(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103618
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】フェイスガード用フレーム及びそれを用いたフェイスガード
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220701BHJP
A62B 18/08 20060101ALI20220701BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20220701BHJP
A41D 13/12 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A41D13/11 L
A62B18/08 D
A62B18/02 A
A41D13/12 118
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218361
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】315009769
【氏名又は名称】株式会社アトリエサンク
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】外山 雄一
【テーマコード(参考)】
2E185
3B011
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA08
2E185CC36
3B011AA00
3B011AB09
3B011AC22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】前後のバランスが良好なフェイスガード用フレームを提供する。
【解決手段】フェイスガード10は、フェイスガード用フレーム10aと、当該フェイスガード用フレームの所定場所に装着してなるシールド板17と、含み、フェイスガード用フレームが、左耳にかける第1の耳掛け部11aと、右耳にかける第2の耳掛け部11bと、第1の耳掛け部から延設される正面支持部13と、第1の耳掛け部及び第2の耳掛け部から延設される背面支持部15とを備え、左側方から眺めた場合に、フェイスガード用フレームの重心が、第1の耳掛け部よりも、下方であって、第1の耳掛け部の頂点を通る、鉛直方向に沿った仮想直線上に存在することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド板を所定場所に装着するフェイスガード用フレームであって、
使用者の左耳にかける湾曲部を有する第1の耳掛け部と、
前記使用者の右耳にかける湾曲部を有する第2の耳掛け部と、
前記第1の耳掛け部の端部から、直接的又は間接的に延設され、かつ、前記使用者の顎領域に周回し、前記シールド板が装着される所定場所を有する正面支持部と、
前記第1の耳掛け部のもう一方の端部及び第2の耳掛け部のもう一方の端部との間に、それぞれ、直接的又は間接的に延設され、かつ、前記使用者の顔の後方領域に周回される背面支持部と、
を備え、
更に、左側方から眺めた場合に、当該フェイスガード用フレームの重心が、前記第1の耳掛け部の頂点を通る、鉛直方向の仮想直線上に存在することを特徴とするフェイスガード用フレーム。
【請求項2】
左側方から眺めた場合に、前記第1の耳掛け部を頂点とする、山なり形状とすることを特徴とする請求項1に記載のフェイスガード用フレーム。
【請求項3】
前記第1の耳掛け部と前記正面支持部の間に、互いの接続状態を変える可動接合部を設けてあり、前記可動接合部が、着脱機構を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のフェイスガード用フレーム。
【請求項4】
前記第1の耳掛け部と前記正面支持部の間に、互いの接続状態を変える可動接合部を設けてあり、前記可動接合部が、回転支持機構を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のフェイスガード用フレーム。
【請求項5】
前記第1の耳掛け部及び前記正面支持部の間に、互いの接続状態を変える可動接合部を設けてあり、前記可動接合部が、長さ調整機構を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のフェイスガード用フレーム。
【請求項6】
前記第1の耳掛け部及び前記正面支持部の間に、互いの接続状態を変える可動接合部を設けてあり、前記可動接合部が、折り曲げ機構を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のフェイスガード用フレーム。
【請求項7】
フェイスガード用フレームと、当該フェイスガード用フレームの所定場所に装着してなるシールド板と、を含むフェイスガードであって、
前記フェイスガード用フレームが、
使用者の左耳にかける湾曲部を有する第1の耳掛け部と、
前記使用者の右耳にかける湾曲部を有する第2の耳掛け部と、
前記第1の耳掛け部の端部から、直接的又は間接的に延設され、かつ、前記使用者の顎領域に周回し、前記シールド板が装着される所定場所を有する正面支持部と、
前記第1の耳掛け部のもう一方の端部及び第2の耳掛け部のもう一方の端部との間に、それぞれ、直接的又は間接的に延設され、かつ、前記使用者の顔の後方領域に周回される背面支持部と、
を備え、
更に、左側方から眺めた場合に、前記フェイスガード用フレームの重心が、前記第1の耳掛け部の頂点を通る、鉛直方向の仮想直線上に存在することを特徴とするフェイスガード。
【請求項8】
前記正面支持部に、前記シールド板を装着する取り付け部材が設けてあることを特徴とする請求項7に記載のフェイスガード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェイスガード用フレーム及びそれを用いたフェイスガードに関する。特に、使用中の前後のバランスが良好なフェイスガード用フレーム及びそれを用いたフェイスガードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自身の鼻や口、さらには目等に、異物や他人からの息、唾液等が及ぶことを軽減するためのフェイスガードとして、フェイスガード用フレームと、シールド板とを組み合わせたフェイスガードが各種提案されている。
【0003】
このようなフェイスガード(フェースガード、フェイスシールド、フェースシールドと称する場合がある)として、着用者の口と鼻を含む呼吸器を露出させた状態で、呼吸器からの異物の飛散を遮断するフェイスガードが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、
図8(a)に示すように、このフェイスガード100は、下部ボディ101と、呼吸器前方カバー体103と、支持手段105とを備えている。
下部ボディ101は、使用者110の顎に沿ってU字型に湾曲したものである。下部ボディ101は、中央部に使用者の顎を受ける顎把持部101aを備えている。呼吸器前方カバー体103は、下部ボディ101に着脱可能なもので、下部ボディ101に支持されて、使用者の口や鼻の前方からやや離れた状態で、口や鼻を囲うものである。支持手段105は、下部ボディ101の両端と使用者110との間に渡されて下部ボディ101を支持するもので、具体的には、鈎状部材105a又、リング状部材105b又は固定バンド105c等である。
