(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103803
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】炭化水素生成システム及び炭化水素生成方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20220701BHJP
C07C 9/02 20060101ALI20220701BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20220701BHJP
C07B 61/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/02
C07C9/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218656
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】成相 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 光亮
(72)【発明者】
【氏名】辻川 順
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AB84
4H006AC29
4H006BA19
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA23
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BD33
4H006BD52
4H006BD81
4H006BD84
4H039CA10
4H039CB20
(57)【要約】
【課題】炭化水素を安定的に又は高純度で生成することが可能な炭化水素生成システム及び炭化水素生成方法を提供する。
【解決手段】炭化水素生成システム1は、二酸化炭素及び水素を含む第1原料から炭化水素を生成する第1反応器20と、第2原料から炭化水素を生成する第2反応器40とを備えている。炭化水素生成システム1は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の二酸化炭素を第2反応器40に供給する二酸化炭素供給部30を備えている。炭化水素生成システム1は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の水素を第2反応器40に供給する水素供給部35を備えている。第2原料は、第1反応器20から供給される二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方、並びに、二酸化炭素供給部30から供給される二酸化炭素及び水素供給部35から供給される水素の少なくともいずれか一方を含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素及び水素を含む第1原料から炭化水素を生成する第1反応器と、
第2原料から炭化水素を生成する第2反応器と、
前記第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の二酸化炭素を前記第2反応器に供給する二酸化炭素供給部と、
前記第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の水素を前記第2反応器に供給する水素供給部と、
を備え、
前記第2原料は、前記第1反応器から供給される二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方、並びに、前記二酸化炭素供給部から供給される二酸化炭素及び前記水素供給部から供給される水素の少なくともいずれか一方を含む、炭化水素生成システム。
【請求項2】
前記第1原料に含まれる二酸化炭素の濃度を測定する二酸化炭素濃度測定部をさらに備え、前記第1原料に含まれる二酸化炭素の量は前記二酸化炭素濃度測定部によって測定された二酸化炭素の濃度である、請求項1に記載の炭化水素生成システム。
【請求項3】
前記第1原料に含まれる水素の濃度を測定する水素濃度測定部をさらに備え、前記第1原料に含まれる水素の量は前記水素濃度測定部によって測定された水素の濃度である、請求項1又は2に記載の炭化水素生成システム。
【請求項4】
前記第1原料に含まれる二酸化炭素の流量を測定する二酸化炭素流量測定部をさらに備え、前記第1原料に含まれる二酸化炭素の量は前記二酸化炭素流量測定部によって測定された二酸化炭素の流量である、請求項1~3のいずれか一項に記載の炭化水素生成システム。
【請求項5】
前記第1原料に含まれる水素の流量を測定する水素流量測定部をさらに備え、前記第1原料に含まれる水素の量は前記水素流量測定部によって測定された水素の流量である、請求項1~4のいずれか一項に記載の炭化水素生成システム。
【請求項6】
前記二酸化炭素供給部によって供給される二酸化炭素及び前記水素供給部によって供給される水素の少なくともいずれか一方は、前記第1反応器内の温度及び圧力の少なくともいずれか一方に応じて前記第2反応器へ供給される、請求項1~5のいずれか一項に記載の炭化水素生成システム。
【請求項7】
前記第1反応器及び前記第2反応器で生成される炭化水素は炭素数が2以上の直鎖の炭化水素を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の炭化水素生成システム。
【請求項8】
前記第1反応器及び前記第2反応器で生成される炭化水素はメタンを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の炭化水素生成システム。
【請求項9】
二酸化炭素及び水素を含む第1原料から炭化水素を第1反応器で生成する第1反応工程と、
