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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103854
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】一輪車
(51)【国際特許分類】
   B62K 1/00 20060101AFI20220701BHJP
   B62K 13/00 20060101ALI20220701BHJP
   B62M 9/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B62K1/00
B62K13/00
B62M9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218744
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】521001342
【氏名又は名称】上片野 充
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上片野 充
(57)【要約】
【課題】車体を安定化させることができ、かつ、惰性走行が可能で、バランスが取り易い一輪車を提供する。
【解決手段】車輪20と、一対のペダル31及びクランク33と、ペダル31によるクランク33の回転力を車輪20に伝達する回転伝達機構40と、一対のクランク33の回転時にクランク33の相対角度関係を維持する同期連携機構50と、これらの互いの位置関係を保持するためのフレーム10と、を備える。フレーム10は、クランク33の回転中心を、車輪20の回転中心より下方位置に保持する。回転伝達機構40は、ペダル31及びクランク33による回転が正転方向の場合のみ回転力を車輪側に伝達するフリー機構を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、一対のペダル及びクランクと、前記ペダルによるクランクの回転力を車輪に伝達する回転伝達機構と、前記一対のクランクの回転時にクランクの相対角度関係を維持する同期連携機構と、これらの互いの位置関係を保持するためのフレームと、を備え、
前記フレームは、前記クランクの回転中心を、前記車輪の回転中心より下方位置に保持するクランク軸保持部を有し、
前記回転伝達機構は、前記ペダル及びクランクによる回転が正転方向の場合のみ回転力を車輪側に伝達するフリー機構を有すること
を特徴とする一輪車。
【請求項2】
請求項1に記載の一輪車において、前記同期連携機構は、車輪の回転を阻害しない連携用軸体と、一対のクランク軸の回転をそれぞれ連携用軸体に伝える連携伝達要素とを有し、連携用軸体及び連携伝達要素を介して、一対のクランクの回転の相対角度関係を維持すること
を特徴とする一輪車。
【請求項3】
請求項2に記載の一輪車において、前記連携用軸体は、前記車輪の回転中心に位置し、車輪の回転とは独立に、前記フレームによって回転自在に保持される回転軸であること
を特徴とする一輪車。
【請求項4】
請求項2に記載の一輪車において、前記連携用軸体は、車輪の外周の外側において、前記フレームによって回転自在に保持されるものであること
を特徴とする一輪車。
【請求項5】
請求項1に記載の一輪車において、第1内輪及び第2内輪をさらに有し、
前記車輪は、タイヤとリムとにより構成され、
第1内輪及び第2内輪は、それぞれ前記リムの内周側に接する状態で、前記フレームにより保持され、
前記同期連携機構は、前記一対のクランク軸を両端に固定し、前記フレームのクランク軸保持部に回転自在に保持される軸体を有し、この軸体に回転自在に前記第1内輪が装着される構造であり、
前記回転伝達機構は、前記軸体の回転力を、前記第1内輪及び第2内輪のうち車輪を駆動する内輪に伝達して、当該内輪を回転駆動する回転伝達要素を有すること
を特徴とする一輪車。
【請求項6】
請求項5に記載の一輪車において、前記回転伝達要素は、前記軸体の回転力を前記第2内輪に伝達して、当該第2内輪を回転駆動するものであること
を特徴とする一輪車。
【請求項7】
請求項5に記載の一輪車において、前記回転伝達要素は、前記軸体の回転力を前記第2内輪の回転軸を介して、前記第1内輪に伝達するものであること
