(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103808
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】エンジン及びエンジンを搭載した作業機
(51)【国際特許分類】
F02P 5/15 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
F02P5/15 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218661
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(71)【出願人】
【識別番号】000215187
【氏名又は名称】追浜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(74)【代理人】
【識別番号】100112416
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 定信
(72)【発明者】
【氏名】老松 章斗
(72)【発明者】
【氏名】川原 直人
【テーマコード(参考)】
3G022
【Fターム(参考)】
3G022FB11
3G022GA00
(57)【要約】
【課題】 センサなどの検出装置を追加することなく、簡便に回転数を検出できるエンジンやエンジンを搭載した作業機を提供する。
【解決手段】 エンジンの回転によって誘導される誘導電位に基づいて第1パルス信号を読み取って、点火の制御を行う制御装置を備え、前記制御装置は、前記第1パルス信号に基づく第2パルス信号を出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの回転によって誘導される誘導電位に基づいて第1パルス信号を読み取って、点火の制御を行う制御装置を備え、前記制御装置は、前記第1パルス信号に基づく第2パルス信号を出力する、エンジン。
【請求項2】
前記第2パルス信号は、マイコンを介して出力される、請求項1に記載のエンジン。
【請求項3】
操作者が操作可能な停止スイッチを更に備え、前記第2パルス信号は、前記停止スイッチに接続される停止線に出力され、前記停止線に前記第2パルス信号が流され、操作者が停止スイッチを動作させると、第3パルス信号が変動して、点火の制御が無効化される、請求項1または2に記載のエンジン。
【請求項4】
前記制御装置は、点火の制御を実行する第1制御装置であって、
前記第2パルス信号は、第2制御装置に出力され、
該第2制御装置は、回転速度を検知して、エンジンにかかる負荷を下げる動作を実行させる、請求項1から3のいずれかに記載のエンジン。
【請求項5】
前記第1制御装置と、前記第2制御装置は、離れて配置される、請求項4に記載のエンジン。
【請求項6】
前記第2制御装置はエンジンの負荷を低減させる指令を出す、請求項4または5に記載のエンジンを搭載した作業機。
【請求項7】
自律型草刈りロボットである、請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
手持ち式作業機である、請求項6に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エンジン及びエンジンを搭載した作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの動作中に作業負荷などを取得するためにエンジンの回転数を検出する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来のエンジンは、クランクポジションセンサー等による回転を検出する構成を有するため、部品が増え、重量も増えるため、製造工程が煩雑になるとともに、コストが高くならざるを得なかった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、センサなどの検出装置を追加することなく、簡便に回転数を検出できるエンジンやエンジンを搭載した作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるエンジンの特徴は、
エンジンの回転によって誘導される誘導電位に基づいて第1パルス信号Aを読み取って、点火の制御を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第1パルス信号Aに基づく第2パルス信号Cを出力することである。
【発明の効果】
