(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103450
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】局部洗浄装置
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20220630BHJP
【FI】
E03D9/08 F
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084017
(22)【出願日】2022-05-23
(62)【分割の表示】P 2018058679の分割
【原出願日】2018-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】田村 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】五味田 愼一
(72)【発明者】
【氏名】渡 光次郎
(57)【要約】
【課題】洗浄ノズルの表面全体に水膜を形成することができる局部洗浄装置を提供する。
【解決手段】前方下側に向かう斜め方向に進出した状態で人体局部の洗浄を行う第1洗浄ノズル(洗浄ノズル)3と、斜め方向に進出した第1洗浄ノズル3の表面39に水を供給して水膜を形成する水膜形成部6と、を有し、水膜形成部6は、第1洗浄ノズル3が人体局部の洗浄を行う際に、第1洗浄ノズル3の後端部3b側から前端部3a側に向かって、第1洗浄ノズル3の上方から第1洗浄ノズル3に水を供給する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方下側に向かう斜め方向に進出した状態で人体局部の洗浄を行う洗浄ノズルと、
前記斜め方向に進出した前記洗浄ノズルの表面に水を供給して水膜を形成する水膜形成部と、を有し、
前記水膜形成部は、前記洗浄ノズルが前記人体局部の洗浄を行う際に、前記洗浄ノズルの後端部側から前端部側に向かって、前記洗浄ノズルの上方から前記洗浄ノズルに前記水を供給する局部洗浄装置。
【請求項2】
前記水膜形成部は、前記洗浄ノズルが進出する斜め方向に対して鋭角に交差する方向に前記水を吐出する請求項1に記載の局部洗浄装置。
【請求項3】
前記水膜形成部は、前記洗浄ノズルの進出が開始されてから前記洗浄ノズルが後退して収容されるまでの間に前記洗浄ノズルの外周面に前記水を供給する請求項1または2に記載の局部洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄ノズルの上面は、平坦面であり、
前記洗浄ノズルの側面は、曲面である請求項1から3のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄ノズルの前端面は、曲面である請求項1から4のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄ノズルの前端面は、少なくとも上部側が前記斜め方向よりも前側に向かってより下側に向かう方向に傾斜した傾斜面に形成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄ノズルの前端面は、上部側が前記斜め方向よりも前側に向かってより下側に向かう方向に傾斜した傾斜面に形成され、下部側が下側に向かって後側に向かう傾斜面に形成されている請求項6に記載の局部洗浄装置。
【請求項8】
前記洗浄ノズルの前端面は、少なくとも上部側が前記斜め方向に膨らむ湾曲面に形成されている請求項1から7のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【請求項9】
前記洗浄ノズルの前端面は、上下全体にわたって前記斜め方向に膨らむ湾曲面に形成されている請求項8に記載の局部洗浄装置。
【請求項10】
前記洗浄ノズルの上面には、洗浄水を吐水する洗浄吐水口よりも上側に上方に突出する突出壁が設けられている請求項1から9のいずれか一項に記載の局部洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便座に着座した使用者の局部を洗浄する局部洗浄装置が知られている。局部洗浄装置の洗浄ノズルは、局部洗浄を行う際に前方へ斜め下側に向かって進出し、局部洗浄が終わると後退するように構成されている。
特許文献1に開示された局部洗浄装置は、前方へ進出した洗浄ノズルの表面に水を供給して水膜を形成し、局部洗浄によって飛散した水や汚物などが洗浄ノズルの表面に付着することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された局部洗浄装置では、洗浄ノズルに水膜を形成するための水を、洗浄ノズルの後端側において一方の側方から供給している。このため、洗浄ノズルの他方の側方や前端部分に水が行きわたらず、水膜が形成されない虞がある。
