(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103662
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】破断判定装置、接合体の破断判定方法、プログラム、破断負荷算出装置、接合体の破断負荷算出方法及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
G06F 30/23 20200101AFI20220701BHJP
G01N 19/04 20060101ALI20220701BHJP
G01N 3/00 20060101ALI20220701BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20220701BHJP
【FI】
G06F17/50 612H
G01N19/04 B
G01N3/00 Q
G06F17/50 612C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218424
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 沛征
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正憲
(72)【発明者】
【氏名】錦織 祐介
【テーマコード(参考)】
2G061
5B046
5B146
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AA11
2G061BA04
2G061CA16
2G061CB18
2G061DA11
2G061DA12
2G061DA16
2G061EA03
2G061EC02
5B046FA06
5B046GA01
5B046HA10
5B046JA01
5B046JA04
5B046JA07
5B146DJ07
5B146DJ14
5B146EA08
(57)【要約】
【課題】接合体に対する負荷によって接合部に引張応力とせん断応力の両方が発生する条件下で、負荷の大きさと破断の発生との関係がより現実に近い高精度な破断判定装置等を提供すること。
【解決手段】破断判定装置は、第一部材10と第二部材20とが接合部30で接合された試験体1の第一部材10に対して負荷Fが与えられた場合に接合部30が破断するかを判定する装置であって、負荷Fによる曲げモーメントに基づいて第二部材20から第一部材10を引き離す方向の見かけ引張応力を算出し、負荷Fに基づいて第一部材10と第二部材20とをY方向にずらす方向のせん断応力τを算出し、接合部30の引張強度で見かけ引張応力を除算した第一評価値と、接合部30のせん断強度でせん断応力τを除算した第二評価値と、を足し合わせた総合評価値に基づいて接合部30が破断するかを判定する演算部を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面が破断するかを判定する破断判定装置であって、
前記負荷によって前記接合体に生じる曲げモーメントに基づいて前記接合面から前記第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力を算出し、
前記負荷に基づいて、前記接合面で接合された前記第一部材と前記第二部材との位置関係を前記一方向にずらす方向のせん断応力を算出し、
予め定められた前記接合面の引張強度で前記見かけ引張応力を除算した第一評価値を算出し、
予め定められた前記接合面のせん断強度で前記せん断応力を除算した第二評価値を算出し、
前記第一評価値と前記第二評価値とを足し合わせた総合評価値を算出し、前記総合評価値に基づいて前記接合面が破断するかを判定する演算部を備える、ことを特徴とする、
破断判定装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記総合評価値が1以上の場合に前記接合面が破断すると判定する、ことを特徴とする、
請求項1に記載の破断判定装置。
【請求項3】
前記見かけ引張応力は、前記接合面において中立面から前記第一部材に前記負荷が加えられる側の範囲で生じる、ことを特徴とする、
請求項1又は2に記載の破断判定装置。
【請求項4】
前記第一部材は、互いに直交する3方向の長さと厚さと奥行とで定義される直方体とみなされ、
前記接合面は、前記厚さと前記奥行とで定義される長方形であり、
前記長さは、前記接合面に対して直交する方向の長さであり、
前記厚さは、前記一方向に沿い、
前記奥行は、前記一方向に対して直交し、かつ、前記接合面に対して平行な向きであり、
前記演算部は、前記第一部材の前記接合面からの前記長さの方向の距離の位置に前記負荷が加わった際に、前記負荷と、前記距離とに基づいて、前記曲げモーメントを算出し、
前記曲げモーメントと、前記負荷によって前記接合面で生じる曲げ断面二次モーメントと、に基づいて、前記接合面で生じる曲げ応力を算出し、
前記曲げ応力と、前記奥行と、に基づいて、前記接合面において中立面から前記第一部材に前記負荷が加えられる側の範囲で生じる引張合力を算出し、
前記引張合力を、前記範囲の面積で除算して、前記見かけ引張応力を算出し、
前記負荷を、前記接合面の断面積で除算して、前記せん断応力を算出する、ことを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の破断判定装置。
【請求項5】
前記演算部は、FEM解析によって、前記見かけ引張応力を算出する、ことを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の破断判定装置。
【請求項6】
前記第一部材と前記第二部材との接合は、第一種接合、第二種接合又は第三種接合であり、
前記第一種接合は、樹脂間の機械的接合及び/又は化学的接合であり、
前記第二種接合は、樹脂と金属と間の機械的接合及び/又は化学的接合であり、
前記第三種接合は、同種金属間もしくは異種金属間の化学的接合及び/又は冶金的接合である、ことを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載の破断判定装置。
【請求項7】
第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面が破断するかを情報処理装置が判定する接合体の破断判定方法であって、
前記情報処理装置が、前記負荷によって前記接合体に生じる曲げモーメントに基づいて前記接合面から前記第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力を算出し、
前記情報処理装置が、前記負荷に基づいて、前記接合面で接合された前記第一部材と前記第二部材との位置関係を前記一方向にずらす方向のせん断応力を算出し、
前記情報処理装置が、予め定められた前記接合面の引張強度で前記見かけ引張応力を除算した第一評価値を算出し、
前記情報処理装置が、予め定められた前記接合面のせん断強度で前記せん断応力を除算した第二評価値を算出し、
前記情報処理装置が、前記第一評価値と前記第二評価値とを足し合わせた総合評価値を算出し、
前記情報処理装置が、前記総合評価値に基づいて前記接合面が破断するかを判定する、ことを特徴とする、
接合体の破断判定方法。
【請求項8】
第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面が破断するかをコンピュータに判定させるためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記負荷によって前記接合体に生じる曲げモーメントに基づいて前記接合面から前記第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力を算出する手段、
前記負荷に基づいて、前記接合面で接合された前記第一部材と前記第二部材との位置関係を前記一方向にずらす方向のせん断応力を算出する手段、
予め定められた前記接合面の引張強度で前記見かけ引張応力を除算した第一評価値を算出する手段、
予め定められた前記接合面のせん断強度で前記せん断応力を除算した第二評価値を算出する手段、
前記第一評価値と前記第二評価値とを足し合わせた総合評価値を算出し、前記総合評価値に基づいて前記接合面が破断するかを判定する手段、
として機能させるプログラム。
【請求項9】
互いに直交する3方向の長さと厚さと奥行とで定義される直方体とみなされた第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを算出する破断負荷算出装置であって、
予め定められた前記接合面の引張強度と、
予め定められた前記接合面のせん断強度と、
前記一方向に沿う前記第一部材の厚さと、
前記一方向に対して直交し、かつ、前記接合面に対して平行な向きである前記奥行と、
前記第一部材に対して前記負荷が加わる位置と前記接合面との前記接合面に対して直交する長さ方向の距離と、
に基づいて、前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを算出する演算部を備える、ことを特徴とする、
破断負荷算出装置。
【請求項10】
互いに直交する3方向の長さと厚さと奥行とで定義される直方体とみなされた第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを算出する破断負荷算出装置であって、
前記負荷によって前記接合体に生じる曲げモーメントに基づいて前記接合面から前記第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力を算出し、
前記負荷に基づいて、前記接合面で接合された前記第一部材と前記第二部材との位置関係を前記一方向にずらす方向のせん断応力を算出し、
予め定められた前記接合面の引張強度で前記見かけ引張応力を除算した第一評価値を算出し、
予め定められた前記接合面のせん断強度で前記せん断応力を除算した第二評価値を算出し、
前記第一評価値と前記第二評価値とを足し合わせた総合評価値を算出し、
前記総合評価値が1以上となる場合の前記負荷の大きさを算出する、ことを特徴とする
破断負荷算出装置。
【請求項11】
前記第一部材と前記第二部材との接合は、第一種接合、第二種接合又は第三種接合であり、
前記第一種接合は、樹脂間の機械的接合及び/又は化学的接合であり、
前記第二種接合は、樹脂と金属と間の機械的接合及び/又は化学的接合であり、
前記第三種接合は、同種金属間もしくは異種金属間の化学的接合及び/又は冶金的接合である、ことを特徴とする、
請求項9又は10に記載の破断負荷算出装置。
【請求項12】
互いに直交する3方向の長さと厚さと奥行とで定義される直方体とみなされた第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを情報処理装置が算出する接合体の破断負荷算出方法であって、
予め定められた前記接合面の引張強度と、
予め定められた前記接合面のせん断強度と、
前記一方向に沿う前記第一部材の厚さと、
前記一方向に対して直交し、かつ、前記接合面に対して平行な向きである前記奥行と、
前記第一部材に対して前記負荷が加わる位置と前記接合面との前記接合面に対して直交する長さ方向の距離と、
に基づいて、情報処理装置が、前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを算出する、ことを特徴とする、
接合体の破断負荷算出方法。
【請求項13】
互いに直交する3方向の長さと厚さと奥行とで定義される直方体とみなされた第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面を破断させる前記負荷の大きさをコンピュータに算出させるためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
予め定められた前記接合面の引張強度と、
予め定められた前記接合面のせん断強度と、
前記一方向に沿う前記第一部材の厚さと、
