(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103634
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】バドミントンラケット
(51)【国際特許分類】
A63B 49/00 20150101AFI20220701BHJP
A63B 102/04 20150101ALN20220701BHJP
【FI】
A63B49/00
A63B102:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218384
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】君塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】植田 勝彦
(57)【要約】 (修正有)
【課題】打点がセンターFCの近傍であるショットに適したバドミントンラケットの提供。
【解決手段】バドミントンラケット2は、下記数式(1)又は(2)を満たす。
y≧x+5.0(1)
y≦x-5.0(2)
数式(1)及び(2)におけるyは、下記数式(3)によって算出される。
y=(ωo1*ωo2)
1/2(3)
数式(1)及び(2)におけるxは、下記数式(4)によって算出される。
x=EI1*7.0+EI2*0.28+71.0(4)
ωo1はラケットの自由な拘束条件下での面外一次固有振動数(Hz)を表し、ωo2はラケットの面外二次固有振動数(Hz)を表す。EI1はラケットの片持ち剛性(N/mm)を表し、EI2はラケットの打球面剛性(N/mm)を表す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッドエンド及びチップエンドを有するシャフト、
上記シャフトの、上記バッドエンドの近傍が挿入されるグリップ、
並びに
上記チップエンドの近傍において上記シャフトに取り付けられたフレーム
を備えており、
下記数式(1)又は(2)を満たすバドミントンラケット。
y ≧ x + 5.0 (1)
y ≦ x - 5.0 (2)
(上記数式(1)及び(2)におけるyは、下記数式(3)によって算出される。
y = ( ωo1 * ωo2)1/2 (3)
上記数式(1)及び(2)におけるxは、下記数式(4)によって算出される。
x = EI1 * 7.0 + EI2 * 0.28 + 71.0 (4)
上記数式(3)において、ωo1は上記バドミントンラケットの自由な拘束条件下での固有振動における面外一次固有振動数(Hz)を表し、ωo2は上記バドミントンラケットの自由な拘束条件下での固有振動における面外二次固有振動数(Hz)を表す。上記数式(4)において、EI1は上記バドミントンラケットの片持ち剛性(N/mm)を表し、EI2は上記バドミントンラケットの打球面剛性(N/mm)を表す。)
【請求項2】
下記数式(5)を満たす請求項1に記載のバドミントンラケット。
y ≧ x + 11.0 (5)
【請求項3】
下記数式(6)を満たす請求項1に記載のバドミントンラケット。
y ≦ x - 10.5 (6)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バドミントンに使用されるラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
バドミントンのラケットは、フレーム、ストリング及びシャフトを有している。フレームは、トップとボトムとを有している。ストリングは、フェースを形成している。プレーヤーは、ラケットでシャトルをショットする。ショットにより、フェースがシャトルと衝突する。衝突による衝撃は、ストリングからフレームを経てシャフトへと伝わる。ショットにより、フレーム及びシャフトが変形する。衝突時の変形挙動の適正化に関する試みが、特開2001-70481公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バドミントンのゲームでは、プレーヤーは、様々な種類のショットを行う。スマッシュ、ロビング、ドライブ等のショットを、プレーヤーは行う。統計的手法による調査では、スマッシュにおける典型的な打点はボトム寄りであり、ロビングにおける典型的な打点はトップ寄りである。一方、ドライブにおける典型的な打点は、センター近傍である。
【0005】
ドライブでは、シャトルが高速でかつほぼ水平に飛行する。ドライブは、相手プレーヤーの体勢を崩す。ゲームの勝利の観点から、ドライブは、重要なショットである。
【0006】
ドライブでは、ネットを超える高さでシャトルが飛行する必要がある。意図した高さでシャトルを飛行させる技量が、プレーヤーには必要である。ドライブを多用するプレーヤーは、シャトルの弾道の安定を望んでいる。
【0007】
本発明の目的は、打点がセンター近傍であるショットにおいて、シャトルの弾道のバラツキが抑制されうる、バドミントンラケットの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバドミントンラケットは、
バッドエンド及びチップエンドを有するシャフト、
このシャフトのバッドエンドの近傍が挿入されるグリップ、
並びに
チップエンドの近傍においてシャフトに取り付けられたフレーム
を有する。このバドミントンラケットは、下記数式(1)又は(2)を満たす。
y ≧ x + 5.0 (1)
y ≦ x - 5.0 (2)
これらの数式(1)及び(2)におけるyは、下記数式(3)によって算出される。
y = ( ωo1 * ωo2)1/2 (3)
