】
積層体(10)の層構成、材料構成は
図6に示すとおりである。
積層体表側から、
印刷インク層/表面プラスチックフィルム層(ポリエチレン樹脂)/紙基材層(エッジウィック0.9g/1000mm
2)/接着樹脂層/ガスバリアフィルム層(ポリエチレンテレフタレートフィルム+無機化合物蒸着)/接着剤層(ドライラミネート用接着剤)/シーラント層(低密度直鎖状ポリエチレン樹脂)。
【0104】
すなわち、紙基材層の坪量350g/m2、紙厚0.42mmは同じで、紙基材層(エッジウィック0.9g/1000mm2)の部分のみが、実施例1と異なる。
【0105】
<評価方法>
実施例1~実施例4、比較例1~比較例4で作成したポンプディスペンサ付き液体紙容器を、1ヶ月間浴室で使用して、積層体端面(21)からの水の浸透状況を、目視にて比較評価した。
【0106】
評価基準は下記のとおりである。
◎:外観上違和感なし。
〇:外観上許容レベル。
×:浸透痕が目立つ、またはシワ発生。
【0107】
評価結果を表1に示す。
【0108】
【0109】
表1に示す結果から、実施例1~実施例4において、水の浸透状況の評価がいずれも〇評価すなわち外観上許容レベル、あるいは外観上許容レベルであるのに対し、比較例1~比較例4において水の浸透状況の評価は、いずれも×評価である。
【0110】
この違いは、紙基材層のエッジウイックが、実施例1~実施例4においては本発明による0.5g/1000mm2以下であるのに対し、比較例1~比較例4においては、0.5g/1000mm2を超える値であることによるものである。
【0111】
このように、本発明によれば、浴室など、高湿度あるいは湯水が降り注ぐ環境下においても水の滲み込みによって外観を損なったり、内容物のくみ出しなどの機能を失うことのない、ポンプディスペンサ付き液体紙容器を提供することが可能であることを検証することができた。