を特徴とする一輪車。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか1項に記載の一輪車において、前記フリー機構に代えて、前記回転伝達機構は、前記ペダル及びクランクによる回転が正転方向の場合のみ回転力を車輪側に伝達するフリー機構と、前記クランクの回転が逆回転である場合、車輪の回転を抑止するブレーキ機構とを組み合わせたコースターブレーキを、装備すること
を特徴とする一輪車。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の一輪車と、
前記フレームに連結される補助フレームと、
前記補助フレームに回動可能に連結される補助輪を備えること
を特徴とする自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一輪車に係り、特に、重心を下げた一輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の乗用一輪車は、車輪とその車軸に一体化したペダル、車軸に接続したサドル部からなっている。運転者は、一対のペダルの上にそれぞれ左右の足を乗せ、サドルに腰を乗せてペダルを交互に踏み込むことで一輪車を漕いで進行させる。一輪車は、接地点が1点であるため、前後左右にバランスをとることが難しい。特に、前後方向には、バランスを取りつつ、かつ一定速度で進行するという動作をペダルへの荷重の調整と体重移動のみで行う必要があるため、乗りこなすには相当の熟練を要する。特に、車輪を大きくすると、重心がより高くなるため、さらにバランスを取ることが難しくなる。
【0003】
一方、車輪の回転軸にラチェットのあるフリーギヤを設け、車輪の回転とペダルの回転を独立として、惰性走行を可能とする一輪車が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、特許文献1に開示される一輪車は、クランクの回転軸と車輪の回転軸が同軸であるため、安定性に欠ける。すなわち、一般的な一輪車と異なって、車輪の回転軸にペダルが固定されないため、左右のペダルへの荷重の調整により姿勢を保つという操作が困難となり、実用的ではない。
【0005】
一方、特許文献2には、ペダル軸と車輪の車軸とを分離し、ペダル軸を車軸より下げることにより、車体を安定化させることを試みた一輪車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-127979号公報
【特許文献2】実全昭61-76785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2記載の技術では、ペダルの回転軸と車輪の回転軸とがチェーンとギヤとを介して直結されている。そのため、進行中は、常に、その速度に合わせてペダルをこぎ続ける必要がある。また、バランスを取るためには、こまめに左右のペダルにかける荷重を姿勢に合わせて変化調整する必要がある。このような二種類の操作を両立させることは困難である。
【0008】
本発明は、車体を安定化させることができ、かつ、惰性走行が可能で、バランスが取り易い一輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、一輪車に関する課題を解決する技術を開示する。その一態様として開示される一輪車は、車輪と、一対のペダル及びクランクと、ペダル及びクランクによる回転を車輪に伝達する回転伝達機構と、一対のクランクの相対角度関係を維持する同期連携機構と、これらの要素の互いの位置関係を保持するためのフレームと、を備える。
【0010】
ここで、フレームは、クランクの回転中心を、車輪の回転中心より下方位置に保持するクランク軸保持部を有する。また、回転伝達機構は、ペダル及びクランクによる回転が正転方向の場合のみ回転力を伝達するフリー機構を有する。
【0011】
同期連携機構は、車輪の回転を阻害しない連携用軸体と、一対のクランク軸の回転をそれぞれ連携用軸体に伝える連携伝達要素とを有し、連携用軸体及び連携伝達要素を介して、一対のクランクの回転の相対角度関係を維持する構成とすることができる。
【0012】
連携用軸体は、車輪の回転中心に位置し、車輪の回転とは独立に、フレームによって回転自在に保持される回転軸であることができる。また、連携用軸体は、車輪の外周の外側において、フレームによって回転自在に保持されるものであることができる。
【0013】
また、他の態様として、第1内輪及び第2内輪をリム内周側に有するものが開示される。第1内輪及び第2内輪は、それぞれ前記リムの内周側に接する状態で、前記フレームにより保持される。同期連携機構は、一対のクランク軸を両端に固定し、フレームのクランク軸保持部に回転自在に保持される軸体を有し、この軸体に回転自在に第1内輪が装着される構造となっている。また、回転伝達機構は、前記軸体の回転力を、前記第1内輪及び第2内輪のうち車輪を駆動する内輪に伝達して、当該内輪を回転駆動する回転伝達要素を有する。