これらの数式(1)及び(2)におけるxは、下記数式(4)によって算出される。
x = EI1 * 7.0 + EI2 * 0.28 + 71.0 (4)
この数式(3)において、ωo1はバドミントンラケットの自由な拘束条件下での固有振動における面外一次固有振動数(Hz)を表し、ωo2はバドミントンラケットの自由な拘束条件下での固有振動における面外二次固有振動数(Hz)を表す。数式(4)において、EI1はバドミントンラケットの片持ち剛性(N/mm)を表し、EI2はバドミントンラケットの打球面剛性(N/mm)を表す。
【0009】
バドミントンラケットが、下記数式(5)を満たしてもよい。
y ≧ x + 11.0 (5)
【0010】
バドミントンラケットが、下記数式(6)を満たしてもよい。
y ≦ x - 10.5 (6)
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るバドミントンラケットを使用するプレーヤーは、打点がセンター近傍であるショットを行いやすい。このラケットは、ゲームの勝利に寄与しうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るバドミントンラケットが示された正面図である。
【
図3】
図3は、
図1のラケットのシャフトの一部が示された拡大断面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った拡大断面図である。
【
図5】
図5は、
図1のラケットのシャフトのためのプリプレグが示された展開図である。
【
図6】
図6は、
図1のラケットの固有振動の振動数の測定方法が示された説明図である。
【
図7】
図7は、
図6の測定で得られた結果が示されたグラフである。
【
図8】
図8(a)は
図1のラケットの片持ち剛性の測定方法が示された平面図であり、
図8(b)はその正面図である。
【
図9】
図9(a)は
図8の測定方法に使用される圧子が示された斜視図であり、
図9(b)はその拡大断面図である。
【
図10】
図10(a)は
図1のラケットの打球面剛性EI2の測定方法が示された平面図であり、
図10(b)はその正面図である。
【
図11】
図11(a)は
図10の測定方法に使用される第一バーが示された斜視図であり、
図11(b)はその拡大断面図である。
【
図12】
図12は、
図1のバドミントンラケットの、値xと値yとの関係が示されたグラフである。
【
図13】
図13は、本発明の実施例5に係るバドミントンラケットが示された正面図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施例12に係るバドミントンラケットが示された正面図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施例9に係るバドミントンラケットが示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0014】
図1及び2に、バドミントンラケット2が示されている。このラケット2は、シャフト4、フレーム6、ネック8、キャップ9、グリップ10及びストリング12を有している。
図1及び2において、矢印Xは幅方向を表し、矢印Yは軸方向を表し、矢印Zは厚み方向を表す。
【0015】
シャフト4は、バッド部14、ミドル部16及びチップ部18を有している。シャフト4はさらに、バッドエンド20及びチップエンド22を有している。シャフト4は、中空である。シャフト4は、繊維強化樹脂から形成されている。この繊維強化樹脂は、樹脂マトリックスと、多数の強化繊維とを有している。シャフト4は、複数の繊維強化層(後に詳説)を含んでいる。
【0016】
シャフト4の基材樹脂として、エポキシ樹脂、ピスマレイミド樹脂、ポリイミド及びフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂;並びにポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド及びポリプロピレンのような熱可塑性樹脂が例示される。シャフト4に特に適した樹脂は、エポキシ樹脂である。
【0017】
シャフト4の強化繊維として、カーボン繊維、金属繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が例示される。シャフト4に特に適した繊維は、カーボン繊維である。複数種の繊維が併用されてもよい。
【0018】
フレーム6は環状であり、中空である。フレーム6は、繊維強化樹脂から形成されている。この繊維強化樹脂には、シャフト4の基材樹脂と同様の基材樹脂が用いられ得る。この繊維強化樹脂には、シャフト4の強化繊維と同様の強化繊維が用いられ得る。フレーム6は、ネック8を介して、シャフト4のチップエンド22に堅固に結合されている。フレーム6は、トップ24及びボトム26を有している。
【0019】
グリップ10は、軸方向(Y方向)に延びる穴27を有している。この穴27に、シャフト4のバッドエンド20の近傍が挿入されている。穴27の内周面とシャフト4の外周面とは、接着剤で接合されている。
【0020】
ストリング12は、フレーム6に張られている。ストリング12は、幅方向X及び軸方向Yに沿って張られる。ストリング12のうち幅方向Xに沿って延在する部分は、横スレッド28と称される。ストリング12のうち軸方向Yに沿って延在する部分は、縦スレッド30と称される。複数の横スレッド28及び複数の縦スレッド30により、フェース32が形成されている。フェース32は、概してX-Y平面に沿っている。
図1において矢印Lfは、フェース32の長さを表す。長さLfは、Y方向に沿って測定される。
