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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103628
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】ハンドレール用照射装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 31/02 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
B66B31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218378
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】594071804
【氏名又は名称】森ビル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501145631
【氏名又は名称】イーヒルズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】矢部 俊男
(72)【発明者】
【氏名】渡部 宗一
(72)【発明者】
【氏名】五味 工
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼ 友樹
(72)【発明者】
【氏名】上條 享
(72)【発明者】
【氏名】福田 剛士
(72)【発明者】
【氏名】藤森 昭芳
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321AA04
3F321CF01
3F321HA23
3F321HA25
3F321HA31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エスカレータ等のハンドレールを安心して握れる殺菌装置を提供する。
【解決手段】マンコンベアのハンドレール(1)を殺菌する照射装置であって、紫外線照射手段(20)が、その幅方向の両端がハンドレール(1)の幅の外側に位置し、ハンドレール(1)の移動方向に沿って連続する領域(6)に設置され、ハンドレール(1)の側面外周側(3)にも紫外線を直接照射することができ、ハンドレール(1)の殺菌を効率的に且つ十分に実施できることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンコンベアのハンドレールを殺菌する照射装置であって、
紫外線照射手段が、その幅方向の両端が前記ハンドレールの幅の外側に位置し、前記ハンドレールの移動方向に沿って連続する領域に設置されることを特徴とする照射装置。
【請求項2】
前記紫外線照射手段は、ハンドレールの外周面を含む両側面外周側の間の表面に対する法線上に、連続的に配置された紫外線放射部の少なくとも一部を有する、請求項1に記載の照射装置。
【請求項3】
前記紫外線照射手段に電力を供給する給電線が、前記ハンドレールの移動方向に対して、逆方向又は垂直方向に取り回されている、請求項1または2に記載の照射装置。
【請求項4】
前記紫外線照射部は、前記ハンドレールの表面に対向して連続的に配置されたLED素子である、請求項1~3のいずれか一項に記載の照射装置。
【請求項5】
前記紫外線放射部は、前記ハンドレールの表面に対向して放電容器が連続的に延在する放電ランプである、請求項1~3のいずれか一項に記載の照射装置。
【請求項6】
前記放電容器は、前記ハンドレールの移動方向に沿った直管部からなり、前記直管部の少なくとも一部が、前記ハンドレールの幅よりも内側に配置される、請求項5に記載の照射装置。
【請求項7】
前記放電容器は、前記ハンドレールの移動方向に沿った直管部と、前記ハンドレールの幅方向に沿った曲管部とからなり、前記直管部の少なくとも一部が前記ハンドレールの幅よりも外側に配置され、前記曲管部の長さは前記ハンドレールの幅よりも長い、請求項5に記載の照射装置。
【請求項8】
前記放電容器は、前記ハンドレールの表面に沿って屈曲した形状である、請求項5~7のいずれか一項に記載の照射装置。
【請求項9】
前記紫外線放射部が、希ガスまたは希ガスとハロゲンガスとの混合ガスを放電容器に封入したエキシマランプ、希ガスと水銀を放電容器に封入した水銀ランプ、及び蛍光体膜を放電容器に形成した蛍光UVランプからなる群から選択されるランプである、請求項5~8のいずれか一項に記載の照射装置。
【請求項10】
前記紫外線照射手段は、前記ハンドレールの表面からの照射距離が異なるように設置された、請求項1~9のいずれか一項に記載の照射装置。
