(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103625
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】天バネ装置
(51)【国際特許分類】
D04B 35/14 20060101AFI20220701BHJP
D04B 35/10 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
D04B35/14
D04B35/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218371
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕也
【テーマコード(参考)】
4L054
【Fターム(参考)】
4L054AA01
4L054KA11
4L054LA05
4L054LA06
4L054LA07
(57)【要約】
【課題】 検出機構の信頼性を高め、製造コストも低下させることが可能な天バネ装置を提供する。
【解決手段】 永久磁石31は、薄板状であり、厚さ方向に着磁させて、ハウジング10の側面に装着する。この側面から間隔を空けて、ホール素子32を搭載する電子回路基板11が取付けられる。永久磁石31とホール素子32との組合せは、間隙に臨む状態で固定されるセンサーを形成する。この間隙に先端側が非接触で進退可能な遮蔽板34は、強磁性の鉄板を折曲げてレバー状に形成される。編糸2は、大検出レバー33の検出部33bと案内板35との間の隙間を通る。この隙間は、調整つまみ36を回して調整可能である。編糸2に隙間よりも大きい結び目2aが通過すると、図の手前側に、検出部33bを引っ張る状態となり、センサーによって検知される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横編機の機体上部に備えられ、糸パッケージから給糸口までの編糸供給経路で、糸切れ検出を行う糸切れ検出機構と、結び目検出を行う結び目検出機構とを含む、天バネ装置において、
糸切れ検出機構または結び目検出機構のうちの少なくとも一つは、
予め設定される間隙に臨み、間隙内に検知対象が存在するか否かを非接触で検知可能なセンサーと、
センサーが臨む間隙に非接触で進退可能な進退部、および編糸に接触して、糸切れまたは結び目の検出対象の存在の有無を検出する検出部を有し、検出部による検出対象の検出に応じて、進退部を間隙に進退させる検出部材とを、
含むことを特徴とする天バネ装置。
【請求項2】
前記センサーは、ホール素子と永久磁石とを含み、
前記検出部材の前記進退部は、前記間隙に進入する状態で、永久磁石からホール素子に作用させる磁束を遮り、間隙から退出する状態で、磁束の遮りを解除する、
ことを特徴とする請求項1記載の天バネ装置。
【請求項3】
前記結び目検出機構は、
検出対象とする結び目の大きさが異なるものを複数含み、
結び目の非検出時に、前記検出部材の前記進退部を前記間隙に進入させる状態とし、
結び目の検出時に、検出部材の進退部を間隙から退出させる状態とし、
大きい結び目に対応する結び目検出機構は、ばねをさらに含む、
ことを特徴とする請求項2記載の天バネ装置。
【請求項4】
前記検出部材の前記進退部は、前記永久磁石と前記ホール素子との間の前記間隙に進入する状態で、前記磁束を端部で遮る、
ことを特徴とする請求項2または3記載の天バネ装置。
【請求項5】
前記糸切れ検出機構は、前記検出部材として、
揺動軸と、
揺動軸側が基端となり、先端が揺動軸回りに揺動可能なアームと
を含み、
前記検出部は、アームの先端に設けられて編糸を捕捉可能であり、
前記進退部は、アームと同じ揺動軸回りに揺動可能に設けられ、
検出部が編糸を捕捉していると、進退部は前記間隙から退出している状態となり、検出部による編糸の捕捉が解除されると、進退部は間隙に進入する状態となる、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の天バネ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横編機の編糸供給経路に備えられる天バネ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
