(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103588
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】湿式酸化処理用触媒、湿式酸化処理方法及び湿式酸化処理用触媒の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20220701BHJP
C02F 1/74 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B01J23/63 M
C02F1/74 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218317
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226219
【氏名又は名称】日揮ユニバーサル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】生駒 知央
(72)【発明者】
【氏名】青井 信幸
(72)【発明者】
【氏名】サタウォン ラッチプラパー
(72)【発明者】
【氏名】戸根 直樹
【テーマコード(参考)】
4D050
4G169
【Fターム(参考)】
4D050AA12
4D050AA13
4D050AB14
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4D050BB01
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4G169AA03
4G169BA04A
4G169BA04B
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4G169BC43A
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4G169BC70A
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4G169CA05
4G169CA07
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4G169CA17
4G169DA06
4G169EA02Y
(57)【要約】
【課題】優れた強度及び長期活性を両立可能な湿式酸化処理用触媒を提供すること。
【解決手段】無機酸化物を含みかつ内部に空孔を有する担体と、担体に担持された貴金属粒子と、を備え、下記式(I)に従い算出される担体中の空孔の存在比率が、5~40%である、湿式酸化処理用触媒。
空孔の存在比率(%)=(1-(空孔を有する触媒の見掛け密度)/(空孔を有する担体と同じ材料からなり空孔を有しない触媒の見掛け密度))×100 ・・・(I)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物を含みかつ内部に空孔を有する担体と、前記担体に担持された貴金属粒子と、を備え、
下記式(I)に従い算出される前記担体中の空孔の存在比率が、5~40%である、湿式酸化処理用触媒。
空孔の存在比率(%)=(1-(空孔を有する触媒の見掛け密度)/(空孔を有する触媒と同じ材料からなり空孔を有しない触媒の見掛け密度))×100 ・・・(I)
【請求項2】
前記貴金属粒子の平均粒子径が1.0~20nmである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記貴金属粒子がPt及びRuの少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記無機酸化物がセリアを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記貴金属粒子の担持量が、触媒の全量に対して0.1~5.0質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項6】
前記担体が、平均粒子径が1.0~5.0mmの粒状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の触媒を充填した反応塔に廃水及び酸素を供給し、前記触媒と廃水とを接触させる工程を備える、湿式酸化処理方法。
【請求項8】
前記反応塔内での前記廃水の温度が120~300℃であり、前記反応塔内の圧力が0.2~9.0MPaである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記廃水が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フェノール、ギ酸、酢酸、テレフタル酸、アンモニア、イソシアネート化合物、及びニトリル化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
