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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103485
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20220701BHJP
   H02K 23/00 20060101ALI20220701BHJP
   H02K 3/487 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
H02K9/06 G
H02K23/00 Z
H02K3/487 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218145
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】楠 徳郎
【テーマコード(参考)】
5H604
5H609
5H623
【Fターム(参考)】
5H604BB07
5H604CC02
5H604DB01
5H604PB03
5H609BB06
5H609PP02
5H609PP07
5H609QQ02
5H609RR06
5H609RR33
5H609RR42
5H623AA08
(57)【要約】
【課題】 モータの温度上昇を低減することが可能になるブラシモータを提供することを目的とする。
【解決手段】 回転軸3を支点に回転する回転子6と、回転子6の回転モーメントを付与する固定子7を有するモータであって、回転軸に固定される鉄心4と、鉄心4に巻装される巻線17と、鉄心4と巻線17との間に設けられた樹脂成形された絶縁体20と、エアの流入する流入口とエアが流出する流出口とが形成され、鉄心4と絶縁体20との間にエアが移動する空洞部21を設けた。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、前記回転軸を支点に回転する回転子と、前記回転子の回転モーメントを付与する固定子と、を備えたモータにおいて、
前記回転子は、前記回転軸に固定される鉄芯と、前記鉄芯に巻装される巻線と、前記鉄心と前記巻線との間に設けられた樹脂成形された絶縁体と、前記鉄芯と前記絶縁体との間に設けられた空洞部と、を有し、
前記空洞部は、エアの流入する流入口と、エアが流出する流出口とを有し、空洞内をエアが移動するように構成したモータ。
【請求項2】
前記鉄芯は、前記巻線が巻かれる放射状に延設された複数の巻付部を有し、
前記絶縁体は、前記鉄芯の複数の前記巻取部を覆う複数の被覆部を有し、
前記空洞部は、1つの前記巻付部と前記被覆部との間に前記流入口を形成するとともに他の1つの前記巻付部と前記被覆部との間に前記流入口を形成し、前記回転子の回転に伴って前記流入口と前記流出口が切り換わる請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記空洞部を前記鉄心と前記絶縁体との隙間で形成した請求項1または請求項2に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータに関し、詳しくはモータ回転軸に締結され鉄心と、回転力を発生させる巻線と、鉄心と巻線の絶縁を行う絶縁部材とを備えたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータは、一端側が閉鎖され、他端側が開放された円筒状のケースと、このケース内に配設される固定子(ステータ)及び回転子(ロータ)と、回転子が取り付けられる回転軸(シャフト)と、ケース2の開放部を閉塞するブラケットを備える。
【0003】
このようなブラシモータにおいて特許文献1には、モータの発熱を抑えるために固定子の鉄心(コア)と巻線(コイル)との間に設けられた絶縁体(インシュレータ)を樹脂部品で形成し、この樹脂部品にファンを取り付けて、風の流れを利用して、発熱を抑えるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-161044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では樹脂形成された絶縁体、すなわち樹脂インシュレータにファンを形成しているため、形成されたファンが巻線を巻く際の妨げとなり、巻線の断線などの不具合が発生する恐れがある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