【0007】
センサなどの検出装置を追加することなく、簡便に回転数を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態によるエンジンの概略図である。
【
図2】本実施の形態によるエンジンの点火装置の概略図である。
【
図4】制御用信号の例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<<<本実施の形態の概要>>>>
【0010】
<<第1の態様>>
第1の態様によれば、
エンジンの回転によって誘導される誘導電位に基づいて第1パルス信号Aを読み取って、点火の制御を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第1パルス信号Aに基づく第2パルス信号Cを出力する、エンジン。
【0011】
第2のパルス信号Cを読み取ることで、エンジンの回転速度を取得することができる。
【0012】
<<第2の態様>>
第2の態様は、第1の態様において、
前記第2パルス信号Cは、マイコンを介して出力される。
【0013】
マイコンが第2パルス信号Cを生成するので、所望する波形を有する信号を生成することができる。
【0014】
<<第3の態様>>
第3の態様は、第1又は第2の態様において、
操作者が操作可能な停止スイッチを更に備え、
前記第2パルス信号Cは、前記停止スイッチに接続される停止線に出力され、前記停止線に前記第2パルス信号Cが流され、操作者が停止スイッチを動作させると、第3パルス信号Bが変動して、点火の制御が無効化される。
【0015】
第2パルス信号Cを停止線に出力することができるので、第2パルス信号Cを取り出すための新たなリード線の追加を不要にすることができる。
【0016】
<<第4の態様>>
第4の態様は、第1ないし第3の態様において、
前記制御装置は、点火の制御を実行する第1制御装置であって、
前記第2パルス信号Cは、第2制御装置(外部装置)に出力され、
該第2制御装置は、回転速度(エンジンの負荷)を検知して、エンジンにかかる負荷を下げる動作を実行させる。
【0017】
<<第5の態様>>
第5の態様は、第4の態様において、
前記第1制御装置と、前記第2制御装置は、離れて配置される。
【0018】
<<第6の態様>>
第6の態様は、第4又は第5の態様において、
前記第1制御装置と、前記第2制御装置は、離れて配置される。
前記第2制御装置はエンジンの負荷を低減させる指令を出す。
【0019】
<<第7の態様>>
第7の態様は、第6の態様において、自律型草刈りロボットである。
【0020】
運転速度を変えることで、刃にかかる負荷を下げたり刃を停止させたりすることができる。自動的に負荷の低減を行ったり、警報を鳴らして使用者に報知したりすることができる。
【0021】
<<第8の態様>>
第8の態様は、第6の態様において、
手持ち式作業機である。
【0022】
自動的に作業工具の運転速度を落としたり、使用者に報知したりできる。
【0023】
<<<<本実施の形態の詳細>>>>
以下に、実施の形態の一例について図面に基づいて説明する。
【0024】
<<<内燃エンジン2の構成>>>
図1は、本実施の形態によるエンジンの概略図である。
図1に示すように、内燃エンジン2は、好ましくは、2サイクルガソリンエンジンである。内燃エンジン2は、気化器7を有する。気化器7は、内燃エンジン2に流入させる混合気の量を調節するスロットルバルブ8を有する。スロットルバルブ8は、スロットルレバー又はチョークノブ(図示せず)等によって作動される。スロットルバルブ8は、従来から知られているものを用いることができる。
【0025】
内燃エンジン2は、シリンダ2aと、クランクシャフト2bと、ピストン2cと、点火プラグ10とを有する。ピストン2cは、シリンダ2a内に配置され、クランクシャフト2bに連結されている。点火プラグ10は、シリンダ2aの上部に配置されている。
【0026】
内燃エンジン2の圧縮ストロークにおいて、ピストン2cは、上死点位置2dまで上昇する。一般的に、ピストン2cが上死点位置2dに到達するよりも前のタイミングで、点火プラグ10を有効に作動させてシリンダ2a内の混合気を燃焼させる。混合気の燃焼により、ピストン2cは、下向きの推進力を与えられる。
【0027】
内燃エンジン2は、作業機などに搭載されることができる。作業機は、例えば、自律型草刈りロボットや手持ち式作業機などにすることができる。
【0028】
<<<点火装置12の構成>>>
図2は、本実施の形態による内燃エンジン2の点火装置の概略図である。