第2原料から炭化水素を第2反応器で生成する第2反応工程と、
前記第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の二酸化炭素を前記第2反応器に供給する二酸化炭素供給工程と、
前記第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の水素を前記第2反応器に供給する水素供給工程と、
を含み、
前記第2原料は、前記第1反応器から供給される二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方、並びに、前記二酸化炭素供給工程で供給される二酸化炭素及び前記水素供給工程で供給される水素の少なくともいずれか一方を含む、炭化水素生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化水素生成システム及び炭化水素生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素は、エネルギー源及び化学製品の原料などとして広く用いられており、その多くは化石燃料を原料として生成されている。しかしながら、化石燃料を由来とする生成物を燃やすと、地球温暖化の原因として問題視されている大気中の二酸化炭素濃度が増加する。一方、炭化水素は、二酸化炭素を含む原料から生成することができ、工場の排気ガスなどに含まれる二酸化炭素から炭化水素を生成することで、二酸化炭素の排出を抑制することが期待されている。
【0003】
しかしながら、二酸化炭素及び水素を含む原料から炭化水素を生成する場合、生成物には、目的とする炭化水素だけでなく、未反応の二酸化炭素及び水素も含まれる。そこで、特許文献1に開示されたメタン製造装置は、水素と二酸化炭素とを含むガスからメタンを製造する第一メタネーション反応器と、第一メタネーション反応器で残留した物質からメタンを製造する第二メタネーション反応器とを有している。また、第一メタネーション反応器に流入する反応ガスの変動に応じて第一メタネーション反応器が化学平衡状態に近づくように第一メタネーション反応器に流入する反応ガスをバイパスして第二メタネーション反応器に流入させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のメタン製造装置では、第一メタネーション反応器で残留した物質からメタンを製造し、反応工程を多段階とすることで、メタンの生成効率向上を図っている。しかしながら、第一メタネーション反応器入口の圧力の変動、及び各原料を供給するためのバルブ開度のずれなどにより、第一メタネーション反応器へ供給される二酸化炭素と水素との比率が変動する場合がある。従来のメタン製造装置では、このような比率の変動を抑制することができないため、第二メタネーション反応器で生成される炭化水素を安定的に又は高純度で得ることができないおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は、炭化水素を安定的に又は高純度で生成することが可能な炭化水素生成システム及び炭化水素生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る炭化水素生成システムは、二酸化炭素及び水素を含む第1原料から炭化水素を生成する第1反応器と、第2原料から炭化水素を生成する第2反応器とを備えている。炭化水素生成システムは、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の二酸化炭素を第2反応器に供給する二酸化炭素供給部を備えている。炭化水素生成システムは、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の水素を第2反応器に供給する水素供給部を備えている。第2原料は、第1反応器から供給される二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方、並びに、二酸化炭素供給部から供給される二酸化炭素及び水素供給部から供給される水素の少なくともいずれか一方を含んでいる。
【0008】
炭化水素生成システムは第1原料に含まれる二酸化炭素の濃度を測定する二酸化炭素濃度測定部をさらに備え、第1原料に含まれる二酸化炭素の量は二酸化炭素濃度測定部によって測定された二酸化炭素の濃度であってもよい。
【0009】
炭化水素生成システムは第1原料に含まれる水素の濃度を測定する水素濃度測定部をさらに備え、第1原料に含まれる水素の量は水素濃度測定部によって測定された水素の濃度であってもよい。
【0010】
炭化水素生成システムは第1原料に含まれる二酸化炭素の流量を測定する二酸化炭素流量測定部をさらに備え、第1原料に含まれる二酸化炭素の量は二酸化炭素流量測定部によって測定された二酸化炭素の流量であってもよい。
【0011】
炭化水素生成システムは第1原料に含まれる水素の流量を測定する水素流量測定部をさらに備え、第1原料に含まれる水素の量は水素流量測定部によって測定された水素の流量であってもよい。
【0012】
二酸化炭素供給部によって供給される二酸化炭素及び水素供給部によって供給される水素の少なくともいずれか一方は、第1反応器内の温度及び圧力の少なくともいずれか一方に応じて第2反応器へ供給されてもよい。
【0013】
第1反応器及び第2反応器で生成される炭化水素は炭素数が2以上の直鎖の炭化水素を含んでいてもよい。
【0014】
第1反応器及び第2反応器で生成される炭化水素はメタンを含んでいてもよい。
【0015】
