(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103813
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20220701BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C11/00 B
B60C11/00 D
B60C9/22 C
B60C11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218670
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 弘基
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA33
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA36
3D131AA39
3D131BA05
3D131BB01
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC31
3D131BC36
3D131CA03
3D131DA01
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA54
3D131EA03U
3D131EA08U
3D131EA09U
3D131EA10V
3D131EB11X
3D131EB27V
3D131EC22U
3D131KA02
(57)【要約】
【課題】良好なウェット性能と良好な耐久性とを維持しながら、転がり抵抗の低減を達成できるタイヤ2の提供。
【解決手段】このタイヤ2のトレッド4は、キャップ層38と、30℃での損失正接がキャップ層38の30℃での損失正接よりも低い中間層40と、30℃での損失正接が中間層40の30℃での損失正接よりも低いベース層42とを備える。径方向において、中間層40はベース層42の外側に位置し、キャップ層38は中間層40の外側に位置する。軸方向において、中間層40の外端PMはベース層42の外端PBの外側に位置し、キャップ層38の外端PCは中間層40の外端PMの内側に位置する。キャップ層38の軸方向幅WCとベース層42の軸方向幅WBとの差は-10mm以上10mm以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接地するトレッドを備えるタイヤであって、
前記トレッドが、キャップ層と、30℃での損失正接が前記キャップ層の30℃での損失正接よりも低い中間層と、30℃での損失正接が前記中間層の30℃での損失正接よりも低いベース層とを備え、
径方向において、前記中間層が前記ベース層の外側に位置し、前記キャップ層が前記中間層の外側に位置し、
軸方向において、前記中間層の外端が前記ベース層の外端の外側に位置し、前記キャップ層の外端が前記中間層の外端の内側に位置し、
前記キャップ層の軸方向幅と前記ベース層の軸方向幅との差が-10mm以上10mm以下である、
タイヤ。
【請求項2】
前記中間層の軸方向幅と前記キャップ層の軸方向幅との差が10mm以上30mm以下である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ベース層の軸方向幅と前記トレッドの幅との差が-10mm以上10mm以下である、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を230kPaに調整し、正規荷重の70%の荷重を縦荷重として前記タイヤに負荷して、平面からなる路面に前記タイヤを接触させて得られる接地面が基準接地面であり、前記基準接地面の軸方向外端に対応する、前記タイヤの外面上の位置が基準接地端であり、
軸方向において、前記キャップ層の外端が前記基準接地端の外側に位置する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記キャップ層の30℃での損失正接の、前記中間層の30℃での損失正接に対する比率が、110%以上250%以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
径方向において、前記トレッドの内側に位置するベルトと、前記トレッドと前記ベルトとの間に位置するバンドとを備え、
前記ベルトが並列した多数のベルトコードを含み、
前記バンドが、らせん状に巻かれたバンドコードを含み、
前記バンドが前記ベルトよりも幅広く、
軸方向において、前記ベース層の外端の位置が前記バンドの外端の位置と一致する、又は、前記ベース層の外端が前記バンドの外端の外側に位置する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記キャップ層の軸方向幅の、前記タイヤの断面幅に対する比率が、70%以上90%以下である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