【0014】
ここで、回転伝達機構は、軸体の回転を第2内輪に伝達して、その第2内輪を回転駆動する構造とすることができる。
【0015】
また、回転伝達機構は、軸体の回転力を第2内輪の回転軸を介して、第1内輪を駆動する構造とすることができる。
【0016】
また、回転伝達機構は、前記フリー機構に代えて、前記ペダル及びクランクによる回転が正転方向の場合のみ回転力を車輪側に伝達するフリー機構と、前記クランクの回転が逆回転である場合、車輪の回転を抑止するブレーキ機構とを組み合わせたコースターブレーキを、装備することができる。
【0017】
また、さらに他の態様として、上記のいずれかの一輪車のフレームに補助フレームを連結し、補助フレームに補助輪を備えることで、自転車として提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車体を安定化させることができ、かつ、惰性走行が可能とし、結果として、バランスが取り易い一輪車を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る一輪車の外観を示す側面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る一輪車の後方側断面を概念的に示す説明図である。
図3図3は、本発明の第2の実施形態に係る一輪車の外観を示す側面図である。
図4図4は、第2の実施形態に係る一輪車の後方側断面を概念的に示す説明図である。
図5図5は、本発明の第3の実施形態に係る一輪車の外観を示す側面図である。
図6図6は、第3の実施形態に係る一輪車の後方側断面を概念的に示す説明図である。
図7図7は、本発明の第4の実施形態に係る一輪車の外観を示す側面図である。
図8図8は、第4の実施形態に係る一輪車の後方側断面を概念的に示す説明図である。
図9図9は、本発明の第5の実施形態に係る一輪車(及び自転車)の外観を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすく説明するために、部分的に実際と異なる外観、寸法、縮尺となっている場合がある。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る一輪車の外観を示す側面図である。図2は、第1実施形態に係る一輪車の後方側断面を概念的に示す説明図である。これらの図に示す一輪車は、フレーム10、サドル13及び車輪20を含む車体・車輪系と、一対のペダル31及びクランク33と、ペダル31及びクランク33によるトルクを車輪に伝達する回転伝達機構40と、一対のクランク33の相対角度関係を維持する同期連携機構50とを備える。後述するように、回転伝達機構40及び同期連携機構50は、複数の構成要素で構成される。符号40及び50の図示を省略する(他の実施形態でも同様)。
【0022】
フレーム10は、上端側に配置されるサドル支持部11と、グリップ12と、サドル支持部11に固定されるサドル13と、中間部に位置する車軸保持部14と、クランク軸保持部15とを有する。フレーム10は、それ自身を要素として含む車体・車輪系を構成する要素と共に、回転伝達機構40及び同期連携機構50のそれぞれ構成する要素の互いの位置関係を保持する。
【0023】
具体的には、図2に示すように、フレーム10は、その中間位置に設けられる車軸保持部14により、後述する車輪20の回転中心に位置する車軸25を回転自在に保持する。また、フレーム10は、その下方に設けられるクランク軸保持部15により、後述するクランク軸34を回転自在に保持する。すなわち、フレーム10は、クランク軸保持部15により保持されるクランク33の回転中心を、車軸保持部14により保持される車輪20の回転中心より下方位置に保持する。これらの具体的位置関係については後述する。
【0024】
フレーム10の、車軸25から上方に伸びる部分とサドル支持部11とが一体となる。これまでの一輪車ではサドル支持部が車軸に連結しているだけであるため、走行中、常に足の間にサドルを把持していなければならない。ところが、本実施形態を含めて、本発明の各実施形態では、ペダル31に体重がかかっていれば、自然にサドル13が直立し、特にサドル13維持のための力は必要としない(すなわち、サドル13は設けなくてもよい)。また、車輪20の回転中心となる車軸25より低い位置において、ペダル31を漕ぐことができる。