前記一方向に対して直交し、かつ、前記接合面に対して平行な向きである前記奥行と、
前記第一部材に対して前記負荷が加わる位置と前記接合面との前記接合面に対して直交する長さ方向の距離と、に基づいて、前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを算出する手段、
として機能させるプログラム。
【請求項14】
請求項8又は請求項13に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、破断判定装置、接合体の破断判定方法、プログラム、破断負荷算出装置、接合体の破断負荷算出方法及び記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二つの物体を接合して形成される接合体の接合界面の特性評価が行われている。例えば、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)による国際規格であるISO19095シリーズでは、樹脂と金属とを接合させた樹脂-金属接合体について、接合強度の試験方法が定められている。当該国際規格では、樹脂と金属とを突き合わされた状態で接合させた突合せ試験片に対して、試験片の両端部を両側から引っ張り、破断強度を測定することにより、引張強度の評価を行う試験方法が定められている。また、樹脂と金属とを重ね合わされた状態で接合させた重ね合わせ試験片に対して、試験片を所定の補助治具に収めた状態で、試験片の一方の部材の接合部側の端部を固定しながら、試験片の他方の部材の接合部とは反対側を引っ張り、破断強度を測定することにより、せん断強度の評価を行う試験方法が定められている。
【0003】
上述した引張強度の評価及びせん断強度の評価とは別の手法で接合体の界面強度を測定する手法も知られている。例えば、突合せの態様で接合されている試験片に含まれる一方の部材を固定治具に挟んだ状態で、他方の部材に対して、接合面と平行な向きにせん断治具を移動させることで、破断応力を測定し、その値を界面強度として採用する方法が知られている(特許文献1参照)。また、コンピュータ・シミュレーションによって接合部の破断を判定する手法が知られている(特許文献2参照)。具体的には、2つの金属板がナゲットで結合された構造をもつスポット溶接部の破断をコンピュータ・シミュレーションにより判定する手法が知られている。当該コンピュータ・シミュレーションでは、金属板を所定の厚さのシェル要素、ナゲットを所定の半径のビーム要素としてモデル化して、ナゲットと金属板の境界部からの破断を判定するにあたって、有限要素法によりナゲット中央に作用する荷重(軸力、曲げモーメント、及び剪断力)を算出している。また、軸力及び曲げモーメント力に基づいてナゲットと金属板との境界部に作用する最大剪断応力を算出するとともに、剪断力に基づいて上記境界部に作用する最大引張応力を算出している。そして、算出された最大剪断応力及び最大引張応力を、予め同定されたせん断と破断の限界応力それぞれによって除算して、各項を二乗したものを加算することで得られる値が1以上となることを示す破断判定式を用いて、スポット溶接部が破断したと判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-188452号公報
【特許文献2】特開2007-24788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、二つの部材が突き合わされた状態で接合させた接合体において、二つの部材のうち一方の物体の側面部に対して接合面と平行な向きに負荷が加わることで、接合部に曲げ応力とせん断応力との複合応力が発生する場合がある。このような負荷が加わる場合を再現するような条件下で特許文献1に基づいた試験を行うことは不可能とは言い切れないが、負荷の大きさと、試験体の具体的な形態と、のうち少なくとも一方が異なる複数の条件下で個別に試験を行う場合、実際に対応する試験体を準備したうえで実際に負荷をかける試験を行う必要があるため煩雑である。
【0006】
上述した複合応力が発生する場合には、接合部に引張応力とせん断応力の両方が発生する。そこで、一般的に強度試験に用いられる、引張強度とせん断強度とを用いて、接合面と平行な向きに負荷が加わる場合の破断評価を行う試みが行われている。しかしながら、このような試みで適切な評価を行うことは困難であった。例えば、曲げ最大引張応力とせん断応力からの合成応力と引張強度との対比による評価方法や、曲げ最大引張応力と引張強度との対比による評価方法では、破断強度の評価が過剰になる。破断強度の評価が過剰になるということは、実際に破断が生じる負荷(破断荷重)よりも明らかに小さい負荷であっても破断が生じると判定される。また、せん断応力とせん断強度との対比による評価方法では、破断強度の評価が過小となる。破断強度の評価が過小となるということは、実際に破断が生じる負荷(破断荷重)であっても破断が生じないと判定されることがある。しかも、せん断応力とせん断強度との対比による評価方法で破断が生じると判定される負荷(破断荷重)と、実際に破断が生じる負荷との間には看過しがたい程の乖離がある。
【0007】
その他、特許文献2に記載の方法では、複合荷重を受ける場合の破断の判定が行われているが、2つの金属板がナゲットで結合された構造を持つスポット溶接部に対して、ナゲット中央に作用する軸力、曲げモーメント、及び剪断力から破断を判定している。このため、特許文献2に記載の方法は、上述した接合面と平行な向きに負荷が加わる場合の破断の判定に適用可能なものではなかった。また、特許文献2に記載の方法では、引張応力を最大値となる最大引張応力で評価しており、破断判定式では、最大剪断応力及び最大引張応力をそれぞれ限界応力で除算した値を二乗してから加算している。このため、特許文献2に記載の方法では、破断強度の評価が過剰になるという問題があった。
【0008】
本開示はかかる問題にかんがみてなされたものであり、接合体に対する負荷によって接合部に引張応力とせん断応力の両方が発生する条件下で、負荷の大きさと破断の発生との関係がより現実に近い高精度な破断判定装置、接合体の破断判定方法、プログラム、破断負荷算出装置、接合体の破断負荷算出方法及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る破断判定装置は、第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面が破断するかを判定する破断判定装置であって、前記負荷によって前記接合体に生じる曲げモーメントに基づいて前記接合面から前記第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力を算出し、前記負荷に基づいて、前記接合面で接合された前記第一部材と前記第二部材との位置関係を前記一方向にずらす方向のせん断応力を算出し、予め定められた前記接合面の引張強度で前記見かけ引張応力を除算した第一評価値を算出し、予め定められた前記接合面のせん断強度で前記せん断応力を除算した第二評価値を算出し、前記第一評価値と前記第二評価値とを足し合わせた総合評価値を算出し、前記総合評価値に基づいて前記接合面が破断するかを判定する演算部を備える、ことを特徴とする。
【0010】
本開示の一態様として、前記演算部は、前記総合評価値が1以上の場合に前記接合面が破断すると判定する、ことが好ましい。
【0011】
本開示の一態様として、前記見かけ引張応力は、前記接合面において中立面から前記第一部材に前記負荷が加えられる側の範囲で生じる、ことが好ましい。
【0012】
本開示の一態様として、前記第一部材は、互いに直交する3方向の長さと厚さと奥行とで定義される直方体とみなされ、前記接合面は、前記厚さと前記奥行とで定義される長方形であり、前記長さは、前記接合面に対して直交する方向の長さであり、前記厚さは、前記一方向に沿い、前記奥行は、前記一方向に対して直交し、かつ、前記接合面に対して平行な向きであり、前記演算部は、前記第一部材の前記接合面からの前記長さの方向の距離の位置に前記負荷が加わった際に、前記負荷と、前記距離とに基づいて、前記曲げモーメントを算出し、前記曲げモーメントと、前記負荷によって前記接合面で生じる曲げ断面二次モーメントと、に基づいて、前記接合面で生じる曲げ応力を算出し、前記曲げ応力と、前記奥行と、に基づいて、前記接合面において中立面から前記第一部材に前記負荷が加えられる側の範囲で生じる引張合力を算出し、前記引張合力を、前記範囲の面積で除算して、前記見かけ引張応力を算出し、前記負荷を、前記接合面の断面積で除算して、前記せん断応力を算出する、ことが好ましい。
【0013】
本開示の一態様として、前記演算部は、FEM解析によって、前記見かけ引張応力を算出する、ことが好ましい。
【0014】
本開示の一態様として、前記第一部材と前記第二部材との接合は、第一種接合、第二種接合又は第三種接合であり、前記第一種接合は、樹脂間の機械的接合及び/又は化学的接合であり、前記第二種接合は、樹脂と金属と間の機械的接合及び/又は化学的接合であり、前記第三種接合は、同種金属間もしくは異種金属間の化学的接合及び/又は冶金的接合である、ことを特徴とする、ことが好ましい。
【0015】
本開示に係る接合体の破断判定方法は、第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面が破断するかを情報処理装置が判定する接合体の破断判定方法であって、前記情報処理装置が、前記負荷によって前記接合体に生じる曲げモーメントに基づいて前記接合面から前記第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力を算出し、前記情報処理装置が、前記負荷に基づいて、前記接合面で接合された前記第一部材と前記第二部材との位置関係を前記一方向にずらす方向のせん断応力を算出し、前記情報処理装置が、予め定められた前記接合面の引張強度で前記見かけ引張応力を除算した第一評価値を算出し、前記情報処理装置が、予め定められた前記接合面のせん断強度で前記せん断応力を除算した第二評価値を算出し、前記情報処理装置が、前記第一評価値と前記第二評価値とを足し合わせた総合評価値を算出し、前記情報処理装置が、前記総合評価値に基づいて前記接合面が破断するかを判定する、ことを特徴とする。
【0016】
本開示に係るプログラムは、第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面が破断するかをコンピュータに判定させるためのプログラムであって、前記コンピュータを、前記負荷によって前記接合体に生じる曲げモーメントに基づいて前記接合面から前記第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力を算出する手段、前記負荷に基づいて、前記接合面で接合された前記第一部材と前記第二部材との位置関係を前記一方向にずらす方向のせん断応力を算出する手段、予め定められた前記接合面の引張強度で前記見かけ引張応力を除算した第一評価値を算出する手段、予め定められた前記接合面のせん断強度で前記せん断応力を除算した第二評価値を算出する手段、前記第一評価値と前記第二評価値とを足し合わせた総合評価値を算出し、前記総合評価値に基づいて前記接合面が破断するかを判定する手段、として機能させる。
【0017】
本開示に係る破断負荷算出装置は、互いに直交する3方向の長さと厚さと奥行とで定義される直方体とみなされた第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを算出する破断負荷算出装置であって、予め定められた前記接合面の引張強度と、予め定められた前記接合面のせん断強度と、前記一方向に沿う前記第一部材の厚さと、前記一方向に対して直交し、かつ、前記接合面に対して平行な向きである前記奥行と、前記第一部材に対して前記負荷が加わる位置と前記接合面との前記接合面に対して直交する長さ方向の距離と、に基づいて、前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを算出する演算部を備える、ことを特徴とする。