低発熱性のゴムをトレッドに使用すると、低い転がり抵抗を有するタイヤが得られる。低発熱性のゴムのグリップ力は、高いグリップ力を発揮できる発熱性のゴムに比べて劣る。このため、低発熱性のゴムをトレッドに使用すると、例えば、濡れた路面での制動性能(以下、ウェット性能とも称される。)が低下する。転がり抵抗とウェット性能とをバランスよく整えるのは難しい。転がり抵抗の低減と、ウェット性能の向上とを目指し、様々な検討が行われている(例えば、下記の特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環境への影響が考慮され、タイヤの転がり抵抗のさらなる低減が求められている。前述の通り、転がり抵抗の低減のためにトレッドに占める低発熱性のゴムの割合を増やすと、ウェット性能が低下する。低発熱性のゴムは脆いため、トレッドに占める低発熱性のゴムの割合を増やすと、耐久性が低下することが懸念される。良好なウェット性能と良好な耐久性とを維持しながら、転がり抵抗の低減を達成できる技術の確立が求められている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、良好なウェット性能と良好な耐久性とを維持しながら、転がり抵抗の低減を達成できるタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るタイヤは路面と接地するトレッドを備える。前記トレッドは、キャップ層と、30℃での損失正接が前記キャップ層の30℃での損失正接よりも低い中間層と、30℃での損失正接が前記中間層の30℃での損失正接よりも低いベース層とを備える。径方向において、前記中間層は前記ベース層の外側に位置し、前記キャップ層は前記中間層の外側に位置する。軸方向において、前記中間層の外端は前記ベース層の外端の外側に位置し、前記キャップ層の外端は前記中間層の外端の内側に位置する。前記キャップ層の軸方向幅と前記ベース層の軸方向幅との差は-10mm以上10mm以下である。
【0007】
好ましくは、このタイヤでは、前記中間層の軸方向幅と前記キャップ層の軸方向幅との差は10mm以上30mm以下である。
【0008】
好ましくは、このタイヤでは、前記ベース層の軸方向幅と前記トレッドの幅との差は-10mm以上10mm以下である。
【0009】
好ましくは、このタイヤでは、前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を230kPaに調整し、正規荷重の70%の荷重を縦荷重として前記タイヤに負荷して、平面からなる路面に前記タイヤを接触させて得られる接地面が基準接地面であり、前記基準接地面の軸方向外端に対応する、前記タイヤの外面上の位置が基準接地端である。軸方向において、前記キャップ層の外端は前記基準接地端の外側に位置する。
【0010】
好ましくは、このタイヤでは、前記キャップ層の30℃での損失正接の、前記中間層の30℃での損失正接に対する比率は、110%以上250%以下である。
【0011】
好ましくは、このタイヤは、径方向において、前記トレッドの内側に位置するベルトと、前記トレッドと前記ベルトとの間に位置するバンドとを備える。前記ベルトは、並列した多数のベルトコードを含む。前記バンドは、らせん状に巻かれたバンドコードを含む。前記バンドは前記ベルトよりも幅広い。軸方向において、前記ベース層の外端の位置は前記バンドの外端の位置と一致する、又は、前記ベース層の外端は前記バンドの外端の外側に位置する。
【0012】
好ましくは、このタイヤでは、前記キャップ層の軸方向幅の、前記タイヤの断面幅に対する比率は、70%以上90%以下である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好なウェット性能と良好な耐久性とを維持しながら、転がり抵抗の低減を達成できるタイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のタイヤのショルダー部分の輪郭を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、比較例1のタイヤの一部を示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、比較例2のタイヤの一部を示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、比較例3のタイヤの一部を示す拡大断面図である。
【
図7】
図7は、比較例4のタイヤの一部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0016】
本開示においては、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、正規状態と称される。タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を230kPaに調整し、このタイヤに荷重をかけない状態は、標準状態と称される。
【0017】
