(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103677
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 9/04 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
A46B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218451
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】石川 晃大
(72)【発明者】
【氏名】西村 彦人
(72)【発明者】
【氏名】大野 慶貴
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB15
3B202BA02
3B202EA01
3B202EB14
(57)【要約】
【課題】ヘッド部の強度が高く、成形性に優れた薄型一体成形型の歯ブラシを提供する。
【解決手段】ヘッド部の最大厚さは、2.5mm以上、4.0mm以下であり、ヘッド部は、支持板部とフレーム部と貫通部とを有する。貫通部は、中央位置を含み長軸方向に延びる第1線状部と、第1線状部に対して短軸方向の両側に配置された第2線状部とを含む。第2線状部は、第1線状部との距離が最も短い基点から、短軸方向で第1線状部から離れるのに従って、長軸方向で基点から離れる方向に延び、ブラシ部は、フィラメントの基部を支持し、支持板部の正面側に配置され貫通部と厚さ方向に繋がる基台部を有する。貫通部を含む支持板部の面積をAとし、貫通部の面積をBとすると、0.30≦B/A≦0.60の関係を満足する。支持板部とフレーム部とは、第1樹脂で成形された第1成形体であり、ブラシ部と貫通部とは、第2樹脂で成形された第2成形体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィラメントを有するブラシ部と、
長軸方向の先端側に配置され、厚さ方向の正面側に前記ブラシ部を有するヘッド部と、
前記ヘッド部より前記長軸方向の後端側に配置される把持部と、
前記ヘッド部と前記把持部とを接続するネック部と、
を備え、
前記ヘッド部の前記厚さ方向の最大厚さは、2.5mm以上、4.0mm以下であり、
前記ヘッド部は、
前記厚さ方向と直交して配置される支持板部と、
前記支持板部の周縁から前記正面側に延び前記支持板部の周囲を囲むフレーム部と、
前記支持板部を前記厚さ方向に貫通して設けられた貫通部と、
を有し、
前記貫通部は、
前記正面側から視た正面視で前記支持板部における前記長軸方向の中央で、且つ、前記支持板部の正面と平行で前記長軸方向と直交する短軸方向の中央の中央位置を含み、前記長軸方向に延びる第1線状部と、
前記第1線状部に対して、前記短軸方向の一方側および他方側にそれぞれ配置された第2線状部とを含み、
前記第2線状部は、前記第1線状部との距離が最も短い基点から、前記短軸方向で前記第1線状部から離れるのに従って、前記長軸方向で前記基点から離れる方向に延び、
前記ブラシ部は、
前記フィラメントの基部を支持し、前記支持板部の正面側に配置され前記貫通部と前記厚さ方向に繋がる基台部を有し、
前記正面視で前記貫通部を含む前記支持板部の面積をAとし、前記貫通部の面積をBとすると、
0.30≦B/A≦0.60
の関係を満足し、
前記支持板部と前記フレーム部とは、第1の樹脂組成物で成形された第1成形体であり、
前記ブラシ部と前記貫通部とは、前記第1の樹脂組成物と異なる第2の樹脂組成物で成形された第2成形体であることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記正面視における、前記第1線状部の面積の総和をM1とし、
前記第2線状部の面積の総和をM2とすると、
0.25≦M2/M1≦1.20
の関係を満足する、
請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記長軸方向で前記中央位置に最も近い前記第2線状部の先端のうち、前記中央位置からの距離が最も長い点を通る前記短軸方向に延びる直線を前記長軸方向の両側でそれぞれ設定したときに、
二つの前記直線の間に位置する前記支持板部を前記短軸方向に3等分したときの中央領域における前記貫通部の面積をd1とし、前記短軸方向の一方側の外側領域の前記貫通部の面積と前記短軸方向の他方側の外側領域の前記貫通部の面積との平均値をd2とすると、
0.20≦d2/d1≦0.70
の関係を満足する、
請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記第1線状部の幅は、前記中央位置から前記長軸方向の外側に向けて漸次大きくなり、
前記第1線状部の最大幅をW1とし、前記第1線状部の最小幅をW2とすると、
W1/W2≧1.2
の関係を満足する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記貫通部の数は、5以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記貫通部の数は、1である、
請求項5に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記短軸方向の一方側の前記第2線状部と、前記短軸方向の他方側の前記第2線状部は、それぞれ前記第1線状部に繋がるとともに、同一直線上に配置されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記ヘッド部における前記フレーム部の最大厚さをEとし、
前記貫通部の最小厚さをFとすると、
0.30≦F/E≦0.80
の関係を満足する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形のみで歯ブラシを製造する一体成形歯ブラシが提案されている。一体成形歯ブラシは、フィラメントとヘッド部を一体的に成形するため、フィラメントの材料調達および植毛工程が不要であり、植毛を行う歯ブラシよりも安価に製造できる利点を有している。
