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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103907
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】印刷装置、及びデータ作成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/32 20060101AFI20220701BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20220701BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20220701BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B41J2/32 Z
B41J2/525
B41J3/36 T
H04N1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218819
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【弁理士】
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】南 明
(72)【発明者】
【氏名】西原 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】福地 功
【テーマコード(参考)】
2C055
2C065
2C262
5C062
【Fターム(参考)】
2C055CC01
2C065AA01
2C065AB01
2C065AC01
2C065AD02
2C065AF01
2C065CZ03
2C065CZ06
2C065CZ14
2C262AA03
2C262AA11
2C262AA16
2C262AA24
2C262AB11
2C262AC02
2C262BA18
2C262CA10
2C262DA06
2C262GA30
5C062AA05
5C062AA13
5C062AB08
5C062AB22
5C062AB33
5C062AB41
5C062AB42
5C062AB43
5C062AB44
5C062AC22
5C062AC24
5C062AC30
(57)【要約】
【課題】印刷媒体で表現可能な色域を拡大できる印刷装置、及びデータ作成装置を提供する。
【解決手段】印刷装置はラベル9の感熱テープ4に画像を形成する為に、印刷データを作成する。感熱テープ4は透明性を有し、熱が付与されることによって互いに異なる色を発色する複数の感熱層42が積層されて構成される。印刷装置は複数のラベルを重ね合わせて使用するか判断する。印刷装置はその判断結果に応じた印刷データを作成する。印刷装置は印刷データに基づき感熱テープ4に印刷することで、重ね合わせて使用できる複数のラベル9を作成できる。複数のラベル9を重ね合わせることによって、ラベル9で表現できる色の色域を広げることができるので、印刷によって表現し難い特定の色を表現できる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を有するサーマルヘッドと、熱が付与されることによって互いに異なる色を発色する複数の感熱層が積層されて構成された透明性を有する印刷媒体に画像を形成する為に、画像データに基づき前記発熱体を駆動する為の印刷データを作成する作成手段と、前記印刷データに基づいて前記発熱体を駆動する駆動手段とを備え、前記印刷媒体に、前記発熱体から熱を付与することによって前記画像を印刷する印刷装置であって、
前記印刷媒体を少なくとも1つ含む、複数の印刷媒体を重ね合わせて使用するか判断する判断手段を有し、
前記作成手段は、前記判断手段の判断結果に応じた前記印刷データを作成すること
を特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記作成手段は、前記判断手段が、前記印刷媒体を少なくとも1つ含む、複数の印刷媒体を重ね合わせて使用すると判断した場合は、
前記印刷データの色情報の少なくとも一部が互いに異なる少なくとも2つ以上のラベルを生成する印刷データを作成すること
を特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記作成手段は、前記2つ以上のラベルを連結した状態で生成する印刷データを作成すること
を特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記作成手段は、前記判断手段が、前記印刷媒体を少なくとも1つ含む、複数の印刷媒体を重ね合わせて使用すると判断した場合は、前記画像のうち特定色を互いに異なる色を重ね合わせて表現する為に、前記特定色に対応する部分が互いに異なる色で構成された少なくとも2つ以上のラベルを生成する印刷データを作成すること
を特徴とする請求項2又は3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記特定色とは、前記印刷媒体において少なくとも2つ以上の前記感熱層を発色し、発色する前記感熱層のうち少なくとも一層が互いに隣接していない前記感熱層を発色して表現される色であって、
前記作成手段は、前記特定色に対応する部分が、前記互いに隣接していない2つの前記感熱層が発色する夫々の色で構成された少なくとも2つ以上のラベルを生成する印刷データを作成すること
を特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷媒体を加熱して発色させることで表現可能な第一色範囲を記憶する第一記憶部を更に備え、
前記作成手段は、
前記第一記憶部が記憶する前記第一色範囲に、前記判断手段の前記判断結果に応じて重ね合わせて使用する印刷媒体を加熱して発色させることで表現可能な第二色範囲を合成する合成手段と、
前記合成手段による合成により得られる合成色範囲に基づき、前記画像を印刷するための一時印刷データを生成する一時印刷データ作成手段と、
前記一時印刷データ作成手段が作成した前記一時印刷データに基づき、前記第一色範囲に基づく前記印刷データに変換する第一最終印刷データ作成手段と、
前記一時印刷データ作成手段が作成した前記一時印刷データに基づき、前記第二色範囲に基づく前記印刷データに変換する第二最終印刷データ作成手段と
を備えたことを特徴とする請求項1から5の何れか一に記載の印刷装置。
【請求項7】
熱が付与されることによって互いに異なる色を発色する複数の感熱層が積層されて構成された透明性を有する印刷媒体に画像を形成する為に、画像データに基づき印刷装置のサーマルヘッドの発熱体を駆動する為の印刷データを作成するデータ作成装置であって、
前記印刷媒体を少なくとも1つ含む、複数の印刷媒体を重ね合わせて使用するか判断する判断手段と、
前記判断手段の判断結果に応じて前記印刷データを作成する作成手段と
を備えたこと