これにより、洗浄ノズルの表面の水膜が形成されない部分に、局部洗浄によって飛散した水や汚物などが付着してしまう虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、洗浄ノズルの表面全体に水膜を形成することができる局部洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る局部洗浄装置は、前方下側に向かう斜め方向に進出した状態で人体局部の洗浄を行う洗浄ノズルと、前記斜め方向に進出した前記洗浄ノズルの表面に水を供給して水膜を形成する水膜形成部と、を有し、前記水膜形成部は、前記洗浄ノズルが前記人体局部の洗浄を行う際に、前記洗浄ノズルの後端部側から前端部側に向かって、前記洗浄ノズルの上方から前記洗浄ノズルに前記水を供給する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗浄ノズルの表面全体に水を行きわたらせることができ、洗浄ノズルの表面全体に水膜を形成することができるため、局部洗浄によって飛散した水や汚物などが洗浄ノズルの表面に付着することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態による便器の一例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による局部洗浄装置の一例を示す斜視図で、第1洗浄ノズルが後退している様子を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による局部洗浄装置の一例を示す斜視図で、第1洗浄ノズルが進出している様子を示す図である。
【
図12】(a)は第2実施形態による局部洗浄装置の一例を示す斜視図、(b)は第1洗浄ノズルを前端部側から見た図である。
【
図13】(a)は第3実施形態による局部洗浄装置の一例を示す斜視図、(b)は第1洗浄ノズルを幅方向から見た図である。
【
図14】第4実施形態による局部洗浄装置の一例を示す斜視図である。
【
図15】第5実施形態による局部洗浄装置の一例を示す斜視図である。
【
図16】(a)は第1洗浄ノズルおよび第2洗浄ノズルの変形例を示す斜視図、(b)は第1洗浄ノズルおよび第2洗浄ノズルの他の変形例を示す斜視図である。
【
図17】(a)は第1洗浄ノズルおよび第2洗浄ノズルの変形例を示す側面図、(b)は第1洗浄ノズルおよび第2洗浄ノズルの他の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による局部洗浄装置について、
図1-
図11に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態による局部洗浄装置1は、便器11に設けられている。便器11は、便器本体12と、便器本体12に取り付けられた機能部13と、機能部13を介して便器本体12に取付けられた便座14および便蓋15と、を有している。
便器本体12は、便鉢121が形成され、床面16に設置されて排水配管(不図示)に接続されるように構成されている。
機能部13は、局部洗浄を行う局部洗浄装置1と、局部洗浄装置1を収容するケース2と、を有している。機能部13は、局部洗浄装置1に加えて、温風乾燥を行う温風乾燥装置(不図示)や、脱臭を行う脱臭装置(不図示)、これらの装置に電力を供給する電力供給装置(不図示)などを適宜有していてよい。機能部13に設けられている装置は、ケース2に収容され、ケース2によって外部に露出しないように覆われている。
【0010】
機能部13は、便器11を使用する使用者側から見て便器本体12の奥側に取り付けられていて、前側に便器本体12の便鉢121が配置されている。便器本体12に対して機能部13が取り付けられている側を後側とし、その反対側を前側とし、前側と後側とを結ぶ方向を前後方向とする。この前後方向に直交する水平方向を幅方向とする。
【0011】
図2および
図3に示すように、局部洗浄装置1は、肛門洗浄用の第1洗浄ノズル3と、ビデ用の第2洗浄ノズル4と、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4を支持する支持部5と、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4に局部洗浄用の温水を供給する局部洗浄用温水供給部(不図示)と、第1洗浄ノズル3の表面39(