図2に示すように、内燃エンジン2は、点火プラグ10を作動させる点火装置12を有する。内燃エンジン2のクランクシャフト(図示せず)には、連動可能にフライホイール14aが取付けられている。点火装置12は、1対の磁石14bと、鉄心14cと、入力用コイル14dとを有する。
【0029】
1対の磁石14bは、フライホイール14aの外周に設けられている。鉄心14cは、U字形の形状を有し、フライホイール14aの外周に隣接して配置されている。入力用コイル14dは、鉄心14cの周りに巻回されている。
【0030】
点火装置12は、制御装置16と、1次側コイル18aと、2次側コイル18bと、を有する。制御装置16は、入力用コイル14dに接続されている。1次側コイル18aは、制御装置16に接続されている。2次側コイル18bは、点火プラグ10に接続されている。
【0031】
<<<制御装置16の構成>>>
図3は、制御装置16の回路構成を示す回路ブロック図である。
図3に示すように、制御装置16は、コンデンサ24と、スイッチング素子26と、信号入力回路32と、マイコン20と、電源回路30と、ストップ入力回路40と、ストップ端子46と、を有する。なお、
図3では、前述した1次側コイル18a及び2次側コイル18bを点火コイル18として示した。
【0032】
内燃エンジン2が動作すると、クランクシャフトが回転し、フライホイール14aに取付けられた1対の磁石14bが、U字形の鉄心14cの近くを通過する。それにより、入力用コイル14dに電圧が誘導され、マイコン20に供給される。
【0033】
<<電源の供給>>
入力用コイル14dに誘導された電圧は、電源用電圧として、電源回路30を介して、マイコン20のIN1端子からマイコン20に供給される。電源回路30は、整流回路や平滑回路などからなる(図示せず)。これにより、安定した電源電圧が、マイコン20に供給される。
【0034】
<<制御用信号>>
入力用コイル14dに誘導された電圧は、制御用信号Aとして、信号入力回路32を介して、マイコン20のIN2端子からマイコン20に供給される。信号入力回路32は、波形整形回路などからなる(図示せず)。これにより、制御用信号Aが、マイコン20に供給される。なお、制御用信号Aは、クランクシャフトが1回転するごとに、1つ以上のパルスを含む信号である。制御用信号Aは、後述する点火制御用信号Bを生成するための基準信号として機能する。
【0035】
<ストップ入力回路40>
図3に示すように、マイコン20は、マイコン20のOUT2端子及びIN3端子を介して、ストップ入力回路40と接続されている。信号入力回路32からマイコン20に供給された制御用信号Aを基に制御用信号Cを生成し、マイコン20のOUT2端子からストップ入力回路40に入力される。ストップ入力回路40に入力された制御用信号Cは、マイコン20のIN3端子に出力される。すなわち、内燃エンジン2が通常動作をしているときには、マイコン20のOUT2端子からストップ入力回路40に入力された制御用信号Cは、そのまま、マイコン20のIN3端子に戻される。このように、制御用信号Cは、ストップ入力回路40を経由して、マイコン20に供給される。
【0036】
<<点火制御>>
マイコン20は、信号入力回路32を経由して供給された制御用信号Aに基づいて、内燃エンジン2の回転数(回転速度)及び角度位置を検出し又は計算する。マイコン20は、検出結果や計算結果に基づいて点火制御用信号Bを生成して、OUT1端子からスイッチング素子26に出力する。
【0037】
スイッチング素子26は、例えば、サイリスタなどからなる。スイッチング素子26は、マイコン20のOUT1端子に接続されている。マイコン20のOUT1端子から出力された点火制御用信号BがLOWであるときには、スイッチング素子26は非通電状態となる。マイコン20のOUT1端子から出力された点火制御用信号BがHIGHであるときには、スイッチング素子26は通電状態になる。
【0038】
マイコン20から出力する点火制御用信号BをLOWにして、スイッチング素子26を非通電状態にすると、入力用コイル14dに誘導された電圧により、コンデンサ24は充電される。点火プラグ10の点火タイミングになったときに、マイコン20から出力する点火制御用信号BをHIGHにして、スイッチング素子26を通電状態にして、コンデンサ24を放電させ、点火コイル18の1次側コイル18aに電流を流す。1次側コイル18aに流れる電流は、点火コイル18の2次側コイル18bに高電圧パルスを発生させ、それにより、点火プラグ10を作動させる。
【0039】
