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  • 特開-チャッキング確認装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103696
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】チャッキング確認装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/00 20060101AFI20220701BHJP
   B23B 31/26 20060101ALI20220701BHJP
   B23Q 3/12 20060101ALI20220701BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B23B31/00 D
B23B31/26
B23Q3/12 B
B23Q17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218483
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000188881
【氏名又は名称】松本機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100210295
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 誠心
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正道
(72)【発明者】
【氏名】松澤 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 司
(72)【発明者】
【氏名】昔農 賢人
(72)【発明者】
【氏名】奥野 直起
【テーマコード(参考)】
3C016
3C029
3C032
【Fターム(参考)】
3C016FA40
3C029EE06
3C032GG34
3C032KK03
(57)【要約】
【課題】本発明は、センサの位置調整を必要とすることなく、多種の被加工物の正常なチャッキングを確認できるチャッキング確認装置を提供すること。
【解決手段】チャッキング確認装置1は、チャック爪12の開閉と連動する移動体13(14)の位置を検出する検出手段2,3と、被加工物Wをチャック爪12で正常にチャッキングした場合に、検出手段2,3で検出された移動体13(14)の位置に基づいて設定される移動体の位置の仮想的正常チャッキング範囲4と、被加工物Wの情報とを関連付けて記憶する記憶手段5とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック爪の開閉と連動する移動体の位置を検出する検出手段と、
被加工物をチャック爪で正常にチャッキングした場合に、検出手段で検出された移動体の位置に基づいて設定され、正常なチャッキングとみなすことができる移動体の位置の仮想的範囲と、被加工物の情報とを関連付けて記憶する記憶手段とを有することを特徴とするチャッキング確認装置。
【請求項2】
検出手段は、一対の近接センサを有しており、
それぞれの近接センサの配置に応じて、正常なチャッキングとみなすことができる移動体の位置の仮想的範囲が異なることを特徴とする請求項1のチャッキング確認装置。
【請求項3】
一対の近接センサは、それぞれドックの移動方向と平行な方向に離間して配置されており、
一方の近接センサが検出結果を一旦ONとして出力した後にOFFとして出力したこと、及び、一方の近接センサが検出結果をOFFとして出力した後に所定時間経過後に他方の近接センサが検出結果をOFFとして出力したことを条件に正常なチャッキングと判定するようになっている場合、一方の近接センサで検出結果をONとする移動体の位置の最適な範囲を設定した後に、他方の近接センサで検出結果をONとする移動体の位置の最適な範囲を設定することを特徴とする請求項2に記載のチャッキング確認装置。
【請求項4】
一対の近接センサは、それぞれドックの移動方向と直角な方向に対向して配置されており、
双方の近接センサが検出結果を一旦ONとして出力していることを条件に正常なチャッキングと判定するようになっている場合、双方の近接センサで検出結果をONとする移動体の位置の最適な範囲が重なり合うように設定することを特徴とする請求項2に記載のチャッキング確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のチャックにおいて、被加工物の正常なチャッキングを確認できる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物を自動的に供給する工作機械では、被加工物が正常にチャッキングされていることを確認する必要がある。このような被加工物が正常にチャッキングされていることを確認する装置として、特許文献1に示すようなチャックの把握確認装置がある。特許文献1のチャックの把握確認装置は、チャック爪の動きを検出器で検出することによって、正常にチャッキングされていることを確認できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-210804号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のようなチャックの把握確認装置では、被加工物の種類が変わるたびに、センサの位置調整が必要となるという問題があった。
