(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103462
(43)【公開日】2022-07-07
(54)【発明の名称】食品容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/26 20060101AFI20220630BHJP
B65D 1/46 20060101ALN20220630BHJP
【FI】
B65D1/26
B65D1/46
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022084115
(22)【出願日】2022-05-23
(62)【分割の表示】P 2018074595の分割
【原出願日】2018-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000180298
【氏名又は名称】四国化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113516
【弁理士】
【氏名又は名称】磯山 弘信
(72)【発明者】
【氏名】水越 功武
(72)【発明者】
【氏名】福山 能史
(72)【発明者】
【氏名】原 拓朗
(57)【要約】
【課題】
樹脂を材料として製造される食品容器において、蓋体の装着操作を簡単かつ迅速に行うことができる食品容器を提供する。
【解決手段】
食品を収容するための収容凹部が、略長方形をなす底面部と、その短手方向の両端に連続する2つの長辺側面部と、その長手方向の両端に連続する2つの短辺側面部と、長辺側面部と短辺側面部の間を隙間なく連続する4つの曲面部によって形成され、収容凹部の開口側の端縁に周方向に連続する鍔部が形成され、その鍔部の上面に、蓋体が着脱可能に装着される立壁を周方向に連続して設けた食品容器において、立壁の内面に周方向に連続する立壁溝を設けると共に、その立壁の外面の先部に、周方向に連続するカット部を設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収容するための収容凹部が、略長方形をなす底面部と、当該底面部の短手方向の両端に連続する2つの長辺側面部と、前記底面部の前記短手方向と直交する長手方向の両端に連続する2つの短辺側面部と、前記長辺側面部と前記短辺側面部の間を隙間なく連続する4つの曲面部によって形成され、
前記収容凹部の開口側の端縁に周方向に連続する鍔部が形成され、当該鍔部の上面に、前記収容凹部を開閉する蓋体が着脱可能に装着される立壁を周方向に連続して設けた食品容器において、
前記鍔部に、内側へ凸となる凸形状部を形成した
ことを特徴とする食品容器。
【請求項2】
前記凸形状部の長さは60~80mmであり、前記凸形状部の幅の最大値は0.5~1.5mmである
ことを特徴とする請求項1記載の食品容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーガリン、バター等の食品を収容するための収容凹部を有する樹脂製の食品容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家庭で使用されるマーガリン、バター等の食品は、ポリプロピレン(PP)等の樹脂で製造された食品容器の収容凹部に収容されており、その収容凹部を開閉する同じくPP等製の蓋体が食品容器に対して着脱自在に装着されている。
この種の従来のマーガリン等の容器としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載されているようなものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-68396号公報
