(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103601
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/16 20060101AFI20220701BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20220701BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
H05K1/16 D
H01G4/33 102
H01G4/30 160
H01G4/30 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218336
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和弘
(72)【発明者】
【氏名】大橋 武
(72)【発明者】
【氏名】角田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 晃靖
(72)【発明者】
【氏名】冨川 満広
【テーマコード(参考)】
4E351
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
4E351AA01
4E351AA03
4E351AA04
4E351AA07
4E351AA12
4E351AA13
4E351BB03
4E351BB09
4E351BB24
4E351BB38
4E351CC03
4E351CC05
4E351CC06
4E351FF16
4E351GG13
5E001AB01
5E001AE00
5E001AG01
5E001AJ04
5E082AB01
5E082BC19
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG22
5E082FG42
5E082HH25
(57)【要約】
【課題】基材の表面に沿って浸入した水分が内部電極層に到達しにくい構造を有する電子部品を提供する。
【解決手段】電子部品1は、基材2の中央領域2aに設けられた平坦化層3、導体層M1、誘電体膜4、導体層MMを備える。基材2の外周領域2bは、中央領域2aよりも表面の位置が低く、且つ、平坦化層3及び誘電体膜4を介することなく絶縁樹脂層11で覆われている。平坦化層3及び誘電体膜4の外周領域においては、導体層M1が介在することなく両者が接している。基材2の段差面2s、平坦化層3及び誘電体膜4の端面3s,4sはテーパー状である。このように、テーパー状にエッチングされた端面に導体層M1が露出しないことから、基材2の表面に沿って外部から水分が浸入した場合であっても、水分が導体層M1に到達しにくい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が外周領域及び前記外周領域に囲まれた中央領域に区画された基材と、
前記基材の前記中央領域に設けられた平坦化層と、
前記平坦化層上に設けられたキャパシタの下部電極と、
前記下部電極を覆うよう、前記平坦化層上に設けられた前記キャパシタの誘電体膜と、
前記下部電極と重なるよう、前記誘電体膜上に設けられた前記キャパシタの上部電極と、
前記上部電極を覆う絶縁樹脂層と、を備え、
前記基材の前記外周領域は、前記中央領域よりも前記表面の位置が低く、且つ、前記平坦化層及び前記誘電体膜を介することなく前記絶縁樹脂層で覆われており、
前記平坦化層及び前記誘電体膜の外周領域においては、前記下部電極が介在することなく、前記平坦化層と前記誘電体膜が接するように積層されており、
前記基材の前記中央領域と前記外周領域の境界に位置する段差面、前記平坦化層の端面及び前記誘電体膜の端面は、テーパー状であり、且つ、前記絶縁樹脂層で覆われていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記上部電極を覆うよう、前記誘電体膜上に設けられたパッシベーション膜をさらに備え、
前記誘電体膜及び前記パッシベーション膜の外周領域においては、前記上部電極が介在することなく、前記誘電体膜と前記パッシベーション膜が接するように積層されており、
前記平坦化層の前記端面、前記誘電体膜の前記端面及び前記パッシベーション膜の端面は、テーパー状の同一平面を構成することを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記平坦化層、前記誘電体膜及び前記パッシベーション膜は、互いに同じ無機絶縁材料からなることを特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記無機絶縁材料は、窒化シリコンであることを特徴とする請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
基材の表面に平坦化層を形成する第1の工程と、
前記平坦化層上にキャパシタの下部電極を形成する第2の工程と、
前記下部電極を覆うよう、前記平坦化層上に前記キャパシタの誘電体膜を形成する第3の工程と、
前記下部電極と重なるよう、前記誘電体膜上に前記キャパシタの上部電極を形成する第4の工程と、
