(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103578
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20220701BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
H01L29/78 617S
H01L29/78 617T
H01L29/78 617U
H01L29/78 618B
H01L29/78 617N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218303
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海東 拓生
(72)【発明者】
【氏名】花田 明紘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆史
【テーマコード(参考)】
5F110
【Fターム(参考)】
5F110AA08
5F110AA14
5F110CC01
5F110CC07
5F110EE02
5F110EE03
5F110EE04
5F110EE06
5F110EE24
5F110EE25
5F110EE30
5F110FF02
5F110FF03
5F110FF05
5F110FF06
5F110FF09
5F110FF12
5F110FF13
5F110GG01
5F110GG22
5F110GG33
5F110HJ16
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK06
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る半導体装置は、基材と、前記基材の上方に配置され、シリコン窒化物によって形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜の上に配置され、シリコン酸化物によって形成された第2絶縁膜であって、第1領域と、前記第1領域を囲み前記第1領域より薄い周辺領域と、を有する第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜の上に配置され、前記第1領域と交差する酸化物半導体と、前記周辺領域に重畳し、前記酸化物半導体に接するソース電極と、前記周辺領域に重畳し、前記ソース電極から離間し、前記酸化物半導体に接するドレイン電極と、を備え、平面視において、前記第1領域は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に位置し、前記ソース電極及び前記ドレイン電極から離間している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上方に配置され、シリコン窒化物によって形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜の上に配置され、シリコン酸化物によって形成された第2絶縁膜であって、第1領域と、前記第1領域を囲み前記第1領域より薄い周辺領域と、を有する第2絶縁膜と、
前記第2絶縁膜の上に配置され、前記第1領域と交差する酸化物半導体と、
前記周辺領域に重畳し、前記酸化物半導体に接するソース電極と、
前記周辺領域に重畳し、前記ソース電極から離間し、前記酸化物半導体に接するドレイン電極と、を備え、
平面視において、前記第1領域は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に位置し、前記ソース電極及び前記ドレイン電極から離間している、半導体装置。
【請求項2】
前記周辺領域は、
前記ソース電極の直下に位置する第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域との間に位置し、前記第2領域と同等の膜厚を有する第3領域と、
前記ドレイン電極の直下に位置する第4領域と、
前記第1領域と前記第4領域との間に位置し、前記第4領域と同等の膜厚を有する第5領域と、を有している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記周辺領域は、
前記ソース電極の直下に位置する第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域との間に位置し、前記第1領域から前記第2領域に向かうにしたがって膜厚が薄くなる第3領域と、
前記ドレイン電極の直下に位置する第4領域と、
前記第1領域と前記第4領域との間に位置し、前記第1領域から前記第4領域に向かうにしたがって膜厚が薄くなる第5領域と、を有している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2絶縁膜と前記酸化物半導体との界面は、ほぼ平坦面である、請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜との界面は、ほぼ平坦面である、請求項2または3に記載の半導体装置。