横編機で編地を編成するための編糸は、糸パッケージから給糸口までの編糸供給経路を通る。編糸供給経路は、横編機の機体上部に配置される天バネ装置と機体側部に配置されるテンション装置(たとえば、特許文献1参照)を通る。天バネ装置は、テンションアーム、ノットキャッチャー、テンションディスクを備える。テンションディスクは、編糸を挟んで編糸に張力を付与する。テンションアームは糸切れ、ノットキャッチャーは結び目をそれぞれ監視する機能を有する。同様な機能を有する装置は、横編機用糸監視装置(たとえば、特許文献2参照)としても開示されている。いずれの特許文献にも、糸切れや結び目の監視のための具体的な構成は開示されていないけれども、編糸に接触して監視対象が存在すると揺動するようなレバーやカムを設け、それらの揺動をマイクロスイッチの接点の開閉で検出するような構成が周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-3844号公報
【特許文献2】特開平9-170149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロスイッチは、導電ばね材を用いたスナップアクション機構を利用し、電気的な部品として、一般的に小型で信頼性も高い。しかしながら、編糸の監視を行う場合、監視対象は、レバーやカムを介してマイクロスイッチに外力として作用するけれども、外力として作用しうる力は小さく、マイクロスイッチの個体差による電気的または物理的なばらつきの影響を受け易い。マイクロスイッチを使用する監視対象の検出機構は、接点を機械的に開閉する構造なので、損傷の可能性もあり、信頼性が低くなる。接点の開閉は電気信号として処理する必要があり、信号処理のための電子回路基板も必要となるけれども、電子回路基板に直接マイクロスイッチを搭載するように配置することは困難である。また、マイクロスイッチは、電子回路基板に搭載するような電子部品と比較すれば大型であり、高精度の検出を行うための加工や組立てを小さなスペースで行うことは難しく、製造コストが高くなってしまう。
【0005】
本発明の目的は、検出機構の信頼性を高め、製造コストも低下させることが可能な天バネ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、横編機の機体上部に備えられ、糸パッケージから給糸口までの編糸供給経路で、糸切れ検出を行う糸切れ検出機構と、結び目検出を行う結び目検出機構とを含む、天バネ装置において、
糸切れ検出機構または結び目検出機構のうちの少なくとも一つは、
予め設定される間隙に臨み、間隙内に検知対象が存在するか否かを非接触で検知可能なセンサーと、
センサーが臨む間隙に非接触で進退可能な進退部、および編糸に接触して、糸切れまたは結び目の検出対象の存在の有無を検出する検出部を有し、検出部による検出対象の検出に応じて、進退部を間隙に進退させる検出部材とを、
含むことを特徴とする天バネ装置である。
【0007】
また本発明で、前記センサーは、ホール素子と永久磁石とを含み、
前記検出部材の前記進退部は、前記間隙に進入する状態で、永久磁石からホール素子に作用させる磁束を遮り、間隙から退出する状態で、磁束の遮りを解除する、
ことを特徴とする。
【0008】
また本発明で、前記結び目検出機構は、
検出対象とする結び目の大きさが異なるものを複数含み、
結び目の非検出時に、前記検出部材の前記進退部を前記間隙に進入させる状態とし、
結び目の検出時に、検出部材の進退部を間隙から退出させる状態とし、
大きい結び目に対応する結び目検出機構は、ばねをさらに含む、
ことを特徴とする。
【0009】
また本発明で、前記検出部材の前記進退部は、前記永久磁石と前記ホール素子との間の前記間隙に進入する状態で、前記磁束を端部で遮る、
ことを特徴とする。
【0010】
また本発明で、前記糸切れ検出機構は、前記検出部材として、
揺動軸と、
揺動軸側が基端となり、先端が揺動軸回りに揺動可能なアームと
を含み、
前記検出部は、アームの先端に設けられて編糸を捕捉可能であり、
前記進退部は、アームと同じ揺動軸回りに揺動可能に設けられ、
検出部が編糸を捕捉していると、進退部は前記間隙から退出している状態となり、検出部による編糸の捕捉が解除されると、進退部は間隙に進入する状態となる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、糸切れ検出機構または結び目検出機構は、検出部材の検出部による編糸の結び目または糸切れの有無に応じて、検出部材の進退部をセンサーが臨む間隙に進退させる。その進退は、センサーが非接触で検知可能なので、糸切れ検出機構または結び目検出機構は、センサーを固定して、信頼性を高め、小型化して製造コストを低下させることができる。
