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  • 特開-ブラシモータ 図1
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  • 特開-ブラシモータ 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103484
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】ブラシモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20220701BHJP
   H02K 13/00 20060101ALI20220701BHJP
   H02K 5/16 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
H02K9/06 G
H02K13/00 Z
H02K5/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218144
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橘田 敏郎
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
5H613
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB09
5H605EB28
5H609BB06
5H609PP02
5H609PP13
5H609QQ02
5H609RR05
5H613BB37
5H613PP08
(57)【要約】
【課題】 整流子とブラシを効率よく冷却することが可能なブラシモータを提供することを目的とする。
【解決手段】 ブラシモータ1であって、ケース2と、ケース2内に設けられた固定子1a及び回転子1bと、回転子1bが取り付けられるシャフト3と、シャフト3に固定して取り付けられた整流子9と、整流子9に接触するブラシ5、6と、ケース2内に設けられ、整流子9とブラシ5、6に向かってエアを送風するフィン42aと、を設け、整流子9とブラシ5、6を効率よく冷却する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、このケース内に設けられた固定子及び回転子と、前記回転子が取り付けられる回転軸と、前記回転軸に固定して取り付けられた整流子と、前記整流子に接触するブラシと、を備えたブラシモータにおいて、
前記ケース内に設けられ、前記整流子と前記ブラシに向かってエアを送風する送風手段を設けたブラシモータ。
【請求項2】
前記回転軸を回転自在に支持する軸受けを備え、
前記送風手段を前記軸受けと前記整流子との間に設けた請求項1に記載のブラシモータ。
【請求項3】
前記送風手段は、前記回転軸の回転に伴って回転する羽根部材を有する請求項2に記載のブラシモータ。
【請求項4】
前記軸受けと前記整流子との間で前記回転軸にリング状のオイル防御部材を備え、
前記オイル防御部材に前記羽根部材を設けた請求項3に記載のブラシモータ。
【請求項5】
前記オイル防御部材に前記軸受け側と前記整流子側を連通する開口部を設けた請求項4に記載のブラシモータ。
【請求項6】
前記オイル防止部材における前記開口部よりも前記回転軸側に突起部を設けた請求項5に記載のブラシモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシモータに関するものであって、詳しくはブラシと整流子の冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブラシモータは、一端側が閉鎖され、他端側が開放された円筒状のケースと、このケース2内に配設される固定子(ステータ)及び回転子(ロータ)と、回転子が取り付けられる回転軸と、ケース2の開放部を閉塞するブラケットを備える。また、回転軸には、整流子が固定され、この整流子に接触するブラシが設けられている。
【0003】
このようなブラシモータでは、ブラシと整流子との摺接による摩擦熱が発生し、ケース内の温度が上昇する。このため、外部からの風を導入してケース内の温度を下げ、温度上昇によるブラシの摩耗を抑え、ブラシの寿命を確保する冷却機構が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-200288号公報
【特許文献2】特開2004-153892号公
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した冷却機構にあっては、送風するためのフィンが外部に取り付けているため、発熱源であるブラシ及び整流子を効果的に冷却することができない。このため、ブラシの摩耗を抑え、出力の低下を十分に抑制することができなかった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであって、整流子とブラシを効率よく冷却することが可能なブラシモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、ケースと、ケース内に設けられた固定子及び回転子と、回転子が取り付けられる回転軸と、回転軸に固定して取り付けられた整流子と、整流子に接触するブラシと、を備えたブラシモータにおいて、ケース内に設けられ、整流子と前記ブラシに向かってエアを送風する送風手段を設けた。