【0003】
一体成形歯ブラシは一般的にキャップ方式、またはインサート方式で製造される。インサート方式では勘合作業を必要とせず、より簡易なフローで成形品を得ることができる。
口腔内操作性、特に奥歯への到達性を向上させる手段として、歯ブラシのヘッド部には薄型化が有効である。ただし、インサート方式の一体成形歯ブラシの薄型化においては、ブラシ部をヘッド部に成形して固定するために、ヘッド部の背面側からブラシ部を成形する樹脂を流すために、ヘッド部を厚さ方向に貫通する孔を必要とする。その結果、ヘッド部が従来よりも薄くなると、ヘッド部の1次側体積が小さくなることに加え、2次側樹脂の流動性が低くなるため、強度及び成形性が低下する課題が生じる。
【0004】
そこで、特許文献1には、複数の大小の貫通孔が格子状に配置された薄型ヘッドの一体成形歯ブラシのヘッド部構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、複数の大小の貫通孔を格子状に配置することを前提としているため、2次側成形時に流路が複雑になることで、樹脂の流動性及び到達性に問題がある。さらに、特許文献1の技術は、ヘッド部の柔軟性を高めるためにヘッド中央部に短軸方向に途切れの無い貫通孔を有することを大前提としているため、ヘッド中央部を起点とし容易に撓む強度が低い形状となっている。そのため、ヘッド部の強度が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、ヘッド部の強度が高く、成形性に優れた薄型ヘッドの一体成形型の歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、複数のフィラメントを有するブラシ部と、長軸方向の先端側に配置され、厚さ方向の正面側に前記ブラシ部を有するヘッド部と、前記ヘッド部より前記長軸方向の後端側に配置される把持部と、前記ヘッド部と前記把持部とを接続するネック部と、を備え、前記ヘッド部の前記厚さ方向の最大厚さは、2.5mm以上、4.0mm以下であり、前記ヘッド部は、前記厚さ方向と直交して配置される支持板部と、前記支持板部の周縁から前記正面側に延び前記支持板部の周囲を囲むフレーム部と、前記支持板部を前記厚さ方向に貫通して設けられた貫通部と、を有し、前記貫通部は、前記正面側から視た正面視で前記支持板部における前記長軸方向の中央で、且つ、前記支持板部の正面と平行で前記長軸方向と直交する短軸方向の中央の中央位置を含み、前記長軸方向に延びる第1線状部と、前記第1線状部に対して、前記短軸方向の一方側および他方側にそれぞれ配置された第2線状部とを含み、前記第2線状部は、前記第1線状部との距離が最も短い基点から、前記短軸方向で前記第1線状部から離れるのに従って、前記長軸方向で前記基点から離れる方向に延び、前記ブラシ部は、前記フィラメントの基部を支持し、前記支持板部の正面側に配置され前記貫通部と前記厚さ方向に繋がる基台部を有し、前記正面視で前記貫通部を含む前記支持板部の面積をAとし、前記貫通部の面積をBとすると、0.30≦B/A≦0.60の関係を満足し、前記支持板部と前記フレーム部とは、第1の樹脂組成物で成形された第1成形体であり、前記ブラシ部と前記貫通部とは、前記第1の樹脂組成物と異なる第2の樹脂組成物で成形された第2成形体であることを特徴とする歯ブラシが提供される。
【0009】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記正面視における、前記第1線状部の面積の総和をM1とし、前記第2線状部の面積の総和をM2とすると、0.25≦M2/M1≦1.20の関係を満足することを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記長軸方向で前記中央位置に最も近い前記第2線状部の先端のうち、前記中央位置からの距離が最も長い点を通る前記短軸方向に延びる直線を前記長軸方向の両側でそれぞれ設定したときに、二つの前記直線の間に位置する前記支持板部を前記短軸方向に3等分したときの中央領域における前記貫通部の面積をd1とし、前記短軸方向一方側の外側領域の前記貫通部の面積と前記短軸方向他方側の外側領域の前記貫通部の面積との平均値をd2とすると、0.20≦d2/d1≦0.70の関係を満足することを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1線状部の幅は、前記中央位置から前記長軸方向の外側に向けて漸次大きくなり、前記第1線状部の最大幅をW1とし、前記第1線状部の最小幅をW2とすると、W1/W2≧1.2の関係を満足することを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記貫通部の数は、5以下であることを特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記貫通部の数は、1であることを特徴とする。
【0014】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記短軸方向一方側の前記第2線状部と、前記短軸方向他方側の前記第2線状部は、それぞれ前記第1線状部につながるとともに、同一直線上に配置されていることを特徴とする。
【0015】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記ヘッド部における前記フレーム部の最大厚さをEとし、前記貫通部の最小厚さをFとすると、0.30≦F/E≦0.80の関係を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、ヘッド部の強度が高く、成形性に優れた薄型一体成形型の歯ブラシを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る歯ブラシ1の部分正面図である。
【
図3】第2実施形態に係る歯ブラシ1の部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の歯ブラシの実施の形態を、