【0025】
サドル高さを抑えて車輪径を大きくするほど車体は安定する。そのため、車輪の上に突き出すサドルの高さをできるだけ抑えるため、一般的な一輪車にみられる垂直なシートポスト構造ではなく、図1に示すように、フレーム10は、サドル13の斜め後方に突き出し、そこから水平方向に延びるフレーム(サドル支持部11)上にサドル13を固定する構造としてある。サドル13自体も下方に湾曲した構造であり、高さを抑えられるので望ましい。
【0026】
グリップ12は、必須ではないが、バランスを取る際に補助となるので、装着することが望まれる。図示していないが、グリップ12に、グリップ位置に操作部を配置したブレーキ機構を付けてもよい。
【0027】
ペダル31は、図2に示すように、ペダル軸32により回転自在にクランク33の先端側に取り付けられる。また、クランク33は、その基端側をクランク軸34に固定され、クランク軸保持部15において回転自在に保持される。ペダル軸32、クランク33及びクランク軸34は、一輪車の運転者がペダル31を漕ぐことにより回転力を発生させ、クランク33の回転中心に位置するクランク軸34に伝達する。
【0028】
車輪20は、図1及び図2に示すように、タイヤ21、リム22、スポーク23及びハブ24を有する。ハブ24は、車軸保持部14により支持される車軸25に回転自在に取り付けられる。ハブ24は、後述する回転伝達機構40により駆動されて、車軸25の回りを回転する。
【0029】
ペダル31とクランク33とは、一対で設けられる。各クランク33は、先端側にペダル軸32を有し、基端側にクランク軸34を有する。ペダル軸32には、ペダル31が回転自在に取り付けられる。クランク軸34には、クランク33が固定される。クランク軸34は、クランク軸保持部15に回転自在に装着される。この例では、図2に示すように、クランク軸34は、一対のクランク33のそれぞれに設けられる。すなわち、一対のクランク軸34は、一体的には連結されない。すなわち、車輪20を挟んで、フレーム10に独立(図面では左右独立)に装着されている。その結果、この状態では、ペダル31は、一方を漕いでも、それによる回転運動は他方のペダル31には伝わらない。それぞれの回転が連携しないため、左右のペダル31による左右のクランク軸34が同期回転せず、クランク33の左右の相対角度関係(180度)が維持できない。
【0030】
回転伝達機構40は、ペダル31及びクランク33による回転を車輪20側に伝達する回転伝達要素として、一対のクランク軸34の一方(図2では右側)に固定されるギヤ41と、ギヤ41にかみ合って掛けられるチェーン42と、このチェーン42が掛けられて回転するギヤ43とを有する。ギヤ43は、ハブ24との間にラチェット機構等のフリー機構(図示せず)を有している。これによりギヤ43がフリーギヤとして働く。ペダル31及びクランク33による回転が、ギヤ41、チェーン42及びギヤ43によってハブ24に伝えられる。ここで、フリー機構は、クランク33が正回転する場合、ギヤ43の回転を車輪20側に伝達し、クランク33が停止する場合、ギヤ43とハブ24との間で滑りを生じ、ハブ24側の回転を許容して、車輪20の惰性走行を可能とする。
【0031】
同期連携機構50は、車輪20の回転を阻害しない連携用軸体として用いられる車軸25と、一対のクランク軸34の回転をそれぞれ連携用軸体(車軸25)に伝える連携伝達要素として、一対のクランク軸34の一方(図2では右側)にギヤ41と並んで固定されるギヤ51と、ギヤ51にかみ合って掛けられるチェーン52と、このチェーン52が掛けられて回転するギヤ53とを有する。また、一対のクランク軸34の他方(図2では左側)に固定されるギヤ51と、ギヤ51にかみ合って掛けられるチェーン52と、このチェーン52が掛けられて回転するギヤ53とを有する。左右のギヤ53、53は、連携用軸体として用いられる車軸25にそれぞれ固定される。これにより、左右のペダル31及びクランク33は、連携伝達要素を介して連携して同期回転動作し、相対角度関係が保持される。以下の他の実施形態を含めて本実施形態では、左右のクランクの相対角度を180度に維持する。
【0032】
本実施形態において、実施に際し、ペダル軸32、クランク軸34、車輪20等と、フレーム10との位置関係における設計数値例を示す。もちろん、これに限定されない。また、この設計数値例は、他の実施形態においても同様である。
【0033】