【0004】
このフェイスガード100は、下部ボディ101の顎把持部101aに使用者の顎を当て、かつ、下部ボディ101の両端から使用者の耳や首の後ろに支持手段105をかけ渡して固定されて、使用される。
【0005】
また、別のフェイスガードとして、支持部の全体がベルト状であり、使用者の頭部に装着して、顔面前方を被覆するフェイスガードが提案されている(例えば、特許文献2参照。)
より具体的には、
図8(b)に示すように、このフェイスガード150は、固定ベルト部151と、シールド部153と、係止部155とを備えている。
固定ベルト部151は、使用者160の頭部に締め付けて固定して使用されるものであり、シールド部153は、使用者の顔全体をやや離れた状態で囲う透明体である。そして、係止部155は、固定ベルト部151の一部にシールド部153を回動可能に接続しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-157781号公報(特許請求の範囲)
【特許文献1】実用新案登録第3227908号公報(実用新案登録請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで近年、新型コロナウイルスの感染防止等から、フェイスガードの使用頻度が高まっており、特に、医療機関などにおいては、フェイスガードの着用が必須となっている。また、それに伴って、フェイスガードの使用時間も長くなる傾向にある。
ここで、特許文献1に記載されているフェイスガードの場合、下部ボディに対して、呼吸器前方カバー体が支持される構造であって、中央部に使用者の顎を受ける顎把持部を備えており、下部ボディを顎よりも正面側に配置することを必須としている。
そのため、下部ボディの重心が、顎の支点よりも顔の正面側に偏って存在することになり、使用中の前後のバランスが悪くなって、ずれやすいという問題が見られた。
【0008】
また、特許文献2に記載されているフェイスガードの場合、固定ベルト部を水平方向に締めて固定する構造であるため、重心が、固定ベルト部と同じ高さに存在することになり、使用中の前後のバランスが悪くなって、ずれやすいという問題が見られた。
また、頭部をベルトで締め付けて固定するため、使用中に痛みや疲れが出やすいという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の発明者らは鋭意検討した結果、所定のフェイスガード用フレームと、シールド板と、を含むフェイスガードとし、その重心を所定位置とすることで、ずれを防止できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明によれば、使用中の前後のバランスが良好なフェイスガードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シールド板を所定場所に装着するフェイスガード用フレームである。
また、使用者の左耳にかける湾曲部を有する第1の耳掛け部と、使用者の右耳にかける湾曲部を有する第2の耳掛け部と、第1の耳掛け部及び第2の耳掛け部のいずれか一方の端部から、直接的又は間接的に延設され、かつ、使用者の顎領域に周回し、シールド板が装着される所定場所を有する正面支持部と、第1の耳掛け部のもう一方の端部及び第2の耳掛け部のもう一方の端部との間に、それぞれ、直接的又は間接的に延設され、かつ、使用者の顔の後方領域に周回される背面支持部と、を備えている。
そして、左側方から眺めた場合に、当該フェイスガード用フレームの重心が、第1の耳掛け部の頂点を通る、鉛直方向の仮想直線上に存在することを特徴としている。
このように構成することにより、重心を、第1の耳掛け部の下方に配置することができるため、使用中の前後のバランスを良好な状態にして、例えば、シールド板を取り付けた場合であっても、ずれを防止することができる。
また、ずれを防止するために過度に締め付けて固定する必要がなくなって、使用時に痛みや疲れを出にくくすることができる。
そして、両耳と後方領域(後頭部と首の間の領域)とで支えることができるため、安定して姿勢を保つことができる。
【0011】
また、本発明のフェイスガード用フレームを構成するにあたり、側方から眺めた場合に、第1の耳掛け部を頂点とする、山なり形状とすることが好ましい。
このように構成することにより、重心の位置を低く保つことができるため、使用中に頭部を傾けた場合であっても、より容易にずれを防止することができる。
【0012】
また、本発明のフェイスガード用フレームによれば、第1の耳掛け部と正面支持部の間に、互いの接続状態を変える可動接合部を設けてあり、可動接合部が、着脱機構を有することが好ましい。
このように構成することにより、着脱がより容易になって、フェイスガードの汎用性をより向上させることができる。
また、第1の耳掛け部、第2の耳掛け部、背面支持部の姿勢を維持したまま、正面支持部及びシールド板を着脱することが容易になり、着脱に伴って前後のバランスが崩れるのを、より容易に防止することができる。
【0013】
また、本発明のフェイスガード用フレームを構成するにあたり、第1の耳掛け部と正面支持部の間に、互いの接続状態を変える可動接合部を設けてあり、可動接合部が、回転支持機構を有することが好ましい。
このように構成することにより、シールド板の開閉が容易になって、フェイスガードの汎用性をより向上させることができる。
また、第1の耳掛け部、第2の耳掛け部、背面支持部の姿勢を維持したまま、正面支持部及びシールド板を開閉することが容易になり、開閉に伴って前後のバランスが崩れるのを、より容易に防止することができる。
【0014】
また、本発明のフェイスガード用フレームを構成するにあたり、第1の耳掛け部及び正面支持部の間に、互いの接続状態を変える可動接合部を設けてあり、可動接合部が、長さ調整機構を有することが好ましい。
このように構成することにより、正面支持部及びシールド板と、使用者の顔との距離を変えることが容易になり、フェイスガードの汎用性をより向上させることができる。
また、第1の耳掛け部、第2の耳掛け部、背面支持部の姿勢を維持したまま、長さ調整することが容易になり、長さ調整に伴って前後のバランスが崩れるのを、より容易に防止することができる。
【0015】
また、本発明のフェイスガード用フレームを構成するにあたり、第1の耳掛け部及び正面支持部の間に、互いの接続状態を変える可動接合部を設けてあり、可動接合部が、折り曲げ機構を有することが好ましい。
このように構成することにより、使用者の顔の形状に合わせて、シールド板の姿勢を容易に変えることが容易になり、フェイスガードの汎用性をより向上させることができる。
また、第1の耳掛け部、第2の耳掛け部、背面支持部の姿勢を維持したまま、正面支持部及びシールド板の姿勢を変えることが容易になり、姿勢の変更に伴って前後のバランスが崩れるのを、より容易に防止することができる。
【0016】
また、本発明の別の態様は、フェイスガード用フレームと、当該フェイスガード用フレームの所定場所に装着してなるシールド板と、を含むフェイスガードである。