図3参照)に水を供給して水膜を形成する水膜形成部6と、局部洗浄および水膜形成部6による水膜の形成を制御する制御部(不図示)と、を有している。
水膜とは、所定の厚さの膜状に広がって流れる水を示し、第1洗浄ノズル3の表面39に形成される水膜とは、第1洗浄ノズル3の表面39を膜状に広がって流れる水を示している。
局部洗浄装置1は、機能部13の幅方向の略中央部に配置されている(
図1参照)。
【0012】
図2-
図5に示すように、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4は、それぞれ断面形状が略円形となる丸棒状に形成されている。第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4は、それぞれの延びる方向(長さ方向)が前側に向かって漸次下側に向かう斜め方向となるように配置されている。第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4は、第1洗浄ノズル3が幅方向の一方側、第2洗浄ノズル4が幅方向の他方側となるように幅方向に並列されている。
上記のように配置された状態における第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の前側かつ下側の端部を前端部3a,4a(
図3-
図5参照)とし、後側かつ上側の端部を後端部3b,4bする。
【0013】
図5に示すように、第1洗浄ノズル3には、後端部3b近傍に局部洗浄用の温水が供給される給水口31が設けられ、前端部3a近傍に洗浄水を吐出する洗浄吐水口32が設けられ、内部に給水口31と洗浄吐水口32とをつなぎ温水が流通する流通管33が設けられている。洗浄吐水口32は、上方かつ前側に向かう斜め方向に開口し、この斜め方向に向かって洗浄水を吐出可能に構成されている。
第1洗浄ノズル3の前端面3cは、第1洗浄ノズル3の長さ方向に直交する平面状に形成されている。
【0014】
図6および
図7に示すように、第1洗浄ノズル3の下側には、第1洗浄ノズル3の長さ方向に延びる直線状の第1ラック(ギア)34が設けられている。第1ラック34は下側に突出する歯341が第1洗浄ノズル3の長さ方向に複数配列されている。
第1ラック34は、第1洗浄ノズル3の前端部3a近傍には設けられておらず、第1洗浄ノズル3における前端部3aよりも後側に少し間隔をあけた長さ方向の中間部から後端部3bまでの範囲に設けられている。
【0015】
図5に示すように、第2洗浄ノズル4には、後端部4b近傍に局部洗浄用の温水が供給される給水口41が設けられ、前端部4a近傍に洗浄水を吐出する洗浄吐水口42が設けられ、内部に給水口41と洗浄吐水口42とをつなぎ温水が流通する流通管43が設けられている。洗浄吐水口42は、上方かつ前側に向かう斜め方向に開口し、この斜め方向に向かって洗浄水を吐出可能に構成されている。
第2洗浄ノズル4の前端面4cは、それぞれ第2洗浄ノズル4の長さ方向に直交する平面状に形成されている。
図8および
図9に示すように、第2洗浄ノズル4の下側には、第2洗浄ノズル4の長さ方向に延びる直線状の第2ラック44(ギア)が設けられている。第2ラック44は下側に突出する歯441が第2洗浄ノズル4の長さ方向に複数配列されている。
第2ラック44は、第2洗浄ノズル4の前端部4a近傍には設けられておらず、第2洗浄ノズル4における前端部4aよりも後側に少し間隔をあけた長さ方向の中間部から後端部4bまでの範囲に設けられている。
【0016】
図4および
図5に示すように、支持部5は、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4それぞれを、前側に向かって漸次下側に向かう斜め方向に進退可能に支持している。第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4が進退する方向の洗浄ノズル進退方向とする。この洗浄ノズル進退方向は、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の長さ方向と同じ方向に設定されている。
支持部5は、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4が出し入れされる支持部本体51と、第1洗浄ノズル3の第1ラック34(
図6および
図7参照)と噛み合い第1ラック34とともにラックアンドピニオン機構を構成する第1ピニオン52と、第2洗浄ノズル4の第2ラック44(
図8および
図9参照)と噛み合い第2ラック44とともにラックアンドピニオン機構を構成する第2ピニオン53と、第1ピニオン52および第2ピニオン53を回転させるモータ54と、を有している。
