(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103905
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】フィルム型電池の検査装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220701BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20220701BHJP
H01M 50/10 20210101ALI20220701BHJP
H01M 50/183 20210101ALI20220701BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220701BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20220701BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/058
H01M2/02 K
H01M2/08 K
H01G11/84
H01G13/00 381
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218814
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 悟史
【テーマコード(参考)】
5E078
5E082
5H011
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA12
5E078AB02
5E078LA08
5E082AB09
5E082MM32
5H011AA17
5H011CC02
5H011FF03
5H011JJ12
5H011KK04
5H028AA07
5H028BB05
5H028BB11
5H028CC02
5H028HH08
5H029AJ12
5H029AM03
5H029AM07
5H029BJ04
5H029BJ27
5H029CJ05
5H029DJ02
(57)【要約】
【課題】ヒートシール部のシール不良個所を検出することができるフィルム型電池の検査装置を提供する。
【解決手段】本発明により、電極体と、上記電極体を内部に収容し、周縁にヒートシール部を有するフィルム外装体と、を備えるフィルム型電池100の検査装置200が提供される。かかる検査装置200は、上記ヒートシール部の温度分布を計測する温度計測装置210と、上記フィルム外装体に上記ヒートシール部が形成された後、所定の時間内に上記温度計測装置を制御し、計測した上記温度分布に基づいて、シール不良個所の有無を判定する第1判定部241と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、前記電極体を内部に収容し、周縁にヒートシール部を有するフィルム外装体と、を備えるフィルム型電池の検査装置であって、
前記ヒートシール部の温度分布を計測する温度計測装置と、
前記フィルム外装体に前記ヒートシール部が形成された後、所定の時間内に前記温度計測装置を制御し、計測した前記温度分布に基づいて、シール不良個所の有無を判定する第1判定部と、を備える、検査装置。
【請求項2】
前記ヒートシール部の厚み分布を計測する厚み計測装置と、
前記フィルム外装体に前記ヒートシール部が形成された後、前記厚み計測装置を制御し、計測した前記厚み分布に基づいて、シール不良個所の有無を判定する第2判定部と、をさらに備える、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記フィルム型電池は、
一端が前記フィルム外装体の内部で前記電極体に電気的に接続され、他端が前記フィルム外装体の外部に延出された端子と、
前記端子の前記フィルム外装体と対向する側の面に設けられ、前記フィルム外装体に溶着されているシーラントフィルムと、を備え、
前記ヒートシール部は、
前記フィルム外装体と前記シーラントフィルムとがヒートシールされた第1シール部と、
前記フィルム外装体同士がヒートシールされた第2シール部と、
を有し、
前記第1判定部は、前記第1シール部と前記第2シール部とを異なる判定基準で判定するように構成されている、
請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第1判定部は、少なくとも前記第1シール部の前記温度分布を計測するように構成されている、