また、フェイスガード用フレームが、使用者の左耳にかける湾曲部を有する第1の耳掛け部と、使用者の右耳にかける湾曲部を有する第2の耳掛け部と、第1の耳掛け部の端部から、直接的又は間接的に延設され、かつ、使用者の顎領域に周回し、シールド板が装着される所定場所を有する正面支持部と、第1の耳掛け部のもう一方の端部及び第2の耳掛け部のもう一方の端部との間に、それぞれ、直接的又は間接的に延設され、かつ、使用者の顔の後方領域に周回される背面支持部と、を備えている。
そして、左側方から眺めた場合に、フェイスガード用フレームの重心が、第1の耳掛け部の頂点を通る、鉛直方向の仮想直線上に存在することを特徴としている。
このように構成することにより、フェイスガード用フレームの重心を、第1の耳掛け部の下方に配置することができるため、使用中の前後のバランスを良好な状態にして、シールド板を取り付けたフェイスガードのずれを防止することができる。
また、ずれを防止することで、過度に締め付けて固定する必要がなくなり、使用時に痛みや疲れを出にくくすることができる。
そして、両耳と後方領域(後頭部と首の間の領域)とで支えることができるため、安定して姿勢を保つことができる。
【0017】
また、本発明のフェイスガードを構成するにあたり、正面支持部に、シールド板を装着する取り付け部材が設けてあることが好ましい。
すなわち、正面支持部に、取り付け部材としての溝、突起、ネジとナット、クリップ、ボタン、スナップボタン、面ファスナー、嵌合部材、磁石が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、正面支持部に対する、シールド板の取り付け位置が決まり、シールド板の交換に伴って前後のバランスが崩れるのを、より容易に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は、フェイスガードを説明するために供する図であり、
図1(b)は、フェイスガードを使用者に装着した様子を示す図である。
【
図2】
図2(a)~(b)は、フェイスガードの重心を説明するために供する図である。
【
図3】
図3(a)は、可動接合部として、着脱機構を設けた場合の一例を説明するために供する図であり、
図3(b)は、可動接合部として、回転支持機構を設けた場合の一例を説明するために供する図である。
【
図4】
図4(a)は、可動接合部として、着脱機構と回転支持機構を同時に設けた構成を説明するために供する図であり、
図4(b)~(d)は、その具体例を説明するために供する図である。
【
図5】
図5(a)は、可動接合部として、長さ調節機構を設けた場合の一例を説明するために供する図であり、
図5(b)は、可動接合部として、折り曲げ機構を設けた場合の一例を説明するために供する図である。
【
図6】
図6(a)は、可動接合部として、水平回転支持機構を設けた場合の一例を説明するために供する図であり、
図6(b)~(c)は、その具体例を説明するために供する図である。
【
図7】
図7は、正面支持部に、シールド板の取り付けの方法の一例を説明するために供する図である。
【
図8】
図8(a)~(b)は、従来のフェイスガードを説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施形態]
第1の実施形態のフェイスガードは、
図1(a)~(b)に例示するように、シールド板17を所定場所に装着するフェイスガード用フレーム10aである。
また、使用者20の左耳21aにかける湾曲部を有する第1の耳掛け部11aと、使用者の右耳21bにかける湾曲部を有する第2の耳掛け部11bと、を備えている。
また、第1の耳掛け部11a及び第2の耳掛け部11bのいずれか一方の端部から、直接的又は間接的に延設され、かつ、使用者20の顎領域に周回し、シールド板17が装着される所定場所を有する正面支持部13を備えている。
そして、第1の耳掛け部11aのもう一方の端部及び第2の耳掛け部11bのもう一方の端部との間に、それぞれ、直接的又は間接的に延設され、かつ、使用者の顔の後方領域25に周回される背面支持部15を備えている。
更に、左側方から眺めた場合に、当該フェイスガード用フレーム10aの重心が、第1の耳掛け部11aの頂点を通る、鉛直方向の仮想直線上に存在することを特徴としている。
すなわち、第1の実施形態のフェイスガード用フレームであれば、重心を、所定の位置に配置することができるため、使用中の前後のバランスを良好な状態にして、例えば、シールド板を取り付けた場合であっても、ずれを防止することができる。
なお、第1の実施形態としては、左耳に対して、第1の耳掛け部を掛け、右耳に対して、第2の耳掛け部を掛ける構成としているが、左右を反転させた構成も、本発明の一態様として含んでいる。
以下、適宜図面を参照しつつ、第1の実施形態のフェイスガード用フレームの好適例について具体的に説明する。
【0020】
(1)形状
フェイスガード用フレームの形状は、左側面から眺めた場合に、第1の耳掛け部を頂点とする山なり形状とすることが好ましい。
この理由は、フェイスガード用フレームが前後に傾いた場合であっても、重心の位置の変化を少なくすることができ、より容易にずれを防止することができるためである。
また、鉛直方向上方から眺めた場合に、第1の耳掛け部と第2の耳掛け部との間の距離(
図6中の符号dを参照)は、使用者の側頭部間の距離に対して、0~30mm小さいことが好ましい。この理由は、フェイスガード用フレームが、使用者の頭部を挟み込むことで、使用中の前後のバランスを良好な状態にして、より容易にずれを防止することができるためである。
すなわち、第1の耳掛け部と第2の耳掛け部との間の距離は、100~180mmの範囲内の値であることが好ましく、110~160mmの範囲内の値であることがより好ましく、120~140mmの範囲内の値であることが更に好ましい。
この理由は、このような幅にすると、鉛直方向上方から眺めた場合に、半円状の部材が人の頭に適度に収まるので、フェイスガードをより安定的に装着でき、より容易にずれを防止することができるためである。
【0021】
また、フェイスガード用フレームとしては、第1の耳掛け部と、背面支持部とを、別体とせずに、一体物とすることが好ましい。
この理由は、第1の耳掛け部と背面支持部を一体成型や一体加工できるため、フェイスガード用フレームの強度が向上し、変形等によって前後のバランスが崩れるのを、より容易に防止することができるためである。
また、正面支持部における第2の耳掛け部側の端部と、第2の耳掛け部における正面支持部側の端部は、自由端になっていることが好ましい。
この理由は、正面支持部、第1の耳掛け部、背面支持部、第2の耳掛け部を繋ぐ内側の領域を、頭部の大きさに合わせて調整することができ、頭部を締め付けることなく、より容易にずれを防止することができるためである。
【0022】
(2)材質
フェイスガード用フレームの各部位の材質は、樹脂や金属等を用いることが好ましい。
例えば、フェイスガード用フレームの各部位の材質は、樹脂として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ビニルエステル樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂の少なくとも一種以上を含むことが好ましい。また、フェイスガード用フレームの各部位の材質は、金属として、鉄、アルミ、銅、真鍮、ニッケル、ステンレス、チタン、βチタンの少なくとも一種以上を含むことが好ましい。
