(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103514
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】フラットデッキコンテナ
(51)【国際特許分類】
B65D 90/00 20060101AFI20220701BHJP
B60P 7/13 20060101ALI20220701BHJP
B65D 88/12 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B65D90/00 F
B60P7/13
B65D88/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218202
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 惠介
【テーマコード(参考)】
3E070
3E170
【Fターム(参考)】
3E070AA25
3E070AA33
3E070AB40
3E070DA01
3E070WH04
3E070WH10
3E070WJ01
3E170AA21
3E170AA28
3E170AB30
3E170DA01
3E170WE04
3E170WE06
3E170WF01
(57)【要約】
【課題】段積み時の前後長の増加を抑えることができるフラットデッキコンテナを提供する。
【解決手段】コンテナ脱着車両に積み降ろしされるフラットデッキコンテナにおいて、前後に延びる左右の縦根太と、前記縦根太に支持された平板状のデッキと、前記デッキの前側に設けたポストと、前記ポストの上部に設けた前記コンテナ脱着車両のフックとの係合用の係合部材とを含んで構成され、前記ポストの左右の幅が前記左右の縦根太の間隔よりも狭く、前記ポストが後方に回動可能に構成され、前記デッキの上面に沿うように前記ポストを後方に倒し、同一構成の他のフラットデッキコンテナを上から重ねた場合に、前記他のフラットデッキコンテナの左右の縦根太の間に前記ポストが収まり、後方に倒した状態の前記ポストの最高部が、前記他のフラットデッキコンテナのデッキの下面よりも低くなるように構成されているフラットデッキコンテナを提供する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ脱着車両に積み降ろしされるフラットデッキコンテナにおいて、
前後に延びる左右の縦根太と、
前記縦根太に支持された平板状のデッキと、
前記デッキの前側に設けたポストと、
前記ポストの上部に設けた前記コンテナ脱着車両のフックとの係合用の係合部材とを含んで構成され、
前記ポストの左右の幅が前記左右の縦根太の間隔よりも狭く、
前記ポストが後方に回動可能に構成され、
前記デッキの上面に沿うように前記ポストを後方に倒し、同一構成の他のフラットデッキコンテナを上から重ねた場合に、前記他のフラットデッキコンテナの左右の縦根太の間に前記ポストが収まり、後方に倒した状態の前記ポストの最高部が、前記他のフラットデッキコンテナのデッキの下面よりも低くなるように構成されている
ことを特徴とするフラットデッキコンテナ。
【請求項2】
請求項1のフラットデッキコンテナにおいて、
前記ポストは、
前記係合部材を支持する本体部と、前記本体部の下端に設けたブラケット部とを含んで構成され、左右に延びる回転軸で前記ブラケット部が支持され、前記デッキに相対して回動するように構成されており、
前記本体部を後方に倒した状態で前記回転軸の中心線から前方に突出する部分の前後寸法が、起立した状態の前記本体部の後面と前記回転軸の中心線との距離よりも小さく設定されている
ことを特徴とするフラットデッキコンテナ。
【請求項3】
請求項2のフラットデッキコンテナにおいて、
前記ポストが前記回転軸を支点に前方に回動可能に構成されており、
前記本体部が起立した状態で前記回転軸の中心線から前方に突出する部分の前後寸法が、前記回転軸の中心線から下側の部分の上下寸法以下に設定されている
ことを特徴とするフラットデッキコンテナ。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか1項のフラットデッキコンテナにおいて、
前記デッキの下面の後部に設けたローラと、
前記ローラに上下位置が対応するように前記デッキの上面に設けた凹状のローラ受けと
を備えたことを特徴とするフラットデッキコンテナ。