図2に示すように、車輪20の半径をR、サドル13の高さをS、車軸25とクランク軸34との距離をD、クランク33の長さ(クランク軸34とペダル軸32との距離)をL、ペダル31最下点の地上高をH(ペダルの厚みを無視)とする。
【0034】
まず、Hが小さく、Dが大きいほど、車体は安定する。一方、Hが、小さすぎると、車体が左右に傾いたときに、ペダル31が地面に当たってしまうので、設計上の限界がある。平坦な舗装路で運転する場合、Hの下限は40~50mm程度、凹凸のある路面やパフォーマンスを行うような場合では、Hの下限は80~100mm程度と考えられる。また、Dの値は、100mm程度以下では、実質的な安定化の効果は小さい。150mm以上が望ましく、200mm以上が理想的である。
【0035】
例えば、一般成人が乗車するとして、股下750mmと仮定すると、車輪20の上に突き出すサドル13の高さ(S-2R)を80mm、Hを50mm、Lを100mmとすると、車輪直径2Rは、720mmとなり、インチサイズとしては28.3となる。その際Dは210mmとなる。
【0036】
サドル13に腰掛け、左右のペダル31にそれぞれ左右の足を置いて、ペダル軸32、クランク33及びクランク軸34を介して漕ぐことにより、ギヤ41及びチェーン42を介してギヤ43に回転を伝達する。ギヤ43の回転を、フリー機構を介してハブ24に伝え、スポーク23を介してリム22及びタイヤ21が回転することにより、車輪20が回転する。一方、漕ぐことを止めると、フリー機構により車輪20の回転が止まらず、惰性走行が可能となる。
【0037】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態に係る一輪車の外観を示す側面図である。図4は、第2実施形態に係る一輪車の後方側断面を概念的に示す説明図である。これらの図に示す一輪車は、フレーム10、サドル13及び車輪20を含む車体・車輪系と、一対のペダル31及びクランク33と、ペダル31及びクランク33による回転力を車輪に伝達する回転伝達機構40と、一対のクランク33の相対角度関係を維持する同期連携機構50とを備える。本実施形態は、同期連携機構50の一部と、それに関連する構造が第1実施形態と相違し、その他の点では、第1実施形態と共通する。
【0038】
図3及び4に示すように、本実施形態では、フレーム10に、サドル支持部11を延長する位置に連携用軸体保持部16が設けられている。この連携用軸体保持部16に、連携用軸体56が回転自在に取り付けられる。フレーム10は、それ自身を要素として含む車体・車輪系を構成する要素と共に、回転伝達機構40及び同期連携機構50のそれぞれを構成する要素の互いの位置関係を保持する。本実施形態では、連携用軸体56を、車輪20の回転を阻害しない位置、すなわち、車輪20の外周の外側に配置している。
【0039】
本実施形態で用いられる同期連携機構50は、連携用軸体56と、一対のクランク軸34の回転をそれぞれ連携用軸体56に伝える連携伝達要素として、一対のクランク軸34の一方(図4では右側)にギヤ41と並んで固定されるギヤ51と、ギヤ51にかみ合って掛けられるチェーン54と、このチェーン54が掛けられて回転するギヤ55とを有する。また、一対のクランク軸34の他方(図2では左側)に固定されるギヤ51と、ギヤ51にかみ合って掛けられるチェーン54と、このチェーン54が掛けられて回転するギヤ55とを有する。左右のギヤ55、55は、連携用軸体56にそれぞれ固定される。これにより、左右のペダル31及びクランク33は、連携伝達要素を介して回転が連携して同期回転動作し、相対角度関係が維持される。
【0040】
ペダル31及びクランク33と、これらによる回転を車輪20側に伝達する回転伝達機構40とは、基本的に第1実施形態と同様に構成される。ただし、車軸25に、同期連携機構50を構成するギヤ53が設けられていない。
【0041】
回転伝達機構40は、第1実施形態と同様に、クランク軸34に連結されて回転駆動されるギヤ41と、ギヤ41に掛けられるチェーン42と、チェーン42により回転駆動されるギヤ43とを有し、ギヤ43にはハブ24との間にフリー機構が設けられている。ギヤ43の回転を、フリー機構を介してハブ24に伝え、スポーク23を介してリム22及びタイヤ21が回転することにより、車輪20が回転する。一方、漕ぐことを止めても、フリー機構により車輪20の回転が止まらず、惰性走行が可能となる。
【0042】