本開示においては、特に言及がない限り、タイヤの各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できないタイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだ状態のタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0018】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0019】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0020】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0021】
本開示において、架橋ゴムとは、ゴム組成物を加圧及び加熱して得られるゴム組成物の成形体である。ゴム組成物は、バンバリーミキサー等の混錬機において、基材ゴム及び薬品を混合することにより得られる未架橋状態のゴムである。架橋ゴムは加硫ゴムとも称され、ゴム組成物は未加硫ゴムとも称される。
【0022】
基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)及びブチルゴム(IIR)が例示される。薬品としては、カーボンブラックやシリカのような補強剤、アロマチックオイル等のような可塑剤、酸化亜鉛等のような充填剤、ステアリン酸のような滑剤、老化防止剤、加工助剤、硫黄及び加硫促進剤が例示される。基材ゴム及び薬品の選定、選定した薬品の含有量等は、ゴム組成物が適用される、トレッド、サイドウォール等の各要素の仕様に応じて、適宜決められる。
【0023】
本開示において、タイヤを構成する要素のうち、架橋ゴムからなる要素の温度30℃での損失正接(tanδとも称される。)は、JIS K6394の規定に準拠し、粘弾性スペクトロメータ((株)岩本製作所製の「VES」)を用いて下記の条件にて測定される。
初期歪み=10%
動歪み=2%
周波数=10Hz
変形モード=引張
この測定では、試験片はタイヤからサンプリングされる。タイヤから試験片をサンプリングできない場合には、測定対象の要素の形成に用いられるゴム組成物を170℃の温度で12分間加圧及び加熱して得られる、シート状の架橋ゴム(以下、ゴムシートとも称される。)から試験片がサンプリングされる。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、乗用車用タイヤである。
図1には、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、タイヤ2の断面(以下、子午線断面とも称される。)の一部が示される。
図1において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0025】
図1において、一点鎖線ELはタイヤ2の赤道面である。このタイヤ2は、外面に刻まれる、トレッドパターンや、模様や文字等の装飾を除いて、赤道面に対して対称である。
【0026】
図1において、タイヤ2はリムRに組まれている。リムRは正規リムである。タイヤ2の内部には空気が充填され、タイヤ2の内圧が調整される。リムRに組まれたタイヤ2は、タイヤ-リム組立体とも称される。タイヤ-リム組立体は、リムRと、このリムRに組まれたタイヤ2とを備える。
【0027】
図1において、符号PWで示される位置はタイヤ2の軸方向外端である。模様や文字等の装飾が外面にある場合、外端PWは、装飾がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて特定される。
【0028】
図1において、符号WAで示される長さはタイヤ2の最大幅、すなわち断面幅(JATMA等参照)である。タイヤ2の断面幅WAは、一方の外端PWから他方の外端PWまでの軸方向距離である。外端PWは、このタイヤ2が最大幅を示す位置(以下、最大幅位置)である。断面幅WAは標準状態のタイヤ2において測定される。
【0029】
このタイヤ2は、トレッド4、一対のサイドウォール6、一対のクリンチ8、一対のビード10、カーカス12、ベルト14、バンド16、一対のクッション18、一対のチェーファー20及びインナーライナー22を備える。
【0030】
トレッド4は、その外面において路面と接地する。トレッド4には溝24が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。
【0031】
トレッド4には、周方向に連続して延びる少なくとも3本の周方向溝26が刻まれ、軸方向に並列した少なくとも4本の陸部28が構成される。このタイヤ2では、
図1に示されるように、3本の周方向溝26がトレッド4に刻まれ、4本の陸部28がこのトレッド4に構成されている。周方向溝26はトレッドパターンを構成する溝24の一部をなす。4本の陸部28のうち、赤道面側に位置する陸部28がミドル陸部28mであり、ミドル陸部28mの外側に位置する陸部28がショルダー陸部28sである。
【0032】
図1において、符号PEで示される位置はこのタイヤ2の赤道である。赤道PEは、トレッド4の外面と赤道面との交点である。
図1に示されるように、赤道面上に溝24がある場合、赤道PEは、溝24がないと仮定して得られる、トレッド4の仮想外面に基づいて特定される。