【特許文献2】特開2011-68397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、容器の厚さを薄くしても不良品が発生することがない容器が記載されている。この特許文献1に記載された容器は、本体と該本体の開口を覆うように構成された蓋部とを有する容器において、前記本体は、底部と該底部の縁に沿って周状に延びる側壁とを有し、該側壁の外周面の上縁には、周状に延びる突起状の鍔部が形成され、該鍔部には、周状に延びる係合縁が形成され、該係合縁の縁によって前記本体の開口が形成され、該係合縁に前記蓋部が係合するように構成されている。前記側壁は、比較的長い第1及び第3の側壁と比較的短い第2及び第4の側壁と4つの湾曲状の角部を有し、前記係合縁は、前記側壁に対応して、比較的長い第1及び第3の係合縁と比較的短い第2及び第4の係合縁と4つの湾曲状の係合縁を有し、前記第2及び第4の係合縁の各々には切り欠きが形成され、前記4つの湾曲状の係合縁の各々には前記開口の縁に沿って延びる嵌合リブが形成され、前記底部の厚さが0.47~0.55mm、前記第1及び第3の側壁の厚さが0.38~0.45mm、前記第2及び第4の側壁の厚さが0.43~0.50mm、前記第1及び第3の側壁の厚さに対する前記第2及び第4の側壁の厚さの比が1.07~1.20であることを特徴としている。
【0005】
また、特許文献2には、容器の厚さを薄くしても消費者による取扱いが容易となる樹脂容器が記載されている。この特許文献2に記載された容器は、本体と該本体の開口を覆うように構成された蓋部とを有する容器において、前記本体は、底部と該底部の縁に沿って周状に延びる側壁とを有し、該側壁の外周面の上縁には、周状に延びる突起状の鍔部が形成され、該鍔部には、周状に延びる係合縁が形成され、該係合縁の縁によって前記本体の開口が形成され、該係合縁に前記蓋部が係合するように構成されている。前記側壁は、比較的長い第1及び第3の側壁と比較的短い第2及び第4の側壁と4つの湾曲状の角部を有し、前記係合縁は、前記側壁に対応して、比較的長い第1及び第3の係合縁と比較的短い第2及び第4の係合縁と4つの湾曲状の係合縁を有し、前記底部の厚さが0.47~0.55mm、前記第1及び第3の側壁の厚さが0.38~0.45mm、前記第2及び第4の側壁の厚さが0.43~0.50mm、前記第1及び第3の側壁の厚さに対する前記第2及び第4の側壁の厚さの比が1.07~1.20であり、前記4つの側壁と前記4つの角部の外面には、粗面化領域が形成され、前記粗面化領域の表面粗さは、10~30μm、それ以外の領域の表面粗さは、3~6μmであることを特徴としている。
【0006】
特許文献1に記載された容器においては、マーガリン等の食品を収容するための収容凹部の平面形状が略長方形をなしており、その収容凹部の開口側の端縁には周方向に連続する鍔部が設けられ、その鍔部の上面には周方向に連続する立壁が設けられている。更に、立壁の短辺側の立壁部の中央には、収容凹部に収容されているマーガリン等をパンに塗り付けるために使用されるナイフの中途部を通過させて柄の部分を容器外に突出させるためのナイフ口が逆台形をなす開口として形成されている。このような形状を有する容器は、PP等の樹脂を材料として射出成形によって形成されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された容器では、平面形状が略長方形をなす立壁の短辺側の立壁部の略中央にナイフ口が設けられていたため、射出成形後の容器の離型時において、容器が冷却する際に、短辺側の立壁部では縮む方向に変形する現象が生じ、これとは反対に長辺側の立壁部では延びる方向に変形する現象が生じる。そのため、容器を常温まで冷却すると、略四角形をなす立壁の平面形状が若干歪んだものとなり、立壁に対する蓋体の装着作業が困難になるという課題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載された容器においては、射出成形後の容器の離型時において、その容器の離型作業を容易にするための溝が立壁の内周面に設けられている。この離型用溝は、断面形状が半月形をなす凹部として立壁の内周面において周方向へ連続するように形成されている。
この種の容器を射出成形によって製造するために使用される金型は、一般に、上側の金型及び下側の金型と、これら金型間に介在されるストリッパによって構成されている。
【0009】