【0018】
本開示に係る接合体の破断負荷算出装置は、互いに直交する3方向の長さと厚さと奥行とで定義される直方体とみなされた第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを算出する破断負荷算出装置であって、前記負荷によって前記接合体に生じる曲げモーメントに基づいて前記接合面から前記第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力を算出し、前記負荷に基づいて、前記接合面で接合された前記第一部材と前記第二部材との位置関係を前記一方向にずらす方向のせん断応力を算出し、予め定められた前記接合面の引張強度で前記見かけ引張応力を除算した第一評価値を算出し、予め定められた前記接合面のせん断強度で前記せん断応力を除算した第二評価値を算出し、前記第一評価値と前記第二評価値とを足し合わせた総合評価値を算出し、前記総合評価値が1以上となる場合の前記負荷の大きさを算出する、ことを特徴とする。
【0019】
本開示の一態様として、前記第一部材と前記第二部材との接合は、第一種接合、第二種接合又は第三種接合であり、前記第一種接合は、樹脂間の機械的接合及び/又は化学的接合であり、前記第二種接合は、樹脂と金属と間の機械的接合及び/又は化学的接合であり、前記第三種接合は、同種金属間もしくは異種金属間の化学的接合及び/又は冶金的接合である、ことを特徴とする、ことが好ましい。
【0020】
本開示に係る接合体の破断負荷算出方法は、互いに直交する3方向の長さと厚さと奥行とで定義される直方体とみなされた第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを情報処理装置が算出する接合体の破断負荷算出方法であって、予め定められた前記接合面の引張強度と、予め定められた前記接合面のせん断強度と、前記一方向に沿う前記第一部材の厚さと、前記一方向に対して直交し、かつ、前記接合面に対して平行な向きである前記奥行と、前記第一部材に対して前記負荷が加わる位置と前記接合面との前記接合面に対して直交する長さ方向の距離と、に基づいて、情報処理装置が、前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを算出する、ことを特徴とする。
【0021】
本開示に係るプログラムは、互いに直交する3方向の長さと厚さと奥行とで定義される直方体とみなされた第一部材と、前記第一部材と突き合わされた第二部材と、が接合面で接合された接合体の前記第一部材に対して前記接合面と平行な一方向に負荷が与えられた場合に前記接合面を破断させる前記負荷の大きさをコンピュータに算出させるためのプログラムであって、前記コンピュータを、予め定められた前記接合面の引張強度と、予め定められた前記接合面のせん断強度と、前記一方向に沿う前記第一部材の厚さと、前記一方向に対して直交し、かつ、前記接合面に対して平行な向きである前記奥行と、前記第一部材に対して前記負荷が加わる位置と前記接合面との前記接合面に対して直交する長さ方向の距離と、に基づいて、前記接合面を破断させる前記負荷の大きさを算出する手段、として機能させる。
【0022】
本開示に係る記録媒体は、上述したプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、接合体に対する負荷によって接合部に引張応力とせん断応力の両方が発生する条件下で、負荷の大きさと破断の発生との関係をより現実に近い高精度なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本開示の破断評価方法を適用可能な試験体の構造を示す図である。
【
図2】
図2は、試験体の破断試験の態様を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2を参照して説明した試験体の破断試験における接合部付近の各構成及び負荷に応じて生じる各種の力の算出に関する要素の一部を示す模式図である。
【
図4】
図4は、接合部に作用する曲げ応力と引張合力との対応関係を示す図である。
【
図5】
図5は、
図3で第一部材が受ける負荷と同様の負荷をFEM解析において第一部材が受けることをシミュレートするモデルを示す模式図である。
【
図6】
図6は、本開示のように曲げ応力を式(5)で求め、せん断応力を式(9)で求めた場合と、FEM解析で曲げ応力とせん断応力を求めた場合と、を比較したグラフである。
【
図7】
図7は、本開示の破断評価方法に基づいた試験体の形状決定の流れを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、
図8に示す各部分における試験条件と、試験結果と、実験結果と、の対応関係の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。また、以下で説明する実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。本明細書において、「A及び/又はB」とは、AとBのうちいずれか一方の場合と、AとBとの両方の場合とを含むことを意味する。
【0026】
図1は、本開示の破断評価方法を適用可能な試験体1の構造を示す図である。試験体1は、第1部材10と第2部材20とが接合部30で接合されている接合体である。具体的には、
図1の「側面図」で図示するように、試験体1は、板状の直方体である第一部材10と板状の直方体である第二部材20とが互いの端部同士を突き合わせた状態で当該端部同士が接合部30によって接合された接合体である。
【0027】
第一部材10は、互いに直交する3方向の長さDa(X方向)と厚さ(板厚)t1(Y方向)と奥行B1(Z方向)とで定義される直方体とみなされる。第二部材20は、互いに直交する3方向の長さCa(X方向)と厚さ(板厚)t2(Y方向)と奥行B2(Z方向)とで定義される直方体とみなされる。本例では、第一部材10と第二部材とは、第一部材10の長さDaの長辺の端部11と、第二部材20の長さCaの長辺の端部21とを突き合わせている。本例では、第一部材10の厚さt1と第二部材の厚さt2とが略等しい場合を例示して説明する。そこで、本明細書では、第一部材10の厚さt1と第二部材の厚さt2を、同じ符号tを付して称することがある。また、本例では、第一部材10の奥行B1と第二部材の奥行B2とが略等しい場合を例示して説明する。そこで、本明細書では、第一部材10の奥行B1と第二部材の奥行B2を、同じ符号Bを付して称することがある。
【0028】
第一部材10は、例えば熱可塑性樹脂からなる板状の部材である。第一部材10に採用される熱可塑性樹脂として、繰返し単位中及び/又は末端に非共有電子対を持つ元素を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。ここで、熱可塑性樹脂が有する非共有電子対を持つ元素としては、好ましくは、硫黄、酸素、及び窒素から選ばれたいずれか1種又は2種以上であるのがよい。なお、熱可塑性樹脂の繰返し単位中に含まれるこれら非共有電子対を持つ元素については、それが繰返し単位の主鎖に含まれていても、また、側鎖に含まれていてもよい。
【0029】
第一部材10に採用される繰返し単位中及び/又は末端に非共有電子対を持つ元素を有する熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えばポリフェニレンスルフィド(PPS:PolyPhenyleneSulfide)やサルフォン系樹脂等の硫黄元素を含有する樹脂、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT:PolyButyleneTerephthalate)等のポリエステル系樹脂や、液晶ポリマー、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂等の酸素原子を含有する樹脂、例えばポリアミド(PA:PolyAmide)、ABS(Acrylonitrile・Butadiene・Styrene)、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の窒素原子を含有する熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0030】
第二部材20は、例えばアルミニウムのような金属若しくはアルミニウムを主要な材料とする合金又は金属化合物からなる板状の部材である。
【0031】
接合部30は、第一部材10と第二部材20とを接合する。具体的には、接合部30は、第一部材10の一端と、第二部材20の一端と、を接合する接合面になる。第一部材10の他端側が接合部30の反対側に延出する方向と、第二部材20の他端側が接合部30の反対側に延出する方向と、は逆である。
【0032】
接合部30を形成するために採用される接合方法としては、樹脂と金属と間の機械的接合及び/又は化学的接合を利用することができる。機械的接合としては、例えば、リベット接合、ボルトナット接合、かしめ、アンカー効果による接合、等が挙げられる、化学的接合としては、例えば、ファンデルワールス力、水素結合、共有結合、イオン結合、等が挙げられる。本発明は、第一部材と第二部材との接合が、樹脂と金属との間の化学的接合からなる場合に好適に用いることができる。または、本発明は、第一部材と第二部材との接合が、樹脂と金属との間の化学的結合とアンカー効果からなる場合に好適に用いることができる。より具体的には、第一部材10と第二部材20とが重なり合う部分に接着剤を塗布して張り合わせて加圧下で接合する方法、アルミ基材を第二部材20に対応した形状でインサートし、このインサートされたアルミ基材の表面に向けて溶融した熱可塑性樹脂を第一部材10に対応させる形状で射出成形することで第一部材10と第二部材20とを形成及び接合する方法、後述するその他の方法等が挙げられる。
【0033】
その他の方法の一例として、第二部材20に対応する形状のアルミ基材の表面に酸素を含有する酸素含有皮膜を形成し、この酸素含有皮膜の上に熱可塑性樹脂で形成された第一部材10を接合するに際し、アルミ基材の表面にはレーザー処理によって酸素含有皮膜を形成し、また、熱可塑性樹脂として、繰返し単位中及び/又は末端に非共有電子対を持つ元素を有する熱可塑性樹脂を用いることにより、アルミ基材と樹脂成形体との間の射出成形又は熱圧着による接合を行う方法が挙げられる。当該方法の詳細は、特許第6004046号に記載されている。
【0034】
その他の方法の他の一例として、第二部材20である金属基材の表面に、意図的に酸素含有量を増やす処理を施すことにより酸素を含有する酸素含有皮膜を形成し、この酸素含有皮膜の上に熱可塑性樹脂組成物を第一部材10に対応する形状で形成して当該金属基材に樹脂成形体を接合するに際し、この熱可塑性樹脂組成物中に酸素含有皮膜と反応する特定の官能基を有する添加剤化合物を添加する方法が挙げられる。当該方法の詳細は、特許第6017675号に記載されている。
【0035】
その他の方法の他の一例として、第二部材20であるアルミ基材の表面に酸素を含有する酸素含有皮膜を形成し、この酸素含有皮膜の上に熱可塑性樹脂及び添加剤を含有する熱可塑性樹脂組成物を第一部材10に対応する形状で形成して当該アルミ基材に樹脂成形体を接合するに際し、この熱可塑性樹脂組成物の添加剤として炭素-酸素結合を有するカルボニル化合物を用い、また、当該酸素含有皮膜についてEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)で測定される深さ方向3μmまでの酸素量を所定の範囲内にすると共にその最表面にOH基を存在させ、これによって当該樹脂成形体に当該添加剤由来のカルボニル基(C=O)を存在させる方法が挙げられる。当該方法の詳細は、特許第6387301号に記載されている。
【0036】
