(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103669
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】プレキャストアスファルト舗装版
(51)【国際特許分類】
E01C 5/12 20060101AFI20220701BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20220701BHJP
E01C 23/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
E01C5/12
E01C7/18
E01C23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218435
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000208204
【氏名又は名称】大林道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】福本 勝司
(72)【発明者】
【氏名】光谷 修平
(72)【発明者】
【氏名】松下 陽哉
(72)【発明者】
【氏名】横山 昂洋
【テーマコード(参考)】
2D051
2D053
【Fターム(参考)】
2D051AF12
2D051AG01
2D051AG11
2D051AH01
2D051DA11
2D051DA16
2D051DB09
2D053AA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プレキャスト化することが困難なアスファルト舗装の技術上の問題を克服したプレキャスト化したアスファルト舗装版を提供する。
【解決手段】上面を開放した直方体状の薄金属板製又は金網製の埋め殺し型枠1と、その埋め殺し型枠1の外面に配置した熱可塑性樹脂層3と、前記埋め殺し型枠1の中に装填したアスファルト合材2と、を備えるプレキャストアスファルト舗装版PA。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を開放した直方体状の薄金属板製又は金網製の埋め殺し型枠と、その埋め殺し型枠の外面に配置した熱可塑性樹脂層と、前記埋め殺し型枠の中に装填したアスファルト合材と、を備えて成形されたプレキャストアスファルト舗装版。
【請求項2】
装填されるアスファルト合材を包むように成形型枠の中に型枠状にセットされる型枠状スチールペーパーと、その型枠状スチールペーパーの外面に配置した熱可塑性樹脂層又はアスファルト乳剤層と、前記型枠状スチールペーパーの中に装填したアスファルト合材と、を備えて成形されたプレキャストアスファルト舗装版。
【請求項3】
アスファルト合材の中にスチールファイバーを配合した請求項1又は2のプレキャストアスファルト舗装版。
【請求項4】
成形型枠内に、上面を開放した金属製の5面直方体で前記成形型枠内にぴったり収まる埋め殺し型枠、又は前記埋め殺し型枠状に配置される型枠状スチールペーパーをセットし、前記埋め殺し型枠又は型枠状スチールペーパーをセットした前記成形型枠に加熱アスファルト合材を装填することにより、前記埋め殺し型枠又は型枠状スチールペーパーを備えたプレキャストアスファルト舗装版に成形するプレキャストアスファルト舗装版の製造方法。
【請求項5】
前記埋め殺し型枠又は型枠状スチールペーパーの外面には、予め熱可塑性合成樹脂層を配置しておくか、又は成形後の前記型枠の外面に熱可塑性合成樹脂層を配置する請求項4のプレキャストアスファルト舗装版の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれかのプレキャストアスファルト舗装版を、路盤・路床、又はコンクリート床板に舗設してアスファルト舗装をするとき、前記プレキャストアスファルト舗装版を通電又は誘導コイルで加熱することにより、舗設したプレキャストアスファルト舗装版同士を接合すると共にプレキャストアスファルト舗装版と前記路盤・路床又はコンクリート床板とを接合するアスファルト舗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストアスファルト舗装版に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なアスファルト舗装は、加熱アスファルト混合物、或いは常温アスファルト混合物を現場にてアスファルトフィニッシャ等で平たんに敷均し、ローラ等で締め固める方法で構築している。
【0003】
アスファルト舗装に用いる施工機械は、一般に舗装規模が大きくなるに連れて大型機械を使用し、オペレータや手仕上げの作業員の熟練度、或は施工時の気候条件が品質に直結することが知られている。
【0004】
従来のアスファルト舗装の基本的な施工方法は、戦後の舗装草創期から大きく変わっておらず、現状においても騒音,振動,温室効果ガスの排出や気象条件による制約、材料の使い切りロス等に課題がある。
【0005】
一方、これらの課題解決に向けたアスファルト舗装のプレキャスト化は、コンクリート舗装と比較したとき、以下のような事情があるため取り組みが難しいと考えられている。因みに、プレキャスト舗装版の分野においては、以下の特許文献に例示するようにプレキャストコンクリート舗装版の提案は見られるが、プレキャストアスファルト舗装版の提案は見当たらない。
【0006】