このような材質から構成すれば、復元性や軽量性に更に優れるとともに、より高い強度を有するためである。
したがって、特に、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ステンレス、βチタンを含むことが好ましい。
また、第1の耳掛け部と、第2の耳掛け部を同じ材質とすることが好ましい。
この理由は、各部位の剛性や強度が同じになり、全体としての強度をより高めることができるためである。
なお、同じ理由で、第1の耳掛け部と、第2の耳掛け部と、背面支持部を同じ材質とすることがより好ましい。
【0023】
(3)充填剤
また、フェイスガード用フレームを樹脂で構成した場合、充填剤を含むことが好ましい。具体的には、充填剤の種類として、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、セルロース繊維、タルク、カーボンナノチューブ、鉱物系充填剤、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス粒子、金属粒子等の機能性充填剤を含むことが好ましい。
この理由は、フェイスガード用フレームの強度を向上させて、外部からの力による変形はもちろんのこと、残留応力による経時的な変形を容易に防止できるためである。また、各種充填剤に対応した帯電性、耐熱性、耐光性、耐衝撃性、抗菌性等の機能を容易に付与することができるためである。
【0024】
また、充填剤の配合量が、樹脂100重量部に対して、0.1~50重量部の範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、かかる配合量が0.1重量部未満の値であるとすると、各種充填剤に対応した機能を付与することが困難になる場合があるためである。一方、かかる配合量が50重量部を超えた値であるとすると、充填剤を含む樹脂の強度が低下して、外部からの力や残留応力による変形を十分に防止することが困難になる場合があるためである。
したがって、充填剤の配合量が、樹脂100重量部に対して、0.5~30重量部の範囲内の値であることがより好ましく、1~10重量部の範囲内の値であることが更に好ましい。
【0025】
(4)重心
フェイスガード用フレームの重心が、左側方から眺めた場合に、第1の耳掛け部の頂点を通る、鉛直方向の仮想直線上に存在することを特徴としている。
ここで、フェイスガード用フレームの重心は、
図2(a)~(b)に例示するように、左側方から眺めた場合における、当該フェイスガード用フレーム10aの正面側と背面側との重心である。
具体的には、第1の耳掛け部及び第2の耳掛け部の湾曲部を、同一高さで指30(直径1~20mmの棒状部材)に掛けて釣り合った場合(釣り合い状態と称する場合がある。)に、指と湾曲部の接触位置P1から、鉛直方向の仮想直線L1を引く。また、背面支持部の折返し部分P2から、水平方向の仮想直線L2を引く。そして、仮想直線L1と仮想直線L2とが交わった点を、重心Gとする。
更に、釣り合い状態での、左側方から眺めた場合の第1の耳掛け部における、鉛直方向の最上部を頂点P3とする。
この時、重心Gは、頂点P3を通る鉛直方向に平行な仮想直線L3上に存在することが最も好ましい。
このように構成することで、使用中の前後のバランスが良好になって、例えば、シールド板を取り付けた場合であっても、容易にずれを防止できるためである。
一方、重心Gが仮想直線L3上から多少ずれた場合であってもよい。すなわち、
図2(b)に示すように、頂点P3を通り鉛直方向に対してα方向に傾斜する仮想直線L4と、頂点P3を通り鉛直方向に対してβ方向に傾斜する仮想直線L5との成す角度領域を開き角として、重心Gが、開き角60°以下の領域内に存在していればよい。
よって、重心Gが、開き角40°以下の領域内に存在することがより好ましく、開き角20°以下の領域内に存在することが更に好ましい。
なお、フェイスガード用フレームに対してシールド板を取り付けた場合も、重心Gが上述の開き角の領域内に存在していることが好ましい。このように構成することで、シールド板を取り付けた場合であっても、より容易にずれを防止できるためである。
【0026】
1.第1の耳掛け部
第1の耳掛け部は、使用者の左耳にかける湾曲部を有する部位である。
また、第1の耳掛け部の一端は、直接的又は間接的に、後述の正面支持部の一端から延設されており、第1の耳掛け部のもう一端は、直接的又は間接的に、後述の背面支持部から延設されている。
【0027】
第1の耳掛け部の湾曲形状は、逆V字状、円弧状、放物線状等であることが好ましい。
この理由は、使用中の前後のバランスを良好な状態にして、より容易にずれを防止することができるためである。また、安定して耳に掛けることができ、頭部を傾けた場合であっても、フェイスガード用フレーム全体を、正面又は背面側に傾きにくくできるためである。
【0028】
また、第1の耳掛け部の断面形状は、円形状、楕円形状、多角形状等であることが好ましい。この理由は、耳輪や側頭部に対して接触面積が大きくなることで、より安定して耳に掛けることができ、痛みや疲れを生じにくくできるためである。
すなわち、第1の耳掛け部の断面形状の最大径を、3~30mmの範囲内の値とすることが好ましく、4~20mmの範囲内の値とすることがより好ましく、5~10mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0029】
また、第1の耳掛け部における、少なくともいずれか一方の端部に、湾曲部から連続した直線部を設けることが好ましい。このような構成とすることにより、使用者の耳に掛ける際のガイドになって、スムーズに装着することができるとともに、耳の掛かりが深くなることで、使用中の前後のバランスが良好になって、より容易にずれを防止することができるためである。
また、第1の耳掛け部の直線部の長さは、5~100mmの範囲内の値であることが好ましい。このような長さにすれば、より安定して耳に掛けることができ、頭部を傾けた場合であっても、フェイスガード用フレーム全体を、正面又は背面側に傾きにくくできるためである。
したがって、第1の耳掛け部の直線部の長さは、10~80mmの範囲内の値であることがより好ましく、15~50mmの範囲内の値であることが更に好ましい。
【0030】
2.第2の耳掛け部
第2の耳掛け部は、使用者の右耳にかける湾曲部を有する部位である。
また、第2の耳掛け部の一端は、直接的又は間接的に、後述の背面支持部の一端から延設されている。
【0031】
第2の耳掛け部の湾曲形状は、逆V字状、円弧状、放物線状で湾曲している形状が好ましく、更に、第1の耳掛け部と同じ形状であることが好ましい。
この理由は、使用中の前後のバランスを良好な状態にして、より容易にずれを防止することができるためである。また、安定して耳に掛けることができ、頭部を傾けた場合であっても、フェイスガード用フレーム全体を、正面又は背面側に傾きにくくできるためである。そして、第1の耳掛け部と同じ形状とすることで、左右に傾くことも防止でき、使用時にずれることを更に防止できるためである。
【0032】
また、第2の耳掛け部の断面形状は、円形状、楕円形状、多角形状等であることが好ましい。この理由は、耳輪や側頭部に対して接触面積が大きくなることで、より安定して耳に掛けることができ、痛みや疲れを生じにくくすることができるためである。