本開示に係る炭化水素生成方法は、二酸化炭素及び水素を含む第1原料から炭化水素を第1反応器で生成する第1反応工程と、第2原料から炭化水素を第2反応器で生成する第2反応工程とを含んでいる。炭化水素生成方法は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の二酸化炭素を第2反応器に供給する二酸化炭素供給工程を含んでいる。炭化水素生成方法は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の水素を第2反応器に供給する水素供給工程を含んでいる。第2原料は、第1反応器から供給される二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方、並びに、二酸化炭素供給工程で供給される二酸化炭素及び水素供給工程で供給される水素の少なくともいずれか一方を含んでいる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、炭化水素を安定的に又は高純度で生成することが可能な炭化水素生成システム及び炭化水素生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る炭化水素生成システムを示す概略図である。
【
図2】別の実施形態に係る炭化水素生成システムを示す概略図である。
【
図3】第1原料における二酸化炭素及び水素の比と、第2原料における二酸化炭素及び水素の比との関係を示すグラフである。
【
図4】第1原料の二酸化炭素及び水素の比と、第2反応器へ供給される水素の供給量との関係を示すグラフである。
【
図5】第1原料の二酸化炭素及び水素の比と、第2反応器へ供給される二酸化炭素の供給量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る炭化水素生成システム1について
図1を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、第1反応器20と、第2二酸化炭素供給部30(二酸化炭素供給部)と、第2水素供給部35(水素供給部)と、第2反応器40とを備えている。炭化水素生成システム1は、第1二酸化炭素供給部10と、第1水素供給部13と、二酸化炭素濃度測定部Q1と、水素濃度測定部Q2と、圧力測定部Pと、温度測定部Tと、制御部50とをさらに備えていてもよい。
【0020】
第1二酸化炭素供給部10は、第1反応器20に二酸化炭素を供給する。第1二酸化炭素供給部10は、二酸化炭素供給源11と流量調整部12とを含んでいる。二酸化炭素供給源11は、例えば、発電所及び工場などのような二酸化炭素発生源から排出された二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収部を含んでいてもよい。二酸化炭素発生源から回収された二酸化炭素を炭化水素の原料とすることにより、大気中に放出される二酸化炭素の量を低減し、有用な炭化水素を生成することができる。また、二酸化炭素を原料として炭化水素を生成することができれば、有限の資源である石油の使用も低減することができる。二酸化炭素回収部は、例えば、化学吸収法、圧力スウィング吸着法、温度スウィング吸着法、膜分離濃縮法又はこれらの組み合わせなどによって二酸化炭素を回収することができる。なお、二酸化炭素供給源11は、上記のような形態に限定されず、例えば二酸化炭素を収容したタンクであってもよい。流量調整部12は、例えば電磁弁を含んでいてもよく、電磁弁の開閉によって第1二酸化炭素供給部10から第1反応器20へ供給される二酸化炭素の供給量を調整してもよい。
【0021】
第1水素供給部13は、第1反応器20に水素を供給する。第1水素供給部13は、水素供給源14と流量調整部15とを含んでいる。水素供給源14は、例えば水素などを収容したタンクであってもよい。水素は、太陽光、風力及び水力などの再生可能エネルギーを利用し、水を電気分解して得られたものを使用してもよい。このような水素を用いることにより、炭化水素生成システム1全体として、二酸化炭素の排出量を低減することができる。流量調整部15は、例えば電磁弁を含んでいてもよく、電磁弁の開閉によって第1水素供給部13から第1反応器20へ供給される水素の供給量を調整してもよい。
【0022】
なお、第1二酸化炭素供給部10から供給された二酸化炭素及び第1水素供給部13から供給された水素を第1原料として用いているが、本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、このような形態に限定されない。例えば、二酸化炭素及び水素が混合された第1原料がタンクに収容され、第1原料がタンクから第1反応器20へ供給されてもよい。
【0023】
第1原料中の二酸化炭素に対する水素の量の比は、適宜設定することができるが、例えばモル比で1以上であってもよく、2以上であってもよく、3以上であってもよく、3.5以上であってもよく、4以上であってもよい。また、第1原料中の二酸化炭素に対する水素の量の比は、例えばモル比で8未満であってもよく、6未満であってもよく、5未満であってもよく、4.5未満であってもよい。なお、メタネーション反応の場合、第1原料中の二酸化炭素に対する水素の量の比は、量論比である4であってもよい。
【0024】
二酸化炭素と水素とを含む第1原料は、第1流路16を介して第1反応器20に供給される。第1流路16には、二酸化炭素濃度測定部Q1と、水素濃度測定部Q2と、圧縮機17と、熱交換器18と、圧力測定部Pと、温度測定部Tとが設けられている。
【0025】
二酸化炭素濃度測定部Q1は、第1原料に含まれる二酸化炭素の濃度を測定する。炭化水素生成システム1が二酸化炭素濃度測定部Q1を備えることによって、第1原料中の二酸化炭素の量を正確に把握することができる。二酸化炭素の濃度に関する信号は、例えば二酸化炭素濃度測定部Q1から制御部50へ送られる。二酸化炭素濃度測定部Q1は、二酸化炭素の濃度を測定することができれば特に限定されず、公知の二酸化炭素濃度計を含んでいてもよい。二酸化炭素濃度測定部Q1はガスクロマトグラフを含んでいてもよい。
【0026】