【0012】
また本発明によれば、永久磁石が発生する磁束をホール素子で受ける間隙に検出部材の進退部を進退させ、進入で磁束を遮り、退出で磁束の遮りを解除するので、検出対象の有無は、ホール素子からの電気的な信号に応答性良く反映させることができる。センサーは、磁束の変化を検知するので、塵埃の付着などの影響を受けにくくすることができる。永久磁石から磁束を発生させるので、電源の供給は不要になり、低コスト化を図ることができる。
【0013】
また本発明によれば、検出部材の進退部は、センサーが臨む間隙に進入すると磁気的な吸引力を受けるので、結び目の非検出時の状態として、吸引力を利用して復元させることができる。大きな結び目の検出時には、進退部が間隙から退出する状態をばねで保持し、非検出の状態への復元を避けることができる。
【0014】
また本発明によれば、磁束が端部に集まり易い特性を利用することができる。
【0015】
また本発明によれば、糸切れ検出機構は、糸切れの検出を、信頼性が高く、かつ低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例である天バネ装置1の全体構成を示す簡略化した正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の切断線II-IIから見た大結び目検出機構13の左側面断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の大結び目検出機構13の動作を示す部分的な正面図である。
【
図4】
図4は、
図1の糸切れ検出機構14の構成および動作を示す簡略化した正面図である。
【
図5】
図5は、
図1のハウジング10の構成を示す簡略化した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1から
図5は、本発明の一実施例である天バネ装置1の構成および動作に関する。各図で対応する部分は,同一の参照符を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。また説明の便宜上、説明対象の図には記載されていない部分について、他の図に記載される参照符を付して言及する場合がある。
【実施例0018】
図1は、本発明の一実施例である天バネ装置1の概略的な正面構成を示す。天バネ装置1は、横編機の機体上部に設けられ、編糸2の供給源となる糸パッケージから、編針に供給する給糸口までの編糸供給経路の一部となる。図示の簡略化のため、横編機の全体構成などは、図示を省略している。天バネ装置1は、ハウジング10に電子回路基板11が組付けられており、編糸2に生じる結び目の大小に対応して検出する2つの検出機構を含む。すなわち天バネ装置1は、小結び目検出機構12および大結び目検出機構13を含み、小さな結び目の検出では、結び目を編地に編込むために編成速度を下げ、大きな結び目の検出では、編成を停止して、作業者による修復を待つ。天バネ装置1は、さらに糸切れ検出機構14、および編糸2にテンションを与えるためのテンションディスク15を含む。糸切れ検出機構14は、編糸2が切れていることを検出し、検出時に編成を停止して、修復を待つ。電子回路基板11は、小結び目検出機構12、大結び目検出機構13、糸切れ検出機構14の検出結果を、電気的に処理し、処理結果を横編機の制御装置に与える。電子回路基板11を含む編糸2よりも上側の部分は、図示を省略しているカバーで覆われる。
【0019】
小結び目検出機構12、大結び目検出機構13、糸切れ検出機構14は、永久磁石21,31,41およびホール素子22,32,42の組合せをセンサーとして、小検出レバー23、大検出レバー33、検出アーム43を検出部材として含む。センサーは、永久磁石21,31,41とホール素子22,32,42との間で、図の奥行き方向に隙間を設けるように取付ける。このようなセンサーは、この隙間を予め設定される間隙として臨み、間隙内に検知対象となる強磁性体が存在するか否かを非接触で検知可能である。小検出レバー23、大検出レバー33、検出アーム43は、基端側の揺動軸23a,33a,43aを支点として揺動する先端側に検出部23b,33b,43bを有する。検出部23b,33bは、通常時、編糸2に接触しない。結び目が所定の大きさ以上になると検出部23b,33bに強く接触して引っ掛かり、小検出レバー23または大検出レバー33は図の反時計回り方向に揺動する。検出アーム43の検出部43bは、糸切れが無ければ編糸2を捕捉している状態で図の位置に保たれ、糸切れで編糸2の捕捉が解除されると、検出アーム43が図の時計回り方向に揺動する。