(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022103927
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】相手端子の挿入時の位置ずれを許容することができるコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/631 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
H01R13/631
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218845
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】玉木 祥一郎
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA04
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB02
5E021FC38
5E021HA01
5E021HA05
(57)【要約】
【課題】相手端子の挿入時における位置ずれを許容するため設けた可動ハウジングを不要とする。
【解決手段】高さ方向、幅方向、及び奥行き方向を有するハウジングと、奥行き方向における一方の側において一端側をハウジングに固定され、奥行き方向における一方の側とは反対側において一端側とは反対の他端側の端部に自由端を形成している弾性部材を有した、片持ち梁状の端子と、を備える。相手端子は、ハウジングの奥行き方向と幅方向によって形成される面において所定の領域を占める挿入口を通じて、ハウジングの挿入空間に高さ方向において離間された位置から挿入されるように構成されており、弾性部材は、挿入口を通じて挿入された相手端子と接触する接点を有し、接点以外の弾性部材の少なくとも一部が、接点とともに、少なくとも前述の面において前述の所定の領域の範囲内に位置付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高さ方向、幅方向、及び奥行き方向を有するハウジングと、
前記奥行き方向における一方の側において一端側を前記ハウジングに固定され、前記奥行き方向における一方の側とは反対側において前記一端側とは反対の他端側の端部に自由端を形成している弾性部材を有した、片持ち梁状の端子と、
を備え、
前記相手端子は、前記ハウジングの前記奥行き方向と前記幅方向によって形成される面において所定の領域を占める挿入口を通じて、前記ハウジングの挿入空間に前記高さ方向において離間された位置から挿入されるように構成されており、
前記弾性部材は、前記挿入口を通じて挿入された前記相手端子と接触する接点を有し、
前記接点以外の前記弾性部材の少なくとも一部が、前記接点とともに、少なくとも前記面において前記所定の領域の範囲内に位置付けられていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記少なくとも一部は、前記挿入口を通じて挿入された前記相手端子が前記接点と接触する前に該相手端子と衝突して、前記自由端を前記所定の領域において移動させることができるように位置付けられている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記弾性部材は、
前記高さ方向における一方の側と他方の側の間に延在する複数の高さ部分と、
前記高さ方向における一方の側又は他方の側にそれぞれ頂部を有する複数の湾曲部分と、
前記他端側において自由端を形成している、前記接点を有した接触部材と、
を含み、前記複数の高さ部分と、前記複数の湾曲部分は、交互に連結されている、請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記接触部材は、前記奥行き方向にて互いに離間された一対の接触片を含む、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記接点は、前記一対の接触片の一部をそれぞれ前記奥行き方向において互いに接近する側に向って「く」の字状に折り曲げることによって形成されている、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記弾性部材の少なくとも一部が、前記挿入空間におけるいずれかの内壁と衝突し得るように構成されている、請求項4又は5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記複数の湾曲部分の少なくとも一部が、前記挿入空間のいずれかの内壁と衝突し得るように構成されている、請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記一対の接触片は、前記高さ方向における一方の側の端部において、前記奥行き方向における一方の側と他方の側の間に延在する板状支持部を利用して連結されている、請求項6又は7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記一対の接触片及び前記板状支持部の前記高さ方向における一方の側の縁部が、前記挿入空間のいずれかの内壁と衝突し得る、請求項8に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記一対の接触片はそれぞれ、前記湾曲部分を利用して前記高さ部分に連結されており、前記一対の接触片にそれぞれ連結された一対の前記高さ部分は、前記高さ方向における中間位置において、前記奥行き方向における一方の側と他方の側の間に延在する板状連結部を利用して連結されている、請求項6又は7に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記板状連結部の、前記高さ方向における一方の側及び他方の側の縁部が、前記挿入空間のいずれかの内壁と衝突し得る、請求項10に記載のコネクタ。