以下の説明では、接合部30で接合された状態で第一部材10と第二部材20とが対向する方向をX方向とする。X方向は、第一部材10と第二部材20との接合面に対して直交する方向である。また、X方向に直交するとともに、後述する負荷Fが与えられる方向をY方向とする。Y方向は、第一部材10の板面の厚さ方向及び第二部材20の板面の厚さ方向である。また、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。Z方向は、負荷Fが与えられる方向に対して直交するとともに、接合面に対して平行な方向である。
【0037】
図1では、上述の「側面図」に加えて、「平面図」を示している。「平面図」は、Y方向に直交する平面(X-Z平面)を正面視する視点で第一部材10側から試験体1を見た図である。接合部30は、第一部材10のX方向の一端側の端部11と、第二部材20のX方向の他端側の端部21と、の間に位置する。Y方向の一端側とは、第一部材10から見た第二部材20側をさす。Y方向の他端側とは、第二部材20から見た第一部材10側をさす。
【0038】
図1では、第一部材10のX方向の長さDa、第一部材10のZ方向の奥行B、第一部材10のY方向の厚さ(板厚)t1、第二部材20のX方向の長さCa、第二部材20のZ方向の奥行B2、第二部材20のY方向の厚さ(板厚)t2、にそれぞれ符号を付している。
【0039】
一例として、Da=1.8mm、B=5mm、t1=1.05mm、Ca=3.8mm、B2=5mm、t2=1.05mm、である。また、接合部30のZ方向の奥行は、第一部材10のZ方向の奥行Bに対応する。また、接合部30のY方向の厚さは、1.05mmである。接合部30のX方向の長さ(厚さ)は0.15mmである。これら例示した寸法の数値はあくまで一例であってこれに限られるものでなく、一部又は全部について適宜変更可能である。
【0040】
図2は、試験体1の破断試験の態様を示す図である。試験体1の破断試験は、
図2に示すように、試験体1の第二部材20を固定治具40に固定した状態で第一部材10の長辺側の主面12に対して押し治具50を押し付けることで行われる。
【0041】
試験体1の破断試験は、
図2に示すように、第二部材20が両側の主面から固定治具40によって挟持されて、第一部材10が固定治具40によって挟持されずに突出するように試験体1が固定治具40にセットされる。この状態で、第一部材10の主面12に対して押し治具50が押し当てられる。押し治具50は、第一部材10のX方向の長さ及びZ方向の奥行Bをカバーするのに十分なX方向の長さ及びZ方向の奥行を有する直方体状の可動部材である。押し治具50は、板面が第二部材20と非当接の状態でY方向の一端が主面12に対して対向する。押し治具50は、Y方向に所定速度で移動し、当該一端を主面12にY方向に近接、当接させ、さらに負荷Fを加える。所定速度は、例えば10mm/分であるが、これに限られるものでなく、適宜変更可能である。負荷Fは、後述する曲げ応力σとせん断応力τとを発生させて接合部30による第一部材10と第二部材20との接合を破断させる破断させる荷重として試験体1に作用する。
【0042】
本開示の破断評価方法によれば、
図2に示す試験体1の破断試験において押し治具50から試験体1に与えられる負荷Fが接合部30による第一部材10と第二部材20との接合を破断させるかを判定できる。
【0043】
具体的には、本開示の破断評価方法では、以下の式(1)が満たされる場合、接合部30による第一部材10と第二部材20との接合が破断すると判定される。
【0044】
【0045】
言い換えると、本開示の破断評価方法以下の式(2)のように表される総合評価値Aを算出し、Aが1以上である場合に接合部30による第一部材10と第二部材20との接合が破断すると判定される。式(2)のAは、式(1)の左辺(σn/σL+τ/τL)と等価である。
【0046】
【0047】
式(1)及び式(2)におけるσLは、接合部30の引張強度σLである。式(1)及び式(2)におけるτLは、接合部30のせん断強度τLである。引張強度σL及びせん断強度τLは、接合部30の形成のために採用される第一部材10と第二部材20との接合方法の具体的な内容と、奥行Bと、厚さ(板厚)tとによって決定される。より具体的には、引張強度σL及びせん断強度τLは、実際に作製された試験体1を利用した実験によって予め求められる。樹脂と金属と間の接合による接合部30の引張強度σL及びせん断強度τLは、国際規格ISO19095に定められる接合特性評価試験方法に準じて測定することができる。樹脂間の接合による接合部30の引張強度σL及びせん断強度τL、または、同種金属間もしくは異種金属間の接合による接合部30の引張強度σL及びせん断強度τLについても、樹脂と金属と間の接合による接合部30の引張強度σL及びせん断強度τLと同様に測定することができる。このようにして予め求められ、定められた引張強度σL及びせん断強度τLが式(1)、式(2)に代入される。なお、引張強度σL及びせん断強度τLの単位はメガパスカル(MPa)である。
【0048】
式(1)及び式(2)におけるσnは、後述する見かけ引張応力σnである。式(1)及び式(2)におけるτは、後述するせん断応力τである。以下、これらに関する説明を行う。
【0049】
図3は、
図2を参照して説明した試験体1の破断試験における接合部30付近の各構成及び負荷Fに応じて生じる各種の力の算出に関する要素の一部を示す模式図である。なお、
図3において第二部材20を挟んで対向するように配置された複数の固定子60は、試験体1の破断試験において第二部材20が固定されていることを模式的に示している。
図3に示す第一部材10は、互いに直交する3方向の長さDaと厚さtと奥行Bとで定義される直方体とみなされる。
【0050】
接合部30による第一部材10と第二部材20との接合強度は、引張強度σ
Lとせん断強度τ
Lとで表せる。
図3では、第一部材10を第二部材20から引き離す方向の引張力として作用する力(曲げ応力σ)を、X方向に沿う矢印で模式的に表している。また、
図3では、第一部材10を第二部材20から引き離す方向の力(せん断応力τ)を、Y方向に沿う矢印で模式的に表している。
【0051】
図3に示すように、押し治具50によって、第一部材10の距離lの位置に集中的に負荷Fが加わる。負荷Fは、集中荷重として働く。押し治具50によって第一部材10に与えられる負荷Fは、曲げ応力σ及びせん断応力τとして試験体1に作用する。まず、曲げ応力σに関する事項について説明する。
【0052】
押し治具50が第1部材10に与える負荷Fによって生じる曲げモーメントMは、負荷Fの大きさと、距離lとによって決定される。具体的には、曲げモーメントMは、以下の式(3)のように表せる。なお、式(3)を含む各式におけるFの単位は、ニュートン(N)である。
【0053】
【0054】
式(3)におけるlに対応する距離lは、
図3に示すように、試験体1のうち固定された第2部材部分と第1部材との接合面の中間位置からの、接合面に対して直交する長さX方向の距離である。距離lは、第一部材10の長さDaの2分の1に相当する。なお、式(3)におけるlの単位は、ミリメートル(mm)である。
【0055】
接合部30を第二部材20と第一部材10との接合部の断面としてとらえた場合の曲げ断面二次モーメントIは、以下の式(4)のように表せる。なお、式(4)等の数式に含まれるBは、
図1を参照して説明した第一部材10のZ方向の奥行Bの大きさ(単位:mm)である。また、式(4)等の式に含まれるtは、
図1を参照して説明した第一部材10のY方向の厚さtの大きさ(単位:mm)である。
【0056】
【0057】
負荷Fによって生じる曲げ応力σは、曲げモーメントMと曲げ断面二次モーメントIとによって以下の式(5)のように表せる。
【0058】
【0059】
ここで、式(5)におけるyについて、
図4を参照して説明する。
【0060】
図4は、接合部30に作用する曲げ応力σと引張合力F
xとの対応関係を示す図である。負荷Fによって第二部材20から第一部材10を引き離すように接合部30に作用する曲げ応力σは、接合面において中立面CLから第一部材10に負荷Fが加えられる側の範囲で生じる。なお、本例では、第一部材10が直方体であるため、中立面CLは、負荷Fが加わるY方向と直交するとともに、接合面と垂直に交わる面であり、接合面のY方向で中央の位置を通過して、接合面を二等分する面に相当する。また、曲げ応力σは、中立面CLに対するY方向の距離yが大きいほど大きくなる。式(5)のyは、
図4に示すように、中立面CLに対するY方向の大きさ(単位:mm)である。
【0061】
なお、中立面CLを挟んで負荷Fが加わる側との反対側では、負荷Fは、第一部材10を第二部材20側に押し付ける圧縮応力として働く。当該圧縮応力の大きさは、中立面CLを挟んで対向する位置の曲げ応力σと等しくなる。
【0062】
曲げ応力σのような「応力」は、演算における単位面積あたりの力であり、断面積を掛けると、力となる。この力をY方向に沿って合成したら、実際の部材には「合力」として作用する。従って、負荷Fによって第二部材20から第一部材10を引き離すように作用する力は、Y方向に応じた各位置での曲げ応力σからの引張合力Fxになる。引張合力Fxは、以下の式(6)のように表せる。なお、式(6)のdyにおけるdは、yの微分の記号を表す。また、接合面において、中立面CLを挟んで負荷Fが加わる側との反対側で作用する圧縮合力の大きさは、中立面CLを挟んで対向する位置の引張合力Fxと等しくなる。上述の通り、引張応力として作用する曲げ応力σは、中立面CLから負荷Fが加えられる側の範囲(図中上側半分)で生じるため、式(6)では0から厚さtの半分となるt/2の範囲の積分となる。
【0063】
【0064】
上述の式(5)で表されるσの右辺を式(6)のσに代入することで、以下の式(7)が導出される。なお、引張合力Fxの単位はメガパスカル(MPa)である。
【0065】
【0066】
式(7)のように表される引張合力F
xを、接合部30の断面積のうち中立面CLから負荷Fが加わる側の部分の面積で除算した値を見かけ引張応力σ
nと定義する。接合部30の断面積のうち中立面CLから負荷Fが加えられる側の上端部までの部分の面積は、
図3の接合部30のY-Z平面の面積(B×t=Bt)の半分(1/2=0.5)である。従って、見かけ引張応力σ
nは、以下の式(8)のように表せる。なお、見かけ引張応力σ
nの単位はメガパスカル(MPa)である。
【0067】
【0068】
次に、せん断応力τに関する事項について説明する。せん断応力τのようなせん断応力は、接合部30で接合された第一部材10と第二部材20とをせん断させるせん断方向の負荷として試験体1に働く負荷Fを、接合部30の断面積で除すことで算出できる。従って、せん断応力τは、以下の式(9)で表せる。なお、せん断応力τの単位はメガパスカル(MPa)である。
【0069】
【0070】
上述の式(1)に、式(8)の右辺と式(9)の右辺とを代入することで、以下の式(10)が導出される。従って、式(1)と式(2)と式(10)との関係から、A=(3Fl/Bt2σL+F/BtτL)と表せる。
【0071】
【0072】
上述の式(10)から、下記の式(11)が導出される。すなわち、式(11)の右辺以上の負荷Fが与えられた場合、接合部30で接合された第一部材10と第二部材20とは負荷Fによって破断するという判定結果になる。
【0073】
【0074】
ここで式(1)、式(10)、式(11)との関係について説明する。式(1)、式(10)では、左辺の第一項が、接合面の引張強度σLで見かけ引張応力σnを除算した第一評価値(σn/σL)を表している。また、式(1)、式(10)では、左辺の第二項が、接合面のせん断強度τLでせん断応力τを除算した第二評価値(τ/τL)を表している。そして、左辺の第一評価値と第二評価値とを加算することで、総合評価値A(式(2))が得られる。式(1)、式(10)から、総合評価値Aが1以上である場合に、負荷Fが、接合部30に破断を生じさせうる破断荷重であると判定することができる。一方、総合評価値Aが1以上となる場合の式(1)、式(10)を変形することで、式(11)が得られる。式(11)から、総合評価値Aが1以上となる場合の負荷F、すなわち、接合部30に破断を生じさせうる破断荷重となる負荷Fを算出することができる。