すなわち、第2の耳掛け部の断面形状の最大径は、3~30mmの範囲内の値であることが好ましく、4~20mmの範囲内の値であることがより好ましく、5~10mmの範囲内の値であることが更に好ましい。
【0033】
また、第2の耳掛け部における、少なくともいずれか一方の端部に、湾曲部から連続した直線部を設けることが好ましい。このような構成とすることにより、使用者の耳に掛ける際のガイドになって、スムーズに装着することができるとともに、耳の掛かりが深くなることで、使用中の前後のバランスが良好になって、より容易にずれを防止することができるためである。
また、第2の耳掛け部の直線部の長さは、5~100mmの範囲内の値であることが好ましい。このような長さにすれば、より安定して耳に掛けることができ、頭部を傾けた場合であっても、フェイスガード用フレーム全体を、正面又は背面側に傾きにくくできるためである。
したがって、第2の耳掛け部の直線部の長さは、10~80mmの範囲内の値であることがより好ましく、15~50mmの範囲内の値であることが更に好ましい。
【0034】
3.正面支持部
正面支持部は、第1の耳掛け部の、使用者の顔の側の端部に連結していて、顔の前方領域を周回し、より具体的には、顎の前方領域を非接触で適度に離れた状態で周回し、その一部にシールド板が装着される部位である。
なお、第2の耳掛け部の第1の耳掛け部とは反対側の末端は、シールド板を安定に支持できる位置まで伸びていれば良く、
図1の例であれば、右耳までは至ることなく、使用者の例えば右の頬辺りまで伸びていることが好ましい。
【0035】
正面支持部の形状は、正面から眺めた場合に、U字状、V字状、L字状等であることが好ましい。
この理由は、シールド板を取り付けた場合であっても、安定して支えることができ、かつ、使用者の顔の視界を遮ることなく顔の前方を周回することが容易にできるためである。
【0036】
ここで、正面支持部は、
図7に例示するように、正面支持部13に対しシールド板17を取り付けて、固定できる取り付け部材を有していることが好ましい。
すなわち、正面支持部13は、取り付け部材としての溝、突起、ネジとナット、クリップ、ボタン、スナップボタン、面ファスナー、嵌合部材、磁石等を有していることが好ましい。
この理由は、正面支持部13に対する、シールド板17の取り付け位置が決まり、シールド板17の交換に伴って前後のバランスが崩れるのを容易に防止できるためである。また、状況に合わせて、構造の異なる種々のシールド板17のうち、好適なものに交換しながら使えるためである。
具体的には、取り付け部材は、
図7に例示するように、正面支持部13の縁の適所に凸部13aを設けておくことで構成できる。
そして、シールド板17の縁部の正面支持部13の凸部13aに対応する箇所に、凸部13aに適度に嵌合する取り付け穴17aを設けておき、これら凸部13a及び取り付け穴17aを利用して、正面支持部13にシールド板17を取り付けることができる。もちろん、着脱のための構造は上記に限られず、他の種々の構造で良く、例えば、ネジとナット等を用いることでも良い。
【0037】
4.背面支持部
背面支持部は、第1の耳掛け部における背中側の一端と、第2の耳掛け部における背中側の一端とを連結している部位である。
具体的には、
図1(b)に例示したように、背面支持部15は、使用者20の後頭部と首との間の後方領域25を周回して、フェイスガード用フレーム10aを支持する部位である。
このようにすると、正面支持部13と背面支持部15とが、第1の耳掛け部11aを中心にして、釣り合い状態に近い形で、固定される。
したがって、背面支持部15の質量と、正面支持部13及びシールド板17の合計質量とが等しいか又はほぼ等しくなるように、これら部材を設計することが好ましい。
【0038】
また、背面支持部の鉛直方向の幅を、通常3~50mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、フェイスガード用フレームを所定の形状で保持することが容易になるととともに、頭部に接触する圧力が分散されて、より容易に使用中の痛みや疲れを低減させることができるためである。
したがって、背面支持部の鉛直方向の幅を、5~40mmの範囲内の値とすることがより好ましく、8~30mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0039】
また、背面支持部の折返し部分における鉛直方向の幅が、背面支持部の端部における鉛直方向の幅よりも広くなっていることが好ましい。
この理由は、背面支持部の折返し部分の幅を、背面支持部の端部における鉛直方向の幅よりも広くすることで、後方領域に対して接触した際の圧力を分散させ、使用中の痛みや疲れをより容易に低減させることができるためである。
したがって、背面支持部の折返し部分における鉛直方向の幅が、背面支持部の端部における鉛直方向の幅よりも、5~50mm大きいことが好ましく、8~40mm大きいことがより好ましく、10~30mm大きいことが更に好ましい。
【0040】
また、背面支持部の厚さは、0.5~20mmの範囲内の値であることが好ましい。
この理由は、フェイスガード用フレームを所定の形状で保持することが容易になるとともに、第1の耳掛け部と第2の耳掛け部の距離を広げるように、背面支持部を変形させやすく、容易に装着することができるためである。
したがって、背面支持部の厚さは、1~15mmの範囲内の値であることがより好ましく、2~10mmの範囲内の値であることが更に好ましい。
【0041】
また、釣り合い状態において、左側方から眺めた場合に、背面支持部の折返し部分が、鉛直方向下方から上方に向かって、広がるように傾斜(鉛直方向に対する傾斜角度と称する場合がある。)していることが好ましい。
この理由は、背面支持部の折返し部分を、後方領域の傾斜に沿って、面で接触させることができるため、使用中の前後のバランスを良好な状態にして、より容易にずれを防止することができるためである。
したがって、釣り合い状態における、背面支持部の折返し部分の鉛直方向に対する傾斜角度は、5~45°の範囲内の値であることが好ましく、10~35°の範囲内の値であることがより好ましく、15~30°の範囲内の値であることが更に好ましい。
【0042】
5.可動接合部
フェイスガード用フレームは、第1の耳掛け部と正面支持部の間に、互いの接続状態を変える可動接合部を備えていることが好ましい。
この理由は、第1の耳掛け部、第2の耳掛け部、背面支持部の姿勢を維持したまま、正面支持部及びシールド板の、姿勢や角度、着脱状態を変えることが容易になり、状態の変更に伴って、前後のバランスが崩れるのを容易に防止することができるためである。
【0043】
(1)着脱機構
可動接合部は、
図3(a)に示したように、第1の耳掛け部11a、第2の耳掛け部11b、背面支持部15とで構成される部分(以下、本体Aと称する場合がある。)と、正面支持部13とを、分離できる着脱機構14aを有していることが好ましい。
この理由は、第1の耳掛け部、第2の耳掛け部、背面支持部を装着したまま、正面支持部を取り外すことが容易になり、正面支持部の取り外しに伴って前後のバランスが崩れるのを、より容易に防止することができるためである。