前記下部電極が介在することなく積層された前記誘電体膜及び前記平坦化層の外周領域をエッチングすることにより、前記基材の外周領域を露出させるとともに、前記基材の前記外周領域をオーバーエッチングすることによって、前記平坦化層及び前記誘電体膜が形成された前記基材の中央領域と、前記平坦化層及び前記誘電体膜が除去された前記基材の前記外周領域との間に段差を形成する第5の工程と、を備え、
前記第5の工程においては、前記基材の前記中央領域と前記外周領域の境界に位置する段差面、前記平坦化層の端面及び前記誘電体膜の端面がテーパー状となるようエッチングを行うことを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記第4の工程を行った後、前記第5の工程を行う前に、前記上部電極を覆うよう、前記誘電体膜上にパッシベーション膜を形成する工程をさらに備え、
前記第5の工程においては、前記上部電極が介在することなく積層された前記パッシベーション膜及び前記誘電体膜の外周領域をエッチングすることにより、前記平坦化層の前記端面、前記誘電体膜の前記端面及び前記パッシベーション膜の端面をテーパー状の同一平面に加工することを特徴とする請求項5に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品及びその製造方法に関し、特に、キャパシタを含む電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャパシタを含む電子部品が開示されている。特許文献1に記載された電子部品においては、複数の内部電極層と複数の誘電体層が交互に積層された容量部をテーパー状にエッチングし、さらに、基材をオーバーエッチングすることによって基材に段差を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された電子部品においては、テーパー状にエッチングされた容量部の側面に内部電極層が露出することから、基材の表面に沿って外部から浸入した水分が内部電極層に到達しやすいという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、基材の表面に沿って外部から浸入した水分が内部電極層に到達しにくい構造を有する電子部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電子部品は、表面が外周領域及び外周領域に囲まれた中央領域に区画された基材と、基材の中央領域に設けられた平坦化層と、平坦化層上に設けられたキャパシタの下部電極と、下部電極を覆うよう平坦化層上に設けられたキャパシタの誘電体膜と、下部電極と重なるよう誘電体膜上に設けられたキャパシタの上部電極と、上部電極を覆う絶縁樹脂層とを備え、基材の外周領域は、中央領域よりも表面の位置が低く、且つ、平坦化層及び誘電体膜を介することなく絶縁樹脂層で覆われており、平坦化層及び誘電体膜の外周領域においては、下部電極が介在することなく、平坦化層と誘電体膜が接するように積層されており、基材の中央領域と外周領域の境界に位置する段差面、平坦化層の端面及び誘電体膜の端面は、テーパー状であり、且つ、絶縁樹脂層で覆われていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、テーパー状にエッチングされた端面に下部電極が露出しないことから、基材の表面に沿って外部から水分が浸入した場合であっても、水分が下部電極に到達しにくい。しかも、基材の外周領域と中央領域の間に段差面が存在することから、基材の表面の沿面距離が長くなり、水分が内部に侵入しにくくなる。
【0008】
本発明による電子部品は、上部電極を覆うよう誘電体膜上に設けられたパッシベーション膜をさらに備え、誘電体膜及びパッシベーション膜の外周領域においては、上部電極が介在することなく、誘電体膜とパッシベーション膜が接するように積層されており、平坦化層の端面、誘電体膜の端面及びパッシベーション膜の端面は、テーパー状の同一平面を構成しても構わない。これによれば、テーパー状にエッチングされた端面に上部電極が露出しないことから、基材の表面に沿って外部から水分が浸入した場合であっても、水分が上部電極に到達しにくくなる。
【0009】
本発明において、平坦化層、誘電体膜及びパッシベーション膜は、互いに同じ無機絶縁材料からなるものであっても構わない。これによれば、平坦化層、誘電体膜及びパッシベーション膜のパターニングが容易となるだけでなく、熱膨張係数の差に起因する剥離が生じない。この場合、無機絶縁材料は窒化シリコンであっても構わない。これによれば、上部電極及び下部電極をより効果的に保護することが可能となる。
【0010】
本発明による電子部品の製造方法は、基材の表面に平坦化層を形成する第1の工程と、平坦化層上にキャパシタの下部電極を形成する第2の工程と、下部電極を覆うよう平坦化層上にキャパシタの誘電体膜を形成する第3の工程と、下部電極と重なるよう誘電体膜上にキャパシタの上部電極を形成する第4の工程と、下部電極が介在することなく積層された誘電体膜及び平坦化層の外周領域をエッチングすることにより基材の外周領域を露出させるとともに、基材の外周領域をオーバーエッチングすることによって、平坦化層及び誘電体膜が形成された基材の中央領域と、平坦化層及び誘電体膜が除去された基材の外周領域との間に段差を形成する第5の工程とを備え、第5の工程においては、基材の中央領域と外周領域の境界に位置する段差面、平坦化層の端面及び誘電体膜の端面がテーパー状となるようエッチングを行うことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、下部電極が介在することなく積層された誘電体膜及び平坦化層の外周領域をエッチングしていることから、テーパー状にエッチングされた端面に下部電極が露出しない。これにより、基材の表面に沿って外部から水分が浸入した場合であっても、水分が下部電極に到達しにくくなる。しかも、基材の外周領域をオーバーエッチングすることによって段差面を形成していることから、基材の表面の沿面距離が長くなり、水分が内部に侵入しにくくなる。