【請求項6】
さらに、前記基材と前記第1絶縁膜との間に配置された第1ゲート電極と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極を覆うとともに、前記ソース電極の第1側縁と前記ドレイン電極の第2側縁との間において前記酸化物半導体に接し、シリコン酸化物によって形成された第3絶縁膜と、
前記第3絶縁膜の上に配置された第4絶縁膜と、
前記第4絶縁膜の上に配置された第2ゲート電極と、を備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、酸化物半導体を用いたトランジスタを有する表示装置等の半導体装置が種々提案されている。このような酸化物半導体を用いたトランジスタにおいては、ソース-ドレイン間に高電圧が印加されることに起因してホットキャリア劣化が生じ、しきい値電圧が大きくシフトすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-183312号公報
【特許文献2】特開2020-129635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、信頼性を向上することが可能な半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係る半導体装置は、
基材と、前記基材の上方に配置され、シリコン窒化物によって形成された第1絶縁膜と、前記第1絶縁膜の上に配置され、シリコン酸化物によって形成された第2絶縁膜であって、第1領域と、前記第1領域を囲み前記第1領域より薄い周辺領域と、を有する第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜の上に配置され、前記第1領域と交差する酸化物半導体と、前記周辺領域に重畳し、前記酸化物半導体に接するソース電極と、前記周辺領域に重畳し、前記ソース電極から離間し、前記酸化物半導体に接するドレイン電極と、を備え、平面視において、前記第1領域は、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の間に位置し、前記ソース電極及び前記ドレイン電極から離間している。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る半導体装置1の一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したトランジスタTRの一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した酸化物半導体SCの製造方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、
図1に示したトランジスタTRの他の例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示したトランジスタTRの他の例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示したトランジスタTRの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。X軸に沿った方向をX方向または第1方向と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向と称し、Z軸に沿った方向をZ方向または第3方向と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称し、X-Y平面を見ることを平面視という。
【0009】
本実施形態に係る半導体装置1は、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、電気泳動表示装置、LED表示装置などの各種表示装置の他、静電容量式センサーや光学式センサーなどの各種センサー、その他の電子機器に適用可能である。
【0010】
図1は、本実施形態に係る半導体装置1の一例を示す平面図である。半導体装置1は、基材10と、第1絶縁膜11と、第2絶縁膜12と、トランジスタTRと、を備えている。
図1では、半導体装置1に含まれる1つのトランジスタTRを示している。第1絶縁膜11は、基材10の上に配置されている。第2絶縁膜12は、第1絶縁膜11の上に配置されている。
【0011】
第2絶縁膜12は、一点鎖線で囲んだ第1領域121と、第1領域121を囲む周辺領域12Aと、を有している。第1領域121は、ほぼ一定の膜厚を有している。周辺領域12Aは、第1領域121よりも薄い膜厚を有している。つまり、第2絶縁膜12において、第1領域121は厚膜領域に相当し、周辺領域12Aは薄膜領域に相当する。第2絶縁膜12の詳細については、後に断面を示して説明する。
【0012】