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第1判定部は、前記所定の時間内に、第1の時間経過後の前記温度分布と、前記第1の時間よりも長い第2の時間経過後の前記温度分布と、を取得して、単位時間あたりの温度変化量を算出し、前記温度変化量に基づいて前記シール不良個所の有無を判定するように構成されている、
請求項1から4のいずれか1つに記載の検査装置。
【請求項6】
前記ヒートシール部を形成した後、請求項1から5のいずれか1つに記載の検査装置を用いて前記ヒートシール部を検査する工程を含む、フィルム型電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム型電池の検査装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム状の外装部材(以下、フィルム外装体という。)の内部に電極体と電解液とを収容し、周縁をヒートシールすることによって気密に密閉したフィルム型電池が知られている。このようなフィルム型電池は、気密不良箇所があると電解液が漏れるおそれがある。そのため、出荷前に気密性を検査することが一般的である。例えば特許文献1には、フィルム型電池を密封容器に入れ、密閉容器内を減圧する前と後とでフィルム型電池の表面の起伏形状を比較することにより、気密性を検査することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者の検討によれば、ヒートシールの際に、加熱不良や異物の咬み込みによる加熱不足等が生じると、シール幅が一部狭くなる等、ヒートシール部に部分的な欠損(シール不良個所)が生じることがある。このようなフィルム型電池では、シール不良個所が開裂しやすくなり、使用時に耐圧強度が不足することがありうる。特許文献1の技術では、気密性を検査しうるものの、ヒートシール部のシール不良個所を検出することができない。このため、フィルム型電池の耐圧強度がばらつくおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒートシール部のシール不良個所を検出することができるフィルム型電池の検査装置、および耐圧強度の安定したフィルム型電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、電極体と、上記電極体を内部に収容し、周縁にヒートシール部を有するフィルム外装体と、を備えるフィルム型電池の検査装置が提供される。かかる検査装置は、上記ヒートシール部の温度分布を計測する温度計測装置と、上記フィルム外装体に上記ヒートシール部が形成された後、所定の時間内に上記温度計測装置を制御し、計測した上記温度分布に基づいて、シール不良個所の有無を判定する第1判定部と、を備える。
【0007】
上記検査装置によれば、シール不良個所の個所、すなわち、シール幅が一部狭くなっている等の部分的な欠損の有無を、精度よく検出することができる。これにより、耐圧強度の安定したフィルム型電池を提供することができる。
【0008】
ここに開示される検査装置の好適な一態様では、上記ヒートシール部の厚み分布を計測する厚み計測装置と、上記フィルム外装体に上記ヒートシール部が形成された後、上記厚み計測装置を制御し、計測した上記厚み分布に基づいて、シール不良個所の有無を判定する第2判定部と、をさらに備える。上記構成により、ヒートシール部のシール不良個所を、3次元的に確認することができ、より高精度に検出することができる。
【0009】
ここに開示される検査装置の好適な一態様では、上記フィルム型電池は、一端が上記フィルム外装体の内部で上記電極体に電気的に接続され、他端が上記フィルム外装体の外部に延出された端子と、上記端子の上記フィルム外装体と対向する側の面に設けられ、上記フィルム外装体に溶着されているシーラントフィルムと、を備える。上記ヒートシール部は、上記フィルム外装体と上記シーラントフィルムとがヒートシールされた第1シール部と、上記フィルム外装体同士がヒートシールされた第2シール部と、を有する。上記第1判定部は、上記第1シール部と上記第2シール部とを異なる判定基準で判定するように構成されている。第1シール部と第2シール部とでは、例えば、ヒートシールの加熱設定温度や、ヒートシール後の温度の推移(冷め方)が異なりうる。例えば、端子が金属製である場合、第1シール部は第2シール部よりも冷めやすい部分でありうる。第1シール部と第2シール部との判定基準を相互に異ならせることにより、シール不良個所を精度よく検出することができる。
【0010】