を特徴とするデータ作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及びデータ作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のプリント装置は、プリント媒体に発熱体から熱を付与することで画像をプリントする。プリント媒体は、複数の画像形成層が積層されて構成される。複数の画像形成層は透明性を有し、熱が付与されることで互いに異なる色を発色する。それ故、プリント媒体は、画像形成層が単独で発色できない色を表現できる。プリント装置は、複数の画像形成層の積層順序が互いに異なる複数種類のプリント媒体の種類に応じて、発熱体を駆動するためのプリントデータを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-15315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、プリント媒体を構成する画像形成層が、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の順で積層される3層構造の場合、YとCの2層を発色させて表現するグリーンは、その間の中間層であるMを発色させずにYとCを発色させるコントロールが必要となるので表現が難しい。それ故、印刷媒体で表現可能な色域が狭くなるという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、印刷媒体で表現可能な色域を拡大できる印刷装置、及びデータ作成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の印刷装置は、発熱体を有するサーマルヘッドと、熱が付与されることによって互いに異なる色を発色する複数の感熱層が積層されて構成された透明性を有する印刷媒体に画像を形成する為に、画像データに基づき前記発熱体を駆動する為の印刷データを作成する作成手段と、前記印刷データに基づいて前記発熱体を駆動する駆動手段とを備え、前記印刷媒体に、前記発熱体から熱を付与することによって前記画像を印刷する印刷装置であって、前記印刷媒体を少なくとも1つ含む、複数の印刷媒体を重ね合わせて使用するか判断する判断手段を有し、前記作成手段は、前記判断手段の判断結果に応じた前記印刷データを作成することを特徴とする。
【0007】
第1態様によれば、印刷装置は、複数の印刷媒体を重ね合わせて使用するか判断し、その判断結果に応じた印刷データを作成する。印刷装置は、重ね合わせて使用する場合に対応する印刷データを作成し、該印刷データに基づき印刷媒体に印刷することで、重ね合わせて使用できるラベルを作成できる。2つ以上のラベルを重ね合わせることによって、印刷媒体で表現できる色の色域を広げることができるので、印刷によって表現し難い特定の色を表現できる。また、印刷媒体の発色ドットを大きくするには、高温且つ短時間で印刷を行うので、従来品では発熱体に高電圧をかける必要があったが、本態様においては2つ以上の色を重ね合わせて表現できるので、電力の少ない印刷装置でも濃い色を表現できる。
【0008】
第1態様の前記作成手段は、前記判断手段が、前記印刷媒体を少なくとも1つ含む、複数の印刷媒体を重ね合わせて使用すると判断した場合は、前記印刷データの色情報の少なくとも一部が互いに異なる少なくとも2つ以上のラベルを生成する印刷データを作成してもよい。印刷装置は少なくとも2つ以上のラベルを生成する印刷データを作成するので、重ね合わせて使用できる2つ以上のラベルを生成できる。
【0009】
第1態様の前記作成手段は、前記判断手段が、前記印刷媒体を少なくとも1つ含む、複数の印刷媒体を重ね合わせて使用すると判断した場合は、前記印刷データの色情報の少なくとも一部が互いに異なる少なくとも2つ以上の連結したラベルを生成する印刷データを作成してもよい。印刷装置は少なくとも2つ以上の連結したラベルを生成する印刷データを作成するので、カッタ等の切断機構が無い印刷装置であっても、重ね合わせて使用できるラベルを生成する為の印刷データを作成できる。また、2つ以上の連結したラベルを生成する印刷データを作成することで、ラベルとラベルの間の余白を狭くすることができるので、印刷媒体の使用量を節約できる。
【0010】
第1態様の前記作成手段は、前記判断手段が、複数の印刷媒体を重ね合わせて使用すると判断した場合は、前記画像のうち特定色を互いに異なる色を重ね合わせて表現する為に、前記印刷データを補正し、前記特定色に対応する部分が互いに異なる色で構成された少なくとも2つ以上のラベルを生成する印刷データを作成してもよい。印刷装置は2つ以上の異なる色を重ね合わせることで、例えば印刷では表現し難い特定色を表現できる。また、色の濃さが異なる2つ以上の色を重ね合わせることで、色を濃く表現することもできる。
【0011】
第1態様の前記特定色とは、前記印刷媒体において少なくとも2つ以上の前記感熱層を発色し、発色する前記感熱層のうち少なくとも一層が互いに隣接していない前記感熱層を発色して表現される色であって、前記作成手段は、前記特定色に対応する部分が、前記互いに隣接していない2つの前記感熱層が発色する夫々の色で構成された少なくとも2つ以上のラベルを生成する印刷データを作成してもよい。印刷装置は、特定色に対応する部分が、互いに隣接していない2つの感熱層が発色する夫々の色で構成された少なくとも2つ以上のラベルを生成する印刷データを作成する。印刷装置は作成された印刷データに基づき、例えば1つ目の色が発色したラベルと、2つ目の色が発色したラベルを生成できる。これにより、印刷装置は印刷して生成された2つのラベルを重ね合わせることで、印刷媒体では表現し難い色を表現できる。また、お互いのドットを大きく発色させることができる。
【0012】
第1態様は、前記印刷媒体を加熱して発色させることで表現可能な第一色範囲を記憶する第一記憶部を更に備え、前記作成手段は、前記第一記憶部が記憶する前記第一色範囲に、前記判断手段の前記判断結果に応じて重ね合わせて使用する印刷媒体を加熱して発色させることで表現可能な第二色範囲を合成する合成手段と、前記合成手段による合成により得られる合成色範囲に基づき、前記画像を印刷するための一時印刷データを生成する一時印刷データ作成手段と、前記一時印刷データ作成手段が作成した前記一時印刷データに基づき、前記第一色範囲に基づく前記印刷データに変換する第一最終印刷データ作成手段と、前記一時印刷データ作成手段が作成した前記一時印刷データに基づき、前記第二色範囲に基づく前記印刷データに変換する第二最終印刷データ作成手段とを備えてもよい。これにより、印刷装置は重ねて使用する複数の印刷媒体の夫々に応じた印刷データを作成できる。
【0013】
本発明の第2態様のデータ作成装置は、熱が付与されることによって互いに異なる色を発色する複数の感熱層が積層されて構成された透明性を有する印刷媒体に画像を形成する為に、画像データに基づき印刷装置のサーマルヘッドの発熱体を駆動する為の印刷データを作成するデータ作成装置であって、前記印刷媒体を少なくとも1つ含む、複数の印刷媒体を重ね合わせて使用するか判断する判断手段と、前記判断手段の判断結果に応じて前記印刷データを作成する作成手段とを備えたことを特徴とする。データ作成装置は、複数の印刷媒体を重ね合わせて使用するか判断し、その判断結果に応じた印刷データを作成する。印刷装置は、データ作成装置が作成した印刷データに基づき印刷媒体に印刷することで、重ね合わせて使用できるラベルを作成できる。2つ以上のラベルを重ね合わせることによって、印刷媒体で表現できる色の色域を広げることができるので、印刷によって表現し難い特定の色を表現できる。また、印刷媒体の発色ドットを大きくするには、高温且つ短時間で印刷を行うので、従来品では発熱体に高電圧をかける必要があったが、本態様においては2つ以上の色を重ね合わせて表現できるラベルを生成する印刷データを悪性できるので、電力の少ない印刷装置でも濃い色を表現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】印刷装置1の斜視図である。
図2】テープカセット30と装着部8の斜視図である。
図3】テープカセット30が装着された装着部8の平面図である。
図4】感熱テープ4、粘着テープ7、ラベル9の斜視図である。
図5】印刷装置1による印刷の流れを示す図である。
図6】2つの色域R1が合成されて色域R2が生成する過程を示す図である。
図7】色域R1とR4が合成されて色域R5が生成する過程を示す図である。
図8】重ね貼りラベル90の斜視図である。
図9】重ね貼りラベル91,92の使用例を示す図である。
図10】印刷装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図11】印刷制御処理のフローチャートである。
図12】画像データE3の図である。
図13】印刷データD1~D3の概念図である。
図14】場面(1)における色補正処理と印刷色変換処理を示す図である。
図15】場面(2)における色補正処理と印刷色変換処理を示す図である。
図16】場面(3)における色補正処理と印刷色変換処理を示す図である。
