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▶ 柴田 敏美の特許一覧

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  • 特開-溶接ビード切削装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103837
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】溶接ビード切削装置
(51)【国際特許分類】
   B23C 3/12 20060101AFI20220701BHJP
   B23C 1/20 20060101ALI20220701BHJP
   B23K 37/08 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B23C3/12 A
B23C1/20
B23K37/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218725
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】521001490
【氏名又は名称】柴田 敏美
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】柴田 敏美
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022DD01
3C022DD11
3C022DD17
(57)【要約】
【課題】角形鋼管の溶接ビードを切削する溶接ビード切削装置において、カッターの位置調整の手間を削減する。
【解決手段】コラム材7の内側面7aの溶接ビード8を切削するカッター2と、カッター2を回転駆動するモーター6と、溶接ビード8に沿ってカッター2をスライド移動させるカッター送り手段と、溶接ビード切削装置1をコラム材7に固定する固定手段を備える。固定手段に、L字状の基準板3を設け、カッター2の底面2bが所定の基準面P内に配置されるように構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材表面に形成された溶接ビードを切削する溶接ビード切削装置であって、
溶接ビードを切削するカッターと、前記カッターを回転駆動するモーターと、溶接ビードに沿って前記カッターをスライド移動させるカッター送り手段と、前記溶接ビード切削装置を鋼材に固定する固定手段と、を備え、
前記固定手段が、所定の基準面に前記カッターを配置する基準板を含むことを特徴とする溶接ビード切削装置。
【請求項2】
略L字形状に形成された一対の前記基準板を備え、
前記基準板が、前記溶接ビード切削装置を支持する支持面と、鋼材表面から前記カッターを持ち上げる脚部と、を含み、
一対の前記脚部は、溶接ビードの縁部付近において溶接ビードを介して対向するように配置された請求項1に記載の溶接ビード切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形鋼管の内側面の溶接ビードを切削する溶接ビード切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、角形鋼管の突合せ溶接部にできた溶接ビードを切削する溶接ビード切削装置の発明が知られている。例えば、特許文献1には、基台を角形鋼管の一辺に支持し、角形鋼管の内周面に沿って移動可能なローラを備え、基台を移動させながら溶接ビードを切削する溶接ビード切削装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-11333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、角形鋼管は、複数の角形鋼管を長手方向に接合し、建築資材(柱)として用いられる。具体的には、角形鋼管同士を鉄板(ダイアフラム)を継手として仮組組立し、角形鋼管同士の接合部をロボット溶接して柱を形成する。このとき、角形鋼管の溶接ビードを適切に切削処理することにより、裏当て金を角形鋼管の内側面に隙間なく密着させ、柱接合部の抜け(穴開き)を防止することができる。
【0005】
しかし、従来の溶接ビード切削装置によれば、溶接ビードを適切に切削するためのカッターの位置調整が難しく、切削に手間がかかるという問題があった。具体的には、図6に示すように、角形鋼管の突合せ溶接部は、溶接時の熱により、角形鋼管の内側面7aに向けて凸状(図6(a))、凹状(図7(b))に歪曲し、歪み凹凸面7cを形成している。このため、角形鋼管ごとに適切にカッターの位置調節を行わない場合、図6(a)の場合には、溶接ビード切削時に母材まで削り込まれ、角形鋼管に板厚欠損の問題が生じる。一方、図6(b)の場合には、溶接ビードの切削が浅くなり、後で手直しが必要となってしまう。特に、複数の角型鋼管を処理する際には、溶接ビード切削装置を幾度も着脱する必要があるため、この問題が顕著となる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、カッターの位置調整の手間を削減できる溶接ビード切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の溶接ビード切削装置は、鋼材表面に形成された溶接ビードを切削する溶接ビード切削装置であって、溶接ビードを切削するカッターと、カッターを回転駆動するモーターと、溶接ビードに沿ってカッターをスライド移動させるカッター送り手段と、溶接ビード切削装置を鋼材に固定する固定手段と、を備え、固定手段が、所定の基準面にカッターを配置する基準板を含むことを特徴とする。