トランジスタTRは、酸化物半導体SCと、ゲート電極GEと、ソース電極SEと、ドレイン電極DEと、を備えている。
【0013】
酸化物半導体SCは、第2絶縁膜12の上に配置され、第1領域121と交差している。
図1に示す例では、第1領域121は第2方向Yに延出し、酸化物半導体SCは第1方向Xに延出している。酸化物半導体SCの第1方向Xに沿った両端部は周辺領域12Aに重畳し、酸化物半導体SCの中央部は第1領域121に重畳している。
【0014】
ソース電極SEは、周辺領域12Aに重畳し、酸化物半導体SCの一端部に接している。ドレイン電極DEは、周辺領域12Aに重畳し、酸化物半導体SCの他端部に接している。ドレイン電極DEは、第1領域121を挟んで、ソース電極SEの反対側に位置しており、ソース電極SEから離間している。
【0015】
ゲート電極GEは、酸化物半導体SCのうち、少なくともソース電極SEに接する部分とドレイン電極DEに接する部分との間の部分に重畳し、
図1に示す例では、酸化物半導体SCのほぼ全体に重畳している。
【0016】
平面視において、第1領域121は、ソース電極SEとドレイン電極DEとの間に位置しており、ソース電極SE及びドレイン電極DEから離間している。つまり、第1領域121とソース電極SEとの間、及び、第1領域121とドレイン電極DEとの間には、周辺領域(薄膜領域)12Aが介在している。また、ソース電極SE、及び、酸化物半導体SCのうちのソース電極SEに接する部分は、第1領域121に重畳せず、周辺領域12Aに重畳している。同様に、ドレイン電極DE、及び、酸化物半導体SCのうちのドレイン電極DEに接する部分は、第1領域121に重畳せず、周辺領域12Aに重畳している。
【0017】
ソース電極SEはドレイン電極DEに対向する第1側縁21を有し、ドレイン電極DEはソース電極SEと対向する第2側縁22を有している。第1領域121は、一点鎖線で示した周縁部のうち、酸化物半導体SCと交差する第1周縁部231及び第2周縁部232を有している。第1周縁部231は、ソース電極SEに近接する側に位置しているが、第1側縁21には重畳しない。第2周縁部232は、ドレイン電極DEに近接する側に位置しているが、第2側縁22には重畳しない。第1周縁部231及び第2周縁部232は、いずれも第1側縁21及び第2側縁22の間に位置している。
【0018】
図2は、
図1に示したトランジスタTRの一例を示す断面図である。ここで説明するトランジスタTRは、ゲート電極GEとして、酸化物半導体SCの下方に位置する第1ゲート電極GE1と、酸化物半導体SCの上方に位置する第2ゲート電極GE2と、を備えている。
【0019】
第1ゲート電極GE1は、基材10の上に配置され、第1絶縁膜11によって覆われている。
図2に示す例では、第1ゲート電極GE1は、基材10に接しているが、基材10と第1ゲート電極GE1との間に他の絶縁膜が介在していてもよい。
【0020】
第1絶縁膜11は、シリコン窒化物によって形成された無機絶縁膜である。第2絶縁膜12は、シリコン酸化物によって形成された無機絶縁膜である。第2絶縁膜12の下面は第1絶縁膜11に接し、第2絶縁膜12の上面は酸化物半導体SCに接している。
【0021】
第3絶縁膜13は、ソース電極SE及びドレイン電極DEを覆うとともに、ソース電極SEの第1側縁21とドレイン電極での第2側縁22との間において酸化物半導体SCに接している。第3絶縁膜13は、シリコン酸化物によって形成された無機絶縁膜である。つまり、酸化物半導体SCの上面及び下面は、シリコン酸化物である無機絶縁膜に接している。
【0022】
第4絶縁膜14は、第3絶縁膜13の上に配置されている。第4絶縁膜14は、シリコン窒化物によって形成された無機絶縁膜である。
【0023】
第2ゲート電極GE2は、第4絶縁膜14の上に配置されている。第2ゲート電極GE2は、第1ゲート電極GE1と電気的に接続されている。
【0024】
第1ゲート電極GE1、第2ゲート電極GE2、ソース電極SE、及び、ドレイン電極DEは、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、銀(Ag)、Cu(銅)、Cr(クロム)などの金属材料や、これらの金属材料を組み合わせた合金などによって形成される。
【0025】
ここで、第2絶縁膜12の断面構造についてより具体的に説明する。
周辺領域12Aは、第2領域122と、第3領域123と、第4領域124と、第5領域125と、を有している。
【0026】
第2領域122は、ソース電極SEの直下に位置する領域である。第3領域123は、第1領域121と第2領域122との間に位置する領域である。つまり、第3領域123は、ソース電極SEの第1側縁21と第1領域121の第1周縁部231との間の領域である。
【0027】
第4領域124は、ドレイン電極DEの直下に位置する領域である。第5領域125は、第1領域121と第4領域124との間に位置する領域である。つまり、第5領域125は、ドレイン電極DEの第2側縁22と第1領域121の第2周縁部232との間の領域である。
【0028】