【0021】
図1において符号FCは、フェース32のセンターを表す。センターFCは、X方向におけるフェース32の中点であり、Y方向におけるフェース32の中点である。
【0022】
図1において符号34は、シャフト4の露出部を表す。露出部34は、ネック8から露出しており、かつグリップ10から露出している。
図1において符号Lsは、この露出部34の長さである。長さLsは、通常は、150mm以上210mm以下である。
【0023】
図3は、
図1のラケット2のシャフト4の一部が示された拡大断面図である。
図4は、
図3のIV-IV線に沿った拡大断面図である。前述の通り、このシャフト4は中空である。
図4に示されるように、このシャフト4の断面形状は、円である。換言すれば、このシャフト4は、円筒状である。
【0024】
図3及び4において矢印Diは、シャフト4の内径を表す。典型的な内径Diは、3mm以上10mm以下である。
図3及び4において矢印Doは、シャフト4の外径を表す。典型的な外径Doは、5mm以上15mm以下である。
【0025】
前述の通りシャフト4は、繊維強化樹脂から形成されている。このシャフト4は、シートワインディング法によって製造されうる。このシートワインディング法では、複数のプリプレグが、マンドレルに巻かれる。それぞれのプリプレグは、複数の繊維とマトリックス樹脂とを有する。このマトリックス樹脂は、硬化していない。
【0026】
図5は、
図1のラケット2のシャフト4のためのプリプレグ構成が示された展開図である。このプリプレグ構成は、11のプリプレグ(つまりシート)を有する。具体的には、このプリプレグ構成は、第一シートS1、第二シートS2、第三シートS3、第四シートS4、第五シートS5、第六シートS6、第七シートS7、第八シートS8、第九シートS9、第十シートS10及び第11シートS11を有する。これらのプリプレグから、後述される方法にて、複数の繊維強化層が形成される。具体的には、第一シートS1から第一繊維強化層が形成され、第二シートS2から第二繊維強化層が形成され、第三シートS3から第三繊維強化層が形成され、第四シートS4から第四繊維強化層が形成され、第五シートS5から第五繊維強化層が形成され、第六シートS6から第六繊維強化層が形成され、第七シートS7から第七繊維強化層が形成され、第八シートS8から第八繊維強化層が形成され、第九シートS9から第九繊維強化層が形成され、第十シートS10から第十繊維強化層が形成され、第十一シートS11から第十一繊維強化層が形成される。
【0027】
図5における左右方向は、シャフト4の軸方向である。
図5には、バッドエンド20及びチップエンド22の位置が、矢印で示されている。説明の便宜上、
図5において、左右方向(軸方向)の縮尺は、上下方向の縮尺と一致していない。
【0028】
第一シートS1は、シャフト4の全体に渡って存在している。第一シートS1の形状は、概ね矩形である。この第一シートS1は、並列された複数のカーボン繊維を含んでいる。それぞれのカーボン繊維の延在方向は、軸方向に対して傾いている。このカーボン繊維の延在方向の、軸方向に対する角度は、30°以上60°以下である。本実施形態では、この角度は45°である。この第一シートS1では、幅は70mmであり、長さは340mmである。
【0029】
第二シートS2は、シャフト4の全体に渡って存在している。第二シートS2の形状は、概ね矩形である。この第二シートS2は、並列された複数のカーボン繊維を含んでいる。それぞれのカーボン繊維の延在方向は、軸方向に対して傾いている。このカーボン繊維の延在方向の、軸方向に対する角度は、-60°以上-30°以下である。本実施形態では、この角度は-45°である。この第二シートS2では、幅は70mmであり、長さは340mmである。
【0030】
第二シートS2におけるカーボン繊維の傾斜方向は、第一シートS1におけるカーボン繊維の傾斜方向とは逆である。従って、第二繊維強化層におけるカーボン繊維の傾斜方向は、第一繊維強化層におけるカーボン繊維の傾斜方向とは逆である。このシャフト4では第一繊維強化層及び第二繊維強化層により、バイアス構造が達成されている。第一繊維強化層及び第二繊維強化層は、シャフト4の曲げ剛性及びねじり剛性に寄与する。第一繊維強化層及び第二繊維強化層は、特に、シャフト4のねじり剛性に寄与する。
【0031】
第三シートS3は、シャフト4のミドル部16に偏って存在している。第三シートS3の形状は、概ね平行四辺形である。この第三シートS3は、並列された複数のカーボン繊維を含んでいる。それぞれのカーボン繊維の延在方向は、軸方向に対して傾いている。このカーボン繊維の延在方向の、軸方向に対する角度は、30°以上60°以下である。本実施形態では、この角度は45°である。この第三シートS3では、幅は15.5mmであり、長さは70mmである。
【0032】
第四シートS4は、シャフト4のミドル部16に偏って存在している。軸方向において、第四シートS4の位置は、第三シートS3の位置と一致している。第四シートS4の形状は、概ね平行四辺形である。この第四シートS4は、並列された複数のカーボン繊維を含んでいる。それぞれのカーボン繊維の延在方向は、軸方向に対して傾いている。このカーボン繊維の延在方向の、軸方向に対する角度は、-60°以上-30°以下である。本実施形態では、この角度は-45°である。この第四シートS4では、幅は15.5mmであり、長さは70mmである。
【0033】