【0033】
それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端に連なる。サイドウォール6は、径方向においてトレッド4の内側に位置する。サイドウォール6は、トレッド4の端からクリンチ8に向かってカーカス12に沿って延びる。サイドウォール6は耐カット性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0034】
それぞれのクリンチ8は、径方向においてサイドウォール6の内側に位置する。クリンチ8はリムRと接触する。クリンチ8は耐摩耗性を考慮した架橋ゴムからなる。
【0035】
それぞれのビード10は、軸方向においてクリンチ8の内側に位置する。ビード10は、コア30と、エイペックス32とを備える。図示されないが、コア30はスチール製のワイヤを含む。
【0036】
エイペックス32は、径方向においてコア30の外側に位置する。エイペックス32は外向きに先細りである。エイペックス32は高い剛性を有する架橋ゴムからなる。
【0037】
カーカス12は、トレッド4、一対のサイドウォール6及び一対のクリンチ8の内側に位置する。カーカス12は、一方のビード10と他方のビード10との間を架け渡す。このカーカス12はラジアル構造を有する。
【0038】
カーカス12は、少なくとも1枚のカーカスプライ34を含む。軽量化の観点から、このタイヤ2のカーカス12は、1枚のカーカスプライ34で構成される。
【0039】
図示されないが、カーカスプライ34は並列した多数のカーカスコードを含む。これらカーカスコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのカーカスコードは、赤道面と交差する。カーカスコードは有機繊維からなるコードである。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0040】
ベルト14は、径方向においてトレッド4の内側に位置する。ベルト14は、径方向において外側からカーカス12に積層される。
図1において、符号WRで示される長さはベルト14の軸方向幅である。軸方向幅WRはベルト14の一方の端から他方の端までの軸方向距離である。このタイヤ2では、ベルト14の軸方向幅WRは、断面幅WAの65%以上85%以下である。
【0041】
ベルト14は、径方向に積層された少なくとも2つの層36で構成される。このタイヤ2のベルト14は、径方向に積層された2つの層36からなる。2つの層36のうち、内側に位置する層36が内側層36aであり、外側に位置する層36が外側層36bである。
図1に示されるように、内側層36aは外側層36bよりも幅広い。外側層36bの端から内側層36aの端までの長さは3mm以上10mm以下である。
【0042】
図示されないが、内側層36a及び外側層36bはそれぞれ、並列した多数のベルトコードを含む。これらベルトコードはトッピングゴムで覆われる。それぞれのベルトコードは赤道面に対して傾斜する。ベルトコードの材質はスチールである。
【0043】
バンド16は、径方向において、トレッド4とベルト14との間に位置する。バンド16は、トレッド4の内側においてベルト14に積層される。
【0044】
図示されないが、バンド16は、らせん状に巻かれたバンドコードを含む。バンドコードは実質的に周方向に延びる。詳細には、バンドコードが周方向に対してなす角度は、5°以下である。バンド16はジョイントレス構造を有する。このタイヤ2では、有機繊維からなるコードがバンドコードとして用いられる。有機繊維としては、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0045】
このタイヤ2のバンド16は、赤道PEを挟んで両端が相対するフルバンドからなる。バンド16はベルト14よりも幅広い。ベルト14の端からバンド16の端までの長さは3mm以上10mm以下である。バンド16はベルト14全体を覆う。このバンド16が、軸方向において離間して配置され、フルバンドの端及びベルト14の端を覆う、一対のエッジバンドを含んでもよい。このバンド16が、一対のエッジバンドのみで構成されてもよい。
【0046】
それぞれのクッション18は、軸方向において離間して配置される。クッション18は、ベルト14の端、及びバンド16の端と、カーカス12のプライ本体34aとの間に位置する。クッション18は低い剛性を有する架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、クッション18が設けられなくてもよい。
【0047】
それぞれのチェーファー20は、ビード10の径方向内側に位置する。チェーファー20はリムRと接触する。このタイヤ2のチェーファー20は布とこの布に含浸したゴムとからなる。
【0048】
インナーライナー22はカーカス12の内側に位置する。インナーライナー22は、タイヤ2の内面を構成する。インナーライナー22は、気体透過係数が低い架橋ゴムからなる。インナーライナー22は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0049】