【0017】
支持部本体51は、第1洗浄ノズル3を出し入れ可能な第1洗浄ノズル挿入部511と、第2洗浄ノズル4を出し入れ可能な第2洗浄ノズル挿入部512と、を有している。第1洗浄ノズル挿入部511と第2洗浄ノズル挿入部512とは、平行に設けられている。
【0018】
第1洗浄ノズル挿入部511は、洗浄ノズル進退方向に支持部本体51を貫通するように形成され、洗浄ノズル進退方向の下側かつ前側の開口から第1洗浄ノズル3が進退可能に構成されている。本実施形態では、支持部本体51には、第1洗浄ノズル挿入部511の下側かつ前側の端部近傍の上側の部分に下側かつ前側に開口する切欠き部513が形成されている。この切欠き部513は、第1洗浄ノズル挿入部511に挿入された第1ノズルの上面を上方に露出させている。
【0019】
第2洗浄ノズル挿入部512は、洗浄ノズル進退方向に支持部本体51を貫通するように形成され、洗浄ノズル進退方向の下側かつ前側の開口から第2洗浄ノズル4が進退可能に構成されている。
【0020】
図6および
図7に示すように、第1ピニオン52は、円板状に形成され、外周部全体に歯521が形成されている。
第1ピニオン52は、回転軸が幅方向に延びる向きで第1ラック34の下側に配置され、外周部に形成された歯521が第1ラック34の歯341と噛み合うように構成されている。第1ピニオン52は、モータ54(
図4および
図5参照)の駆動によって回転軸回りに回転することによって、第1ラック34を斜め方向(線状ラックの進退方向)に移動させるように構成されている。
【0021】
第2ピニオン53は、円板状に形成され、外周部全体に歯531が形成されている。
第2ピニオン53は、回転軸が幅方向に延びる向きで第2ラック44の下側に配置され、外周部に形成された歯531が第2ラック44の歯441と噛み合うように構成されている。第2ピニオン53は、モータ54(
図4および
図5参照)の駆動によって回転軸回りに回転することによって、第2ラック44を斜め方向(洗浄ノズルの進退方向)に移動させるように構成されている。
【0022】
図4-
図7に示すように、水膜形成部6は、第1洗浄ノズル3の表面39(
図5参照)に水を供給する水膜形成用給水管61と、水膜形成用給水管61に水を供給する水膜形成用水供給部(不図示)と、を有している。
【0023】
水膜形成用給水管61は、支持部本体51の上部に設置されている。水膜形成用給水管61の水膜吐水口62は、支持部本体51に形成された切欠き部513の上部に配置されている。水膜形成用給水管61の水膜吐水口62は、前側かつ下側に向かって開口し、この方向に水膜形成用の水を吐出するように構成されている。水膜吐水口62から吐水される水の方向と、第1洗浄ノズル3の進退方向(長さ方向)とは、鋭角を成すように交差している。
【0024】
水膜形成部6は、第1洗浄ノズル3が進出した状態となると、第1洗浄ノズル3に水膜吐水口62からを吐水するように制御されている。本実施形態では、水膜形成部6は、第1洗浄ノズル挿入部511に収容された状態の第1洗浄ノズル3が第1洗浄ノズル挿入部511から進出し始めた状態から、進出したノズルが後退し第1洗浄ノズル挿入部511に収容される直前まで、第1洗浄ノズル3の表面39に水膜吐水口62から吐水するように制御されている。
【0025】
水膜吐水口62から第1洗浄ノズル3に吐水されると、吐水された水が第1洗浄ノズル3の表面39に沿って前端部3aに向かって流れるとともに、側面に沿って第1洗浄ノズル3の下側に流れ、第1洗浄ノズル3の表面39に水膜を形成するように構成されている。
水膜吐水口62から吐水されて第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32のまわりに水膜を形成している水の水勢は、第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32から吐水される洗浄水の水勢よりも弱くなるように設定されている。
水勢とは、吐出する水や流れる水の勢いを示し、吐出する水や流れる水の量や速さによって決定される。
【0026】
制御部は、使用者が操作する操作部からの信号を受信可能に構成されている。操作部には、肛門洗浄、ビデ洗浄、温風乾燥などの開始・停止や、肛門洗浄、ビデ洗浄、温風乾燥などの強弱などを操作できるボタンなどの操作手段が設けられている。
【0027】
図2および
図3に示すように、機能部13のケース2のうち、局部洗浄装置1の前側に配置される部分を前板部21とする。前板部21は、その板面が洗浄ノズルの進退方向と略同じ方向を向くように配置されている。前板部21のうちの便鉢121(