すなわち、熱可塑性のアスファルト舗装は、自然状態の雰囲気中でも気温上昇や日射により軟化・変形すること、舗装をプレキャスト化しても、上下,左右,前後のプレキャスト版同士の接合に接着剤を要するため施工効率が著しく悪くなること、プレキャスト化しても、舗設効率が悪く、特殊な施工機械が必要であること等の諸事情によって、アスファルト舗装のプレキャスト化は困難と考えられているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6572419号公報
【特許文献2】特許第5835788号公報
【特許文献3】実用新案登録3150582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、アスファルト舗装はプレキスト化することが困難であるとする技術上の問題を克服できるプレキャスト化したアスファルト舗装版を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明では、以下の方法によりアスファルト舗装版をプレキャスト化する。
【0010】
金属枠を用いる方法
導電体で電気抵抗が大きく比較的安価な物質として、薄鉄版、或いはトタンやブリキ等で最低限の錆対策がなされた厚さ5mm以下の金属板や金網で作られた上面を除く5面直方体の埋め殺し型枠(以下、単に型枠という。)を成形型枠セットしに、アスファルト合材を入れてプレキャストアスファルト舗装版(以下、プレキャスト舗装版という。)を造る。埋め殺し型枠の側面はプレキャスト舗装版の仕上がりより10mm程度低くし、外面には熱可塑性樹脂と塗布する。
【0011】
スチールペーパーを用いる方法
工場生産時に成形型枠底部に両面に熱可塑性樹脂を塗布したスチールペーパーを4辺が側壁高さより10mm程度少ない長さの余分をもたせて敷いて、この中に合材を装填して直方体のプレキャスト舗装版とし、然る後に余分を側壁側に折り立てて包む。またこのプレキャスト舗装版では当該余分をとらずに底壁のみを両面に熱可塑性樹脂を塗布したスチールペーパーを配置する方法もある。
【0012】
アスファルト合材にスチールファイバーの配合する方法
スチールファイバーをアスファルト合材中に配合し、それを骨格化してプレキャスト舗装版とする。この舗装版では、プレキャスト舗装版同士の接合のために、側壁や底壁に熱可塑性樹脂やアスファルト乳剤を配置する。
【発明の効果】
【0013】
本発明プレキャスト舗装版は、温度変化による変形が金属製やスチールペーパー製の型枠で抑制されるため、積層したストックや運搬が可能となる。
【0014】
プレキャスト舗装版であるから電動フォークリフトやユニッククレーンを使って舗設でき、従って、施工騒音や振動が少ない。
【0015】
プレキャスト舗装版同士の接合は、金属製の型枠に直接結線するか、又はIH誘電を利用して、金属製の型枠の電気抵抗で発熱させ、外面の熱可塑性樹脂で舗装版同士を溶着する。
【0016】
逆に、プレキャスト舗装版の引き剥がしも、上記と同様の発熱原理を適用して容易に施工できる。
【0017】
舗設現場の作業で用いる動力は殆ど電気で行えるため、温室効果ガスの排出を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】
図1のプレキャスト舗装版のA-A矢視断面図。
【
図4】本発明プレキャスト舗装版の他の例の左半側の断面図。
【
図5】本発明プレキャスト舗装版を土工部(路盤、路床)の上で施工する方法を模式的に示した断面図。
【
図6】本発明プレキャスト舗装版をコンクリート床版の上で施工する方法の一例を模式的に示した断面図。
【
図7】
図6の施工における通電形態の別例を模式的に示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。
図1、
図2は本発明プレキャスト舗装版PAの一例である。
図1、
図2に模式的に示すように、まず薄鉄板、或はトタン板やブリキ等で少なくとも防錆処理された厚さ5mm程度以下の金属板、又は金網によって上面を除く5面直方体の埋め殺し型枠1(以下、単に型枠という。)を形成する。次にこの型枠1を成形型枠1Mにセットし、ここでは加熱アスファルト混合物2(以下、単に「合材2」ともいう。)を型枠1Mに装填して本発明プレキャストアスファルト舗装版PA(以下、単にプレキャスト版PAという。)を造る。
【0020】
なお、前記型枠1の側面1aの高さh1は、仕上ったプレキャスト版PAの高さh2より10mm程度低くするため、カラー1cを成形型枠1Mの開口部に配置して成形している。前記型枠1の外面には熱可塑性樹脂が塗布などによって熱可塑性合成樹脂層3に形成されている。熱可塑性合成樹脂層3の形成は、プレキャスト版PAの成形前、成形後のいずれであってもよく、また樹脂層3の形成も塗布以外の樹脂シートの貼付けや巻付け等であってもよい。図において1bは成形型枠1Mの底版である。
【0021】
図3は、一例として成形型枠1Mの底版1bの上に配置した当て板1Bの上に、下面にアスファルト乳剤5を塗布したスチールペーパー4を敷き、その成形型枠1Mに合材2を装填し、直方体のプレキャスト版PAとするもので、プレキャスト版PAの底面のみを金属皮膜(スチールペーパー4)としている。
図2において、カラー1cには、型枠側壁の全高2hと同じ高さのカラーを使用している。
【0022】
図4は、アスファルト合材2の中にスチールファイバー6を配合してスチールファイバー6を骨格化した本発明プレキャスト版PAを説明するための要部の断面図である。
【0023】
次に、
図1~