図1において、符号PHで示される位置はトレッド4の外面上の位置である。位置PHは、タイヤ2の、路面との接地面の、軸方向外端に対応する。
【0050】
位置PHを特定するための接地面は、例えば、接地面形状測定装置(図示されず)を用いて得られる。この接地面は、この装置において、標準状態のタイヤ2のキャンバー角を0°とした状態で、正規荷重の70%の荷重を縦荷重としてこのタイヤ2に負荷して、平面からなる路面にこのタイヤ2を接触させて得られる。このタイヤ2では、このようにして得られる接地面が基準接地面であり、この基準接地面の軸方向外端に対応する、トレッド4の外面上の位置が、前述の位置PHである。このタイヤ2では、この位置PHが基準接地端である。
【0051】
図2は、
図1に示されたタイヤ2の一部を示す。
図2において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図2の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0052】
図2には、子午線断面における、タイヤ2のショルダー部分の輪郭が示される。この
図2に示される輪郭は、標準状態のタイヤ2の外面形状を変位センサーで計測することで得られる。
【0053】
子午線断面において、タイヤ2の外面(以下、タイヤ外面TS)の輪郭は、直線又は円弧からなる複数の輪郭線をつないで構成される。本開示において、直線又は円弧からなる輪郭線は単に輪郭線と称される。直線からなる輪郭線は直線輪郭線と称され、円弧からなる輪郭線は曲線輪郭線と称される。
【0054】
タイヤ外面TSは、トレッド面Tと、トレッド面Tの端に連なる一対のサイド面Sとを備える。子午線断面において、トレッド面Tの輪郭には、異なる半径を有する複数の曲線輪郭線が含まれる。このタイヤ2では、トレッド面Tの輪郭に含まれる複数の曲線輪郭線のうち、最小の半径を有する曲線輪郭線が、トレッド面Tの端の部分に位置し、サイド面Sに繋がる。子午線断面において、タイヤ外面TSの輪郭は、トレッド面の端の部分に、トレッド面の輪郭に含まれる複数の曲線輪郭線のうち、最小の半径を有する円弧からなり、サイド面に繋がる曲線輪郭線である曲線部を含む。
図2には、この曲線部が符号RSで示される。
【0055】
タイヤ外面TSの輪郭において、曲線部RSは、その軸方向内側に隣接する輪郭線(以下、内側隣接輪郭線NT)と接点CTにおいて接する。この曲線部RSは、その軸方向外側に隣接するサイド面Sの輪郭を構成する輪郭線(以下、外側隣接輪郭線NS)と接点CSにおいて接する。このタイヤ外面TSの輪郭は、曲線部RSの軸方向内側に位置しこの曲線部RSに接する内側隣接輪郭線NTと、曲線部RSの軸方向外側に位置しこの曲線部RSに接する外側隣接輪郭線NSとを含む。
【0056】
図2において、実線LTは、内側隣接輪郭線NTと曲線部RSとの接点CTにおける、曲線部RSの接線である。実線LSは、外側隣接輪郭線NSと曲線部RSとの接点CSにおける、曲線部RSの接線である。符号PTで示される位置は、接線LTと接線LSとの交点である。このタイヤ2では、この交点PTが仮想トレッド端である。
【0057】
トレッド4のうち、一方の仮想トレッド端PTから他方の仮想トレッド端PTまでの部分が、タイヤ2の一般的な走行条件において、路面との接地が予定されている領域(以下、通常接地領域とも称される。)である。トレッド4の部分(以下、トレッド部とも称される。)の効果的な補強の観点から、前述のベルト14及びバンド16はこの通常接地領域に配置される。
【0058】
図1において、両矢印WTで示される長さはトレッド4の幅である。このトレッド4の幅は、一方の仮想トレッド端PTから他方の仮想トレッド端PTまでの軸方向距離である。両矢印WHで示される長さは、基準接地面の軸方向幅である。軸方向幅WHは、一方の基準接地端PHから他方の基準接地端PHまでの軸方向距離である。
【0059】
このタイヤ2では、トレッド4の幅WTの、断面幅WAに対する比率(WT/WA)は70%以上90%以下である。仮想トレッド端PTは、軸方向において、基準接地端PHの外側に位置する。言い換えれば、基準接地面の軸方向幅WHはトレッド4の幅WTよりも狭い。具体的には、軸方向幅WHの、トレッド4の幅WTに対する比率(WH/WT)は70%以上90%以下である。
【0060】
図3は、
図1に示されたタイヤ2の一部を示す。
図3には、タイヤ2のトレッド部が示される。
図3において、左右方向はタイヤ2の軸方向であり、上下方向はタイヤ2の径方向である。
図3の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0061】
このタイヤ2のトレッド4は、キャップ層38、中間層40及びベース層42を備える。径方向において、中間層40がベース層42の外側に位置し、キャップ層38が中間層40の外側に位置する。
図3に示されるように、キャップ層38が中間層40に積層され、中間層40がベース層42に積層される。
【0062】