【0075】
なお、式(11)を満たす負荷Fを算出することは、負荷Fによって接合体に生じる曲げモーメントMに基づいて試験体1における第一部材10と第二部材20との接合面から第一部材10を引き離す方向(X方向)の引張応力として働く見かけ引張応力σnを算出し、負荷Fに基づいて、当該接合面で接合された第一部材10と第二部材20との位置関係をY方向にずらす方向のせん断応力τを算出し、予め定められた当該接合面の引張強度σLで当該見かけ引張応力σnを除算した第一評価値(σn/σL)を算出し、予め定められた当該接合面のせん断強度τLで当該せん断応力τを除算した第二評価値(τ/τL)を算出し、当該第一評価値と当該第二評価値とを足し合わせた総合評価値Aを算出し、当該総合評価値Aが1以上となる場合の当該負荷Fの大きさを算出することと同義である。従って、式(11)による演算に代えて、総合評価値Aが1以上となる場合の当該負荷Fの大きさを算出するようにしてもよい。
【0076】
このとき、式(1)~式(10)を参照して接合面が破断するかについての判定を説明した場合と同様に、第一部材10を互いに直交する3方向の長さDaと厚さtと奥行Bとで定義される直方体とみなして、距離lの位置に負荷Fが加わる際の見かけ引張応力σnとせん断応力τを算出して、破断荷重となる負荷Fを算出することができる。まず、第一部材10の接合面からの長さDaの方向の距離lの位置に負荷Fが加わった際に、負荷Fを変数とした曲げモーメントMを算出し、曲げモーメントMと、負荷Fによって接合面で生じる曲げ断面二次モーメントIと、に基づいて、接合面で生じる曲げ応力σを算出する。続いて、曲げ応力σと、奥行Bと、に基づいて、接合面において中立面から第一部材10に負荷Fが加えられる側の範囲で生じる引張合力Fxを算出する。さらに、引張合力Fxを、接合面において中立面から第一部材10に負荷Fが加えられる側の範囲の面積で除算して、見かけ引張応力σnを算出する。また、負荷Fを変数として、当該接合面の断面積で除算して、せん断応力τを算出する。このようにして求められ、変数としての負荷Fを含む見かけ引張応力σnとせん断応力τから、第一評価値(σn/σL)と第二評価値(τ/τL)とを足し合わせた総合評価値Aを算出する。そして、総合評価値Aが1以上となる場合の負荷Fの値を求めることで、破断荷重となる負荷Fを算出することができる。
【0077】
又は、有限要素法(FEM:Finite Element Method)解析によって、負荷Fが加えられる部材の接合面において、接合面全体の断面積をS1(単位:mm2)、中立面から当該部材に負荷Fが加えられる側の端部までの部分の断面積を面積S2(単位:mm2)として、接合面から距離lの位置に負荷Fが加わった際に、変数としての負荷Fを含む見かけ引張応力σn及びせん断応力τを算出して、破断荷重となる負荷Fを算出することができる。例としては、まず、FEM解析によって、接合面において中立面から当該部材の負荷Fが加えられる側の範囲で生じる引張合力Fxを算出する。この場合、FEM解析によって求められる引張合力Fxは、以下の式(12)のように表せる。なお、式(12)における係数Kは、引張合力と負荷による曲げモーメントの関係係数(単位:mm-1)を表す。
【0078】
Fx=KFl・・・(12)
【0079】
さらに、式(12)のように表される引張合力Fxを、負荷Fが加えられる部材の接合面において、中立面から当該部材に負荷Fが加えられる側の端部までの部分の断面積を表す面積S2で除算して、FEM解析による見かけ引張応力σnを算出する。この場合の見かけ引張応力σnは、以下の式(13)のように表せる。
【0080】
σn=(KFl)/S2・・・(13)
【0081】
また、負荷Fを変数として、当該接合面の全体の面積S1で除算して、せん断応力τを算出することができる。この場合の見かけせん断応力τは、以下の式(14)のように表せる。
【0082】
τ=F/S1・・・(14)
【0083】
以上説明したように、FEM解析によって算出され、変数としての負荷Fを含む見かけ引張応力σnと、理論計算によって算出され、変数としての負荷Fを含むせん断応力τとから、第一評価値(σn/σL)と第二評価値(τ/τL)とを足し合わせた総合評価値Aを算出することができる。そして、総合評価値Aが1以上となる場合の負荷Fの値を求めることで、破断荷重となる負荷Fを算出することができる。なお、上述した例では、FEM解析によって見かけ引張応力σnを算出して、式(14)を参照して説明したように、理論計算によってせん断応力τを算出する場合を例に挙げて説明したが、FEM解析によってせん断応力τを算出してもよい。すなわち、FEM解析によって見かけ引張応力σnとせん断応力τとの両方を算出してもよい。
【0084】
次に、本開示のように、式(5)、式(6)、式(7)、式(8)で、曲げ応力σ、引張合力F
x、及び見かけ引張応力σ
nを求めるとともに、式(9)でせん断応力τ求めた場合と、他の方法に基づいて曲げ応力σ、引張合力F
x、及び見かけ引張応力σ
nとせん断応力τを求めた場合と、の比較について、
図5及び
図6を参照して説明する。ここでは、他の方法として、FEM解析による方法を挙げる。FEM解析によって、曲げ応力σ、引張合力F
x、及び見かけ引張応力σ
n、並びにせん断応力τを求めることができる。なお、FEM解析によって曲げ応力σを算出することができ、FEM解析によって算出された曲げ応力σを用いて、引張合力F
xを算出することができ、さらに見かけ引張応力σ
nを算出することができる。このように、引張合力F
x及び見かけ引張応力σ
nを、FEM解析によって直接に算出せずに、FEM解析によって算出された曲げ応力σを用いて算出する場合についても、FEM解析によって引張合力F
x又は見かけ引張応力σ
nを算出する場合に含めるものとする。
【0085】
今回の検討は、第2部材が第1部材と突合せ接着接合し、第2部材が固定された状態で、第1部材が板厚方向の負荷を受けた場合の破断検討である。FEM解析では
図5に示すように第1部材の端部が固定された状態で、Y方向の荷重を与えて、第1部材の端部に発生する曲げ応力とせん断応力を求める。このような状態で、第1部材の端部に発生した曲げ応力とせん断応力は、第2部材と第1部材の接合部30に発生する曲げ応力とせん断応力に相当する。
【0086】
図5は、
図3で第一部材10が受ける負荷と同様の負荷をFEM解析において第一部材120が受けることをシミュレートするモデルを示す模式図である。
図5に示す第一部材120は、上述の第一部材10と同様、X方向の長さDaとY方向の厚さtとを有する。また、
図5では図示しないが、第一部材120のZ方向の奥行は、第一部材10と同様、奥行Bである。
【0087】
FEM解析では、接合部30によって第二部材20と接合されている第一部材10の接合面に対応する第一部材120の面部122が固定されているものとしてシミュレートされる。
図5では、面部122が固定されていることを示すことを目的として、複数の固定子60を示している。第一部材120は、主面121に対して、面部122から距離lの位置でY方向に集中的に負荷Fが加わるものとしてシミュレートされる。後述する
図6が得られる場合の負荷F、幅t、奥行Bならびに長さDa及び距離lは、F=90N、t=1.05mm、B=5mm、Dc=1.8mm、l=0,9mmである。
【0088】
図6は、本開示のように曲げ応力σを式(5)で求め、せん断応力τを式(9)で求めた場合と、FEM解析で曲げ応力σとせん断応力τを求めた場合と、を比較したグラフである。グラフGaは、FEM解析で求められた曲げ応力σを示す。グラフGbは、FEM解析で求められたせん断応力τを示す。グラフGcは、式(5)で求められた曲げ応力σを示す。グラフGdは、式(9)で求められたせん断応力τを示す。ここでは、負荷F=90N、厚さt=1.05mm、第一部材の長さ=1.8mm、距離l=0.9mm、奥行B=5mmを用いて、曲げ応力σとせん断応力τを算出した。
【0089】
なお、式(5)の説明で上述したように、曲げ応力σの算出ではY方向が参照される。
図6に示すFEM解析との比較では、Y方向の大きさについて、中立面CLから負荷Fが加わる側を正(+)の値とし、中立面CLから負荷Fが加わる反対側を負(-)の値として式(5)に代入して各位置での曲げ応力σを算出している。また、FEM解析では、
図5に示す中立面CLから負荷Fが加わる側を正(+)の値とし、当該中立面CLから負荷Fが加わる反対側を負(-)の値として各位置での曲げ応力σを算出している。
【0090】
図6に示すように、FEM解析で求められた曲げ応力σと、式(5)で求められた曲げ応力σと、は概ね一致している。また、FEM解析で求められたせん断応力τと、式(5)で求められたせん断応力τと、は概ね一致している。ゆえに、FEM解析で求められた引張合力F
x及び見かけ引張応力σ
nと、式(6)、式(7)、式(8)で求められた引張合力F
x及び見かけ引張応力σ
nも概ね一致する。このように、本開示によれば、FEM解析と概ね一致する曲げ応力σ及びせん断応力τを導出できる。従って、このような曲げ応力σ及びせん断応力τに基づいた演算結果は、FEM解析に近い高精度を実現できる。
【0091】
なお、FEM解析は、物理演算のシミュレーションとして極めて高い精度を実現できる可能性を有するが、多大な負荷を生じる。すなわち、FEM解析で高精度を実現するためには、現実の状況を再現できるだけの多大なパラメータの設定と、このような多大なパラメータを正確に処理するためのソフトウェア・プログラムにおける実装とが必要になる。これに対し、上述の式(1)から式(11)に基づいて破断の判定と破断負荷の算出を行うことで、より低負荷ながらFEM解析に近い高精度を実現できる。一方、負荷が加えられる部材の形状が長方形よりも複雑な形状で、上述の式(1)から式(11)に基づいて破断の判定を行うのが困難となるような場合であっても、FEM解析を用いることで、破断の判定と破断負荷の算出を行うことができる。なお、負荷が加えられる部材の形状が長方形よりも複雑な形状であっても、せん断応力τは、式(14)を参照して説明した理論計算によって算出することができる。このため、FEM解析を利用する場合には、FEM解析によって見かけ引張応力σn及びせん断応力τを算出するようにしてもよく、または、FEM解析によって見かけ引張応力σnを算出するとともに、式(14)を参照して説明した理論計算によってせん断応力τ算出するようにしてもよい。すなわち、FEM解析によって、少なくとも見かけ引張応力σnを算出すればよい。
【0092】
図7は、本開示の破断評価方法に基づいた試験体1の形状決定の流れを示すフローチャートである。まず、試験体1の形状と材質が決定される(ステップS1)。具体例を挙げると、
図1を参照して説明した試験体1の長さCa、奥行B2、厚さt2、長さDa、奥行B、厚さt1が決定される。また、ステップS1の処理は、後述する
図8で例示する試験体70の諸元を決定する処理であってもよい。また、ステップS1の処理によって、接合部30の具体的諸元が決定される。すなわち、ステップS1の処理によって、第一部材10と第二部材20のそれぞれの材質に応じて引張強度σ
L及びせん断強度τ
Lが決定される。引張強度σ
L及びせん断強度τ
Lは、破断評価の対象となる第一部材10及び第二部材20に応じて、ステップ3に先んじて都度測定を行うことで取得してもよく、予め測定されて後述する記録部110に保存された数値を、記録部110から読み出すことで取得してもよい。
【0093】
次に、負荷荷重の決定が行われる(ステップS2)。ステップS2の処理では、上述の負荷Fの大きさが決定される。なお、距離lは可変としてもよく、ステップS2の処理でさらに距離lを決定するようにしてもよい。負荷F及び距離lの少なくとも一方は固定値であってもよい。
【0094】
次に、式(2)の総合評価値Aの算出が行われる(ステップS3)。具体的には、後述する情報処理装置100による情報処理のための演算が行われ、総合評価値Aが算出される。
【0095】