【発明の効果】
【0008】
簡単な構成で整流子とブラシを効率よく冷却することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ブラシモータの外観を示す斜視図である。
図2】ブラシモータの構成を示す断面図である。
図3】ブラシモータにおけるオイルディフェンサー40の構成を示す正面図である。
図4】ブラシモータにおけるオイルディフェンサー40の構成を示す図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図、(c)は略中央を切断した断面図である。
図5】オイルディフェンサー40の冷却作用を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係るブラシモータの実施形態を詳細に説明する。このブラシモータは、例えば、各種の機器の駆動部に組み込まれて使用される。
【0011】
図1はブラシモータ1の外観を示す斜視図、図2はブラシモータ1の構成を示す断面図である。図1図2に示すように本実施形態のブラシモータ1は、一端側が閉鎖され、他端側が開放された円筒状のケース2と、このケース2内に配設される固定子1a及び回転子1bと、回転子1bが取り付けられるシャフト(回転軸)3と、ケース2の開放部を閉塞する閉塞手段としてのブラケット20及びホルダー部材10と、を備える。なお、ブラケット20はエッジの3箇所にカシメ11を施し、ケース2に装着固定されている。また、ホルダー部材10にはリード線18が挿通する挿通孔が形成されている。
【0012】
回転子1bは、シャフト3に固定して取り付けられる積層コア4と、この積層コア4に巻き付けられるコイル17と、積層コア4とコイル17とを絶縁する絶縁層16とを有して構成されている。前記絶縁層16の材質には、例えばエポキシ樹脂が用いられる。また、シャフト3には、積層コア4のコイル17に流れる電流の方向と相を切り替えるための整流子9が固定されている。
【0013】
固定子1aは、積層コア4及びコイル17からなる回転子1bを取り囲むように互いに対向して配置される永久磁石15である。この永久磁石15は、その表裏にS極とN極が着磁されており、ケース2の内周側にそれぞれ等間隔で固定して取り付けられている。本実施形態では、3個のコイル17と2個の永久磁石15とで構成されており、整流子9からコイル17に電流を流すことによって発生する磁力が永久磁石15に反発してシャフト3を回転させる。なお、2個の永久磁石15の互いに対向する面は、異なる極に着磁されている。
【0014】
ケース2は、鋼板に深絞り加工を施すことで有底円筒状に形成されている。このケース2の底側の中央部にはシャフト3を貫通するための丸孔が形成され、この丸孔にシャフト3を回転自在に支持する軸受22が設けられている。ケース2の開放部側は、円板状のブラケット20とホルダー部材10で閉塞されている。なお、本実施形態では、ケース2とブラケット20とでブラシモータ1の外観を構成している。また、ケース2の両端部にはシャフト3を回転可能に支持する軸受けとしての第1、第2のベアリング30、31が設けられている。更にベアリング10aと整流子9との間にはオイルディフィンダー(オイル防御部材)40が配置されている。このオイルディフィンダー40は第1のベアリング30のオイルが整流子9に付着しないようにシャフト3に圧入されている。
【0015】
図1に示すようにホルダー部材10は樹脂で形成されており、その中央部にシャフト3を支持する軸受23が設けられている。これによって、シャフト3はケース2の底側中央部に設けられた第2のベアリング31とホルダー部材10に設けられた第1のベアリング30に両端が支持された状態で回転する。
【0016】
ケース2内には、第1、第2のブラシ5、6と、この第1、第2のブラシ5、6をそれぞれ整流子9に弾性的に接触させるためのねじり第1、第2のコイルバネ7、8が配置されている。第1、第2のブラシ5,6は、黒鉛(カーボン)を主材料とし、その一端面(接触面)5a、6aが整流子9の周面と直交して当接するように第1、第2のブラシケース24、25内に収納保持される。
【0017】
ここで、本実施の形態では、シャフト3に圧入されたオイルディフェンサー40にブラシ5、6及び整流子9にエアを吹き付ける送風機能を設けている。この送風によってブラシ5、6及び整流子9を冷却するようになっている。図3はオイルディフェンサー40の構成を示す正面図であり、図4(a)はオイルディフェンサー40の構成を示す側面図、(b)は斜視図、(c)は略中央を切断した断面図である。また、図5(a)、(b)は、オイルディフェンサー40の冷却作用を説明する説明図である。
【0018】