図1ないし
図3を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0019】
[歯ブラシの第1実施形態]
図1および
図2に示すように、歯ブラシ1は、ハンドル体10とブラシ部20(
図1では、図示せず)とを備えている。ハンドル体10は、ヘッド部3と、ヘッド部3より長軸方向の後端側に配置される把持部(図示せず)と、ヘッド部3と把持部とを接続するネック部4とを備える。ヘッド部3は、ハンドル体10の長軸方向(
図1中、左右方向)の先端側に位置する。
【0020】
以下の説明では、ヘッド部3の厚さ方向(
図1中、紙面と直交する方向、
図2中、上下方向、以下では単に厚さ方向と称する)と長軸方向と直交する方向を短軸方向(
図1中、上下方向、
図2中、左右方向)として説明する。
ヘッド部3の短軸方向(幅方向)は、後述する支持板部11の正面11aと平行で長軸方向と直交する方向である。
ヘッド部3の厚さ方向は、上記の幅方向と直交する方向である。
また、ヘッド部3において厚さ方向でフィラメント50が設けられた側を正面側とし、正面側と逆側を背面側とする。なお、
図1においては、ヘッド部3の正面側に設けられたブラシ部20を除いた状態が図示されている。
【0021】
(ヘッド部3)
ヘッド部3は、支持板部11と、フレーム部12A、12Bと、貫通部13と、ブラシ部20とを有している。支持板部11は、厚さ方向と直交する平板状である。フレーム部12Aは、支持板部11の周縁から正面側に延び支持板部11の周囲を囲む。フレーム部12Bは、支持板部11の周縁から背面側に延び支持板部11の周囲を囲む。
フレーム部12Aとフレーム部12Bの境界は、金型成形時のパーティングラインと定義する。
【0022】
すなわち、支持板部11の正面11aは、フレーム部12Aの正面側端部よりも背面側に窪んだ位置に配置されている。
また、支持板部11の背面11bは、フレーム部12Bの背面側端部よりも正面側に窪んだ位置に配置されている。
【0023】
貫通部13は、短軸方向の中央付近に配置されている。貫通部13は、支持板部11を厚さ方向に貫通する。換言すると、貫通部13は、第1の樹脂組成物で1次成形された支持板部11を厚さ方向に貫通する貫通孔13aに第2の樹脂組成物が2次成形により充填されている。貫通部13の詳細については、後述する。
【0024】
ヘッド部3の厚さ方向の最大厚さは、フレーム部12Aの正面側端部とフレーム部12Bの背面側端部との間の距離である。ヘッド部3の厚さ方向の最大厚さは、2.5mm以上、4.0mm以下であることが好ましい。ヘッド部3の厚さ方向の最大厚さを2.5mm以上、4.0mm以下とすることにより、良好な口腔内操作性を実現できる。
ヘッド部3の厚さ方向の最大厚さは、フレーム部12Aの正面側端部とフレーム部12Bの背面側端部との間の距離である。具体的には、
図2においてEで示す位置である。
ヘッド部3の厚さ方向の最大厚さは、2.5mm以上、4.0mm以下であることが好ましく、2.5mm以上、3.5mm以下であることがより好ましく、2.5mm以上、3.0mm以下であることがさらに好ましい。ヘッド部3の厚さ方向の最大厚さを2.5mm以上、4.0mm以下とすることにより、良好な口腔内操作性を実現できる。
【0025】
フレーム部12Aの正面側端部とフレーム部12Bの背面側端部との間の距離で規定されるヘッド部3におけるフレーム部12A、12Bの最大厚さをEとし、貫通部13の最小厚さをFとすると、0.30≦F/E≦0.80の関係を満足することが好ましい。
F/Eは0.30以上が好ましく、0.35以上がより好ましく、0.40以上がさらに好ましい。
F/Eは0.80以下が好ましく、0.70以下がより好ましく、0.60以下がさらに好ましい。
F/Eで表される値が0.30未満の場合、ヘッド部3の強度が低くなる可能性がある。F/Eで表される値が0.80を超えた場合、基台部21A、21Bが薄くなり成形性が低下してしまう。
F/Eで表される値を0.30以上、0.80以下とすることにより、ヘッド部3の強度および成形性を確保することができる。
【0026】
最小厚さFとしては、1.0mm以上、3.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上、2.5mm以下であることがより好ましく、1.0mm以上、2.0mm以下であることがさらに好ましい。
支持板部11の厚さは、中央位置Pから長軸方向の両側に向けて漸次厚くなると、強度を高めることができることから好ましく、一定の厚さであることがより好ましい。
【0027】
(ブラシ部20)
ブラシ部20は、正面側に位置する基台部21Aと、基台部21Aの正面側に設けられた複数のフィラメント50と、背面側に位置する基台部21Bと、貫通部13を介して基台部21Aと基台部21Bを接続している接続部21Cとを有している。基台部21Aは、支持板部11の正面側に配置されている。基台部21Aは、支持板部11の正面11aに背面側から支持されている。基台部21Aの側面は、全周に亘ってフレーム部12Aの内周面に保持されている。
【0028】
基台部21Aの厚さは、フレーム部12Aの正面側端部と支持板部11の正面11aとの厚さ方向の距離よりも長い。すなわち、基台部21Aの正面21aは、フレーム部12Aの正面側端部よりも正面側に突出している。基台部21Aは、正面21aにおいてフィラメント50の基部を支持している。
【0029】
(フィラメント50)
フィラメント50は、支持板部11の正面側のほぼ全面に亘って配置される。フィラメント50は、基台部21Aの正面21aから正面側に突出する略柱状である。
図2の態様では、フィラメント50は、基端側が断面略三角形状の略三角柱状であり、先端側が略三角柱から延びて先細る三角錐状である。フィラメント50の断面形状としては、略三角形の他に、略四角形などの略多角形や、略円形、略星形、略ヘラ形などを選択可能である。フィラメント50は、先端が先細るテーパー形状の他に、ストレート状に延びる構成や、基端から先細りするテーパー形状、先端が2~4本に分岐している分岐形状(テーパー分岐形状)であってもよい。
【0030】