【0008】
また、略L字形状に形成された一対の基準板を備え、基準板が、溶接ビード切削装置を支持する支持面と、鋼材表面からカッターを持ち上げる脚部と、を含み、一対の脚部は、溶接ビードの縁部付近において溶接ビードを介して対向するように配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の溶接ビード切削装置によれば、基準板を設け、カッターを所定の基準面内に配置されるように構成したため、溶接ビードに対するカッターの位置の調整が容易となり、作業時の手間を軽減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示す溶接ビード切削装置の正面図である。
図2図1の溶接ビード切削装置の右側面図である。
図3】基準板の斜視図である。
図4】カッターと基準板の配置状態を示す模式図である。
図5】(a)カッターと溶接ビードの位置関係を示すA-A線断面模式図、(b)基準板と溶接ビードの位置関係を示すB-B線断面模式図である。
図6】突合せ溶接部の模式図であり、(a)角形鋼管の内側面7aに向けて凸状、(b)凹状に歪曲した様子を示す突合せ溶接部の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を溶接ビード切削装置に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1,2に示す溶接ビード切削装置1は、コラム材7などの角形鋼管の突合せ溶接部にできた溶接ビード8を切削するために用いられるものであり、溶接ビード8を切削するカッター2と、カッター2を回転駆動するモーター6と、溶接ビード8に沿ってカッター2をスライド移動させるカッター送り手段(41~44)と、溶接ビード切削装置1をコラム材7に固定する固定手段(51~54)を備える。
【0012】
カッター2は、円盤状の回転刃であり、周縁部に溶接ビード8を切削する切削刃が設けられている。カッター2は、コラム材7の内側面7aを向く底面2bと、底面2bの反対側の面である天面2aを備える。
【0013】
カッター送り手段は、カッター2のスライド方向を規定するスライド板41と、スライド板41をスライド移動可能に支持するスライド板支持部42と、カッター2を切削する向きに送る切削送りハンドル43および切削送りネジ44から構成される。
【0014】
固定手段は、クランプアーム51と、コラム材7を外側面7bおよび内側面7aから挟持するクランプ爪53および上クランプ部材52と、クランプ爪53を上クランプ部材52に向けて押し付けるクランプハンドル54と、基準板3から構成される。
【0015】
図3に示すように、基準板3は、一対の断面L字状の部材であり、コラム材7の内側面7aと端面31aで当接する一対の脚部31と、上クランプ部材52を支持面32aを介して支持する支持部32を備える。
【0016】
図4,5に示すように、基準板3の端部31aは、基準面Pを決定するものであり、端部31aとカッター2の底面2bは、基準面Pに含まれる。脚部31の端面31aは、コラム材7の内側面7aと当接しつつ上クランプ部材52を支持し、その結果、カッター2を含む溶接ビード切削装置1が、コラム材7の内側面7aから離れる方向に持ち上げられる。このため、脚部31の長さを調整することにより、所望の位置にカッター2を配置できる。
【0017】
ここで、一対の脚部31は、溶接ビード8の縁部付近において、溶接ビード8を介して対向するように配置される。このため、脚部31の端部31aは、溶接時の熱により生じたコラム材7の内面側7aの歪み凹凸面7cに配置され、基準面Pは、歪み凹凸面7cおよび溶接ビード8の境界付近に配置される。
【0018】
次に、上記のように構成された溶接ビード切削装置1が溶接ビード8を切削する動作を図4図5に従って説明する。
【0019】
まず、クランプハンドル54を回し、上クランプ部材52に向けてクランプ爪53を押し付け、溶接ビード切削装置1をコラム材7に取り付ける。このとき、上クランプ部材52は、基準板3の支持面32aにより支持され、カッター2の底面2bは基準面P内に保持される。
【0020】
続いて、モーター6に電源を投入し、カッター2を回転させ、切削送りハンドル43を回すと、切削送りネジ44が回転し、カッター2がコラム材7の内側面7aに沿って切削範囲Dをスライド移動し、溶接ビード8を切削する。
【0021】
したがって、この実施形態の溶接ビード切削装置1によれば、基準板7を用いて、基準面Pを、歪み凹凸面7cおよび溶接ビード8の境界付近に配置するように構成したため、ビード削りが浅くならず、かつ、母材の削り込みが生じないように、容易にカッター2を配置できる。
【0022】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。例えば、本発明を使用して、角形鋼管のみではなく、鋼板を突き合わせて溶接した板接続後の溶接ビードの切削にも好適に利用できる。
【符号の説明】
【0023】
1 溶接ビード切削装置
2 カッター(a:天面、b:底面)
3 基準板
4 カッター送り手段
5 固定手段
6 モーター
7 コラム材(a:内側面、b:外側面、c:歪み凹凸面)
8 溶接ビード
31 脚部(a:端面)
32 支持部(a:支持面)
41 スライド板
42 スライド板支持部
43 切削送りハンドル
44 切削送りネジ
51 クランプアーム
52 上クランプ部材
53 クランプ爪
54 クランプハンドル
P 基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6