図3に示すように、オイルディフェンサー40の中央にはシャフト3に圧入するための開口46が形成されている。オイルディフェンサー40は、シャフト3に圧入されるベース部44と、ベアリング30からのオイルを遮蔽するプレート部41と、ブラシ5、6及び整流子9を冷却するための送風手段としての複数のフィン(羽根部材)42a~42fを有している。また、プレート部41には複数の開口部43a~43fが形成されており、各開口部43a~43fは各フィン42a~42fの近傍にそれぞれ形成されている。
【0019】
本実施の形態では、図3に示すようにプレート部41の周方向に沿った等間隔で6つのフィン42a~42fを設けている。また、プレート部41には各フィン42a~42fに対応した6つの開口部43a~43fを等間隔に形成している。なお、6つのフィン42a~42f、6つの開口部43a~43fの形状は同一であるため、以降においてフィン42aと開口部43aを用いて、フィン42a~42f及び開口部43a~43fの構成、作用について説明する。
【0020】
フィン42aは、図4(a)、(b)に示すようにシャフト3の延設方向に交差する方向で、かつ第1、第2のブラシ5、6及び整流子9側に突き出るように設けられている。フィン42aは、第1、第2のブラシ5、6の接触面5a、6aに向けてエアが送風さられる位置に設けられている。
【0021】
開口部43aは、フィン42aの基端に対してフィン42aの突き出し方向側に形成されている。開口部42aは、フィン42aの大きさと略同等の大きさで、エアが十分に流れる大きさとなっている。
【0022】
次に、図5(a)、(b)に基づきフィン42aの作用について説明すると、ブラシモータ1を駆動すると回転子1bのシャフト3が回転する。このシャフト3に圧入されたオイルディフェンサー40は、シャフト3の回転と同期して回転する。そして、オイルディフェンサー40が回転することによってフィン42aも回転する。回転するフィン42aはエアを揺動させ風力が発生させる。このフィン42aの風力で第1、第2のブラシ5、6と整流子9の接触部及びその近傍に向かってエアが吹き付けられる(図5(a)参照)。
【0023】
また、本実施の形態では、フィン42aをシャフト3の延設方向に交差する方向で、かつ第1、第2のブラシ5、6及び整流子9側に突き出るように設け、開口部43aをフィン42aの基端に対してフィン42aの突き出し方向側に形成しているので、ブラシモータの正逆転駆動、すなわちシャフト3の正逆回転によって風の向きが切り替わるようになっている。
【0024】
フィン42aの突出方向とは異なる方向にモータが駆動した場合、すなわち図5(a)の矢印で示すCCW方向にシャフト3を回転すると、上述したようにディフェンサー40も回転し、フィン42aは第1、第2のブラシ5、6及び整流子9との間のエアを斬って、第1、第2のブラシ5、6及び整流子9に向かう風力を発生さる。これによって、エアが第1、第2のブラシ5、6と整流子9の接触部及びその近傍に吹き付けられ、第1、第2のブラシ5、6と整流子9の接触による発熱が抑えられ、第1、第2のブラシ5、6と整流子9を冷却することができる。また、第1、第2のブラシ5、6と整流子9の接触による発熱で温まったエアを移動さることでケース2内の温度を下げることも可能となる。
【0025】
一方、フィン42aの突出方向とは異なる方向にモータが駆動した場合、つまり図5(b)の矢印で示すCW方向にシャフト3を回転すると、フィン42aは第1、第2のブラシ5、6と整流子9の接触部及びその近傍のエアを取り込み、開口部43aからベアリング30側にエアを流す。これによって、ベアリング30に向かう風力を発生する。これによって、第1、第2のブラシ5、6と整流子9の接触による発熱で温まったエアを、開口部43aを介してベアリング30側に流れ、第1、第2のブラシ5、6及び整流子9周辺の温度を下げることができる。
【0026】
また、第1、第2のブラシ5、6と整流子9の接触部近傍のエアを、開口部43aを介してベアリング30側に流すことで、第1、第2のブラシ5、6と整流子9の接触で発生したブラシ摩耗粉をケース2の外側に向かって排出することが可能となる。
【0027】
更に、本実施の形態におけるオイルディフェンサー40のベース部44には図3図4(c)に示すようにリブ(突起部)45が形成されている。このリブ45はベース部44の周面に沿ってベアリング30側に突き出るように形成されている。このリブ45によって、ベアリング30のオイルが開口部43aから整流子9側に入り込むことを阻止する。
【0028】
本実施の形態によれば、ブラシ5、6と整流子9の近傍に、オイルディフェンサー40にシャフト3と同期して回転する複数のフィン42a~42fを設けたので、簡単な構成で効率よく、冷却が可能となる。また、小さいフィン構造によって、モータ特性への影響がなく、また騒音が発生することもない。
【0029】
さらに、ケース2内に複数のフィン42a~42fを設けたので、モータの大型化を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ブラシモータ
1a 固定子
1b 回転子
2 ケース
3 シャフト
5 第1のブラシ
6 第2のブラシ
9 整流子
30 第1のベアリング
40 オイルディフィンダー
41 プレート部
42a~42f フィン
43a~43f 開口部
44 ベース部
45 リブ
46 開口
図1
図2
図3
図4
図5