【請求項5】
請求項4のフラットデッキコンテナにおいて、
前記ローラは前記デッキの左右に設けられており、左右のローラの間隔が前記ポストの左右の幅よりも広いことを特徴とするフラットデッキコンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ脱着車両に積み降ろしされるフラットデッキコンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナ脱着車両は、搭載した荷役装置のフックをコンテナに掛け、車体上と地上との間でコンテナを積み降ろしする機能を備えている。このコンテナ脱着車両のフックを掛ける係合部材を平らなデッキの前部にポストを介して設け、コンテナ脱着車両に積み降ろしできるように構成されたフラットデッキコンテナが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラットデッキコンテナには、不使用時に段積みして保管又は仮置きしておける利点がある。特許文献1のフラットデッキコンテナは、デッキの前部に設けたポストが干渉することから垂直に積み重ねることができず、1段下のフラットデッキコンテナに対して後方にずらして重ねざるを得ない。そのため、同文献のフラットデッキを多段に重ねるとずれが重畳し、最下段のフラットデッキに対して最上段のフラットデッキが大きく後方にずれる。結果として多段に段積みしたフラットデッキコンテナは、単体のフラットデッキコンテナに対し、段数に比例して前後長が増し水平投影面積が前後に拡大してしまう。
【0005】
例えば、フラットデッキコンテナを段積みし海上コンテナに納めて輸送する場合、フラットデッキコンテナは段積みした状態で海上コンテナの所定寸法の内部空間に収まらなければならない。特許文献1のフラットデッキコンテナの構造の場合、段積みすると前後長が増加するため、海上コンテナに複数納めて輸送するには、個々のフラットデッキコンテナの前後長を短縮せざるを得ず、所定のデッキ面積を確保することが難しい。
【0006】
本発明の目的は、段積み時の前後長の増加を抑えることができるフラットデッキコンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、コンテナ脱着車両に積み降ろしされるフラットデッキコンテナにおいて、前後に延びる左右の縦根太と、前記縦根太に支持された平板状のデッキと、前記デッキの前部に設けたポストと、前記ポストの上部に設けた前記コンテナ脱着車両のフックとの係合用の係合部材とを含んで構成され、前記左右の縦根太の間隔が前記ポストの左右の幅よりも広く、前記ポストが後方に回動可能に構成され、前記デッキの上面に沿うように前記ポストを後方に倒し、同一構成の他のフラットデッキコンテナを上から重ねた場合に、前記他のフラットデッキコンテナの左右の縦根太の間に前記ポストが収まり、後方に倒した状態の前記ポストの最高部が、前記他のフラットデッキコンテナのデッキの下面よりも低くなるように構成されているフラットデッキコンテナを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フラットデッキコンテナの段積み時の前後長の増加を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフラットデッキコンテナがコンテナ脱着車両に積み込まれた状態を表す図
【
図2】本発明の一実施形態に係るフラットデッキコンテナを左前方から俯瞰した斜視図
【
図3】本発明の一実施形態に係るフラットデッキコンテナを左後方から仰ぎ見た斜視図
【
図4】本発明の一実施形態に係るフラットデッキコンテナの前部を拡大して表す斜視図
【
図5】本発明の一実施形態に係るフラットデッキコンテナのポストを前後に倒した様子を表した図
【
図6】本発明の一実施形態に係るフラットデッキコンテナのポストの根元部分の拡大図
【
図7】本発明の一実施形態に係るフラットデッキコンテナのポストの根元部分の拡大図
【
図8】本発明の一実施形態に係るフラットデッキコンテナを段積みした状態の前部の断面図で、
図4のVIII-VIII線による矢視断面に相当する図
【
図9】本発明の一実施形態に係るフラットデッキコンテナの段積み状態の側面図
【
図10】コンテナ脱着車両により
図1のフラットデッキコンテナを段積みする例の説明図
【
図11】段積みされた