このタイヤ2では、陸部28の幅方向中心において、キャップ層38の厚さのトレッド4の厚さに対する比率は、好ましくは10%以上40%以下である。陸部28の幅方向中心において、中間層40の厚さのトレッド4の厚さに対する比率は、30%以上70%以下である。
【0063】
図3において、符号PCで示される位置はキャップ層38の外端である。符号WCで示される長さはキャップ層38の軸方向幅である。軸方向幅WCは一方の外端PCから他方の外端PCまでの軸方向距離である。符号PMで示される位置は中間層40の外端である。符号WMで示される長さは中間層40の軸方向幅である。軸方向幅WMは一方の外端PMから他方の外端PMまでの軸方向距離である。符号PBで示される位置はベース層42の外端である。符号WBで示される長さはベース層42の軸方向幅である。軸方向幅WBは一方の外端PBから他方の外端PBまでの軸方向距離である。
【0064】
図3において、符号PSで示される位置は、タイヤ外面TSにおける、トレッド4の外端である。このタイヤ2では、このトレッド4の外端PSは、軸方向において、キャップ層38の外端PCの外側に位置する。タイヤ外面TSのうち、外端PCから外端PSまでの部分は、中間層40により構成される。このタイヤ2では、中間層40の一部がタイヤ外面TSに露出する。
【0065】
キャップ層38、中間層40及びベース層42はそれぞれ、異なる発熱性を有する架橋ゴムからなる。このタイヤ2では、キャップ層38が最も発熱しやすく、ベース層42が最も発熱しにくい。中間層40は、キャップ層38の発熱性とベース層42の発熱性との間の発熱性を有する。このタイヤ2では、中間層40の30℃での損失正接LTmはキャップ層38の30℃での損失正接LTcよりも低い。ベース層42の30℃での損失正接LTbは中間層40の30℃での損失正接LTmよりも低い。
【0066】
ベース層42の30℃での損失正接LTbは、好ましくは0.11以下である。ベース層42が転がり抵抗の低減に効果的に寄与するからである。この観点から、損失正接LTbは0.10以下がより好ましく、0.09以下がさらに好ましい。ベース層42の損失正接LTbは小さいほど好ましいので、好ましい下限は設定されない。
【0067】
中間層40の30℃での損失正接Ltmは、好ましくは0.15以下である。中間層40が転がり抵抗の低減に効果的に寄与するからである。この観点から、損失正接Ltmは0.14以下がより好ましく、0.13以下がさらに好ましい。中間層40の30℃での損失正接Ltmは、好ましくは0.11以上である。中間層40が必要な剛性を確保でき、ウェット性能の向上に効果的に貢献できるからである。この観点から、損失正接LTmは0.12以上がより好ましい。
【0068】
キャップ層38の30℃での損失正接LTcは、好ましくは0.15以上である。キャップ層38がウェット性能の向上に貢献できるからである。この観点から、損失正接LTcは0.16以上がより好ましく、0.17以上がさらに好ましい。キャップ層38は路面に接地する。ウェット性能の向上の観点では、損失正接LTcは高いほど好ましい。しかし高い損失正接LTcは、発熱を招く。熱を帯びたキャップ層38が中間層40の温度を想定以上に高めることが懸念される。トレッド4全体の温度状態を安定に保ち、低い転がり抵抗が維持できる観点から、キャップ層38の30℃での損失正接LTcは0.30以下が好ましく、0.28以下がより好ましく、0.27以下がさらに好ましい。
【0069】
このタイヤ2では、軸方向において、中間層40の外端PMはベース層42の外端PBの外側に位置する。中間層40とサイドウォール6との境界は、タイヤ外面TSとカーカス12の外面とを架け渡す。この境界は、軸方向において、ベース層42の外側に位置する。このタイヤ2では、ベース層42とサイドウォール6との間に中間層40が位置する。中間層40は、径方向外側そして軸方向外側からベース層42を覆う。
【0070】
大きな慣性力が発生するような過酷な条件で車両が走行すると、トレッド4とサイドウォール6との境界部分(以下、バットレス部とも称される。)において、摩耗が発生する。このタイヤ2では、タイヤ外面TSとベース層42との間に十分な厚さを有する中間層40が位置するので、このタイヤ2がバットレス部において摩耗が発生する恐れがある限界走行下で使用されても、ベース層42の露出が防止される。このタイヤ2では、良好な耐久性が維持される。
【0071】
このタイヤ2では、軸方向において、キャップ層38の外端PCは中間層40の外端PMの内側に位置する。言い換えれば、キャップ層38は中間層40の全体ではなくこの中間層40の一部を覆う。このタイヤ2では、中間層40全体がキャップ層38で覆われたトレッド4に比べて、転がり抵抗の増加をもたらすキャップ層38のボリュームが低減され、転がり抵抗の低減に寄与する中間層40のボリュームが増加する。このトレッド4は、転がり抵抗の低減に貢献する。
【0072】
このタイヤ2では、キャップ層38の軸方向幅WCとベース層42の軸方向幅WBとの差(WC-WB)は-10mm以上10mm以下である。キャップ層38の軸方向幅WCとベース層42の軸方向幅WBとはほぼ同等である。トレッド4全体としての発熱性と剛性とがバランスよく整えられるので、キャップ層38がウェット性能の向上に効果的に貢献でき、ベース層42が転がり抵抗の低減に効果的に貢献できる。この観点から、差(WC-WB)は-5mm以上が好ましく、5mm以下が好ましい。