ステップS3の処理で算出された総合評価値Aが1以上である場合(ステップS4;Yes)、ステップS1で形状が決定された試験体1は、ステップS2で決定された負荷荷重で破断すると判定されていることになる。そこで、より破断しにくい試験体1を得るための試験体1の形状の変更が行われる(ステップS5)。ステップS5の処理はヒトの作業による。ステップS5の処理後、ステップS1の処理に戻る。
【0096】
ステップS3の処理で算出された総合評価値Aが1未満である場合(ステップS4;No)、ステップS1で形状が決定された試験体1は、ステップS2で決定された負荷荷重で破断しないと判定されていることになる。従って、当該試験体1は、当該負荷荷重に耐えるものとして採用され得るものであるとみなされ、処理が終了する。
【0097】
以下、
図1を参照して説明した試験体1とは異なる全体構造を有する試験体70について、
図8を参照して説明する。
【0098】
図8は、試験体70の構造を示す図である。
図9は、
図8に示すK-K断面の模式図である。試験体70は、第一部材15と、第二部材25と、を備える。第二部材25は、有底の四角筒状の部材である。第二部材25は、略長方形状の底壁と、底壁の四方から上方に向けて垂直に立ち上がる側壁とを有している。四方の側壁それぞれにおいて、開放端側の中央位置を挟んだ二箇所に高さ方向の切れ込みSLが入っており、開放端側の中央位置に櫛歯状の突出部が形成されている。第一部材15は、板状の部材であり、第二部材25の側壁の開放端側の一周を覆うように設けられている。ただし、第一部材15は、第二部材25の側壁において切れ込みSLの入った部分には設けられておらず、第二部材25の側壁の開放端側の側端面の形状に沿った不連続な長方形の枠形状となっている。第一部材15の端部と、第二部材25の側壁の開放端側の端部とが突き合わされて、接着接合部を介して接合している。第二部材25は、アルミニウム合金(A5052)からなる。第一部材15は、例えば熱可塑性樹脂(芳香族ナイロン)からなる板状の部材である。第一部材と第二部材との接合は、第二部材25の表面にレーザー処理によって酸素含有皮膜を形成し、この酸素含有皮膜の上に射出成形によって第一部材15を形成することで接合させている。
【0099】
より具体的には、
図8に示す第二部材25は、空洞部を有する有底筒状の部材である。第二部材25の筒の延出方向に直交する平面での第二部材25を切断した場合の断面形状は、矩形の四頂点が丸みを帯びた形状である。第一部材15は、第二部材25の筒の延出方向の一端に接合されている。第一部材15の形状は、第二部材25の断面形状に対応しており、矩形の四頂点が丸みを帯びた形状である。また、第一部材15及び第一部材15が接合されている第二部材25の一端側には、当該矩形の四辺の各々にそれぞれ2つの切れ込みSLが設けられている。切れ込みSLは、第二部材25の筒の延出方向に沿って、第一部材15から第二部材25へ連続するように直線状に刻まれている。切れ込みSLによって、第二部材25の筒の内外の空間は連続する。当該矩形の各辺が有する2つの切れ込みSLは平行であり、当該2つの切れ込みSLの間で切り出されるように一端側に延出する第二部材25の一部分と、その先端の第一部材15の一部分と、当該第二部材25の一部分と当該第一部材15の一部分とを接合する接合部とをK-K断面で見た場合、
図9に示すように、
図1を参照して説明した第一部材10と第二部材20と接合部30とを含む構造と実質的に同様のものとみなすことができる。すなわち、当該第一部材15が第一部材10に対応し、当該第二部材25の一部分が第二部材20に対応し、当該第二部材25の一部分と当該第一部材15の一部分とを接合する接合部が接合部30に対応する。
【0100】
上述したようにして、第一部材15の端部と、第二部材25の櫛歯状の突出部の端部とが突き合わされて接合することで、試験体70は、2つの切れ込みSL間の部分Pe,Pb,Pc,Pdに、それぞれ
図9を参照して説明した構造を含む。従って、部分Pe,Pb,Pc,Pd内では、
図3を参照して説明した本開示による破断評価方法を適用できる。具体的には、
図9に示すように、第一部材10に相当する第一部材15の一部分の一面側(板面11)から負荷Fを与えることで、本開示による破断評価方法を適用できる。部分Pe,Pb,Pc,Pd内において、第二部材25の櫛歯状の突出部の端部と接合したそれぞれの第一部材15に対して、試験体70の外側面からそれぞれ負荷を加えることで破断評価試験を行った。
【0101】
図10は、
図8に示す部分Pe,Pb,Pc,Pdの各々における試験条件と、試験結果と、実験結果と、の対応関係の一例を示す表である。ここでいう試験結果とは、本開示の破断評価方法による試験体70の破断の判定結果及び当該判定結果を得るために算出されたσ
n/σ
L、τ/τ
L及び総合評価値Aを含む。より具体的には、試験結果は、上述の式(1)から式(11)に基づいて見かけ引張応力σ
n及びせん断応力τを算出し、算出された見かけ引張応力σ
n及びせん断応力τと予め設定された引張強度σ
L及びせん断強度τ
Lとからσ
n/σ
L及びτ/τ
Lを算出し、算出されたσ
n/σ
L及びτ/τ
Lを式(2)に代入して総合評価値Aを算出し、A≧1であるかに基づいて破断の有無を判定した結果である。また、実験結果とは、実物の試験体70に対して実際に
図2に示す条件で負荷Fに対応する負荷を与えた結果、実際に破断したかを確認した結果である。
【0102】
図10の実施例1,2は部分Peにおける試験条件と、試験結果と、実験結果と、の対応関係を示すレコードである。
図10の実施例3,4は部分Pbにおける試験条件と、試験結果と、実験結果と、の対応関係を示すレコードである。
図10の実施例5,6は部分Pcにおける試験条件と、試験結果と、実験結果と、の対応関係を示すレコードである。
図10の実施例7,8は部分Pdにおける試験条件と、試験結果と、実験結果と、の対応関係を示すレコードである。実施例1から実施例8までの全ての実施例において、t=1.05mm、l=0.9mmである。また、実施例1,2,5~8において、B=5.0mmであり、実施例3,4において、B=5.5mmである。また、全ての実施例において、σ
L=59MPa、τ
L=50MPaである。実施例1及び実施例5では、F=80Nである。実施例2、実施例3及び実施例6では、F=90Nである。実施例4では、F=100Nである。実施例7では、F=75Nである。実施例8では、F=85Nである。これらの数値で定められる条件下で、上述の式(1)から式(11)を利用して試験結果が導出されている。また、同様の条件下で実物を作製したうえで実験結果が取得されている。
【0103】
試験結果では、特に、式(8)に基づいてσnが算出できるので、このようにして算出されたσnを予め定められたσLで除算することでσn/σLを得た。σn/σLは、第一評価値に対応する。
【0104】
また、試験結果では、特に、式(9)に基づいてτが算出できるので、このようにして算出されたτを予め定められたτLで除算することでτ/τLを得た。τ/τLは、第二評価値に対応する。
【0105】
そして、試験結果では、上述の第一評価値(σn/σL)と第二評価値(τ/τL)とを足し合わせることで、式(2)に示すように、総合評価値Aを得た。
【0106】
図10に示すように、総合評価値Aが1以上の場合、破断判定に「破断」と記載されている。また、総合評価値Aが1未満の場合、破断判定に「未破断」と記載されている。「破断」は、第一部材10と第二部材20との接合が破断すると判定されたことを示す。「未破断」は、第一部材10と第二部材20との接合が破断しないと判定されたことを示す。
図10に示す各実施例において、試験結果の「破断」又は「未破断」と、実験結果の「破断」又は「未破断」とが一致した。このように、本開示の破断評価方法によれば、負荷の大きさと破断の発生との関係がより現実に近い高精度な判定を行える。
【0107】
次に、上述の破断評価方法に基づいた試験体1の接合部30の破断判定及び接合部30を破断させる負荷Fの算出を行える装置について、
図11を参照して説明する。
【0108】
図11は、情報処理装置100の構成例を示す図である。情報処理装置100は、いわゆる情報処理装置(コンピュータ)である。情報処理装置100は、記憶部110、入力部130、出力部140、演算部150等を備える。
【0109】
記憶部110は、主記憶装置及び補助記憶装置を有し、演算部150により読み出されるソフトウェア・プログラム及びソフトウェア・プログラムの実行処理で参照されるデータを記憶する。以下、プログラムと記載した場合、記憶部110が記憶するソフトウェア・プログラム及びソフトウェア・プログラムの実行処理で参照されるデータをさす。主記憶装置の具体的構成例として、RAM(Random Access Memory)として機能する半導体メモリが挙げられる。補助記憶装置の具体的構成例として、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、ROM(Read Only Memory)等が挙げられるが、これらに限られるものでなく、他の記憶装置であってもよい。
【0110】
記憶部110は、上述のプログラムとして、例えば、破断判定プログラム111、負荷算出プログラム112、FEM解析プログラム113を記憶する。また、記憶部110は、予め測定された引張強度σL及びせん断強度τLを記憶しておいてもよい。そして、破断判定プログラム111及び負荷算出プログラム112は、記憶部110に記憶されている引張強度σL及びせん断強度τLを読み出すことで、入力を受け付けるようにしてもよい。
【0111】
破断判定プログラム111は、少なくとも上述の奥行B(B1,B2)、厚さt(t1,t2)、距離l、引張強度σ
L、せん断強度τ
L、負荷Fを含む第1入力事項を入力として受け付け、上述の式(1)から式(11)に基づき、当該第1入力事項を満たす条件下で試験体1に負荷Fを与える試験(
図2、
図3参照)を行った場合における接合部30の破断の有無を示す判定結果を示す情報を出力する機能を実現するためのプログラムである。
【0112】
負荷算出プログラム112は、少なくとも上述の奥行B(B1,B2)、厚さt(t1,t2)、距離l、引張強度σ
L、せん断強度τ
Lを含む第2入力事項を入力として受け付け、上述の式(1)から式(11)、特に、式(11)に基づき、当該第2入力事項を満たす条件下の試験(
図2、
図3参照)で試験体1を破断させる負荷Fを算出して当該負荷Fを示す情報を出力する機能を実現するためのプログラムである。
【0113】
なお、第1入力事項と第2入力事項のうち少なくとも一方は、上述の長さCa、奥行B2、厚さt2、長さDa、厚さt1もさらに含んでいてもよい。特に、長さDaは、距離lが長さDa未満であることを確認するために入力必須としてもよい。また、距離lの入力を以て、長さDaが距離lを超えるものとみなすようにしてもよい。
【0114】
FEM解析プログラム113は、FEM解析に必要な各種のパラメータを入力として受け付け、FEM解析によって曲げ応力σ、引張合力Fx、見かけ引張応力σn、せん断応力τ等を算出するためのプログラムである。当該各種のパラメータは、少なくとも、上述の奥行B、厚さt、距離l、引張強度σL、せん断強度τL、負荷Fを含む。
【0115】
また、破断判定プログラム111は、引張強度σ
L及びせん断強度τ
Lと、FEM解析プログラム113によって算出された見かけ引張応力σ
n及びせん断応力τとを入力として受け付け、式(2)に基づき、総合評価値Aの値を算出してもよい。そして、破断判定プログラム111は、算出された総合評価値Aの値に基づいて、式(1)に基づき、入力された各種のパラメータを満たす条件下で試験体1に負荷Fを与える試験(
図2、
図3参照)を行った場合における接合部30の破断の有無を示す判定結果を示す情報を出力する機能を実現してもよい。
【0116】
また、負荷算出プログラム112は、さらに、当該各種のパラメータのうち負荷Fを除いたパラメータに基づいて、総合評価値Aが1以上になる場合の負荷Fを算出して当該負荷Fを示す情報を出力する機能を実現するものであってもよい。