【0005】
そこで、上記問題を解決すべく、本発明は、多種の被加工物について、センサの位置調整を必要とすることなく、正常なチャッキングを確認できるチャッキング確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のチャッキング確認装置は、チャック爪の開閉と連動する移動体の位置を検出する検出手段と、被加工物をチャック爪で正常にチャッキングした場合に、検出手段で検出された移動体の位置に基づいて設定される移動体の位置の仮想的正常チャッキング範囲と、被加工物の情報とを関連付けて記憶する記憶手段とを有する。
【0007】
請求項1のチャッキング確認装置によれば、被加工物の種類が変わっても、記憶手段に関連付けて記憶されている仮想的正常チャッキング範囲と被加工物の情報とを活用することにより、多種の被加工物について、センサの位置調整をすることなく、正常なチャッキングを確認することができる。
【0008】
請求項2のチャッキング確認装置は、請求項1のチャッキング確認装置において、検出手段は、一対の近接センサを有しており、それぞれの近接センサの配置に応じて、移動体位置に基づいて設定される移動体の位置の仮想的正常チャッキング範囲が異なる。
【0009】
請求項2のチャッキング確認装置によれば、請求項1のチャッキング確認装置と同様の作用に加えて、検出手段における移動体位置の正確な検出と、検出手段の一対の近接センサの配置に応じて、最適な移動体の位置の仮想的正常チャッキング範囲が設定される。
【0010】
請求項3のチャッキング確認装置は、請求項2のチャッキング確認装置において、一対の近接センサは、それぞれ移動体の移動方向と平行な方向に離間して配置されており、一方の近接センサが検出結果を一旦ONとして出力した後にOFFとして出力したこと、及び、一方の近接センサが検出結果をOFFとして出力した後に所定時間経過後に他方の近接センサが検出結果をOFFとして出力したことを条件に正常なチャッキングと判定するようになっている場合、一方の近接センサで検出結果をONとする移動体の位置の最適な範囲を設定した後に、他方の近接センサで検出結果をONとする移動体の位置の最適な範囲を設定する。
【0011】
請求項3のチャッキング確認装置によれば、請求項2のチャッキング確認装置と同様の作用に加えて、正常なチャッキングを確認するまでの時間を短縮することができる。
【0012】
請求項4のチャッキング確認装置は、請求項2のチャッキング確認装置において、一対の近接センサは、それぞれ移動体の移動方向と直角な方向に対向して配置されており、双方の近接センサが検出結果をONとして出力していることを条件に正常なチャッキングと判定するようになっている場合、双方の近接センサで検出結果をONとする移動体の位置の最適な範囲が重なり合うように設定する。
【0013】
請求項4のチャッキング確認装置によれば、請求項2のチャッキング確認装置と同様の作用に加えて、双方の近接センサが検出結果をONとして出力していることを条件に正常なチャッキングと判定するようになっているため、チャッキングの確認の信頼性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1から4のいずれかに記載のチャッキング確認装置は、多種の被加工物について、センサの位置調整を必要とすることなく、正常なチャッキングを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】チャックの一例と本発明の第一実施形態のチャッキング確認装置での設定された仮想的正常チャッキング範囲との関係を示す概略図である。
図2】チャックの一例と本発明の第二実施形態のチャッキング確認装置での設定された仮想的正常チャッキング範囲との関係を示す概略図である。
図3】本発明のチャッキング確認装置での移動体の位置の仮想的範囲の設定するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第一実施形態のチャッキング確認装置1は、図1及び図2に示すように、被加工物Wを把持するチャック10に設けられる。
【0017】