長軸方向および短軸方向で隣り合うフィラメント50の正面21a側の基部どうしのすき間(フィラメント間の最小距離)は、0.10mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であることがさらに好ましい。また、0.50mm以下であることが好ましく、0.30mm以下であることがさらに好ましく、0.25mm以下であることが特に好ましい。0.10~0.50mmであることが好ましく、0.15~0.30mmであることがさらに好ましく、0.15~0.25mmであることが特に好ましい。本実施形態において複数のフィラメント50は、格子状に複数本並んで配列された構成に限らず、千鳥状に複数並んで配列された構成とすることも可能である。
【0031】
フィラメント50の毛丈(正面21aからの高さ)は6~14mmであることが好ましく、7~13mmであることがより好ましく、8~12mmであることがさらに好ましい。PCT/JP2020/44647の
図9に示すような8の字プロファイルの場合については、支持板部11の最外周に配置された複数の外側フィラメントと、前記外側フィラメントよりも毛丈が短く、前記外側フィラメントよりも内側に配置された複数の内側フィラメントと、を有し、前記外側フィラメントの先端と前記内側フィラメントの先端との間に、少なくとも1mm以上の段差を有する。
【0032】
(基台部21B)
基台部21Bは、支持板部11の背面側に配置されている。基台部21Bは、支持板部11の背面11bに正面側から支持されている。基台部21Bの側面は、全周に亘ってフレーム部12Bの内周面に保持されている。基台部21Bの厚さは、フレーム部12Bの背面側端部と支持板部11の背面11bとの厚さ方向の距離と同一である。すなわち、基台部21Bの背面は、フレーム部12Bの背面側端部と略面一である。
【0033】
上記ヘッド部3のうち、支持板部11およびフレーム部12A、12Bと、ネック部4と把持部とは、第1の樹脂組成物で成形された第1成形体である。
上記ヘッド部3のうち、貫通部13とブラシ部20とは、第2の樹脂組成物で成形された第2成形体である。
【0034】
第1の樹脂組成物は、例えば、硬質樹脂である。硬質樹脂としては、一例として、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、ポレアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、ポリエステル樹脂(PCTA)などが挙げられる。これらの中でも、強度が高く、成形性に優れる点等から、PP、POM、PBTが好ましく、PP、POMがより好ましい。また、より低コストで本発明の効果をより得ることができる点から、第1の樹脂組成物の材質はPPが特に好ましい。
【0035】
第2の樹脂組成物としては、例えば、軟質樹脂である。軟質樹脂としては、例えば、JIS K 6253 ショアAでの硬度が90以上とされた軟質樹脂を用いることができる。具体的には、ショア硬度Aが90以上、ショア硬度Dが75以下の軟質樹脂が好ましく、ショア硬度Dが66の軟質樹脂がより好ましい。軟質樹脂としては、各種エラストマーを用いることができるが、ポリウレタンであることが好ましい。
ポリウレタンは、スチレン系やポリステル系などの他のエラストマーに比べて、引張強度が高い傾向にあるため、軟質樹脂にポリウレタンを用いることで、薄肉にしても機械的な強度が確保でき、歯ブラシ1の使用時の破損を抑制することができる。
【0036】
ポリウレタン中には、0.01~1.0wt%(質量%)のC10以上の飽和/不飽和炭化水素、高級アルコール、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、低分子量ポリエチレン、ポリエチレングリコール(PEG)、脂肪酸金属塩、長鎖脂肪酸、脂肪酸グリセリン、流動パラフィン、シリコーンのいずれか、あるいは複合して配合され、滑剤、離型剤として機能する。
【0037】
また、ポリウレタンは上記の他のエラストマーに比べて選択できる硬度が幅広く、ブラシ部20の厚さに応じて、その使用性を考慮した樹脂硬度の選択が可能である。また、ポリウレタンとしては、耐水性と抗菌性とを確保する観点から、エーテル系ポリウレタンを用いることが好ましい。
【0038】
上記の歯ブラシ1は、第1の樹脂組成物で第1成形体を1次成形した後に、1次成形した第1成形体を装着した金型を用いて第2の樹脂組成物で第2成形体を2次成形することにより、第1成形体と第2成形体とが一体成形された成形体として製造される。
【0039】
この場合、第1成形体のヘッド部3においては、支持板部11の正面11aとフレーム部12Aの内周面とに囲まれた凹部と、支持板部11の背面11bとフレーム部12Bの内周面とに囲まれた凹部と、当該凹部同士を支持板部11を厚さ方向に貫通し正面側の凹部と背面側の凹部とに開口する貫通孔13aが形成される。
【0040】
そして、2次成形により第2成形体を成形する際には、背面側の中央位置Pのゲートから背面側の凹部、貫通孔13aおよび正面側の凹部を介して第2の樹脂組成物を導入してフィラメント50を成形する。フィラメント50は、支持板部11の正面側のほぼ全面に亘って配置されることに加えて、細く長いため、第2の樹脂組成物を均一に、且つ、流動性を高めるために、フィラメント50を成形する際の第2の樹脂組成物の流路となる貫通部13の正面視形状は重要な因子となる。本実施形態では、貫通部13の正面視形状を以下に設定することで、第2の樹脂組成物を均一に、且つ、流動性を高めている。
【0041】
具体的には、
図1に示すように、貫通部13は、第1線状部31と第2線状部32、33、34、35とを含む。第1線状部31は、正面側から視た正面視で、支持板部11の中央位置Pを含み長軸方向に直線状に延びている。中央位置Pは、支持板部11における長軸方向の中央で、且つ、短軸方向の中央の位置である。第1線状部31の短軸方向の幅は、中央位置Pから長軸方向の外側に向けてそれぞれ漸次大きくなる。
【0042】
(第1線状部31の外側の最大幅W1、中央側の最小幅W2)
