(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103591
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】時限放出型顆粒およびその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 9/52 20060101AFI20220701BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220701BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220701BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220701BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20220701BHJP
A61K 9/58 20060101ALI20220701BHJP
A61K 31/5383 20060101ALI20220701BHJP
A61K 31/401 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A61K9/52
A61K47/32
A61K47/04
A61K47/02
A61K9/22
A61K9/58
A61K31/5383
A61K31/401
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218322
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】河合 和紀
(72)【発明者】
【氏名】弓樹 佳曜
(72)【発明者】
【氏名】本庄 達哉
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 勇
(72)【発明者】
【氏名】奥田 豊
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA44
4C076AA67
4C076CC29
4C076CC40
4C076DD22
4C076DD22B
4C076DD27C
4C076DD27M
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD67B
4C076EE13
4C076EE13M
4C076EE16
4C076EE16B
4C076EE32
4C076EE32B
4C076EE38B
4C076EE48
4C076FF06
4C076FF31
4C076FF68
4C076GG13
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086CB22
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA37
4C086NA12
(57)【要約】
【課題】ラグ時間まで有効成分の溶出を高度に抑制でき、ラグ時間経過後は速やかに有効成分を溶出できる汎用性の高い時限放出型顆粒を提供する。
【解決手段】有効成分を含む核部を、水不溶性高分子および無機化合物を含み、かつ前記無機化合物の含有質量が前記水不溶性高分子の含有質量よりも大きいコーティング層で被覆して、顆粒を調製する。この顆粒は、溶出試験パドル法において、有効成分が5%溶出するのに3分以上を要し、かつ30分で有効成分が90%以上溶出する。前記水不溶性高分子は、アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体を含んでいてもよい。前記核部中の水膨潤性物質の含有質量は30質量%未満であってもよい。前記核部は水膨潤性物質を実質的に含まなくてもよい。前記無機化合物は、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸アルミニウムからなる群から選ばれる1種であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分を含む核部と、この核部を被覆するコーティング層とで形成されている顆粒であって、前記コーティング層は、水不溶性高分子および無機化合物を含み、かつ前記無機化合物の含有質量が前記水不溶性高分子の含有質量よりも大きく、
溶出試験パドル法において、有効成分が5%溶出するのに3分以上を要し、かつ30分で有効成分が90%以上溶出する顆粒。
【請求項2】
前記水不溶性高分子が、アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体を含む請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系重合体が、アンモニオメタクリレート単位の含有割合が7.5質量%未満である低水浸透性重合体と、アンモニオメタクリレート単位の含有割合が7.5質量%以上である高水浸透性重合体との組み合わせであり、かつ前記低水浸透性重合体と前記高水浸透性重合体との質量比が、前者/後者=90/10~10/90である請求項2記載の顆粒。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系重合体の含有質量が、前記核部100質量部に対して9質量部以上である請求項2~3のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項5】
前記核部中の水膨潤性物質の含有質量が30質量%未満である請求項1~4のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項6】
前記核部が水膨潤性物質を実質的に含まない請求項1~5のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項7】
前記無機化合物が滑沢剤である請求項1~6のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項8】
前記無機化合物がケイ酸類である請求項1~7のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項9】
前記無機化合物が、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上を含む請求項1~8のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項10】
前記コーティング層において、前記無機化合物の含有質量が、前記水不溶性高分子100質量部に対して120~500質量部である請求項1~9のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項11】
前記核部が球状である請求項1~10のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項12】