【0117】
破断判定プログラム111、負荷算出プログラム112、FEM解析プログラム113の各々によって実現される各機能のうち二つ以上は、統合された一つのアプリケーションプログラムに含まれる一機能であってもよい。
【0118】
なお、記憶部110は、破断判定プログラム111、負荷算出プログラム112、FEM解析プログラム113のうち少なくとも一つ以上又は上述のアプリケーションプログラムが記録された記憶媒体を読み込む読込装置を含んでいてもよい。その場合、当該記録媒体に記録されたプログラムが演算部150によって読み出されることに対応して当該記録媒体を読込可能な読込装置が動作する。当該記録媒体の一例として、光ディスク、光磁気ディスク、外付けHDD、情報処理装置100に対して着脱可能なフラッシュメモリその他の情報処理装置100から独立した可搬の媒体が挙げられるが、当該記録媒体の具体的な形態はこれに限られるものでない。当該記録媒体の形態は、現在及び将来においてコンピュータが具備可能な読取装置で読み取ることができるあらゆる記録媒体のいずれかの形態であってよい。
【0119】
入力部130は、キーボード、マウス、マイクその他の入力装置を1つ以上含み、情報処理装置100を操作するユーザからの入力を受け付ける。出力部140は、液晶ディスプレイ等の表示装置、スピーカ等の音声出力装置のうち少なくとも1つを含み、情報処理装置100の処理内容に応じた出力を行う。
【0120】
演算部150は、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置を有し、記憶部110から処理内容に応じたソフトウェア・プログラム及びデータを読み出して実行処理することで、情報処理装置100が実現する各種の機能に対応する演算処理を行う。具体例を挙げると、演算部150は、破断判定プログラム111を読み出して実行処理する。また、演算部150は、負荷算出プログラム112を読み出して実行処理する。また、演算部150は、FEM解析プログラム113を読み出して実行処理する。
【0121】
次に、演算部150が破断判定プログラム111を読み出して実行処理する場合の動作例について説明する。当該動作例では、試験体1の破断の有無が判定される。演算部150は、情報処理装置100のユーザが入力部130を介して上述の第1入力事項を入力するまで待機する。演算部150は、当該入力を促すメッセージ等を出力部140に表示させるようにしてもよい。この場合、当該メッセージ等を表示させる機能が破断判定プログラム111に盛り込まれる。
【0122】
上述の第1入力事項が入力されると、演算部150は、例えば、上述の式(3)に基づき、曲げモーメントMを算出する。次に、演算部150は、上述の式(4)に従い、曲げ断面二次モーメントIを算出する。次に、演算部150は、上述の式(5)に従い、曲げ応力σを算出する。次に、演算部150は、上述の式(6)、式(7)に従い、引張合力Fxを算出する。次に、演算部150は、上述の式(8)に従い、見かけ引張応力σnを算出する。また、演算部150は、上述の式(9)に従い、せん断応力τを算出する。なお、演算部150は、見かけ引張応力σnの算出ならびに見かけ引張応力σnの算出のための曲げモーメントM、曲げ断面二次モーメントI、曲げ応力σ及び引張合力Fxの算出と、せん断応力τの算出と、を並行して行ってもよいし、せん断応力τの算出を見かけ引張応力σnの算出の後又は見かけ引張応力σnの算出の前に行ってもよい。見かけ引張応力σn及びせん断応力τの算出後、演算部150は、式(2)に基づき総合評価値Aを算出し、式(1)を満たすか、すなわち、Aが1以上であるかに基づいて、第1入力事項を満たす条件下で特定された試験体1の接合部30が破断するか判定する。Aが1以上である場合、演算部150は、試験体1の接合部30が破断すると判定する。Aが1未満である場合、演算部150は、試験体1の接合部30が破断しないと判定する。演算部150は、試験体1の接合部30が破断するかの判定結果を示す情報を出力部140に出力させる。
【0123】
なお、破断判定プログラム111は、総合評価値Aを算出せず、上述の第1入力事項を式(10)にあてはめて試験体1の接合部30が破断するか判定するようにしてもよい。この場合、式(10)が満たされる場合、演算部150は、試験体1の接合部30が破断すると判定する。式(10)が満たされない場合、演算部150は、試験体1の接合部30が破断しないと判定する。
【0124】
次に、演算部150が負荷算出プログラム112を読み出して実行処理する場合の他の動作例について説明する。当該動作例では、試験体1の接合部30を破断させる負荷Fが算出される。演算部150は、情報処理装置100のユーザが入力部130を介して上述の第2入力事項を入力するまで待機する。演算部150は、当該入力を促すメッセージ等を出力部140に表示させるようにしてもよい。この場合、当該メッセージ等を表示させる機能が負荷算出プログラム112に盛り込まれる。上述の第2入力事項が入力されると、演算部150は、式(11)の右辺を算出し、算出された右辺以上の値を負荷Fであるとして導出する。演算部150は、試験体1の接合部30を破断させる負荷Fの最低値を示す情報として、算出された式(11)の右辺の同値を出力部140に出力させる。
【0125】
なお、負荷算出プログラム112は、第一部材10を互いに直交する3方向の長さDaと厚さtと奥行Bとで定義される直方体とみなして、距離lの位置に負荷Fが加わる際の見かけ引張応力σnとせん断応力τを算出して、破断荷重となる負荷Fを算出するための機能を含むプログラムであってもよい。この場合、当該機能を実現するように動作する演算部150は、まず、第一部材10の接合面からの長さDaの方向の距離lの位置に負荷Fが加わった際に、負荷Fを変数とした曲げモーメントMを算出し、曲げモーメントMと、負荷Fによって接合面で生じる曲げ断面二次モーメントIと、に基づいて、接合面で生じる曲げ応力σを算出する。演算部150は、続いて、曲げ応力σと、奥行Bと、に基づいて、接合面において中立面から第一部材10に負荷Fが加えられる側の範囲で生じる引張合力Fxを算出する。演算部150は、さらに、引張合力Fxを、接合面において中立面から第一部材10に負荷Fが加えられる側の範囲の面積で除算して、見かけ引張応力σnを算出する。また、演算部150は、負荷Fを変数として、当該接合面の断面積で除算して、せん断応力τを算出する。このようにして求められ、変数としての負荷Fを含む見かけ引張応力σnとせん断応力τから、演算部150は、第一評価値(σn/σL)と第二評価値(τ/τL)とを足し合わせた総合評価値Aを算出する。そして、演算部150は、総合評価値Aが1以上となる場合の負荷Fの値を求めることで、破断荷重となる負荷Fを算出する。
【0126】
次に、演算部150がFEM解析プログラム113を読み出して実行処理する場合の動作例について説明する。演算部150は、情報処理装置100のユーザが入力部130を介して上述の各種のパラメータを入力するまで待機する。演算部150は、当該入力を促すメッセージ等を出力部140に表示させるようにしてもよい。この場合、当該メッセージ等を表示させる機能がFEM解析プログラム113に盛り込まれる。
【0127】
上述の各種のパラメータが入力されると、演算部150は、FEM解析によって曲げ応力σ及びせん断応力τを算出する。また、演算部150は、FEM解析で算出された曲げ応力σを上述の式(6)にあてはめて引張合力Fxを算出する。また、演算部150は、上述の式(8)の右辺を除く事項(σn=Fx/0.5Bt)に基づいて見かけ引張応力σnを算出する。演算部150は、このようにして算出され見かけ引張応力σnと、せん断応力τと、上述の各種のパラメータに含まれる引張強度σL及びせん断強度τLが式(1)を満たすかに基づいて、上述の各種のパラメータを満たす条件下で特定される試験体1の接合部30が破断するか判定する。式(1)が満たされる場合、演算部150は、試験体1の接合部30が破断すると判定する。式(1)が満たされない場合、演算部150は、試験体1の接合部30が破断しないと判定する。演算部150は、上述の各種のパラメータを満たす条件下で試験体1の接合部30が破断するかの判定結果を示す情報を出力部140に出力させる。
【0128】
以上、説明したように、演算部150が破断判定プログラム111又はFEM解析プログラム113を実行処理した場合の情報処理装置100は、破断判定装置として機能する。また、演算部150が負荷算出プログラム112を実行処理した場合の情報処理装置100は、破断負荷算出装置として機能する。
【0129】
なお、
図11を参照して説明した例では、いわゆる情報処理装置がプログラムを利用して破断判定装置又は破断負荷算出装置として機能しているが、破断判定装置、破断負荷算出装置の具体的形態はこれに限られるものでない。例えば、特定の機能を組み込み可能な集積回路に、破断判定プログラム111、負荷算出プログラム112、FEM解析プログラム113のうち少なくとも一つ以上の機能を組み込んだものを採用した情報処理装置が採用されてもよい。その場合、当該集積回路が演算部150と同様に機能する。当該集積回路の一例として、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が挙げられる。
【0130】
上述したように、破断判定装置(例えば、情報処理装置100)は、第一部材(例えば、第一部材10)と、当該第一部材と突き合わされた第二部材(例えば、第二部材20)と、が接合面(例えば、接合部30)で接合された接合体(例えば、試験体1)の当該第一部材に対して当該接合面と平行な一方向(Y方向)に負荷Fが与えられた場合に当該接合面が破断するかを判定する破断判定装置である。当該破断判定装置は、負荷Fによって接合体に生じる曲げモーメントMに基づいて当該接合面から当該第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力σnを算出し、負荷Fに基づいて、当該接合面で接合された当該第一部材と当該第二部材との位置関係を当該一方向にずらす方向のせん断応力τを算出し、予め定められた当該接合面の引張強度σLで見かけ引張応力σnを除算した第一評価値を算出し、予め定められた接合面のせん断強度τLでせん断応力τを除算した第二評価値を算出し、当該第一評価値と当該第二評価値とを足し合わせた総合評価値を算出し、当該総合評価値に基づいて接合面が破断するかを判定する演算部(例えば、演算部150)を備える。これによって、負荷Fの大きさと破断の発生との関係がより現実に近い高精度な判定を行える。
【0131】
また、情報処理装置(例えば、情報処理装置100)が、総合評価値(総合評価値A)が1以上の場合に接合面が破断すると判定する。これによって、総合評価値Aの値に基づいて破断の判定結果を明確に導出できる。
【0132】
また、見かけ引張応力σnは、接合面(例えば、接合部30)において中立面(中立面CL)から第一部材(例えば、第一部材10)に負荷Fが加えられる側の範囲で生じる。
【0133】
また、第一部材(例えば、第一部材10)は、互いに直交する3方向の長さDaと厚さtと奥行Bとで定義される直方体とみなされる(
図3参照)。接合面(例えば、接合部30)は、厚さtと奥行Bとで定義される長方形である。長さDaは、当該接合面に対して直交する方向(X方向)の長さである。厚さtは、一方向(Y方向)に沿う。奥行Bは、当該一方向に対して直交し、かつ、当該接合面に対して平行な向き(Z方向)である。情報処理装置(例えば、情報処理装置100)は、当該第一部材の当該接合面から距離lの位置に負荷Fが加わった際に、負荷Fと、長さDa方向(X方向)の距離lとに基づいて、曲げモーメントMを算出する。当該情報処理装置は、曲げモーメントMと、負荷Fによって接合面で生じる曲げ断面二次モーメントIと、に基づいて、接合面で生じる曲げ応力σを算出する。当該情報処理装置は、曲げ応力σと、奥行Bと、に基づいて、当該接合面において中立面(中立面CL)から当該第一部材に負荷Fが加えられる側の範囲で生じる引張合力F
xを算出する。当該情報処理装置は、引張合力F