ここに開示される検査装置の好適な一態様では、上記第1判定部は、少なくとも上記第1シール部の上記温度分布を計測するように構成されている。第1シール部では、端子とフィルム外装体との間にシーラントフィルムが介在していることで、第2シール部に比べてシール不良が生じやすくなることがあるが、上記構成によれば、第1シール部におけるシール不良個所を精度よく検出することができる。
【0011】
ここに開示される検査装置の好適な一態様では、上記第1判定部は、上記所定の時間内に、第1の時間経過後の上記温度分布と、上記第1の時間よりも長い第2の時間経過後の上記温度分布と、を取得して、単位時間あたりの温度変化量を算出し、上記温度変化量に基づいて上記シール不良個所の有無を判定するように構成されている。経時的な温度変化量(ΔT)に基づいて良否判定を行うことにより、シール不良個所を高精度に検出することができる。
【0012】
また、本発明により、上記ヒートシール部を形成した後、請求項1から5のいずれか1つに記載の検査装置を用いて上記ヒートシール部を検査する工程を含む、フィルム型電池の製造方法が提供される。
【0013】
上記製造方法によれば、気密性や耐久性に優れ、耐圧強度の安定したフィルム型電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係るフィルム型電池を模式的に示す一部破断の平面図である。
【
図2】一実施形態に係る検査装置の構成を示す模式図である。
【
図3】一実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しつつ、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えばフィルム型電池の検査装置および製造方法)以外の事柄であって実施に必要な事柄(例えば、フィルム型電池の一般的な構成や構築プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0016】
なお、本明細書において「フィルム型電池」とは、フィルム(シート)状の外装部材の内部に電極体を収容した構成の電池全般をいう。また、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0017】
<フィルム型電池100>
まず、検査対象となるフィルム型電池100について説明する。
図1は、フィルム型電池100を模式的に示す一部破断の平面図である。フィルム型電池100は、フィルム外装体10と、電極体20と、正極端子32と、負極端子34と、電解液(図示せず)と、を備える。フィルム型電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。正極端子32および負極端子34は、端子の一例である。なお、以下の説明において、図面中の符号X、Y、Zは、フィルム型電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、厚み方向を、それぞれ表すものとする。長辺方向は、正極端子32および負極端子34が延出された方向の一例である。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、フィルム型電池100の配置形態を何ら限定するものではない。
【0018】
フィルム外装体10は、電極体20と電解液とを内部に収容する容器である。フィルム外装体10は、ここではヒートシールを可能にするために、少なくとも内側の面(電極体20と対向する側の面)が樹脂層で構成されている。樹脂層は、例えば、ポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂で構成されている。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)や、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸ポリエステル等の酸変性ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。フィルム外装体10は、ここでは、所謂、ラミネートフィルムである。ラミネートフィルムは、例えば従来公知のラミネート型電池に用いられるようなものと同様でよく、特に限定されない。フィルム外装体10は、例えば、電極体20に近い側から、第1の樹脂層と、金属層と、第2の樹脂層と、がこの順に積層されて構成されている。
【0019】
フィルム外装体10は、ここでは2枚の矩形状のフィルムを重ね合わせ、周縁をシールすることにより、袋状に形成されている。
図1に二点鎖線で示すように、フィルム外装体10の周縁(ここでは、電極体20を囲む4辺)には、ヒートシール部16が形成されている。電極体20と電解液とは、ヒートシール部16によってフィルム外装体10の内部に気密に封止されている。