【請求項11】
前記ハンドレールの外周面を含む両側面外周側の間の表面は、前記紫外線照射手段から放射された紫外線が直接照射され、前記ハンドレールの側面内周側から内周面の間の表面は、前記紫外線照射手段から放射された紫外線が反射して照射される、請求項1~10のいずれか一項に記載の照射装置。
【請求項12】
前記ハンドレールの外周面、側面、内周面の連続する表面に対して、前記紫外線照射手段から放射された紫外線が非一様に照射される、請求項11に記載の照射装置。
【請求項13】
前記紫外線照射手段が、前記ハンドレールの折り返し部分に設置されており、前記ハンドレールの出口部分の高さと水平移動部分の高さとの間の連続する領域の一部又は全部に設置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の照射装置。
【請求項14】
前記照射装置の筺体の上端が、水平移動部分の高さ又は水平移動部分の高さより低く、ハンドレールの折り返し部分の高さの上から1/3以内に位置する、請求項1~13のいずれか一項に記載の照射装置。
【請求項15】
前記紫外線照射手段が設置される前記移動方向に沿った領域の長さが100~800mmの範囲であり、そして前記ハンドレールの移動速度が10~50m/minの範囲の場合に、前記ハンドレールの表面に対して、照度が1.4mW/cm以上で、且つ照射量が1.1mJ/cm以上となるように紫外線照射する、請求項1~13のいずれか一項に記載の照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンコンベアのハンドレール用照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ又は動く歩道などのマンコンベアに乗る場合に、ウイルスなどの感染を恐れて、ハンドレールを握らない乗客が増加している。しかし、エスカレータ等の乗降時、歩く乗客との衝突、又は緊急停止したときなどに、ハンドレールを握らないために、転倒して怪我をすることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007-520402号公報
【特許文献2】国際公開2016-148389号明細書
【特許文献3】特開2006-193319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エスカレータ等のハンドレールを安心して握れるように、ハンドレールを殺菌する必要がある。ハンドレールを殺菌する装置について、報告されているが、いずれも十分なものではなかった(特許文献1~3)。
従って、本発明の目的は、エスカレータ等のハンドレールを安心して握れる殺菌装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、エスカレータ等のハンドレールを安心して握れる殺菌装置について、鋭意研究した結果、驚くべきことに、エスカレータ等の折り返し部分の特定の位置に、殺菌装置の紫外線照射手段を設置することによってエスカレータ等のハンドレールを安心して握れることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
[1]マンコンベアのハンドレールを殺菌する照射装置であって、紫外線照射手段が、その幅方向の両端が前記ハンドレールの幅の外側に位置し、前記ハンドレールの移動方向に沿って連続する領域に設置されることを特徴とする照射装置、
[2]前記紫外線照射手段は、ハンドレールの外周面を含む両側面外周側の間の表面に対する法線上に、連続的に配置された紫外線放射部の少なくとも一部を有する、[1]に記載の照射装置、
[3]前記紫外線照射手段に電力を供給する給電線が、前記ハンドレールの移動方向に対して、逆方向又は垂直方向に取り回されている、[1]または[2]に記載の照射装置、
[4]前記紫外線照射部は、前記ハンドレールの表面に対向して連続的に配置されたLED素子である、[1]~[3]のいずれかに記載の照射装置、
[5]前記紫外線放射部は、前記ハンドレールの表面に対向して放電容器が連続的に延在する放電ランプである、[1]~[3]のいずれかに記載の照射装置、
[6]前記放電容器は、前記ハンドレールの移動方向に沿った直管部からなり、前記直管部の少なくとも一部が、前記ハンドレールの幅よりも内側に配置される、[5]に記載の照射装置、
[7]前記放電容器は、前記ハンドレールの移動方向に沿った直管部と、前記ハンドレールの幅方向に沿った曲管部とからなり、前記直管部の少なくとも一部が前記ハンドレールの幅よりも外側に配置され、前記曲管部の長さは前記ハンドレールの幅よりも長い、[5]に記載の照射装置、