前記有効成分が、栄養補助成分、生理活性成分および薬理活性成分からなる群より選択された少なくとも1種である請求項1~11のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の顆粒を含む製剤。
【請求項14】
有効成分を含む核部を製造する工程と、
水不溶性高分子および無機化合物を含み、かつ、前記無機化合物の含有質量が前記水不溶性高分子の含有質量よりも大きいコーティング組成物によって、前記核部を被覆する工程とを
含む顆粒の製造方法。
【請求項15】
水不溶性高分子および無機化合物を含み、かつ前記無機化合物の含有質量が前記水不溶性高分子の含有質量よりも大きいコーティング層で、有効成分を含む核部を被覆することにより、前記有効成分の溶出速度を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分の溶出のラグ時間を制御できる時限放出型顆粒およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
薬効成分などの有効成分には苦味を有する成分があり、このような有効成分を含む組成物(製剤)の服用性を向上するには、口腔内で有効成分が溶け出すことを抑制する必要がある。一方で、有効成分による治療効果を十分に満足するには、有効成分が体内で速やかに溶解し、体内へ吸収される必要がある。このように苦味の抑制と、薬物の溶解はトレードオフ関係にある。そのため、苦味を有する有効成分においては、有効成分の溶出を目的のラグ時間で抑制するとともに、ラグ時間後、速やかに有効成分を溶出させる時限放出性が要求される。
【0003】
このような時限放出性を有する時限放出型組成物として、特開2019-151670号公報(特許文献1)には、口中に含んだときに速やかに崩壊し、口当たりが良く、不快な味や刺激が抑制され、かつ十分な硬度を有し、保存安定性にも優れた口腔内崩壊錠として、かさ密度が0.23g/cm3以下の結晶セルロース、糖アルコールおよびアルファー化デンプンを含有し、薬物を含有しない薬物不含有顆粒を含む口腔内崩壊錠が開示されている。この文献の実施例16では、メタクリル酸コポリマー51.8%、タルク7.8%を含むコーティング液で薬物含有造粒物をコーティングしている。
【0004】
特開2018-150384号公報(特許文献2)には、ブチルスコポラミン臭化物に由来する苦味を遮蔽した口腔内崩壊錠として、タルクおよび水不溶性ポリマーを含む苦味マスキング層を備えた口腔内崩壊錠が開示されている。この文献には、苦味マスキング層中のタルクの含有量は、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは20~40質量%であり、苦味マスキング層中の水不溶性ポリマーの含有量は、好ましくは50~80質量%、より好ましくは55~75質量%、さらに好ましくは55~70質量%であると記載されている。
【0005】
特開2009-191036号公報(特許文献3)には、製剤から薬物が放出を開始する時間および薬物放出開始後の薬物放出速度を自由に調節できる時限放出製剤として、薬物および水膨潤性物質を含む中心核が、水不溶性高分子および水不溶性賦形剤を含む皮膜で被覆されている時限放出製剤が開示されている。この文献には、中心核中の水膨潤性物質の含有量は30質量%以上であり、この水膨潤性物質の膨潤によって皮膜が破壊されて薬物が瞬時に全量放出されると記載されている。実施例では、水不溶性高分子であるアクリル酸エチル-メタクリル酸メチル-メチルアンモニウムエチル三元共重合体100質量部に対して、水不溶性賦形剤であるタルクが100質量部以下配合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-151670号公報
【特許文献2】特開2018-150384号公報
【特許文献3】特開2009-191036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1~2の組成物では、所定の時間まで高度に有効成分の溶出を抑制することができず、ラグ時間を調整するのが困難であり、特に、ラグ時間を長くするのが困難である。苦味などを抑制するためには、有効成分の溶出を所定時間遮蔽する必要があるが、遮蔽精度を向上させると、溶出が困難となるトレードオフの関係にあるため、ラグ時間の調整は困難である。さらに、特許文献3の時限放出製剤では、水膨潤性物質を多量に含むため、製剤が大型化する上に、生産性も低い。
【0008】
従って、本発明の目的は、ラグ時間まで有効成分の溶出を高度に抑制でき、ラグ時間経過後は速やかに有効成分を溶出できる汎用性の高い時限放出型顆粒およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、有効成分を含む核部を、水不溶性高分子および無機化合物を含み、かつ前記無機化合物の含有質量が前記水不溶性高分子の含有質量よりも大きいコーティング層で被覆することにより、ラグ時間まで有効成分の溶出を高度に抑制でき、ラグ時間経過後は速やかに有効成分を溶出できる汎用性の高い時限放出型顆粒を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の顆粒は、有効成分を含む核部と、この核部を被覆するコーティング層とで形成されている顆粒であって、前記コーティング層は、水不溶性高分子および無機化合物を含み、かつ前記無機化合物の含有質量が前記水不溶性高分子の含有質量よりも大きく、溶出試験パドル法において、有効成分が5%溶出するのに3分以上を要し、かつ30分で有効成分が90%以上溶出する。前記水不溶性高分子は、アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体を含んでいてもよい。前記(メタ)アクリル系重合体は、アンモニオメタクリレート単位の含有割合が7.5質量%未満である低水浸透性重合体と、アンモニオメタクリレート単位の含有割合が7.5質量%以上である高水浸透性重合体との組み合わせであってもよい。前記低水浸透性重合体と前記高水浸透性重合体との質量比は、前者/後者=90/10~10/90であってもよい。前記(メタ)アクリル系重合体の含有質量は、前記核部100質量部に対して9質量部以上であってもよい。前記核部中の水膨潤性物質の含有質量は30質量%未満であってもよい。前記核部は水膨潤性物質を実質的に含まなくてもよい。核部中の水膨潤性物質の含有質量を30%質量未満に制御することで、水膨潤性物質によるコーティング皮膜の破壊を抑制し、コーティング皮膜によるラグ時間の制御が容易となる。前記無機化合物は滑沢剤(特に、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上を含むケイ酸類)であってもよい。前記コーティング層において、前記無機化合物の含有質量は、前記水不溶性高分子100質量部に対して120~500質量部であってもよい。前記核部は球状であってもよい。前記有効成分は、栄養補助成分、生理活性成分および薬理活性成分からなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。
【0011】