水素濃度測定部Q2は、第1原料に含まれる水素の濃度を測定する。炭化水素生成システム1が水素濃度測定部Q2を備えることによって、第1原料中の水素の量を正確に把握することができる。水素の濃度に関する信号は、例えば水素濃度測定部Q2から制御部50へ送られる。水素濃度測定部Q2は、水素の濃度を測定することができれば特に限定されず、公知の水素濃度計を含んでいてもよい。水素濃度測定部Q2はガスクロマトグラフを含んでいてもよい。
【0027】
なお、本実施形態では、炭化水素生成システム1が二酸化炭素濃度測定部Q1及び水素濃度測定部Q2を備えている例について説明している。しかしながら、炭化水素生成システム1は、このような例に限定されず、二酸化炭素濃度測定部Q1又は水素濃度測定部Q2のいずれか一方を備えていてもよい。また、炭化水素生成システム1は二酸化炭素及び水素の濃度を測定する一の濃度測定部を備えていてもよい。
【0028】
圧縮機17は、第1原料を圧縮する。第1原料が圧縮されて第1反応器20に供給されることによって、第1反応器20内の圧力を、炭化水素を生成するために適した圧力に調整することができる。
【0029】
熱交換器18は、第1原料を加熱する。第1原料が加熱されて第1反応器20に供給されることによって、第1反応器20内の温度を、炭化水素を生成するために適した温度に調整することができる。熱交換器18は、第1反応器20に供給される第1原料の熱と、第1反応器20で生成された生成ガスの熱とを交換する。これにより、エネルギー効率に優れた炭化水素生成システム1を提供することができる。なお、熱交換器18は、第1原料を加熱することできればよいため、上記のような熱交換器に限定されず、加熱器であってもよい。
【0030】
圧力測定部Pは、第1反応器20内の圧力を測定する。第1反応器20内の圧力に関する信号は、例えば圧力測定部Pから制御部50へ送られる。本実施形態に係る炭化水素生成システム1では、圧力測定部Pが第1流路16に設けられているが、圧力測定部Pが設けられる位置は特に限定されず、第1反応器20に設けられていてもよい。圧力測定部Pの種類は、第1反応器20内の圧力を測定することができれば特に限定されず、公知の圧力計を含んでいてもよい。
【0031】
温度測定部Tは、第1反応器20内の温度を測定する。第1反応器20内の温度に関する信号は、例えば温度測定部Tから制御部50へ送られる。本実施形態に係る炭化水素生成システム1では、温度測定部Tが第1流路16に設けられているが、温度測定部Tが設けられる位置は特に限定されず、第1反応器20に設けられていてもよい。温度測定部Tの種類は、第1反応器20内の温度を測定することができれば特に限定されず、公知の温度計を含んでいてもよい。
【0032】
第1反応器20は、二酸化炭素及び水素を含む第1原料から炭化水素を生成する。第1反応器20では、例えば、第1原料が通過する流路内に触媒が配置されており、第1原料が触媒に接触することによって炭化水素が生成される。第1反応器20での反応条件は特に限定されないが、例えば、反応温度が200℃~400℃であり、圧力が0.1MPa~2MPaである。炭化水素は炭素数が2以上の直鎖の炭化水素を含むことが好ましい。炭化水素はメタンを含むことも好ましい。パラフィンはアルカンを意味し、オレフィンはアルケンを意味する。これらの炭化水素は、エネルギー源及び化学製品の原料として用いることができるため、利用価値が高い。炭化水素は、メタネーション反応、及び、フィッシャー-トロプシュ反応などによって生成することができる。
【0033】
メタネーション反応では、二酸化炭素と水素とを含む原料からメタンと水とを含む生成物を生成することができる。そのため、生成物から水を除去することにより、メタン濃度の高い生成物を得ることができる。メタンは、工場内のエネルギー源として直接使用したり、都市ガスとして直接供給したりすることができる。メタネーション反応には、例えば、シェルアンドチューブ型反応器のような多管式反応器を含む公知の反応器を用いてもよい。
【0034】
メタネーション反応で使用される触媒は、メタンを生成することができれば特に限定されず、例えばニッケル触媒又はルテニウム触媒などの公知の触媒を使用することができる。ニッケル触媒はニッケルを活性成分として含む触媒であり、ルテニウム触媒はルテニウムを活性成分として含む触媒である。活性成分の含有量は、触媒全体の0.5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。ニッケルを活性成分として含む場合には、活性成分の含有量は、触媒全体の10質量%以上であることが好ましく、ルテニウムを活性成分として含む場合には、活性成分の含有量は、触媒全体の0.5質量%以上であることが好ましい。コスト及び高いメタン選択性の観点から、メタネーション反応ではニッケル触媒が用いられることが好ましい。
【0035】
フィッシャー-トロプシュ反応では、二酸化炭素と水素とを含む原料から、炭素数が2以上の直鎖の炭化水素を含む炭化水素を生成することができる。また、二酸化炭素と水素とを含む原料から、パラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方の炭化水素を生成することができる。パラフィン及びオレフィンの少なくともいずれか一方は、炭素数が1から4の炭化水素を含んでいることが好ましい。炭素数が1から4のパラフィンとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン及びブタンが挙げられる。炭素数が1から4のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン及び1,3-ブタジエンが挙げられる。なお、これらの中でも、炭素数が2以上4以下のオレフィンは、プラスチックの原料になるため有用である。フィッシャー-トロプシュ反応によって生成される生成物は、通常、複数種類の炭化水素を含んでいる。また、フィッシャー-トロプシュ反応で生成される生成物は、上記以外の化合物を含んでいてもよい。フィッシャー-トロプシュ反応には、例えば、シェルアンドチューブ型反応器のような多管式反応器、流動層型反応器又はスラリー床型反応器を含む公知の反応器を用いてもよい。
