(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103833
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】蓄電システム用保温カバー
(51)【国際特許分類】
H01M 10/659 20140101AFI20220701BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20220701BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20220701BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20220701BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20220701BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220701BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20220701BHJP
H01M 10/627 20140101ALN20220701BHJP
【FI】
H01M10/659
H01M10/615
H01M10/6571
H01M10/651
H01M10/6563
H01M2/10 E
H01M10/633
H01M10/627
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218707
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】512231266
【氏名又は名称】株式会社スマートパワーシステム
(71)【出願人】
【識別番号】513256675
【氏名又は名称】ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100075292
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】石川 和希
(72)【発明者】
【氏名】品田 元道
(72)【発明者】
【氏名】田原 義久
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031CC09
5H031HH06
5H031KK03
5H040AA29
5H040AS11
5H040AY05
5H040CC33
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】 外気温が氷点下であっても、蓄電システム内部のバッテリーセルの充放電が抑制されることのない蓄電システム用保温カバーを提供する。
【解決手段】 本発明は、バッテリーセルを有する蓄電システムの外側に装着可能な保温カバー100であって、保温カバー100内部の温度を0℃より大きい温度に維持可能なヒーター構造20を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセルを有する蓄電システムの外側に装着可能な保温カバーであって、
前記保温カバー内部の温度を0℃より大きい温度に維持可能なヒーター構造を備える蓄電システム用保温カバー。
【請求項2】
前記蓄電システムの正面側に配置される正面部と、
前記蓄電システムの背面側に配置される背面部と、
前記蓄電システムの右側面側に配置される右側面部と、
前記蓄電システムの左側面側に配置される左側面部と、
前記蓄電システムの上面側に配置される上面部と、
前記蓄電システムの底面側に配置される底面部と、を備え、
前記ヒーター構造が、前記正面部、背面部、右側面部、左側面部、上面部及び底面部の少なくとも1つに設けられている請求項1に記載の蓄電システム用保温カバー。
【請求項3】
前記ヒーター構造が、少なくとも前記正面部及び前記背面部、又は前記右側面部及び前記左側面部に設けられている請求項2に記載の蓄電システム用保温カバー。
【請求項4】
前記ヒーター構造は、ヒーター電源と、前記ヒーター電源により加熱される熱伝導部材と、前記保温カバー内部の温度を感知するサーモスタットとを有し、
前記サーモスタットは、前記保温カバー内部の温度が5℃になると前記ヒーター電源を入れ、前記保温カバー内部の温度が11.5℃になると前記ヒーター電源を切るように制御する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電システム用保温カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーセルを有する蓄電システムの外側に装着可能な保温カバーに関し、特に、氷点下での蓄電システムの充放電を可能とする蓄電システム用保温カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電システムとして、住宅用、すなわち一般家庭用の蓄電システムがある。住宅用蓄電システムは、例えば特許文献1及び特許文献2に示されるように、蓄電システムを構成する箱体が屋外に配置されるのが一般的である。
【0003】