図1のフラットデッキコンテナをコンテナ脱着車両によりばらす例の説明図
【
図12】段積みされた
図1のフラットデッキコンテナを海上コンテナに納めた様子を表す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明のフラットデッキコンテナの実施の形態を説明する。
【0011】
-フラットデッキコンテナ-
図1は本発明の一実施形態に係るフラットデッキコンテナがコンテナ脱着車両に積み込まれた状態を表す図、
図2は
図1のフラットデッキコンテナを左前方から俯瞰した斜視図、
図3は左後方から仰ぎ見た斜視図である。
図4はフラットデッキコンテナの前部を拡大して表す斜視図、
図5は後述するポストを前後に倒した様子を表した図、
図6及び
図7はポストの根元部分の拡大図である。また、
図8は段積み状態のフラットデッキコンテナの前部の断面図で、
図4のVIII-VIII線による矢視断面に相当する図、
図9は段積み状態のフラットデッキコンテナの側面図である。以下、
図1中の左右を前後としてフラットデッキコンテナ(以下、フラットデッキコンテナを「コンテナ」と略記する)の構成を説明する。
【0012】
図1-
図9に示したコンテナ1は、コンテナ脱着車両100(以下、コンテナ脱着車両を「脱着車」と略記する)に搭載されたコンテナ荷役装置101により、脱着車100に対して積み降ろしされる。このコンテナ1は、左右の縦根太10、デッキ20、ポスト30、係合部材40、左右の支持脚50(
図2)及び左右のローラ60を含んで構成されている。
【0013】
-縦根太-
左右の縦根太10は、縦長の矩形断面の棒状の部材であり、互いに平行に前後方向に延在している。縦根太10の後端はデッキ20の後端に位置しており、縦根太10の前端部11はデッキ20の前端から前方に突出している。これら縦根太10は、コンテナ1の強度部材であると共に、脱着車100にコンテナ1を積み降ろしする際に脱着車100の後部に位置するガイドローラ102(
図1)で受けられる部材を兼ねる。そのため、左右の縦根太10の間隔は、ガイドローラ102の間隔に合わせて設定されている。縦根太10の前後方向の中央部には、2か所ずつ穴を設けてフォークポケット12(
図3)が形成されており、これらフォークポケット12にフォークリフトのフォークを挿し込んでコンテナ1をフォークリフトで運搬できるようになっている。
【0014】
-デッキ-
デッキ20は、縦根太10の上部に支持された平板状の部材であり、平板状のフロア21及び複数の横根太22(
図3)を含んで構成されている。フロア21は積載物を受ける荷受面を構成するプレートである。横根太22は、縦根太10に交差して左右方向に延在する棒状の部材であり、一定間隔で前後方向に複数並べてフロア21の下面に固定してある。横根太22もコンテナ1の強度部材であるが、縦根太10よりも個々の断面積は小さく、フロア21の下面からの突出量は縦根太10に対して小さい。つまり、縦根太10の下面に対し、横根太22の下面は高位置である。
【0015】
デッキ20のフロア21の上面における後端部の左右(左右の縦根太10よりも左右方向の外側の位置)には、ローラ60に上下位置が対応するように設けた凹状のローラ受け(窪み)23が設けられている。各ローラ受け23の左右方向の幅は、ローラ60の左右方向の幅に応じており、ローラ60の左右方向の幅よりも若干広い程度に設定されている。ローラ受け23の深さ寸法、つまりフロア21の上面とローラ受け23の底との高低差は、少なくともローラ60の半径よりは小さい。
【0016】
本実施形態では、フロア21の上面には、積載物の固定等に利用するストッパや切り欠き等は設けられていないが、必要に応じてストッパや切り欠きを設けても良い。ストッパや切り欠きがないことで、単体で広い積載スペースを要する大きな積載物にストッパ等が干渉することがなく、そのような大きな積載物を安定的に積載することができ、コンテナ1の部品点数や製造コストも抑えられる。ストッパ等を設ければ、比較的小さな積載物を積載する場合に有用である。
【0017】
なお、本実施形態では、フロア21の左右両側、つまりデッキ20の左右両側には、前後に延びるフラットバー状の壁部材26を介して丸環24が取り付けられている。この丸環24は、前後方向に適当な間隔で複数設けられており、例えばコンテナ1をクレーンで吊る際にワイヤを掛けるのに利用される。積載物を固定する際のロープを丸環24に掛けることもできる。特に図示していないが、壁部材26には、積載物を固定するロープを掛けるためのロープフックも適宜設けられ得る。