図1参照)の内部を臨む面を前面21aとし、その反対側の局部洗浄装置1と対向する面を後面21bとする。
前板部21の幅方向の略中央部には、洗浄ノズルの進退方向に進退する第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4が通過する開口部21cが形成されている。開口部21cは、洗浄ノズルの進退方向と略同じ方向に開口している。開口部21cは、上下方向よりも幅方向に長い形状に形成されている。
【0028】
ケース2には、回動することで開口部21cを開閉可能なシャッタ22が設けられている。
シャッタ22は、開口部21cを前側から開閉するシャッタ本体23と、ケース2に支持された回動軸部24と、シャッタ本体23と回動軸部24とを連結する一対の連結アーム25と、を有している。
【0029】
図2、
図3、
図10および
図11に示すように、シャッタ本体23は、ケース2の開口部21c(
図2参照)よりもやや大きく、開口部21cを閉塞可能な大きさの板状に形成されている。シャッタ本体23は、開口部21cを閉塞すると、前板部21と重なり、洗浄ノズルの進退方向と略同じ方向を向くように配置される。
シャッタ本体23は、開口部21cを閉塞した際に便鉢121(
図1参照)の内部を向く面を前面23aとし、その反対側の開口部21cと対向する面を後面23bとする。シャッタ本体23の後面23bには、幅方向の他方側で第2洗浄ノズル4と対向する位置に突起部231(
図3および
図11参照)が形成されている。
【0030】
回動軸部24は、軸線が直線となる棒状に形成され、軸線方向が幅方向となる向きに配置されている。回動軸部24は、前板部21の後側に配置され、その両端部が前板部21の後側で開口部21cの上方に設けられた軸支持部26(
図2および
図3参照)に支持されている。回動軸部24は、軸支持部26に支持されると幅方向に延びる軸線回りに回動可能に構成されている。
【0031】
一対の連結アーム25は、それぞれ略C字形状形成されている。一対の連結アーム25は、C字形を形成する一方の端部25aが回動軸部24と接続され、他方の端部25bがシャッタ本体23の上縁部と接続されている。
一対の連結アーム25のうちの一方の連結アーム25は、シャッタ本体23および回動軸部24の幅方向の一方側の端部近傍と接続され、他方の連結アーム25は、シャッタ本体23および回動軸部24の幅方向の他方側の端部近傍と接続されている。一対の連結アーム25は、回動軸部24を中心とした回動によって、開口部21cの内部に挿通可能な位置に配置されている。
【0032】
図2に示すように、シャッタ本体23が開口部21cを閉鎖している状態では、一対の連結アーム25は、それぞれ前板部21の後側(ケース2の内部)に配置され、シャッタ本体23側の端部(他方の端部)25bが回動軸部24側の端部(一方の端部)25aよりも下側かつ後側に配置され、外形のC字形が前側かつ下側を向く斜め方向に開口する向きとなっている。
【0033】
この状態から、回動軸部24を中心にシャッタ22が前側に回動すると、
図3に示すように、一対の連結アーム25の回動軸部24側の端部25aよりもシャッタ本体23側の端部25bが上側かつ前側となり、外形のC字形が前側かつ上側を向く斜め方向に開口する向きとなり、シャッタ本体23が前板部21から離れて開口部21cを開口した状態となる。
この状態では、一対の連結アーム25それぞれの内側(外形のC字形の内部)に前板部21における開口部21cの上側の部分が配置されている。シャッタ本体23は、前面23aが前側かつ上側となる斜め方向を向き、後面23bが後側かつ下側となる斜め方向を向いている。
【0034】
シャッタ22は、開口部21cを閉鎖している状態となるように付勢されている。このため、シャッタ22は、開口部21cを開口する方向への外力が作用すると回動して開口部21cを開口し、開口部21cを開口する方向への外力が無くなると、復元されて開口部21cを閉鎖している。
【0035】
続いて、本実施形態の局部洗浄装置1による局部洗浄を行う際の動作について説明する。
操作部が操作されて、制御部が肛門洗浄開始の信号を受信すると、
図9に示すように、第2洗浄ノズル4が洗浄ノズルの進退方向の前側に進出する。第2洗浄ノズル4の前端部4aがシャッタ22の突起部231と当接し、さらに前側に進出すると、シャッタ22を回動させて押し上げ、シャッタ22が開口部21cを開口した状態となる。第2洗浄ノズル4は、シャッタ22を押し上げて開口部21cを開口する位置となると、さらに前方への進出が停止される。このとき、第2洗浄ノズル4は、前端部4aが突起部231と当接し、シャッタ本体23の前端部よりも後側に配置されている。