住宅用蓄電システムは、通常、蓄電システム内部のバッテリーセルの温度が45℃以上又は氷点下に達した場合、バッテリーセルの性能を保護するため、充放電が抑制されるように設定されている。
【0004】
図5は、気象庁の観測所のうち気温を測定している914箇所の観測地(市町村)における2019年8月1日から2020年4月16日の観測記録を用いて、観測地毎の上記期間の日別最低気温を集計したグラフである。
図5から、日別最低気温が-15℃より大きい観測地は全体の93%、日別最低気温が-15℃以上であり-20℃より大きい観測地は全体の5%、日別最低気温が-20℃以下の観測地は全体の2%であることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-182541号公報
【特許文献2】特開2012-9309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述のような事情に基づいてなされたものであり、外気温が氷点下であっても、蓄電システム内部のバッテリーセルの充放電が抑制されることのない蓄電システム用保温カバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、バッテリーセルを有する蓄電システムの外側に装着可能な保温カバーであって、前記保温カバー内部の温度を0℃より大きい温度に維持可能なヒーター構造を備える蓄電システム用保温カバーを提供する(発明1)。
【0008】
かかる発明(発明1)によれば、ヒーター構造を備えることにより、蓄電システム用保温カバー内部の温度を0℃より大きい温度に維持することができるため、蓄電システム内部のバッテリーセルの温度が0℃以下になるのを防ぐことができる。そのため、外気温が0℃以下になったとしても、バッテリーセルの充放電が抑制されることがない。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記蓄電システムの正面側に配置される正面部と、前記蓄電システムの背面側に配置される背面部と、前記蓄電システムの右側面側に配置される右側面部と、前記蓄電システムの左側面側に配置される左側面部と、前記蓄電システムの上面側に配置される上面部と、前記蓄電システムの底面側に配置される底面部とを備え、前記ヒーター構造が、前記正面部、背面部、右側面部、左側面部、上面部及び底面部の少なくとも1つに設けられていることが好ましい(発明2)。
【0010】
かかる発明(発明2)によれば、保温カバーの内側の面の少なくとも1つにヒーター構造が設けられていることにより、効率的に保温カバー内部の温度を0℃より大きい温度に維持することができる。
【0011】
上記発明(発明2)においては、前記ヒーター構造が、少なくとも前記正面部及び前記背面部、又は前記右側面部及び前記左側面部に設けられていることが好ましい(発明3)。
【0012】
かかる発明(発明3)によれば、保温カバーの内側の面のうち、少なくとも対向する正面部及び背面部又は対向する右側面部及び左側面部にヒーター構造が設けられていることにより、より効率的に保温カバー内部の温度を0℃より大きい温度に維持することができる。
【0013】
上記発明(発明1-3)においては、前記ヒーター構造は、ヒーターと、前記ヒーターにより加熱される熱伝導部材と、前記保温カバー内部の温度を感知するサーモスタットとを有し、前記サーモスタットは、前記保温カバー内部の温度が5℃になると前記ヒーターの電源を入れ、前記保温カバー内部の温度が11.5℃になると前記ヒーターの電源を切るように制御することが好ましい(発明4)。
【0014】
かかる発明(発明4)によれば、サーモスタットにより、保温カバー内部の温度が0℃以下にならないよう制御することができるとともに、過度の加熱状態に至ることを防ぐことができるので、高い安全性を確保できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蓄電システム用保温カバーによれば、ヒーター構造を備えることにより、蓄電システム用保温カバー内部の温度を0℃より大きい温度に維持することができるため、蓄電システム内部のバッテリーセルの温度が0℃以下になるのを防ぐことができる。そのため、外気温が0℃以下になったとしても、バッテリーセルの充放電が抑制されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電システム用保温カバーを示す模式的斜視図であって、(a)は正面パネル側から見た図、(b)は(a)において正面パネルを除いた状態を示す図である。
【
図2】
図1の蓄電システム用保温カバーが備えるヒーター構造の一例を示す模式図である。
【
図3】
図1の蓄電システム用保温カバーが備えるヒーター構造における熱伝導部材のバリエーションを示す模式図である。
【
図4】本発明に係る蓄電システム用保温カバーを外側に装着した住宅用蓄電システムに対する低温試験の結果を示すグラフである。
【
図5】気象庁の観測所のうち気温を測定している914箇所における2019年8月1日から2020年4月16日の観測記録を用いて、観測地毎の上記期間の日別最低気温を集計したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の蓄電システム用保温カバーの実施の形態について、適宜図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであって、何ら本発明を限定するものではない。