第1線状部31の外側の最大幅をW1とし、第1線状部31の中央側の最小幅をW2とすると、W1/W2≧1.2の関係を満足することが好ましい。
W1/W2は1.2以上が好ましく、1.4以上がより好ましく、1.6以上がさらに好ましい。
W1/W2は2.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.8以下がさらに好ましい。
W1/W2≧1.2の関係を満足することにより、貫通部13に導入された第2の樹脂組成物(以下、単に樹脂と称する)は、幅が広くなることで、長軸方向の両外側への流動性が高められ、最も樹脂が流れにくいヘッド部3の長軸方向の外周側(縁部)に樹脂が行き渡るようにすることができる。
【0043】
第2線状部32、33は、第1線状部31に対して、短軸方向の一方側に配置されている。
図1では第2線状部32は、一端が第1線状部31に繋がっている。
第2線状部32は、第1線状部31との距離が最も短い基点32aから、短軸方向で第1線状部31から離れるのに従って、長軸方向で基点32aから離れる方向である先端側に延びる。基点32aは、第2線状部32が第1線状部31に繋がる位置である。第2線状部33は、一端が第1線状部31に繋がっている。
図1では第2線状部33は、第1線状部31との距離が最も短い基点33aから、短軸方向で第1線状部31から離れるのに従って、長軸方向で基点33aから離れる方向である後端側に延びる。基点33aは、第2線状部33が第1線状部31に繋がる位置である。
なお、第1線状部31から第2線状部32が繋がる境界位置のそれぞれの縁取りF1、F2を結ぶ接線の中点である。
また、
図1のような第1線状部31から第2線状部32が繋がる境界位置が分離せず、限りなく近接している場合はそれぞれの縁取りが端部に等しいため、第1線状部31との距離が最も短い第2線状部の縁取りの端部と定義する。
また、上記接線の第2線状部32側を第2線状部32の面積とし、上記接線の第1線状部31側を第1線状部31とする。
また、
図1のように第2線状部32~35(後述)は、一端が第1線状部31に繋がっていてもよく、分離して繋がっていないものを含んでもよい。分離している場合、基点32aは第1線状部31から第2線状部32が繋がらない態様であり、この場合は、第2線状部32において、第1線状部31との距離が最も短い第2線状部の縁取りの端部とする。基点33a~35aも同じ定義である。
【0044】
第2線状部34、35は、第1線状部31に対して、短軸方向の他方側に配置されている。
図1では第2線状部34は、一端が第1線状部31に繋がっている。第2線状部34は、第1線状部31との距離が最も短い基点34aから、短軸方向で第1線状部31から離れるのに従って、長軸方向で基点34aから離れる方向である先端側に延びる。基点34aは、第2線状部34が第1線状部31に繋がる位置である。
図1では第2線状部35は、一端が第1線状部31に繋がっている。第2線状部35は、第1線状部31との距離が最も短い基点35aから、短軸方向で第1線状部31から離れるのに従って、長軸方向で基点35aから離れる方向である後端側に延びる。基点35aは、第2線状部35が第1線状部31に繋がる位置である。
なお、基点34a、基点35aは、上記基点32aと同じ定義である。
【0045】
第2線状部32、33、34、35は、それぞれが第1線状部31との距離が最も短い基点32a、33a、34a、35aから、短軸方向で第1線状部31から離れるのに従って、長軸方向で基点32a、33a、34a、35aから離れる方向に直線状に延びることで、長軸方向と短軸方向とに交差する斜め方向に延びている。そのため、最も樹脂が流れにくいヘッド部3の長軸方向の外周側であり、且つ、第1線状部31との距離が大きい領域に樹脂を流動させやすくなる。
【0046】
第2線状部32、33、34、35としては、基点32a、33a、34a、35aから先端まで直線状に延びる構成の他に、基点32a、33a、34a、35aから先端まで曲線状に延びる構成や、直線状に延びる部分と曲線状に延びる部分との両方を有する構成であってもよい。
【0047】
第2線状部32、33、34、35としては、基点32a、33a、34a、35a側の幅よりも、長軸方向で基点32a、33a、34a、35aから離れた位置の先端側の幅が大きいことが好ましく、先端側の幅をW3とし、基点32a、33a、34a、35a側の幅をW4とすると、W3/W4≧0.70の関係を満足することが好ましい。
W3/W4は0.70以上が好ましく、0.80以上がより好ましく、0.85以上がさらに好ましく、0.90以上が特に好ましい。
W3/W4は2.00以下が好ましく、1.70以下がより好ましく、1.20以下がさらに好ましい。
W3/W4≧0.70の関係を満足することにより、第2線状部32、33、34、35に導入された樹脂が、幅が広くなることで、長軸方向の両外側への流動性が高められ、長軸方向で基点32a、33a、34a、35aから離れた位置に流動しやすくなる。
【0048】
短軸方向の一方側に位置する第2線状部32と、短軸方向の他方側に位置する第2線状部35とは、それぞれ第1線状部31に繋がるとともに、中央位置Pを含む同一直線上に配置されている。同様に、短軸方向の一方側に位置する第2線状部33と、短軸方向の他方側に位置する第2線状部34とは、それぞれ第1線状部31に繋がるとともに、中央位置Pを含む同一直線上に配置されている。すなわち、第1線状部31と第2線状部32、33、34、35とは、中央位置Pを中心とする放射状に配置されている。
従って、中央位置Pから導入された樹脂を円滑に斜め方向に分散させることで、樹脂が流れにくいヘッド部3の外周側(ヘッド部縁)に樹脂を行き渡らせることができる。
【0049】
複数の線状部が設けられる場合、貫通部の数は、繋がった複数の線状部を1と計数する。貫通部の数としては、5以下であることが好ましい。貫通部の数が5を超えた場合、2次成形で基台部21Aを成形する際に貫通部(貫通孔)を介して樹脂が合流する箇所が多くなり、ウェルドライン等の成形不良が生じやすくなる。貫通部の数を5以下とすることにより、成形性を高めてウェルドライン等の成形不良の発生を抑制できる。