【0036】
第2洗浄ノズル4の進出と同時または少し遅れて、第1洗浄ノズル3が洗浄ノズルの進退方向の前側に進出する。このとき、シャッタ22は開口部21cを開口している状態であるため、
図7に示すように、第1洗浄ノズル3は、ケース2の開口部21cから進出し、シャッタ22と当接せずに開口部21cを通過し、シャッタ22の下側を通って前端部3aがシャッタ22よりも前側となる位置に進出する。
第1洗浄ノズル3は、シャッタ本体23の後面23bの下側に配置され、シャッタ本体23の後面23bと上下方向に離間している。また、第1洗浄ノズル3は、開口部21cの縁部とも離間している。
第1洗浄ノズル3が最前端まで進出すると、第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32から局部洗浄用温水が吐水され、肛門洗浄が行われる。
【0037】
肛門洗浄が開始してから所定の時間が経過する、または制御部が肛門洗浄を停止する信号を受信すると、第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32からの吐水が終了する。
局部洗浄が終了すると、第1洗浄ノズル3は、洗浄ノズルの進退方向の後側に後退し、支持部5の第1洗浄ノズル挿入部511に収容される。第1洗浄ノズル3が第1洗浄ノズル挿入部511に収容されると、第2洗浄ノズル4も洗浄ノズルの進退方向の後側に後退し、支持部5の第2洗浄ノズル挿入部512に収容される。
上述したように、シャッタ22は、開口部21cを閉鎖している状態となるように付勢されているため、第2洗浄ノズル4が後退し、シャッタ22に開口部21cを開口する方向への外力が作用しなくなると、シャッタ22は開口部21cを閉鎖する方向に回動して開口部21cを閉鎖する。
【0038】
第1洗浄ノズル3の進出が開始してから、第1洗浄ノズル3が後退して支持部5の第1洗浄ノズル挿入部511に収容されるまでの間、
図5に示すように、水膜形成部6が駆動し、水膜吐水口62から第1洗浄ノズル3に上方から水膜を形成するための水を吐水する。
水膜吐水口62から吐出された水は、第1洗浄ノズル3の前端部3aに向かって流れるとともに、第1洗浄ノズル3の周面を通って下側に流れ、第1洗浄ノズル3の表面39に水膜を形成する。第1洗浄ノズル3が最前端に進出している状態では、水膜吐水口62から吐出された水は、第1洗浄ノズル3の後端部3b近傍の上側に供給される。
【0039】
なお、上述したように水膜吐水口62から吐水されて第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32のまわりに水膜を形成している水の水勢は、第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32から吐水される洗浄水の水勢よりも弱くなるように設定されているため、第1洗浄ノズル3から洗浄水が吐水されている際に、第1洗浄ノズル3から吐水された洗浄水に水膜を形成する水が混ざることを防止することができる。
【0040】
操作部が操作されて、制御部がビデ洗浄開始の信号を受信すると、
図9に示すように、第2洗浄ノズル4が洗浄ノズルの進退方向の前側に進出する。第2洗浄ノズル4がシャッタ22の突起部231と当接し、さらに前側に進出すると、シャッタ22を押し上げてシャッタ22が開口部21cを開口した状態となる。第2洗浄ノズル4は、さらに前方への進出し、最前端(
図9の二点鎖線の位置)まで進出すると、第2洗浄ノズル4の洗浄吐水口42から局部洗浄用温水が吐水され、ビデ洗浄が行われる。
【0041】
ビデ洗浄が開始してから所定の時間が経過する、または制御部がビデ洗浄を停止する信号を受信すると、第2洗浄ノズル4の洗浄吐水口42からの吐水が終了する。
ビデ洗浄が終了すると、第2洗浄ノズル4は、洗浄ノズルの進退方向の後側に後退し、支持部5の第2洗浄ノズル挿入部512に収容される。上述したように、シャッタ22は、開口部21cを閉鎖している状態となるように付勢されているため、第2洗浄ノズル4が後退し、シャッタ22に開口部21cを開口する方向への外力が作用しなくなると、シャッタ22は開口部21cを閉鎖する方向に回動して開口部21cを閉鎖する。
本実施形態では、第2洗浄ノズル4に対しては水膜形成部6から吐水して水膜を形成するようには構成されていない。
【0042】