このような金型を用いて射出成形により製造される成形容器に設けられた前記離型用溝には、次のような役割がある。
一般に、前述したような金型から成形容器を取り出す際の離型作業は、例えば、次のようにして行われている。
まず、上側の金型を上方へ移動させ、成形容器を下側の金型から離反させる。このとき、ストリッパは上側の金型と一体的に移動する。次に、ストリッパを下側の金型側へ移動させ、このストリッパで成形容器の外縁を押圧し、ストリッパの押圧力で成形容器を上側の金型から離反させる。これにより、成形容器を金型から剥離させて取り出すことができる。
【0010】
この際、上側の金型を上方へ移動するときには、成形容器は上側の金型と一体的に移動する必要があり、成形容器が下側の金型内に取り残されると、成形容器の離型ができなくなるという問題が生じる。そのため、上側の金型の移動時には、成形容器を上側の金型にしっかりと保持する必要があり、その保持力を確保するために設けたものが前記離型用溝である。この離型用溝を形成するための離型用突起部が上側の金型に設けられており、その離型用突起部で成形容器を保持することにより、上側の金型による成形容器の保持力を確保するようにしている。
このように離型用溝は、上側の金型に成形容器の保持力を付与するという役割を有することが記載されているが、その他の目的を有することは離型用溝には記載されていない。
【0011】
本願発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、樹脂を材料として製造される食品容器において、蓋体の装着操作を簡単かつ迅速に行うことができる食品容器を提供することを目的としている。
また、本願発明は、食品容器の曲げ剛性を向上させ、射出成形後の温度降下に伴う食品容器の変形を抑制できると共に、持ち易く且つ取り落としの発生を抑制できる食品容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の食品容器は、食品を収容するための収容凹部が、略長方形をなす底面部と、その底面部の短手方向の両端に連続する2つの長辺側面部と、その底面部の短手方向と直交する長手方向の両端に連続する2つの短辺側面部と、長辺側面部と短辺側面部の間を隙間なく連続する4つの曲面部によって形成され、収容凹部の開口側の端縁に周方向に連続する鍔部が形成され、その鍔部の上面に、収容凹部を開閉する蓋体が着脱可能に装着される立壁を周方向に連続して設けた食品容器において、立壁の内面に周方向に連続する立壁溝を設けると共に、その立壁の外面の先部に、周方向に連続するカット部を設けたことを特徴としている。
【0013】
立壁溝は、縁形状が曲線をなす曲線溝とすることができる。
更に、立壁の高さは2.0~5.0mmであり、立壁溝の幅は0.8~2.5mm、その立壁溝の深さは0.1~0.2mmであり、立壁の上面からカット部の下端までの寸法は0.5~1.5mm、立壁の外面からそのカット部の内端までの寸法は0.1~0.3mmであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の食品容器は、食品を収容するための収容凹部が、略長方形をなす底面部と、その底面部の短手方向の両端に連続する2つの長辺側面部と、その底面部の短手方向と直交する長手方向の両端に連続する2つの短辺側面部と、長辺側面部と短辺側面部の間を隙間なく連続する4つの曲面部によって形成され、収容凹部の開口側の端縁に周方向に連続する鍔部が形成され、その鍔部の上面に、収容凹部を開閉する蓋体が着脱可能に装着される立壁を周方向に連続して設けた食品容器において、鍔部に、内側へ凸となる凸形状部を形成したことを特徴としている。
【0015】