第四シートS4におけるカーボン繊維の傾斜方向は、第三シートS3におけるカーボン繊維の傾斜方向とは逆である。従って、第四繊維強化層におけるカーボン繊維の傾斜方向は、第三繊維強化層におけるカーボン繊維の傾斜方向とは逆である。このシャフト4では、第三繊維強化層及び第四繊維強化層により、バイアス構造が達成されている。第三繊維強化層及び第四繊維強化層は、ミドル部16の曲げ剛性及びねじり剛性に寄与する。第三繊維強化層及び第四繊維強化層は、特に、ミドル部16のねじり剛性に寄与する。
【0034】
第五シートS5は、シャフト4のチップエンド22側に偏って存在している。第五シートS5の形状は、概ね台形である。この第五シートS5は、並列された複数のカーボン繊維を含んでいる。それぞれのカーボン繊維の延在方向は、軸方向に一致している。換言すれば、このカーボン繊維の延在方向の、軸方向に対する角度は、実質的に0°である。この第五シートS5では、幅は31mmであり、上底の長さは105mmであり、下底の長さは115mmである。
【0035】
前述の通り、第五シートS5に含まれるカーボン繊維は、実質的に軸方向に配向している。従って、第五繊維強化層でも、カーボン繊維は実質的に軸方向に配向している。本明細書では、カーボン繊維が実質的に軸方向に配向する構造は、「ストレート構造」と称される。第五繊維強化層は、ストレート構造を有する。シャフト4が撓んだとき、これらのカーボン繊維に大きな張力がかかる。この張力は、シャフト4のさらなる撓みを抑制する。換言すれば、これらのカーボン繊維は、シャフト4の曲げ剛性に寄与する。第五繊維強化層は、特に、チップ部18の曲げ剛性に寄与する。
【0036】
第六シートS6は、シャフト4のバッドエンド20側に偏って存在している。第六シートS6の形状は、概ね台形である。この第六シートS6は、並列された複数のカーボン繊維を含んでいる。それぞれのカーボン繊維の延在方向は、軸方向に一致している。換言すれば、このカーボン繊維の延在方向の、軸方向に対する角度は、実質的に0°である。この第六シートS6では、幅は31mmであり、上底の長さは155mmであり、下底の長さは165mmである。
【0037】
前述の通り、第六シートS6に含まれるカーボン繊維は、実質的に軸方向に配向している。従って、第六繊維強化層でも、カーボン繊維は実質的に軸方向に配向している。第六繊維強化層は、ストレート構造を有する。シャフト4が撓んだとき、これらのカーボン繊維に大きな張力がかかる。この張力は、シャフト4のさらなる撓みを抑制する。換言すれば、これらのカーボン繊維は、シャフト4の曲げ剛性に寄与する。第六繊維強化層は、特に、バッド部14の曲げ剛性に寄与する。
【0038】
第7シートS7は、シャフト4のバッドエンド20側に偏って存在している。第7シートS7の形状は、概ね台形である。この第7シートS7は、並列された複数のカーボン繊維を含んでいる。それぞれのカーボン繊維の延在方向は、軸方向に対して傾いている。このカーボン繊維の延在方向の、軸方向に対する角度は、30°以上60°以下である。本実施形態では、この角度は45°である。この第7シートS7では、幅は38.5mmであり、上底の長さは235mmであり、下底の長さは245mmである。
【0039】
第八シートS8は、シャフト4のバッドエンド20側に偏って存在している。軸方向において、第八シートS8の位置は、第七シートS7の位置と一致している。第八シートS8の形状は、概ね台形である。この第八シートS8は、並列された複数のカーボン繊維を含んでいる。それぞれのカーボン繊維の延在方向は、軸方向に対して傾いている。このカーボン繊維の延在方向の、軸方向に対する角度は、-60°以上-30°以下である。本実施形態では、この角度は-45°である。この第八シートS8では、幅は38.5mmであり、上底の長さは235mmであり、下底の長さは245mmである。
【0040】
第八シートS8におけるカーボン繊維の傾斜方向は、第七シートS7におけるカーボン繊維の傾斜方向とは逆である。従って、第八繊維強化層におけるカーボン繊維の傾斜方向は、第七繊維強化層におけるカーボン繊維の傾斜方向とは逆である。このシャフト4では、第七繊維強化層及び第八繊維強化層により、バイアス構造が達成されている。第七繊維強化層及び第八繊維強化層は、バッド部14の曲げ剛性及びねじり剛性に寄与する。第七繊維強化層及び第八繊維強化層は、特に、バッド部14及びミドル部16のねじり剛性に寄与する。
【0041】
第九シートS9は、シャフト4のチップエンド22側に偏って存在している。第九シートS9の形状は、概ね台形である。この第九シートS9は、並列された複数のカーボン繊維を含んでいる。それぞれのカーボン繊維の延在方向は、軸方向に一致している。換言すれば、このカーボン繊維の延在方向の、軸方向に対する角度は、実質的に0°である。この第九シートS9では、幅は77mmであり、上底の長さは95mmであり、下底の長さは105mmである。
【0042】
前述の通り、第九シートS9に含まれるカーボン繊維は、実質的に軸方向に配向している。従って、第九繊維強化層でも、カーボン繊維は実質的に軸方向に配向している。第九繊維強化層は、ストレート構造を有する。シャフト4が撓んだとき、これらのカーボン繊維に大きな張力がかかる。この張力は、シャフト4のさらなる撓みを抑制する。換言すれば、これらのカーボン繊維は、シャフト4の曲げ剛性に寄与する。第九繊維強化層は、特に、チップ部18の曲げ剛性に寄与する。
【0043】
第十シートS10は、シャフト4のバッドエンド20側に偏って存在している。第十シートS10の形状は、概ね台形である。この第十シートS10は、並列された複数のカーボン繊維を含んでいる。それぞれのカーボン繊維の延在方向は、軸方向に一致している。換言すれば、このカーボン繊維の延在方向の、軸方向に対する角度は、実質的に0°である。この第十シートS10では、幅は72mmであり、上底の長さは235mmであり、下底の長さは245mmである。