本実施形態によれば、サドル13に腰掛け、左右のペダル31にそれぞれ左右の足を置いて、ペダル軸32、クランク33及びクランク軸34を介して漕ぐことにより、ギヤ41及びチェーン42を介してギヤ43に回転力を伝達する。伝達された回転力により車輪20を回転することができる。この際、フリー機構により、惰行走行も可能となる。前述した第1実施形態と同様に、低重心で、安定性がよく、バランスが取りやすい一輪車を実現することができる。
【0043】
本実施形態において、フリー機構を設けているが、これに代えて、コースターブレーキ機構を設けることができる。コースターブレーキ機構は、ワンウェイクラッチ機構(フリー機構)とブレーキ機構とを組み合わせて構成される。ワンウェイクラッチ機構は、ギヤの正回転時に、ハブ24を正転する方向に回転力を伝え、ギヤ43が停止すると、ハブとの間でフリー状態となり、車輪の惰性走行を許容する。ブレーキ機構は、後方にペダルを踏み込む(ギヤ43を逆回転させる)と、ハブ24の回転を抑止する制動力を生じさせる。
【0044】
本実施形態によれば、ペダル操作により、前進、惰行、制動が行える。また、後方にバランス崩しそうになった場合に、後方にペダルを踏みこむ(後ろ回転させる)操作が可能となるので、一層安定した走行が可能となる。なお、第1実施形態にも、フリー機構に代えて、コースターブレーキ機構を設けてもよい。
【0045】
<第3実施形態>
本実施形態は、スポークを省いて、タイヤ61及びリム62により構成される車輪60を用いた一輪車の例である。図5は、本発明の第3実施形態に係る一輪車の外観を示す側面図である。図6は、第3実施形態に係る一輪車の後方側断面を概念的に示す説明図である。これらの図に示す一輪車は、フレーム10、サドル13及び車輪60を含む車体・車輪系と、一対のペダル31及びクランク33と、ペダル31及びクランク33によるトルクを車輪に伝達する回転伝達機構40と、一対のクランク33の相対角度関係を維持する同期連携機構50とを備える。同期連携機構50の一部と、それに関連する構造が、第1及び第2実施形態と相違し、その他の点では、第1及び第2実施形態と共通する。
【0046】
車輪60には、リム62の内周に第1内輪70及び第2内輪80が配置される。第1内輪70及び第2内輪80は、それぞれリム62の内周側に接する状態で、フレーム10により保持される。駆動輪である第2内輪80は、リム62の内周側に圧接する状態で、フレーム10により保持される。フレーム10は、クランク軸保持部15により、リム62内の下部側に第1内輪70を、連携用軸体保持部16により、上部側に第2内輪80を、それぞれの位置関係を保って支持する。その結果、第1内輪70と第2内輪80とにより、車輪60が回転可能に支持される。
【0047】
リム62の内周面は、一般的には、中心に向かって凸となる形状にとなっている。本発明ではこれに限られない。例えば、リム62における第1内輪70及び第2内輪80と接触する部分が、凸状にならない形状、または、凹面状となるように、形成することができる。このような構成とすることにより、第1内輪70及び第2内輪80がリム62から外れにくくなり、安定した走行を可能とする。なお、リム62と第1内輪70及び第2内輪80のタイヤとを、ラックとピニオンのように構成してもよい。
【0048】
第1内輪70は、図5及び図6に示すように、タイヤ71、リム72、スポーク73及びハブ74により構成される。ハブ74は、軸体75に回転自在に取り付けられる。軸体75は、その両端にクランク軸34が固定され、クランク軸保持部15に回転自在に保持される。その結果、一対のクランク軸34、34は、軸体75により固定連結されることにより、相対的角度関係が維持される。すなわち、クランク軸34,34は、同期回転する。なお、第1内輪70は、形状維持かつ回転伝達ができる回転体であれば、上述したような典型的な自転車用の車輪と同様の構成に限定されない。
【0049】
第2内輪80は、図5及び図6に示すように、タイヤ81、リム82、スポーク83及びハブ84により構成される。ハブ84は、軸体85に回転自在に取り付けられる。軸体85は、フレーム10の連携用軸体保持部16に支持される。なお、第2内輪80は、形状維持かつ回転伝達ができる回転体であれば、上述したような典型的な自転車用の車輪と同様の構成に限定されない。
【0050】