【0018】
〔蓄電システム〕
まず、本発明の蓄電システム用保温カバーが装着される蓄電システムについて簡単に説明する。本実施形態に係る蓄電システム用保温カバーは、住宅用蓄電システムを対象としている。住宅用蓄電システムは、商用電源からの電力供給が停止した停電時に、バッテリーセルに蓄えられた電力を家中の負荷に供給するよう制御を実行する。
【0019】
住宅用蓄電システムとしては、例えば特許文献2に示されるように、複数のバッテリーセルを収納した電池モジュールと、この電池モジュールを収納する収納ケースを備え、その電池モジュールに蓄電された電荷を交流電力に変換して負荷へ供給する蓄電システムが一般的である。収納ケースは最も面積の大きい面を正面部とする直方体形状を有し、この収納ケースに、直方体形状の電池モジュールが複数収納されている。複数の電池モジュールは、収納ケースの正面部や側面部から挿入及び取出しが可能である。収納ケース内には、交流電力への変換または電池モジュールへの充放電を制御する制御部が配置されている。
【0020】
なお、本実施形態に係る蓄電システム用保温カバーが装着される住宅用蓄電システムは、
図1において破線で示されている。
図1に示されるように、当該住宅用蓄電システムは、直方体形状の収納ケースの下部に、左右に対向する一対の脚部が設けられている。当該住宅用蓄電システムは、上記一対の脚部により支持されているため、収納ケースが直接地面に接していない。
【0021】
〔蓄電システム用保温カバー〕
次に、本発明の蓄電システム用保温カバーについて、図面を参照しつつ詳説する。
図1は、本実施形態に係る蓄電システム用保温カバーを示す模式的斜視図であって、(a)は正面パネル側から見た図、(b)は(a)において正面パネルを便宜的に取り除いた状態を示す図である。なお、
図1では、装着対象である蓄電システム相当部分が破線で示されている。蓄電システム用保温カバー100は、装着対象である住宅用蓄電システムの外側に装着可能であるよう、住宅用蓄電システムよりも大きい略直方体形状を有する。
【0022】
蓄電システム用保温カバー100は、略直方体形状のカバー部10と、カバー部10内部の温度を0℃より大きい温度に維持可能なヒーター構造20とを主に備える。
【0023】
〈カバー部〉
カバー部10は、住宅用蓄電システムの正面に対応する正面パネル11と、背面に対応する背面パネル12と、右側面に対応する右側面パネル13と、左側面に対応する左側面パネル14と、上面に対応する上面パネル15と、底面に対応する底面パネル16とを備える。
【0024】
本実施形態において、
図1に示されるように、カバー部10を構成する6つのパネルのうち、正面パネル11(又は背面パネル12)は最も表面積が大きい。正面パネル11(又は背面パネル12)の表面積の右側面パネル13(又は左側面パネル14)表面積に対する比は、約2:1であるが、これは装着対象である住宅用蓄電システムのサイズ及び形状に応じて変動する。
【0025】
正面パネル11は内側に、住宅用蓄電システムの正面側に配置される正面部11aを有する。背面パネル12は内側に、住宅用蓄電システムの背面側に配置される背面部12aを有する。右側面パネル13は内側に、住宅用蓄電システムの右側面側に配置される右側面部13aを有する。左側面パネル14は内側に、住宅用蓄電システムの側面側に配置される左側面部14aを有する。上面パネル15は内側に、住宅用蓄電システムの上面側に配置される上面部15aを有する。底面パネル16は内側に、住宅用蓄電システムの底面側に配置される底面部16aを有する。
【0026】
本実施形態において、上面パネル15の奥行き寸法は、右側面パネル13及び左側面パネル14と同じであるが、上面パネル15は、右側面パネル13及び左側面パネル14よりも大きい奥行き寸法を有するとともに、正面側にやや突出していてもよい。上面パネル15が正面側に突出していると、正面側に突出した部分が軒として機能することにより、正面パネル11が雨水の影響を受けるのを防ぐことができる。
【0027】
本実施形態においては、カバー部10の底面パネル16が着脱可能に構成されている。そのため、カバー部10から底面パネル16を取り外した無底の箱体を、装着対象である住宅用蓄電システムの上方から被せるようにして配置してから、底面パネル16を取り付けることで、カバー部10を住宅用蓄電システムに装着することができる。底面パネル16は、ネジを用いて上記無底の箱体に締め付けられる。カバー部10を住宅用蓄電システムに装着する手段は、ネジにより着脱可能に構成された底面パネル16によるものに限定されない。例えば、カバー部10の正面パネル11がネジにより着脱可能に構成されていてもよいし、正面パネル11及び底面パネル16がネジにより着脱可能に構成されていてもよい。
【0028】
カバー部10の材質は、太陽光や雨風の影響を受けにくければ特に制限されるものではなく、例えば、アルミやアルミ合金を好適に用いることができる。
【0029】
〈ヒーター構造〉