【0044】
前述の通り、第十シートS10に含まれるカーボン繊維は、実質的に軸方向に配向している。従って、第10繊維強化層でも、カーボン繊維は実質的に軸方向に配向している。第10繊維強化層は、ストレート構造を有する。シャフト4が撓んだとき、これらのカーボン繊維に大きな張力がかかる。この張力は、シャフト4のさらなる撓みを抑制する。換言すれば、これらのカーボン繊維は、シャフト4の曲げ剛性に寄与する。第10繊維強化層は、特に、バッド部14及びミドル部16の曲げ剛性に寄与する。
【0045】
第十一シートS11は、シャフト4のチップエンド22側に偏って存在している。第十一シートS11の形状は、概ね台形である。この第十一シートS11は、並列された複数のカーボン繊維を含んでいる。それぞれのカーボン繊維の延在方向は、軸方向に一致している。換言すれば、このカーボン繊維の延在方向の、軸方向に対する角度は、実質的に0°である。この第十一シートS11では、幅は72mmであり、上底の長さは95mmであり、下底の長さは105mmである。
【0046】
前述の通り、第十一シートS11に含まれるカーボン繊維は、実質的に軸方向に配向している。従って、第十一繊維強化層でも、カーボン繊維は実質的に軸方向に配向している。第十一繊維強化層は、ストレート構造を有する。シャフト4が撓んだとき、これらのカーボン繊維に大きな張力がかかる。この張力は、シャフト4のさらなる撓みを抑制する。換言すれば、これらのカーボン繊維は、シャフト4の曲げ剛性に寄与する。第十一繊維強化層は、特に、チップ部18の曲げ剛性に寄与する。
【0047】
このシャフト4では、第一繊維強化層及び第二繊維強化層は、バッドエンド20からチップエンド22に渡って存在している。これらの繊維強化層は、シャフト4の耐久性に寄与しうる。
【0048】
このシャフト4の製造では、
図5に示されたシートが、順次、マンドレルに巻かれる。第一シートS1と第二シートS2とが重ねられて、マンドレルに巻かれてもよい。第三シートS3と第四シートS4とが重ねられて、マンドレルに巻かれてもよい。第六シートS6と第七シートS7とが重ねられて、マンドレルに巻かれてもよい。これらのシートと共に、他のシートがマンドレルに巻かれてもよい。他のシートとして、ガラス繊維を含むものが例示される。
【0049】
これらのシートに、さらにラッピングテープが巻かれる。これらのマンドレル、プリプレグ(シートS1-S9)及びラッピングテープは、オーブン等で加熱される。加熱により、マトリックスの樹脂が流動する。さらなる加熱によりこの樹脂が硬化反応を起こし、成形体が得られる。この成形体に、端面の加工、研磨、塗装等の処理が施され、シャフト4が完成する。
【0050】
このシャフト4の材質は、繊維強化樹脂である。シャフト4の材質が、繊維を含まない樹脂組成物であってもよい。シャフト4の材質が、金属、木材等であってもよい。
【0051】
図6は、
図1のラケット2の固有振動の振動数の測定方法が示された説明図である。この方法では、紐36によってラケット2が吊り下げられる。このラケット2は、ストリング12を有していない。換言すれば、固有振動の振動数の測定には、ストリング12がない状態のラケット2が供される。
図6では、シャフト4の軸方向(Y方向)は、鉛直方向と一致している。
図6では、フレーム6は、シャフト4よりも上方に位置している。
【0052】
図6に示されるように、ラケット2には加速度ピックアップ38が取り付けられている。加速度ピックアップ38の位置は、グリップ10の先端である。この加速度ピックアップ38の向きは、Z方向である。この加速度ピックアップ38は、3.5gの質量を有する。次に、シャフト4の、加速度ピックアップ38の反対側の点Phが、インパクトハンマー(図示されず)で加振される。このインパクトハンマーが有するフォースピックアップで計測された入力振動と、加速度ピックアップ38で計測された応答振動とが、アンプを介して振動数解析装置(ヒューレットパッカード社の「ダイナミックシグナルアナライザ」)に送られる。この装置で得られた伝達関数に基づいて、面外の固有振動の振動数が算出される。面外の固有振動の方向は、主としてZ方向である。この方法では、ラケット2のいかなる部分についても強固に固定されていない状態で、固有振動数が測定される。換言すれば、自由な拘束条件下での固有振動数が測定される。
【0053】
図7は、
図6の測定で得られた結果が示されたグラフである。
図7において、横軸は振動数(Hz)であり、縦軸はアクセレランスの大きさ(m/s
2/N)である。
図7において符号P1で示されているのは、一次ピークである。この一次ピークP1における振動数は、面外一次固有振動数ωo1である。
図7において符号P2で示されているのは、二次ピークである。この二次ピークP2における振動数は、面外二次固有振動数ωo2である。
【0054】
図8(a)は
図1のラケット2の片持ち剛性EI1の測定方法が示された平面図であり、
図8(b)はその正面図である。
図8(a)及び(b)における左右方向は、水平方向である。
図8(b)における上下方向は、鉛直方向である。ストリング12が張られていないラケット2が、片持ち剛性EI1の測定に供される。
【0055】
この測定方法では、グリップが第一ブロック42及び第二ブロック44によって挟まれる。第一ブロック42の形状は、直方体である。第二ブロック44の形状は、第一ブロック42の形状と同じである。第一ブロック42及び第二ブロック44のそれぞれは、その前側端がキャップ9とグリップ10との境界線と一致するように、配置されている。
【0056】