図4により説明した本発明プレキャスト版PAを舗設する場合、或は解体(引き剥がし)する場合について、
図5、
図6により説明する。
【0024】
図5は、
図1~
図4に示したいずれかの本発明プレキャスト版PAを用いて、土工部の路盤又は路床Gの上にアスファルト舗装を施工する状態を模式的に示した断面図である。
【0025】
図5においては、路盤又は路床Gの上に、本発明プレキャスト版PAを伏せた状態(合材2が下面に露出する向き)で並べて下層版L-PAとし、この下層版L-PAの上に、同じ本発明プレキャスト版PAを合材2が上面を向いた向きで並べて上層版U-PAとしている。
【0026】
図5において下層版L-PAと上層版U-PAに積層された各プレキャスト版PAは、夫々の金属製の型枠1によって電気的に接合された状態になっている場合、一例として
図5に示すAC200Vの電源EPに通電コードECを介して上層版U-PAの両端を接続して通電すると、各型枠1は通電発熱する。型枠1の通電加熱は、各層板U-PAとL-PAの型枠1ごとに通電コードECを接続し、各型枠1ごとに発熱させることができる。型枠1ごとの通電は、型枠1同士が電気的に接合していない場合等において有用である。
【0027】
各型枠1が発熱すると、各型枠1の外面に塗布している熱可塑性樹脂3が溶融され、接触している各型枠1の外面同士が前記溶融樹脂によって溶着接合されるから、下層版L-PAと上層版U-PAとは一体化されてプレキャスト版PAによるアスファルト舗装になる。
【0028】
積層した下層版L-PAと上層版U-PAの各型枠1の加熱は、
図5に仮想線で示した誘導コイルIHを上層版U-PAの上方に置き、電源EPから交流を流して電磁誘導により型枠1に電流を流して発熱させることもできる。
【0029】
図6は、コンクリート床版GCの上に本発明プレキャスト版PAを表層舗装版(上層版U-PA)として配置し、
図5の場合と同様にAC200Vの電源EPによる通電加熱、又は誘導コイルIHによる誘導加熱して型枠1を加熱し、これによって型枠外面の熱可塑性樹脂を溶融させ、プレキャスト版PA同士を溶着接合すると共に、プレキャスト版PAの底面をコンクリート床板GCに接着することにより、本発明プレキャスト版PAによってプレキャストアスファルト舗装を施工することができる。
図7は、
図6の通電加熱を型枠1ごとに施工する例を模式的に示したものである。以上の説明は、図示しないがスチールペーパー4を成形型枠1M内に敷くと共にそのスチールペーパー4の四周を成形型枠1Mの側壁に沿って立上げ型枠1状に賦形した型枠状スチールペーパー4の中に合材2を装填して成形したプレキャスト版PAに適用できる。このプレキャスト版PAには、その底壁、側壁にアスファルト乳剤を配置するものがある。前記型枠状スチールペーパー4は、装填される合材2を包む形でプレキャスト版PAに一体化される。
【0030】
上記段落0025~0029での説明は、本発明プレキャスト版PAを用いたアスファルト舗装の施工形態例であったが、本発明の上記加熱態様は、本発明プレキャスト版PAを用いたアスファルト舗装に使用されていたプレキャスト版PAの引き剥がしをするとき、各プレキャスト版PA同士の型枠1を溶着接合している熱可塑性樹脂3やアスファルト乳剤(図示せず)を溶融させるために適用することができる。
【0031】
本発明において、コンクリート床板GCの上に本発明プレキャスト版PAを載せてアスファルト舗装をするときに用いる型枠1は、薄鉄板又は金網により上面を開放した直方体状に形成したものであるが、プレキャスト版PAの底がコンクリート床板GCに密に接合できるようにするため、当該型枠1の底面に、アスファルト乳剤を塗布したスチールペーパー4を配置したものを使用する。これによりコンクリート床板GCとのより強い接合を実現すことができる。
【0032】
本発明において、型枠1に装填されるアスファルト合材2にスチールファイバー6を配合した本発明プレキャスト版PAは、誘導コイルIHによる加熱においてスチールファイバーがアスファルト合材2の中で発熱して合材2を軟化させるから、舗設時には、積層されるプレキャスト版PA同士を隙間なく接合させ、また引き剥がす時には、積層されているプレキャスト版PAの合材2が軟化するから引き剥がしも容易になる。
【0033】
本発明は以上の通りであって、本発明プレキャスト版PAは温度変化による変形が、型枠1や型枠1に塗布等によって形成したした合成樹脂層3などによって抑制されるから、ストックしておくことや運搬することが可能になる。
【0034】
また、舗設は電動フォークリフトでプレキャスト版PAを舗装現場に搬送して設置できるから工事騒音が少ない。
【0035】
さらにプレキャスト版PA同士の接合は、型枠1に直接通電コードECを接続して通電加熱するか、又は誘導コイルIHにより誘電加熱して型枠1外面の熱可塑性樹脂層3の溶着により行うから、接合方法が簡使であり、しかもこの加熱態様はプレキャスト版PAの引き剥がしにも適用できるから至って合理的である。
【0036】
上記のように、本発明プレキャスト版によるアスファルト舗装は、舗設及び引き剥がしとも、動力の殆どを電気でまかなえるから、舗設工事に伴う温室効果ガスの排出を抑えることができる。
【符号の説明】
【0037】
PA 本発明プレキャストアスファルト舗装版(プレキャスト版)
1M 成形型枠
1 埋め殺し型枠(型枠1)
2 アスファルト混合材(合材2)
3 熱可塑性樹脂塗膜
4 スチールペーパー
5 アスファルト乳剤
6 スチールファイバー
EP 交流電源
EC 通電コード
IH 誘導コイル