図17】印刷装置1とデータ作成装置200の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照し、本発明の一実施形態を説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、制御等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0016】
以下説明は、図1の左下側、右上側、右下側、左上側、上側、及び下側を夫々印刷装置1の前側、後側、右側、左側、上側、及び下側とする。図2の右下側、左上側、右上側、左下側、上側、及び下側は、夫々、テープカセット30の前側、後側、右側、左側、上側、及び下側である。図3は理解を容易にする為、装着部8にテープカセット30が装着された状態を、上ケース312を取り除いて示す。
【0017】
本実施形態の印刷システムは、印刷装置1(図1参照)とテープカセット30(図2参照)を含む。印刷装置1はサーマルプリンタであり、テープカセット30を使用して、感熱テープ4に文字、図形、記号等を印刷できる。印刷された感熱テープ4に粘着テープ7が貼り合わされることで、ラベル9が作成される。
【0018】
図1図2を参照し、印刷装置1の外観構成を説明する。図1に示すように、印刷装置1は本体カバー2を備える。本体カバー2は箱状である。本体カバー2の上面前部にはキーボード3が設けられる。ユーザはキーボード3を操作することで各種情報を印刷装置1に入力する。キーボード3の後側にはディスプレイ5が設けられる。ディスプレイ5は入力された各種情報を表示可能である。
【0019】
ディスプレイ5の後側にはカセットカバー6が設けられる。カセットカバー6は後述の装着部8(図2参照)を上側から開閉可能に覆う。ユーザはテープカセット30(図2参照)の交換時にカセットカバー6を開閉する。本体カバー2の左面後部には排出スリット(図示略)が設けられる。排出スリットはラベル9を印刷装置1の外部に排出する。
【0020】
図2図3を参照し、印刷装置1の内部構成を説明する。図2に示すように、カセットカバー6(図1参照)の下側には装着部8が設けられる。装着部8はテープカセット30に対応した形状で本体カバー2の上面から下方に凹む。装着部8にはテープカセット30が着脱可能に装着される。装着部8の前部にはヘッドホルダ19が設けられる。ヘッドホルダ19は板状であり、上下左右に延びる。ヘッドホルダ19の前面191にはサーマルヘッド10が設けられる。サーマルヘッド10は複数の発熱体11を備える。複数の発熱体11は上下方向に一列に並ぶ。サーマルヘッド10はテープカセット30が装着部8に装着された状態で後述の開口部341から露出した感熱テープ4を、複数の発熱体11によって加熱する。
【0021】
ヘッドホルダ19の左斜め後方には駆動軸18が設けられる。駆動軸18は装着部8の底面から上方に延び、搬送モータ95(図10参照)によって回転駆動される。駆動軸18は後述の感熱テープ4及び粘着テープ7を搬送する。
【0022】
図3に示すように、駆動軸18の左側には切断機構16が設けられる。切断機構16は切断モータ96(図10参照)の駆動によりラベル9を切断する。ヘッドホルダ19の前側にはプラテンホルダ12が設けられる。プラテンホルダ12はアーム状であり、支持軸121によって上下方向の軸周りに揺動可能に支持される。支持軸121はプラテンホルダ12の右端に設けられる。
【0023】
プラテンホルダ12の先端側にはプラテンローラ15と可動ローラ14が共に回転可能に支持される。プラテンローラ15はプラテンホルダ12の揺動に伴ってサーマルヘッド10に相対して接離可能である。可動ローラ14はプラテンローラ15の左側に設けられ、プラテンホルダ12の揺動に伴って後述の搬送ローラ33に相対して接離可能である。
【0024】
本実施形態では、カセットカバー6が開放されると、プラテンホルダ12が待機位置(図3の点線で図示する位置)に向けて移動し、カセットカバー6が閉じられると、プラテンホルダ12が印刷位置(図3の実線で図示する位置)に向けて移動するように構成される。待機位置では、プラテンホルダ12が装着部8から離れる方向に移動する。このため、ユーザはテープカセット30を装着部8に着脱できる。
【0025】
印刷位置では、プラテンホルダ12が装着部8に近付く方向に移動する。このため、装着部8にテープカセット30が装着されている場合には、プラテンローラ15が感熱テープ4をサーマルヘッド10に押圧し、可動ローラ14が感熱テープ4と粘着テープ7とを重ね合わせて搬送ローラ33に押圧する。
【0026】
プラテンローラ15は搬送モータ95(図10参照)によって駆動軸18と共に回転駆動される。なお、本実施形態では搬送による感熱テープ4の弛みを抑制するため、プラテンローラ15の回転速度が駆動軸18(搬送ローラ33)の回転速度よりも小さくなるように、プラテンローラ15及び駆動軸18が複数のギア(図示略)を介して搬送モータ95に連結される。
【0027】
図2図3を参照し、テープカセット30の構成を説明する。図2に示すように、テープカセット30はカセットケース31を有する。カセットケース31は略直方体状であり、下ケース311と上ケース312が組み合わされることで構成される。
【0028】
カセットケース31の前面301にはアーム部34が設けられる。アーム部34はカセットケース31の右前部から左前方に延びる。アーム部34の左端には開口部341が設けられる。開口部341は上下方向に延びるスリット状に形成され、後述の第一供給ロール40(図3参照)から引き出された感熱テープ4をカセットケース31の内部から外部に排出する。これにより、感熱テープ4の一部がカセットケース31の外部に露出する。
【0029】
アーム部34の後側にはヘッド挿入部39が形成される。ヘッド挿入部39はカセットケース31を上下方向に貫通する。ヘッド挿入部39の左前部は前方に開口する。以下、この開口を「ヘッド開口391」という。ヘッド開口391は開口部341よりも感熱テープ4の搬送方向下流(左側)に位置する。ヘッド挿入部39には装着部8にテープカセット30が装着された状態でヘッドホルダ19が挿入される。
【0030】
ヘッド挿入部39の左側には搬送ローラ33が設けられる。搬送ローラ33は搬送方向(左右方向)において開口部341と後述のガイド部38との間に位置する。搬送ローラ33は筒状であり、上下方向に延びる。搬送ローラ33の前端部はカセットケース31から前方に露出する。搬送ローラ33は感熱テープ4と粘着テープ7が重ね合わされた状態で粘着テープ7を支持する。搬送ローラ33は支持孔35によって回転可能に支持される。支持孔35はカセットケース31を上下方向に貫通する。搬送ローラ33の内側には装着部8にテープカセット30が装着された状態で駆動軸18が挿入される。搬送ローラ33は駆動軸18による回転駆動によって回転し、感熱テープ4と粘着テープ7を搬送する。
【0031】
カセットケース31の左前角部にはガイド部38が設けられる。ガイド部38は開口部341よりも搬送方向下流(左側)、詳細には搬送ローラ33よりも搬送方向下流に位置する。ガイド部38は上下方向に延びるスリット状に形成される。ラベル9は搬送ローラ33を経て搬送されると、ガイド部38の内側を通過する。このとき、ガイド部38はラベル9を幅方向両側から支持する。これにより、ラベル9の姿勢が保持された状態でラベル9がカセットケース31から排出される。つまり、ガイド部38はラベル9をカセットケース31の外部へとガイドする。
【0032】
図3に示すように、カセットケース31の内部には第一供給ロール40と第二供給ロール70とが収容される。第一供給ロール40は感熱テープ4の供給源であり、カセットケース31内の右後部に設けられる。第一供給ロール40は、感熱テープ4が第一テープスプール21の回転中心から離れる方向に向かって平面視で時計回り方向に第一テープスプール21に巻回されることで構成される。詳細には、感熱テープ4は後述の基材41(図4(A)参照)に対して複数の感熱層42(図4(A)参照)が内側になるように巻回される。第一テープスプール21は支持孔36によって回転可能に支持される。支持孔36はカセットケース31を上下方向に貫通する。
【0033】