図8には、圧子46が示されている。圧子46は、X方向に延在している。圧子46は、Y方向においてフレーム6とキャップ9と間に位置している。この圧子46の、キャップ9の先端からの距離は、180mmである。
【0057】
この圧子46が、
図9に示されている。
図9(b)には、圧子46の長さ方向に垂直な断面が示されている。圧子46は、当接面48を有している。
図9(a)に示されるように、当接面48は圧子46の長さ方向に延在している。
図9(b)の断面における当接面48の形状は、円弧である。この円弧の半径R1は、5mmである。
【0058】
図8(b)では、圧子46はシャフト4の上方に位置しており、シャフト4から離間している。この圧子46が、矢印Aで示される方向に、徐々に移動する。この移動により、当接面48がシャフト4に当接する。当接後、圧子46は移動を継続する。移動により、シャフト4に曲げ荷重がかかり、シャフト4が湾曲する。当接面48がシャフト4に当接した後の圧子46の移動距離La(m)が大きくなるに従い、曲げ荷重Fa(N)が大きくなる。移動距離Laが0.5mmのときの曲げ荷重Fa1(N)と、移動距離Laが1.5mmのときの曲げ荷重Fa2(N)とが、測定される。下記の数式に基づいて、片持ち剛性EI1(N/mm)が算出される。
EI1 = (Fa2 - Fa1) / (1.5 - 0.5)
【0059】
図10(a)は
図1のラケット2の打球面剛性EI2の測定方法が示された平面図であり、
図10(b)はその正面図である。
図10(a)及び(b)における左右方向は、水平方向である。
図10(b)における上下方向は、鉛直方向である。ストリング12が張られていないラケット2が、打球面剛性EI2の測定に供される。この測定方法では、第一バー50及び第二バー52によって、フレーム6が支持される。第一バー50及び第二バー52のそれぞれは、フレーム6を下から支持する。第二バー52の形状は、第一バー50の形状と同じである。
【0060】
図11に、第一バー50が示されている。
図11(b)には、第一バー50の長さ方向に垂直な断面が示されている。第一バー50は、当接面54を有している。
図11(a)に示されるように、当接面54は第一バー50の長さ方向に延在している。
図11(b)の断面における当接面54の形状は、円弧である。この円弧の半径R2は、10mmである。
【0061】
図10に示されるように、フレーム6には、第一バー50及び第二バー52の当接面54が当接している。第一バー50及び第二バー52により、フレーム6が水平に保たれている。
図10(a)に示されるように、第一バー50は、X方向に延在している。第二バー52も、X方向に延在している。第一バー50は、トップ部24よりも後に位置している。トップ部24の先端から第一バー50までの距離は、20mmである。第二バー52は、第一バー50よりも後に位置している。この第二バー52の、第一バー50からの距離は、200mmである。
【0062】
図10には、前述の圧子46が示されている。圧子46は、X方向に延在している。圧子46は、第一バー50と第二バー52との中間に位置している。
図10(b)では、圧子46はフレーム6の上方に位置しており、フレーム6から離間している。この圧子46が、矢印Aで示される方向に、徐々に移動する。この移動により、当接面48がフレーム6に当接する。当接後、圧子46は移動を継続する。移動により、フレーム6に曲げ荷重がかかり、フレーム6が湾曲する。当接面48がフレーム6に当接した後の圧子46の移動距離Lb(m)が大きくなるに従い、曲げ荷重Fb(N)が大きくなる。移動距離Lbが1.0mmのときの曲げ荷重Fb1(N)と、移動距離Lbが3.0mmのときの曲げ荷重Fb2(N)とが、測定される。下記の数式に基づいて、打球面剛性EI2(N/mm)が算出される。
EI2 = (Fb2 - Fb1) / (3.0 -1.0)
【0063】
本発明では、下記数式(3)によって値yが算出される。
y = ( ωo1 * ωo2)1/2 (3)
前述の通り、ωo1はラケット2の固有振動における面外一次固有振動数(Hz)を表し、ωo2はラケット2の固有振動における面外二次固有振動数(Hz)を表す。
【0064】
本発明では、下記数式(4)によって値xが算出される。
x = EI1 * 7.0 + EI2 * 0.28 + 71.0 (4)
前述の通り、EI1はラケット2の片持ち剛性(N/mm)を表し、EI2はラケット2の打球面剛性(N/mm)を表す。
【0065】
図12は、バドミントンラケット2の、値xと値yとの関係が示されたグラフである。このグラフにおいて、符号Pr1は、
図1-5に示されたラケット2のポイントを表す。
【0066】
図12において符号L1で示された直線は、下記の数式で表されうる。
y = x + 5.0
このグラフにおいて直線L1よりも上側のゾーンに含まれるラケット2は、下記の数式(1)を具備する。
y ≧ x + 5.0 (1)
【0067】
本発明者が得た知見によれば、フェース32のうちのボトム26寄りの部分でシャトルが打撃されたとき、主として面外二次モードの振動が励起される。本発明者が得た知見によれば、フェース32のうちのトップ24寄りの部分でシャトルが打撃されたとき、主として面外一次モードの振動が励起される。本発明者が得た知見によれば、フェース32のうちのセンターFCでシャトルが打撃されたとき、主として面外一次モード及び面外二次モードの振動が励起される。ドライブにおける典型的な打点は、センターFCの近傍である。従って、ドライブでは、主として面外一次モード及び面外二次モードの振動が励起される。
【0068】