したがって、着脱機構としては、一般的な着脱機構を用いることができ、例えば、ネジとナット、面ファスナー、スナップボタン、嵌合部材、磁石等の機構を用いることができる。
【0044】
また、磁石としては、一般的な磁石を利用することができるが、例えば、ネオジム磁石(ネオジウム磁石と称する場合がある。)、サマリウムコバルト磁石、プラセオジム磁石、アルミニウムニッケルコバルト磁石、鉄クロムコバルト磁石、フェライト磁石、ラバー磁石を用いることができる。
このような磁石で構成することにより、フェイスガードを使用中には、意図せず外れない強度を有しており、前面支持部を外す際には、容易に外すことができるためである。
したがって、特にネオジム磁石を用いることが好ましい。ネオジム磁石であれば、磁束密度が高く、比較的安価に購入できるためである。
また、磁石の磁束密度としては、特に制限されないものの、50~1000mTの範囲内の値であることが好ましい。このような磁束密度を有する磁石であれば、可動接合部として用いた場合に、使用中は、強固に接続でき、外す際には、人の力で容易に外すことができるためである。
したがって、磁石の磁束密度としては、100~600mTの範囲内の値であることがより好ましく、150~300mTの範囲内の値であることが更に好ましい。
【0045】
(2)回転支持機構
可動接合部は、
図3(b)に示したように、本体Aに対し、正面支持部13が、第1の耳掛け部11aとの接続箇所を回転中心として、顔の前面から頭部上方に移動できる回転支持機構を有していることが好ましい。
この理由は、第1の耳掛け部、第2の耳掛け部、背面支持部を装着したまま、正面支持部を跳ね上げることが容易になり、正面支持部の跳ね上げに伴って前後のバランスが崩れるのを、より容易に防止することができるためである。
したがって、回転支持機構としては、一般的な回転支持機構を用いることができ、例えば、ヒンジ、ボールジョイント、ネジとナット、磁石等の機構を用いることができる。
なお、磁石としては、着脱機構に用いた磁石と同様のものを使用することができる。
【0046】
(2)-1 構成例1
ここで、
図4(a)に、着脱機構14aと回転支持機構14bの両方を有する、可動接合部14として、磁石を使った構成例を示す。
具体的には、
図4(b)に例示するように、第1の耳掛け部11aの先端を第1の耳掛け部の長手方向と直交する方向(厚さ方向)に一部切り欠いて形成した切り欠き部11xを有している。また、正面支持部13の第1の耳掛け部11a側の先端は、切り欠き部11xに接触させてある。
そして、第1の耳掛け部11aの先端部、すなわち正面支持部13と接触している部分に、磁石19aを接着剤又は埋め込み等によって固定してあり、正面支持部13の先端部、すなわち第1の耳掛け部11aと接触している部分に磁石19bを接着剤又は埋め込み等によって固定してある。従って、第1の耳掛け部11aと正面支持部13とは、これら磁石19a、19bによって仮固定の状態になっている。
このように構成すれば、正面支持部13はフェイスガード10を通常に使用する条件では、第1の耳掛け部11aから外れることなく使用できる。
また、正面支持部13を第1の耳掛け部11aから外したい場合は、第1の耳掛け部11a及び正面支持部13を固定し、正面支持部13を
図4(b)にPで示す方向等に引くことで容易に外すことができる。
そして、正面支持部13を、回転支持機構14bを回転中心にして顔の前面から頭部上方に上げたい場合は、第1の耳掛け部11a及び正面支持部13を固定して、正面支持部13を所望の回転方向に回すことで容易に回転させることができる。
【0047】
また、特に図示しないものの、第1の耳掛け部の先端、又は、正面支持部の第1の耳掛け部側の先端に、回転支持機構としての磁石を埋め込むための埋め込み穴を設けることが好ましい。このように構成することにより、磁石を所定の場所に対して、強固かつ安定的に固定することができるためである。
また、埋め込み穴の形状としては、例えば、円形、正方形、ひし形、多角形、星形等にすることができ、特に、円形であることが好ましい。このような形状であれば、磁石をはめ込んだ際の遊びが小さくなり、より強固かつ安定的に固定することができるためである。
この時、第1の耳掛け部の先端に対しては、切り欠き部が存在する側とは反対側に埋め込み穴を設け、正面支持部の第1の耳掛け部側の先端に対しては、第1の耳掛け部の切り欠き部側とは反対側に埋め込み穴を設けることが好ましい。
この理由は、それぞれの穴に埋め込んだ磁石が、お互いに吸引する力で抜けてしまうのを、容易に防ぐことができるためである。
【0048】
また、特に図示しないものの、回転支持機構は、埋め込み穴の周囲を円形に取り囲むように、ジグザグ又は波型の凹凸構造を設けることが好ましい。
このように構成することにより、回転支持機構を用いて回転した場合、お互いの凸構造同士が向かい合う位置では固定されずに、凸と凹が嵌合する位置で固定されるため、段階的な回転が可能になるためである。
【0049】
(2)-2 構成例2
また、
図4(c)に、着脱機構14aと回転支持機構14bの両方を有する可動接合部14として、磁石を使った別の構成例を示す。
具体的には、可動接合部14は、第1の耳掛け部11aの先端をコの字状に一部切り欠いて形成した切り欠き部11yを有している。
すなわち、先端が二股状になるようにしてある。また、正面支持部13の第1の耳掛け部側の先端は、第1の耳掛け部の切り欠き部11y内に挿入させてある。そして、第1の耳掛け部11aの切り欠き部11yを隔てて対向する部分の一方に、磁石19aを、他方に磁石19bを、接着剤又は埋め込み等によって固定してある。更に、正面支持部13の先端部、すなわち第1の耳掛け部11aの切り欠き部11y内に挿入される部分に磁石19cを接着剤又は埋め込み等によって固定してある。
従って、第1の耳掛け部11aと正面支持部13とは、これら磁石19a、19b、19cによって仮固定の状態になっている。従って、
図4(b)に示した回転支持機構14bと同様に、着脱動作及び回転動作を行える。然も、この
図4(c)の構造では、正面支持部13の先端が、第1の耳掛け部11aの先端のコの字状の切り欠き部11y内に挿入され挟まれる構造であるので、
図3(b)の構造に比べ、強固である。
【0050】
(2)-3 構成例3
また、
図4(d)に、着脱機構14aと回転支持機構14bの両方を有する可動接合部14として、ボールジョイントを使った構成例を示す。
具体的には、可動接合部14は、第1の耳掛け部11aの先端を長手方向に沿ってコの字状に一部切り欠いて形成した切り欠き部11zであって、内部に曲面19dを有した切り欠き部11zを有している。また、正面支持部13の第1の耳掛け部側の先端は、切り欠き部11z内の曲面19dに対応する球面19eを有している。そして、正面支持部13の先端を第1の耳掛け部の切り欠き部11zに挿入してある。
従って、第1の耳掛け部11aと正面支持部13とは、これら曲面19d及び球面19eによって仮固定の状態になっている。そして、正面支持部13はフェイスガード10を通常に使用する上では第1の耳掛け部11aから外れることなく使用できる。
ここで、正面支持部13を第1の耳掛け部11aから外したい場合は、第1の耳掛け部11a及び正面支持部13を固定し、正面支持部13側を
図4(d)にPで示す方向等に引くことで、容易に外すことができる。