[8]前記放電容器は、前記ハンドレールの表面に沿って屈曲した形状である、[5]~[7]のいずれかに記載の照射装置、
[9]前記紫外線放射部が、希ガスまたは希ガスとハロゲンガスとの混合ガスを放電容器に封入したエキシマランプ、希ガスと水銀を放電容器に封入した水銀ランプ、及び蛍光体膜を放電容器に形成した蛍光UVランプからなる群から選択されるランプである、[5]~[8]のいずれかに記載の照射装置、
[10]前記紫外線照射手段は、前記ハンドレールの表面からの照射距離が異なるように設置された、[1]~[9]のいずれかに記載の照射装置、
[11]前記ハンドレールの外周面を含む両側面外周側の間の表面は、前記紫外線照射手段から放射された紫外線が直接照射され、前記ハンドレールの側面内周側から内周面の間の表面は、前記紫外線照射手段から放射された紫外線が反射して照射される、[1]~[10]のいずれかに記載の照射装置、
[12]前記ハンドレールの外周面、側面、内周面の連続する表面に対して、前記紫外線照射手段から放射された紫外線が非一様に照射される、[11]に記載の照射装置、
[13]前記紫外線照射手段が、前記ハンドレールの折り返し部分に設置されており、前記ハンドレールの出口部分の高さと水平移動部分の高さとの間の連続する領域の一部又は全部に設置されている、[1]~[12]のいずれかに記載の照射装置、
[14]前記照射装置の筺体の上端が、水平移動部分の高さ又は水平移動部分の高さより低く、ハンドレールの折り返し部分の高さの上から1/3以内に位置する、[1]~[13]のいずれかに記載の照射装置、及び
[15]前記紫外線照射手段が設置される前記移動方向に沿った領域の長さが100~800mmの範囲であり、そして前記ハンドレールの移動速度が10~50m/minの範囲の場合に、前記ハンドレールの表面に対して、照度が1.4mW/cm以上で、且つ照射量が1.1mJ/cm以上となるように紫外線照射する、[1]~[13]のいずれかに記載の照射装置、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の殺菌装置によれば、乗客がエスカレータ等のハンドレールを安心して握ることができる。また、殺菌に必要な紫外線照射時間(照射量)を、十分確保することができる。更に、エスカレータ等の乗り口に設置できるコンパクトな照射装置でありながら、十分な殺菌効果を得ることができる。また、本発明の殺菌装置によれば、乗客が殺菌されているハンドレールであることを、視覚的に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の照射装置における紫外線照射手段と、ハンドレールとの位置関係を上断面(A)、正面(B)及び側面(C)から見た模式図、及び筐体を含む照射装置の上断面図(D)である。
図2】従来の殺菌装置の紫外線照射手段と、ハンドレールとの位置関係を示した図である。
図3】直管タイプの2本の紫外線ランプ(紫外線放射部)を、紫外線照射手段として用いた場合の上断面(A)及び正面(B)から見た模式図である。
図4】直管タイプの4本の紫外線ランプ(紫外線放射部)を、紫外線照射手段として用いた場合の上断面(A)及び正面(B)から見た模式図である。
図5】U字管タイプの紫外線ランプ(紫外線放射部)を、紫外線照射手段として用いた場合の上断面(A)及び正面(B)から見た模式図である。
図6】コの字管タイプの紫外線ランプ(紫外線放射部)を、紫外線照射手段として用いた場合の上断面(A)及び正面(B)から見た模式図である。
図7】LED素子を紫外線照射手段として用いた場合の側面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の照射装置は、マンコンベアのハンドレールを殺菌する照射装置であって、紫外線照射手段が、その幅方向の両端が前記ハンドレールの幅の外側に位置し、前記ハンドレールの移動方向に沿って連続する領域に設置される。従来の照射装置は、図2(A)に示すように、紫外線照射手段の幅方向の両端が前記ハンドレールの幅の内側に位置していた。
【0009】
前記マンコンベアとしては、限定されるものではないが、エスカレータ又は動く歩道(移動歩道)などが挙げられる。
前記紫外線照射手段は、ハンドレールに紫外線を照射し、細菌又はウイルス等の病原体を死滅させる手段である。具体的には、紫外線を照射できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、後述の紫外線ランプなどの紫外線放射部を含む。
前記紫外線照射手段の幅方向は、図1(A)の点線で示した「紫外線照射手段を設置する領域6」の横方向を意味する。