【0020】
ヒートシール部16は、ここではフィルム外装体10の外縁に沿って環状に形成されている。ヒートシール部16は、第1シール部17と、第2シール部18と、で構成されている。第1シール部17は、フィルム外装体10と、後述するシーラントフィルム40と、がヒートシールされた部位である。第1シール部17は、ここではフィルム外装体10の長辺方向Yの両端部に、それぞれ帯状に形成されている。詳しくは、フィルム外装体10の正極端子32が延出された側(長辺方向Yの右側)の縁部、および、負極端子34が延出された側(長辺方向Yの左側)の縁部に、それぞれ形成されている。ただし、正極端子32と負極端子34とが長辺方向Yの一方の端部から共に延出している場合には、長辺方向Yの一方側の端部にのみ、第1シール部17が形成されていてもよい。第1シール部17は、所定のシール幅(内縁から外縁への垂直長さ)で形成されている。
【0021】
第2シール部18は、ヒートシール部16のうち、第1シール部17以外の部分である。第2シール部18は、対向するフィルム外装体10同士がヒートシールされた部位である。第2シール部18は、ここでは少なくともフィルム外装体10の短辺方向Xの両端部に、それぞれ帯状に形成されている。ただし、例えば1枚のフィルムを2つ折りにして使用したり、円筒形状のフィルムを使用したりする場合等には、短辺方向Xの一方あるいは両方の端部に、第2シール部18が形成されていなくてもよい。第2シール部18は、所定のシール幅(内縁から外縁への垂直長さ)で形成されている。第2シール部18のシール幅は、第1シール部17と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0022】
電極体20の構成は従来公知の電池と同様でよく、特に限定されない。電極体20は、シート状の正極(正極シート)およびシート状の負極(負極シート)を備えている。
図1に示すように、電極体20は、ここでは、方形状(典型的には矩形状)の正極シートと、方形状(典型的には矩形状)の負極シートとが、絶縁された状態で積層されてなる積層電極体である。ただし、電極体20は、例えば、帯状の正極シートと帯状の負極シートとが絶縁された状態で積層され、長手方向に捲回されてなる捲回電極体であってもよい。正極は、典型的には、正極集電体と、正極集電体の上に固着され、正極活物質を含む正極活物質層(図示せず)と、を有する。負極は、典型的には、負極集電体と、負極集電体の上に固着され、負極活物質を含む負極活物質層(図示せず)と、を有する。
【0023】
図1に示すように、電極体20は、長辺方向Yの一方の端部(
図1の右端部)に、正極活物質層が形成されていない部分(正極集電体露出部)22を有する。正極集電体露出部22は、正極端子32と接合されている。電極体20は、長辺方向Yの他方の端部(
図1の左端部)に、負極活物質層が形成されていない部分(負極集電体露出部)24を有する。長辺方向Yにおいて、負極集電体露出部24は、ここでは正極集電体露出部22の反対側に配置されている。負極集電体露出部24は、負極端子34と接合されている。
【0024】
電解液は、従来公知の電池と同様でよく、特に限定されない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、カーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、電極体20と一体化されていてもよい。
【0025】
正極端子32は、板状の金属部材である。正極端子32は、長辺方向Yの一方の端部(
図1の右端部)に配置されている。正極端子32の一端は、フィルム外装体10の内部で、正極集電体露出部22に電気的に接続されている。正極端子32の他端は、フィルム外装体10の外部へと延出されている。
【0026】
図1に示すように、正極端子32のフィルム外装体10と対向する側の面の一部には、シーラントフィルム40が一体化されている。シーラントフィルム40は、典型的には正極端子32のフィルム外装体10と対向する側の面に溶着されている。ただし、シーラントフィルム40は、接着剤等を用いて正極端子32に貼り付けられていてもよい。シーラントフィルム40は、フィルム外装体10の正極端子32が延出された側(
図1の右側)の縁部に沿って設けられている。シーラントフィルム40は、短辺方向Xに延びている。シーラントフィルム40の一方の端部(
図1の右端部)は、フィルム外装体10からはみ出している。
【0027】
シーラントフィルム40は、正極集電体露出部22とフィルム外装体10とが直接接触しないように、正極端子32を覆っている。シーラントフィルム40は、対向するフィルム外装体10と溶着(例えば熱溶着)されている。これにより、