【0050】
第1線状部31と第2線状部32、33、34、35とを含む貫通部13は、中央位置Pを通り短軸方向に延びる直線を中心として長軸方向に線対称である。
貫通部13を長軸方向に線対称とすることにより、長軸方向への樹脂均一流動性を高めることができる。
【0051】
また、第1線状部31と第2線状部32、33、34、35とを含む貫通部13は、中央位置Pを通り長軸方向に延びる直線を中心として短軸方向に線対称である。
貫通部13を短軸方向に線対称とすることにより、短軸方向への樹脂均一流動性を高めることができる。
【0052】
本実施形態においては、第2線状部32、33、34、35が第1線状部31に繋がっているため、貫通部13の数は1である。貫通部13の数が1であるため、ウェルドライン等の成形不良の発生を最小限に抑えて成形性を高めることができる。
【0053】
正面視で貫通部13を含む支持板部11の面積をAとし、貫通部13の面積をBとすると、0.30≦B/A≦0.60の関係を満足することが好ましい。
B/Aは0.30以上が好ましく、0.35以上がより好ましく、0.40以上がさらに好ましい。
B/Aは0.60以下が好ましく、0.55以下がより好ましく、0.50以下がさらに好ましい。
B/Aで表される値が0.30未満の場合、2次成形時に樹脂の流路の割合が少なく成形性が低下する可能性がある。B/Aで表される値が0.60を超えた場合、硬質樹脂で形成された箇所の割合が減り、破断強度が低下する可能性がある。
B/Aで表される値を0.30以上、0.60以下とすることにより、成形性を維持しつつ、破断強度を高めることができる。
【0054】
正面視でヘッド部3の外径輪郭線で囲まれた面積をCとすると、0.40≦A/C≦0.80の関係を満足することが好ましい。
A/Cは0.40以上が好ましく、0.45以上がより好ましく、0.50以上がさらに好ましい。
A/Cは0.80以下が好ましく、0.75以下がより好ましく、0.70以下がさらに好ましい。
A/Cで表される値が0.40未満の場合、フレーム部12A、12Bの幅が大きくなり、口腔内操作性が低下する可能性がある。A/Cで表される値が0.80を超えた場合、破断強度が低下する可能性がある。
A/Cで表される値を0.40以上、0.80以下とすることにより、口腔内操作性および破断強度を高めることができる。
【0055】
正面視における、第1線状部31の面積の総和をM1とし、第2線状部32、33、34、35の面積の総和をM2とすると、0.25≦M2/M1≦1.20の関係を満足することが好ましい。
M2/M1は0.25以上が好ましく、0.30以上がより好ましく、0.35以上がさらに好ましい。
M2/M1は1.20以下が好ましく、1.00以下がより好ましく、0.80以下がさらに好ましい。
M2/M1で表される値が、0.25未満の場合、ブラシ部20の短軸方向への樹脂の流動性が低下する可能性がある。M2/M1で表される値が、1.20を超えた場合、ブラシ部20の長軸方向への樹脂の流動性が低下する可能性がある。
0.25≦M2/M1≦1.20の関係を満足することにより、ブラシ部20の短軸方向および長軸方向への樹脂の流動性を向上させて、ヘッド部3の縁部近傍への樹脂到達性を高めることができる。
【0056】
面積M1としては、15mm2以上、150mm2以下であることが好ましく、30mm2以上、100mm2以下がより好ましく、40mm2以上、80mm2以下がさらに好ましい。
面積M2としては、3.0mm2以上、150mm2以下であることが好ましく、9.0mm2以上、90mm2以下がより好ましく、14mm2以上、64mm2以下がさらに好ましい。
第2線状部32、33、34、35のそれぞれの面積としては、0.7mm2以上、40mm2以下であることが好ましく、2.0mm2以上、25mm2以下がより好ましく、3.0mm2以上、16mm2以下がさらに好ましい。
【0057】
長軸方向で中央位置Pに最も近い第2線状部32、33、34、35の先端のうち、
図1に示すように、中央位置Pからの距離が最も長い点を通り短軸方向に延びる直線L1、L2を長軸方向の両側でそれぞれ設定したときに、二つの直線L1、L2の間の範囲Dに位置する支持板部11を短軸方向に3等分したときの短軸方向中央の範囲H1の中央領域における貫通部13の面積をd1とし、前記短軸方向一方側の外側の範囲H2の外側領域の貫通部13の面積と短軸方向他方側の外側の範囲H3の領域の貫通部13の面積との平均値をd2とすると、0.20≦d2/d1≦0.70の関係を満足することが好ましい。
d2/d1は0.20以上が好ましく、0.30以上がより好ましく、0.40以上がさらに好ましい。
d2/d1は0.70以下が好ましく、0.65以下がより好ましく、0.60以下がさらに好ましい。
なお、上述の面積d1および平均値d2については、X字状に配置された4つの第2線状部32、33、34、35を有する群を、中央位置Pを挟んだ長軸方向の両側にそれぞれ配置(合計8つの第2線状部)した場合にも適用可能である。
【0058】
ヘッド部3の短軸方向の縁近傍で、貫通部13が占める面積が小さい場合、衝撃強度が高くなる。一方、ブラッシング荷重が集中しやすく、捩れ発生への寄与が大きいヘッド部3の短軸方向の中央部の縁近傍で、貫通部13が占める面積が小さい場合、捩れ抵抗が高くなる。これに対して、d2/d1で表される値が、0.20未満の場合、範囲Dにおける短軸方向の外側への樹脂の流動性が低くなる可能性がある。d2/d1で表される値が0.70を超えた場合、衝撃強度及び捻れ抵抗が低くなる可能性がある。
そのため、d2/d1で表される値を0.20以上、0.70以下とすることにより、範囲Dにおける短軸方向の外側への樹脂の流動性を確保しつつ、衝撃強度及び捻れ抵抗を高めることができる。なお、上記衝撃強度としては、例えば、IZOD強度で評価する。また、捻れ抵抗とは、長軸方向の延びる軸線回りにヘッド部3が回転するのに逆らう力を意味する。
【0059】
以上のように、本実施形態では、ヘッド部3の強度が高く、成形性に優れた薄型一体成形型の歯ブラシ1が得られる。
【0060】