本発明には、前記顆粒を含む製剤も含まれる。また、本発明には、有効成分を含む核部を製造する工程と、水不溶性高分子および無機化合物を含み、かつ、前記無機化合物の含有質量が前記水不溶性高分子の含有質量よりも大きいコーティング組成物によって、前記核部を被覆する工程とを含む顆粒の製造方法も含まれる。さらに、本発明には、水不溶性高分子および無機化合物を含み、かつ前記無機化合物の含有質量が前記水不溶性高分子の含有質量よりも大きいコーティング層で、有効成分を含む核部を被覆することにより、前記有効成分の溶出速度を制御する方法も含まれる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、有効成分を含む核部が、水不溶性高分子および無機化合物を含み、かつ前記無機化合物の含有質量が前記水不溶性高分子の含有質量よりも大きいコーティング層で被覆されているため、ラグ時間まで有効成分の溶出を高度に抑制でき、ラグ時間経過後は速やかに有効成分を溶出できる。特に、核部は有効成分を含んでいればよく、崩壊剤などの他の添加剤が必須成分ではないため、製剤の小型化が容易であり、核部の成分は有効成分の性質に合わせて適宜調整可能となり(種々の有効成分に本発明の顆粒を適用でき)、汎用性が高い。さらに、水膨潤性物質の割合が少なくても、時限放出型顆粒を調製できるため、高い生産性で、時限放出性を有する小型の顆粒を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、比較例1および実施例1~3で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
【
図2】
図2は、比較例1および実施例1~3で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(初期の溶出プロファイル)である。
【
図3】
図3は、比較例2および実施例4~6で得られた時限放出型顆粒の水不溶性高分子量に対するラグ時間を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施例5および7~9で得られた時限放出型顆粒の水不溶性高分子量に対するラグ時間を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施例10~12で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
【
図6】
図6は、実施例10~12で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(初期の溶出プロファイル)である。
【
図7】
図7は、実施例13で得られた時限放出型顆粒の試験時間に対する溶出率を示すグラフ(全体の溶出プロファイル)である。
【
図8】
図8は、実施例2で得られた時限放出型顆粒を撮影した走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図9】
図9は、実施例2で得られた時限放出型顆粒を溶出試験後に回収し、撮影したSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[時限放出型顆粒]
本発明の顆粒は、有効成分を含む核部と、この核部を被覆するコーティング層とで形成されており、経口製剤として口から服用すると、所定時間後に有効成分を溶出できる時限放出型顆粒である。
【0015】
(核部)
核部に含まれる有効成分としては、例えば、栄養補助成分、生理活性成分、薬理活性成分などが挙げられる。これらの有効成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、厳密なラグ時間を要求されることが多い有効成分が汎用される。
【0016】
有効成分としては、慣用または新規のいずれの有効成分も利用でき、例えば、滋養強壮保健薬、解熱鎮痛消炎薬、向精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、鎮痙薬、胃腸薬、制酸剤、鎮咳去痰剤、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、冠血管拡張剤、末梢血管拡張剤、利胆剤、抗結核剤、抗生物質、抗ウイルス剤、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう症用剤、骨格筋弛緩薬などが挙げられる。これらのうち、苦味などのマスキングが必要な有効成分(例えば、レボフロキサシンなどの抗生物質など)が好ましい。
【0017】
有効成分の含有質量は、核部中1~50質量%であってもよく、例えば2~30質量%、好ましくは3~10質量%、さらに好ましくは4~8質量%である。有効成分の含有質量が少なすぎると、顆粒が大型化する虞があり、多すぎると、核部の成形性が低下する虞がある。
【0018】
核部は、有効成分に加えて、賦形剤をさらに含んでいてもよい。賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、ショ糖、白糖、粉末還元麦芽糖水アメなどの糖類;ソルビトール、マンニトール、還元麦芽糖水飴(マルチトール)、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース、ブドウ糖を醗酵させた4炭糖(例えば、エリスリトールなど)などの糖アルコール;メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)などのアルキルセルロースなどが挙げられる。これらの賦形剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、乳糖、白糖などの糖類、マンニトールなどの糖アルコール、結晶セルロースなどのセルロース類が好ましく、マンニトールが特に好ましい。
【0019】
核部が球状である場合、賦形剤は、これらの賦形剤で形成された慣用の製剤用球形核粒子であってもよい。
【0020】
賦形剤の含有質量は、核部中1~98質量%であってもよく、例えば5~95質量%、好ましくは10~93質量%であり、賦形剤が球状賦形剤である場合、球状賦形剤の含有質量は、核部中30~98質量%であってもよく、例えば50~95質量%、好ましくは60~93質量%である。賦形剤の割合が少なすぎると、顆粒形態の均一性が低下する虞があり、多すぎると、顆粒が大型化する虞がある。
【0021】
核部は、有効成分に加えて、結合剤をさらに含んでいてもよい。結合剤は、前記賦形剤が球状賦形剤であり、球状賦形剤を核として球状核部を製造する場合、結合剤は有効成分を球状核部に付着させるためのコーティング剤であってもよい。
【0022】
結合剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン類(ポビドン、酢酸ビニル-ビニルピロリドン共重合体など)、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸系ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸共重合体など)、ポリ乳酸、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニルなどの合成高分子;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)などのヒドロキシアルキルセルロースエーテル類;酢酸セルロースなどのセルロースエステル類などが挙げられる。