下記工程(a)~(d)を備える、湿式酸化処理用触媒の製造方法。
(a)無機酸化物粉末と、前記無機酸化物粉末100質量部に対して0.1~25.0質量部の造孔材とを混合して担体前駆体を得る混合工程
(b)前記担体前駆体を成形して成形体を得る成形工程
(c)前記成形体を造孔材が焼失する温度以上で焼成して、内部に空孔を有する担体を得る焼成工程
(d)前記担体に貴金属粒子を担持させる担持工程
【請求項11】
前記無機酸化物粉末がセリアを含む、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、湿式酸化処理用触媒、湿式酸化処理方法及び湿式酸化処理用触媒の製造方法に関する。本開示の触媒は、廃水を加温加圧条件下で湿式酸化処理する際に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
廃水の処理方法として、生物学的処理、燃焼処理、チンマーマン法等が知られている。近年、被処理廃水に含まれる汚濁物質は多岐に渡り、しかも高レベルな処理水質が求められているため、そのような処理方法では十分な対応が難しい場合がある。そこで、高レベルな処理水質を得ることができ、しかも優れた経済性を有していることから、固体触媒を用いた湿式酸化法(以下、「触媒湿式酸化処理法」ともいう)が注目されている。触媒湿式酸化処理法の処理効率及び処理能力を向上させるべく、様々な触媒が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、白金、ルテニウム等を活性成分として担体上に担持し、この活性成分の分布を規定した触媒が開示されている。また、特許文献2には、白金、ルテニウム等の活性成分をチタン、セリウム等の酸化物を含む担体上に担持し、活性成分の存在深さを規定した触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-126518号公報
【特許文献2】特開2015-085315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載の触媒は、廃水中にて加温加圧条件下で使用された場合、水浸破壊による割れや欠け、及び経時による活性成分の溶出が生じる虞がある。
【0006】
本開示は上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた強度及び長期活性を両立可能な湿式酸化処理用触媒を提供することを目的とする。本開示また、当該湿式酸化処理用触媒を用いた湿式酸化処理方法及び湿式酸化処理用触媒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、担体中に存在する空孔の割合を所定の範囲とすることで、上記課題が解決されることを見出した。
【0008】
本開示は、無機酸化物を含みかつ内部に空孔を有する担体と、担体に担持された貴金属粒子と、を備え、下記式(I)に従い算出される担体中の空孔の存在比率が、5~40%である、湿式酸化処理用触媒を提供する。
空孔の存在比率(%)=(1-(空孔を有する触媒の見掛け密度)/(空孔を有する触媒と同じ材料からなり空孔を有しない触媒の見掛け密度))×100 ・・・(I)
【0009】
本開示において、貴金属粒子の平均粒子径が1.0~20nmであってよい。
【0010】
本開示において、貴金属粒子がPt及びRuの少なくとも1種を含んでよい。
【0011】
本開示において、無機酸化物がセリアを含んでよい。
【0012】
本開示において、貴金属粒子の担持量が、触媒の全量に対して0.1~5.0質量%であってよい。
【0013】
本開示において、担体が、平均粒子径が1.0~5.0mmの粒状であってよい。
【0014】
本開示は、上記触媒を充填した反応塔に廃水及び酸素を供給し、触媒と廃水とを接触させる工程を備える、湿式酸化処理方法を提供する。
【0015】
本開示の湿式酸化処理方法において、反応塔内での廃水の温度が120~300℃であり、反応塔内の圧力が0.2~9.0MPaであってよい。
【0016】
本開示の湿式酸化処理方法において、廃水が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フェノール、ギ酸、酢酸、テレフタル酸、アンモニア、イソシアネート化合物、及びニトリル化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含んでよい。
【0017】
本開示は、下記工程(a)~(d)を備える、湿式酸化処理用触媒の製造方法を提供する。
(a)無機酸化物粉末と、無機酸化物粉末100質量部に対して0.1~25.0質量部の造孔材とを混合して担体前駆体を得る混合工程