、巻線に支障を与えることなくモータの温度上昇を低減することが可能になるブラシモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、回転軸と、回転軸を支点に回転する回転子と、回転子の回転モーメントを付与する固定子と、を備えたモータにおいて、回転子は、回転軸に固定される鉄心と、鉄心に巻装される巻線と、鉄心と巻線との間に設けられた樹脂成形された絶縁体と、を有し、鉄心と絶縁体との間にエアが移動する空洞部を設けた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、空洞内に空気の流れを発生させることで、鉄心と巻線を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のブラシモータを示す断面図である。
図2】(a)はブラシモータの鉄心の巻付部を示す拡大斜視図、(b)は鉄心の巻付部を示す拡大上面図である。
図3】(a)はブラシモータの樹脂インシュレータを示す正面図、(b)は樹脂インシュレータを示す背面図である。
図4】(a)、(b)は、樹脂インシュレータの先端部を示す拡大図である。
図5】ブラシモータ内の風の流れを説明する説明図である。
図6】樹脂インシュレータの先端部の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係るモータを示す断面図である。以下、図面を参照して、本発明をブラシモータに適用した実施の形態について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のブラシモータ1は、モータ回転軸としてのシャフト3と、回転する回転子6と、回転子6に回転モーメントを付与する固定子7と、を備えている。回転子6は、シャフト3の長手方向中央部を含む左寄りの位置に磁束の通路となる円柱状の鉄心(コア)4が固定されている。鉄心4は放射状に延設され、巻線17が巻き付けられる巻付部41が設けられている。鉄心4の巻付部の周部には長手方向に沿って複数本の歯(コアティース)と複数本の溝(コアスロット)が形成されており、これらの溝に巻線(コイル)17が多数回巻き付けられている。このため、鉄心4の両側に巻線17が膨らむように配設された構造となる。なお、鉄心4と巻線17との間には両者の絶縁を保つ絶縁体(インシュレータ)20が介在している。なお、鉄心4の複数本の巻付部41は、シャフト3に取り付けられる中心部から放射状に等間隔で形成されている。
【0012】
また、シャフト3には、鉄心4の一方側には、巻線17に流れる電流の方向と相を切り替えるための整流子(コミテータ)9が固定されている。なお、整流子9の鉄心4側には巻線17と接続するためのフック部が設けられている。従って、ブラシモータ1では、シャフト3、鉄心4、巻線17、絶縁体20および整流子9により回転子(ロータ)が構成されている。
【0013】
図1に示すように、回転子6を構成する鉄心4および巻線17(巻線部)の外側には、回転子のトルク発生に必要な磁束を発生させる複数の円弧状のマグネット(永久磁石)14が配置されている。マグネット14は外装ケース2の内周側にそれぞれ等間隔で固定されている。外装ケース2は、発生した磁束の通路を構成するとともに、モータ外部への磁束の漏れを防ぐために鋼板が用いられている。
【0014】
外装ケース2の開口部は円板状の反出力軸側のブラケット10及び出力軸側のブラケット11で封止されており、反出力軸側のブラケット10及び出力軸側のブラケット11の中央部にはシャフト3を挿通するための丸穴が形成されている。反出力軸側のブラケット10及び出力軸側のブラケット11の材質には外装ケース2と同様に鋼板が用いられている。なお、本実施形態では、外装ケース2と反出力軸側のブラケット10と出力軸側のブラケット11とでブラシモータ1の外装ケースを構成している。
【0015】
両側のブラケット10、11の中央部に形成された開口部にはそれぞれシャフト3を支持する軸受部材12a、12bが固定されており、シャフト3はこれらの軸受部材12a、12bに回転自在に支持される。
【0016】
整流子9の周面には、黒鉛を主材料とするブラシ5の一端が圧接されている。また、圧縮バネ15がブラシ5を付勢して整流子9に当接させるように構成されている。ブラシ5は2個で一対となっており180゜対称の位置に配置されている。
【0017】