チャック10は、チャック本体11と、チャック本体11の円形の前面において径方向に移動して開閉可能となっている複数のチャック爪12と、チャック爪12と連結されるドロー部材13と、ドロー部材13に設けられているドッグ14とを有する。
【0018】
図1及び図2に示す矢印Aと平行なチャック軸線方向に沿って、ドロー部材13及びドッグ14と一体となった移動体が前後に移動することにより、チャック爪12が開閉するようになっている。
【0019】
図1に示す本発明の第一実施形態のチャッキング確認装置1は、チャック爪12の開閉と連動するドッグ14の位置を検出する検出手段としての一対の近接センサ2,3と、被加工物Wをチャック爪12で正常にチャッキングした場合に、近接センサ2,3で検出されたドッグ14の位置に基づいて設定され、正常なチャッキングとみなすことができる移動体の位置の仮想的範囲4と、被加工物Wの情報とを関連付けて記憶する記憶手段5とを有する。
【0020】
一対の近接センサ2,3は、それぞれドッグ14の移動方向と平行な方向に離間して配置されている。
【0021】
図1では、移動体の一部であるドロー部材13が矢印A方向に動いていく過程で、チャック爪12が閉じていくようになっている。
【0022】
同じく移動体の一部であるドッグ14は、まず近接センサ2で検出結果をONとする範囲2aを通過して、一定期間経過後に、近接センサ3で検出結果をONとする範囲3aに到達しなれければ、正常なチャッキングが確認できるようになっている。
【0023】
この一定期間の経過を待っている間は、正常なチャッキングを確認するまでのタイムラグとなる。
【0024】
移動体の移動方向と平行な方向において、近接センサ2のONとする範囲2aと、近接センサ3で検出結果をONとする範囲3aとの間の距離とが短くなればなるほど、正常なチャッキングを確認するまでのタイムラグを小さくすることができる。
【0025】
様々な被加工物Wをチャック爪12で正常にチャッキング場合に近接センサ2又は近接センサ3でドッグ14の位置に基づいて、近接センサ2のONとする範囲2aと、近接センサ3で検出結果をONとする範囲3aを調整する。
【0026】
移動体の移動方向と平行な方向において、近接センサ2のONとする範囲2aと近接センサ3のONとする範囲3aとの間を、正常なチャッキングとみなすことができるドッグ14の位置の仮想的範囲4とすることができる。
【0027】
図1の(a)~(c)に示すように、チャッキングする被加工物Wの種類に応じて、近接センサ2のONとする範囲2aと、近接センサ3で検出結果をONとする範囲3aと調整することで、ドッグ14の位置の仮想的範囲4が異なる。記憶手段5は、各被加工物Wの情報とそれに対応する仮想的範囲4とを関連付けて記憶する。
【0028】
被加工物Wの種類が変わっても、記憶手段に関連付けて記憶されている仮想的正常チャッキング範囲4と被加工物Wの情報とを活用することにより、多種の被加工物について、センサ2,3の位置調整をすることなく、正常なチャッキングを確認することができる。
【0029】
図2に示す本発明の第二実施形態のチャッキング確認装置1は、チャック爪12の開閉と連動するドッグ14の位置を検出する検出手段としての一対の近接センサ6,7と、被加工物Wをチャック爪12で正常にチャッキングした場合に、近接センサ6,7で検出されたドッグ14の位置に基づいて設定され、正常なチャッキングとみなすことができる移動体の位置の仮想的範囲8と、被加工物Wの情報とを関連付けて記憶する記憶手段9とを有する。
【0030】
一対の近接センサ6,7は、それぞれドッグ14の移動方向と直角な方向に対向して配置されている。
【0031】
図2では、移動体の一部であるドロー部材13が矢印A方向に動いていく過程で、チャック爪12が閉じていくようになっている。
【0032】
同じく移動体の一部であるドッグ14は、近接センサ6で検出結果をONとする範囲6a内であり、かつ、近接センサ7で検出結果をONとする範囲7a内である場合、正常なチャッキングが確認できるようになっている。
【0033】
様々な被加工物Wをチャック爪12で正常にチャッキング場合に近接センサ6又は近接センサ7でドッグ14の位置に基づいて、近接センサ6のONとする範囲6aと、近接センサ7で検出結果をONとする範囲7aを調整する。
【0034】
移動体の一部であるドッグ14の移動方向と平行な方向において、近接センサ6のONとする範囲6aと近接センサ7のONとする範囲7aとが重なる範囲を、正常なチャッキングとみなすことができるドッグ14の位置の仮想的範囲8とすることができる。
【0035】
図2の(a)~(c)に示すように、チャッキングする被加工物Wの種類に応じて、近接センサ6のONとする範囲6aと、近接センサ7で検出結果をONとする範囲7aと調整することで、ドッグ14の位置の仮想的範囲8は異なる。記憶手段5は、各被加工物Wの情報とそれに対応する仮想的範囲8とを関連付けて記憶する。
【0036】