【請求項12】
少なくとも1つの前記湾曲部分の頂部は、前記挿入口の側に向けられた状態で配置され、且つ、前記少なくとも1つの前記湾曲部分の少なくとも一部は、前記接点とともに、前記面において前記所定の領域の範囲内に位置付けられている、請求項3乃至11のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項13】
前記挿入口は、前記相手端子が、前記高さ方向における一方の側から他方の側に向って挿入される第一の挿入口と、前記高さ方向における他方の側から一方の側に向って挿入される第二の挿入口を含む、請求項1乃至12のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項14】
前記ハウジングの前記奥行き方向と前記幅方向によって形成される面に、前記端子の一部を、前記挿入空間に設置するための開口部が設けられている、請求項1乃至13のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項15】
前記開口部は、前記奥行き方向に沿ってスライドするように構成された、前記ハウジングの一部である部材によって、前記端子の少なくとも一部を塞がれる、請求項14に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手端子の挿入時の位置ずれを許容することができるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、上記タイプの従来のコネクタの一例が開示されている。
この従来のコネクタでは、端子の一端側に可動ハウジングが、端子の他端側に固定ハウジングが、それぞれ保持されており、端子の弾性変形によって可動ハウジングが固定ハウジングに対して移動することができるものとなっている。
固定ハウジングに対する可動ハウジングのこの移動は、相手側コネクタとの接続時における、振動や衝撃による相手側コネクタとの間における位置ずれを許容すること等に役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のコネクタでは、相手端子の挿入時における位置ずれを許容するため、固定ハウジングに加えて、可動ハウジングが設けられている。また、上記従来の構成では、可動ハウジングは、実質的に端子のみによって固定ハウジングに支持されていることから、可動ハウジングの重みによって端子に大きな負荷がかかり易く、この結果、大きな衝撃や振動に対する端子の耐力が十分でないといった問題があった。
本発明の目的は、上記の欠点を解消したコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によるコネクタは、高さ方向、幅方向、及び奥行き方向を有するハウジングと、前記奥行き方向における一方の側において一端側を前記ハウジングに固定され、前記奥行き方向における一方の側とは反対側において前記一端側とは反対の他端側の端部に自由端を形成している弾性部材を有した、片持ち梁状の端子と、を備え、前記相手端子は、前記ハウジングの前記奥行き方向と前記幅方向によって形成される面において所定の領域を占める挿入口を通じて、前記ハウジングの挿入空間に前記高さ方向において離れた位置から挿入されるように構成されており、前記弾性部材は、前記挿入口を通じて挿入された前記相手端子と接触する接点を有し、前記接点以外の前記弾性部材の少なくとも一部が、前記接点とともに、少なくとも前記面において前記所定の領域の範囲内に位置付けられていることを特徴として有する。
この態様のコネクタによれば、可動ハウジングを取り除いたことにより、端子にかかる負荷を軽減することができ、端子の耐久性を向上させることができるという効果が得られる。また、可動ハウジングを設ける必要がないことから、構造を簡易化し、また、部品点数を減らすことができ、この結果、製造コストの削減を図ることもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来のコネクタの欠点を解消したコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第一の実施形態によるコネクタの上側斜視図である。
【
図6】基板に固定されたコネクタの状態を示す背面図である。
【
図17】コネクタの使用態様の一例を示す図である。
【
図18】コネクタの使用態様の一例を示す図である。
【
図19】弾性部材の過剰な変位を防止するための構成を示す図である
【
図20】弾性部材の過剰な変位を防止するための構成を示す図である。
【
図21】本発明の第二の実施形態によるコネクタの上側斜視図である。
【
図35】コネクタの使用態様の一例を示す図である。
【
図36】参考例に係るコネクタの上側斜視図である。
【
図46】コネクタの使用態様の一例を示す図である。
【
図47】コネクタの使用態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する材料、大きさ、形状、及び構成要素の相対的な位置等は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。
【0009】
<第一の実施形態>
図1に、本発明の第一の実施形態によるコネクタ1の上側斜視図、