凸形状部の長さは60~80mmであり、凸形状部の幅の最大値は0.5~1.5mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹脂を材料として製造される食品容器において、蓋体の装着操作を簡単かつ迅速に行うことができる。また、本発明によれば、食品容器の曲げ剛性を向上させることができ、射出成形後の温度降下に伴う食品容器の変形を抑制できると共に、手で持ち易く容器の取り落としを抑制できる食品容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例を示すもので、包装体を構成する食品容器と蓋体の組み合わせを現した分解斜視図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る食品容器の鍔部の右半分を切断して除去した平面図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る食品容器の平面図のうち、内鍔部の内側の形状を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る食品容器の正面図である。
【
図5】本発明の一実施例に係る食品容器の側面図である。
【
図6】本発明の一実施例に係る食品容器の横断面図である。
【
図7】本発明の一実施例に係る食品容器の縦断面図である。
【
図8】本発明の一実施例に係る食品容器の要部を拡大して示すもので、
図7のZ部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、
図1乃至
図8を参照して、本発明の食品容器の一実施例を説明する。
この実施例に係る食品容器1は、マーガリンを収容対象物としたマーガリン容器に適用したものである。しかしながら、収容対象物としては、この実施例で示すマーガリンに限定されるものではなく、例えば、バター、ヨーグルト、アイスクリームその他各種の食品を適用できるものである。
図1に示すように、食品容器1と、この食品容器1に着脱可能に装着される蓋体2との組み合わせによって包装体3が構成されている。
【0019】
食品容器1を示す
図2において、左半分は平面図であり、右半分は長辺側面部と短辺側面部と曲面部の上端縁の断面図である。なお、長辺側面部と短辺側面部と曲面部については、後述する。
図2から明らかなように、食品容器1は、平面形状が略長方形をなす底面部5と、その底面部5の平面方向において直交する二方向のうち長手方向Xに延在するように長辺側の二辺に連続して立ち上げられた2つの長辺側面部6a,6b(6aは図示していない。)と、その底面部5の直交する二方向のうち短手方向Yに延在するように短辺側の二辺に連続して立ち上げられた2つの短辺側面部7a,7bと、これら長辺側面部6a,6bと短辺側面部7a,7bとの間を湾曲して隙間なく連続する4つの曲面部8a,8b,8c,8d(8a,8bは図示していない。)を有している。この底面部5と2つの長辺側面部6a,6bと2つの短辺側面部7a,7bと4つの曲面部8a~8dとで囲まれた空間により、マーガリンやバター等の食品を収容するための収容凹部9が形成されている。
【0020】
更に、2つの長辺側面部6a,6bと2つの短辺側面部7a,7bと4つの曲面部8a~8dの上端縁には、平面方向に展開すると共に周方向に無端状に連続する鍔部11が設けられている。そして、鍔部11の上面には、収容凹部9の周囲を囲うように周方向に連続する立壁12が設けられている。この立壁12には、収容凹部9を開閉する蓋体2が着脱可能に装着される。
【0021】
図3は、食品容器1の平面図のうち、内鍔部11aの内側の形状を示す図である。なお、内鍔部11aについては、後述する。
図3等に示すように、食品容器1の収容凹部9の長手方向Xの寸法Lは100~150mm、収容凹部9の長手方向と直交する短手方向Yの寸法Mは80~120mmであることが好ましい。収容凹部9の長手方向Xの寸法に対する短手方向Yの寸法の比率L/Mは、L/M=1.2~1.4であることが好ましい。収容凹部9の深さKは25~55mmであることが好ましい。また、
図6及び
図7に示すように、食品容器1の底面部5の肉厚は0.47~0.55mm、長辺側面部6a,6bの肉厚は0.38~0.45mm、短辺側面部7a,7bの肉厚は0.43~0.50mm、長辺側面部6a,6bの厚さに対する短辺側面部7a,7bの厚さの比を1.07~1.20の範囲内の値に設定することにより、射出成形によって良好な容器を成形することができる。
【0022】