被加工物Wの種類が変わっても、記憶手段に関連付けて記憶されている仮想的正常チャッキング範囲8と被加工物Wの情報とを活用することにより、多種の被加工物について、センサ6,7の位置調整をすることなく、正常なチャッキングを確認することができる。
【0037】
以下、本発明のチャッキング確認装置での移動体の位置の仮想的範囲の設定フローについて図3を参照して説明する。
【0038】
S1のステップにおいて、例えば形状、寸法等の被加工物の情報を取得する。
【0039】
S2のステップにおいて、被加工物をチャック爪で正常にチャッキングした場合に、移動体の位置を検出手段である近接センサで検出する。
【0040】
S3のステップにおいて、S2で検出された移動体の位置に基づいて、正常なチャッキングとみなすことができる移動体の位置の仮想的範囲を設定する。
【0041】
詳細に説明すると、S3のステップには、S31~S35のステップが含まれている。
【0042】
S31のステップにおいて、一対の近接センサの配置を判定する。
【0043】
前述の第一実施形態のように、一対の近接センサ2,3は、それぞれドッグ14の移動方向と平行な方向に離間して配置されている場合は、S32に進む。
【0044】
前述の第二実施形態のように、一対の近接センサ6,7は、それぞれドッグ14の移動方向と直角な方向に対向して配置されている場合は、S35に進む。
【0045】
S31において、第一実施形態型の一対の近接センサの配置と、第二実施形態型の一対の近接センサの配置とで、分岐することによって、一対の近接センサの配置に応じた移動体の位置の仮想的範囲をそれぞれ設定することができる。
【0046】
S32のステップにおいて、一方の近接センサの検出結果をONとする範囲を設定する。
【0047】
S33のステップにおいて、他方の近接センサの検出結果をONとする範囲を設定する。
【0048】
S34のステップにおいて、一方の近接センサのONとする範囲と、他方の近接センサのONとする範囲との間を移動体の位置の仮想的範囲と設定する。
【0049】
S35のステップにおいて、一方の近接センサのONとする範囲と、他方の近接センサのONとする範囲とが移動体の位置の仮想的範囲と設定する。
【0050】
それぞれの近接センサ2,3,6,7のONとする範囲は、検出手段で検出されたドッグ14の位置のデータを、例えば3σ等の様々な統計手法を活用して設定することが可能である。
【0051】
S4のステップにおいて、記憶手段でS3の移動体の位置の仮想的範囲とS1の被加工物の情報とを関連付けて記憶する。
【0052】
上記実施形態では、チャッキング確認装置が設けられるチャックの一例として、チャック10ついて説明したが、これに限定されることはない。チャック爪の開閉と連動する移動体の位置が検出できるのであれば、他の様々な構成のチャックにチャッキング確認装置が設けられていてもよい。
【0053】
上記実施形態では、チャッキング確認装置1の検出手段が一対の近接センサであり、ドッグ14の位置から移動体の位置を検出する場合について説明したが、これに限定されることはない。検出手段は、移動体の位置を検出できるのであれば、他の渦電流式などの検出原理のセンサであってもよいし、2個以外のセンサ数であってもよく、検出原理によってはドッグが存在しないものであってもよい。
【0054】
上記第一実施形態では、図1に示すような一対の近接センサ2,3の配置である場合、上記第二実施形態では、図2に示すような一対の近接センサ6,7の配置である場合についてそれぞれ説明したが、これに限定されることはない。移動体の位置を検出して、移動体の位置の仮想的範囲を設定できるのであれば、他の配置であってもよい。
【0055】
上記実勢形態では、S3のステップには、S31~S35のステップが含まれている場合について説明したが、これに限定されることはない。S2で検出された移動体の位置に基づいて、正常なチャッキングとみなすことができる移動体の位置の仮想的範囲を設定することができるのであれば、別のフローで移動体の位置の仮想的範囲を設定してもよい。
【0056】
上記実勢形態では、S31において、第一実施形態型の一対の近接センサの配置と、第二実施形態型の一対の近接センサの配置とで、分岐する場合について説明したがこれに限定されることはない。センサの配置を判定しないフローや、センサの配置の判定による分岐が3以上となっていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 チャッキング確認装置
2 近接センサ
2a 近接センサ2で検出結果をONとする範囲
3 近接センサ
3a 近接センサ3で検出結果をONとする範囲
4 移動体の位置の仮想的範囲
5 記憶手段
6 近接センサ
6a 近接センサ6で検出結果をONとする範囲
7 近接センサ
7a 近接センサ7で検出結果をONとする範囲
8 移動体の位置の仮想的範囲
9 記憶手段
10 チャック
11 チャック本体
12 チャック爪
13 ドロー部材
14 ドッグ
図1
図2
図3