第二供給ロール70は粘着テープ7の供給源であり、カセットケース31内の左後部、つまり第一供給ロール40の左側に設けられる。第二供給ロール70は、粘着テープ7が第二テープスプール22の回転中心から離れる方向に向かって平面視で反時計回り方向に第二テープスプール22に巻回されることで構成される。詳細には、粘着テープ7は後述の第一粘着層73(図4(B)参照)が第二粘着層74(剥離紙75、図4(B)参照)に対して内側になるように巻回される。第二テープスプール22は支持孔37によって回転可能に支持される。支持孔37はカセットケース31を上下方向に貫通する。
【0034】
図4を参照し、感熱テープ4の構成を説明する。以下説明は、図4の上側と下側を夫々各テープの上側と下側とする。図4(A)に示すように、感熱テープ4は長尺状の媒体であり、複数の層が積層されて構成される。詳細には感熱テープ4は、基材41、複数の感熱層42、複数の遮熱層43、オーバーコート層44(以下、総称して「感熱テープ4の各層」ともいう。)を有する。複数の感熱層42は、第一感熱層421、第二感熱層422、第三感熱層423を含む。複数の遮熱層43は、第一遮熱層431と第二遮熱層432を含む。
【0035】
基材41、第一感熱層421、第一遮熱層431、第二感熱層422、第二遮熱層432、第三感熱層423、及びオーバーコート層44は、この順で感熱テープ4の下側から順に感熱テープ4の厚み方向(図4(A)の上下方向)に並んで積層される。つまり、オーバーコート層44は複数の感熱層42に対して基材41とは反対側、詳細には感熱テープ4の上面に設けられる。
【0036】
基材41は樹脂フィルムであり、詳細には無発泡樹脂フィルムであり、より詳細には無発泡ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。つまり、基材41の内部には気泡が含まれていない。
【0037】
複数の感熱層42の各層は、各層に応じた発色温度に加熱されることで、各層に応じた色を発色する。複数の感熱層42には例えば特開2008-6830号公報に記載の薬品が用いられる。
【0038】
第一感熱層421は第一遮熱層431の下面に薬品が塗布されることで膜状に形成される。第一感熱層421は第一温度を超えた場合に第一色に発色する。本実施形態では第一色はシアンである。
【0039】
第二感熱層422は第二遮熱層432の下面に薬品が塗布されることで膜状に形成される。第二感熱層422は第二温度を超えた場合に第二色に発色する。第二温度は第一温度よりも高い。本実施形態では第二色はマゼンタである。
【0040】
第三感熱層423は第二遮熱層432の上面に薬品が塗布されることで膜状に形成される。第三感熱層423は第三温度を超えた場合に第三色に発色する。第三温度は第二温度よりも高い。本実施形態では第三色はイエローである。
【0041】
複数の遮熱層43はシート状である。複数の遮熱層43の熱伝導性は低いので、複数の遮熱層43は熱伝導に対して抵抗として作用する。従って、複数の遮熱層43の夫々の内部には熱が伝わる方向に温度勾配が生じる。後述するようにサーマルヘッド10が感熱テープ4を図4の上側から加熱した場合には、各遮熱層43の下面の温度は、各遮熱層43の上面の温度よりも低くなる。これにより、各遮熱層43は、各遮熱層43の上下両側に隣接する2つの感熱層42の温度に、遮熱層43の熱伝導性に応じて所望の差をつけることができる。
【0042】
詳細には、第二遮熱層432は第二感熱層422の温度を第三感熱層423の温度よりも低くできる。第一遮熱層431は第一感熱層421の温度を第二感熱層422の温度よりも低くできる。このように、感熱テープ4は遮熱層43の作用によって、第一感熱層421の温度を第一温度より高く且つ第二温度よりも低い温度に、第二感熱層422の温度を第二温度よりも高く且つ第三温度よりも低い温度に、第三感熱層423の温度を第三温度よりも高い温度に、夫々意図的に制御できる。
【0043】
オーバーコート層44は第三感熱層423の上面にコーティングされることで膜状に形成され、黄色の可視光(例えば波長が約580nmの光)よりも青色(例えば波長が約470nmの光)の可視光を多く透過させる。つまり、オーバーコート層44の黄色の可視光透過率はオーバーコート層44の青色の可視光透過率よりも低い。オーバーコート層44は基材41とは反対側(つまり、感熱テープ4の上面側)から複数の感熱層42を保護する。
【0044】
感熱テープ4は全体として感熱テープ4の厚み方向に可視光透過性を有する。つまり、感熱テープ4の各層は何れも可視光透過性を有する。基材41の可視光透過率(%)は、複数の感熱層42、複数の遮熱層43、及びオーバーコート層44の少なくとも何れかの可視光透過率と同じでもよいし、何れの可視光透過率とも異なっていてもよい。感熱テープ4の各層の可視光透過率は例えば90%以上であり、好ましくは99%以上であり、より好ましくは99.9%以上である。感熱テープ4の各層の可視光透過性は、感熱テープ4の各層の可視光透過率が90%未満であったとしても、少なくとも感熱層42での発色を、基材41を介してユーザが視認できる程度であればよい。感熱テープ4の各層は何れも透明または半透明であり、好ましくは透明である。
【0045】
基材41の紫外線透過率(%)は第一遮熱層431の紫外線透過率よりも低く、詳細には複数の遮熱層43の何れの紫外線透過率よりも低い。
【0046】
基材41の熱伝導性は第一遮熱層431の熱伝導性よりも低く、詳細には複数の遮熱層43の何れの熱伝導性よりも低い。層の熱伝導性(W/K)は層の熱伝導率(W/(m・K))と層の厚み(m)との積である。
【0047】
基材41の屈折率は第一遮熱層431の屈折率よりも高く、詳細には複数の遮熱層43の何れの屈折率よりも高い。
【0048】
基材41の厚みは第一遮熱層431の厚みよりも大きく、詳細には複数の遮熱層43の何れの厚みよりも大きい。層の厚みは層の図4(A)の上下方向の長さに対応する。なお、図4(A)では理解を容易にするため、感熱テープ4の各層の厚み及び各層の厚みの大小関係を模式的に示しており、実際の各層の厚み及び各層の厚みの大小関係は図4(A)とは異なる場合がある(図4(B)、図5も同様)。例えばオーバーコート層44の厚みは複数の感熱層42の各層の厚みよりも大きくてもよいし、同じでもよいし、小さくてもよい。
【0049】
粘着テープ7の構成を説明する。図4(B)に示すように、粘着テープ7は長尺状の媒体であり、複数の層が積層されて構成される。詳細には粘着テープ7は両面粘着テープ71と剥離紙75とを備える。両面粘着テープ71は白色であり、シート72、第一粘着層73、第二粘着層74を有する。シート72は透明である。
【0050】
第一粘着層73はシート72の下面に設けられる。第二粘着層74はシート72の上面に設けられる。つまり、両面粘着テープ71はシート72の上下両面に粘着剤が塗布されることで構成される。
【0051】
剥離紙75は第二粘着層74を介して両面粘着テープ71に貼り合わされる。剥離紙75には切れ目76が設けられる。切れ目76は粘着テープ7の長手方向に延び、剥離紙75を短手方向に2つに分断する。なお、切れ目76は両面粘着テープ71の一部にも入り込んでいるが、第一粘着層73には達していない。つまり、シート72は切れ目76を跨いで一続きに繋がっている。換言すれば、両面粘着テープ71は切れ目76を跨いで一続きに繋がっている。
【0052】
ラベル9の構成を説明する。図4(C)に示すように、ラベル9は、印刷された感熱テープ4の上面に粘着テープ7の下面が貼り合わされることで構成される。このため、ラベル9では、基材41、第一感熱層421、第一遮熱層431、第二感熱層422、第二遮熱層432、第三感熱層423、オーバーコート層44、第一粘着層73、シート72、第二粘着層74、及び剥離紙75が、この順で厚み方向に並んで積層される。
【0053】
ユーザはラベル9を基材41側(つまり、ラベル9の下面側)から見る(目視方向Y1参照)。感熱テープ4が全体として可視光透過性を有するので、ラベル9を基材41側からユーザが見ると、複数の感熱層42の各層の発色(つまり、印刷された画像)を、基材41を介して見ることができる。本実施形態では両面粘着テープ71が透明なので、ラベル9を基材41側からユーザが見ると、背景が透けて見える。ユーザは例えば剥離紙75を両面粘着テープ71から剥離して所定の壁、台紙等に貼り付けて、ラベル9を使用できる。この場合、所定の壁等の被着体が背景として見える。