【0010】
以下に、図3~6を用いて、紫外線照射手段の幅方向の具体的な態様を説明する。
図3のように直管タイプ11の2本の紫外線ランプ(紫外線放射部)を、ハンドレール1の移動方向に沿って設置する紫外線照射手段の場合、2本の紫外線ランプが含まれるすべての領域が、紫外線照射手段の領域である。なお、本態様においては、3本以上の紫外線ランプを用いることもできる。
図4のように直管タイプ11の4本の紫外線ランプ(紫外線放射部)を、ハンドレール1の移動方向に垂直に設置する紫外線照射手段の場合、4本の紫外線ランプが含まれるすべての領域が、紫外線照射手段の領域である。なお、本態様においては、1~3本又は5本以上の紫外線ランプを用いることもできる。
図5のようにU字管タイプ12の紫外線ランプ(紫外線放射部)の直管部がハンドレール1の移動方向に沿って設置する紫外線照射手段の場合、直管部及び曲管部を含む領域が、紫外線照射手段の領域である。
図6のようにコの字管タイプ15の紫外線ランプを、コの字の形状がハンドレール1の周囲を囲むように設置する紫外線照射手段の場合、上下のコの字部分のすべての領域が、紫外線照射手段の領域である。
なお、本発明の紫外線照射手段の態様は、紫外線照射手段の幅方向の両端が前記ハンドレールの幅の外側に位置する限りにおいて、前記図3~6の態様に限定されるものではない。
本発明の照射装置は、図1(D)に示すように、ハンドレール1及び紫外線照射手段20を覆う筐体21を有する。開口部22は、ハンドレール1の移動に支障がなく、紫外線照射手段20から放射される紫外線が漏れ出ない程度の大きさを有する。
【0011】
本発明の照射手段において、紫外線照射手段の幅方向の両端が、前記ハンドレールの幅の外側に位置する。なお、前記紫外線照射手段の幅方向は、ハンドレールの移動方向に垂直なハンドレールの幅方向を意味する。
紫外線照射手段の幅方向の両端が前記ハンドレールの幅の外側に位置することによって、ハンドレールの側面外周側にも紫外線を直接照射することができ、ハンドレールの殺菌を効率的に且つ十分に実施できる。
【0012】
前記紫外線照射手段の横方向の長さ(両端の距離)は特に限定されるものではないが、例えば80mm以上であり、好ましくは85mm以上であり、より好ましくは90mm以上である。また、紫外線照射手段の横方向の長さの上限も限定されるものではないが、好ましくは180mm以下であり、より好ましくは150mm以下であり、更に好ましくは130m以下である。
【0013】
前記「ハンドレールの移動方向に沿って連続する領域」は、図1(B)の点線で示した「紫外線照射手段を設置する領域6」の縦方向を意味する。以下に、図3~6を用いて、ハンドレールの移動方向に沿って連続する領域の具体的な態様を説明する。
例えば、図3の直管タイプ11の2本の紫外線ランプ(紫外線放射部)を、ハンドレールの移動方向に沿って設置する紫外線照射手段の場合、「紫外線照射手段を設置する領域」は、直管タイプの2本の紫外線ランプの長さを意味する。図4のように直管タイプ11の4本の紫外線ランプ(紫外線放射部)を、ハンドレールの移動方向に垂直に設置する紫外線照射手段の場合、「紫外線照射手段を設置する領域」は、4本の紫外線ランプが設置されたハンドレールの移動方法の距離を意味する。図5のようにU字管タイプ12の紫外線ランプ(紫外線放射部)の直管部14がハンドレールの移動方向に沿って設置する紫外線照射手段の場合、「紫外線照射手段を設置する領域」は、直管部14及びランプベース(例えば、口金)を含む長さを意味する。図6のようにコの字管タイプ15の紫外線ランプを、コの字の形状がハンドレールの周囲を囲むように設置する紫外線照射手段の場合、「紫外線照射手段を設置する領域」は、上下のコの字部分の距離を意味する。なお、本発明の紫外線照射手段の「ハンドレールの移動方向に沿って連続する領域」の態様は、前記図3~6の態様に限定されるものではない。
【0014】
ハンドレールの移動方向に沿って連続する領域の長さは、特に限定されるものではないが、例えば100~800mmであり、好ましくは200~800mmであり、より好ましくは300~800mmであり、更に好ましくは400~800mmであり、更に好ましくは500~800mmであり、更に好ましくは600~800mmである。
ハンドレールの移動方向に沿って連続する領域に紫外線照射手段を設置することによって、ハンドレールに連続的に紫外線を照射することができ、ハンドレールの殺菌を効率的に且つ十分に実施できる。
【0015】
前記紫外線照射手段は、ハンドレールの外周面を含む両側面外周側の間の表面に対する法線上に、連続的に配置された紫外線放射部の少なくとも一部を有する。