図1に示すように、フィルム外装体10の正極端子32が延出された側(長辺方向Yの右側)の縁部では、正極端子32とフィルム外装体10との間にシーラントフィルム40が介在し、ヒートシール部16が形成されている。
【0028】
シーラントフィルム40は、典型的には樹脂材料からなる。シーラントフィルム40は、使用する電解液に対する耐性を有し、かつ、フィルム外装体10の樹脂層(例えば第1の樹脂層)と同程度の温度で溶融する樹脂材料からなるとよい。シーラントフィルム40は、フィルム外装体10と正極端子32の両方に対して好適な接着性を発揮するものあるとよい。シーラントフィルム40を構成する樹脂材料としては、例えば、フィルム外装体10の樹脂層を構成し得るものとして例示した熱可塑性樹脂が挙げられる。シーラントフィルム40は、ポリオレフィンフィルムであってもよい。
【0029】
負極端子34は、板状の金属部材である。負極端子34は、長辺方向Yの他方の端部(
図1の左端部)に配置されている。長辺方向Yにおいて、負極端子34は、正極端子32の反対側に配置されている。ただし、正極端子32と負極端子34とは、フィルム外装体10の同じ方向の端部、例えば長辺方向Yの一方の端部から共に延出していてもよい。負極端子34の一端は、フィルム外装体10の内部で、負極集電体露出部24に電気的に接続されている。負極端子34は、長辺方向Yに沿って延びている。負極端子34の他端は、フィルム外装体10の外部へと延出されている。
【0030】
図1に示すように、負極端子34のフィルム外装体10と対向する側の面の一部には、正極端子32と同様に、シーラントフィルム40が一体化されている。シーラントフィルム40は、対向するフィルム外装体10と溶着(例えば熱溶着)されている。これにより、
図1に示すように、フィルム外装体10の負極端子34が延出された側(長辺方向Yの左側)の縁部では、負極端子34とフィルム外装体10との間にシーラントフィルム40が介在し、ヒートシール部16が形成されている。
【0031】
<検査装置200>
次に、フィルム型電池100の検査装置200について説明する。
図2は、検査装置200の構成を示す模式図である。検査装置200は、ヒートシール後のフィルム型電池100について、ヒートシール部16の所定の検出範囲におけるシール不良個所(部分的な欠損)を検出する装置である。
図2に示す検査装置200は、温度計測装置210と、厚み計測装置220と、表示装置230と、制御装置240と、を備えている。ただし、他の実施形態において、厚み計測装置220および/または表示装置230は、省略することもできる。以下、各構成要素について説明する。
【0032】
温度計測装置210は、ヒートシール部16の温度分布を計測する装置である。温度計測装置210は、ここではフィルム型電池100の上方に配置されている。温度計測装置210は、例えばフィルム型電池100の表面温度の分布を可視化するサーモカメラである。温度計測装置210は、ここではフィルム型電池100を上方から撮影し、ヒートシール部16の全ての部分の温度分布を計測する。ただし、ヒートシール部16の撮影範囲は、第1シール部17または第2シール部18のみであってもよい。温度計測装置210は、少なくとも第1シール部17の温度を計測可能なように構成されていることが好ましい。温度計測装置210は、制御装置240と電気的に接続されており、制御装置240によって制御される。温度計測装置210で測定された温度分布(典型的には画像データ、例えば、サーモカメラで撮影されたサーモグラフィー)は、制御装置240に入力される。
【0033】
厚み計測装置220は、ヒートシール部16の厚み分布を計測する装置である。厚み計測装置220は、例えば非接触式のセンサである。厚み計測装置220は、ここでは厚み方向Zに対向配置された発光部221と受光部222とを備える光学式の測長センサである。発光部221と受光部222との間には、フィルム型電池100の少なくともヒートシール部16の一部が介在可能なように、隙間が空いている。厚み計測装置220では、発光部221から受光部222に向かって光が照射される。発光部221は、制御装置240と電気的に接続されており、制御装置240によって制御される。受光量の値は、受光部222から制御装置240に入力され、厚みに変換される。
【0034】