ヒーター構造20は、カバー部10内部の温度を0℃より大きい温度に維持可能な構造であって、ヒーター電源(不図示)と、ヒーター電源により加熱される熱伝導部材21と、カバー部10内部の温度を感知するサーモスタット22と、ヒーター構造20を支持する断熱材23とを主に備える。
【0030】
ヒーター構造20は、カバー部10の内側である正面部11a、背面部12a、右側面部13a、左側面部14a、上面部15a及び底面部16aの少なくとも1つに設けられていればよい。すなわち、ヒーター構造20は、カバー部10の内側の面のいずれか1つにのみ設けられていてもよく、対向する正面部11a及び背面部12aにのみ設けられていてもよく、対向する右側面部13a及び左側面部14aにのみ設けられていてもよい。ヒーター構造20は、正面部11a、背面部12a、右側面部13a及び左側面部14aに設けられていてもよく、正面部11a、背面部12a及び底面部16aに設けられていてもよく、正面部11a、背面部12a及び上面部15aに設けられていてもよい。ヒーター構造20は、カバー部10の内側のすべての面に設けられていてもよい。
【0031】
図1に示されるような本実施形態における蓄電システム用保温カバー100では、装着対象である住宅用蓄電システムが脚部を有するため、底面パネル16側からカバー部10内部へ冷気が侵入し易い。そのため、装着対象である住宅用蓄電システムが脚部を有する場合、ヒーター構造20は、底面部16aに設けられていることが好ましい。また、
図1に示されるような本実施形態における蓄電システム用保温カバー100では、正面パネル11(又は背面パネル12)が最も表面積が大きい。そのため、ヒーター構造20は、底面部16aに加えて、最も表面積が大きい正面部11a及び背面部12aに設けられていることがより好ましい。
【0032】
図1(b)は、カバー部10の背面部12aにヒーター構造20が設けられた状態を示している。以下では、
図1(b)の背面部12aのように、カバー部10の内側の面の1つに設けられたヒーター構造20を例として、ヒーター構造20を説明する。
【0033】
図2は、カバー部10の内側の面の1つ(以下、内側面部と呼ぶ。)に設けられたヒーター構造20の一例を示す模式図である。ヒーター構造20は、内側面部と略同じサイズの外郭を有する断熱材23に、熱伝導部材21と、熱伝導部材21に接続されるサーモスタット22とが埋め込まれた構造である。熱伝導部材21は、ヒーター電源(不図示)に接続されている。
【0034】
(断熱材)
断熱材23は、カバー部10の内側面部と略同じサイズの外郭を有し、ヒーター構造20を支持する板状の部材である。断熱材23は、後述する熱伝導部材21の配置に対応する溝部を有していてもよい。また、断熱材23は、その外郭がカバー部10の内側面部と略同じサイズであればよく、例えば複数の断熱材の組み合わせであってもよい。本実施形態において、断熱材23は、ポリプロピレン発泡体であるが、断熱性能を有するものであればこれに制限されない。断熱材23は、例えば、軽量発泡セラミック材であってもよい。断熱材23は、カバー部10の内側面部に、例えば両面テープ又は接着剤等の接着手段を用いて固定することができる。
【0035】
断熱材23の厚さは、カバー部10のサイズや熱伝導部材21の太さ等に応じて適宜設定することができる。
【0036】
(熱伝導部材)
本実施形態において、熱伝導部材21は、ガラス紐に発熱線をスパイラル状に巻きつけ、耐熱シリコーンゴムで被覆したシリコーンコードヒーターである。シリコーンコードヒーターは、優れた柔軟性と高い電気絶縁性を有するため、ヒーター構造20に好適に用いられる。熱伝導部材21としてのシリコーンコードヒーターは、
図2に示されるように、カバー部10の内側面部に接着された断熱材23に埋め込まれている。熱伝導部材21は、断熱材23の全体に渡って埋め込まれていれば、その位置及び設置形状は特に制限されないが、蓄電システム内部のバッテリーセルの配列に応じた形状で埋め込まれていることがより好ましい。
【0037】
例えば、シーズヒーターのような短長で高出力なヒーターは、局部的に温度が上昇しやすい。一方、シリコーンコードヒーターは、単位長さあたりのワット数が低いため、比較的長いヒーターを使用することにより、局部的な温度上昇が抑えられるので、対象物を均等に温めることが可能である。そのため、熱伝導部材21としては、シリコーンコードヒーターが好ましい。
【0038】
本実施形態において熱伝導部材21は、線状のシリコーンコードヒーターであるが、熱伝導部材21は、カバー部10の内側面部に接着された断熱材23に、平面的に埋め込むことが可能な構造を有すればよく、線状のヒーターに制限されない。例えば、熱伝導部材21は、面状のフィルムヒーターであってもよい。また、線状のヒーターとして、シリコーンコードヒーターの他に、リボンヒーター、シリコンベルトヒーター又はヒーターケーブルも使用することができる。ヒーター構造20としてファンヒーターやバッテリーヒーターを用いると、蓄電システム用保温カバー100が大型化してしまう。本実施形態では、ヒーター構造20としてカバー部10の内側面部に平面的に設置することが可能な熱伝導部材212を用いることにより、蓄電システム用保温カバー100の大型化を回避することができる。
【0039】
例えば、熱伝導部材21は、