前記ハンドレールの外面は、図1(A)に示すように、外周面2、側面3及び4、及び内周面5に分けられ、側面は、更に側面外周側3及び側面内周側4に分けられる。
前記「外周面を含む両側面外周側の間の表面」は、左側の側面外周側3、外周面2、及び右側の側面外周側3の表面を意味する。法線7は、接点において接線(または接平面)と直交する直線である。従って、「ハンドレールの外周面を含む両側面外周側の間の表面に対する法線上に、連続的に配置された紫外線放射部の少なくとも一部を有する」とは、ハンドレールの左側の側面外周側3、外周面2、及び右側の側面外周側3の法線上の、全部または一部に連続的に紫外線照射部が配置されることを意味する。
【0016】
本発明の照射手段においては、前記紫外線照射手段に電力を供給する給電線が、前記ハンドレールの移動方向に対して、逆方向又は垂直方向に取り回されている。
本明細書において、給電線とは紫外線照射手段に電力を供給する電線を意味する。給電線は、ハンドレールの移動方向に対して、逆方向又は垂直方向に位置する。具体的には、紫外線照射部(紫外線ランプ)のランプベース(例えば、口金)からの給電線の位置が、ハンドレールの幅に対応する領域にないこと、紫外線照射部(紫外線ランプ)のランプベースがハンドレールの出口部分高さと、水平移動部分高さの連続する領域に存在しないことを意味する。
給電線をハンドレールの移動方向に対して、逆方向又は垂直方向に取り回すことにより、給電線がハンドレールに巻き込まれることを防止することができる。
【0017】
本発明の照射装置において、限定されるものではないが、前記紫外線照射部は、前記ハンドレールの表面に対向して連続的に配置されたLED素子である。LED素子17は、発光ダイオード素子であり、電圧を加えることにより発光する半導体素子である(図7)。LED素子17の紫外線照射部を、例えば図3~6の実施態様で設置することもできる。
【0018】
本発明の照射装置において、限定されるものではないが、前記紫外線放射部は、前記ハンドレールの表面に対向して放電容器が連続的に延在する放電ランプである。放電ランプの紫外線照射部を、例えば図3~6の実施態様で設置することができる。
本明細書において、「放電容器」は、紫外線ランプの紫外線が外部に放射される部分、例えば石英ガラス管の部分を意味する。
【0019】
本発明の照射手段において、紫外線照射手段は限定されるものではないが、紫外線照射手段の紫外線照射部(LED素子又は放電ランプなど)が、ハンドレールの表面に対向して連続的に配置される(図1C)。従って、紫外線照射部は、限定されるものではないが、ハンドレールの折り返し部分に対向する領域の一部又は全部に設置される。ハンドレールの折り返し部分とは、マンコンベアの下部のハンドレールが外部に出てくる部分からマンコンベアの上部のハンドレール水平移動部までの略半円形の部分を意味する。
【0020】
本発明の1つの実施態様において、図3に示すように、前記放電容器は、前記ハンドレール1の移動方向に沿った直管部からなり、前記直管部の少なくとも一部が、前記ハンドレールの幅よりも内側に配置される。例えば、2本の直管タイプ11の紫外線ランプ(LED素子又は放電ランプなど)を用いる紫外線照射手段の場合、1本の紫外線ランプの外側がハンドレールの幅の一方の端の外側に配置され、その内側が前記ハンドレールの幅の一方の端の内側に配置される。また、もう1本の紫外線ランプの外側がハンドレールの幅の他方の端の外側に配置され、その内側が前記ハンドレールの幅の他方の端の内側に配置される。従来の照射装置は、図2(B)に示すように、紫外線照射手段の直管部の内側が、前記ハンドレールの幅よりも外側に配置されていた。
前記直管部は、まっすぐな管でもよく、ハンドレールの折り返し部にそって、1箇所以上の屈曲部を有してもよい。屈曲部を2箇所又は3箇所以上有してもよい。
【0021】
本発明の別の実施態様において、図4に示すように、前記放電容器は、前記ハンドレール1の移動方向に垂直な直管部からなり、前記直管部の少なくとも一部が、前記ハンドレールの幅よりも内側に配置される。例えば、直管タイプ11の紫外線ランプ(LED素子又は放電ランプなど)をハンドレールの移動方向に垂直に4本用いる紫外線照射手段の場合、直管タイプの紫外線ランプの両端がハンドレールの幅の両端の外側に配置される。そして、直管タイプの紫外線ランプの中央部分付近は、前記ハンドレールの幅よりも内側に配置される。前記直管部は、まっすぐでもよく、ハンドレールにそって、若干屈曲(湾曲を含む)してもよい。
【0022】