xを、当該範囲の面積で除算して、見かけ引張応力σ
nを算出する。そして、当該情報処理装置が、負荷Fを、当該接合面の断面積で除算して、せん断応力τを算出する。
【0134】
また、情報処理装置が、FEM解析によって、見かけ引張応力σnを算出することで、負荷Fの大きさと破断の発生との関係をさらに高精度にできる。
【0135】
また、上述の例では、第一部材(例えば、第一部材10)と第二部材(例えば、第二部材20)との接合は、樹脂と金属と間の機械的結合及び/又は化学的結合である。
【0136】
また、接合体の破断判定方法は、第一部材(例えば、第一部材10)と、当該第一部材と突き合わされた第二部材(例えば、第二部材20)と、が接合面(例えば、接合部30)で接合された接合体(例えば、試験体1)の当該第一部材に対して当該接合面と平行な一方向(Y方向)に負荷Fが与えられた場合に当該接合面が破断するかを情報処理装置(例えば、情報処理装置100)が判定する当該接合体の破断判定方法である。当該情報処理装置は、負荷Fによって当該接合体に生じる曲げモーメントMに基づいて当該接合面から当該第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力σnを算出する。当該情報処理装置は、負荷Fに基づいて、当該接合面で接合された当該第一部材と当該第二部材との位置関係を当該一方向にずらす方向のせん断応力τを算出する。当該情報処理装置は、予め定められた当該接合面の引張強度σLで見かけ引張応力σnを除算した第一評価値(σn/σL)を算出する。当該情報処理装置は、予め定められた当該接合面のせん断強度τLでせん断応力τを除算した第二評価値(τ/τL)を算出する。当該情報処理装置は、当該第一評価値と当該第二評価値とを足し合わせた総合評価値(総合評価値A)を算出する。そして、当該情報処理装置は、当該総合評価値に基づいて当該接合面が破断するかを判定する。これによって、負荷Fの大きさと破断の発生との関係がより現実に近い高精度な判定を行える。
【0137】
また、破断判定プログラム111は、第一部材(例えば、第一部材10)と、当該第一部材と突き合わされた第二部材(例えば、第二部材20)と、が接合面(例えば、接合部30)で接合された接合体(例えば、試験体1)の当該第一部材に対して当該接合面と平行な一方向(Y方向)に負荷Fが与えられた場合に当該接合面が破断するかをコンピュータに判定させるためのプログラムである。破断判定プログラム111は、情報処理装置100を、負荷Fによって当該接合体に生じる曲げモーメントMに基づいて当該接合面から当該第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力σnを算出する手段、負荷Fに基づいて、当該接合面で接合された当該第一部材と当該第二部材との位置関係を当該一方向にずらす方向のせん断応力τを算出する手段、予め定められた接合面の引張強度σLで見かけ引張応力σnを除算した第一評価値を算出する手段、予め定められた接合面のせん断強度τLでせん断応力τを除算した第二評価値を算出する手段、当該第一評価値と当該第二評価値とを足し合わせた総合評価値を算出し、当該総合評価値に基づいて当該接合面が破断するかを判定する手段、として機能させる。これによって、情報処理装置100による情報処理で、負荷Fの大きさと破断の発生との関係がより現実に近い高精度な判定を行える。
【0138】
また、破断判定プログラム111は、上述のように、記録媒体に記録されていてもよい。
【0139】
また、接合体の破断負荷算出方法は、互いに直交する3方向の長さDaと厚さtと奥行Bとで定義される直方体とみなされた第一部材(例えば、第一部材10:
図3参照)と、当該第一部材と突き合わされた第二部材(例えば、第二部材20)と、が接合面(例えば、接合部30)で接合された接合体(例えば、試験体1)の当該第一部材に対して当該接合面と平行な一方向(Y方向)に負荷Fが与えられた場合に当該接合面を破断させる負荷Fの大きさを情報処理装置(例えば、情報処理装置100)が算出する接合体の破断負荷算出方法である。当該情報処理装置は、予め定められた当該接合面の引張強度σ
Lと、予め定められた当該接合面のせん断強度τ
Lと、一方向(Y方向)に沿う当該第一部材の厚さtと、一方向に対して直交し、かつ、接合面に対して平行な向きである当該第一部材の奥行きBと、当該第一部材に対して負荷Fが加わる位置と当該接合面との距離lと、に基づいて、接合面を破断させる当該負荷Fの大きさを算出する。又は、当該情報処理装置は、負荷Fによって接合体に生じる曲げモーメントMに基づいて当該接合面から当該第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力σ
nを算出し、負荷Fに基づいて、当該接合面で接合された当該第一部材と当該第二部材との位置関係を当該一方向にずらす方向のせん断応力τを算出し、予め定められた当該接合面の引張強度σ
Lで当該見かけ引張応力σ
nを除算した第一評価値を算出し、予め定められた当該接合面のせん断強度τ
Lで当該せん断応力τを除算した第二評価値を算出し、当該第一評価値と当該第二評価値とを足し合わせた総合評価値を算出し、当該総合評価値が1以上となる場合の当該負荷Fの大きさを算出する。これによって、算出される負荷Fの大きさと破断の発生との関係をより現実に近い高精度なものとすることができる。
【0140】
本発明では、接合体に加わる力として、接合面に対して平行な方向に加わる負荷Fのみを考慮して、接合面が破断するかを判定することができる。さらに、本発明では、負荷Fに基づいて接合面に生じる曲げ応力σから、接合面から第一部材を引き離す方向の引張応力として働く見かけ引張応力σnを算出して、これを接合部が破断するかどうかの判定、または接合面を破断させる負荷の大きさの算出に用いる。より具体的には、接合面において中立面から第一部材に負荷Fが加えられる側の範囲で生じる引張合力Fxから算出される、見かけ引張応力σnを用いる。また、本発明では、第一評価値(σn/σL)と第二評価値(τ/τL)を算出して、これらの評価値に累乗等の操作を行うことなくそのまま加算している。このようにして、本発明によれば、接合部が破断するかどうかの判定、または接合面を破断させる負荷の大きさの算出を、過剰または過小となることないように適切に行うことができる。
【0141】
また、本発明では、第一部材が互いに直交する3方向の長さDaと厚さtと奥行Bとで定義される直方体であり、負荷Fが第一部材の接合面から距離lの位置に加わるとみなすことで、負荷が加えられる直方体状の部材の厚さt、奥行B、及び距離l、並びに負荷Fの大きさに基づいて、接合部が破断するかどうかの判定を行うことができる。また、負荷が加えられる直方体状の部材の厚さt、奥行B、及び距離lに基づいて、接合面を破断させる負荷Fの大きさの算出を行うことができる。
【0142】
また、本発明では、FEM解析によって、見かけ引張応力σn及びせん断応力τを算出することで、負荷が加えられる部材の形状が、互いに直交する3方向の長さDaと厚さtと奥行Bとで定義される長方形よりも複雑な形状であっても、接合部が破断するかどうかの判定や、接合面を破断させる負荷Fの大きさの算出を行うことができる。
【0143】
上記説明では、第一部材10が熱可塑性樹脂からなる場合を例示して説明した。また、第二部材20がアルミニウムのような金属若しくはアルミニウムを主要な材料とする合金又は金属化合物からなる場合を例示して説明した。第一部材10と第二部材20との接合に用いられる材料はこれらに限定されず、樹脂と、一以上の金属元素を主材料とする金属、合金又は化合物と、を接合するものであれば適宜変更することができる。本発明の試験体に用いられる樹脂としては、例えば、天然樹脂;熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー等の合成樹脂;等が挙げられる。また、本発明の試験体に用いられる金属元素としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄、銅、ニッケル等が挙げられる。
【0144】
また、上述の試験体1における第一部材10と第二部材20との接合は、一以上の金属元素を主材料とする金属、合金又は化合物と、樹脂と、の接合に該当するが、本開示の破断評価方法を適用可能な接合体は、試験体1に限られるものでない。例えば、第二部材20を第一部材10と同様の樹脂に置換してもよい。すなわち、樹脂同士の接合による接合体に本開示の破断評価方法を適用してもよい。ここで、接合体として接合される二つの樹脂部材は、同種の樹脂であってもよいし、異なる種類の樹脂であってもよい。また、第一部材10を第二部材20と同様、一以上の金属元素を主材料とする金属、合金又は化合物に置換してもよい。すなわち、一以上の金属元素を主材料とする金属、合金又は化合物同士の接合による接合体に本開示の破断評価方法を適用してもよい。ここで、接合体として接合される二つの部材は、同種の金属、合金又は化合物であってもよいし、樹脂であってもよいし、異なる種類の金属、合金又は化合物であってもよい。
【0145】
接合部30を形成するために採用される接合方法としては、樹脂間の機械的接合及び/又は化学的接合を利用することができる。また、接合部30を形成するために採用される接合方法としては、同種金属間もしくは異種金属間の機械的接合、化学的接合、冶金的接合から選ばれる1種以上の接合を利用することができる。特には、同種金属間もしくは異種金属間の化学的接合及び/又は冶金的接合を利用することができる。冶金的接合としては、例えば、溶融接合、液相接合、固相接合、等が挙げられる。本発明は、第一部材10と第二部材20との接合が、樹脂間の化学的接合からなる場合に好適に用いることができる。また、本発明は、第一部材10と第二部材20との接合が、樹脂間の化学的結合とアンカー効果からなる場合に好適に用いることができる。または、本発明は、第一部材10と第二部材20との接合が、金属間の化学的接合の場合に好適に用いることができる。また、本発明は、第一部材10と第二部材20との接合が、金属間の冶金的接合の場合に好適に用いることができる。本発明は、第一部材10と第二部材20との接合が、金属間の化学的結合と冶金的接合からなる場合に好適に用いることができる。
【0146】
上記説明では、距離lの位置に集中荷重が加わる場合を例示して説明したが、第一部材10の負荷が加わる面の全体に分布荷重が加わったものとして、曲げモーメントを算出するようにしてもよい。この場合も同様にして、破断の判定と破断負荷の算出を行うことができる。
【0147】
上記説明では、試験体1が、板状の直方体である第一部材10と板状の直方体である第二部材20とが互いの端部同士を突き合わせた状態で当該端部同士が接合部30によって接合された接合体であり、接合面が長方形となる場合を例示して説明した。第一部材、第二部材、及び試験体、並びに接合面の形状はこれに限定されず、形状に応じて適宜変更して破断の判定と破断負荷の算出を行うことができる。例えば、接合面の形状に応じて、式(4)で表される曲げ断面二次モーメントを変更すればよい。
【0148】
以上、本開示の種々の有用な実施例を示し、かつ、説明を施した。本開示は、上述した種々の実施例や変形例に限定されること無く、この開示の要旨や添付する特許請求の範囲に記載された内容を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0149】
1,70 試験体
10,15,120 第一部材
11,21 端部
12,121 主面
20,25 第二部材
30 接合部
40 固定治具
50 押し治具
100 情報処理装置
110 記憶部
111 破断判定プログラム
112 負荷算出プログラム
113 FEM解析プログラム
130 入力部
140 出力部
150 演算部
122 面部
A 総合評価値
B,B1,B2 奥行
Ca,Da 長さ
CL 中立面
F 負荷
Fx 引張合力
l 距離
M 曲げモーメント
I 曲げ断面二次モーメント
t,t1,t2 厚さ(板厚)
σ 曲げ応力
σL 引張強度
σn 見かけ引張応力
τ せん断応力
τL せん断強度