内燃エンジン2が通常動作をしているときには、制御用信号Cのパルスがマイコン20に供給される。制御用信号Cのパルスがマイコン20に供給されているときには、マイコン20は、パルスに応じて点火制御用信号Bを出力する(
図4の通常動作時参照)。点火制御用信号Bは、スイッチング素子26に供給され、点火プラグ10が作動する。
【0040】
図4は、制御用信号Cの例を示すタイミングチャートである。通常動作時における制制御用信号Cと、停止操作時におけるLOW信号とを示す。停止操作時については、後述する。
【0041】
<<停止制御>>
図3に示すように、停止線42を介してストップスイッチ44が接続されている。停止線42は、ストップ端子46を有する。停止線42は、ストップ入力回路40を介して、マイコン20のOUT2端子及びマイコン20のIN3端子に接続されている。
【0042】
ストップスイッチ44は、操作者が操作することができるオンオフスイッチである。ストップスイッチ44は、操作者の操作に応じて、内燃エンジン2を停止させるためのスイッチである。操作者が、ストップスイッチ44を操作することで、内燃エンジン2を停止させることができる。
【0043】
前述したように、停止線42は、マイコン20のOUT2端子に接続されている。マイコン20のOUT2端子からストップ入力回路40に入力された制御用信号Cは、停止線42に出力される。内燃エンジン2が通常動作をしているときには、停止線42に制御用信号Cが出力される。停止線42のストップ端子46に外部の装置を接続することによって、制御用信号Cを検出することができる。このようにすることで、停止線42を活用して、センサなどの検出装置を追加することなく、エンジンの回転数を算出し、作業負荷などを判断することができる。
【0044】
<短絡回路>
ストップ入力回路40は、短絡回路を有する(図示せず)。ストップスイッチ44は、停止線42を介して短絡回路に接続されている。操作者がストップスイッチ44を操作することで、短絡回路によって停止線42が短絡されて、停止線42の信号はLOWとなる。前述したように、停止線42は、ストップ入力回路40を介してマイコン20のIN3端子に接続されており、ストップスイッチ44の操作によって、マイコン20のIN3端子に出力される信号はLOWとなる(
図4の停止操作時参照)。マイコン20は、LOWの制御用信号Cが入力されることで、点火制御用信号Bの生成を停止し、これにより、点火プラグ10の作動が停止される。
【0045】
<作業機>
内燃エンジン2が搭載される作業機は、特許4243945に開示されているような自律式芝刈ロボットであり、GPSで位置を検出して、ユーザーが決めたルートに沿って、芝刈り作業を行う。内燃エンジン2に設置された制御装置16によりパルス信号が形成されて、作業中にエンジンの回転数が閾値以下またはゼロとなった際に内燃エンジン2の負荷を下げるために、外部装置の制御装置が該信号を受け取り、作業機を停止させたり、後方へ動作させたりして、内燃エンジン2の負荷を下げる。また、自律式芝刈りロボットなので、自動的に作業機を停止させたり、自動的に後方へ移動させたりする。また、この場合に、外部装置は作業機に設置されてもよく、作業機とは別体にしてもよい。また、外付けにして安全装置として汎用性をもたしてもよい。
【0046】
<他の作業機>
内燃エンジン2が搭載される作業機は、特開2011-106457に開示されている手持式作業機(チェンソー)であり、作業者が手で支持して刃物で木材等を切断する。内燃エンジン2に設置された制御装置16によりパルス信号が形成されて、作業中にエンジンの回転数が閾値以下またはゼロとなった際に内燃エンジン2の負荷を下げるために、外部装置の制御装置が該信号を受け取り、作業機を自動的に停止させたり、作業者に表示させたりする。また、この場合に、外部装置は作業機に設置されてもよく、作業機とは別体にしてもよい。また、外付けにして安全装置として汎用性を持たしてもよい。
【0047】
<<<<実施の形態の範囲>>>>
上述したように、本実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす記載及び図面は、限定するものと理解すべきでない。ここで記載していない様々な実施の形態等が含まれる。
【符号の説明】
【0048】
2 内燃エンジン
3 刃付きチェーン(作動部)
4 遠心クラッチ(クラッチ)
7 気化器(燃料量、空気量、及び/又は混合気量制御装置)
8 スロットルバルブ
8a 通常アイドル位置
8b ファストアイドル位置
8c 加速位置
16 制御装置
20 マイコン
40 ストップ入力回路
42 停止線
44 ストップスイッチ
46 ストップ端子