図2及び
図3等に示すように、食品容器1の平面方向における形状は、2つの鍔部短辺内端27a,27bと4つの鍔部曲線内端28a~28dのいずれもが平面方向の外側に凸となる円弧状の曲線形状であり、2つの鍔部長辺内端26a,26bは、平面方向において内側へ凸となる円弧状の曲線形状に形成されている。2つの鍔部長辺内端26a,26b、2つの鍔部短辺内端27a,27b及び4つの鍔部曲線内端28a~28dは、それぞれ所定の曲率半径を有する。なお、2つの鍔部短辺内端27a,27bの曲率半径R2a,R2bは4つの鍔部曲線内端28a~28dの曲率半径R3a~R3dよりも大である。
【0023】
鍔部長辺内端26aは、鍔部曲線内端28aと交点P1aで接続し、かつ鍔部曲線内端28bと交点P1bで接続している。また、鍔部長辺内端26bは、鍔部曲線内端28cと交点P1cで接続し、かつ鍔部曲線内端28dと交点P1dで接続している。
鍔部短辺内端27aは、鍔部曲線内端28aと交点P2aで接続し、かつ鍔部曲線内端28cと交点P2cで接続している。また、鍔部短辺内端27bは、鍔部曲線内端28bと交点P2bで接続し、かつ鍔部曲線内端28dと交点P2dで接続している。
【0024】
食品容器1の2つの鍔部長辺内端26a,26bの形状は、収容凹部9の内側へ凸となる形状としている。即ち、2つの鍔部長辺内端26a,26bの形状は、その鍔部長辺内端26a,26bの一側に連続する鍔部曲線内端28a,28cとの交点P1a,P1cと、その鍔部長辺内端26a,26bの他側に連続する鍔部曲線内端28b,28dとの交点P1b,P1dを結ぶ直線14a,14bに対して収容凹部9の内側へ凸となるように湾曲させて形成している。
【0025】
この実施例では、2つの鍔部長辺内端26a,26bの平面形状は、交点P1a(又はP1c)から交点P1b(又はP1d)までを一定の曲率半径で連続する円弧状に形成している。しかしながら、2つの鍔部長辺内端26a,26bの平面形状は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、交点P1a(又はP1c)と交点P1b(又はP1d)の間を、楕円、その他の曲線等で結ぶ形状としてもよい。
【0026】
また、
図6及び
図7等に示すように、底面部5の中央部には、収容凹部9側へ突出する補強用の膨出部15が設けられている。なお、底面部5の端縁と2つの長辺側面部6a,6bの端縁、2つの短辺側面部7a,7bの端縁及び4つの曲面部8a~8dの端縁の間は、それぞれが適当な曲率半径を有する曲面によって連続されている。
【0027】
食品容器1の鍔部11は、
図1、
図2、
図4~
図7に示すような形状を有している。
鍔部11は、2つの長辺側面部6a,6bの上端縁と2つの短辺側面部7a,7bの上端縁と4つの曲面部8a~8dの上端縁に連続して外側へ展開するように形成されており、その外周縁は、食品容器1の平面方向における形状と略相似形をなすように構成されている。
【0028】
即ち、
図1及び
図2に示すように、鍔部11は、2つの長辺側面部6a,6bの上端縁と2つの短辺側面部7a,7bの上端縁と4つの曲面部8a~8dの上端縁に形成されており、その外周縁は全体に丸みを帯びた略四角形の形状をなしている。
また、鍔部11は、
図4~
図8に示すように、立壁12の内外において所定寸法の段差を有する段部として形成されており、立壁12の内側に内鍔部11aが形成され、立壁12の外側に外鍔部11bが形成されている。
【0029】
立壁12は、
図2に示すように、長辺側の鍔部(片側のみを示す。)においては外縁に近い部分に立設された曲率半径の大きな曲線部として長辺立壁部12aが形成され、2つの短辺側の鍔部においては外縁と内縁の中間部分に立設された曲率半径の中程度の曲線部として短辺立壁部12bが形成され、4つの曲面部の鍔部においては、長辺側の立壁部と短辺側の立壁部を緩やかに連結する曲率半径の小さな曲線部として曲面立壁部12cが形成されている。
なお、外鍔部11bの外周縁には、下方に突出すると共に周方向に連続する補強用の鉤部16が設けられている。
【0030】
立壁12は、