【0018】
また、フロア21の後端つまりデッキ20の後端には、左右に延びるフラットバー状の壁部材27(
図3)が取り付けられている。この壁部材27には、例えばクレーンでコンテナ1を移動させる際等にコンテナ1が障害物に衝突した際の衝撃を緩和するクッション(例えばゴム)を取り付けることができる。壁部材27については、ポスト30を後方に倒したコンテナ1の上にもう1つコンテナ1を重ねた場合、下段のコンテナ1のポスト30の最上部よりも上段のコンテナ1の壁部材37の下面が高くなるように上下の幅が調整してある。なお、壁部材26,27は、必要ない場合には省略可能である。
【0019】
また、フロア21の前端面には、左右方向の中央部(左右の縦根太10の前端部11の間)の位置にブロック25が設けられている。このブロック25は、脱着車100からコンテナ1を降ろす際、コンテナ荷役装置101のアーム103(
図1)の背面でコンテナ1を後方に押し下げるときにアーム103を受ける構造物である。
【0020】
-ポスト-
ポスト30は、デッキ20の前側に設けられており、本体部31、ブラケット部32を含んで構成されている。本体部31は、上記係合部材40を支持する部材であり、左右の2本の支柱33を連結部材34で連結して門型に形成されている。左右の支柱33は上方に向かって互いの間隔が狭まるように全体に傾斜しており、下部に比べて上部の左右方向の幅が狭まっている。ブラケット部32は、左右の支柱33に対応して2つ設けられており、対応する支柱33の下端部に固定されている。支柱33とブラケット部32は別々に製作して溶接等で接合したものであっても良いし、一体に成型したものであっても良い。左右のブラケット部32は、左右の縦根太10の内側の側面に取り付けられ、左右の縦根太10の間に位置している。ブラケット部32はまた、左右に延びる回転軸35を介して各々対応する縦根太10の前端部11に連結されて支持されている。これにより、デッキ20に相対してポスト30が回転軸35を支点に回動するように構成されている。ポスト30は、
図4や
図5に示したように、回転軸35を支点に後方にも前方にも回動可能である。
【0021】
ここで、
図8を参照する。同図では、ポスト30を起立させたコンテナ1を最下段として、その上にポスト30を後方に(デッキ20’のフロア21’の上面に沿って)倒した別のコンテナ1’を直上に重ね合わせた状態(四隅を合わせて段積みした状態)が図示してある。また、コンテナ1の横根太22は最も前方に位置するもののみを図示し、コンテナ1’についても同じく最前に位置する横根太22’のみ図示してある。また、同図中には、コンテナ1’の上に更にもう1段別のコンテナ1”(不図示)を同じ要領で重ねた仮定で、コンテナ1”の最前の横根太22”がくる位置を二点鎖線で表示してある。コンテナ1’,1”は、本実施形態に係るコンテナ1とサイズ、形状及び構成が同一であり、同図中において、コンテナ1,1’,1”は全て水平(つまりデッキのフロアの上面が水平)であるものとする。同図ではコンテナ1,1’,1”の要素を、説明の便宜上、コンテナ1,1’,1”と同様にしてクォーテーションやダブルクォーテーションを用いて符号を区別してあるが、符号の数字部分が同じ要素同士はサイズ、形状及び構成とも同じものである。
【0022】
まず、
図8において、2段目の(つまりポスト30’を後方に倒した)コンテナ1’のフロア21’の上面からポスト30’の最上部までの上下寸法をAとする。また、同じコンテナ1’のフロア21’の上面からその1段上のコンテナ1”(不図示)のデッキの最下部(二点鎖線で示した横根太22”の下面)までの上下寸法をBとする。本実施形態では、寸法Aが寸法Bよりも小さくなるように設定されている(A<B)。但し、寸法A,Bは、いずれもデッキやポスト30の十分な強度が得られる値である。
【0023】