本発明の別の実施態様において、図5に示すように、前記放電容器は、前記ハンドレール1の移動方向に沿った直管部と、前記ハンドレールの幅方向に沿った曲管部とからなり、前記直管部の少なくとも一部が前記ハンドレールの幅よりも外側に配置され、前記曲管部の長さは前記ハンドレールの幅よりも長い。U字管タイプ12の紫外線ランプ(LED素子又は放電ランプなど)の直管部14をハンドレールの移動方向に沿って用いる紫外線照射手段の場合、直管部14の両端がハンドレールの幅の両端の外側に配置される。そして、曲管部13の一部が、前記ハンドレールの幅よりも内側に配置される。前記直管部14は、まっすぐな管でもよく、ハンドレールの折り返し部にそって、1箇所以上の屈曲部を有してもよい。屈曲部を2箇所又は3箇所以上有してもよい。
【0023】
本発明の別の実施態様において、図6に示すように、前記放電容器は、前記ハンドレールの表面に沿って屈曲した形状である。紫外線照射手段を上方から見てコの字管タイプの紫外線ランプ(LED素子又は放電ランプなど)用いる場合、「コ」の字の上部の横の放電容器がハンドレールの一方の側面に対向し、「コ」の字の縦の放電容器がハンドレールの一方の外周面に対向し、そして「コ」の字の下部の横の放電容器がハンドレールの他方の側面に対向する。
【0024】
本発明の照射装置において、前記紫外線放射部は、紫外線を放射できる限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば希ガスまたは希ガスとハロゲンガスとの混合ガスを封入したエキシマランプ、希ガスと水銀を封入した水銀ランプ、又は蛍光体膜を形成した蛍光UVランプが挙げられる。紫外線の放射とともにオゾンが生成されることを防ぐために、波長200nm以下の紫外線が含まれないようにするとよい。
【0025】
本発明の照射装置において、前記紫外線照射手段は、限定されるものではないが、前記ハンドレールの表面からの照射距離が異なるように設置されてもよい。例えば、前記紫外線照射手段は、前記ハンドレールの表面からの法線に沿った照射距離がハンドレールの移動方向に沿って異なるように設置されてもよい。ハンドレールの表面から法線に沿った照射距離は、限定されるものではないが、例えば5~50mmであり、好ましくは10~40mmである。
【0026】
本発明の1つの実施態様においては、前記ハンドレールの外周面を含む両側面外周側の間の表面は、前記紫外線照射手段から放射された紫外線が直接照射され、前記ハンドレールの側面内周側から内周面の間の表面は、前記紫外線照射手段から放射された紫外線が反射して照射される。
ハンドレールの外周面は、図1に示すように、紫外線照射手段から、紫外線が直接照射される。一方、側面内周側から内周面の間の表面は、紫外線照射手段の紫外線が直接到達しないことがあるため、反射された紫外線を照射することが好ましい。紫外線を反射するためには、例えば照射装置の筐体の内側に、反射板を設置することができる。
【0027】
本発明の照射装置においては、限定されるものではないが、前記ハンドレールの外周面、側面、内周面の連続する表面に対して、前記紫外線照射手段から放射された紫外線が非一様に照射されてもよい。紫外線の光量は、細菌又はウイルスなどの病原体を、効率的に不活化させる光量でよい。すなわち、ハンドレールのすべての表面に、均一な光量が照射されなくてもよい。
【0028】
本発明の照射装置において、前記紫外線照射手段は、限定されるものではないが、前記ハンドレールの折り返し部分に設置されており、前記ハンドレールの出口部分の高さと水平移動部分の高さとの間の連続する領域の一部又は全部に設置されている。
【0029】
ハンドレールは、エスカレータの階段部分又は動く歩道の歩行部分と同じ速さで移動する。従って、ハンドレールを掴むことにより、階段部分又は歩行部分における転倒などの事故を防止することができる。ハンドレールは、1本の繋がった構造であり、露出した上面部分において、エスカレータの階段部分又は動く歩道の歩行部分と同じ速さで移動し、隠れた下面部分では、露出した階段部分の移動方向と逆方向に回動している。そして上面部分と下面部分とは、折り返し部分で方向を変えている。
ハンドレールの折り返し部分とは、マンコンベアの下面部分のハンドレールが外部に出てくる部分からマンコンベアの上面部分のハンドレール水平移動部までの略半円形の部分である。ハンドレールが外部に出てくる部分を「ハンドレールの出口部分」と称する。前記ハンドレールの出口部分の高さは、限定されるものではないが、100mm~200mmである。前記ハンドレールの水平移動部分の高さは、限定されるものではないが、900mm~1000mmであり、例えば920mm又は950mmである。
【0030】