【0036】
フィッシャー-トロプシュ反応で使用される触媒は、炭素数が2以上の直鎖の炭化水素を生成することができれば特に限定されず、例えば鉄触媒又はコバルト触媒などの公知の触媒を使用することができる。鉄触媒は軽質炭化水素を主に生成することができ、コバルト触媒はワックスを含む重質炭化水素を主に生成することができる。また、鉄触媒はオレフィン及びパラフィンを主として生成することができ、コバルト触媒はパラフィンを主として生成することができる。なお、鉄触媒は鉄を活性成分として含む触媒であり、コバルト触媒はコバルトを活性成分として含む触媒である。活性成分の含有量は、触媒全体の10質量%以上であることが好ましい。フィッシャー-トロプシュ反応では鉄触媒が用いられてもよい。これにより、プラスチックの原料にもなる軽質オレフィン(低級オレフィン)を生成することができる。
【0037】
第1反応器20で生成される生成ガスには、目的とする炭化水素だけでなく、水並びに未反応の二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方も含まれる。第1反応器20で生成される生成ガスは、第2反応器40に供給され、未反応物である二酸化炭素及び水素から炭化水素が第2反応器40で生成される。第1反応器20と第2反応器40とを接続する第2流路21には、熱交換器18、冷却器22、気液分離器23、生成ガス流量測定部F1、熱交換器24が設けられている。また、第2流路21には、第2二酸化炭素供給部30から二酸化炭素が供給され、第2水素供給部35から水素が供給される。
【0038】
熱交換器18は、上述したように、第1反応器20に供給される第1原料の熱と、第1反応器20で生成された生成ガスの熱とを交換する。すなわち、熱交換器18は、第1反応器20で生成される生成ガスを冷却する。
【0039】
冷却器22は、熱交換器18によって冷却された生成ガスをさらに冷却する。これにより、第1反応器20で生成された生成ガス中の水蒸気をより確実に凝縮することができる。
【0040】
気液分離器23は、第1反応器20で生成された生成ガスに含まれる水分を除去する。生成ガス中の水分を除去することにより、炭化水素が生成される方向に化学反応を進めることができるため、第2反応器40での炭化水素の生成効率を向上させることができる。
【0041】
生成ガス流量測定部F1は、第1反応器20で生成された生成ガスの流量を測定する。生成ガスの流量を測定することによって、第1反応器20に供給される水素及び二酸化炭素の量並びに生成ガスの流量から、生成ガスの二酸化炭素と水素との比率を算出することができる。これにより、第2反応器40へ供給する二酸化炭素及び水素の量をより正確に算出することができる。生成ガスの流量に関する信号は、例えば生成ガス流量測定部F1から制御部50へ送られる。生成ガス流量測定部F1は、生成ガスの流量を測定することができれば特に限定されず、公知の流量計を含んでいてもよい。なお、炭化水素生成システム1は、生成ガス流量測定部F1に代えて、生成ガス中の二酸化炭素及び水素のいずか一方の濃度を測定する濃度測定部を備えていてもよい。濃度測定部は、二酸化炭素濃度測定部Q1又は水素濃度測定部Q2と同様のものを用いることができる。
【0042】
熱交換器24は、第2原料を加熱する。第2原料が加熱されて第2反応器40に供給されることによって、第2反応器40内の温度を、炭化水素を生成するために適した温度に調整することができる。熱交換器24は、第2反応器40に供給される第2原料の熱と、第2反応器40で生成された生成ガスの熱とを交換する。これにより、エネルギー効率に優れた炭化水素生成システム1を提供することができる。なお、熱交換器24は、第2原料を加熱することできればよいため、上記のような熱交換器に限定されず、加熱器であってもよい。
【0043】
第2二酸化炭素供給部30は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の二酸化炭素を第2反応器40に供給する。第1原料に含まれる二酸化炭素の量は、例えば、二酸化炭素濃度測定部Q1によって測定された二酸化炭素の濃度であってもよい。また、第1原料に含まれる水素の量は、例えば、水素濃度測定部Q2によって測定された水素の濃度であってもよい。すなわち、第2二酸化炭素供給部30は、二酸化炭素濃度測定部Q1によって測定された二酸化炭素及び水素濃度測定部Q2によって測定された水素の濃度に応じた量の二酸化炭素を供給してもよい。二酸化炭素及び水素の濃度に応じた量の二酸化炭素を第2反応器40に供給することにより、より適正な量の二酸化炭素を第2反応器40に供給することができる。
【0044】
第2二酸化炭素供給部30は、第1二酸化炭素供給部10と同様に、二酸化炭素供給源31と流量調整部32とを含んでいる。二酸化炭素供給源31は、二酸化炭素供給源11と同様のものを採用してもよい。第1二酸化炭素供給部10と第2二酸化炭素供給部30とは、共通する1つの二酸化炭素供給源を含んでいてもよい。流量調整部32は、例えば電磁弁を含んでいてもよく、電磁弁の開閉によって第2二酸化炭素供給部30から第2反応器40へ供給される二酸化炭素の供給量を調整してもよい。
【0045】
第2水素供給部35は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の水素を第2反応器40に供給する。第1原料に含まれる二酸化炭素の量は、例えば、二酸化炭素濃度測定部Q1によって測定された二酸化炭素の濃度であってもよい。また、第1原料に含まれる水素の量は、例えば、水素濃度測定部Q2によって測定された水素の濃度であってもよい。すなわち、第2水素供給部35は、二酸化炭素濃度測定部Q1によって測定された二酸化炭素及び水素濃度測定部Q2によって測定された水素の濃度に応じた量の水素を供給してもよい。二酸化炭素及び水素の濃度に応じた量の水素を第2反応器40に供給することにより、より適正な量の水素を第2反応器40に供給することができる。