(b)担体前駆体を成形して成形体を得る成形工程
(c)成形体を造孔材が焼失する温度以上で焼成して、内部に空孔を有する担体を得る焼成工程
(d)担体に貴金属粒子を担持させる担持工程
【0018】
本開示の製造方法において、無機酸化物粉末がセリアを含んでよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、優れた強度及び長期活性を両立可能な湿式酸化処理用触媒を提供することができる。また、本開示によれば、当該湿式酸化処理用触媒を用いた湿式酸化処理方法及び湿式酸化処理用触媒の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明するが、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
<湿式酸化処理用触媒>
湿式酸化処理用触媒は、無機酸化物を含みかつ内部に空孔を有する担体と、担体に担持された貴金属粒子と、を備える。
【0022】
(担体)
担体に含まれる無機酸化物としては、セリウム酸化物(セリア)、チタン酸化物(チタニア)、ジルコニウム酸化物(ジルコニア)、アルミニウム酸化物(アルミナ)、ケイ素酸化物(シリカ)、これらの混合物、これらの複合酸化物等が挙げられる。これらのうち、活性金属(貴金属)の酸化活性向上の観点から、無機酸化物はセリウム酸化物を含んでいてよい。具体的には、無機酸化物は、CeO2、CeO2-TiO2、CeO2-ZrO2、CeO2-Al2O3-SiO2等を含んでいてよい。
【0023】
本開示の触媒は、担体中に空孔を有することを特徴とする。本開示において、担体中の空孔の存在比率は触媒の見掛け密度に基づいて規定することができる。担体中の空孔の有無により触媒の見掛け密度に差異が生じる(空孔の量が多くなるほど見掛け密度は小さくなる)ので、この差異を利用して、下記式(I)により空孔の存在比率を規定する。
空孔の存在比率(%)=(1-(空孔を有する触媒の見掛け密度)/(空孔を有する触媒と同じ材料からなり空孔を有しない触媒の見掛け密度))×100 ・・・(I)
【0024】
ここで、「空孔を有する触媒の見掛け密度」とは、後述のとおり担体を調製する際に造孔材等を使用して空孔を形成させた担体を用いて調製した触媒の見掛け密度である。「空孔を有する触媒と同じ材料からなり空孔を有しない触媒の見掛け密度」は、担体を調製する際の原料として、空孔を形成させた担体と同じ材料を用いるものの、造孔材を用いないで作製した担体を用意し、この担体に、空孔を有する触媒と同じ貴金属を同じ担持量で担持した触媒の見掛け密度である。見掛け密度は、水銀ポロシメータ―を用いて、水銀の圧入圧力を大気圧(圧力を掛けない)としたときに測定される密度とした。
【0025】
空孔の存在比率は5~40%である。当該存在比率が5%以上であることで、触媒の優れた強度及び長期活性を両立することができる。当該存在比率が40%以下であることで、構造体としての触媒の優れた強度を得ることができる。この観点から、当該存在比率は10~30%であってよく、10~25%であってよく、12~20%であってよく、12~16%であってよい。
【0026】
担体の形状は特に限定されず、例えば、粒状、ペレット状、ハニカム状等を挙げることができる。
【0027】
担体が粒状の場合、平均粒子径は1.0mm以上とすることができる。平均粒子径が1.0mm以上である粒状触媒を用いることで、反応塔に充填して触媒層とした場合に、圧力損失の増加を抑制し易く、触媒層が廃水に含まれる懸濁物によって閉塞し難い。また粒状触媒の平均粒子径は5.0mm以下とすることができる。平均粒子径が5.0mm以下である粒状触媒を用いることで、充分な幾何学的表面積を確保し易く、廃水との接触効率が低下し難く、充分な処理能力が得られ易い。平均粒子径はマイクロトラック社製CAMSIZERにより測定することができる。
【0028】
担体がペレット状の場合、平均径は1.0~5.0mmとすることができる。該ペレット状触媒の長手方向の長さは2.0~15.0mmとすることができる。平均径が1.0mm以上、長手方向の長さが2.0mm以上であるペレット状触媒を用いることで、反応塔に充填して触媒層とした場合に、圧力損失の増加を抑制し易い。平均径が5.0mm以下、長手方向の長さが15.0mm以下であるペレット状触媒を用いることで、充分な幾何学的表面積を確保し易く、廃水との接触効率が低下し難く、充分な処理能力が得られ易い。
【0029】
担体がハニカム状の場合、貫通孔の相当直径は0.2~10.0mmとすることができる。隣接する貫通孔間の肉厚は0.05~3.0mmとすることができる。相当直径が0.2mm以上であるハニカム状触媒を用いることで、反応塔に充填して触媒層とした場合に、圧力損失の増加を抑制し易い。相当直径が10.0mm以下であるハニカム状触媒を用いることで、廃水との接触効率の低下を抑制し易く、触媒活性が低くなり難い。貫通孔間の肉厚が0.05mm以上であるハニカム状触媒を用いることで、触媒の機械的強度を確保し易い。該肉厚が3.0mm以下であるハニカム状触媒を用いることで、触媒原料の使用量増加を抑制でき、コストを低く抑えることができる。