一方、正面支持部13を第1の耳掛け部11aに取り付けたい場合は、正面支持部13の先端を第1の耳掛け部11aの切り欠き部11zに押し込むことで、容易に取り付けることができる。
この構成例の場合、正面支持部13を、回転支持機構14bを回転中心にして顔の前面から頭部上方に上げたい場合は、第1の耳掛け部11a及び正面支持部13を固定し、正面支持部13を所望の回転方向に回すことで容易に上げることができる。
図4(d)の構造は、磁石を用いることができない環境でも使用できるため好ましい。
【0051】
(3)長さ調整機構
可動接合部は、第1の耳掛け部と、正面支持部との距離を調整するための長さ調整機構を有しているが好ましい。この理由は、個人の体形や環境に合わせて、第1の耳掛け部と正面支持部との距離を容易に変えることができるためである。
図5(a)に例示したように、長さ調整機構14cは、正面支持部13の第1の耳掛け部側の途中を切って、その切った部分に伸縮部材13cを備えた機構である。
この伸縮部材13cは、内面が連続した凹凸部13xとなっている部材を設けてあり、正面支持部13の残った部分側の先端に、上記凹凸部13xに嵌め合える凹凸部13yを持つ部材を設けてある。
そして、凹凸部13xを持つ部分に凹凸部13yを持つ部分を挿入する。凹凸部13xを持つ部材及び凹凸部13yを持つ部材各々は、適度な嵌合性を持つ部材としておく。従って、正面支持部13は、伸縮部材13cの箇所の両側の部材の一方を引くと伸び、反対に押すと縮むという構造を有したものになる。伸縮部材13cを設けると、シールド板17の使用者の顔との距離を容易に変更できるため好ましい。
【0052】
(4)折り曲げ機構
可動接合部は、任意の形状に折り曲げて、折り曲げた状態を保持する折り曲げ機構を有していることが好ましい。この理由は、個人の体形や環境に合わせて、正面支持部の傾斜を容易に変えることができるためである。
図5(b)に例示したように、折り曲げ機構14dは、正面支持部13の一部または全部を形状保持部材13bで構成した機構である。
この場合、正面支持部13の一部を形状保持部材13bで構成した例を示しているが、全部を構成しても良い。ただし、正面支持部13の一部を形状保持部材13bで構成した方が、曲げるところを特定でき、シールド板17を装着するとこと分けることができるので、好ましい。
また、形状保持部材13bは、人の手で力を加えると
図5(b)中にQで示したように任意の方向に正面支持部を曲げることができ、曲げた状態で止めることができる材料で構成することが好ましい。形状保持部材13bを設けると、シールド板17の使用者の顔に対する角度を容易に変更することができるためである。
ここで、形状保持部材13bとしては、一般的なものが使用できるが、例えば、アルミ、鉄、錫、ステンレス等を含む自在金属、プラスチック芯を有する自在ワイヤ、複数のボールジョイントを用いた連結部材等を用いることが好ましい。
このような部材で構成することにより、シールド板を取り付けた正面支持部であっても、任意の姿勢で保持することができるとともに、軽量かつ小型で、前後のバランスを崩すことなく用いることができるためである。
【0053】
(5)水平回転支持機構
可動接合部は、使用者の顔の正面から側頭部の間を行き来するような移動方向、すなわち、
図6(a)の座標系におけるX-Y平面に平行な移動をする水平回転支持機構14eを含むことが好ましい。
この理由は、上下に開閉できない狭い環境であっても、左右に開閉できる機構を設けることができるためである。
具体的には、水平回転支持機構としては、一般的なものが使用できるが、例えば、ヒンジ、ボールジョイント、ネジとナット、磁石等の機構を用いることが好ましい。特に、メガネのテンプルを曲げ伸ばしするヒンジであることが好ましい。このような構造であれば、より軽量で小型な部品を使用することができ、前後のバランスを崩すことなく用いることができるためである。
また、水平回転機構の別の例としては、
図6(b)に例示したように、磁石19a、19b、19cを用いた構造であって、本態様の移動方向に適合するように正面支持部13を直角に曲げるような構成とすることができる。
そして、水平回転支持機構は、
図6(c)に例示したように、曲面19dと球面19eを用いた構造であって、本態様の移動方向に適合するように正面支持部13を直角に曲げるような構成とすることができる。このような構造であれば、正面支持部13の第1の耳掛け部11aに対する着脱も可能なためである。
【0054】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、
図1(a)~(b)に例示するように、フェイスガード用フレーム10aと、当該フェイスガード用フレーム10aの所定場所に装着してなるシールド板17と、含むフェイスガード10である。
また、フェイスガード用フレーム10aは、使用者20の左耳21aにかける湾曲部を有する第1の耳掛け部11aと、使用者20の右耳21bにかける湾曲部を有する第2の耳掛け部11bと、を備えている。
また、第1の耳掛け部11a又は第2の耳掛け部11bのいずれか一方の端部から、直接的又は間接的に延設され、かつ、使用者20の顎領域に周回し、シールド板17が装着される所定場所を有する正面支持部13を備えている。
そして、第1の耳掛け部11aのもう一方の端部及び第2の耳掛け部11bのもう一方の端部との間に、それぞれ、直接的又は間接的に延設され、かつ、使用者20の顔の後方領域25に周回される背面支持部15を備えている。
更に、左側方から眺めた場合に、フェイスガード用フレーム10aの重心が、第1の耳掛け部11aの頂点を通る、鉛直方向の仮想直線上に存在することを特徴としている。
以下、適宜図面を参照しつつ、第2の実施形態のフェイスガードの好適例について具体的に説明する。
【0055】
1.フェイスガード用フレーム
第2の実施形態のフェイスガードに用いられるフェイスガード用フレームとしては、第1の実施形態のフェイスガード用フレームと同様の構成のものを用いることができるため、説明を省略する。
【0056】
2.シールド板
(1)形状、材質
シールド板は、正面支持部に装着されるもので、使用者に異物や他人の息や唾液が及ぶことを防止するものである。
ここで、シールド板の形状は、楕円形、長方形、木の葉型、しずく型、花びら型等であることが好ましい。この理由は、顔の正面を良好に覆うことができ、かつ、正面支持部に容易に取り付けることができるためである。
また、シールド板の材質は、透明性を有した樹脂であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等であることが好ましい。
この理由は、強度、軽量性、透明性に優れており、正面支持部の形状に沿って湾曲させて使用した場合であっても、ヒビや割れや等の不良が発生しにくいためである。
【0057】
(2)機能性処理
シールド板は、機能性を向上させるために、少なくとも表裏面の一方が、機能性処理を施されていることが好ましい。具体的には、抗菌処理、反射防止処理、耐光性処理、撥水性処理、帯電性処理、防汚性処理等の機能性処理を施されていることが好ましい。
この理由は、使用する環境にあわせたシールド板を容易に構成することができるためである。
【0058】
(3)種類
シールド板は、大きさが異なる複数種類のシールド板に交換可能であることが好ましい。