前述した通り、ポスト30は、左右のブラケット部32がいずれも左右の縦根太10の間に位置し先端に向かって窄まっている。ポスト30の左右方向の最大幅(左右の支柱33の下部の外法及び左右のブラケット部32の外法のうち大きい方の値)を、左右の縦根太10の間隔(左右の縦根太10の間の距離)よりも狭くするためである。この構成により、ポスト30’を後方に倒したコンテナ1’に同一構成の他のコンテナ1”を上から重ねた場合に、コンテナ1”の左右の縦根太(不図示)の間にポスト30’が収まる。そして、上記の通りA<Bとなるように寸法を設定したことにより、コンテナ1’の後方に倒した状態のポスト30’の最高部(後方に倒れた状態で上を向く本体部31’の前面)が、コンテナ1”のデッキの最下部(横根太22”の下面)よりも低くなる。このように、ポスト30’を後に倒したコンテナ1’に別のコンテナ1”を重ねても、コンテナ1’のポスト30’とコンテナ1”のデッキとの間に上下のギャップGが介在し、下段のコンテナ1’のポスト30’が上段のコンテナ1”の要素に干渉しない構成としてある。
【0024】
次に、
図8において、コンテナ1’のポスト30’の部位のうち、本体部31’を後方に倒した状態で回転軸35’の中心線から前方に突出する部分の前後方向の寸法をCとする。また、コンテナ1の起立した状態の本体部31の後面と回転軸35の中心線との距離をDとする。本実施形態では、寸法Cが距離Dよりも小さく設定されている(C<D)。ポスト30を起立させたコンテナ1にコンテナ1’,1”…と段積みしていっても、2段目以上のコンテナが起立したポスト30に前後に干渉しない構成となっている(
図8及び
図9)。
【0025】
そして、コンテナ1のポスト30の部位のうち、ポスト30の本体部31が起立した状態で回転軸35の中心線から前方に突出する部分の前後寸法をEとする。また、コンテナ1の部位のうち回転軸35の中心線から下側の部分の上下寸法をFとする。本実施形態では、寸法Eが寸法F以下に設定されている(E≦F)。これにより、コンテナ1を水平地に置いて
図5に示したようにポスト30を前方に倒すと、先端が地面に着くまで(つまり前方に90度又はそれ以上)ポスト30が前に倒れ、コンテナ1を完全にフラットに展開できる。E≦Fとなるように構成したことで、この展開動作がポスト30自体の地面との干渉により阻害されることがない。この展開動作を制限するようなストッパ等の構造物がコンテナ1に備わっていないことは言うまでもない。
【0026】
なお、
図8において、回転軸35’の中心線からコンテナ1’のフロア21’の上面までの上下寸法をMとする。また、同じコンテナ1’の回転軸35’の中心線からからポスト30’の本体部31’の最下部(後方に倒れた姿勢で下を向く後面)までの上下寸法をNとする。本実施形態では、寸法Mが寸法Nと同一かそれよりも僅かに小さくなるように設定されている(M≦N)。そのため、デッキ20のフロア21の上面に沿う姿勢まで(つまり後方に90度又はそれ以上)ポスト30が後方に倒れる。この倒伏動作を制限するようなストッパ等の構造物がコンテナ1に備わっていないことも言うまでもない。
【0027】
その他、ポスト30は起立した姿勢ではピン36で固定される。具体的には、ポスト30のブラケット部32と縦根太10の前端部11には、それぞれピン穴37,13(
図4)が設けられており、ポスト30の本体部31を垂直に起立させると、ピン穴37,13の位置が合う。この状態でピン穴37,13にピン36を通すことでポスト30が起立した姿勢で保持される。本実施形態において、ポスト30が倒れた状態でピン36は使用されないので、適用な位置(本実施形態ではポスト30の左右の支柱33の互いの対向面)にピンホルダー38を設け、不使用時のピン36が仮置きできるようにしてある(
図4)。
【0028】
なお、後方又は前方に倒れた姿勢のポスト30を固定するピン等の手段はコンテナ1には備わっていないが、必要があればピン穴を適宜追加し、後方又は前方に倒れた姿勢のポスト30を固定する手段としてピン36を流用することができる。
【0029】
-係合部材-
係合部材40は、脱着車100に搭載されたコンテナ荷役装置101のアーム103の先端のフック104を掛ける要素である。本実施形態では弓形の棒状部材が係合部材40として用いてあり、ポスト30の左右の支柱33の上部の間に掛け渡してある。係合部材40はフック104が掛けられる構成であれば良く、棒状でなくても例えばリング状等、形状は変更可能である。コンテナ1を脱着車100で操作する際には、フック104を係合部材40に掛けてコンテナ荷役装置101を駆動したり脱着車100を走行させたりする。
【0030】
-支持脚-
左右の支持脚50は、コンテナ1の前側の支持構造体であり、デッキ20の前部の下面の左右両側部分に設けられており、デッキ20の前端部から前方に突出している。これら支持脚50は、前面、上面、下面、及び左右方向の外側を向く側面に各1つの凹部を備えており(