図1(b)に示されるように、断熱材23の上端と下端との間を往復する形状に配置されることで、断熱材23の全体に渡って埋め込まれていてもよいし、
図2に示されるように、断熱材23の中心線に対して対向するような形状に配置されることで、断熱材23の全体に渡って埋め込まれた手形状であってもよい。
図3は、ヒーター構造20における熱伝導部材21のバリエーションを示す模式図である。
図3では、便宜上、断熱材23と、断熱材23に埋め込まれた熱伝導部材21のみが表されている。熱伝導部材21は、
図3(a)に示されるようにS字を連結したような形状であってもよいし、
図3(b)に示されるようにW字を連結したような形状であってもよいし、
図3(c)に示されるように同心円状であってもよし、
図3(d)に示されるように対向する手形状であってもよいし、
図3(e)に示されるように格子状であってもよいし、
図3(f)に示されるように横方向のジグザグ形状であってもよいし、
図3(g)に示されるように縦方向のジグザグ形状であってもよいし、
図3(h)に示されるように複数の線状であってもよい。
【0040】
(サーモスタット)
本実施形態において、サーモスタット22は、カバー部10内部の温度が5℃になるとヒーター電源を入れ、カバー部10内部の温度が11.5℃になるとヒーター電源を切るように制御するものである。サーモスタット22により、カバー部10内部の温度が0℃以下にならないよう制御することができるとともに、過度の加熱状態に至ることを防ぐことができるので、高い安全性を確保できる。サーモスタット22としては、バイメタルや形状記憶合金等による機械式検知のサーモスタットが、ヒーター構造20に内蔵するのには好ましい。なお、本実施形態では、サーモスタット22を熱伝導部材21に接続しているが、温度センサをヒーター構造20に内蔵し、外部のコントローラで設定温度の制御を行うサーモスタットを用いることもできる。サーモスタット22は、カバー部10内部の温度が0℃以下にならないよう制御することができれば、本実施形態のものに限定されない。例えば、サーモスタット22は、カバー部10内部の温度が5℃になるとヒーター電源を入れ、カバー部10内部の温度が11.5℃になるとヒーター電源を切るように制御するものであってもよい。
【0041】
〔蓄電システム用保温カバーの使用方法〕
次に、上述した蓄電システム用保温カバー100の使用方法について説明する。
【0042】
まず、一旦、正面パネル11を取り外すことにより、住宅用蓄電システムの外側に蓄電システム用保温カバー100を装着する。このとき、蓄電システムの正面側に正面部11aが、背面側に背面部12aが、右側面側に右側面部13aが、左側面側に左側面部14aが、上面側に上面部15aが、底面側に底面部16aが、それぞれ対応するようにする。このときの蓄電システム用保温カバー100内部の温度を5℃とする。
【0043】
外気温が低下し、蓄電システム用保温カバー100内部の温度が5℃になると、サーモスタット22がこれを感知し、ヒーター電源を入れるよう制御を行う。これにより、蓄電システム用保温カバー100内部の温度が0℃以下になることが回避されるので、外気温が氷点下であって、蓄電システム内部のバッテリーセルの充放電が抑制されることがない。外気温が上昇し、蓄電システム用保温カバー100内部の温度が11.5℃になると、サーモスタット22がこれを感知し、ヒーター電源を切るよう制御を行う。これにより、蓄電システム用保温カバー100内部が過度の加熱状態に至ることを防ぐことができるので、高い安全性が確保される。
【0044】
このように、本実施形態に係る蓄電システム用保温カバー100によれば、蓄電システム用保温カバー100内部の温度を0℃より大きい温度に維持することができるため、蓄電システム内部のバッテリーセルの温度が0℃以下になるのを防ぐことができる。そのため、外気温が0℃以下になったとしても、バッテリーセルの充放電が抑制されることがない。
【0045】
以上、本発明について図面を参照にして説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。上記実施形態においては、蓄電システム用保温カバー100は、装着対象である住宅用蓄電システムの形状に応じた略直方体形状を有しているが、蓄電システム用保温カバー100の形状は、住宅用蓄電システムの形状に応じた形状であり、その内側の面の少なくとも1つにヒーター構造を有するものであればよく、上述の形状に限られるものではない。また、保温カバー100に別途設置スペースを設けることができれば、ヒーター構造として、サーモスタットとヒーター機能とが一体化された配電盤用ヒーター等を用いることもできる。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0047】
蓄電システム用保温カバー100を外側に装着した住宅用蓄電システムに対して、外気温-20℃、72hの低温試験を行った。試験結果を
図4に示す。
図4は、低温試験槽内部空間温度(℃)、上段バッテリーセルの温度(℃)、下段バッテリーセルの温度(℃)、畜電システム内部空間の温度(℃)をそれぞれ示している。
【0048】
図4から、蓄電システム用保温カバー100を装着したことにより、72hに渡って、蓄電システム内部の温度が0℃以上に安定的に維持されたことが分かる。