表示装置230は、フィルム型電池100やヒートシール部16に関する情報を表示する装置である。表示装置230は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイである。表示装置230は、フィルム型電池100が良品か不良品かを表示するように構成されていてもよい。表示装置230は、温度計測装置210で測定された温度分布(例えば、サーモカメラで撮影されたサーモグラフィー)を、例えば色と温度との対応を表す温度グラフとともに、表示するように構成されていてもよい。表示装置230は、厚み計測装置220で測定された厚み分布を表示するように構成されていてもよい。
【0035】
制御装置240は、第1判定部241と、第2判定部242と、通知部243と、を備えている。なお、他の実施形態において、第2判定部242および/または通知部243は省略することもできる。第1判定部241は、ヒートシール部16の温度分布に基づいて、シール不良個所の有無を判定する制御部である。第2判定部242は、ヒートシール部16の厚み分布に基づいて、シール不良個所の有無を判定する制御部である。
【0036】
通知部243は、第1判定部241および/または第2判定部242の判定結果に基づいて、フィルム型電池100が良品か不良品かを表示装置230に表示する制御部である。詳しくは、通知部243は、シール不良個所がない場合に、フィルム型電池100が良品であると表示し、シール不良個所がある場合に、フィルム型電池100が不良品であると表示する。通知部243は、第1判定部241および/または第2判定部242の判定結果や、得られた温度分布および/または厚み分布を、そのまま表示装置230に表示するように構成されていてもよい。
【0037】
制御装置240は、例えば、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記録装置と、を備えている。制御装置240の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。制御装置240は、温度計測装置210と、厚み計測装置220と、表示装置230とに、それぞれ通信可能に接続されており、これらを制御するように構成されている。
【0038】
<フィルム型電池100の製造方法>
次に、フィルム型電池100の製造方法について説明する。
図3は製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3の製造方法は、シール工程(ステップS10)と、検査工程(ステップS20)と、を包含する。検査工程(ステップS20)は、検査装置200を用いたフィルム型電池100の検査方法の一例である。検査工程(ステップS20)は、温度計測工程(ステップS21)と、第1判定工程(ステップS22)と、厚み計測工程(ステップS24)と、第2判定工程(ステップS25)と、表示工程(ステップS23、ステップS26、ステップS27)と、を包含する。ただし、他の実施形態において、このうちの一部(例えばステップS24、S25)を省略することもできる。また、温度計測工程および第1判定工程よりも前に、厚み計測工程および第2判定工程を行うこともできる。さらに、任意の段階において、他の処理を包含することもできる。
【0039】
まず、ステップS10では、フィルム外装体10にヒートシール部16(第1シール部17および第2シール部18)を形成する。例えば一対のラミネートフィルムの間に電解液を含浸させた電極体20を挟み込み、ラミネートフィルムの周縁をヒートシールする。ヒートシールは、例えば所定の加工温度に加熱されたヒートバーを用いて、樹脂層を熱溶着することによって行いうる。加工温度は、第1シール部17と第2シール部18とで異なっていてもよい。ヒートシールにより、フィルム外装体10の内部に電極体20が収容され、ヒートシール部16によってフィルム外装体10が封止される。そして、ステップS20に進む。
【0040】
なお、シール工程(ステップS10)から検査工程(ステップS20)への動作は、手動で行ってもよいし、制御装置240による自動制御で行うようにしてもよい。その場合、例えば従来公知の搬送用アームや搬送用ベルト等の搬送手段を用いて、例えば
図2に矢印で示したように、フィルム型電池100を検査装置200の近くに搬送すればよい。
【0041】
次に、ステップS20では、検査装置200を用いて、検査対象であるフィルム型電池100のヒートシール部16を検査する。詳しくは、まず、温度計測工程(ステップS21)において、第1判定部241は、ヒートシール部16の温度分布を取得する。例えば本工程を制御装置240による自動制御で実行する場合、第1判定部241は、搬送手段を制御して、フィルム型電池100を温度計測装置210の真下に移動させる。第1判定部241は、ステップS10でヒートシール部16が形成された後、所定の時間内に、温度計測装置210を制御して、ヒートシール部16(具体的には、第1シール部17および/または第2シール部18)の温度分布を取得する。所定の時間は、ヒートシール部16の温まった状態が維持されている時間である。第1判定部241は、ここでは所定の時間内に1回だけ温度計測装置210を駆動させて、第1の時間経過後のヒートシール部16の温度分布を取得する。