図3及び
図4)、隅金具として機能する。
図9のようにコンテナ1の上にコンテナ1’を積む場合、コンテナ1の支持脚50の上面にコンテナ1’の支持脚50’の下面を重ね、支持脚50,50’を連結することでコンテナ1,1’が互いに固定される。
【0031】
なお、例えば支持脚50の前面に、例えばクレーンでコンテナ1を移動させる際等にコンテナ1が障害物に衝突した際の衝撃を緩和するクッション(例えばゴム)を設けても良い。
【0032】
-ローラ-
左右のローラ60は、コンテナ1の後側の支持構造体であると共にコンテナ1の前後移動を助ける要素であり、デッキ20の後部の下面の左右両側部分に設けられている。支持構造体であるため、面圧を下げるためにローラ60には幅広のものが用いられ、本実施形態においてローラ60の幅寸法はローラ60の直径よりも大きい(
図3)。ローラ60の回転軸は左右に延びる。左右のローラ60は、ローラ受け23と平面視で位置が重なっている。左右のローラ60は左右の縦根太10よりも左右方向の外側に位置し、左右のローラ60の間隔はポスト30の左右方向の幅よりも広い。
【0033】
図9に一点鎖線で示した通り、ローラ60は、デッキ20の上面が水平な状態で、その下縁の高さが支持脚50の下面の高さに合うように構成されている。また、ポスト30が起立した状態又は後方に倒れた状態において、支持脚50及びローラ60の最下部は、縦根太10の下面よりも下側に位置し(
図8及び
図9)、コンテナ1の他のどの構成要素よりも下側に位置している。これにより、例えば地面にコンテナ1を置くと、コンテナ1は左右の支持脚50と左右のローラ60の4点で接地し、縦根太10が地面から浮きデッキ20が水平な状態となる。
【0034】
-使用例-
(1)基本作業
コンテナ1は、例えば運搬対象の機材や物資をデッキ20に積載し固定した状態で脱着車100に積み込まれ、脱着車100を走らせて移動した先の目的地で積載物ごと降ろされる。コンテナ1は、ポスト30を起立させてピン36で固定することによってコンテナ荷役装置101により脱着車100上と地上とで積み降ろし可能な形態となる。例えば脱着車100にコンテナ1を積み込む場合、コンテナ荷役装置101のシリンダ105を伸ばしてアーム103を後方に回動させ、フック104を係合部材40に掛けてシリンダ105を縮める。すると、アーム103が前方に回動し、脱着車100の後部に位置するガイドローラ102に縦根太10がガイドされてコンテナ1が脱着車100に引き上げられる。脱着車100からコンテナ1を降ろす動作はこの逆の手順である。
【0035】
(2)段積み作業
本実施形態のコンテナ1は、脱着車100を用いて段積みすることができる。脱着車100によりコンテナ1を段積みする例を
図10で説明する。
【0036】
まず、最下段にするコンテナ1を所定の位置に先に説明したように地面に下ろしておく。最下段にするコンテナ1は脱着車100で設置したものではなく、クレーン等の別の手段で設置したものであっても良い。段積みしたコンテナ1を後で脱着車100に積み込む予定がある場合は、最下段にするコンテナ1のポスト30は2段目を重ねる前に前方に倒しておく(
図10(a))。段積みしたコンテナ1を脱着車100に積み込む予定がない場合、最下段のコンテナ1のポスト30は後方に倒しておいても良い。
【0037】
次に、2段目に積み上げるコンテナ1’を別途脱着車100に積み込んで移動し、コンテナ1,1’の向きや位置関係を合わせてコンテナ1の前方に停車し、コンテナ荷役装置101を操作してコンテナ1の上にコンテナ1’を降ろす。コンテナ1’のローラ60’がコンテナ1のデッキ20の上面を後方に転動し、それに伴ってデッキ20が徐々に水平になっていく(
図10(b))。最終的にコンテナ1’のローラ60’がコンテナ1のローラ受け23(
図2)に嵌り、コンテナ1の支持脚50にコンテナ1’の支持脚50’が着地すると、コンテナ1’がコンテナ1の直上に(四隅が一致した状態で)積み重なる(
図10(c))。その後、支持脚50,50’を連結してコンテナ1,1’を互いに固定し、コンテナ1’のポスト30’を固定するピン36(
図6)を抜き取ってポスト30’を後方に倒す。更にコンテナを段積みする際には、以上の手順を繰り返す。コンテナの段積みが終了し、段積みしたコンテナを脱着車100で移動させる場合、最下段のコンテナ1のポスト30を立ててピン36で固定し、段積みしたコンテナ1を脱着車100に積み込む。