【0046】
第2水素供給部35は、水素供給源36と流量調整部37とを含んでいる。水素供給源36は、水素供給源14と同様のものを採用してもよい。第1水素供給部13と第2水素供給部35とは、共通する1つの水素供給源を含んでいてもよい。流量調整部37は、例えば電磁弁を含んでいてもよく、電磁弁の開閉によって第2水素供給部35から第2反応器40へ供給される水素の供給量を調整してもよい。
【0047】
第2二酸化炭素供給部30によって供給される二酸化炭素及び第2水素供給部35によって供給される水素の少なくともいずれか一方は、第1反応器20内の温度及び圧力の少なくともいずれか一方に応じて第2反応器40へ供給されてもよい。これによって、第2反応器40での反応に適した組成を有する第2原料を、第2反応器40に供給することができる。なお、本実施形態に係る炭化水素生成システム1では、温度は温度測定部Tによって測定され、圧力は圧力測定部Pにおいて測定される。
【0048】
第2反応器40は、第2原料から炭化水素を生成する。第2原料は、第1反応器20から供給される二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方、並びに、第2二酸化炭素供給部30から供給される二酸化炭素及び第2水素供給部35から供給される水素の少なくともいずれか一方を含む。第2反応器40は、第1反応器20と同様のものを採用することができ、メタネーション反応及びフィッシャー-トロプシュ反応などによって炭化水素を生成することができる。第2反応器40は、第1反応器20と第2反応器40とで異なる反応手法を用いて炭化水素を生成してもよい。
【0049】
第2反応器40で生成され、炭化水素を含む生成ガスは、第3流路41を介して第2反応器40から排出される。第3流路41には、熱交換器24、背圧弁42、冷却器43及び気液分離器44が設けられている。
【0050】
熱交換器24は、上述したように、第2反応器40に供給される第2原料の熱と、第2反応器40で生成された生成ガスの熱とを交換する。すなわち、熱交換器24は、第2反応器40で生成される生成ガスを冷却する。
【0051】
背圧弁42は、弁の開度を調整することにより、第1反応器20内の圧力及び第2反応器40内の圧力が所定の範囲内となるように調整する。
【0052】
冷却器43は、熱交換器24によって冷却された生成ガスをさらに冷却する。これにより、第2反応器40で生成された生成ガス中の水蒸気をより確実に凝縮することができる。
【0053】
気液分離器44は、第2反応器40で生成された生成ガスに含まれる水分を除去する。生成ガス中の水分を除去することにより、高い純度の炭化水素を得ることができる。
【0054】
制御部50は、第2二酸化炭素供給部30から供給される二酸化炭素の流量を制御する。また、制御部50は、第2水素供給部35から供給される水素の流量を制御する。制御部50は、二酸化炭素濃度測定部Q1、水素濃度測定部Q2、圧力測定部P、温度測定部T及び生成ガス流量測定部F1からなる群より選択される少なくとも1つの要素で生成された信号に基づいて、第2二酸化炭素供給部30が供給する二酸化炭素の供給量及び第2水素供給部35が供給する水素の供給量を算出してもよい。制御部50は、例えば、第2二酸化炭素供給部30から供給される二酸化炭素の流量を流量調整部32によって調整する。また、制御部50は、例えば、第2水素供給部35から供給される水素の流量を流量調整部37によって調整する。
【0055】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。CPUは、ROMに記憶されたプログラムを読み込み、プログラムに従って演算及び制御などの命令を実行することができる。プログラムには、例えば、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量から、第2反応器40へ供給される二酸化炭素及び水素の供給量を算出する処理が含まれていてもよい。プログラムはROM以外の記録媒体に予め格納されていてもよく、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。RAMは、二酸化炭素濃度測定部Q1、水素濃度測定部Q2、圧力測定部P、温度測定部T及び生成ガス流量測定部F1などから取得した情報を記憶し、CPUはRAMに記憶された情報を読み出して演算などの処理に用いることができる。
【0056】
第2反応器40で生成された生成物が複数種類の炭化水素を含む場合、炭化水素生成システム1は化学構造に応じた炭化水素を分留などによって分離する分離装置を備えてもよい。分離装置は、脱メタン塔、脱エタン塔、脱エチレン塔、脱プロパン塔、脱プロピレン塔、脱ブタン塔及び脱ブテン塔のような少なくとも1つの分離塔を含んでいてもよい。これらの分離塔によって、複数種類の炭化水素を、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン及びブテンなどのような化学構造に応じて分離することができる。
【0057】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る炭化水素生成システム1について
図2を用いて説明する。本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、二酸化炭素濃度測定部Q1に代えて二酸化炭素流量測定部F2を備え、水素濃度測定部Q2に代えて水素流量測定部F3を備えている。上記以外については、本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、第1実施形態に係る炭化水素生成システム1と同様の構成をしている。