【0042】
温度分布は、ここでは、環状に形成されたヒートシール部16の全周にわたって、平面視の位置と測定温度との関係を示すデータである。ただし、帯状に形成された第1シール部17のみについて、平面視の位置と測定温度との関係を示すデータであってもよいし、第2シール部18のみについて、平面視の位置と測定温度との関係を示すデータであってもよい。温度分布は、例えば、撮影範囲を短辺方向Xおよび長辺方向Yに等間隔に区分した各撮影部について、短辺方向Xの座標と、長辺方向Yの座標と、測定温度との3つの値からなる組の群として構成されていてもよい。そして、ステップS22に進む。
【0043】
次に、第1判定工程(ステップS22)において、第1判定部241は、ステップS21で取得した温度分布に基づいて、シール不良個所の有無を判定する。シール不良個所の有無の判定は、例えば、各撮影部の測定温度と、判定基準として予め設定された温度閾値と、を対比することによって行いうる。温度閾値は、例えばヒートシールに用いるヒートバーの加熱設定温度や、ステップS10からの経過時間、フィルム外装体10および/またはシーラントフィルム40の物性(例えば、樹脂層の溶融温度)等に基づいて設定され、第1判定部241に記憶されている。温度閾値は、典型的には第1シール部17と第2シール部18とで相互に異なっている。第1シール部17の温度閾値は、例えば、フィルム外装体10とシーラントフィルム40との溶着温度や、正極端子32および/または負極端子34の材質等に基づいて設定されていてもよい。第2シール部18の温度閾値は、例えば、フィルム外装体10同士の溶着温度に基づいて設定されていてもよい。
【0044】
ヒートシール部16に加熱不良や異物の咬み込みによる加熱不足等が生じると、ヒートシール部16の温度が部分的に低くなる。第1判定部241は、各撮影部の測定温度がいずれも温度閾値以上である場合に、シール不良個所がない(S22:YES)と判定する。第1判定部241は、ここでは、ヒートシール部16の全周にわたる位置と測定温度との関係を示すデータにおいて、測定温度がいずれも温度閾値以上である場合に、シール不良個所がない(S22:YES)と判定する。ただし、第1判定部241は、例えば、温度計測工程(ステップS21)で第1シール部17または第2シール部18のみの温度分布を取得した場合等には、第1シール部17または第2シール部18の位置と測定温度との関係を示すデータにおいて、測定温度がいずれも温度閾値以上である場合に、シール不良個所がないと判定してもよい。そして、ステップS24に進む。
【0045】
一方、第1判定部241は、少なくとも1つの撮影部について測定温度が温度閾値未満である場合に、シール不良個所がある(S22:NO)と判定する。第1判定部241は、ここでは、ヒートシール部16の全周にわたる位置と測定温度との関係を示すデータにおいて、測定温度が一箇所でも温度閾値未満である場合に、シール不良個所がある(S22:NO)と判定する。ただし、第1判定部241は、例えば、温度計測工程(ステップS21)で第1シール部17または第2シール部18のみ温度分布を取得した場合等には、第1シール部17または第2シール部18の位置と測定温度との関係を示すデータにおいて、測定温度が一箇所でも温度閾値未満である場合に、シール不良個所がある(S22:NO)と判定してもよい。そして、ステップS23に進む。表示工程(ステップS23)において、通知部243は、検査対象であるフィルム型電池100が不良品であることを表示装置230に表示する。そして制御を終了する。
【0046】
次に、厚み計測工程(ステップS24)において、第2判定部242は、ヒートシール部16(具体的には、第1シール部17および/または第2シール部18)の厚み分布を取得する。例えば本工程を制御装置240による自動制御で実行する場合、第2判定部242は、所定の計測範囲のなかでフィルム型電池100を移動させると共に、厚み計測装置220を制御して、発光部221から光を出射させ、受光部222から受光量の値を受信する。第2判定部242では、受光量に基づいて厚み分布が生成される。厚み分布は、例えば、環状に形成されたヒートシール部16の全周にわたって、平面視の位置と測定厚みとの関係を示すデータである。ただし、帯状に形成された第1シール部17のみについて、平面視の位置と測定厚みとの関係を示すデータであってもよいし、第2シール部18のみについて、平面視の位置と測定厚みとの関係を示すデータであってもよい。厚み分布は、例えば、計測範囲の短辺方向Xおよび/または長辺方向Yの座標と、測定厚みとが対応付けられた群として構成されていてもよい。そして、ステップS25に進む。