値xは、ラケット2の硬さと相関する指標である。値yは、ラケット2の反発性能と相関する指標である。値x及びyは、本発明者が鋭意検討の末に見出した指標である。上記数式(1)を満たすラケット2では、硬さに対して値yが相対的に大きい。前述の通り、ドライブでは、面外一次モード及び面外二次モードの振動が励起される。しかし、ドライブにおいても、打点はばらつく。本発明者が得た知見によれば、上記数式(1)を満たすラケット2によるドライブでは、打点がばらついても、シャトルの初速のバラツキは小さい。その理由は、意図された位置からずれた位置でシャトルが打撃されても、ラケット2の反発が極端には小さくないからである。シャトルの初速のバラツキが小さいので、シャトルの弾道軌跡のバラツキも小さい。このラケット2は、ドライブを多用するプレーヤーに適している。このラケット2は、ドライブを重視するプレーヤーにも適している。
【0069】
前述の通り、ドライブにおける典型的な打点は、センターFCの近傍である。センターFCの近傍でシャトルが打撃される、ドライブ以外のショットにも、上記数式(1)を満たすラケット2は適している。
【0070】
シャフト4における、プリプレグの位置、プリプレグの数、プリプレグの幅、プリプレグの長さ、繊維の角度、繊維の目付量、繊維の弾性率等の変更により、上記数式(1)が達成されうる。具体的な手段として、
(a)ストレート構造を有する繊維強化層を、チップ部18に偏在させる。
(b)チップ部18の繊維強化層の数を、大きく設定する。
(c)目付量の大きい繊維強化層を、チップ部18に偏在させる。
(d)弾性率が大きい繊維を有する繊維強化層を、チップ部18に偏在させる。
(e)バッド部14の繊維強化層の数を、小さく設定する。
(f)目付量の小さい繊維強化層を、バッド部14に偏在させる。
(g)弾性率が小さい繊維を有する繊維強化層を、バッド部14に偏在させる。
等が例示される。本実施形態では、前述の通り、第五シートS5から得られる第五繊維強化層、第九シートS9から得られる第九繊維強化層、及び第十一シートS11から得られる第十一繊維強化層により、チップ部18の高剛性が達成されている。これにより、上記数式(1)が達成されている。
【0071】
シャフト4以外の部材の仕様により、上記数式(1)が達成されてもよい。シャフト4以外の部材として、フレーム6が挙げられる。フレーム6における、プリプレグの位置、プリプレグの数、プリプレグの幅、プリプレグの長さ、繊維の角度、繊維の目付量、繊維の弾性率等の変更により、上記数式(1)が達成されうる。具体的な手段として、
(a)ストレート構造を有する繊維強化層を、フレーム6のトップ24の近傍に偏在させる。
(b)フレーム6のトップ24の近傍の繊維強化層の数を、大きく設定する。
(c)目付量の大きい繊維強化層を、フレーム6のトップ24の近傍に偏在させる。
(d)弾性率が大きい繊維を有する繊維強化層を、フレーム6のトップ24の近傍に偏在させる。
(e)フレーム6のボトム26の近傍の繊維強化層の数を、小さく設定する。
(f)目付量の小さい繊維強化層を、フレーム6のボトム26の近傍に偏在させる。
(g)弾性率が小さい繊維を有する繊維強化層を、フレーム6のボトム26の近傍に偏在させる。
等が例示される。
【0072】
図12において符号L2で示された直線は、下記の数式で表されうる。
y = x - 5.0
このグラフにおいて直線L2よりも下側のゾーンに含まれるラケット2は、下記の数式(2)を具備する。
y ≦ x - 5.0 (2)
【0073】
上記数式(2)を満たすラケット2では、硬さに対して値yが相対的に小さい。前述の通り、ドライブでは、面外一次モード及び面外二次モードの振動が励起される。しかし、ドライブにおいても、打点はばらつく。本発明者が得た知見によれば、上記数式(2)を満たすラケット2によるドライブでは、打点がばらついても、シャトルの初速のバラツキは小さい。その理由は、センターFCでシャトルが打撃されたときのラケット2の反発と、センターFCから離れた位置でシャトルが打撃されたときのラケット2の反発との差が、小さいからである。シャトルの初速のバラツキが小さいので、シャトルの弾道軌跡のバラツキも小さい。このラケット2は、ドライブを多用するプレーヤーに適している。このラケット2は、ドライブを重視するプレーヤーにも適している。
【0074】
前述の通り、ドライブにおける典型的な打点は、センターFCの近傍である。センターFCの近傍でシャトルが打撃される、ドライブ以外のショットにも、上記数式(2)を満たすラケット2は適している。
【0075】
シャフト4における、プリプレグの位置、プリプレグの数、プリプレグの幅、プリプレグの長さ、繊維の角度、繊維の目付量、繊維の弾性率等の変更により、上記数式(2)が達成されうる。具体的な手段として、
(a)ストレート構造を有する繊維強化層を、バッド部14に偏在させる。
(b)バッド部14の繊維強化層の数を、大きく設定する。
(c)目付量の大きい繊維強化層を、バッド部14に偏在させる。
(d)弾性率が大きい繊維を有する繊維強化層を、バッド部14に偏在させる。
(e)チップ部18の繊維強化層の数を、小さく設定する。
(f)目付量の小さい繊維強化層を、チップ部18に偏在させる。
(g)弾性率が小さい繊維を有する繊維強化層を、チップ部18に偏在させる。
等が例示される。
【0076】
シャフト4以外の部材の仕様により、上記数式(2)が達成されてもよい。シャフト4以外の部材として、フレーム6が挙げられる。フレーム6における、プリプレグの位置、プリプレグの数、プリプレグの幅、プリプレグの長さ、繊維の角度、繊維の目付量、繊維の弾性率等の変更により、上記数式(2)が達成されうる。具体的な手段として、
(a)ストレート構造を有する繊維強化層を、フレーム6のトップ24の近傍及びボトム26の近傍に偏在させる。