【0030】
(貴金属粒子)
貴金属粒子は、酸化活性の観点から、貴金属としてPt及びRuの少なくとも1種を含むことができる。
【0031】
貴金属の担持量は、触媒の全量に対して0.1~5.0質量%とすることができる。担持量が0.1質量%以上であることで、廃水中の有機物が酸化分解し易く、5質量%以下であることで、担体上に高分散し易い。この観点から、担持量は0.3~2.5質量%であってよく、0.3~1.0質量%であってよい。貴金属の担持量はICPにより求めることができる。
【0032】
貴金属粒子の平均粒子径は、担体上での貴金属の分散性の観点から、1.0~20nmとすることができる。平均粒子径が1.0nm未満であると、高活性であるが凝集が起こり易く、20nm超であると、貴金属の活性点が減少し反応性が低下し易い。この観点から、平均粒子径は1.0~15nmであってよく、3.0~10nmであってよい。貴金属の平均粒子径は、COパルス法(日本ベル株式会社製、金属分散度測定装置)により求めることができる。なお、担体がCO吸着する場合には、担体をブランクとして差し引く。
【0033】
貴金属粒子は、担体の表面に集中して担持されていてもよく、担体の表面及び内部に均一に担持されていてもよい。ここで、表面に集中して担持されている(以下、「表面タイプ」ともいう)とは、触媒最表面から深さ400μmの深さまでに全貴金属担持量の70質量%以上が担持されていることを示す。これは、以下の分析方法により確認することができる。すなわち、触媒の中心を含む断面について、当該断面の中心を通る線に沿ってX線分析を行い、検出された全貴金属量に対する最表面から400μm以内において検出された貴金属量の比率から算出することができる。ここで、「最表面」とは、触媒が被処理物である廃水と接触する面であり、「中心」とは、球状およびペレット状であれば幾何中心であり、ハニカム状であればセル壁の厚み方向の中心を意味する。一方、均一に担持されている(以下、「均一タイプ」ともいう)とは、触媒最表面から内部にまで貴金属が略均一に担持されていることを示し、上記のX線分析を行った際に、最表面における貴金属量と中心における貴金属量との差が30%以下であるものを示す。
【0034】
貴金属粒子を担体表面に集中して担持させる方法としてはスプレー法が挙げられ、内部にまで均一に担持させる方法としては、含浸法が挙げられる。貴金属粒子を担持させる際の担体の温度を調整することによっても、担体の担持タイプを調整することができる。
【0035】
<湿式酸化処理用触媒の製造方法>
湿式酸化処理用触媒の製造方法は、下記工程(a)~(d)を備える。
(a)無機酸化物粉末と、無機酸化物粉末100質量部に対して0.1~25.0質量部の造孔材とを混合して担体前駆体を得る混合工程
(b)担体前駆体を成形して成形体を得る成形工程
(c)成形体を造孔材が焼失する温度以上で焼成して、内部に空孔を有する担体を得る焼成工程
(d)担体に貴金属粒子を担持させる担持工程
【0036】
(a:混合工程)
本工程では、セリウム酸化物等の無機酸化物の粉末と、空孔を形成するための成分(造孔材)とを混合し、担体前駆体を調製する。造孔材としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリスチレン等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、トウモロコシ穂芯、杏核、桃核等の植物材料;氷;ドライアイス;キトサンなどが挙げられる。
【0037】
造孔材の添加量は、担体中に存在する空孔の存在比率(上記式(I))を上記所望の範囲とする観点から、無機酸化物粉末100質量部に対して0.1~25.0質量部とすることができる。空孔の存在比率を調整する観点から、造孔材の添加量は0.5~15質量部であってよく、1.0~5.0質量部であってよい。
【0038】
(b:成形工程)
本工程では、担体前駆体を成形して所望の形状の成形体を得る。成形方法は特に制限されず、公知の乾式又は湿式の成形方法を採用できる。成形方法としては、例えば、打錠成形、押出成形、加圧成形、転動造粒等が挙げられる。成形物の形状としては特に制限はなく、上述の粒状(成形体を粉砕分級した顆粒状等を含む)、円柱形ペレット状、ハニカム状等の他、星型状、リング状等の任意の形状が挙げられる。
【0039】
(c:焼成工程)
本工程では、成形体を例えば500~800℃で焼成する。これにより、無機酸化物粒子が焼結すると共に、造孔材が焼き飛ばされ、無機酸化物を含む担体内部に空孔が形成される。焼成工程前に、焼成工程の温度範囲より低い温度で成形体を乾燥してもよい。