【0023】
これらの結合剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ヒプロメロースなどのヒドロキシC2-4アルキルC1-2アルキルセルロースが好ましい。
【0024】
結合剤の含有質量は、核部中0.1~50質量%であってもよく、例えば0.5~30質量%以下、好ましくは1~20質量%以下、さらに好ましくは1.5~15質量%である。結合剤の割合が少なすぎると、顆粒の機械的特性が低下し、賦形剤が球状賦形剤である場合は、有効成分を球状賦形剤表面に付着させるのが困難となる虞があり、逆に多すぎると、顆粒が大型化する虞がある。
【0025】
核部は、有効成分に加えて、崩壊剤をさらに含んでいてもよい。崩壊剤としては、例えば、クロスポビドン(架橋ポリビニルピロリドン)、クロスポビドンコポリマーなどの架橋ポリビニルピロリドン類;トウモロコシデンプン、バレイショデンプンなどのデンプン;アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプン、酸化デンプン、デキストリン、シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウムなどのデンプン誘導体;微結晶セルロース、結晶セルロース、粉末セルロースなどのセルロース類;低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、カルボキシメチルセルロース(カルメロースまたはCMC)、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムなどのセルロースエーテル類;結晶セルロース・カルメロースナトリウム;寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グアーガム、ローカストビンガム、アラビアガム、トラガントガム、プルラン、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ペクチン、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどの多糖類;ゼラチン、カゼイン、ダイズタンパク質などのタンパク質類;タルク、軽質無水ケイ酸などの無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどのケイ酸類;ベントナイト、合成ヒドロタルサイト、カオリンなどの鉱物類などが挙げられる。これらの崩壊剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0026】
崩壊剤の含有質量は、核部中50質量%以下であってもよく、例えば40質量%以下、好ましくは30質量%以下(例えば5~30質量%)である。崩壊剤の割合が多すぎると、顆粒が大型化する虞がある。
【0027】
崩壊剤は、水膨潤性物質であってもよいが、本発明では、特許文献3とは異なり、コーティング層を破壊させることなく有効成分を溶出させるため、水膨潤性物質は必須成分ではない。水膨潤性物質は、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、結晶セルロース、L-HPC、カルメロースまたはその塩、および結晶セルロース・カルメロースナトリウムからなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。
【0028】
水膨潤性物質の含有質量は、核部中30質量%未満が好ましく、コーティング層を破壊することなく、有効成分を溶出でき、顆粒の小型化および生産性を向上できる点から、15質量%以下がさらに好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が最も好ましい。さらに、核部は、水膨潤性物質を実質的に含んでいなくてもよく、完全に含んでいなくてもよい。
【0029】
核部は、有効成分に加えて、経口製剤に配合される慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、滑沢剤、可塑剤、界面活性剤、pH調整剤、着色剤、甘味剤または矯味剤、抗酸化剤、防腐剤または保存剤、湿潤剤、帯電防止剤、崩壊補助剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、核部中30質量%以下であってもよく、例えば0.01~20質量%、好ましくは0.05~10質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%である。
【0030】
核部の形状は、特に限定されず、無定形状、繊維状、楕円体状、球状、平板状、粉粒状などであってもよいが、球状が好ましい。さらに、核部の形状は、中空形状であってもよいが、顆粒を小型化できる点から、中実状が好ましい。
【0031】
核部の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、例えば100~500μm、好ましくは100~450μm、さらに好ましくは100~350μm、より好ましくは100~250μm、最も好ましくは150~250μmである。
【0032】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、体積基準の累積50%粒子径(D50)は、レーザー回折式粒度分布計を用いて体積基準で測定できる。
【0033】
核部が球状である場合、有効成分を含む組成物を球状に成形または造粒した球状核部であってもよいが、生産性などの点から、球状賦形剤を核として有効成分および結合剤を含むコーティング層を形成することにより得られた球状核部が好ましい。
【0034】
(コーティング層)
本発明の顆粒は、水不溶性高分子および無機化合物を含むコーティング層で前記核部を被覆している。本発明では、前記無機化合物の含有質量が前記水不溶性高分子の含有質量よりも大きいため、ラグ時間まで有効成分の溶出を高度に遮蔽できる。さらに、無機化合物の割合を調整することにより、ラグ時間を容易に調整でき、無機化合物の割合を増加させることによってラグ時間を長く調整できる。本発明において、このような作用が発現するメカニズムは、水が浸透しない無機化合物の割合が多いことにより、核部への水の浸透を遅らせることができることが一因と推定できる。
【0035】
(A)水不溶性高分子
水不溶性高分子としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、セルロース誘導体などが挙げられる。