次に、上述した第1実施形態による局部洗浄装置1の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した第1実施形態による局部洗浄装置1では、水膜形成部6は、第1洗浄ノズル3の後端部3b側から前端部3a側に向かって、上方から第1洗浄ノズル3に吐水している。これにより、第1洗浄ノズル3の表面39に供給された水は、第1洗浄ノズル3の上面に沿って後端部3bから前端部3aまで流れるとともに、第1洗浄ノズル3の上面から両側方を伝わって下側に流れるため、第1洗浄ノズル3の表面39全体に水を行きわたらせることができ、第1洗浄ノズル3の表面39全体に水膜を形成することができる。
その結果、局部洗浄によって飛散した水や汚物などが第1洗浄ノズル3の表面39に付着することを防止することができる。
【0043】
また、水膜形成部6は、第1洗浄ノズル3の進退方向に対して鋭角に交差する方向に水を吐出することにより、水膜形成部6が吐出した水が、第1洗浄ノズル3の表面39で跳ね返ることなく第1洗浄ノズル3の表面39に沿って流れやすいため、第1洗浄ノズル3の表面39全体に確実に水膜を形成することができる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
図12に示すように、第2実施形態による局部洗浄装置1Bは、第1洗浄ノズル3Bの形状が第1実施形態と異なっている。第1洗浄ノズル3Bは、上面3dおよび下面3eが平坦面となり、両側面3fが曲面に形成されている。なお、第2洗浄ノズル4Bも第1洗浄ノズル3Bと同じ形状に形成されている。
第2実施形態による局部洗浄装置1Bでは、第1洗浄ノズル3Bに吐水された水膜形成用の水が第1洗浄ノズル3Bの上面に沿って前端部3aまで流れるとともに、両側面に沿って下方に流れるため、第1洗浄ノズル3Bの表面39B全体に水膜を形成することができる。
【0045】
(第3実施形態)
図13に示すように、第3実施形態による局部洗浄装置1Cは、第1洗浄ノズル3Cの形状が第2実施形態による局部洗浄装置1Bの第1洗浄ノズル3Bのように上面3dおよび下面3eが平坦面となり、両側面3fが曲面に形成されている。第3実施形態では、第1洗浄ノズル3Cの前端面3gが、中央部が前側かつ下側に向かって突出する曲面に形成されている。なお、第2洗浄ノズル4Cも第1洗浄ノズル3Cと同じ形状に形成されている。
第3実施形態による局部洗浄装置1Cでは、第1洗浄ノズル3Cの表面39Cを通って前端部3aに到達した水膜形成水が、第1洗浄ノズル3の前端面3gの曲面に沿って下側まで回り込むことができるため、第1洗浄ノズル3の前端面3g全体に水膜を形成することができる。
【0046】
(第4実施形態)
図14に示すように、第4実施形態による局部洗浄装置1Dは、第1洗浄ノズル3Dの形状が第1実施形態による局部洗浄装置1の第1洗浄ノズル3のように断面形状が円形となる丸棒状に形成されている。第4実施形態では、第1洗浄ノズル3Dの洗浄吐水口32Dの上側に第1洗浄ノズル3の表面39Dから突出する円弧板状の突出壁35Dが形成されている。突出壁35Dの上端部は、形成される水膜の上面よりも上側に突出するように設定されている。
突出壁35Dは、水膜を形成する水が洗浄吐水口32Dを通過しないように設けられている。
第4実施形態による局部洗浄装置1では、水膜を形成する水が第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32Dに入り込むことがないため、水膜形成用の水が局部洗浄用の水と混ざって、局部洗浄に使用されることを確実に防止することができる。
【0047】
(第5実施形態)
図15に示すように、第5実施形態による局部洗浄装置1Eは、第1洗浄ノズル3Eの形状が第1実施形態による局部洗浄装置1の第1洗浄ノズル3のように断面形状が円形となる丸棒状に形成されている。第4実施形態では、第1洗浄ノズル3Eの洗浄吐水口32Eが第1洗浄ノズル3の表面39Eから上側に突出する筒状に形成されている。筒状の洗浄吐水口32Eの上端部は、形成される水膜の上面よりも上側に突出するように設定されている。
第5実施形態による局部洗浄装置1では、水膜を形成する水が第1洗浄ノズル3の洗浄吐水口32Eに入り込むことがないため、水膜形成用の水が局部洗浄用の水と混ざって、局部洗浄に使用されることを確実に防止することができる。
【0048】
以上、本発明による局部洗浄装置1の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、水膜形成部6は、第1洗浄ノズル3に水膜を形成するように構成されているが、第1洗浄ノズル3に加えて第2洗浄ノズル4に水膜を形成するように構成されていてもよいし、第1洗浄ノズル3に代わって第2洗浄ノズル4に水膜を形成するように構成されていてもよい。
【0049】