【0058】
二酸化炭素流量測定部F2は、第1原料に含まれる二酸化炭素の流量を測定する。炭化水素生成システム1が二酸化炭素流量測定部F2を備えることによって、第1原料中の二酸化炭素の量を正確に把握することができる。二酸化炭素の流量に関する信号は、例えば二酸化炭素流量測定部F2から制御部50へ送られる。二酸化炭素流量測定部F2は、二酸化炭素の流量を測定することができれば特に限定されず、公知の流量計を含んでいてもよい。
【0059】
水素流量測定部F3は、第1原料に含まれる水素の流量を測定する。炭化水素生成システム1が水素流量測定部F3を備えることによって、第1原料中の水素の量を正確に把握することができる。水素の濃度に関する信号は、例えば水素流量測定部F3から制御部50へ送られる。水素流量測定部F3は、水素の流量を測定することができれば特に限定されず、公知の流量計を含んでいてもよい。
【0060】
なお、本実施形態では、炭化水素生成システム1が二酸化炭素流量測定部F2及び水素流量測定部F3を備えている例について説明している。しかしながら、炭化水素生成システム1は、このような例に限定されず、二酸化炭素流量測定部F2又は水素流量測定部F3のいずれか一方を備えていてもよい。さらに、炭化水素生成システム1は、二酸化炭素濃度測定部Q1及び水素濃度測定部Q2の少なくともいずれか一方をさらに備えていてもよい。
【0061】
第1実施形態と同様に、第2二酸化炭素供給部30は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の二酸化炭素を第2反応器40に供給する。第1原料に含まれる二酸化炭素の量は、例えば、二酸化炭素流量測定部F2によって測定された二酸化炭素の流量であってもよい。また、第1原料に含まれる水素の量は、例えば、水素流量測定部F3によって測定された水素の流量であってもよい。したがって、第2二酸化炭素供給部30は、二酸化炭素流量測定部F2によって測定された二酸化炭素及び水素流量測定部F3によって測定された水素の流量に応じた量の二酸化炭素を供給してもよい。二酸化炭素及び水素の流量に応じた量の二酸化炭素を第2反応器40に供給することにより、より適正な量の二酸化炭素を第2反応器40に供給することができる。
【0062】
同様に、第2水素供給部35は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の水素を第2反応器40に供給する。第1原料に含まれる二酸化炭素の量は、例えば、二酸化炭素流量測定部F2によって測定された二酸化炭素の流量であってもよい。また、第1原料に含まれる水素の量は、例えば、水素流量測定部F3によって測定された水素の流量であってもよい。したがって、第2水素供給部35は、二酸化炭素流量測定部F2によって測定された二酸化炭素及び水素流量測定部F3によって測定された水素の流量に応じた量の水素を供給してもよい。二酸化炭素及び水素の流量に応じた量の水素を第2反応器40に供給することにより、より適正な量の水素を第2反応器40に供給することができる。
【0063】
以上、本開示では、第1実施形態及び第2実施形態に係る炭化水素生成システム1及び炭化水素生成方法について説明した。すなわち、炭化水素生成システム1は、二酸化炭素及び水素を含む第1原料から炭化水素を生成する第1反応器20と、第2原料から炭化水素を生成する第2反応器40とを備えている。炭化水素生成システム1は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の二酸化炭素を第2反応器40に供給する第2二酸化炭素供給部30を備えている。炭化水素生成システム1は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の水素を第2反応器40に供給する第2水素供給部35を備えている。第2原料は、第1反応器20から供給される二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方、並びに、第2二酸化炭素供給部30から供給される二酸化炭素及び第2水素供給部35から供給される水素の少なくともいずれか一方を含んでいる。
【0064】
炭化水素生成方法は、二酸化炭素及び水素を含む第1原料から炭化水素を第1反応器20で生成する第1反応工程と、第2原料から炭化水素を第2反応器40で生成する第2反応工程とを含んでいる。炭化水素生成方法は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の二酸化炭素を第2反応器40に供給する二酸化炭素供給工程を含んでいる。炭化水素生成方法は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の水素を第2反応器40に供給する水素供給工程を含んでいる。第2原料は、第1反応器20から供給される二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方、並びに、二酸化炭素供給工程で供給される二酸化炭素及び水素供給工程で供給される水素の少なくともいずれか一方を含んでいる。
【0065】
本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、二酸化炭素及び水素を含む第1原料から炭化水素を生成する第1反応器20と、第2原料から炭化水素を生成する第2反応器40とを備えている。そのため、第1反応器20で未反応であった二酸化炭素及び水素を原料として第2反応器40へ供給し、より高純度の炭化水素を得ることができる。しかしながら、第1反応器20入口の圧力の変動、及び流量調整部12及び流量調整部15のバルブ開度のずれなどにより、第1反応器20へ供給される二酸化炭素と水素との比率が変動する場合がある。また、第1反応器20で生成された生成ガスに含まれる水を分離する場合、二酸化炭素が水中に溶解し、第2反応器40に供給される二酸化炭素と水素との比率が、理想とする比率から外れるおそれがある。このような場合、第1反応器20での転化率が想定よりも低下してしまい、第2反応器40で生成される生成ガス中の炭化水素の濃度が所望の値を下回ってしまうおそれがある。