このようにして、小検出レバー23および大検出レバー33、または検出アーム43は、検出対象となる結び目または糸切れの有無を検出する。小検出レバー23、大検出レバー33、検出アーム43の基端側で揺動軸23a,33a,43aを挟んだ図の奥側には、遮蔽板24,34,44が設けられる。遮蔽板24,34,44は強磁性体で形成され、進退部としてセンサーが臨む間隙に非接触で進退可能である。糸パッケージから供給される編糸2は、図の右方からテンションディスク15、大検出レバー33の検出部33b、小検出レバー23の検出部23bおよび検出アーム43で編糸2を捕捉可能な検出部43bを通過し、図の左方からテンション装置や給糸口に供給される。
【0020】
小検出レバー23および大検出レバー33が編糸2の結び目の有無を検出する検出部23b,33bは、隙間を空けて、ハウジング10に取付けられている案内板25,35とそれぞれ対向している。案内板25,35は、小検出レバー23および大検出レバー33と対向する部分として突出するように、金属板を折曲げて形成される。案内板25,35と小検出レバー23、大検出レバー33との間の隙間は、それぞれ所定の大きさの結び目に合わせて、ハウジング10の裏側から、調整つまみ26,36で調整する。大検出レバー33の揺動軸33aの下方には、
図3で説明する作用を行う板ばね37が設けられる。検出アーム43は、樹脂製であり、検出部43bと揺動軸43aとの間が図の奥側を通る。検出アーム43の基端側は、揺動軸43aに対する図の手前側に進退アーム46が一体的に形成される。遮蔽板44は、進退アーム46に埋込まれて進退部となる。進退アーム46は検出アーム43と別体でもよく、進退アーム46無しで遮蔽板44が直接揺動軸43a回りに揺動可能に設けられていてもよい。いずれにしても、遮蔽板44を含む進退部は、検出アーム43と同じ揺動軸43a回りに揺動可能に設けられる。進退アーム46は、ハウジング10の壁面との間を緩衝用のばね47で受けられる。大結び目検出機構13の構成については、切断線II-IIから見た断面構成としての
図2で、さらに説明する。
【0021】
図2は、大結び目検出機構13の構成を示すけれども、小結び目検出機構12の構成も、板ばね37を除けば、基本的に同等である。永久磁石31は、薄板状であり、厚さ方向に着磁させて、ハウジング10の側面に装着する。この側面から間隔を空けて、ホール素子32を搭載する電子回路基板11が取付けられる。このようにして、永久磁石31とホール素子32との組合せによるセンサーは、間隙に臨む状態で固定される。この間隙に先端側が進退可能な遮蔽板34は、強磁性の鉄板を折曲げてレバー状に形成され、基端側が大検出レバー33の揺動軸33aに接続される。大検出レバー33は、揺動軸33aが樹脂製で、検出部33bは金属製である。編糸2は、大検出レバー33の検出部33bと案内板35との間の隙間を通る。この隙間は、調整つまみ36を回して調整可能である。編糸2に隙間よりも大きい結び目2aが存在すると、編糸2の通過で結び目2aは図の手前側に、検出部33bを引っ張る状態となる。なお、ハウジング10には、遮蔽板34を裏面側から支持する支持凸部10aを設けることが好ましい。
【0022】
図3は、大結び目検出機構13の動作を示す。左側は、編糸2に結び目が存在しないか、存在しても検出部33bと案内板35との隙間よりも小さい、非検出状態を示す。右側は、検出対象となる結び目2aが存在する状態を示す。大検出レバー33は、非検出状態で、ほぼ垂直に垂れ下がる。非検出状態では、遮蔽板34の端部が永久磁石31からホール素子32への磁束を遮るように設定する。遮蔽板34用いないで永久磁石31が移動するようにすることも可能であるけれども、静止状態から移動を開始する際にホール素子32が受ける磁束の変化が小さく、検出感度が悪くなってしまう。本実施例は、強磁性体の遮蔽板34のエッジ効果、すなわち磁束が端部に集まり易い特性も利用し、ホール素子32からの電気的出力変化を大きくして、遮蔽板34の小さな移動も検出しやすくしている。検出対象となる結び目2aが存在すると、検出部33bを図の左側に押し、大検出レバー33を傾斜させる。結び目2aが隙間よりも小さくても、検出部33bに掛かることはあり得るけれども、検出部33bを左側に押して大検出レバー33を傾斜させる間に、掛かった結び目2aが検出部33bから外れて離脱し、大検出レバー33は垂直に戻る。結び目2aが隙間よりも大きいと、案内板35の左側端まで検出部33bを押してから離脱する。