第2絶縁膜12において、第3方向Zに沿った膜厚は以下の通りである。第1領域121は、ほぼ一定の膜厚T1を有している。周辺領域12Aは、膜厚T1より小さい膜厚T2を有している。第2領域122、第3領域123、第4領域124、及び、第5領域125は、いずれも同等の膜厚T2を有している。一例では、膜厚T1は200nm~300nmであり、膜厚T2は100nm以下である。
【0029】
第2絶縁膜12の断面形状に着目すると、第1領域121が周辺領域12Aよりも下方に向かって突出している。つまり、第2絶縁膜12の下面に段差が形成される一方で、第2絶縁膜12の上面はほぼ平坦面である。このため、第2絶縁膜12と酸化物半導体SCとの界面は、ほぼ平坦面である。
【0030】
次に、第1絶縁膜11の断面構造について説明する。
第1絶縁膜11は、第1領域121に重畳する領域111と、第2領域122及び第3領域123に重畳する領域112と、第4領域124及び第5領域125に重畳する領域113と、有している。領域111は、ほぼ一定の膜厚T11を有している。領域112及び領域113の各々は、膜厚T11より大きい膜厚T12を有している。第1絶縁膜11の下面はほぼ平坦面であり、第1絶縁膜11の上面に段差が形成される。
【0031】
酸化物半導体SCは、チャネル領域C1と、低抵抗領域LS1及びLD1と、ソース領域S1と、ドレイン領域D1と、を有している。低抵抗領域LS1及びLD1は、チャネル領域C1に隣接している。低抵抗領域LS1は、チャネル領域C1とソース領域S1との間に位置している。低抵抗領域LD1は、チャネル領域C1とドレイン領域D1との間に位置している。
【0032】
チャネル領域C1は、酸化物半導体SCにおいて最も高抵抗の領域であり、第2絶縁膜12の第1領域121及び第1絶縁膜11の領域111に重畳している。
低抵抗領域LS1及びLD1は、チャネル領域C1よりも低抵抗の領域である。低抵抗領域LS1は、第2絶縁膜12の第3領域123及び第1絶縁膜11の領域112に重畳している。低抵抗領域LD1は、第2絶縁膜12の第5領域125及び第1絶縁膜11の領域113に重畳している。
チャネル領域C1、低抵抗領域LS1及びLD1は、第2絶縁膜12及び第3絶縁膜13に接している。
【0033】
ソース領域S1は、低抵抗領域LS1よりもさらに低抵抗の領域であり、第2絶縁膜12の第2領域122及び第1絶縁膜11の領域112に重畳している。ソース領域S1は、第2絶縁膜12及びソース電極SEに接している。
【0034】
ドレイン領域D1は、低抵抗領域LD1よりもさらに低抵抗の領域であり、第2絶縁膜12の第4領域124及び第1絶縁膜11の領域113に重畳している。ドレイン領域D1は、第2絶縁膜12及びドレイン電極DEに接している。
【0035】
酸化物半導体SCのうち、少なくともチャネル領域C1及び低抵抗領域LS1及びLD1は、第1ゲート電極GE1の直上に位置し、また、第2ゲート電極GE2の直下に位置している。
図2に示す例では、ソース領域S1及びドレイン領域D1を含む酸化物半導体SCのほぼ全体が第1ゲート電極GE1の直上に位置し、また、第2ゲート電極GE2の直下に位置している。
【0036】
これらの各領域を有する酸化物半導体SCの製造方法について、
図3を参照しながら説明する。
【0037】
第1ゲート電極GE1の上にシリコン窒化物を堆積してほぼ一定の膜厚を有する第1絶縁膜11を形成した後に、厚膜領域を形成すべき領域をエッチング等によって除去し、凹部を形成する。その後、第1絶縁膜11の上にシリコン酸化物を堆積し、さらにパターニングすることで、厚膜領域及び薄膜領域を有する第2絶縁膜12を形成する。
【0038】
その後、第2絶縁膜12の上に、酸化物半導体膜を形成し、この酸化物半導体膜をパターニングすることにより、第1領域121と交差する島状の酸化物半導体SCを形成する。酸化物半導体SCは、高抵抗化されている。
【0039】
その後、第2絶縁膜12を介して第1絶縁膜11から拡散された水素(H)により、酸化物半導体SCの一部が低抵抗化される。このとき、第1絶縁膜11の領域111から拡散された水素は、厚膜領域である第1領域121に吸収され、酸化物半導体SCに到達しにくい。このため、酸化物半導体SCのうち、第1領域121に重畳する部分は、高抵抗であり、チャネル領域C1を形成する。
【0040】
一方、第1絶縁膜11の領域112にから拡散された水素は、薄膜領域である第2領域122及び第3領域123を透過し、酸化物半導体SCに到達する。このため、酸化物半導体SCのうち、第2領域122及び第3領域123に重畳する部分は、低抵抗化される。
【0041】
同様に、第1絶縁膜11の領域113から拡散された水素は、薄膜領域である第4領域124及び第5領域125を透過し、酸化物半導体SCに到達する。このため、酸化物半導体SCのうち、第4領域124及び第5領域125に重畳する部分は、低抵抗化される。
【0042】