【0073】
このタイヤ2では、軸方向において、中間層40の外端PMがベース層42の外端PBの外側に位置し、キャップ層38の外端PCが中間層40の外端PMの内側に位置する。キャップ層38の軸方向幅WCとベース層42の軸方向幅WBとの差(WC-WB)は-10mm以上10mm以下である。このタイヤ2は、良好なウェット性能と良好な耐久性とを維持しながら、転がり抵抗の低減を達成できる。
【0074】
このタイヤ2では、トレッド4のうち、キャップ層38及び中間層40からなる部分が、キャップ層及びベース層からなる従来タイヤのトレッドのキャップ層に相当する。このタイヤ2では、トレッド4がウェット性能の向上と転がり抵抗の低減とに効果的に貢献できる観点から、30℃でのキャップ層38の損失正接LTcの、30℃での中間層40の損失正接LTmに対する比率(Ltc/Ltm)は110%以上250%以下が好ましい。この比率(Ltc/Ltm)は、130%以上がより好ましく、150%以上がさらに好ましい。この比率(Ltc/Ltm)は240%以下がより好ましく、230%以下がさらに好ましい。
【0075】
このタイヤ2では、ウェット性能の発揮にキャップ層38が効果的に貢献できる観点から、キャップ層38の軸方向幅WCの、タイヤ2の断面幅WAに対する比率(WC/WA)は70%以上が好ましく、75%以上がより好ましい。キャップ層38による転がり抵抗への影響が効果的に抑えられる観点から、この比率(WC/WA)は90%以下が好ましく、85%以下がより好ましい。
【0076】
このタイヤ2では、転がり抵抗の低減の観点から、中間層40の軸方向幅WMとキャップ層38の軸方向幅WCとの差(WM-WC)は30mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、10mm以下がさらに好ましい。限界走行時におけるベース層42の露出防止に中間層40が効果的に貢献できる観点から、この差(WM-WC)は10mm以上が好ましい。このタイヤ2では、ベース層42の露出を防止しながら、転がり抵抗を効果的に低減できる観点から、この差(WM-WC)は10mmであるのが特に好ましい。
【0077】
このタイヤ2では、好ましくは、ベース層42の軸方向幅WBとトレッド4の幅WTとの差(WB-WT)は-10mm以上10mm以下である。言い換えれば、ベース層42の軸方向幅WBはトレッド4の幅WTとほぼ同等であるのが好ましい。これにより、ベース層42の軸方向幅WBと、タイヤ外面TSからベース層42までの距離とが効果的に確保される。このタイヤ2では、限界走行時におけるベース層42の露出が効果的に防止されるとともに、ベース層42による転がり抵抗低減機能が安定に発揮される。このタイヤ2では、良好な耐久性と、低い転がり抵抗とが得られる。この観点から、差(WB-WT)は-5mm以上がより好ましく、5mm以下がより好ましい。
【0078】
前述したように、このタイヤ2では、軸方向において、中間層40の外端PMはベース層42の外端PBの外側に位置する。限界走行時におけるベース層42の露出が効果的に防止され、良好な耐久性が維持される観点から、中間層40の軸方向幅WMとベース層42の軸方向幅WBとの差(WM-WB)は6mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましい。ベース層42の軸方向幅WBを確保し、低い転がり抵抗が得られる観点から、この差(WM-WB)は14mm以下が好ましく、12mm以下がより好ましい。
【0079】
制動時においてタイヤには、大きな荷重が作用する。これにより、タイヤ2の接地幅が広がる傾向にある。このタイヤ2では、キャップ層38の外端PCは軸方向において基準接地端PHの外側に位置する。制動時においても、キャップ層38が路面と十分に接地できる。このタイヤ2では、良好なウェット性能が得られる。この観点から、軸方向において、キャップ層38の外端PCは基準接地端PHの外側に位置するのが好ましい。
【0080】
このタイヤ2では、好ましくは、キャップ層38の軸方向幅WCとトレッド4の幅WTとの差(WC-WT)は-10mm以上10mm以下である。言い換えれば、キャップ層38の軸方向幅WCはトレッド4の幅WTとほぼ同等であるのが好ましい。これにより、直進走行時だけでなく、大きな荷重が作用する制動時においても、キャップ層38が路面と十分に接地できる。このタイヤ2では、良好なウェット性能が得られる。この観点から、この差(WC-WT)は-5mm以上が好ましく、5mm以下が好ましい。
【0081】