【0036】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル単量体など)の単独または共重合体であってもよく、(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体(ビニルエステル系単量体、N,N-ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート、アンモニオ(メタ)アクリレート、複素環式ビニル系単量体、重合性不飽和ジカルボン酸またはその誘導体などのビニル系単量体)との共重合体であってもよい。
【0037】
(メタ)アクリル系体の単独または共重合体としては、例えば、メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体(メタクリル酸コポリマーLD)、メタクリル酸-アクリル酸n-ブチル共重合体、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体(メタクリル酸コポリマーL,S)などが挙げられる。
【0038】
(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体としては、例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチル-メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル(アンモニオメタクリレート)共重合体、メタクリル酸メチル-メタクリル酸ブチル-メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体などが挙げられる。
【0039】
ビニル系樹脂としては、例えば、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテートなどが挙げられる。
【0040】
セルロース誘導体は、セルロースエーテル類、セルロースエステル類、セルロースエーテルエステル類のいずれであってもよい。
【0041】
セルロースエーテル類としては、例えば、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、エチルプロピルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロースなどのセルロースアルキルエーテル類;カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC)などのセルロースカルボキシアルキルアルキルエーテル類;ベンジルセルロースなどのセルロースアラルキルエーテル類;シアノエチルセルロースなどのセルロースシアノアルキルエーテル類などが挙げられる。
【0042】
セルロースエステル類としては、例えば、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースフタレート、セルロースアセテートフタレートなどが挙げられる。
【0043】
セルロースエーテルエステル類としては、例えば、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCF)などが挙げられる。
【0044】
これらの水不溶性高分子は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アンモニオメタクリレート(メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル)単位を有する(メタ)アクリル系重合体が好ましく、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチル-アンモニオメタクリレート共重合体が特に好ましい。
【0045】
さらに、アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体は、コーティング層に対する水の浸透性を調整できる点から、アンモニオメタクリレート単位の含有割合が7.5質量%未満である低水浸透性重合体と、アンモニオメタクリレート単位の含有割合が7.5質量%以上である高水浸透性重合体との組み合わせが好ましい。低水浸透性重合体と高水浸透性重合体とを組み合わせることにより、ラグ時間を調整できるとともに、コーティング層の厚みが小さくても、ラグ時間を長くできるため、顆粒を小型化できる。
【0046】
低水浸透性重合体において、アンモニオメタクリレート単位の含有割合は、7.5質量%未満であればよく、例えば1~7.4質量%、好ましくは2~7.3質量%、さらに好ましくは3~7.2質量%、より好ましくは4~7質量%、最も好ましくは4.3~6.8質量%である。アンモニオメタクリレート単位の割合が多すぎると、コーティング層に対する水の浸透性が高くなってラグ時間が短くなる虞がある。低水浸透性重合体としては、市販品として、エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRSPO」などを利用できる。
【0047】
高水浸透性重合体において、アンモニオメタクリレート単位の含有割合は、7.5質量%以上であればよく、例えば7.5~30質量%、好ましくは7.8~20質量%、さらに好ましくは8~15質量%、より好ましくは8.5~13質量%、最も好ましくは8.8~12質量%である。アンモニオメタクリレート単位の割合が少なすぎると、コーティング層に対する水の浸透性が低くなって有効成分の溶出性が低下する虞がある。高水浸透性重合体としては、市販品として、エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRLPO」などを利用できる。
【0048】
低水浸透性重合体と高水浸透性重合体との質量比は、前者/後者=99/1~0/100程度の範囲から選択でき、例えば90/10~10/90、好ましくは90/10~30/70、さらに好ましくは90/10~50/50、より好ましくは88/12~70/30、最も好ましくは85/15~75/25である。低水浸透性重合体の割合が多すぎると、有効成分の溶出性が低下する虞があり、高水浸透性重合体の割合が多すぎると、ラグ時間が短くなる虞がある。
【0049】
アンモニオメタクリレート単位を有する(メタ)アクリル系重合体(低水浸透性重合体および高水浸透性重合体の合計)の含有質量は、前記核部100質量部に対して4質量部以上であってもよく、例えば4~20質量部、好ましくは5~18質量部、さらに好ましくは7~15質量部、より好ましくは8~12質量部である。前記(メタ)アクリル系重合体の割合が少なすぎると、ラグ時間を制御するのが困難となる虞があり、多すぎると、有効成分の溶出性が低下する上に、顆粒が大型化する虞がある。
【0050】
(無機化合物)
無機化合物は、滑沢剤であってもよい。滑沢剤としては、例えば、タルク、軽質無水ケイ酸などの無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素(含水無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどのケイ酸類;酸化マグネシウム、酸化チタンなどの金属酸化物;沈降性炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;無水リン酸水素カルシウム、リン酸一水素カルシウムなどのリン酸塩;ベントナイト、合成ヒドロタルサイト、カオリンなどの鉱物類などが挙げられる。