【0038】
(3)段ばらし作業
図11は段積みされたコンテナ1を脱着車100によりばらす例を説明する図である。まず、最下段のコンテナ1のポスト30が起立している場合、ピン36(
図6)を抜き取ってポスト30を前方に倒しておく。そして、コンテナ1’のポスト30’を起立させてピンで固定し、コンテナ1,1’の互いの連結を解いておく。その後、コンテナ1の前方に脱着車100を停車させ、コンテナ荷役装置101のシリンダ105を伸ばしてアーム103を後方に回動させ、フック104をコンテナ1’の係合部材40(
図2)に掛ける(
図11(a))。ここまでの各作業は順番を任意に入れ換えても良い。
【0039】
次に、コンテナ荷役装置101のシリンダ105を縮め、アーム103を前方に途中まで回動させ、コンテナ1’の前部を浮かせた状態としてシリンダ105を停止させる(
図11(b))。コンテナ1’の前部を浮かせたら、そのまま脱着車100を前進させてコンテナ1’を牽引する。これにより、コンテナ1’の左右のローラ60’がコンテナ1のデッキ20の上面を転動し、コンテナ1からコンテナ1’が地面に降りる(
図11(c))。
【0040】
以上の手順により、段積みされたコンテナをばらして地上に下ろすことができる。3段以上に段積みされたコンテナ1を対象とする場合も、以上の手順を繰り返し行って1段ずつ地上に下すことができる。また、手順の説明は省略するが、
図11の例でコンテナ1の上から脱着車100にコンテナ1’を積み込むこともできる。
【0041】
-効果-
(1)本実施形態によれば、上記の通りポスト30を後方に倒して左右の縦根太10の間隔に収めることができる。これにより、例えばコンテナ1のポスト30を後方に倒し、その上に別のコンテナ1を重ねても、下段のコンテナ1のポスト30が上段のコンテナ1の構造物に干渉することがない。そのため、ポストとの干渉を避けて上下段のコンテナを前後にずらす必要がなく、四隅を揃えて複数のコンテナ1を垂直に積み上げることができる。従って、コンテナ1の段積み時の前後長の増加を抑えることができ、コンテナ1を段積みして保管する場合、保管スペースが節約でき、多数のコンテナ1をコンパクトに保管できる。また、段積みした状態の複数のコンテナ1の水平投影面積は、単体のコンテナ1と差がない。そのため、
図12に示したようにコンテナ1を段積みして例えば海上コンテナに収容する場合に、従来のフラットデッキコンテナのように段積みした場合の水平投影面積の増加の分だけコンテナの前後長を短縮する必要がなく、広いデッキ面積を維持できる。
【0042】
(2)また、ポスト30の本体部31を後方に倒した状態で回転軸35の中心線から前方に突出する部分の前後寸法Cが、起立した状態の本体部の後面と前記回転軸の中心線との距離Dよりも小さく設定されている。これにより、下段のコンテナ1のポスト30が起立した状態でも、上段に積み重ねるコンテナ1のポスト30が後方に倒れていれば、上下段のコンテナ同士の互いのポスト30が干渉せず、コンテナ1を前後にずれなく積み重ねることができる(
図8)。このような構成とすることにより、コンテナ1をずれなく多段に段積みできるメリットを維持しつつ、最下段のコンテナ1のポスト30を起立させて脱着車100に積み下ろしできる状態とすることができる。クレーンやフォークリフトが使用できない場所でも脱着車100でコンテナ1を段積みしたり運搬したりすることができるメリットがある。また、脱着車100で段積みしたり運搬したりできるので、脱着車100がある場合には、別途クレーンやフォークリフトを用意する必要がない点も利点である。
【0043】
(3)ポスト30を前傾可能に構成するに当たり、ポスト30における起立状態時に回転軸35の中心線から前方に突出する部分の前後寸法Eが、コンテナ1における回転軸35の中心線から下側の部分の上下寸法F以下に設定してある。そのため、ポスト30を前方に水平に倒すことができる。例えば
図11の例において、下段のコンテナ1のポスト30が後方に倒れてデッキ上にある場合を仮定すると、牽引時のコンテナ1’の角度(
図11(b))によっては、例えばデッキの後部に設けた壁部材27(
図3)がコンテナ1のポスト30に干渉し得る。それに対し、本実施形態ではポスト30が前方にフラットに倒れるので、1段下のコンテナ1のポスト30を前方に倒した状態では、牽引時のコンテナ1’の角度によらず上記のような干渉が生じない。
【0044】
また、