図1~
図8に示すような形状及び構成を有している。
即ち、立壁12の2つの短辺立壁部12bの短手方向Yの中央部には、バターナイフの柄の部分を通過させるためのナイフ口17がそれぞれ設けられている。ナイフ口17は、一定の幅を有する逆台形をなす切り欠きとして形成されている。また、立壁12の4つの曲面立壁部12cの外面には、周方向に延びる突起状の係合リブ18がそれぞれ設けられている。この係合リブ18には、蓋体2に設けた図示しない4つの係合受リブが係合される。即ち、蓋体2を食品容器1に装着し、蓋体2を立壁12に嵌め合わせて4つの係合受リブを4つの係合リブに係合させることにより、一定の締結力を保持して収容凹部9を閉じることができる。一方、4つの係合受リブと4つの係合リブの係合を解除して蓋体2を食品容器1から剥離することにより、食品容器1の収容凹部9を解放することができる。
【0031】
更に、立壁12の内面には、周方向に連続する立壁溝20が設けられている。また、立壁12の外面の先端部には、カット部21が設けられている。
【0032】
ここで、立壁12の高さをH、立壁12の肉厚をT、立壁溝20の幅をW、立壁溝20の深さをV、立壁溝20の最も深い点(最深点)をD、立壁12の上面から立壁溝20の最深点Dまでの寸法をF、立壁12の上面から立壁溝20の近端縁までの寸法をE、立壁12の上面から立壁溝20の遠端縁のJ点までの寸法をG、立壁12の上面からカット部21の下端までの寸法をU、立壁12の外面からカット部21の内端までの寸法をIとする。また、立壁12の上面から立壁溝20の最深点Dを通る水平線までの領域をα、立壁溝20の最深点Dを通る水平線からJ点を通る水平線までの領域をβとする。
【0033】
立壁12の高さHは2.0~5.0mmの範囲内にすることが好ましい。また、立壁12の肉厚Tは0.4~0.8mmの範囲内にすることが好ましい。
また、カット部21の下端までの寸法Uは0.5~1.5mmの範囲内にすることが好ましい。また、カット部21の内端までの寸法Iは0.1~0.3mmの範囲内にすることが好ましい。
【0034】
また、立壁溝20の幅Wは0.8~2.5mmの範囲内にすることが好ましい。また、立壁溝20の深さVは0.1~0.2mmの範囲内にすることが好ましい。また、立壁12の上面から立壁溝20の最深点Dまでの寸法Fは、U≦F≦U+2.0mm、及びF≦H/2の条件を具備することが好ましい。また、立壁12の上面から立壁溝20の近端縁までの寸法Eは0.3~0.8mmの範囲内にすることが好ましい。また、立壁12の上面から立壁溝20の遠端縁までの寸法Gは1.1~3.3mmの範囲内にすることが好ましい。
なお、最深点Dは、この実施例では立壁溝20が円弧であるため幅方向の中間点に設定されているが、これに限定されるものではなく、立壁溝20の形状は、楕円、その他の曲線等を用いて最深点Dを立壁溝20の近端縁側に設定してもよく、これとは反対に遠端縁側に設定してもよい。
【0035】
本発明の食品容器1は、立壁12の内面に立壁溝20を設けると共に、立壁12の外面の先端にカット部21を設ける構成とした。
本発明の食品容器1によれば、前記数値範囲及び条件を具備することにより、前記数値範囲及び条件について別個独立に、次のような効果を得ることができる。
即ち、射出成形後、立壁12が冷却する際に、立壁12を形成する樹脂に収縮が生ずる。このとき、立壁12の上面から立壁溝20の最深点Dを通る水平線までの領域αと、立壁溝20の最深点Dを通る水平線からJ点を通る水平線までの領域βを比較すると、領域αの面積が領域βの面積よりも大である。即ち、立壁全周について、領域αの容量と領域βの容量を比較すると、領域αの容量が領域βの容量よりも大である。その結果、領域αの樹脂の収縮量と領域βの樹脂の収縮量を比較すると、容量の大きいα部における樹脂の収縮量が大きく、容量の小さいβ部における樹脂の収縮量が小さくなる。そのため、立壁12の先部は、立壁溝20のある側に傾くように変形する。
【0036】