【0040】
(d:担持工程)
本工程では、担体に貴金属粒子を担持させる。担持方法としては、特に限定されるものではなく、例えば含浸法、吸着法、スプレー法、イオン交換法等が挙げられる。各方法における原料としての貴金属の使用量は、貴金属粒子の担持量が上記所望の範囲になるように調整することができる。上記方法のうち、スプレー法は担体の深さ方向に対して表面側に貴金属粒子を担持させ易い。また、含浸法は担体の内部まで均一に担持させ易い。含浸後に、担体を70~180℃で乾燥させてよい。
【0041】
例えば含浸法のように原料として貴金属の塩を用いる場合、担持工程内の一工程として、貴金属を還元するための水素雰囲気中での加熱処理を行うことができる。その際の加熱温度は400~600℃とすることができる。還元処理の後、必要であればさらに徐酸化処理を行ってもよい。徐酸化処理は、室温付近にて窒素と空気とを所定の割合にて混合したガスを用いて行う処理である。
【0042】
<湿式酸化処理方法>
湿式酸化処理方法は、湿式酸化処理用触媒充填した反応塔に廃水及び酸素を供給し、触媒と廃水とを接触させる工程を備える。廃水としては、有機化合物及び無機化合物の少なくともいずれかを含有する廃水であれば特に限定されない。廃水は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フェノール、ギ酸、酢酸、テレフタル酸、アンモニア、イソシアネート化合物、及びニトリル化合物(例えばアクリロニトリル)からなる群より選択される少なくとも一種を含むことができる。
【0043】
例えば廃水としては、化学プラント、電子部品製造設備、食品加工設備、金属加工設備、金属メッキ設備、印刷製版設備、写真設備等の各種産業プラントからの廃水、火力発電、原子力発電等の発電用設備からの廃水が挙げられる。
【0044】
廃水としては、具体的にはEOG製造設備、メタノール、エタノール、高級アルコール等のアルコール製造設備からの廃水、特にアクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル等の脂肪族カルボン酸又はそのエステル、或いはテレフタル酸、テレフタル酸エステル等の芳香族カルボン酸又は芳香族カルボン酸エステルの製造プロセスから排出される有機物含有廃水などが挙げられる。
【0045】
廃水としては、アミン、イミン、アンモニア、ヒドラジン等の窒素化合物を含有している廃水が挙げられる。
【0046】
廃水としては、紙・パルプ、繊維、鉄鋼、エチレン・BTX、石炭ガス化、食肉、薬品等の多岐にわたる産業分野の工場より排出される硫黄化合物を含有する廃水が挙げられる。ここでいう硫黄化合物としては、硫化水素、硫化ソーダ、硫化カリウム、水硫化ソーダ、チオ硫酸塩、亜硫酸塩等の無機硫黄化合物やメルカプタン類、スルホン酸類等の有機硫黄化合物が例示される。
【0047】
廃水としては、例えば下水やし尿などの生活排水が挙げられる。
【0048】
廃水としては、ダイオキシン類やフロン類、フタル酸ジエチルヘキシル、ノニルフェノール等の有機ハロゲン化合物や環境ホルモン化合物等の有害物質を含有している廃水が挙げられる。
【0049】
廃水と、湿式酸化処理用触媒とは、特に廃水を加熱し(例えば、120~300℃)、且つ該廃水が液相を保持する圧力下(例えば、0.2~9.0MPa)で接触させることが好ましい。廃水の液空間速度(LHSV)は、好ましくは0.1hr-1以上、より好ましくは0.2hr-1以上、更に好ましくは0.3hr-1以上であって、好ましくは20hr-1以下、より好ましくは18hr-1以下、更に好ましくは15hr-1以下である。液空間速度が0.1hr-1未満の場合、触媒の処理量が低下して、過大な設備が必要となる場合があり、逆に20hr-1を超える場合には、反応塔内での被酸化物の酸化・分解処理が不十分になる場合がある。
【0050】
廃水は、酸素と共に反応塔に供給される。廃水中の酸素の含有濃度が高くなるほど、被酸化物を酸化・分解する能力が向上する傾向がある。酸素は、廃水中に溶存した状態で反応塔内に供給されてもよいし、反応塔内に酸素を含むガスとして供給してもよい。
【実施例0051】
本開示を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
【0052】
<触媒の作製>
(実施例1)
【0053】
CeO2粉末(第一稀元素化学工業株式会社製、Z1442)100質量部に対して、造孔材(キトサン微粉末:80mesh)を3質量部添加して、粉末混合機にて混合粉末を得た。この混合粉末を転動造粒機に入れ、脱イオン水を添加しながら造粒を行い、平均粒子径1.4mmの球状造粒体(担体前駆体)を得た。この造粒体を150℃で5時間乾燥し、その後、空気雰囲気下650℃で2時間焼成を行い、担体として平均粒子径1.4mmの粒状CeO2成形体を得た。