【0054】
なお、粘着テープ7側(つまり、ラベル9の上面側)からでは、剥離紙75を両面粘着テープ71から剥離したとしても、両面粘着テープ71の方が複数の感熱層42よりも手前にあるので、ユーザは複数の感熱層42の発色(つまり、印刷された画像)を見ることができない。
【0055】
感熱テープ4と粘着テープ7の搬送経路を説明する。図3に示すように、感熱テープ4は第一供給ロール40の右端から下方に引き出され、カセットケース31の右前角部で左方に曲がる。感熱テープ4はアーム部34の内部を通過し、開口部341からカセットケース31の外部へ出る。
【0056】
ヘッド開口391では、図5(A)に示すように、感熱テープ4の複数の感熱層42側(感熱テープ4の上面側)がサーマルヘッド10に対向し、感熱テープ4の基材41側(感熱テープ4の下面側)がプラテンローラ15に対向する。つまり、サーマルヘッド10はテープカセット30が装着部8に装着された状態で複数の感熱層42に対して基材41とは反対側(つまり、感熱テープ4の後側)に位置する。このため、ヘッド開口391において感熱テープ4は基材41とは反対側からサーマルヘッド10によって加熱される(印刷方向Y2参照)。
【0057】
図3に示すように、感熱テープ4はヘッド開口391を経由して搬送ローラ33と可動ローラ14との間を通過する。このとき、図5(B)に示すように、感熱テープ4の複数の感熱層42側が搬送ローラ33に対向し、感熱テープ4の基材41側が可動ローラ14に対向する。
【0058】
図3に示すように、粘着テープ7は第二供給ロール70の左端から下方に引き出される。粘着テープ7は搬送ローラ33の外周のうち右前部に接触しながら左方に曲がる。このとき、図5(B)に示すように、粘着テープ7の剥離紙75側(粘着テープ7の上面側)が搬送ローラ33に対向し、粘着テープ7の両面粘着テープ71側(粘着テープ7の下面側)が可動ローラ14に対向する。このため、搬送ローラ33は、複数の感熱層42に対して基材41とは反対側から粘着テープ7が感熱テープ4に重ね合わされた状態で、粘着テープ7に対して感熱テープ4とは反対側から粘着テープ7を支持する。
【0059】
可動ローラ14は、感熱テープ4と粘着テープ7が重ね合わされた状態で、搬送ローラ33との間で挟んで感熱テープ4と粘着テープ7を貼り合わせる。これにより、ラベル9が作成される。図3に示すように、ラベル9はガイド部38の内側を通過してテープカセット30の外部に排出される。ラベル9は切断機構16へと搬送されて、切断機構16により切断される。切断されたラベル9は本体カバー2の排出スリットから印刷装置1の外部へと排出される。
【0060】
図6図7を参照し、ラベル9(感熱テープ4)で表現可能な色域を説明する。本実施形態における「色域」とは、印刷装置1の印刷で再現できる色再現領域を意味する。図6に示すように、標準色域100は、標準規格の色再現領域であり、CMYRGBの基本6色を頂点とする六角形で示される。ここでは、一般的なL空間をa平面へ投影した図で示す。それ故、図6に示す標準色域100には、図示されないL軸があるので、中心はL軸+側では白、L軸0側では黒を示す。表現可能な基本6色は、標準色域100の6つの頂点である。色域は感熱テープ4の種類に応じて異なる。なお、本実施形態において、ラベル9の色域は、感熱テープ4の色域と同一とする。
【0061】
色域R1は、印刷装置1の印刷により感熱テープ4の種類によって決まる色再現領域である。色域R1は標準色域100に比べて縮小されている。色域R1の外側の領域の色は表現できない。よって、ラベル9に印刷する画像の中で、色域R1の外側の領域の色があった場合、その色は表現し難い。
【0062】
本実施形態は、複数枚のラベル9を重ね合わせて使用することによって、1枚のラベル9では表現し難い色を表現できる。例えば、同一のテープカセット30を用いて印刷装置1で2枚のラベル9を印刷する。同一のテープカセット30とは、収納する感熱テープ4の種類が同一であることを意味する。それ故、印刷された2枚のラベル9を互いに重ね合わせて使用したときの色域R2は、2つの色域R1が合成された範囲となり、色域R1よりも大きな五角形となる。つまり、複数枚のラベル9を重ねて使用することで、表現できる色域を拡大できる。
【0063】
一方、1枚目と2枚目で感熱テープの種類を変えて印刷装置1で2枚のラベルを印刷する。例えば、1枚目をCMY3層の感熱テープ4を収納するテープカセット30で印刷し、2枚目をマゼンダ(M)単色の1層の感熱テープを収納するテープカセットで印刷する場合を想定する。図7に示すように、CMY3層の感熱テープ4の色域はR1である。M1層の感熱テープの色域はR4である。色域R1とR4は形状が互いに異なる。色域R1とR4を合成すると、色域はR5になる。色域R5は色域R1よりも大きな五角形となる。
【0064】
本実施形態は、例えば2枚のラベル9を重ね貼りした重ね貼りラベル90を作成することによって、1枚のラベル9で表現し難かった色を綺麗に表現できる。印刷装置1は、後述の印刷制御処理(図11参照)を実行することで、重ね貼り用の複数枚のラベルを生成する為の印刷データを作成可能である。なお、図6図7の例は、何れも2枚のラベル9を重ね貼りした例であるが、3枚以上のラベル9を互いに重ね貼りしてもよい。ラベル9を重ねて使用することで、色域は、夫々のラベルの色域が互いに合成された範囲となるので、重ね貼りする枚数に応じて変化する。
【0065】
図8を参照し、重ね貼りラベル90の構成を説明する。重ね貼りラベルとは、複数枚のラベルを厚み方向に重ね貼りして作成されたラベルを意味する。重ね貼りラベル90は、2枚のラベル9Aと9Bを重ね貼りして構成される。重ね貼りラベル90の作成方法の一例として、ユーザは、ラベル9Bの基材41側を下面にして机上に載置し、上面となる粘着テープ7の剥離紙75を剥離する。第二粘着層74が露出する。ユーザは、その第二粘着層74に対して、上方からラベル9Aの基材41側を重ねて貼り合わせる。これにより、一枚の重ね貼りラベル90が作成される。
【0066】
ユーザは重ね貼りラベル90をラベル9Bの基材41側(つまり、重ね貼りラベル90の下面側)から見る(目視方向Y1参照)。上記の通り、ラベル9A,9Bの夫々の感熱テープ4と両面粘着テープ71は全体として可視光透過性を有する。それ故、重ね貼りラベル90を基材41側から見ると、ラベル9A,9Bの夫々の複数の感熱層42の各層の発色(つまり、印刷された画像)を、基材41を介して重ねて見ることができる。上記の通り、両面粘着テープ71は透明なので、重ね貼りラベル90を基材41側からユーザが見ると、背景が透けて見える。ユーザは両面粘着テープ71から剥離紙75を剥離し、重ね貼りラベル90を所定の壁、台紙等に貼り付けることができる。
【0067】
図9を参照し、重ね貼りラベル90の使用例を説明する。上記の通り、重ね貼りラベル90は、一枚のラベル9で表現可能な色域を拡大できる。そのような重ね貼りラベル90の効果を利用することによって、種々の使用例が想定できる。
【0068】
第1使用例を説明する。上記の通り、ラベル9では、基材41側から、第一感熱層421(C)、第二感熱層422(M)、第三感熱層423(Y)の順に積層される(図4(C)参照)。このような感熱層42の場合、第一感熱層421(C)と第三感熱層423(Y)の2層を発色させて表現するグリーンは、その間の中間層である第二感熱層422(M)を発色させずに第一感熱層421(C)と第三感熱層423(Y)を発色させるコントロールが必要となるので1枚のラベル9では表現が難しい。このような場合、重ね貼りラベル91を作成することで、1枚のラベル9に比べてグリーンを綺麗に表現できる。
【0069】
例えば、図9(A)に示すように、画像データE1は、グリーンの「A」の文字を含む画像のデータである。印刷装置1は画像データE1に基づき、印刷データを作成する。印刷装置1は作成した印刷データに基づき、画像をラベル9に印刷した場合、上記理由により、緑色を綺麗に表現するのが難しい。