【0012】
本発明による電子部品の製造方法は、第4の工程を行った後、第5の工程を行う前に、上部電極を覆うよう誘電体膜上にパッシベーション膜を形成する工程をさらに備え、第5の工程においては、上部電極が介在することなく積層されたパッシベーション膜及び誘電体膜の外周領域をエッチングすることにより、平坦化層の端面、誘電体膜の端面及びパッシベーション膜の端面をテーパー状の同一平面に加工しても構わない。これによれば、上部電極が介在することなく積層されたパッシベーション膜及び誘電体膜の外周領域をエッチングしていることから、テーパー状にエッチングされた端面に上部電極が露出しない。これにより、基材の表面に沿って外部から水分が浸入した場合であっても、水分が上部電極に到達しにくくなる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、基材の表面に沿って外部から浸入した水分が内部電極層に到達しにくい構造を有する電子部品及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(a)は本発明の一実施形態による電子部品1の構造を説明するための断面図であり、
図1(b)は
図1(a)に示す領域Bの拡大図である。
【
図2】
図2は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図3】
図3は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図4】
図4は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図5】
図5は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図6】
図6は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図7】
図7は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図8】
図8は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図9】
図9は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図10】
図10は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図11】
図11は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図12】
図12は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図13】
図13は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図14】
図14は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図15】
図15は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図16】
図16は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図17】
図17は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図18】
図18は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図19】
図19は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図20】
図20は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図21】
図21は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
【
図22】
図22(a)は領域Bの第1の変形例による拡大図であり、
図22(b)は領域Bの第2の変形例による拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1(a)は、本発明の一実施形態による電子部品1の構造を説明するための断面図である。また、
図1(b)は、
図1(a)に示す領域Bの拡大図である。
【0017】
本実施形態による電子部品1はLCフィルタであり、
図1(a)に示すように、基材2と、基材2の上面に交互に積層された導体層M1~M5と絶縁樹脂層11~14を備えている。基材2の材料としては、化学的・熱的に安定で応力発生が少なく、表面の平滑性を保つことができる材料であればよく、特に限定されるものではないが、シリコン単結晶、アルミナ、サファイア、窒化アルミ、MgO単結晶、SrTiO