その後、酸化物半導体SCに接するソース電極SE及びドレイン電極DEを形成する。このとき、酸化物半導体SCのうち、ソース電極SEと接する部分は、ソース電極SEによって酸素(O)が吸収されるため、さらに低抵抗化され、ソース領域S1を形成する。また、酸化物半導体SCのうち、チャネル領域C1とソース領域S1との間の部分は、ソース電極SEによる酸素吸収が制限されるため、チャネル領域C1より低抵抗であるがソース領域S1より高抵抗の低抵抗領域LS1を形成する。
【0043】
また、酸化物半導体SCのうち、ドレイン電極DEに接する部分は、ドレイン電極DEによって酸素(O)が吸収されるため、さらに低抵抗され、ドレイン領域D1を形成する。また、酸化物半導体SCのうち、チャネル領域C1とドレイン領域D1との間の部分は、ドレイン電極DEによる酸素吸収が制限されるため、チャネル領域C1より低抵抗であるがドレイン領域D1より高抵抗の低抵抗領域LD1を形成する。
【0044】
続いて、酸化物半導体SC、ソース電極SE、及び、ドレイン電極DEの上に、シリコン酸化物を堆積して、第3絶縁膜13を形成する。これにより、ソース電極SEとドレイン電極DEとの間における酸化物半導体SC(つまり、チャネル領域C1、低抵抗領域LS1及びLD1)が第3絶縁膜13によって覆われる。第3絶縁膜13に含まれる酸素(O)は、酸化物半導体SCに供給される。このため、チャネル領域C1、低抵抗領域LS1及びLD1は、ソース領域S1及びドレイン領域D1よりも高抵抗化される。
【0045】
ところで、半導体として酸化物半導体SCを備える構成のトランジスタにおいては、ソース-ドレイン間に高電圧が印加されることに起因してホットキャリア劣化が生じ、しきい値電圧が大きくシフトすることがある。
【0046】
本実施形態では、酸化物半導体SCは、チャネル領域C1に隣接した低抵抗領域LS1及びLD1を有している。このため、酸化物半導体SCのホットキャリア劣化を抑制することができる。したがって、しきい値電圧のシフトが抑制され、信頼性を向上することができる。
【0047】
このような低抵抗領域LS1及びLD1は、第1絶縁膜11から拡散された水素による還元作用によって形成されるものである。すなわち、第1絶縁膜11と酸化物半導体SCとの間には、厚膜領域及び薄膜領域を有する第2絶縁膜が介在している。厚膜領域は、第1絶縁膜11から放出された水素の拡散を抑制し、薄膜領域は、第1絶縁膜11から放出された水素を透過する。このため、酸化物半導体SCのうち、薄膜領域に重畳する部分は水素による還元作用によって低抵抗化され、厚膜領域に重畳する部分は水素による還元作用をほとんど受けず高抵抗の状態が維持される。このように、第2絶縁膜12を介した水素供給量の差によって、チャネル領域C1、低抵抗領域LS1及びLD1が形成される。したがって、信頼性の高い酸化物半導体トランジスタを容易に形成することができる。
【0048】
第2絶縁膜12の膜厚に関して、上記のように、厚膜領域の膜厚T1が約200nm以上であれば、水素拡散を抑制できる効果が確認された。また、薄膜領域の膜厚T2は、一例では100nm以下であるが、水素拡散を促進する観点では、膜厚T2は小さいほどの好ましい。
【0049】
図4は、
図1に示したトランジスタTRの他の例を示す断面図である。
図4に示す例は、
図2に示した例と比較して、第2絶縁膜12の断面形状において、第1領域121が周辺領域12Aよりも上方に向かって突出している点で相違している。つまり、第2絶縁膜12の上面に段差が形成される一方で、第2絶縁膜12の下面はほぼ平坦面である。このため、第1絶縁膜11と第2絶縁膜12との界面は、ほぼ平坦面である。
【0050】
第1絶縁膜11は、酸化物半導体SCの直下においてほぼ一定の膜厚を有しており、ほとんど凹凸のない平坦膜である。
【0051】
第2絶縁膜12は、膜厚T1の厚膜領域である第1領域121と、膜厚T2の薄膜領域あるいは周辺領域12A(第2領域122、第3領域123、第4領域124、及び、第5領域125)と、を有している。
【0052】
第1領域121の第1周縁部231は、ソース電極SEの第1側縁21に重畳せず、また、第1領域121の第2周縁部232は、ドレイン電極DEの第2側縁22に重畳しない。第1周縁部231及び第2周縁部232は、第1側縁21と第2側縁22との間に位置している。
【0053】
このような例においても、上記の例と同様の効果が得られる。
【0054】
図5は、
図1に示したトランジスタTRの他の例を示す断面図である。
第2絶縁膜12は、膜厚T1の厚膜領域である第1領域121と、薄膜領域あるいは周辺領域12A(第2領域122、第3領域123、第4領域124、及び、第5領域125)と、を有している。
【0055】
第1領域121の第1周縁部231は、ソース電極SEの第1側縁21に重畳せず、また、第1領域121の第2周縁部232は、ドレイン電極DEの第2側縁22に重畳しない。第1周縁部231及び第2周縁部232は、第1側縁21と第2側縁22との間に位置している。
【0056】