前述したように、トレッド4の幅WTで表される領域は、通常接地領域であり、この通常接地領域に、トレッド部の効果的な補強のためにベルト14及びバンド16が配置される。ベース層42は、転がり抵抗の低減に寄与する一方で、キャップ層38及び中間層40の剛性よりも低い剛性を有する。このタイヤ2では、ベース層42はバンド16に積層され、バンド16はベルト14に積層される。ベース層42はベルト14及びバンド16により効果的に補強される。このベース層42は転がり抵抗の低減に効果的に貢献できる。この観点から、軸方向において、ベース層42の外端PBの位置がバンド16の外端の位置と一致する、又は、ベース層42の外端PBがバンド16の外端の外側に位置するのが好ましい。言い換えれば、バンド16の外端からベース層42の外端PBまでの長さは0mm以上が好ましい。ベース層42の効果的な補強と露出防止の観点から、この長さは4mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。なお、ベルト14がバンド16よりも幅広である場合は、転がり抵抗の低減の観点から、ベルト14の外端からベース層42の外端PBまでの長さは0mm以上が好ましい。ベース層42の効果的な補強と露出防止の観点から、この長さは4mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。
【0082】
以上説明したように、本発明によれば、良好なウェット性能と良好な耐久性とを維持しながら、転がり抵抗の低減を達成できるタイヤが得られる。
【実施例0083】
以下、実施例などにより、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0084】
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた乗用車用の空気入りタイヤ(タイヤサイズ=205/55R16)を得た。
【0085】
キャップ層、中間層及びベース層を備え、
図3に示された構成を有するトレッドが使用された。キャップ層の軸方向幅WCとベース層の軸方向幅WBとの差(WC-WB)は0mmであった。中間層の軸方向幅WMとキャップ層の軸方向幅WCとの差(WM-WC)は10mmであった。中間層の軸方向幅WMとベース層の軸方向幅WBとの差(WM-WB)は10mmであった。中間層の軸方向幅WMとトレッドの幅WTとの差(WM-WT)は10mmであった。
【0086】
この実施例1では、キャップ層の30℃での損失正接LTcは0.27であった。中間層の30℃での損失正接LTmは0.12であった。ベース層の30℃での損失正接LTbは0.10であった。
【0087】
[比較例1]
トレッドの構成を
図4に示される構成とし、差(WM-WC)及び差(WM-WB)を下記の表1に示される通りにした他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。
【0088】
[比較例2]
トレッドの構成を
図5に示される構成とし、差(WC-WB)及び差(WM-WC)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。
【0089】
[比較例3]
トレッドの構成を
図6に示される構成とし、差(WC-WB)及び差(WM-WC)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
【0090】
[比較例4]
トレッドの構成を
図7に示される構成とし、差(WC-WB)及び差(WM-WB)を下記の表1に示される通りとした他は実施例1と同様にして、比較例4のタイヤを得た。
【0091】
[転がり抵抗係数(RRC)]
転がり抵抗試験機を用い、試作タイヤが下記の条件でドラム上を速度80km/hで走行するときの転がり抵抗係数(RRC)を測定した。その結果が下記の表1に指数で示されている。数値が小さいほど、タイヤの転がり抵抗は低い。
リム:16×6.5J
内圧:210kPa
縦荷重:4.82kN
【0092】
[ウェット性能(WET)]
試作タイヤをリム(サイズ=16×6.5J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を230kPaに調整した。タイヤを試験車両(乗用車)に装着した。ウェット路面(水膜厚=1.4mm)のテストコースで試験車両を走行させた。試験車両が100km/hの速度で走行している状態でブレーキをかけ、ブレーキをかけてから停止するまでの走行距離(制動距離)を測定した。その結果が下記の表1に指数で示されている。数値が大きいほど、制動距離は短く、タイヤはウェット性能に優れる。
【0093】
[限界性能]
試作タイヤをリム(サイズ=16×6.5J)に組み、空気を充填してタイヤの内圧を230kPaに調整した。タイヤを試験車両(乗用車)に装着した。ドライ路面のサークル状のテストコースで試験車両をアンダーステア状態で旋回走行させた。走行速度は100km/hに設定された。20周走行後、タイヤのバットレス部の摩耗状況を確認した。この結果が下記の表1に示されている。「NG」はベース層の露出又はトレッドの剥離が確認された場合を示す。「G」はベース層の露出及びトレッドの剥離が確認されなかった場合を示す。
【0094】
【0095】
表1に示されるように、実施例では、良好なウェット性能と良好な耐久性とを維持しながら、転がり抵抗の低減を達成できることが確認されている。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。