【0051】
これらの無機化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸アルミニウムからなる群から選ばれる1種以上のケイ酸類が好ましく、タルクが特に好ましい。
【0052】
ケイ酸類のBET比表面積は、例えば50~1000m2/g、好ましくは100~500m2/g、さらに好ましくは150~450m2/g、最も好ましくは200~400m2/gである。
【0053】
無機化合物(特に、タルク)の形状は、特に限定されず、無定形状、繊維状、楕円体状、球状、平板状、粉粒状などであってもよく、通常、無定形状、粉粒状などである。
【0054】
無機化合物(特に、タルク)の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、例えば0.3~10μm、好ましくは0.5~8μm、さらに好ましくは1~7μm、さらに好ましくは1.5~5μm、最も好ましくは2~4μmである。
【0055】
無機化合物(特に、タルク)は、水不溶性高分子の含有質量よりも大きければよいが、水不溶性高分子100質量部に対して120~500質量部であるのが好ましく、さらに好ましくは150~450質量部、より好ましくは150~350質量部、最も好ましくは200~300質量部である。無機化合物の割合が少なすぎると、ラグ時間まで有効成分の溶出を高度に遮蔽することができず、ラグ時間を長くすることもできない。
【0056】
コーティング層は、水不溶性高分子および無機化合物に加えて、経口製剤に配合される慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、賦形剤、前記水膨潤性物質を含む崩壊剤、可塑剤、界面活性剤、pH調整剤、着色剤、甘味剤または矯味剤、抗酸化剤、防腐剤または保存剤、湿潤剤、帯電防止剤、崩壊補助剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、コーティング層中30質量%以下であってもよく、例えば0.01~20質量%、好ましくは0.05~10質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%である。
【0057】
コーティング層の平均厚みは、例えば5~50μm、好ましくは10~30μm、さらに好ましくは13~28μm、より好ましくは15~25μm、最も好ましくは18~22μmである。厚みが薄すぎると、有効成分の溶出の遮蔽が困難となる虞があり、厚すぎると、有効成分の溶出性が低下する上に、顆粒の小型化も困難となる虞がある。
【0058】
[時限放出型顆粒の特性および製造方法]
本発明の時限放出型顆粒は、有効成分の溶出のラグ時間を制御でき、比較的長いラグ時間にも調整でき、例えば、ラグ時間を5分程度に調整し、15~30分後には溶出が完了する経口製剤を容易に調製できる。そのため、有効成分が苦味を有していても、口腔内では有効成分の溶出を抑制し、胃の中で溶出が完了するように設計することもできる。
【0059】
すなわち、本発明の時限放出型顆粒は、ラグ時間までは高度に抑制でき、ラグ時間経過後は30分以内の短時間で速やかに有効成分を溶出できる即時放出製剤としての特徴を有している。
【0060】
具体的には、本発明の時限放出型顆粒は、溶出試験パドル法において、有効成分の5%が溶出する時間(溶出率5%に達するまでの時間)が3分以上であり、例えば3~30分、好ましくは3.3~20分、さらに好ましくは3.5~10分、より好ましくは3.8~8分、最も好ましくは4~6分である。前記溶出時間が短すぎると、口腔内で有効成分の溶出を高度に抑制して、苦味などを低減することができない。
【0061】
さらに、本発明の時限放出型顆粒は、溶出試験パドル法において、30分経過時における有効成分の溶出率が85%以上であり、例えば85~100%、好ましくは90~100%、さらに好ましくは95~100%である。前記溶出率が低すぎると、即時放出性が低下する。
【0062】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、溶出試験パドル法の溶出率は、日本薬局方 溶出試験法 パドル法に準拠して測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0063】
本発明の顆粒の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、例えば130~500μm、好ましくは130~450μm、さらに好ましくは150~400μm、より好ましくは180~350μm、最も好ましくは180~300μmである。
【0064】
本発明の顆粒は、有効成分を含む核部を製造する工程(核部調製工程)と、水不溶性高分子および無機化合物を含み、かつ、前記無機化合物の含有質量が前記水不溶性高分子の含有質量よりも大きいコーティング組成物によって、前記核部を被覆する工程(被覆工程)とを経ることにより製造できる。
【0065】
核部調製工程において、核部が球状核部である場合は、球状賦形剤に対して、有効成分を含む組成物を慣用のコーティング方法でコーティングしてもよい。慣用のコーティング方法としては、例えば、塗布、噴霧、含浸・浸漬、パンコーティング、流動層コーティング、転動コーティング、転動流動コーティングなどが挙げられる。これらのうち、流動層コーティング、転動流動コーティングが好ましく、転動流動コーティングが特に好ましい。
【0066】
被覆工程におけるコーティング層のコーティング方法としても、前記慣用の方法を利用でき、流動層コーティング、転動流動コーティングが好ましく、転動流動コーティングが特に好ましい。
【0067】
[製剤]
本発明の製剤は、前記時限放出型顆粒を含んでいればよく、なかでも、各種の経口製剤に対して好適に利用できる。経口製剤としては、例えば、丸剤、液剤、散剤、トローチ剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤などが挙げられる。これらのうち、有効成分が口腔内に溶出し易い経口製剤、例えば、散剤、トローチ剤、ドライシロップ剤、錠剤、懸濁剤などに対して有効であり、口腔内崩壊錠(OD錠)に対して特に有効である。
【実施例0068】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の例における評価方法を以下に示す。また、使用した原料の質量は全て固形分質量である。
【0069】
[粒径分布]
粒径分布(D50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製、商品名「マスターサイザー3000」)を用いて、体積基準で測定した。
【0070】
[コーティング層の平均厚み]
コーティング前後の粒径分布(D50)から算出した。
【0071】
[顆粒の平均溶出率]