【0066】
しかしながら、本実施形態に係る炭化水素生成システム1は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の二酸化炭素を第2反応器40に供給する第2二酸化炭素供給部30を備えている。また、炭化水素生成システム1は、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の水素を第2反応器40に供給する第2水素供給部35を備えている。これにより、第1反応器20に供給される第1原料中の二酸化炭素と水素との比率が所望の範囲から外れた場合であっても、第2二酸化炭素供給部30及び第2水素供給部35によって二酸化炭素及び水素をそれぞれ第2反応器40に補完することができる。そのため、第2原料の二酸化炭素と水素との比率を、理想とする比率に調整することができる。これにより、第2反応器40で生成される生成ガス中の炭化水素濃度が、所定の範囲内となるように調整される。したがって、本開示によれば、炭化水素を安定的に又は高純度で生成することが可能な炭化水素生成システム1及び炭化水素生成方法を提供することができる。
【0067】
また、第2原料には第1反応器20で生成された炭化水素が多く含まれており、第2反応器40で生成される炭化水素の量は、第1反応器20で生成される炭化水素の量に対して少なくなる傾向にある。すなわち、第2反応器40で生成される炭化水素の量は、炭化水素生成システム1全体として多くはないため、炭化水素を安定的に又は高純度で生成するための制御が比較的容易である。
【0068】
なお、大阪瓦斯株式会社の小売託送供給約款(2019年11月13日実施)によれば、受け入れられるメタン含有ガスの組成は、水素が4体積%以下であり、二酸化炭素が0.5体積%以下であることが求められている。このような条件を満たすガスを第1反応器20及び第2反応器40で生成するために必要な原料の供給量を算出した結果を
図3に示す。具体的には、第1原料における水素の二酸化炭素に対する比(H
2/CO
2比)が3.6から4.4の範囲において、第2反応器40で上記組成のメタン含有ガスが生成可能となる第2原料のH
2/CO
2比を算出した。なお、第1反応器20及び第2反応器40の反応条件は、温度325℃かつ圧力0.7MPaGとしている。
【0069】
図3に示すように、第2原料のH
2/CO
2比を上限から下限の範囲にすれば、求められる組成のメタン含有ガスを生成可能であることが分かる。反応式:CO
2+4H
2→CH
4+2H
2Oによれば、1モルのメタンは、1モルの二酸化炭素と4モルの水素から生成される。第2原料のH
2/CO
2比が4以上となっているのは、二酸化炭素の許容量が0.5体積%以下であるのに対し、水素の許容量が4体積%以下と許容範囲が広いことも理由として考えられる。
【0070】
次に、第2反応器40で上記メタン含有ガスを生成するための二酸化炭素及び水素の供給量の上限及び下限をそれぞれ算出した。第1原料のH
2/CO
2比と、第1反応器20へ供給される二酸化炭素の供給量に対する第2反応器40へ供給される水素の供給量の割合との関係を表1及び
図4に示す。また、第1原料のH
2/CO
2比と、第1反応器20へ供給される二酸化炭素の供給量に対する第2反応器40へ供給される二酸化炭素の供給量の割合との関係を表2及び
図5に示す。なお、第1反応器20及び第2反応器40の反応条件は、温度325℃かつ圧力0.7MPaGとしている。
【0071】
【0072】
【0073】
表1及び表2並びに
図3~
図5に示すように、第1原料に含まれる二酸化炭素及び水素の量に応じた量の二酸化炭素又は水素を第2反応器40に供給することにより、上記のような組成のメタン含有ガスを生成することが可能であることが分かる。また、これらの結果から、第1反応器20に供給される第1原料のH
2/CO
2比が変動した場合であっても、二酸化炭素又は水素を第2反応器40に供給することにより、炭化水素を安定的に又は高純度で生成することができることが分かる。
【0074】
なお、上記実施形態では、炭化水素生成システム1が第1反応器20及び第2反応器40の2つの反応器を備える例について説明したが、炭化水素生成システム1は3つ以上の反応器を備えていてもよい。炭化水素生成システム1が3つ以上の反応器を備える場合、1段目の反応器を第1反応器20とし、2段目の反応器を第2反応器40としてもよく、2段目の反応器を第1反応器20とし、3段目の反応器を第2反応器40としてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0076】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7『すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する』及び目標13『気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる』に貢献することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 炭化水素生成システム
20 第1反応器
30 第2二酸化炭素供給部(二酸化炭素供給部)
35 第2水素供給部(水素供給部)
40 第2反応器
Q1 二酸化炭素濃度測定部
Q2 水素濃度測定部
F2 二酸化炭素流量測定部
F3 水素流量測定部