本実施形態の回転伝達機構40は、一対のペダル31及びクランク33が固定された軸体75に固定して取り付けられたギヤ41と、このギヤ41に掛けられるチェーン42と、チェーン42が掛けられるギヤ43とを有する。ギヤ43は、上述した実施形態と同様に、フリー機構を介してハブ84と一方向回転が許容される状態で組み合わされる。従って、ギヤ43の回転が一方向(正回転)の場合のみ、回転力がハブ84に伝達されて第2内輪80を回転する。他方、一対のペダル31及びクランク33の漕ぎが停止して、連携するギヤ43の回転が停止すると、フリー機構によりハブ84の回転はそのままとなり、第2内輪80の惰行回転が許容される。このとき、軸体75に対して第1内輪70のハブ74も回転自在となっているため、第1内輪70も回転自在となり、従って、車輪60による惰行走行が可能となる。
【0051】
本実施形態によれば、第1内輪70において、ペダル31及びクランク33による回転力をクランク軸34により取り込んで、回転伝達機構40を介して第2内輪80を回転駆動する。この第2内輪80による回転により、リム62において第2内輪80に圧接する車輪60が回転駆動される。また、同期連携機構50により、一対のペダル31及びクランク33による回転は、一方側のクランク軸34、軸体75及び他方側のクランク軸34を介して連携し、同期して回転することができる。
【0052】
本実施形態において、フリー機構を設けているが、これに代えて、上述したコースターブレーキ機構を設けることができる。これにより、ペダル操作により、前進、惰行、制動が行える。また、後方にバランス崩しそうになった場合に、後方にペダルを踏みこむ(後ろ回転させる)操作が可能となるので、一層安定した走行が可能となる。
【0053】
<第4実施形態>
本実施形態は、第3実施形態と同様に、スポークを省いて、タイヤ61及びリム62により構成される車輪60を用いた一輪車の例である。図7は、本発明の第4実施形態に係る一輪車の外観を示す側面図である。図8は、第4実施形態に係る一輪車の後方側断面を概念的に示す説明図である。これらの図に示す一輪車は、フレーム10、サドル13及び車輪60を含む車体・車輪系と、一対のペダル31及びクランク33と、ペダル31及びクランク33による回転力を車輪60に伝達する回転伝達機構40と、一対のクランク33の相対角度関係を維持する同期連携機構50とを備える。
【0054】
本実施形態において、フレーム10は、第3実施形態と同様に、クランク軸保持部15により、リム62内の下部側に第1内輪70を、連携用軸体保持部16により、上部側に第2内輪80を、それぞれの位置関係を保って支持し、第1内輪70と第2内輪80とにより、車輪60を回転可能に支持する。本実施形態は、第1内輪70が車輪60を駆動する駆動輪となり、第2内輪80が回転伝達機構40の要素の一部として機能する点に特徴があるので、第3実施形態との相違点を中心に説明する。
【0055】
第1内輪70は、図8に示すように、タイヤ71、リム72、スポーク73及びハブ74により構成される。ハブ74は、軸体75に回転自在に取り付けられる。軸体75の両端には、クランク軸34が固定される。また、軸体75は、両端がクランク軸保持部15に回転自在に保持される。その結果、一対のクランク軸34、34は、軸体75により固定連結されることにより、相対的角度関係が維持される。すなわち、クランク軸34,34は、同期回転する。また、軸体75は、第1内輪70のハブ74に対して回転自在に貫通している。駆動輪である第1内輪70は、リム62の内周側に圧接する状態で、フレーム10により保持される。
【0056】
軸体75の一端側には、ギヤ41が固定連結される。ここで、ギヤ41は、第1内輪70のハブ74とは固定されない。一方、軸体75の他端側には、ギヤ43が連結される。このギヤ43は、軸体75に対して滑動可能に取り付けられ、軸体75の回転に対してフリーである。従って、ハブ74、すなわち、第1内輪70は、クランク軸34の回転により直接的には駆動されず、後述する回転伝達機構40を介して駆動される構成となっている。
【0057】
第2内輪80は、図8に示すように、タイヤ81、リム82、スポーク83及びハブ84により構成される。ハブ84は、軸体85に回転自在に取り付けられる。軸体85の両端には、回転力を伝えるためのギヤ44、45が固定されている。一方のギヤ44には、チェーン42を介してギヤ41からの回転力が伝達される。このギヤ44に伝達される回転力により、軸体85を介して他方のギヤ45が回転する。このギヤ45の回転力は、ギヤ45とギヤ43とに掛けられているチェーン42を介してギヤ43に伝達される。なお、ギヤ44とギヤ45とは歯の数を同じにしてある。非駆動輪である第2内輪80は、リム62の内周側に接する状態で、フレーム10により保持される。
【0058】