日本薬局方 溶出試験法 パドル法(回転数50rpm、溶出試験第2液900mL)に準拠して、コーティング顆粒の平均溶出率を測定した。溶出試験中のコーティング顆粒同士の付着・凝集を防ぐため、事前にコーティング顆粒に対して等倍の崩壊性顆粒(下記製造方法で得られた賦形剤と崩壊剤で構成される顆粒)を混合し、試験ベッセルへ投入した。
【0072】
サンプルを採取して試験を開始し、サンプリング時間ごとに溶出液を採取し、孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過し、試料溶液を調製した。
【0073】
別途、標準品約28mgを精密に量り、溶解液を加えて正確に100mLとした。この溶液2.0mLを正確に量り、溶解液を正確に加えて50mLとし、標準溶液を調製した。
【0074】
試料溶液および標準溶液につき、紫外可視吸光度測定法により試験を行い、波長294nmにおけるそれぞれの液の吸光度を測定した。
【0075】
(崩壊性顆粒の製造方法)
流動層造粒乾燥機にD-マンニトール71質量部、エチルセルロース2質量部、軽質無水ケイ酸1質量部を投入した。精製水にコーンスターチ20質量部およびクロスポビドン6質量部を水に分散させ、この液をスプレーして造粒した後、乾燥し、30Mで分級し、崩壊性顆粒を得た。
【0076】
[ラグ時間]
溶出率が5%に達した時点をラグ時間とした。具体的には、測定した時間と溶出率とのグラフにおいて、溶出率が5%に達する前後のポイントを結んだ直線に基づいて、溶出率が5%に達するラグ時間とみなした。
【0077】
比較例1
[球状核部の調製]
マンニトール球状顆粒(フロイント産業社製、商品名「ノンパレル-108(グレード200)」)を転動流動層造粒乾燥機に投入した。
【0078】
精製水とエタノールとを混和し、混和液にレボフロキサシン水和物およびヒプロメロースを溶解・分散させ、この液を全量スプレーしてコーティングした後、乾燥し、30M篩で分級し、粒径(D50)234μmの球状核部を得た。球状核部を調製するための組成物を下記表1に示す。なお、表1中の配合比(%)は、球状核部の配合成分(溶媒を除く)の合計質量に対する各配合成分の質量比(%)である。
【0079】
【0080】
[コーティング層の被覆工程]
得られた球状核部を転動流動層造粒乾燥機に投入した。
【0081】
球状核部100質量部に対して、高水浸透性重合体(エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRLPO」)16質量部、低水浸透性重合体(エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRSPO」)4質量部、タルク20質量部を精製水に分散させた分散液を混和し、100M篩でろ過した液を、全量スプレーしてコーティングした後、乾燥し、42M篩で分級し、粒径(D50)248μmの時限放出型顆粒を得た。タルクの割合は、水不溶性高分子100質量部に対して100質量部である。
【0082】
実施例1
コーティング層の被覆工程において、タルクの配合量を、球状核部100質量部に対して40質量部に変更する以外は比較例1と同様にして時限放出型顆粒を得た。タルクの割合は、水不溶性高分子100質量部に対して200質量部である。
【0083】
実施例2
コーティング層の被覆工程において、タルクの配合量を、球状核部100質量部に対して60質量部に変更する以外は比較例1と同様にして時限放出型顆粒を得た。タルクの割合は、水不溶性高分子100質量部に対して300質量部である。
【0084】
実施例3
コーティング層の被覆工程において、タルクの配合量を、球状核部100質量部に対して100質量部に変更する以外は比較例1と同様にして時限放出型顆粒を得た。タルクの割合は、水不溶性高分子100質量部に対して500質量部である。
【0085】
比較例1および実施例1~3で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを
図1~2に示す。なお、
図2は、
図1において試験時間5分までの溶出初期のプロファイルを拡大したグラフである。
図1~2に基づいて算出したラグ時間を下記表2に示す。
【0086】
【0087】
図1~2および表2の結果から明らかなように、比較例1ではラグ時間が短く、ラグ時間を長時間にコントロールできない。これに対して、実施例1~3では、ラグ時間を調整でき、長いラグ時間も達成できる。
【0088】
さらに、実施例2で得られた時限放出型顆粒の溶出前後の状態のSEM写真を
図8~9に示す。実施例2で得られた顆粒は、溶出後も皮膜が残った状態を維持しており、これによりラグ時間を容易に制御できることが分かる。
【0089】
比較例2
表3に、コーティング層における各成分の組成比を示す。コーティング層の被覆工程において、表3に示すように、球状核部に対する水不溶性高分子およびタルクの合計量の割合を変化させる以外は比較例1と同様の方法で顆粒を製造し(表3に示すように、低水浸透性重合体と高水浸透性重合体とタルクとの質量比は比較例1と同一にして、球状核部に対する水不溶性高分子およびタルクの合計量を後述する
図3に示すように変化させて顆粒を製造し)、得られた各顆粒の溶出プロファイルをそれぞれ求めた。
【0090】
実施例4
コーティング層の被覆工程において、表3に示すように、球状核部に対する水不溶性高分子およびタルクの合計量の割合を変化させる以外は実施例1と同様の方法で顆粒を製造し、得られた各顆粒の溶出プロファイルをそれぞれ求めた。
【0091】
実施例5
コーティング層の被覆工程において、表3に示すように、球状核部に対する水不溶性高分子およびタルクの合計量の割合を変化させる以外は実施例2と同様の方法で顆粒を製造し、得られた各顆粒の溶出プロファイルをそれぞれ求めた。
【0092】
実施例6
コーティング層の被覆工程において、表3に示すように、球状核部に対する水不溶性高分子およびタルクの合計量の割合を変化させる以外は実施例3と同様の方法で顆粒を製造し、得られた各顆粒の溶出プロファイルをそれぞれ求めた。
【0093】
図3は、比較例2および実施例4~6において、それぞれの例で求めた溶出プロファイルからラグ時間を算出し、横軸に水不溶性高分子の比率(球状核部に対する水不溶性高分子の比率)、縦軸にラグ時間をプロットしたグラフである。
図3に基づいて、得られる近似直線からラグ時間が3分となる水不溶性高分子の比率(球状核部に対する水不溶性高分子の比率)を算出した結果を下記表3に示す。
【0094】
【0095】
表3の結果から明らかなように、水不溶性高分子100質量部に対するタルクの質量が多いほど、ラグ時間3分の水不溶性高分子比率(%)が小さく、実施例では、球状核部に対して100質量部に対して、水不溶性高分子が17.6質量部程度以上使用することにより、ラグ時間を3分以上に調整できた。
【0096】
実施例7
コーティング層の被覆工程において、低水浸透性重合体は使用せずに、水不溶性高分子(高水浸透性重合体のみ)とタルクと質量比率は実施例5と同様の比率にする以外は実施例5と同様の方法で顆粒を製造し、得られた各顆粒の溶出プロファイルをそれぞれ求めた。
【0097】
実施例8
コーティング層の被覆工程において、低水浸透性重合体と高水浸透性重合体との質量比率を50/50とする以外は実施例5と同様の方法で顆粒を製造し、得られた各顆粒の溶出プロファイルをそれぞれ求めた。