(b)フレーム6のトップ24の近傍及びボトム26の近傍の近傍の繊維強化層の数を、大きく設定する。
(c)目付量の大きい繊維強化層を、フレーム6のトップ24の近傍及びボトム26の近傍に偏在させる。
(d)弾性率が大きい繊維を有する繊維強化層を、フレーム6のトップ24の近傍及びボトム26の近傍に偏在させる。
等が例示される。
【0077】
上記数式(1)及び(2)のいずれかを満たすラケット2では、ドライブにおける弾道の安定が得られうる。ドライブにおいてシャトルが高速で飛行するとの観点から、上記数式(1)を満たすラケット2が好ましい。
【0078】
図12において符号L5で示された直線は、下記の数式で表されうる。
y = x + 11.0
このグラフにおいて直線L5よりも上側のゾーンに含まれるラケット2は、下記の数式(5)を具備する。
y ≧ x + 11.0 (5)
本発明者の得た知見によれば、この数式(5)を満たすラケット2は、ドライブに適している。このラケット2を用いてドライブを行うプレーヤーは、シャトルの意図した弾道を得やすい。このラケット2では、ドライブにおけるシャトルの弾道のばらつきが小さい。このラケット2で打撃されたシャトルは、高速で飛行する。
【0079】
図12において符号L6で示された直線は、下記の数式で表されうる。
y = x - 10.5
このグラフにおいて直線L6よりも下側のゾーンに含まれるラケット2は、下記の数式(6)を具備する。
y ≦ x - 10.5 (6)
本発明者の得た知見によれば、この数式(6)を満たすラケット2は、ドライブに適している。このラケット2を用いてドライブを行うプレーヤーは、シャトルの意図した弾道を得やすい。このラケット2では、ドライブにおけるシャトルの弾道のばらつきが小さい。
【実施例0080】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0081】
[実施例1]
図5に示されたプリプレグ構成を有するシャフトを製作した。但し、このシャフトでは第一シートS1及び第二シートS2は、用いなかった。各プリプレグは、カーボン繊維を含んでいた。第五シートS5、第九シートS9及び第十一シートS11におけるカーボン繊維の引張弾性率は、55tf/mm
2であった。残余のシートにおけるカーボン繊維の引張弾性率は、16tf/mm
2であった。このシャフトに、標準的な硬さ及び質量を有する市販のバドミントンラケットに使用されているフレーム、ネック、キャップ及びグリップを取り付けて、バドミントンラケットを製作した。このラケットの、面外一次固有振動数ωo1は70Hzであり、面外二次固有振動数ωo2は200Hzであり、片持ち剛性EI1は1.4N/mmであり、打球面剛性EI2は60.9N/mmであった。このラケットの座標は、
図12において、符号Pr2で示されている。
【0082】
[実施例2-19及び比較例1-10]
プリプレグ構成を表1-6に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-19及び比較例1-10のバドミントンラケットを得た。これらのラケットのシャフトのためのプリプレグの幅が、下記の表1-6に示されている。これらのラケットの、面外一次固有振動数ωo1、面外二次固有振動数ωo2、片持ち剛性EI1及び打球面剛性EI2が、下記の表1-6に示されている。これらのラケットの値x及びyが、
図12に示されている。
【0083】
[実験1]
柔らかいバドミントンラケットを好むプレーヤーに、下記の方法にて、安定性及び反発性を評価させた。
【0084】
[安定性]
発射マシンにて、シャトルを発射した。このシャトルに対してプレーヤーにドライブを行わせ、シャトルの弾道を撮影した。画像を解析し、ネットの上を通過するシャトルの高さを測定した。20回の測定を行い、高さの標準偏差を求めた。この標準偏差に基づき、ラケットを格付けした。格付けの基準は、以下の通りである。この結果が、下記の表1に示されている。
A:標準偏差が0.06m未満
B:標準偏差が0.06m以上0.10m未満
C:標準偏差が0.10m以上
【0085】
[反発性]
前述の安定性の評価に際し、ネットの上を通過するシャトルの速度を測定した。20回の測定を行い、速度の平均値を求めた。この平均値に基づき、ラケットを格付けした。格付けの基準は、以下の通りである。この結果が、下記の表1に示されている。
A:平均速度が70.0m/s以上
B:平均速度が69.0m/s以上70.0m/s未満
C:平均速度が69.0m/s未満
【0086】
【0087】
[実験2]
標準的な硬さのバドミントンラケットを好むプレーヤーに、実験1と同様の方法で、安定性及び反発性を評価させた。この結果が、下記の表2及び3に示されている。
【0088】
【0089】
【0090】
[実験3]
硬いバドミントンラケットを好むプレーヤーに、実験1と同様の方法で、安定性及び反発性を評価させた。この結果が、下記の表4に示されている。
【0091】
【0092】
[実験4]
極めて硬いバドミントンラケットを好むプレーヤーに、実験1と同様の方法で、安定性及び反発性を評価させた。この結果が、下記の表5及び6に示されている。
【0093】
【0094】
【0095】
表1-6から明らかな通り、各実施例のバドミントンラケットでは、ドライブにおけるシャトルの弾道が安定している。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係るバドミントンラケットは、ドライブを多用するスタイルのプレーヤーに適している。このラケットは、打点がセンター近傍である他のショットを多用するスタイルのプレーヤーにも、適している。