3単結晶、表面酸化シリコン、ガラス、石英、フェライト、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等などを用いることができる。基材2の表面は平坦化層3で覆われている。平坦化層3としては、アルミナ、酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。電子部品1の外周部では平坦化層3が除去されており、これによって応力が緩和されている。
【0018】
導体層M1は最下層に位置する導体層であり、導体パターン21,22を含んでいる。導体パターン21,22はいずれも平坦化層3と接する薄いシード層Sと、シード層S上に設けられ、シード層Sよりも膜厚の大きいメッキ層Pによって構成されている。他の導体層に位置する導体パターンについても同様であり、シード層Sとメッキ層Pの積層体によって構成されている。ここで、導体パターン21はキャパシタの下部電極を構成し、その上面及び側面は誘電体膜(容量絶縁膜)4で覆われている。誘電体膜4としては、例えば、窒化シリコン(SiNx)や酸化シリコン(SiOx)などの常誘電体材料の他、公知の強誘電体材料などからなる無機絶縁材料を利用することができる。電子部品1の外周部では誘電体膜4が除去されており、これによって応力が緩和されている。
【0019】
導体パターン21の上面には、誘電体膜4を介して導体パターン23が形成されている。導体パターン23は、導体層M1と導体層M2の間に位置する導体層MMに属し、キャパシタの上部電極を構成する。これにより、導体パターン21を下部電極とし、導体パターン23を上部電極とするキャパシタが形成される。導体層M1及び導体層MMは、パッシベーション膜5を介して絶縁樹脂層11で覆われる。本実施形態においては、誘電体膜4とパッシベーション膜5がいずれも無機絶縁材料からなる。誘電体膜4を構成する無機絶縁材料とパッシベーション膜5を構成する無機絶縁材料は、同じ材料であっても構わないし、異なる材料であっても構わない。電子部品1の外周部ではパッシベーション膜5が除去されており、これによって応力が緩和されている。
【0020】
導体層M2は、絶縁樹脂層11の表面に設けられた2層目の導体層であり、導体パターン24,25を含んでいる。導体パターン24は、それぞれビア導体24a,24bを介して導体パターン23,22に接続されている。導体パターン25は、ビア導体25aを介して導体パターン21に接続されている。導体層M2は、絶縁樹脂層12によって覆われる。
【0021】
導体層M3は、絶縁樹脂層12の表面に設けられた3層目の導体層であり、導体パターン26,27を含んでいる。導体パターン26は、ビア導体26aを介して導体パターン24に接続されている。導体層M3は、絶縁樹脂層13によって覆われる。
【0022】
導体層M4は、絶縁樹脂層13の表面に設けられた4層目の導体層であり、導体パターン28,29を含んでいる。導体パターン28は、ビア導体28aを介して導体パターン26に接続されている。導体層M4は、絶縁樹脂層14によって覆われる。絶縁樹脂層14は、最上層に位置する絶縁樹脂層である。
【0023】
導体層M5は、絶縁樹脂層14の表面に設けられた最上層に位置する導体層であり、端子電極E1,E2を含んでいる。端子電極E1,E2は、それぞれビア導体E1a,E2aを介して導体パターン28,29に接続されている。導体パターン22,24~29は例えばコイルパターンの一部であり、これにより、基材2上にキャパシタとインダクタが集積される。
【0024】
図1(a)及び拡大図である
図1(b)に示すように、基材2は、平坦化層3、誘電体膜4及びパッシベーション膜5で覆われた中央領域2aと、中央領域2aを取り囲む外周領域2bに区画されている。外周領域2bは、平坦化層3、誘電体膜4及びパッシベーション膜5で覆われておらず、絶縁樹脂層11によって直接覆われている。外周領域2bは、中央領域2aよりも表面位置が高さHだけ低く、これにより中央領域2aと外周領域2bの間には段差が形成される。中央領域2aと外周領域2bの境界に位置する段差面2sはテーパー状である。
【0025】
基材2の段差近傍に位置する平坦化層3、誘電体膜4及びパッシベーション膜5の外周領域は、導体層M1,MMを介することなく積層されている。つまり、平坦化層3と誘電体膜4は直接接するように積層され、誘電体膜4とパッシベーション膜5は直接接するように積層される。そして、平坦化層3の端面3s、誘電体膜4の端面4s及びパッシベーション膜5の端面5sはテーパー状であり、基材2の段差面2sと同一平面を構成している。これら段差面2s及び端面3s,4s,5sは、いずれも絶縁樹脂層11によって直接覆われている。
【0026】
このような形状により、仮に、基材2と絶縁樹脂層11の界面から水分か浸入したとしても、
図1(b)に示す領域、つまり平坦化層3、誘電体膜4及びパッシベーション膜5の外周領域部分に導体層M1,MMが露出していないことから、導体層M1,MMが水分に晒されることがない。しかも、基材2自体が段差面2sを有していることから、基材2の表面の沿面距離が長く、これにより水分が内部に侵入しにくくなる。
【0027】