[歯ブラシの第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る歯ブラシ1の部分正面図である。
この図において、
図1乃至
図2に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
図3に示すように、本実施形態の第2線状部32、33、34、35は、第1線状部31と繋がらず離れて配置されている。第2線状部32、33、34、35は、第1線状部31に対して、それぞれ第1線状部31との距離が最も短い基点32a、33a、34a、35aから、短軸方向で第1線状部31から離れるのに従って、長軸方向で基点32a、33a、34a、35aから離れる方向である先端側に延びる。基点32a、33a、34a、35aは、それぞれ第1線状部31に対して一定の距離で離れた位置である。
【0062】
すなわち、第1線状部31と第2線状部32、33、34、35とは、互いに離れて配置されそれぞれ独立している。そのため、第2線状部32は貫通部14を構成し、第2線状部33は貫通部15を構成し、第2線状部34は貫通部16を構成し、第2線状部35は貫通部17を構成する。本実施形態では、5つの貫通部13、14、15、16、17が形成されている。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0063】
本実施形態においては、第1成形体のヘッド部3においては、支持板部11の正面11aとフレーム部12Aの内周面とに囲まれた凹部と、支持板部11の背面11bとフレーム部12Bの内周面とに囲まれた凹部と、当該凹部同士を支持板部11を厚さ方向に貫通し正面側の凹部と背面側の凹部とに開口する第1線状部31に対応する貫通孔13aに加えて、第2線状部32、33、34、35に対応する貫通孔32b、33b、34b、35bがそれぞれ形成される。
【0064】
そして、2次成形により第2成形体を成形する際には、背面側の中央位置Pのゲートから背面側の凹部、貫通孔13a、32b、33b、34b、35bおよび正面側の凹部を介して第2の樹脂組成物を導入してフィラメント50を成形する。2次成形時に背面側の凹部に導入された樹脂は、貫通孔13a、32b、33b、34b、35bをそれぞれ流動して正面側の凹部に充填される。
【0065】
そのため、2次成形時の樹脂は円滑、且つ、短時間で中央位置Pから遠い位置に充填され成形性が高められる。なお、上述したように、本実施形態では、貫通部の数が5つであるため、成形性を高めてウェルドライン等の成形不良の発生を抑制できる。
【0066】
また、本実施形態では、正面視における、第1線状部31の面積の総和M1は、第1線状部31の面積となる。第1線状部31の面積となる総和M1と、第2線状部32、33、34、35の面積の総和M2とが、0.25≦M2/M1≦1.20の関係を満足することにより、ブラシ部20の短軸方向および長軸方向への樹脂の流動性を向上させて、ヘッド部3の縁部近傍への樹脂到達性を高めることができる。
【0067】
[実施例]
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0068】
(実施例1~4、比較例1~3)
本実施例では、下記[表1]、[表2]に示す仕様に従って、実施例1~4、比較例1~3の歯ブラシのサンプルを作製した。
各例の歯ブラシにおける貫通部は表1、表2に示す形状とした。ハンドル体の硬質樹脂は、ポリプロピレン(PP)樹脂を用い、ブラシ部の軟質樹脂はポリウレタンを用いた。
【0069】
実施例1のサンプルは、上述した第1実施形態の歯ブラシをサンプルとした。実施例2のサンプルは、上述した第2実施形態の歯ブラシをサンプルとした。
【0070】
実施例3のサンプルは、実施例1のサンプルに対して、第2線状部が広がるテーパ角度を大きくした貫通部形状を有する歯ブラシをサンプルとした。実施例4のサンプルは、実施例1のサンプルに対して、長軸方向で先端側に位置する2つの第2線状部を有する群を中央位置Pよりも長軸方向の先端側に配置し、長軸方向で後端側に位置する2つの第2線状部を有する群を中央位置よりも長軸方向の後端側に配置し、各第2線状部において短軸方向の外側の幅を短軸方向の内側の幅よりも小さい貫通部形状を有する歯ブラシをサンプルとした。
【0071】
比較例1のサンプルは、実施例1のサンプルに対して、第1線状部を中央位置で分断した貫通部形状を有する歯ブラシをサンプルとした。比較例2のサンプルは、長軸方向に対して傾いた2つの第1線状部がX字状に配置された貫通部形状を有する歯ブラシをサンプルとした。比較例3のサンプルは、実施例1のサンプルに対して、第2線状部が配置されず、中央位置から短軸方向に延び第1線状部と繋がる第3線状部を短軸方向の両側に配置された貫通部形状を有する歯ブラシをサンプルとした。
【0072】
上記実施例1~4、比較例1~3のサンプルは、いずれもヘッド部の最大厚さは、2.5mm以上、4.0mm以下であり、支持板部の面積Aと貫通部の面積Bとは、0.30≦B/A≦0.60の関係を満足している。
以下は各サンプルで共通とした。
・ヘッド部の厚さ:3.0mm
・フレーム部12A、12Bの最大厚さをE:3.0mm
・貫通部13の最小厚さをF:1.8mm
・F/E=0.60
(実施例1)
・支持板部の面積A=192.7mm2
・支持板部の面積B=93.2mm2
・B/A=0.48
・正面視でヘッド部3の外径輪郭線で囲まれた面積C=315.9mm2
・A/C=0.61
・第1線状部31の外側の最大幅W1=4.5mm
・中央側の最小幅W2=2.7mm
・W1/W2=1.7
・W3=2.5mm
・W4=2.7mm
・W3/W4=0.92
・M1=62.6mm2
・M2=30.7mm2
・M2/M1=0.49
・d1=19.1mm2
・d2=9.2mm2
・d2/d1=0.48
(実施例2)
・支持板部の面積A=192.7mm2
・支持板部の面積B=96.6mm2
・B/A=0.50
・正面視でヘッド部3の外径輪郭線で囲まれた面積C=315.9mm2
・A/C=0.61
・第1線状部31の外側の最大幅W1=4.8mm
・中央側の最小幅W2=2.1mm