図10の例のように段積み後に最下段のコンテナ1のポスト30を起立させることを想定し、最下段のコンテナ1のポスト30を前方に倒して作業する場合にもメリットがある。具体的には、最下段のコンテナ1のポスト30を前方に水平に倒すことで、このポスト30が脱着車100の床下の構造物に干渉する心配がなく、倒伏したポスト30と上下に重なる位置まで脱着車100を容易に後退させることができる。これにより段積みしたコンテナ1と脱着車100との間合いを自由に取ることができ、脱着車100で多段に段積みする場合に特に有利である。
【0045】
また、ポスト30を前方に倒してコンテナ1を床面として使用する場合、コンテナ1の前方から積荷にアクセスする場合にも、ポスト30が前方に水平に倒れることで高い利便性が確保できる。
【0046】
(4)ローラ60に上下位置が対応するように、デッキ20の上面に凹状のローラ受け23を設けた。これにより、
図9の場合を例にとると、上段のコンテナ1’のローラ60’が下段のコンテナ1のローラ受け23に嵌り、コンテナ1’の自重も相俟ってローラ60’とローラ受け23との間に一定の拘束力が働く。この状態でコンテナ1,1’の前方の支持脚50,50’を連結すれば、例えばコンテナ1,1’の四隅を隅金具で固定する構成としなくても、安定してコンテナ1,1’を互いに固定できる。この場合、コンテナ1,1’を連結する箇所が前2か所のみであるため、四隅で連結する場合に比べて作業者の負担が軽減できる。後部の隅金具を不要化できること自体も利点となり得る。
【0047】
また、ローラ受け23が凹状であるため、例えば
図10の段積み作業を例にとると、下段のコンテナ1の直上に上段のコンテナ1’が重なったことが、コンテナ1のローラ受け23にコンテナ1’のローラ60が嵌り込む際の音や振動、動き等で容易に把握できる。この点も段積み作業の際等の作業者の負担軽減に貢献する。
【0048】
加えて、ローラ60がローラ受け23に落ち込む分、積み重ねたコンテナ1の高さが抑えられる。また、ローラ受け23を省略した比較例を仮定した場合、本実施形態のコンテナ1と同じ高さで同じ段数だけ積み上げられるように構成すると、ローラ受け23がない分だけ比較例のローラの半径は小さくなる。言い換えれば、本実施形態のコンテナ1では、ローラ受け23の深さの分だけ比較例よりもローラ60の半径を大きくすることができる。ローラ60の径が大きければ、それだけローラ60の接地面積が広がって面圧が下がる。これにより、例えば不整地で脱着車100にコンテナ1の積み降ろしをする場合に作業がし易くなる。加えて、ローラ60の接地面積が増す分、ローラ60にかかる負担、ひいてはローラ60が接地したり転動したりする路面にかかる負担を軽減することにも繋がる。
【0049】
(5)
図11には、コンテナ1を2段に重ねた状態を例示したが、3段以上にコンテナ1を段積みする場合ももちろんある。この場合、3段目以上のコンテナ1については、1段下のコンテナ1のポスト30が後方に倒れた状態が必然である。また、例えばコンテナ1を2段に重ねて上下寸法の小さな収容スペースに挿し込んで保管する場合等、2段であっても下段のコンテナ1のポスト30を後方に倒した状態が望ましい場合もある。このように下段のコンテナ1のポスト30が後方に倒れた状態でも、本実施形態では左右のローラ60の間隔がポスト30の左右の幅よりも広いので、
図11のように上段のコンテナ1を脱着車100で前方に下ろすことができる。
図11(b)に示した要領で脱着車100により上段のコンテナ1を牽引する際、上段のコンテナ1の左右のローラ60が下段のコンテナ1のポスト30の左右を跨いで通過可能であるためである。このように、下段のコンテナ1のポスト30の姿勢によらず、下段のコンテナ1から上段のコンテナ1を下ろす
図11のような作業を柔軟に行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1,1’,1”…フラットデッキコンテナ、10…縦根太、20…デッキ、23…ローラ受け、30…ポスト、31…本体部、32…ブラケット部、35…回転軸、40…係合部材、60…ローラ、100…コンテナ脱着車両、104…フック、C…本体部を後方に倒した状態で回転軸の中心線から前方に突出する部分の前後寸法、D…起立した状態の本体部の後面と回転軸の中心線との距離、E…本体部が起立した状態で回転軸の中心線から前方に突出する部分の前後寸法、F…回転軸の中心線から下側の部分の上下寸法