上述の通り、平坦化層3、誘電体膜4及びパッシベーション膜5としては、種々の絶縁材料を用いることが可能であるが、これらの材料として互いに同じ無機絶縁材料を用いれば、熱膨張係数の差に起因する剥離を防止することができる。平坦化層3、誘電体膜4及びパッシベーション膜5に用いる無機絶縁材料としては、窒化シリコンを用いることが好ましい。
【0028】
基材2の段差面2sは、平坦化層3、誘電体膜4及びパッシベーション膜5の端面3s,4s,5sと同一平面である点は必須でなく、
図22(a)に示すように、端面3s,4s,5sよりも段差面2sの方が大きくエッチングされた湾曲形状であっても構わないし、
図22(b)に示すように、基材2の中央領域2aの平坦面が部分的に露出していても構わない。
【0029】
次に、本実施形態による電子部品1の製造方法について説明する。
【0030】
図2~
図21は、本実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。電子部品1の製造プロセスにおいては、集合基材を用いて複数の電子部品1が多数個取りされるが、以下に説明する製造プロセスは、1個の電子部品1の製造プロセスに着目して説明する。
【0031】
まず、
図2に示すように、基材(集合基材)2上にスパッタリング法などを用いて平坦化層3を形成し、その表面を研削或いはCMPなどの鏡面化処理を行なって平滑化する。その後、平坦化層3の表面にスパッタリング法や無電解メッキなどを用いてシード層Sを形成する。次に、
図3に示すように、シード層S上にレジスト層R1をスピンコートした後、導体層M1を形成すべき領域のシード層Sが露出するよう、レジスト層R1をパターニングする。この状態で、シード層Sを給電体とする電解メッキを行うことにより、
図4に示すように、シード層S上にメッキ層Pを形成する。シード層Sとメッキ層Pの積層体は、導体層M1を構成する。
図4に示す断面においては、導体層M1に導体パターン21,22が含まれている。そして、
図5に示すようにレジスト層R1を除去し、
図6に示すように表面に露出するシード層Sを除去すれば、導体層M1が完成する。シード層Sの除去は、エッチング又はイオンミリングによって行うことができる。
【0032】
次に、
図7に示すように、導体層M1の上面及び側面を含む全面に誘電体膜4を成膜する。誘電体膜4の成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマCVD法、MOCVD法、ゾルゲル法、電子ビーム蒸着法などを用いることができる。
【0033】
次に、
図8に示すように、導体層M1の形成方法と同様の方法を用いることによって、導体パターン21の上面に誘電体膜4を介して導体パターン23を形成する。導体パターン23も、シード層Sとメッキ層Pの積層体からなる。これにより、導体層MMが完成し、導体パターン21を下部電極とし、導体パターン23を上部電極とするキャパシタが形成される。次に、
図9に示すように、導体層M1,MMの上面及び側面を含む全面にパッシベーション膜5を成膜する。パッシベーション膜5としては、誘電体膜4と同じ無機絶縁材料を用いることができる。
【0034】
次に、
図10に示すように、基材2の外周領域2bを覆うことなく、中央領域2aを覆うレジスト層R2を形成する。つまり、レジスト層R2のエッジは、最終的に電子部品1となる部分よりもやや内側に設定される。この状態でパッシベーション膜5、誘電体膜4及び平坦化層3をエッチングするとともに、基材2の外周領域2bをオーバーエッチングすることにより、
図11に示すように、基材2が中央領域2aと外周領域2bに区画され、最終的に電子部品1の外周部となる部分のパッシベーション膜5、誘電体膜4及び平坦化層3が除去される。パッシベーション膜5、誘電体膜4及び平坦化層3のエッチングは、イオンミリングなどの異方性の高いエッチング方法を用いることが好ましい。この時、平坦化層3、誘電体膜4及びパッシベーション膜5の材料として、窒化シリコンなど互いに同じ無機絶縁材料を用いれば、これらのエッチングを容易に行うことが可能となる。また、エッチング条件としては、基材2の段差面2sや、平坦化層3、誘電体膜4及びパッシベーション膜5の端面3s,4s,5sがテーパー状となる条件で行う。
【0035】
次に、
図12に示すように導体層M1,MMを覆う絶縁樹脂層11を形成する。絶縁樹脂層11の成膜は、コート法(例えばスピンコート法)によって行うことができる。これは、導体層M1,MMの合計膜厚が例えば約10μmと薄いため、ラミネート法によって絶縁樹脂層11を形成するよりも、低コストだからである。絶縁樹脂層11の材料としては、感光性のポリイミド系樹脂を用いることができる。次に、
図13に示すように、絶縁樹脂層11をパターニングすることによって、絶縁樹脂層11に開口部41~43を形成する。開口部41~43の形成は、図示しないフォトマスクを用いたフォトリソグラフィー法によって行うことができる。これにより、導体パターン21~23の上面を覆うパッシベーション膜5はそれぞれ開口部41~43を介して露出する。
【0036】
次に、
図14に示すように、絶縁樹脂層11上にレジスト層R3を形成した後、レジスト層R3に開口部51~53を形成する。開口部51~53は、それぞれ開口部41~43と重なる位置に設けられる。これにより、導体パターン21~23の上面を覆うパッシベーション膜5は、それぞれ開口部51~53を介して露出する。この状態で、イオンミリングなどを行うことにより、開口部51,52に露出するパッシベーション膜5及び誘電体膜4を除去するとともに、開口部53に露出するパッシベーション膜5を除去する。これにより、開口部51~53と重なる位置において導体パターン21~23の上面が露出する。