また、上記の実施形態では、シャッタ本体23の後面に突起部231が形成され、第2洗浄ノズル4が突起部231と当接してシャッタ22を押し上げることで開口部21cを開口するように構成されているが、シャッタ本体23には突起部231が形成されておらず、第2洗浄ノズル4に設けられた突起部231がシャッタ本体23と当接してシャッタ本体23を押し上げて開口部21cを開口するように構成されていてもよい。
また、シャッタ本体23を押し上げるためのリンク機構が設けられていて、第2洗浄ノズル4の進退によってリンク機構が作動し、シャッタ22を回動させるように構成されていてもよい。
【0050】
また、上記の実施形態では、第2洗浄ノズル4の進退によってシャッタ22を開閉するように構成されているが、第1洗浄ノズル3の進退によってシャッタ22を開閉するように構成されていてもよい。
例えば、シャッタ本体23の後側の面における第1洗浄ノズル3と対向する位置に突起部が設けられていて、進退する第1洗浄ノズル3がこの突起部を押し上げたり、突起部と離間したりすることでシャッタ22を開閉するように構成されていてもよい。また、第1洗浄ノズル3に表面39から突出する突起部が設けられていて、進退する第1洗浄ノズル3の突起部がシャッタ本体23を押し上げたりシャッタ本体23と離間したりすることでシャッタ22を開閉するように構成されていてもよい。
【0051】
このような場合も、第1洗浄ノズル3の表面39は、シャッタ本体23と当接することがなく、第1洗浄ノズル3の表面39に形成された水膜にシャッタ本体23が干渉することがない。
また、局部洗浄装置1には、シャッタ22を開閉するモータなどが設けられていて、第1洗浄ノズル3や第2洗浄ノズル4の進退によらずモータの駆動によってシャッタ22を開閉するように構成されていてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の進退機構は、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の下側に設けられた線状のラック34,44とそれぞれのラック34,44の下側に設けられたピニオン52,53で構成されている。
これに対し、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4の進退機構は、第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4に接続されたベルト状のラックがそれぞれピニオンに巻き取り巻き出しされることで第1洗浄ノズル3および第2洗浄ノズル4を進退させるように構成されていてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、水膜形成部6は、洗浄ノズルが進出する斜め方向に対して鋭角に交差する方向に水を吐出する様に構成されているが、水膜吐水口62が水膜を形成するための水を吐水する方向が適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、支持部本体51に切欠き部513が形成され、水膜吐水口62は支持部本体51に形成された切欠き部513の上部に配置されているが、第1洗浄ノズル3の上面に水膜を形成するための水を吐水可能であれば、支持部本体51に切欠き部513が形成されていなくてもよく、切欠き部513から水膜を形成するための水を吐水しなくてもよい。
【0054】
また、上記の実施形態では、第1洗浄ノズル3は、長さ方向全体にわたって略同じ断面形状に形成されている。これに対し、
図16(a)に示す第1洗浄ノズル3Fのように、前端部分36F以外は断面形状が円形となるように形成され、前端部分36Fの上面361Fのみが平坦面に形成されていてもよい。また、
図16(b)に示す第1洗浄ノズル3Gのように、前端部分36Gは、断面形状が円形となるように形成され、前端部分36G以外の上面361Gおよび下面362Gが平坦面となり、両側面363Gが曲面に形成されていてもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、第1洗浄ノズル3の前端面3c,3gは、第1洗浄ノズル3の軸線に直交する平面状や、中央部分が前側に突出する曲面状に形成されているが、
図17(a)に示す第1洗浄ノズル3Hのように、前端面3hが前側に向かって漸次下側に向かうように傾斜した曲面状に形成されていてもよい。また、
図17(b)に示す第1洗浄ノズル3Iのように、前端面3iが前側に向かって漸次下側に向かうように傾斜した平面状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,1B~1E 局部洗浄装置
3,3B~3E 第1洗浄ノズル(洗浄ノズル)
3a 前端部
3b 後端部
6 水膜形成部
11 便器
39,39B~39E 表面