図1に示すように、ブラシモータ1は電源と接続するための電源のマイナス(-)側に接続されるリード線13a及びプラス(+)側に接続されるリード線13bを有しており、リード線13a及びリード線13bの端部には電源接続用のコネクタが設けられている。なお、リード線13a及びリード線13bはブラケット10に形成された孔を介して外装ケース内に導入され、ブラシ5に接続されている。
【0018】
本実施の形態のブラシモータ1では、モータ内の発熱を抑えるため、絶縁体20に樹脂形成部品を用い、樹脂形成された絶縁体20と鉄心4との間に空洞21を構成している。以降において便宜上、樹脂形成された絶縁体20を樹脂インシュレータ20という。
【0019】
図2(a)は本実施の形態の鉄心の巻付部を示す拡大斜視図であり、図2(b)は鉄心の巻付部を示す拡大上面図である。図3(a)は樹脂インシュレータを示す正面図である。(b)は樹脂インシュレータを示す背面図である。図4(a)、(b)は樹脂インシュレータの先端部を示す拡大図である。
【0020】
図4に示すように本実施の形態では鉄心4に形成されている巻付部41a~41gの数は7とした。樹脂インシュレータ20は、図2図3で示すように鉄心4を覆う形状であり、シャフト3の一部を覆うとともにシャフト3に圧入される圧入部201、鉄心4の巻付部41を被覆部202、接続部203で構成されている。樹脂インシュレータ20のシャフト3を覆う圧入部201は円筒状であり、被覆部202a~202gは鉄心4の各巻付部41a~41gの外形に沿った形状をして等間隔で7つの方向に放射状に外側に伸びた7つの第1~第7の被覆部202a~202gに分かれている。また、樹脂インシュレータ20の第1~第7の被覆部202a~202g及び接続部203は、鉄心4との間に隙間を有するように形成されており、樹脂インシュレータ20と鉄心4との間には空洞21がある。
【0021】
樹脂インシュレータ20の圧入部201と7つの被覆部202a~202gを接続する部分は中心部のシャフト3から所定距離に離れた接続部203で構成されている。樹脂インシュレータ20の第1~第7の被覆部202a~202gと鉄心4の第1~第7の巻付部41a~41gとの隙間からなる第1~第7の空洞21a~21gはすべて接続部203の空洞26につながるため、各空洞21a~21gは接続部203の空洞26を介してすべてが連通している。
【0022】
樹脂インシュレータ20の各被覆部202a~202gと鉄心4の各巻付部41a~41gの外径とほぼ同じ形状をしている。また各被覆部202a~202gの先端部の一端側は、鉄心4の各巻付部41a~41gの先端面からシャフト3側に凹んだ凹部48a~48gが形成されている。凹部48a~48gの外周については、巻付部の対称中心より樹脂インシュレータ20の各被覆部202a~202gの周方向の端面に向かってなめらかな曲線で構成されている。
【0023】
凹部48a~48gは、図4(a)に示すように反時計回り方向の端部を距離Laだけ凹ました第1の形態と、図4(b)に示すように時計回り方向の端部を距離Laだけ凹ました第2の形態とに形成可能である。例えば、樹脂インシュレータ20の各被覆部202a~202gのすべてを第1の形態または第2の形態に構成することもできる。また樹脂インシュレータ20の各被覆部202a~202gに第1、第2の形態を混在させて構成することもできる。なお、この樹脂インシュレータ20の各被覆部202a~202gの先端部分の形状が巻線17と鉄心4を効率的に冷却する役割を果たしている。
【0024】
図5は、回転子時計方向(CW)に回転時のブラシモータ内の風の流れを説明する説明図である。ブラシモータ1は図5に示すように、固定子7のマグネット14と鉄心4が対向している部分のギャップL2はモータ特性を得るために非常に狭く設定されており、固定子7のマグネット14に対向していない部分のギャップL1は広く設定されている。
【0025】
回転子6が時計方向CWに回転すると、回転子6周辺のエアは回転子6の回転にならうように時計方向CWに流れている。広いギャップL1のエリアを流れているエアは、マグネット14と鉄心4の各巻付部41a~41gが対向して狭いギャップL2のエリアでは、エアの流れを妨げるためにエアの圧力が上昇し、流れを妨げられたエアは空洞21a~21g、26内を流れる。
【0026】