【0098】
実施例9
コーティング層の被覆工程において、低水浸透性重合体と高水浸透性重合体との質量比率を80/20とする以外は実施例5と同様の方法で顆粒を製造し、得られた各顆粒の溶出プロファイルをそれぞれ求めた。
【0099】
図4は、実施例5および7~9において、それぞれの例で求めた溶出プロファイルからラグ時間を算出し、横軸に水不溶性高分子の比率(球状核部に対する水不溶性高分子の比率)、縦軸にラグ時間をプロットしたグラフである。表4に、実施例5および7~9のコーティング層における各成分の組成比と、
図4に基づいて、得られる近似直線からラグ時間が3分となる水不溶性高分子の比率(球状核部に対する水不溶性高分子の比率)を算出した結果を下記表4に示す。
【0100】
【0101】
表4の結果から明らかなように、低水浸透性重合体と高水浸透性重合体の合計量に対する低水浸透性重合体の割合が大きいほど、ラグ時間3分の水不溶性高分子比率(%)が大きく、実施例では、球状核部に対して100質量部に対して、水不溶性高分子が9質量部程度以上使用することにより、ラグ時間を3分に調整できた。
【0102】
実施例10~12
[球状核部の調製]
実施例10は実施例1と同様にして球状核部を調製し、実施例11および12については、下記表5に示すように、水膨潤性物質として、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業(株)製「LH-31」、粒径20μm)をコーティング組成物として追加し、実施例11では水膨潤性物質の含有割合が10質量%であり、実施例12では水膨潤性物質の含有割合が25質量%である球状核部を調製した。球状核部を調製するための組成物を表5に示す。なお、表5中の配合比(%)は、球状核部の配合成分(溶媒を除く)の合計質量に対する各配合成分の質量比(%)である。
【0103】
【0104】
[コーティング層の被覆工程]
得られた球状核部を転動流動層造粒乾燥機に投入した。
【0105】
球状核部に対して、高水浸透性重合体(エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRLPO」)、低水浸透性重合体(エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRLPO」)、タルクを精製水に分散させた分散液を混和し、100M篩でろ過した液を全量スプレーしてコーティングした後、乾燥し、42M篩で分級し、時限放出型顆粒を得た。低水浸透性重合体と高水浸透性重合体とタルクとの質量比は、低水浸透性重合体/高水浸透性重合体/タルク=20/80/300に調整した。コーティング層としては、球状核部の質量に対して60質量%、80質量%、100質量%の3種類の厚みが異なるコーティング層を形成した。
【0106】
得られた各顆粒の平均粒径およびコーティング層の平均厚みを下記表6に示す。
【0107】
【0108】
表6の結果から明らかなように、水膨潤性物質の有無によって、球状核部の粒径に差が生じており、同じコーティング量でも膜厚に違いが生じた。そこで、コーティング層の厚みが21~22μmの厚みにおいて、溶出率を測定したプロファイルを
図5~6に示す。
図5は、全体のプロファイルであり、
図6は、溶出初期のプロファイル(
図5の拡大図)であるが、実施例12では、実施例5及び10と比べて溶出速度が速くなったのに対して、実施例10と実施例11とでは溶出速度に差は生じなかった。ただし、いずれの顆粒においても、3分以上のラグ時間の形成が認められ、特に水膨潤性物質の含有割合が少ない実施例10および11においてラグ時間を長く調整できることが分かった。
【0109】
実施例13
[球状核部の調製]
ビルダグリプチン、ヒドロキシプロピルセルロース、精製水とエタノールとの混和液を用いて、造粒した。得られた造粒物を乾燥させ、30M篩で分級して、球状核部を得た。球状核部を調製するための組成物を下記表7に示す。
【0110】
【0111】
[コーティング層の被覆工程]
得られた球状核部を流動層造粒乾燥機に投入した。
【0112】
球状核部100質量部に対して、高水浸透性重合体(エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRLPO」)9質量部、低水浸透性重合体(エボニック社製のアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー「オイドラギットRSPO」)9質量部を、精製水とエタノールの混和液に溶解させ、タルク36質量部を分散させた分散液を全量スプレーしてコーティングした後、乾燥し、30M篩で分級し、時限放出型顆粒を得た。タルクの割合は、水不溶性高分子100質量部に対して200質量部である。
【0113】
実施例13で得られた時限放出型顆粒の溶出プロファイルを
図7に示す。
図7に基づいて算出したラグ時間は3.3分であり、実施例13の時限放出型顆粒においても、3分以上のラグ時間の形成が認められた。また、30分時点の溶出率は100%であった。
【0114】
実施例14
[口腔内崩壊錠の製造]
実施例13で得られた時限放出型顆粒を乾燥し、整粒した後、崩壊性顆粒、タルク、エチルセルロース、軽質無水ケイ酸、クロスポビドン、およびステアリン酸マグネシウムと混合して打錠し、口腔内崩壊錠を得た。なお、本実施例において、崩壊性顆粒は、乳糖水和物、エチルセルロース、軽質無水ケイ酸を流動層造粒機に投入し、トウモロコシデンプンおよびクロスポビドンを水に分散させた液をスプレーして造粒した後、乾燥、整粒して、崩壊性顆粒を得た。本口腔内崩壊錠の1錠あたりの組成を下記表8に示す。
【0115】
【0116】
実施例14の口腔内崩壊錠では、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギットRLPO及びオイドラギットRSPO)によって、口腔内で感じるビルダグリプチンの苦味が抑制されており、且つ、保存安定性が担保されたもの(類縁物質の生成が抑制されたもの)であった。また、即時放出製剤として、良好な溶出特性を示した。
【0117】
なお、本実施例14に示すようなビルダグリプチンを含有する口腔内崩壊錠において、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギットRLPO)とアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギットRSPO)との配合比は、適宜、調整可能であり、質量比で、前者:後者=100:0~20:80とすることが可能である。また、ビルダグリプチンを含む即時放出顆粒において、核部100質量部に対するコーティング層の水不溶性高分子の量(すなわち、オイドラギットRLPOとオイドラギットRSPOとの合計量)は、5~70質量部とすることができる。
本発明の時限放出型顆粒は、栄養補助成分、生理活性成分、薬理活性成分などの各種の有効成分を含む経口製剤に含まれる顆粒として利用でき、ラグ時間経過後は速やかに有効成分が溶出し、30分程度の短時間で溶出を完了するため、即時放出製剤に含まれる顆粒として特に有効に利用できる。