【0037】
そして、レジスト層R3を除去した後、
図15に示すように、導体層M1の形成方法と同様の方法によって、絶縁樹脂層11上に導体層M2を構成する。
図15に示す断面においては、導体層M2に導体パターン24,25が含まれている。導体層M2を構成する各導体パターンも、シード層Sとメッキ層Pの積層体からなる。ここで、導体パターン24は、絶縁樹脂層11に設けられた開口部を介して導体パターン22,23に共通に接続され、導体パターン25は、絶縁樹脂層11に設けられた開口部を介して導体パターン21に接続される。導体パターン24,25のうち絶縁樹脂層11の開口部内に位置する部分は、ビア導体24a,24b,25aを構成する。
【0038】
次に、
図16に示すように導体層M2を覆う絶縁樹脂層12を形成する。絶縁樹脂層12の成膜は、ラミネート法によって行うことができる。これは、導体層M2の厚さが例えば約20μmと厚いため、コート法によって絶縁樹脂層12を形成するよりも、低コストで形成できるからである。絶縁樹脂層12の材料としては、非感光性のエポキシ系樹脂を用いることができる。絶縁樹脂層12には、熱膨張係数を調整するフィラーが添加されており、これにより絶縁樹脂層11よりも低い熱膨張係数を有している。
【0039】
次に、
図17に示すように、絶縁樹脂層12に開口部54を形成する。開口部54の形成は、レーザー加工によって行うことができる。これにより、導体パターン24は開口部54を介して露出する。その後、過マンガン酸塩などを用いたデスミア処理を行うことによって、開口部54内の残渣を除去する。
【0040】
次に、
図18に示すように、導体層M1の形成方法と同様の方法によって、絶縁樹脂層12上に導体層M3を構成する。
図18に示す断面においては、導体層M3に導体パターン26,27が含まれている。導体層M3を構成する各導体パターンも、シード層Sとメッキ層Pの積層体からなる。ここで、導体パターン26は、絶縁樹脂層12に設けられた開口部を介して導体パターン24に接続される。導体パターン26のうち絶縁樹脂層12の開口部内に位置する部分は、ビア導体26aを構成する。
【0041】
その後、同様の工程を繰り返すことにより、
図19に示すように絶縁樹脂層13、導体層M4及び絶縁樹脂層14をこの順に形成する。絶縁樹脂層13,14についても、ラミネート法によって形成することができる。
図19に示す断面においては、導体層M4に導体パターン28,29が含まれている。ここで、導体パターン28は、絶縁樹脂層13に設けられた開口部を介して導体パターン26に接続される。導体パターン28のうち絶縁樹脂層13の開口部内に位置する部分は、ビア導体28aを構成する。
【0042】
次に、
図20に示すように、絶縁樹脂層14をレーザー加工することによって、開口部61,62を形成する。これにより、導体パターン28,29の上面はそれぞれ開口部61,62を介して露出する。その後、デスミア処理を行うことによって、開口部61,62内の残渣を除去する。
【0043】
次に、
図21に示すように、絶縁樹脂層14上に端子電極E1,E2を形成する。端子電極E1は絶縁樹脂層14に設けられた開口部を介して導体パターン28に接続され、端子電極E2は絶縁樹脂層14に設けられた開口部を介して導体パターン29に接続される。端子電極E1,E2のうち絶縁樹脂層14の開口部内に位置する部分は、それぞれビア導体E1a,E2aを構成する。
【0044】
そして、
図21に示すダイシングラインDに沿って基材2を切断することにより電子部品1を個片化すれば、本実施形態による電子部品1が完成する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態による電子部品1の製造プロセスにおいては、導体層M1,MMが設けられていない平坦化層3、誘電体膜4及びパッシベーション膜5の外周領域をエッチングにより除去していることから、外周領域における応力が緩和されるとともに、基材2の表面に沿って浸入した水分が導体層M1,MMに達しにくくなる。しかも、平坦化層3、誘電体膜4及びパッシベーション膜5をエッチングする際には、基材2の外周領域2bをオーバーエッチングしていることから、基材2の中央領域2aと外周領域2bに段差を形成することが可能となる。これにより、基材2の表面の沿面距離が拡大することから、水分が内部により到達しにくくなる。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0047】
例えば、上記実施形態においては、本発明をLCフィルタに応用した場合を例に説明したが、本発明の対象となる電子部品がLCフィルタに限定されるものではなく、他の種類の電子部品に応用しても構わない。
【符号の説明】
【0048】
1 電子部品
2 基材
2a 中央領域
2b 外周領域
2s 段差面
3 平坦化層
3s,4s,5s 端面
4 誘電体膜
5 パッシベーション膜
11~14 絶縁樹脂層
21~29 導体パターン
24a,24b,25a,26a,28a,E1a,E2a ビア導体
41~43,51~54,61,62 開口部
D ダイシングライン
E1,E2 端子電極
M1~M5,MM 導体層
P メッキ層
R1~R3 レジスト層
S シード層