従って、前記紫外線照射手段は、例えば高さ100mm~1000mmの位置の全部または一部に、ハンドレールに対向して設置される。高さの下限は、例えば100mm~200mmであり、高さの上限は、例えば900mm~1000mmである。
【0031】
前記照射装置の筺体の上端は、限定されるものではないが、水平移動部分の高さ又は水平移動部分の高さより低く、ハンドレールの折り返し部分の高さの上から1/3以内に位置する。水平移動部分の高さは、例えば900mm~1000mmであり、従って筐体の上端は、好ましくは900mm~1000mm以下の高さに位置する。折り返し部分の高さの上から1/3は、それぞれのハンドレールの取り付け位置の高さによって計算することができるが、例えば640mm以上であり、ある態様では660mm以上であり、ある態様では680mm以上であり、ある態様では700mm以上であり、ある態様では720mm以上であり、ある態様では740mm以上である。前記照射装置の筺体の上端が比較的高い位置にあることによって、乗客が、ハンドレールが殺菌されていることを容易に認識することができる。従って、乗客が殺菌されたハンドレールを掴みやすい。また上端が1/3より下方にあると、照射装置が乗客の視線に入らず、足などをぶつけてしまうことがある。上端が上部にあることにより、そのような事故を防ぐことができる。
前記筐体は、前記紫外線照射手段を含む。また、筐体は殺菌されるハンドレールの入口及びハンドレールの出口を有する。ハンドレールの出口は、限定されるものではないが、好ましくは水平移動部分を覆わない。水平部分を覆うことによって、ハンドレールを握りにくくなることがある。
【0032】
前記紫外線照射手段が設置される前記移動方向に沿った領域の長さが100~800mmの範囲であり、そして前記ハンドレールの移動速度が10~50m/minの範囲の場合に、前記ハンドレールの表面に対して、照度が1.4mW/cm以上で、且つ照射量が1.1mJ/cm以上となるように紫外線照射する。
【0033】
紫外線照射手段が設置される前記移動方向に沿った領域の長さは、限定されるものではないが、例えば100~800mmであり、好ましくは200~800mmであり、より好ましくは300~800mmであり、更に好ましくは400~800mmであり、更に好ましくは500~800mmであり、更に好ましくは600~800mmである。
ハンドレールの移動速度は、限定されるものではないが、例えば10~50m/分であり、好ましくは20~45m/分であり、より好ましくは30~40m/分である。
【0034】
前記紫外線照射手段によって紫外線が照射されるハンドレールの表面において、例えば、照度が1.4mW/cm以上で、且つ照射量が1.1mJ/cm以上であり、好ましくは照度が2.4mW/cm以上で、且つ照射量が1.9mJ/cm以上、更に好ましくは照度が3.3mW/cm以上で、且つ照射量が2.7mJ/cm以上、更に好ましくは前記照度が6.2mW/cm以上で、且つ照射量が5.0mJ/cm以上であることにより、細菌又はウイルスなどの病原体を十分に死滅させることができる。紫外線照射手段から放射される紫外線に感度を有する照度計を用いて、具体的には、水銀ランプから放射させる波長254nm付近にピーク感度を有する照度計(出願人製作の照度計UVM03A、受光器UV-SN25)を用いて、ハンドレールの表面に相当する位置の照度を測定し、ハンドレールの移動速度に応じた照射量を算出する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の照射装置は、エスカレータ又は動く歩道などのマンコンベアのハンドレールを十分に殺菌することが可能であり、従って乗客がハンドレールを握ることを躊躇することなく、転倒事故などを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0036】
1・・・ハンドレール;
2・・・外周面;
3・・・側面外周側;
4・・・側面内周側;
5・・・内周面;
6・・・紫外線照射手段を設置する領域;
7・・・法線;
8・・・ハンドレール折り返し部;
9・・・ハンドレール水平移動部;
10・・・ハンドレール出口部分;
11・・・低圧水銀灯(直管タイプ);
12・・・低圧水銀灯(U字管タイプ);
13・・・曲管部(低圧水銀灯U字管タイプ);
14・・・直管部(低圧水銀灯U字管タイプ);
15・・・低圧水銀灯(コの字管タイプ);
16・・・給電部(口金);
17・・・LED照射ユニット;
18・・・ハンドレール水平移動部分高さ;
19・・・ハンドレール出口部分高さ;
20・・・紫外線照射手段;
21・・・筐体;
22・・・開口部;
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図7