本実施形態の回転伝達機構40は、一対のペダル31及びクランク33が固定された軸体75に固定されたギヤ41と、このギヤ41に掛けられるチェーン42と、ギヤ44、軸体85、ギヤ45と、チェーン42と、ギヤ43とを介して、第1内輪70のハブ74に、回転力が伝達される構成を有する。すなわち、ペダル31を漕ぐことにより生じる回転力を、第2内輪80の軸体85を介して、第1内輪70に戻して、第1内輪70を駆動する。このようにすることにより、第1内輪70を直接的に回転駆動させる感覚でペダル31を漕ぐことができる。
【0059】
本実施形態では、ギヤ43は、上述した実施形態と同様に、フリー機構を介してハブ74と一方向回転が許容される状態で組み合わされる。従って、ギヤ43の回転力が一方向(正回転)の場合のみハブ74に伝達されて第1内輪70を回転させる。これにより、上述したように、第1内輪70においては、ペダル31による漕ぎ運動が正回転の場合のみ車輪60を駆動し、ペダル31の漕ぎ運動が停止されると、フリー機構が作動して、車輪60の走行が第1内輪70において妨げられず、惰行走行が許容されることとなる。
【0060】
なお、本実施形態において、第2内輪80のハブ84に、コースターブレーキ機構を設けることもできる。これにより、ペダル操作により、前進、惰行、制動が行える。また、後方にバランス崩しそうになった場合に、後方にペダルを踏みこむ(後ろ回転させる)操作が可能となるので、一層安定した走行が可能となる。なお、第1内輪70に、フリー機構に代えて、コースターブレーキ機構を設けてもよい。
【0061】
<第5実施例>
第1実施形態から第4実施形態の一輪車には、補助輪をつけて自転車とすることができる。図9は、本発明の第5実施形態に係る一輪車(及び自転車)の外観を示す側面図である。本実施形態は、第1実施形態の一輪車に適用した例である。従って、一輪車部分については、第1実施形態と同様であるので、重複して説明することを省略する。
【0062】
図9に示すように、本実施形態では、フレーム10の上部にヘッドチューブ90を設け、ヘッドチューブ90に、後方に向かって低くなる形状の補助フレーム91を連結している。車輪20は、フレーム10と共に、ヘッドチューブ90において補助フレーム91に対して左右に回動可能に連結される。グリップ12は、上記第1実施形態とは異なり、後方側に突出する形態としてある。
【0063】
補助フレーム91の中間部には、サドル支持部11が設けられ、これによりサドル13が支持される。この例では、車輪20の最上部より低い位置にサドル13が位置するため、地面に足をつけることが容易である。そのため、初心者でも安心して乗ることができる。また、補助フレーム91の後部下端の支持部93には補助輪92が装着される。このため、ペダル31の踏み込み時に、安定性が増す。尚、補助輪92は、2輪を左右に併設して三輪車構造としてもよい。
【0064】
このような構成の自転車は、前輪駆動となるが、ペダル位置を低くして安定化できることの他に、前輪を足で支えて運転することになり、曲がる際にも足で前輪の向きを変えることができるので、安定化や操舵のためのハンドル(グリップ12)が必須でなくなるという利点がある。またこれに伴い、自転車の構造をよりシンプルとすることが可能となり、軽量化、低コスト化が可能となる。
【0065】
上記各実施形態において、クランクの回転力を伝達する要素として、ギヤとチェーンとを示したが、これらに限られない。例えば、ベルトとプーリーとの組み合わせ等のように、回転力を伝達することができる要素であれば差し支えない。また、回転伝達機構に変速機を取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…フレーム、11…サドル支持部、12…グリップ、13…サドル、14…車軸保持部、15…クランク軸保持部、16…連携用軸体保持部、20…車輪、21…タイヤ、22…リム、23…スポーク、24…ハブ、25…車軸、31…ペダル、32…ペダル軸、33…クランク、34…クランク軸、40…回転伝達機構、41…ギヤ、42…チェーン、43…ギヤ、44…ギヤ、45…ギヤ、50…同期連携機構、51…ギヤ、52…チェーン、53…ギヤ、54…チェーン、55…ギヤ、56…連携用軸体、60…車輪、61…タイヤ、62…リム、70…第1内輪、71…タイヤ、72…リム、73…スポーク、74…ハブ、75…軸体、80…第2内輪、81…タイヤ、82…リム、83…スポーク、84…ハブ、85…軸体、90…ヘッドチューブ、91…補助フレーム、92…補助輪、93…支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9