【0047】
次に、第2判定工程(ステップS25)において、第2判定部242は、ステップS24で取得した厚み分布に基づいて、シール不良個所の有無を判定する。シール不良個所の有無の判定は、例えば、測定厚みと、判定基準として予め設定された基準厚み範囲と、を対比することによって行いうる。基準厚み範囲は、例えばフィルム外装体10、シーラントフィルム40、正極端子32および/または負極端子34の厚み等に基づいて設定され、第2判定部242に記憶されている。基準厚み範囲は、典型的には第1シール部17と第2シール部18とで相互に異なっている。
【0048】
例えばフィルム外装体10に皺があったり、ヒートシール時にシーラントフィルム40が撚れたりすると、ヒートシール部16の厚みが部分的に薄くなったり厚くなったりする。第2判定部242は、測定厚みがいずれも基準厚み範囲内である場合に、シール不良個所がない(S25:YES)と判定する。第2判定部242は、例えば、ヒートシール部16の全周にわたる位置と測定厚みとの関係を示すデータにおいて、測定厚みがいずれも基準厚み範囲内である場合に、シール不良個所がない(S25:YES)と判定する。ただし、第2判定部242は、例えば、厚み計測工程(ステップS24)で第1シール部17または第2シール部18のみの厚み分布を取得した場合等には、第1シール部17または第2シール部18の位置と測定厚みとの関係を示すデータにおいて、測定厚みがいずれも基準厚み範囲内である場合に、シール不良個所がない(S25:YES)と判定してもよい。そして、ステップS26に進む。表示工程(ステップS26)において、通知部243は、検査対象であるフィルム型電池100が良品であることを表示装置230に表示する。そして制御を終了する。
【0049】
一方、第2判定部242は、少なくとも1箇所の測定厚みが基準厚み範囲外である場合に、シール不良個所がある(S25:NO)と判定する。第2判定部242は、例えば、ヒートシール部16の全周にわたる位置と測定厚みとの関係を示すデータにおいて、測定厚みが一箇所でも基準厚み範囲外である場合に、シール不良個所がある(S25:NO)と判定する。ただし、第2判定部242は、例えば、厚み計測工程(ステップS24)で第1シール部17または第2シール部18のみの厚み分布を取得した場合等には、第1シール部17または第2シール部18の位置と測定厚みとの関係を示すデータにおいて、測定厚みが一箇所でも基準厚み範囲外である場合に、シール不良個所がある(S25:NO)と判定してもよい。そして、ステップS27に進む。表示工程(ステップS27)において、通知部243は、検査対象であるフィルム型電池100が不良品であることを表示装置230に表示する。そして制御を終了する。
【0050】
以上のように、検査装置200によれば、ヒートシール部16のシール不良個所の有無を、精度よく検出することができる。また、上記製造方法によれば、耐圧強度の安定したフィルム型電池100を製造することができる。
【0051】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0052】
上記した実施形態では、第1判定部241が、所定の時間内に1回だけ温度計測装置210を駆動させて、第1の時間経過後の温度分布を取得するように構成されていた。しかし、これには限定されない。第1判定部241は、所定の時間内に2回以上、温度計測装置210を駆動させて、温度の過渡変化を複数回にわたり撮影してもよい。第1判定部241は、所定の時間内に、第1の時間経過後の温度分布と、第1の時間よりも長い第2の時間経過後の温度分布と、を取得してもよい。その場合、第1判定部241は、各撮影部について、第2の時間経過後の温度分布と第1の時間経過後の温度分布との比較から、時間的な差分を取ることで単位時間あたりの温度変化量(ΔT)を算出し、温度変化量の分布を生成してもよい。第1判定部241において、シール不良個所の有無を判定は、各撮影部について、温度変化量と、判定基準として予め設定された温度変化量閾値とを対比することによって行ってもよい。
【符号の説明】
【0053】
10 フィルム外装体
16 ヒートシール部
17 第1シール部
18 第2シール部
20 電極体
40 シーラントフィルム
100 フィルム型電池
200 検査装置
210 温度計測装置
220 厚み計測装置
230 表示装置
240 制御装置
241 第1判定部
242 第2判定部
243 通知部