第1領域121と第2領域122との間に位置する第3領域123は、第1領域121から第2領域122に向かうにしたがって膜厚が次第に薄くなる。つまり、第3領域123は、第1周縁部231の近傍においては膜厚T1とほぼ同等の膜厚を有し、また、第1側縁21に重畳する位置においては膜厚T2とほぼ同等の膜厚を有している。第1側縁21と第1周縁部231との間において、第1絶縁膜11と第2絶縁膜12との界面は、傾斜面である。
【0057】
第1領域121と第4領域124との間に位置する第5領域125は、第1領域121から第4領域124に向かうにしたがって膜厚が次第に薄くなる。つまり、第5領域125は、第2周縁部232の近傍においては膜厚T1とほぼ同等の膜厚を有し、また、第2側縁22に重畳する位置においては膜厚T2とほぼ同等の膜厚を有している。第2側縁22と第2周縁部232との間において、第1絶縁膜11と第2絶縁膜12との界面は、傾斜面である。
【0058】
第2絶縁膜12の断面形状に着目すると、第1領域121が周辺領域12Aよりも下方に向かって突出している。つまり、第2絶縁膜12の下面に段差が形成される一方で、第2絶縁膜12の上面はほぼ平坦面である。このため、第2絶縁膜12と酸化物半導体SCとの界面は、ほぼ平坦面である。
【0059】
次に、第1絶縁膜11の断面構造について説明する。
第1絶縁膜11は、第1領域121に重畳する領域111と、第2領域122に重畳する領域112と、第3領域123に重畳する領域113と、第4領域124に重畳する領域114と、第5領域125に重畳する領域115と、有している。領域111の膜厚T11は、領域112及び領域114の各々の膜厚T12より小さい。領域113は、領域112から領域111に向かうにしたがって膜厚が次第に薄くなる。領域115は、領域114から領域111に向かうにしたがって膜厚が次第に薄くなる。
【0060】
このような例においても、上記の例と同様の効果が得られる。
また、第3領域123及び第5領域125の各々の膜厚がグラデーションを有するため、低抵抗領域LS1及びLD1に供給される水素量もグラデーションを有する。そして、低抵抗領域LS1及びLD1においては、チャネル領域C1に近接するほど供給される水素量が低減し、低抵抗化が抑制される。つまり、低抵抗領域LS1及びLD1における抵抗値は、チャネル領域C1に近接するほど高くなるようなグラデーションを有する。このため、酸化物半導体SCのソース領域S1の近傍及びドレイン領域D1の近傍における電位勾配が緩やかとなり、酸化物半導体SCの劣化が抑制される。
【0061】
図6は、
図1に示したトランジスタTRの他の例を示す断面図である。
図6に示す例は、
図5に示した例と比較して、第2絶縁膜12の断面形状において、第1領域121が周辺領域12Aよりも上方に向かって突出している点で相違している。つまり、第2絶縁膜12の上面に段差が形成される一方で、第2絶縁膜12の下面はほぼ平坦面である。このため、第1絶縁膜11と第2絶縁膜12との界面は、ほぼ平坦面である。
【0062】
第1絶縁膜11は、酸化物半導体SCの直下においてほぼ一定の膜厚を有しており、ほとんど凹凸のない平坦膜である。
【0063】
第2絶縁膜12は、膜厚T1の厚膜領域である第1領域121と、薄膜領域あるいは周辺領域12A(第2領域122、第3領域123、第4領域124、及び、第5領域125)と、を有している。
【0064】
第1領域121の第1周縁部231は、ソース電極SEの第1側縁21に重畳せず、また、第1領域121の第2周縁部232は、ドレイン電極DEの第2側縁22に重畳しない。第1周縁部231及び第2周縁部232は、第1側縁21と第2側縁22との間に位置している。
【0065】
このような例においても、
図5に示した例と同様の効果が得られる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、信頼性を向上することが可能な半導体装置を提供することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態として説明した半導体装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての半導体装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0068】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0069】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0070】
1…半導体装置 TR…トランジスタ 10…基材 11…第1絶縁膜
12…第2絶縁膜 121…第1領域(厚膜領域) 12A…周辺領域(薄膜領域)
122…第2領域 123…第3領域 124…第4領域 125…第5領域
21…第1側縁 22…第2側縁 231…第1周縁部 232…第2周縁部
GE1…第1ゲート電極 GE2…第2ゲート電極 SE…ソース電極 DE…ドレイン電極
SC…酸化物半導体 C1…チャネル領域 LS1、LD1…低抵抗領域 S1…ソース領域 D1…ドレイン領域