・W1/W2=2.3
・W3=2.1mm
・W4=1.3mm
・W3/W4=1.6
・M1=71.7mm2
・M2=24.9mm2
・M2/M1=0.35
・d1=18.8mm2
・d2=8.0mm2
・d2/d1=0.43
(実施例3)
・支持板部の面積A=192.7mm2
・支持板部の面積B=94.0mm2
・B/A=0.49
・正面視でヘッド部3の外径輪郭線で囲まれた面積C=315.9mm2
・A/C=0.61
・第1線状部31の外側の最大幅W1=3.3mm
・中央側の最小幅W2=2.6mm
・W1/W2=1.3
・W3=3.8mm
・W4:3.3mm
・W3/W4=1.1
・M1=51.0mm2
・M2=43.1mm2
・M2/M1=0.84
・d1=13.9mm2
・d2=7.2mm2
・d2/d1=0.52
(実施例4)
・支持板部の面積A=192.7mm2
・支持板部の面積B=96.3mm2
・B/A=0.50
・正面視でヘッド部3の外径輪郭線で囲まれた面積C=315.9mm2
・A/C=0.61
・第1線状部31の外側の最大幅W1=2.9mm
・中央側の最小幅W2=1.9mm
・W1/W2=1.5
・W3=3.5mm
・W4=4.8mm
・W3/W4=0.73
・M1=47.6mm2
・M2=48.7mm2
・M2/M1=1.02
・d1=26.1mm2
・d2=7.5mm2
・d2/d1=0.29
(比較例1)
・支持板部の面積A=192.7mm2
・支持板部の面積B=90.5mm2
・B/A=0.47
・正面視でヘッド部3の外径輪郭線で囲まれた面積C=315.9mm2
・A/C=0.61
・第1線状部31の外側の最大幅W1=2.9mm
・中央側の最小幅W2=2.4mm
・W1/W2=1.21
・W3=2.2mm
・W4=2.4mm
・W3/W4=0.94
・M1=49.6mm2
・M2=52.6mm2
・M2/M1=1.06
(比較例2)
・支持板部の面積A:192.7mm2
・支持板部の面積B:98.9mm2
・B/A=0.51
・正面視でヘッド部3の外径輪郭線で囲まれた面積C=315.9mm2
・A/C=0.61
(比較例3)
・支持板部の面積A=192.7mm2
・支持板部の面積B=102.8mm2
・B/A=0.53
・正面視でヘッド部3の外径輪郭線で囲まれた面積C=315.9mm2
・A/C=0.61
・第1線状部31の外側の最大幅W1=4.0mm
・中央側の最小幅W2=2.7mm
・W1/W2=1.5
・W3=3.9mm
・W4:3.1mm
・W3/W4=1.3
・M1=66.4mm2
・M2=23.4mm2
・M2/M1=0.35
・d1=11.5mm2
・d2=10.9mm2
・d2/d1=0.95
【0073】
[評価項目]
実施例1~4、比較例1~3のサンプルに対して、「バリ評価」、「使用試験」について評価した。実施例1~4のサンプルについては、「樹脂均一流動性」、「ヘッド縁近傍への樹脂到達性」、「衝撃強度、捻れ抵抗」の評価を行った。
【0074】
[評価方法]
(1)「バリ評価」
[試験方法]
10人のモニターが、各例の歯ブラシのサンプルについて、ヘッド部の背面を目視観察し、バリ発生の有無を下記の評価基準で評価した。10人のモニターの平均点が5点を「◎(double circle mark)」、5点未満4点以上を「○(circle mark)」、4点未満を「×(cross mark)」とした。
5点:バリは全く無い。
4点:バリはほとんど無い。
3点:バリはほんの少しある。
2点:バリは少しある。
1点:バリはたくさんある。
【0075】
(2)「使用試験」
[試験方法]
10人のモニターが、各実施例の歯ブラシで口腔内を清掃し、その際の奥歯の奥(咽喉側)を磨いている時のヘッド部の撓む効果を下記の評価基準で評価した。10人のモニターの平均点が4点以上を「◎」、4点未満3点以上を「○」、3点未満を「×」とした。
5点:ヘッド部の撓む感触をまったく感じない。
4点:ヘッド部の撓む感触をあまり感じない。
3点:ヘッド部の撓む感触を感じる。
2点:ヘッド部の撓む感触を強く感じる。
1点:ヘッド部の撓む感触を非常に感じる。
【0076】
(3)「樹脂均一流動性」
[評価基準]
☆:非常に良い→ゲート部を中央とし、貫通部は1つで、放射状に配置されている。
◎:かなり良い→ゲート部を中央とし、貫通部は放射状に配置されている。
○:良い→貫通部は放射状に配置されている。
×:悪い→貫通部は放射状に配置されていない。
【0077】
(4)「ヘッド縁近傍への樹脂到達性」
[評価基準]
☆:非常に良い。
◎:かなり良い。
○:良い。
×:悪い。
【0078】
(5)「衝撃強度、捻れ抵抗」
[評価基準]
☆:非常に良い。
◎:かなり良い。
○:良い。
×:悪い。
【0079】
【0080】
【0081】
[表1]、[表2]に示されるように、貫通部が、中央位置を含み長軸方向に延びる第1線状部と、第1線状部に対して短軸方向の一方側および他方側にそれぞれ配置され、第1線状部との距離が最も短い基点から、短軸方向で第1線状部から離れるのに従って、長軸方向で基点から離れる方向に延びる第2線状部とを有する実施例1~4のサンプルについては、「バリ評価」、「使用試験」、「樹脂均一流動性」、「ヘッド縁近傍への樹脂到達性」、「衝撃強度、捻れ抵抗」の全てで良好な評価が得られた。
【0082】
一方、中央位置を含まない第1線状部を有する比較例1のサンプルおよび第2線状部を含まない比較例2~3のサンプルについては、「バリ評価」で良好な評価が得られなかった。また、長軸方向と短軸方向とに交差する線状部を有さない比較例3のサンプルについては、「使用試験」でも良好な評価が得られなかった。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0084】
1…歯ブラシ、 3…ヘッド部、 4…ネック部、 11…支持板部、 12A…フレーム部、 13、14、15、16、17…貫通部、 20…ブラシ部、 21A…基台部、 31…第1線状部、 32、33、34、35…第2線状部、 32a、33a、34a、35a…基点、 50…フィラメント、 P…中央位置