【0070】
この場合、印刷装置1は後述の印刷制御処理(図11参照)によって、「A」の文字色が互いに異なるラベル9Aと9Bを夫々作成する。ラベル9Aの文字色はシアン、ラベル9Bの文字色はイエローである。これらを重ね貼りすることで、重ね貼りラベル91が作成される。重ね貼りラベル91を基材41側から見たとき、シアンの「A」とイエローの「A」が重なることによって、ユーザは「A」の文字色を画像データE1の「A」の文字色により近いグリーンとして認識できる。これにより、重ね貼りラベル91は、画像データE1の画像により近い色を表現できる。
【0071】
第2使用例を説明する。上記の通り、ラベル9の感熱層42は可視光透過性を有するので、発色した位置でも透明性を有する。それ故、単独で色を発色させた場合、最大発色をしても色が薄くなる傾向がある。また、発色ドットを大きくするには、高温で且つ短時間で印刷するため、高電圧をかける必要がある。このような場合も、重ね貼りラベル90を作成することで、濃い色を表現できる。
【0072】
例えば、図9(B)に示すように、画像データE2は、レッドで色濃度がK1の「A」の文字を含む画像のデータである。色濃度は絶対濃度であるが、透過絶対濃度のときは透過率に読み替えてもよい。印刷装置1は画像データE2に基づき、印刷データを作成する。印刷装置1は作成した印刷データに基づき、画像をラベル9に印刷した場合、上記理由により、色濃度がK1よりも色が薄い印象を受ける。
【0073】
この場合も、印刷装置1は後述の印刷制御処理(図11参照)によって、「A」の色濃度が互いに異なるラベル9Cと9Dを夫々作成する。ラベル9Cの色濃度はK2、ラベル9Dの色濃度はK3である。なお、「色濃度が異なる」とは「色が異なる」ことと同じ概念である。例えば、ラベル9Cの色濃度K2を、画像データE2の色濃度K1と同じ濃度とし、ラベル9Dの色濃度K3を色濃度K2よりも薄くしてもよい。これらを重ね貼りすることで、重ね貼りラベル92が作成される。重ね貼りラベル92を基材41側から見たとき、色濃度K2の「A」と色濃度K3の「A」が重なることによって、ユーザは色濃度K2よりも濃い色濃度K4の「A」を視認できる。これにより、透明性を有する重ね貼りラベル92であっても、画像データE2の画像により近い色を表現できる。
【0074】
図10を参照し、印刷装置1の電気的構成を説明する。印刷装置1はCPU81を備える。CPU81は印刷装置1を制御し、プロセッサとして機能する。CPU81には、フラッシュメモリ82、ROM83、RAM84、キーボード3、ディスプレイ5、サーマルヘッド10、搬送モータ85、切断モータ86、通信部87が電気的に接続する。フラッシュメモリ82はCPU81によって実行されるプログラム、カセット情報、色域情報等を記憶する。カセット情報は、テープカセット30の種類の情報であり、テープカセット30に収納される感熱テープ4の種類の情報を含む。色域情報は、感熱テープ4の種類毎の色域の情報、及びそれらを重ね貼りする組み合わせに応じて合成された色域の情報等を含む。ROM83は各種プログラムの実行時に必要な各種パラメータを記憶する。RAM84は画像を形成するための印刷データ等、種々の一時データを記憶する。通信部87は外部機器(図示略)と無線又は有線で接続し相互に通信可能である。
【0075】
図11を参照し、印刷制御処理を説明する。印刷装置1の電源がオンされると、CPU81はフラッシュメモリ82から印刷制御プログラムを読込み、本処理を実行する。CPU81はキーボード3にて、重ね貼りの選択を受け付ける(S10)。CPU81は重ね貼りするか否かを例えばフラグで記憶する。CPU81はRAM84に記憶するフラグに基づき、重ね貼りするか否か判断する(S11)。重ね貼りしない場合(S11:NO)、CPU81はフラッシュメモリ82から画像データを読込み(S31)、読込んだ画像データに基づき印刷データを作成する(S32)。印刷データ作成後、CPU81は後述のS20に処理を進める。
【0076】
重ね貼りする場合(S11:YES)、CPU81はキーボード3にて、重ね貼りに使用するラベル枚数の入力を受け付ける(S12)。CPU81は受け付けた枚数をRAM84に記憶する。CPU81はキーボード3にて、使用するテープカセット30の種類を受け付ける(S13)。例えば、ラベルごとにテープカセットの種類を変えて印刷する場合、ユーザは使用する全てのテープカセットの種類をキーボード3で入力する。
【0077】
CPU81は画像データを読込む(S14)。画像データはフラッシュメモリ82に予め記憶された画像データの中から読み込むが、外部入力された画像データを読込んでもよい。本実施形態は、例えば、図12に示す画像データE3を読込んだ場合を想定する。画像データE3は、果物と野菜が入ったかごを撮影したカラー写真の画像データである。CPU81は画像データを構成する各画素の色情報をRAM84に記憶する。色情報とは、例えば色の種類を示すカラーコードである。本実施形態は、野菜であるピーマンの任意の画素をX1、果物であるりんごの任意の画素をX2とする。X1の色情報はグリーン、X2の色情報はレッドである。
【0078】
CPU81はS12で受け付けたラベル枚数と、S13で受け付けたテープカセット30の種類に基づき、フラッシュメモリ82に記憶された色域情報の中から、選択可能な色域の情報を決定する(S15)。CPU81は決定した色域の情報をRAM84に記憶する。なお、S12,S13の代わりに、色域の選択をキーボード3で受け付けるようにしてもよい。
【0079】
CPU81は画像データを連結するか否か判断する(S17)。ユーザは重ね貼りするので、CPU81はラベル枚数分の画像データを作成する。画像データを連結するか否かは、ユーザがキーボード3で選択可能である。画像データを連結する場合(S17:YES)、CPU81は、一つの印刷データを作成する(S18)。画像データを連結しない場合(S17:NO)、ラベル枚数分の印刷データを作成する(S19)。
【0080】
ここで、図13を参照し、印刷する画像が「ABC」で、重ね貼り用のラベルを2枚作成する例で説明する。画像データを連結する場合、図13(A)に示すように、CPU81はラベル2枚分の画像データE11とE12が連結した一つの印刷データD1を作成する。印刷装置1は印刷データD1に基づき感熱テープ4に印刷することで、2枚分のラベルが連結した一枚のラベルが作成される。
【0081】
一方、画像データを連結しない場合、図13(B)に示すように、CPU81は画像データE11とE12が別々になった2つの印刷データD2とD3を作成する。印刷装置1は印刷データD2とD3に基づき感熱テープ4に印刷することで、画像データE11とE12が別々に印刷された2枚のラベルが作成される。
【0082】
2枚分のラベルが連結した1枚のラベルを作成することで、2枚のラベルを別々に作成するときに比べて、ラベルの先頭にできる余白部分を短くできる。2枚のラベルを別々に作成する場合は、1枚のラベルの中央をユーザ自ら切断する手間が不要である。なお、本実施形態の印刷装置1は切断機構16を備えるが、切断機構16を備えない印刷装置の場合、CPU81はS17の判断処理で画像データを連結すると判断し(S17:YES)、一つの印刷データを作成すればよい。CPU81は作成した印刷データをRAM84に記憶する。
【0083】
CPU81は作成した印刷データの全画素について、色補正処理を実行し(S20)、次いで印刷色変換処理を実行する(S21)。ここで、図12に示す任意の画素X1とX2について実行する色補正処理と色変換処理について、以下の(1)~(3)の各場面に分けて順に説明する。
(1)重ね貼りせずに1枚のラベル9に印刷する場合
(2)同一種類のテープカセット30で、2枚の重ね貼り用のラベル9に印刷する場合
(3)異なる2種類のテープカセットで、2枚の重ね貼り用のラベル9に印刷する場合
なお、場面(1)は、重ね貼りしない場合(S11:NO)における色補正処理(S20)と印刷色変換処理(S21)に対応する。
【0084】