【0054】
得られた担体100gを丸型フラスコに投入し、フラスコを回転させながらかつ担体を95℃に加熱しながら、1.4質量%の硝酸Ru溶液35gを滴下し、硝酸Ruを担持した担体を得た。その後、硝酸Ruを担持した担体を円柱状の石英容器に充填し、窒素でパージした後に水素を導入して500℃まで昇温し、その後、500℃で1時間保持した。還元処理後は窒素気流に切り替えて室温まで温度を下げた後、Air気流下に切り替えて徐酸化を行った。このとき、空気は徐々に導入して、100℃以下の発熱に抑えた。このようにして実施例1の触媒を得た。
【0055】
(実施例2)
造孔材の量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして触媒を得た。
【0056】
(実施例3)
造孔材の量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして触媒を得た。
【0057】
(実施例4)
貴金属粒子の担持量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして触媒を得た。
【0058】
(実施例5)
球状造粒体(担体前駆体)の平均粒子径を2.1mmとした以外は、実施例2と同様にして触媒を得た。
【0059】
(実施例6)
硝酸Ru溶液の代わりに、1.4質量%のジニトロジアミン白金の水溶液を用いた以外は、実施例2と同様にして触媒を得た。
【0060】
(実施例7)
CeO2粉末の代わりにCeO2-TiO2粉末(第一稀元素化学工業株式会社製、Z-1445)を用いた以外は、実施例6と同様にして触媒を得た。
【0061】
(実施例8)
CeO2粉末の代わりにTiO2粉末(石原産業株式会社製、MC50)を用いた以外は、実施例2と同様にして触媒を得た。
【0062】
(実施例9)
CeO2粉末の代わりにCeO2-TiO2粉末を用いた以外は、実施例2と同様にして触媒を得た。
【0063】
(実施例10)
硝酸Ru溶液を滴下する際の担体の加熱温度を80℃にした以外は、実施例2と同様にして触媒を得た。
【0064】
(比較例1)
造孔材を使用しない以外は、実施例1と同様にして触媒を得た。
【0065】
(比較例2)
造孔材の代わりに、強度向上材としてTiO2ウィスカー(大塚化学株式会社製、製品名:MTW、繊維長:2~20μm、繊維径:0.2~2μm)を15質量部用いた以外は、実施例1と同様にして触媒を得た。
【0066】
(比較例3)
CeO2粉末の代わりにTiO2粉末を用いたこと、造孔材を使用しなかったこと以外は、実施例6と同様にして触媒を得た。
【0067】
(比較例4)
CeO2粉末の代わりにCeO2-TiO2粉末を用いた以外は、比較例2と同様にして触媒を得た。
【0068】
【0069】
<触媒の評価>
各例で得られた触媒について、以下のとおり評価をした。結果を表2に示す。
【0070】
1.空孔の存在比率
担体中に存在する空孔の存在比率を、以下の式(I)に従い算出した。
空孔の存在比率(%)=(1-(空孔を有する触媒の見掛け密度)/(空孔を有する触媒と同じ材料からなり空孔を有しない触媒の見掛け密度))×100 ・・・(I)
見掛け密度(粒子密度)は、水銀ポロシメータ―としてMicromeritics社製のAutoPore V-9600を用いて、水銀の圧入圧力を大気圧として測定した。「空孔を有する触媒と同じ材料からなり空孔を有しない触媒」は、担体の作製時に造孔材を用いなかったこと以外は、各実施例と同様にして作製した。
【0071】
2.貴金属粒子の平均粒子径
COパルス法により貴金属粒子の平均粒子径を求めた。
【0072】
3.強度評価(水浸破壊耐性)
各例で得られた触媒の粒100個を水100g中に入れて30分経過した後、水浸破壊された粒子の個数の割合を求めた。
【0073】
4.活性評価(COD分解性能)
以下の方法によりCOD分解性能を評価した。
ハステロイ製の反応管に触媒を充填し、模擬廃水(成分:Na=6,800mg/L、SO4=15,000mg/L、ギ酸=4,000mg/L)を16cc/minポンプで送液し、リアクターに入る直前に酸素を導入した。リアクターは160℃に加熱し、廃水を触媒中に通過させた。リアクター内の圧力は0.62MPaであった。反応後の液はリアクター出口で気液分離を行い、処理された廃水を回収した。この際の触媒量は98ccで、液量は16cc/min、LHSVは10.0h-1であった。酸素ガスの注入量は10cc/minであった。得られた廃液のCOD濃度(JIS法、Mn法)を測定し、以下の計算式によりCOD分解率を求めた。試験開始後、10時間経過した時点におけるCOD分解性能を評価した。
COD分解率(%)=(入口COD濃度-出口COD濃度)/(入口COD濃度)×100
【0074】