この理由は、使用者の顔の大きさや使用する場所、用途に合わせたシールド板を取り付けることができるためである。ここで、シールド板の種類とは、例えば、使用者の顔の大きさに合わせたサイズ分けされた種類、顔全面用や鼻から下を覆う半面用等の保護範囲分けされた種類、緑色や黄色等の色分けされた種類等である。
【0059】
3.フェイスガードの製造方法
第2の実施形態のフェイスガードは、具体的には、フェイスガード用フレームを所定形状に成形するとともに、シールド板をフィルムから切りだして、その後にシールド板をフェイスガード用フレームに取り付けることで製造することができる。
【0060】
(1)フェイスガード用フレーム
フェイスガード用フレームは、部位ごとに分けて成形した後に、それぞれの部位を溶接、接着剤、ジョイント等によってつなぎ合わせて製造することが好ましい。
このように製造することにより、短時間かつ大量に製造することができるためである。
また、それぞれの部位を製造するにあたり、例えば、金属の部位であれば、プレス、板金、鋳造、切削等の方法によって製造することができる。また、樹脂の部位であれば、射出成形、押出成形、真空成型、切削等の方法によって製造することができる。
また、別の製造方法として、金属や樹脂の棒状部材を準備して、熱を掛けながら所定形状に曲げることによって製造することも好ましい。
このように製造することにより、環境や個人の体形に合わせて好適なフェイスガード用フレームを製造することができるためである。
【0061】
また、フェイスガード用フレームを、樹脂で製造する場合に、以下の(a)~(d)の工程を含む射出成形方法を用いることが好ましい。
(a)樹脂を溶かして、射出成形機に入れる材料準備工程
(b)溶かした材料を射出成形機から射出して、金型に流し込む射出工程
(c)金型に流し込んだ樹脂を冷ます冷却工程
(d)冷却した樹脂を金型から取り出す取出工程
この理由は、射出成形によって製造することにより、同一形状のものを、短時間、かつ、大量に生産することができ、複雑な形のものであっても、容易に製造することができるためである。
【0062】
工程(a)は、材料準備工程であって、ペレット化させた樹脂を、射出成形機のホッパーから投入し、射出成形機内部で溶かす工程である。
具体的には、ペレット化させた樹脂を、射出成形機に取り付けたヒーターによって、例えば、180~450℃程度の温度まで加熱し溶かす。
【0063】
工程(b)は、射出工程であって、材料準備工程で溶かした材料を、スクリューによって移送し、金型に繋がるシリンダーから、樹脂を金型に流し込む工程である。
具体的には、射出成形機のスクリューを回転させることで、溶かした樹脂を一定方向に移送し、例えば、射出圧力10~3000kgf/cm2で、シリンダーから樹脂を射出する。
【0064】
工程(c)は、冷却工程であって、金型に流し込んだ樹脂を、金型を冷却することにより、樹脂を固める工程である。
具体的には、金型に対して、冷却用の水穴を設けて、水穴に水を通すことで冷却を行う。このとき、金型が過度に冷えると、樹脂が金型の隅まで行き渡らず、金型が過度に熱くなると、樹脂が固まる時間が長くなってしまう。
よって、水穴に水や油を制御しつつ流し込む金型調温機を備えていることが好ましい。この理由は、金型の温度を一定に保ち、過度に冷えたり、過度に熱くなるのを容易に防ぐことができるためである。
【0065】
工程(d)は、取出工程であって、冷却して固まった樹脂(成形品と称する場合がある。)を金型から取り出す工程である。
具体的には、金型を開いた後、金型に張り付いた成形品を、人手やロボットアームによって引き離して取り出す。
このとき、取り出した成形品に対して、アニール処理を施すことが好ましい。この理由は、アニール処理によって、残留応力を取り除き、成形品の変形を容易に防ぐことができるためである。
また、成形品の表面に、バリや剥離剤等の残留物が付着している場合があるため、表面研磨を行うことが好ましい。この理由は、予め成形後の残留応力による変形が大きいと思われる部分の研磨量を多くすることで、成形品の変形を容易に防ぐことができるためである。
【0066】
(2)シールド板
シールド板は、例えば、フィルムから切り出すことによって製造することができる。具体的には、押出成形やインフレーション成形等によってフィルム成形した後、当該フィルムの断裁や打ち抜き加工等を行うことによって製造される。
ここで、断裁又は打ち抜き加工する際に、フィルムを複数枚積層しておくことが好ましい。この理由は、短時間かつ大量に、シールド板を製造できるためである。
また、フェイスガード用フレームの正面支持部に、シールド板の取り付け部材が設けてある場合に、シールド板の、取り付け部材に対応する位置に、取り付け穴をあけておくことが好ましい。
このように加工することにより、シールド板をフェイスガード用フレームに取り付けることが容易になるためである。
【0067】
(3)フェイスガード用フレームとシールド板の取り付け
シールド板は、フェイスガード用フレームに対して、例えば、接着剤や、取り付け部材としての溝、突起、ネジとナット、クリップ、ボタン、スナップボタン、面ファスナー、嵌合部材、磁石等によって取り付けられることが好ましい。この理由は、シールド板を強固に保持できるとともに、軽量かつ小型で、前後のバランスを崩すことなく、容易に取り付けることができるためである。
したがって、特に、フェイスガード用フレームの正面支持部に返しやネジ溝を有する複数の突起を設けるとともに、シールド板の、取り付け部材に対応する位置に、取り付け穴をあけておき、それぞれを組み合わせて取り付けることが好ましい。
また、フェイスガード用フレームの正面支持部に複数のネジ穴を設けるとともに、シールド板の、取り付け部材に対応する位置に、取り付け穴をあけておき、位置を合わせてネジ止めして取り付けることも好ましい。
このように構成することにより、シールド板をフェイスガード用フレームに取り付けることが容易になるためである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上の説明のとおり、この出願のフェイスガード及びフェイスガード用フレームは、所定の第1の耳掛け部、第2の耳掛け部、正面支持部及び背面支持部を含んでいる。また、フェイスガード用フレームの重心が所定位置に存在することで、使用中の前後のバランスを良好な状態にして、ずれを防止することができる。
そのため、近年問題となっている新型コロナの感染防止等のために、シールド板を取り付けて、飛沫の拡散や飛沫の付着を防止することが期待できる。
そして、フェイスガード用フレームが可動接合部を備えていることで、フェイスガード用フレームを装着した状態のまま、食事やシールド板の交換が容易になって、より衛生的な運用が可能になることが期待できる。
よって、種々の分野での衛生問題等の解決に有用であって、産業上の貢献度が極めて高いフェイスガード用フレームを提供できる。
【符号の説明】
【0069】
10 :フェイスガード
10a:フェイスガード用フレーム
11a:第1の耳掛け部
11b:第2の耳掛け部
13 :正面支持部
14 :可動接合部
14a:着脱機構
14b:回転支持機構
14c:長さ調整機構
14d:折り曲げ機構
14e:水平回転支持機構
15 :背面支持部
17 :シールド板
19a~19c:磁石
20 :使用者
21a:左耳
21b:右耳