(1)重ね貼りせずに1枚のラベル9に印刷する場合
図14(A)に示すように、画素X1の色情報はグリーンなので、X1は、標準色域100内のA1に位置する。A1はGの頂点付近である。画素X2の色情報はレッドなので、X2は、標準色域100内のB1に位置する。B1はRの頂点付近である。テープカセット30の色域は、装着部8に装着されたテープカセット30の色域R1である。CPU81は画素X1,X2について色補正処理を実行する。上記の通り、色域R1は、標準色域100に比べて縮小されている。それ故、印刷装置1は、このような色空間の縮小を加味しながら、標準規格の色信号(R,G,B)から印刷装置1の色信号(R´,G´,B´)への対応付けを行う。これにより、画素X1はA1から色域R1内のA2に、画素X2はB1から色域R1内のB2に補正される。A2は色域R1内におけるグリーンに対応する位置である。B2は色域R1内におけるレッドに対応する位置である。
【0085】
次いで、CPU81は色域R1内のA2とB2に夫々の色情報が補正された画素X1,X2について、色変換処理を実行する。色変換処理は、印刷装置1で印刷可能な印刷色に変換する処理である。しかしながら、場面(1)では重ね貼りを実施しないので、ラベル9は1枚しか印刷しない。よって、図14(B)に示すように、画素X1,X2は色補正処理と同じ色域R1内にそのまま割り当てられるので、夫々の色情報に変化は無い。
【0086】
(2)同一種類のテープカセット30で、2枚の重ね貼り用のラベル9に印刷する場合
図15(A)に示すように、画素X1の色情報はグリーンなので、X1は、標準色域100内のA1に位置する。A1はGの頂点付近である。画素X2の色情報はレッドなので、X2は、標準色域100内のB1に位置する。B1はRの頂点付近である。印刷装置1は同一種類のテープカセット30で、2枚のラベル9を印刷するので、2枚のラベル9を重ね合わせて表現できる色域はR2である。なお、場面(2)では、S16にて色域R2を選択したことを想定する。CPU81は色補正処理を実行することにより、画素X1,X2の色情報は色域R2内に補正される。図15(B)に示すように、画素X1はA1から色域R2内のA3に、画素X2はB1から色域R2内のB3に補正される。A3は色域R2内におけるグリーンに対応する位置である。B3は色域R2内におけるレッドに対応する位置である。
【0087】
次いで、CPU81は色域R2内のA3とB3の夫々の位置に補正された画素X1,X2について、色変換処理を実行する。CPU81はS12では2枚のラベル枚数を受け付け、S13では一種類のテープカセット30を受け付けている。それ故、1枚目と2枚目のラベル9の何れも同一種類のテープカセット30で印刷する。テープカセット30の色域は何れもR1である。
【0088】
よって、図15(C)に示すように、1枚目のラベル9において、色域R2内に補正された画素X1,X2は、色域R1内に夫々割り当てられる。画素X1はA3から色域R1内のA4に、画素X2はB3から色域R1内のB4に夫々割り当てられる。A4は、色域R1内におけるイエローに対応する位置である。B4は、色域R1内におけるレッドに対応する位置である。
【0089】
図15(D)に示すように、2枚目のラベル9においても、1枚目のラベル9と同様に、色域R2内に補正された画素X1,X2は、色域R1内に夫々割り当てられる。画素X1はA3から色域R1内のA5に、画素X2はB3から色域R1内のB5に夫々割り当てられる。A5は、色域R1内におけるシアンに対応する位置である。B5は、色域R1内におけるレッドに対応する位置であり、ラベル9の1枚目で割り当てられたB4と同一位置である。つまり、1枚目のラベル9における画素X1の色情報はイエロー、2枚目のラベル9における画素X1の色情報はシアンとなり、互いに異なる色情報が割り当てられる。
【0090】
(3)異なる2種類のテープカセットで、2枚の重ね貼り用のラベル9に印刷する場合
図16(A)に示すように、画素X1の色情報はグリーンなので、X1は、標準色域100内のA1に位置する。A1はGの頂点付近である。画素X2の色情報はレッドなので、画素X2は、標準色域100内のB1に位置する。B1はRの頂点付近である。印刷装置1は異なる2種類のテープカセットで、2枚のラベル9を夫々印刷する。ここでは、異なる2種類のテープカセットとして、CMYの3層構造の感熱テープ4を収納するテープカセット30と、マゼンダ(M)単色の感熱テープを収納するテープカセットを想定して説明する。
【0091】
印刷装置1は上記2種のテープカセット30で、2枚のラベル9を印刷する。上記の通り、CMY3色の感熱テープ4の色域はR1であり、マゼンダ単色の感熱テープの色域はR4である(図7参照)。それ故、2枚のラベル9を重ね合わせて表現できる色域はR5である。なお、場面(3)では、S16にて色域R5を選択したことを想定する。図16(A)に示すように、CPU81は色補正処理を実行することにより、画素X1,X2の色情報は色域R5内に補正される。図16(B)に示すように、画素X1はA1から色域R5内のA6に、画素X2はB1から色域R5内のB6に補正される。A6は色域R5内におけるグリーンに対応する位置である。B6は色域R5内におけるレッドに対応する位置である。
【0092】
CPU81は色域R5内のA6とB6の夫々の位置に補正された画素X1,X2について、色変換処理を実行する。CPU81はS12では2枚のラベル枚数を受け付け、S13では異なる2種類のテープカセット30を受け付けている。それ故、1枚目のラベル9は、CMY3色の感熱テープ4を収納するテープカセット30で印刷し、2枚目のラベルは、マゼンダ単色の感熱テープを収納するテープカセットで印刷する。上記の通り、感熱テープ4の色域はR1であり、マゼンダ単色の感熱テープの色域はR4である。
【0093】
よって、図16(C)に示すように、1枚目のラベル9において、色域R5内に補正された画素X1,X2は、色域R1内に夫々割り当てられる。画素X1はA6から色域R1内のA7に、画素X2はB6から色域R1内のB7に夫々割り当てられる。A7は、色域R1内においてグリーンに対応する位置である。B7は、色域R1内におけるレッドに対応する位置である。図16(D)に示すように、2枚目のラベルにおいて、色域R5内に補正された画素X1,X2は、色域R4内に夫々割り当てられる。画素X1はA6から色域R4内のA8に、画素X2はB6から色域R4内のB8に夫々割り当てられる。A8は、色域R4の中心に近い位置であり、ホワイト(透明)に対応する位置である。つまり、1枚目のラベル9における画素X1の色情報はグリーン、2枚目のラベル9における画素X1の色情報はホワイト(透明)となり、互いに異なる色情報が割り当てられる。
【0094】
このようにして、上記(1)~(3)の各場面において、S18又はS19で作成された印刷データ、若しくはS32で作成された印刷データに含まれる画像データの全画素について、色補正処理(S21、S33)と印刷色変換処理(S22、S34)が実行される。CPU81は各処理を実行した印刷データをRAM84に記憶する。
【0095】
図11に戻り、CPU81は輝度/濃度変換処理を実行する(S22)。輝度/濃度変換処理は、RGBで表される輝度をCMYで表される濃度に変換する。CPU81は変換されたCMYの濃度に基づき、サーマルヘッド10の発熱体11へ入力する電力のパラメータを決定する(S23)。CPU81はRAM84に記憶した印刷データに基づき、ラベルを1枚印刷する(S24)。CPU81は全枚数分の印刷を完了したか否か判断する(S25)。重ね貼りを選択していない場合、印刷するラベルが1枚の場合、若しくは全枚数分の印刷を完了した場合(S25:YES)、本処理を終了する。
【0096】
RAM84に記憶する印刷データに基づき、2枚目のラベルの印刷が有る場合(S25:NO)、CPU81は装着部8においてテープカセットを交換したか、若しくはその必要が無いか判断する(S26)。2枚目を1枚目とは異なるテープカセットで印刷する場合、ユーザは装着部8においてテープカセットを交換する。テープカセットが交換されない場合(S26:NO)、CPU81はS26に戻って待機する。テープカセットが交換された場合(S26:YES)、CPU81は2枚目を印刷する(S24)。また、S12でラベル枚数を1枚だけ受け付けた場合、若しくはS13でテープカセットを1種類のみ受け付けた場合は、テープカセットを交換する必要がないので(S26:YES)、CPU81は本処理を終了する。