しかも、立壁12の外面の先部にはカット部21が設けられているため、立壁12先部の収容凹部9の内側への変形を促進することができる。即ち、立壁12の先部にカット部21が無い場合には、α部の曲げ剛性が大きくなる一方、立壁12の先部表面の抵抗が大となるため、立壁12先部の収容凹部9の内側への変形を抑制するように作用する。これに対して、本実施例のように、立壁12の先部にカット部21を設けた場合には、α部の曲げ剛性を小さくできると共に、立壁12の先部の抵抗力も小さくすることができる。そのため、立壁12先部の収容凹部9の内側への変形を促進させることができ、立壁12を更に収容凹部9の内側へ傾くように変形させることができる。このように、立壁12を収容凹部9の内側へ傾くように変形させることができるので、立壁12に対する蓋体2の嵌め込みを容易なものとすることができる。
【0037】
更に、立壁12の外面の先部にカット部21を設けたことにより、立壁12の上部の外周側にリング状の空間を形成することができる。この空間によって立壁12に対する蓋体2の嵌め込みを更に容易なものとすることができる。
【0038】
図2及び
図3に記載した内鍔部11aにおいて、交点P1aと交点P1bを結ぶ直線から内側へ突き出ている凸形状の部分11aaを、「内鍔部の凸形状部」と定義する。また、交点P1cと交点P1dを結ぶ直線から内側へ突き出ている凸形状の部分11aaを、同じく「内鍔部の凸形状部」と定義する。
また、長辺側面部6a,6bの長手方向Xにおける、内鍔部11aの凸形状部11aaの長さSを、「内鍔部の凸形状部の長さ」と定義する。
内鍔部の凸形状部の長さSは、60~80mmの範囲内にあることが好ましい。ここで、内鍔部の凸形状部の長さSは、収容凹部9の長手方向Xの寸法Lよりも小さいことが条件である。
【0039】
また、内鍔部11aにおいて、長辺側面部6a,6bの長手方向Xと直交する短手方向Yにおける、内鍔部11aの凸形状部11aaの幅を「内鍔部の凸形状部の幅」と定義する。また、内鍔部11aの凸形状部11aaの幅のうち最大値の幅が存在するポイントQを「内鍔部の凸形状部の最大幅点」と定義する。また、内鍔部11aの凸形状部11aaの最大幅点Qにおける、凸形状部11aaの幅Nを「内鍔部の凸形状部の最大幅」と定義する。
内鍔部の凸形状部の最大幅Nは、0.5~1.5mmの範囲内にあることが好ましい。
【0040】
従来の食品容器では、射出成形後の冷却の際、食品容器には収縮現象が生ずる。食品容器1は、立壁12の2つの短辺立壁部12bにナイフ口17が設けられている。そのため、2つの短辺立壁部12bでは短手方向Yへ縮もうとする変形が発生し、それに伴い2つの長辺立壁部12aでは長手方向Xへ延びようとする変形が発生する。また、従来の食品容器では、側面部の全面が収容凹部の外側へ凸となる曲面として形成されていたため、その側面部が掴み難いものとなっていた。
これに対して、本実施例の食品容器1では、内鍔部11aの凸形状部の長さSが60~80mmの範囲内にあり、内鍔部11aの凸形状部の最大幅Nが0.5~1.5mmの範囲内にあると、それぞれ別個独立に、次のような効果を得ることができる。
即ち、食品容器1によれば、
図2に示すように、内鍔部11aの凸形状部が形成されて曲げ剛性が高められている。そのため、射出成形後の冷却の際、2つの短辺立壁部12bでは短手方向Yへ縮もうとする変形が抑制され、それに伴い2つの長辺立壁部12aでは長手方向Xへ延びようとする変形が抑制される。
【0041】
その結果、溶融樹脂が冷却する際に生ずる成形品の収縮に関して、長辺立壁部12aの延びる方向への変形を小さく抑えることができると共に、短辺立壁部12bの縮む方向への変形を小さく抑えることができる。これにより、溶融樹脂が冷却する際における立壁12全体の変形量を少なくすることができるため、食品容器1の立壁12に対する蓋体2の着脱作業をやり易いものとすることができる。
また、本願発明の食品容器1では、2つの長辺側面部6a,6bが収容凹部9の内側へ凸となる曲面として形成されているため、その側面部を掴み易いものとすることができ、把持部が滑り難い食品容器1を提供することができる。
【0042】
蓋体2は、