図6に基づいて、上述のエアの流れについて詳細に説明する。回転子6の時計方向CWの回転によって広いギャップL1のエリアで時計方向CWに流れている空気は狭いギャップL2のエリアで流れを妨げられる。流れ妨げられたエアは、エア圧力の低い凹部48bから第2の空洞21bに流れ込む。第2の空洞21bに流れ込んだエアは、さらにエア圧力の低いエリアを目指して流れる(図6中の破線で示す矢印方向を参照)。そして、中央の接続部203の中央空洞26に流れ、広いギャップL1のエリアに臨む3つの第1、第4、第5の空洞21a、21d、21eを介して樹脂インシュレータ20の外に流れる。なお、上述した説明では、第2の空洞21bからエアが流入し、3つの第1、第4、第5の空洞21a、21d、21eからエアが流出することを説明したが、回転子6が時計方向CWに回転する場合、反時計回り方向の端部に凹部48b、48e、48gが形成された第2、第5、第7の空洞21b、21e、21gが広いギャップL1のエリアを通過する毎に、順次にエアが樹脂インシュレータ20内に流入し、広いギャップL1のエリアに臨む第1~7の空洞21
~21gのいずれかの空洞から流出する。つまり、回転子6の時計方向CWの回転によって流入する空洞と流出する空洞が順次に切り換わっていく。
【0027】
上述の構成によれば、回転子6の時計方向CWの回転よって、樹脂インシュレータ20内にエアの流れが発生するため、樹脂インシュレータの中を風が通ることで鉄心と巻線を冷却することが出来る。
【0028】
また、本実施の形態では、回転子6が反時計方向CCWに回転しても、図5に示すように反時計回り方向の端部に凹部48a、48c、48d、48fが形成された第1、第3、第4、第6の空洞21a、21c、21d、21fが広いギャップL1のエリアを通過する毎に、順次にエアが樹脂インシュレータ20内に流入し、広いギャップL1のエリアに臨む第1~7の空洞21a~21gのいずれかの空洞から流出する。つまり、回転子6の反時計方向CWの回転によっても流入する空洞と流出する空洞が順次に切り換わって、樹脂インシュレータ20内に流入にエアが流れるようになっている。これにより、回転子6が反時計方向CCWに回転しても時計回りCWの場合と同様に巻線4と鉄心17を冷やすことができる。
【0029】
上述の実施の形態によれば、ブラシモータ1内部の回転子6を構成する樹脂インシュレータ20に鉄心4と巻線17を冷却する空洞21をすべての鉄心4に形成し、回転子6の回転により空洞21内にエア流すように構成したので、巻線4と鉄心17の冷却することが可能になる。
【0030】
ここで、各被覆部202a~202gの先端部の各空洞21a~21g、すなわちエアの流入口は、エアが流入し易い形状に構成することが望ましい。例えば、図6に示すように各被覆部202a~202gの先端部に複数も流入出口を形成することも可能である。この実施の形態では、樹脂インシュレータ20のエアの流入出口部23に複数のエアの流入出口24a~24dで構成している。これによって、エアの流れをより空洞21b内に向けることができる。なお、より効率的に風を流すために内側242a~242dの幅を広くするとよい。勿論、同一の幅としてしても、よく各流入出口24a~24dを個別に変えてもよい。
【0031】
上述の実施の形態では、樹脂インシュレータ20の各被覆部202a~202gの凹部48a~48gが形成された先端部を各被覆部202a~202gと分離して、各被覆部202a~202gに対して着脱可能な構成にしてもよい。このように凹部48a~48gが形成された先端部を別体で構成することによって、ブラシモータの特性や使われ方、使用環境等に応じて、エアの流入量を調整することも可能になる。
【0032】
また、上述の実施の形態では、樹脂インシュレータ20が鉄心4を覆うように形成しているが、樹脂インシュレータ20を鉄心4の各巻付部41a~41gの先端側のみを覆うように設け、各空洞部21a~21gを鉄心4の各巻付部41a~41gの先端側のみに形成してもよい。これによって、巻線17から発生する熱が多き場合に、より多く巻線17を冷却することができ、効率の良い冷却が可能となる。なお、この場合、樹脂インシュレータ20で覆われない他の鉄心4の部分は粉体塗装であるプラスチックコーティングすればよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ブラシモータ
2 外装ケース
3 シャフト
4 鉄心(コア)
5 ブラシ
9 整流子(コミテータ)
14 マグネット
17 巻線(コイル)
20 樹脂インシュレータ(絶縁体)
21 空洞
21a~21g 第1~第7の空洞
41a~41g 第1~第7の巻付部
48a~48g 凹部48a~48g
201 圧入部
202 被覆部
202a~202g 第1~第7の被覆部
203 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6