【0097】
このように、CPU81は上記の印刷制御処理を実行することで、重ね貼り用の複数枚のラベルを印刷できる。これにより、例えば、画像データE1が印刷された重ね貼り用の2枚のラベル9において、1枚目のラベル9のピーマンの部分はイエローで印刷され、2枚目のラベル9のピーマンの部分はシアンで印刷される。これら2枚のラベル9で重ね貼りラベル90を構成することで、ユーザが基材41側から見たときに、ピーマンの部分においてシアンとイエローが合成されて綺麗なグリーンとして見ることができる。
【0098】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置1は、発熱体11を有するサーマルヘッド10を備える。印刷装置1のCPU81はラベル9の感熱テープ4に画像を形成する為に、印刷データを作成する。感熱テープ4は透明性を有し、熱が付与されることによって互いに異なる色を発色する複数の感熱層42が積層されて構成される。印刷データは、CPU81が画像データに基づき発熱体11を駆動する為のデータである。CPU81は感熱テープ4に発熱体11から熱を付与することによって画像を印刷する。CPU81はラベル9を少なくとも1つ含む、複数のラベル9を重ね合わせて使用するか判断する。CPU81はその判断結果に応じた印刷データを作成する。印刷装置1は印刷データに基づき感熱テープ4に印刷することで、重ね合わせて使用できるラベル9を作成できる。2つ以上のラベル9を重ね合わせることによって、ラベル9で表現できる色の色域を広げることができるので、印刷によって表現し難い特定の色を表現できる。また、感熱テープ4の発色ドットを大きくするには、高温且つ短時間で印刷を行うので、従来品では発熱体11に高電圧をかける必要があったが、印刷装置1は2つ以上の色を重ね合わせて表現できるので、仮に電力の少なくても濃い色を表現できる。
【0099】
上記説明において、ラベル9、感熱テープ4は本発明の「印刷媒体」の一例である。図11のS24の処理を実行するCPU81は本発明の「駆動手段」の一例である。S11の処理を実行するCPU81は本発明の「判断手段」の一例である。S18~S21の処理を実行するCPU81は「作成手段」の一例である。グリーンは本発明の「特定色」の一例である。フラッシュメモリ82は本発明の「第一記憶部」の一例である。色域R1は本発明の「第一色範囲」の一例、色域R4は本発明の「第二色範囲」の一例、色域R5は本発明の「合成色範囲」の一例である。S20、S21の処理を実行するCPU81は本発明の「合成手段」、「一時印刷データ作成手段」、「最終印刷データ作成手段」の一例である。
【0100】
本発明は上記実施形態に限らず各種変形が可能である。本実施形態は印刷装置1のCPU81が図11の印刷制御処理を実行するが、例えば、図17に示すデータ作成装置200のCPU201が図11の印刷制御処理のS10~S23を実行するようにしてもよい。データ作成装置200は専用端末でもよく、デスクトップパソコン、ノートパソコン、スマートフォン等の外部端末であってもよい。データ作成装置200は、CPU201、フラッシュメモリ202、ROM203、RAM204、通信部205、キーボード206、ディスプレイ207等を備える。通信部205は無線で印刷装置1の通信部87と接続する。なお、通信部205は通信部87と有線で接続してもよい。CPU201は印刷制御処理のS11~S23を実行し、作成した印刷データを、通信部205を介して印刷装置1に送信してもよい。印刷装置1がデータ作成装置200から送信された印刷データに基づき印刷を実行することで、データ作成装置200は上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0101】
上記実施形態において粘着テープ7はシート72と第一粘着層73とで構成されてもよい。この場合、例えばラベル9の完成後、シート72のうち第一粘着層73とは反対側の面(つまり、外に露出する面)にユーザが粘着剤を塗布してもよい。粘着テープ7は自己粘着性を有していてもよい。
【0102】
上記実施形態において複数の感熱層42は2層で構成されてもよい。つまり、第三感熱層423は省略されてもよい。この場合、第二遮熱層432も省略されてもよい。この場合、第一遮熱層431の下面に薬品が塗布されることで第一感熱層421が形成され、第一遮熱層431の上面に薬品が塗布されることで第二感熱層422が形成されてもよい。つまり、感熱テープ4には少なくとも1つの遮熱層が設けられていればよい。
【0103】
上記実施形態において複数の感熱層42は4層以上で構成されてもよい。例えば第三感熱層423に対して第二感熱層422とは反対側に第四感熱層(図示略)が設けられてもよい。この場合、第四感熱層は例えば第四温度を超えた場合に第四色に発色する。第四温度は第三温度よりも高い。第四色は例えばブラックである。この場合、厚み方向において第三感熱層423と第四感熱層との間には第三遮熱層(図示略)が設けられる。
【0104】
上記実施形態において第一色、第二色、第三色は夫々シアン、マゼンタ、及びイエロー以外の色でもよく、例えば夫々同じ色でもよい。ラベル9は同じ色の層を複数重ね合わせることで、形成された画像の奥行きを表現できる。
【0105】
上記実施形態において複数の感熱層42は夫々複数の遮熱層43の上面に薬品が塗布されることで形成されてもよい。複数の感熱層42はあらかじめシート状に形成され、複数の遮熱層43に接着されてもよい。
【0106】
上記実施形態では感熱テープ4が複数の感熱層42を有する。これに対し、感熱テープ4は1つの感熱層のみを有していてもよい。この場合、例えば、基材41、第一感熱層421、第一遮熱層431、及びオーバーコート層44は、この順に並んで積層される。感熱テープ4が1つの感熱層を有する場合、第一遮熱層431及びオーバーコート層44の両方とも省略されてもよい。この場合、基材41の上面に薬品が塗布されることで上記1つの感熱層が形成されてもよい。
【0107】
上記実施形態の印刷制御処理(図11参照)では、重ね貼り用ラベルの印刷データについて、全枚数分の色補正処理(S20)と印刷色変換処理(S21)を実行し、その他の処理(S22,S23)を実行した後、1枚ずつ印刷(S24)を行うが、例えば、1枚目のラベルについてS20~S23の各処理を行い印刷した後(S24)、2枚目以降のラベルについても同様にS20~S23の各処理を行い印刷してもよい(S24)。
【0108】
CPU81の代わりにマイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等がプロセッサとして用いられてもよい。貼り合わせテープ作成処理は複数のプロセッサによって分散処理されてもよい。非一時的な記憶媒体は情報を記憶する期間に関わらず、情報を留めておくことが可能な記憶媒体であればよい。非一時的な記憶媒体は一時的な記憶媒体(例えば、伝送される信号)を含まなくてもよい。プログラムは例えばネットワークに接続されたサーバからダウンロードされて(即ち、伝送信号として送信され)、フラッシュメモリ82に記憶されてもよい。この場合、プログラムはサーバに備えられたハードディスクドライブ等の非一時的な記憶媒体に保存されていればよい。なお、上述した変形例は矛盾が生じない限り、互いに組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 印刷装置
4 感熱テープ
9 ラベル
10 サーマルヘッド
11 発熱体
42 感熱層
81 CPU
90 重ね貼り貼りラベル
200 データ作成装置
201 CPU
421 第一感熱層
422 第二感熱層
423 第三感熱層
D1~D3 印刷データ
E1~E3,E11,E12 画像データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17