図1に示すように、平面形状が略長方形をなす上面部31と、その上面部31の外周縁の全周から下方に突出すると共に周方向に連続する無端状をなす周壁部32を有している。周壁部32は立壁12に見合う形状及び大きさを有しており、この周壁部32の4か所の角部の内面には、立壁12に設けた係合リブ18に係合可能とされた係合受リブ(図に現れない。)が設けられている。この周壁部32を立壁12に嵌合させることにより、蓋体2が食品容器1に対して着脱可能に装着される。
【0043】
また、蓋体2の周壁部32の一方の短辺側面部の中間であって、立壁12に設けたナイフ口17と対応する位置には四角形をなす切欠き片33が設けられている。この切欠き片33を切除して四角形の凹部を形成することにより、蓋体2を食品容器1に装着した際に立壁12のナイフ口17を露出させることができる。
【0044】
上述したような形状及び構成を有する食品容器1及び蓋体2は、射出成形装置により金型を用いて溶融樹脂を射出成形することで製造することができる。食品容器1及び蓋体2の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)が好適であるが、これに限定されるものではなく、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン・ビニル・アセテート(EVA)等この種の食品容器に用いられる各種の熱可塑性樹脂を適用することができる。
【0045】
上述した構成を有する食品容器1は、例えば、次のようにして製造することができる。
食品容器1を製作するための金型の下型には、その中央部に樹脂の注入口が設けられており、その樹脂の注入口の一端が成形品を成形するための金型の中央部に開口されていて、その樹脂の注入口から中空部内に注入された溶融樹脂が、拡散流動によって中空部内を放射状に流動される。
【0046】
中空部内に注入された溶融樹脂は、食品容器1の底面部5に相当する領域内に入り込み、そこから拡散流動されて中空部内を放射状に流れる。そして、底面部5に相当する領域から側面部6a,6b,7a,7b及び曲面部8a~8dに相当する領域を経て鍔部11に相当する領域を流動し、更に、鍔部11から立壁12に流入する。そして、中空部内の全体に溶融樹脂が充填された後、金型を所定時間保持して溶融樹脂を固化させることにより食品容器1を成形することができる。その後、上型を下型から離反させることにより、成形容器が上型に付着した状態で一体的に下型から剥離される。次いで、上型に装着されているストリッパを動作させて成形容器を上型から剥離することにより、所定形状に成形された食品容器1を製造することができる。
【0047】
なお、食品容器1の平面方向の形状は、楕円、略長方形等を採用することができる。
【0048】
以上説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、均等の範囲内で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された発明の範囲において様々な変更が可能であることは、当業者によって容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0049】
1…食品容器、 2…蓋体、 3…包装体、 5…底面部、 6…側面部、 6a,6b…長辺側面部、 7…側面部、 7a,7b…短辺側面部、 8a,8b,8c,8d…曲面部、 9…収容凹部、 11…鍔部、 11a…内鍔部、 11b…外鍔部、 12…立壁、 12a…長辺立壁部、 12b…短辺立壁部、 12c…曲面立壁部、 17…ナイフ口、 20…立壁溝、 21…カット部、 D…立壁溝の最深点、 F…立壁の上面から立壁溝までの寸法、 H…立壁の高さ、 K…収容凹部の深さ、 L…収容凹部の長辺側の寸法、 M…収容凹部の短辺側の寸法、 N…内鍔部の凸形状部の最大幅、 P1,P2,P3,P4…長辺側の交点、 Q…内鍔部の凸形状部の最大幅点、 S…内鍔部の凸形状部の長さ、 T…立壁の肉厚、 U…立壁のカット部の高さ方向の寸法、 V…立壁溝の深さ、 W…立壁溝の幅、 X…長辺方向の軸、 Y…短辺方向の軸、 I…立壁のカット部の肉厚方向の寸法