板ばね37は、中央に凸部37aが設けられ、大検出レバー33の揺動軸33aに設ける突出部33cに凸部37aが接触する。結び目2aが大きくなければ、結び目2aが検出部33bに掛かって大検出レバー33が傾斜しても、突出部33cが凸部37aで留まり、結び目2aが離脱して、大検出レバー33は傾斜状態から垂直な状態に戻る。大きな結び目2aの検出時に、大検出レバー33は、突出部33cが凸部37aを乗り越えて傾斜し、結び目2aの離脱後に傾斜が戻る際には突出部33cが凸部37aを乗り越えられずに留まる。このような大きな結び目2aを検出している状態は、センサーが臨む間隙から遮蔽板34が退出する状態として、結び目2aの離脱後も板ばね37で保持され、非検出の状態への復元を避けることができる。
【0023】
小結び目検出機構12では、板ばね37を使用しないで、検出部23bと案内板との隙間も小さくする。この隙間を通るような結び目は編成に支障が無いものとして、編成を続ける。大結び目検出機構13で検出されず、小結び目検出機構12で検出されるような結び目2aの検出時は、たとえば横編機の運転速度を下げて、編成を続行する。遮蔽板24は、センサーが臨む間隙に進入すると磁気的な吸引力を受けるので、結び目の非検出時の状態として、吸引力を利用して復元させることができる。ホール素子22,32に代えて、磁気抵抗素子を用いることもできる。永久磁石21,31が発生する磁束をホール素子22,32などで受ける間隙に遮蔽板24,34を進退させ、進入で磁束を遮り、退出で磁束の遮りを解除するので、検出対象の有無は、容易に電気的な信号に応答性良く反映させることができる。センサーは、磁束の変化を検知するので、塵埃の付着などの影響を受けにくくすることができ、電子回路基板11に直接搭載することもできるので、小型化や低コスト化も図ることができる。永久磁石21,31から磁束を発生させるので、電源の供給は不要になり、低コスト化を図ることができる。
【0024】
図4は、
図1の糸切れ検出機構14の構成および動作を示す。上側は編糸2が糸切れなく通過している非検出状態、下側は糸切れの検出状態を示す。非検出状態で検出部43bは編糸2を捕捉する状態で引上げられ、検出アーム43はほぼ水平な状態となる。遮蔽板44は、永久磁石41とホール素子42との間隙から離れている。すなわち、検出部43aが編糸2を捕捉していると、進退部は間隙から退出している状態となる。編糸2が切れる検出状態では、検出部43bによる編糸2の捕捉が解除され、検出アーム43は自重で反時計回り方向に揺動して傾斜し、遮蔽板44は間隙に進入する。糸切れ検出機構14でも、永久磁石41をハウジング10の側面に取付け、ホール素子42は図示を省略している電子回路基板11に搭載する。したがって、本実施例では、小結び目検出機構12、大結び目検出機構13および糸切れ検出機構14は、永久磁石21,31,41から発生する磁束をホール素子22,32,42で検知するセンサーを用いている。いずれかのセンサーとして、他の非接触で検知可能なもの、たとえば、光学的なもので代替することもできる。光学的な検知でも、発光側と受光側との間隙を遮蔽するか否かで検知する方が、発光側と受光側とが相対的に移動するよりも応答性が良くなる。ただし、光学的なセンサーでは、汚れが付着などの影響を受け易く、発光側と受光側とを分けると、電気的接続の手間がかかる。
【0025】
図5は、
図1のハウジング10の構成を示す。側面には、永久磁石21,31,41を装着して、電気的接続無しでも安定な磁束を発生させることができる。小結び目検出機構12および大結び目検出機構13に対して、支持凸部10aを設け、遮蔽板24,34を支持して安定な動作を行わせることができる。挿通孔10bは、調整つまみ26,36を使用するために設ける。ばね47は、編糸2の上下変動などで、検出部43bが上昇するときに、進退アーム46が時計回り方向に揺動しても、ハウジング10の端部との衝撃が大きくならないように緩和する。
【0026】
本実施例では、結び目2aの検出を、小結び目検出機構12および大結び目検出機構13の二段階で、一つの検出機構では一段階で行っているけれども、さらに段数を増やすこともできる。またホール素子22,32は小型なので、永久磁石21,31に対して複数の異なる位置に配置し、小検出レバー23や大検出レバー33の傾斜角度の違いを検知することで、一つの検出機構でも結び目2aの大きさの違いを複数段階で検出することも可能である。さらに結び目2aの検出は、大結び目検出機構13に設けるような板ばね37の有無やばね荷重などの特性の違いで、検出する大きさを調整するようにしてもよい。