図2に、
図1のコネクタ1の分解斜視図、
図3に、その平面図、
図4に、
図3のIV-IV線断面図、
図5に、その底面図をそれぞれ示し、更に、
図6に、コネクタ1の使用状態の一例を背面図で示す。
【0010】
コネクタ1は、全体として略直方形状を有しており、ハウジング(2、3)と、ハウジング(2、3)に固定された端子6及び固定金具8を含む。本実施形態では、端子6を3個設けているが、このような数に限定されるものではなく、3個より少なくても多くてもよい。端子6の配列方向は、ハウジング(2、3)の幅方向「γ」と一致する。
【0011】
図6に示すように、実際の使用時には、コネクタ1は被固定部材である基板13や筐体(図示されていない)に取り付けた状態で使用される。基板13等への取り付けは、主として、ハウジング(2、3)に取り付けた固定金具8を利用して行うことができ、更に、端子6の固定部630を利用することもできる。固定金具8は、基部80とネジ止め部82を含み、それらの全体で側面視略L字状を成している。固定金具8をハウジング(2、3)に固定するため、基部80の両側部にそれぞれ、外方に突出する圧入突起80aが設けられている。基板13や筐体(図示されていない)へコネクタ1を取り付ける際は、固定金具8のネジ止め部82を基板13の例えば裏面に沿って位置付け、ネジ止め部82に設けた半円状の切り欠き82aにネジ(図示されていない)の一部を引っ掛けた状態で該ネジを基板13にネジ止めすることによって行う。
【0012】
コネクタ1は、相手側コネクタ、特に、その相手端子11(
図1、
図6参照)と接続させることができる。接続時、相手端子11の少なくとも一部が、ハウジング(2、3)の高さ方向「α」において離れた位置からハウジング(2、3)の挿入空間20に一方の側(m)から他方の側(n)に向って、又は、他方の側(n)から一方の側(m)に向って挿入され、挿入空間20に位置付けた端子6の少なくとも一部と電気的に接続され得る。後述するように、相手端子11は、他方の側(n)から一方の側(m)に向って挿入することもできる。
【0013】
ハウジングは、ハウジング本体2と蓋状の部材3を含む。
図7に、ハウジング本体2の斜視図、
図8に、その平面図、更に、
図9に、その底面図を、それぞれ示す。また、
図10に、蓋状部材3の上側斜視図、
図11に、その下側斜視図を、更に、
図12に、蓋状部材6とハウジング本体2との関係を示す、
図6のVI-VI断面図を、それぞれ示す。ハウジング本体2と蓋状の部材3は、共に樹脂から成る、
【0014】
ハウジング本体2に固定金具8を取り付けるため、ハウジング本体2の幅方向「γ」における対向側に、それぞれ、高さ方向「α」及び奥行き方向「β」に沿ってそれぞれ幅方向「γ」に窪んだ一対の溝23aが設けられている。各溝23aには、高さ方向「α」に沿って、固定金具8を他方の側(n)から一方の側(m)に向って圧入することにより、圧入突起80aを利用して固定金具8をハウジング本体2に圧入固定することができる。
【0015】
ハウジング本体2及び蓋状部材3により、ハウジング(2、3)の内部に、相手端子11が挿入される挿入空間20が形成されている。挿入空間20には、端子6の一部が、挿入された相手端子11と接触し得る状態で、且つ、相手端子11との接触を通じて挿入空間20の内部で可動し得る状態で位置付けられている。
ハウジング(2、3)の高さ方向「α」における一方の側「m」及び他方の側(n)に、挿入空間20と連通した、相手端子11を挿入するための挿入口21(第一の挿入口)と挿入口22(第二の挿入口)がそれぞれ設けられている。
【0016】
挿入口21は、ハウジング(2、3)の奥行き方向「β」と幅方向「γ」によって形成される第一の「β-γ」面(X面)(
図3参照)において所定の領域(x)を占め、一方、挿入口22は、同方向によって形成される第二の「β-γ」面(Y面)(
図5参照)において所定の領域(y)を占めている。
挿入口21は、ハウジング本体2、更に言えば、高さ方向「α」における一方の側(m)に突出したハウジング本体2の首部24に設けられている。挿入口21には、挿入空間20への相手端子11の誘い込みを容易にするため、傾斜面21a、21bが設けてある。傾斜面21aは、第一の「β-γ」面(X面)の奥行き方向「β」の対向位置にてそれぞれが幅方向「γ」に沿って延在する、一対の傾斜面である。一方、傾斜面21bは、第一の「β-γ」面(X面)の幅方向「γ」の対向位置にてそれぞれが奥行き方向「β」に沿って延在する、一対の傾斜面である。ここで、傾斜面21aは、傾斜面21bに比べて、高さ方向「α」において挿入口21のより内部にまで延びている。従って、傾斜面21aと傾斜面21bは、それらの境界付近において、高さ方向「α」における段部を形成する。
一方、挿入口22は、ハウジング本体2ではなく、蓋状部材3に設けられている。挿入口22にも、挿入空間20への相手端子11の誘い込みを容易にするため、傾斜面22a、22bが設けてある。傾斜面22aは、第二の「β-γ」面(Y面)の奥行き方向「β」の対向位置にてそれぞれが幅方向「γ」に沿って延在する、一対の傾斜面である。一方、傾斜面22bは、第二の「β-γ」面(Y面)の幅方向「γ」の対向位置にてそれぞれが奥行き方向「β」に沿って延在する、一対の傾斜面である。ここで、傾斜面22aと傾斜面22bは共に、高さ方向「α」においては、挿入口21の内部に同じだけ延在しているため、これらの傾斜面22a、22bにより、第二の「β-γ」面(Y面)において、矩形周状の傾斜面を形成する。
【0017】
相手端子11は、挿入口21を通じて、一方の側(m)から他方の側(n)に向って、ハウジング(2、3)の挿入空間20に高さ方向「α」において離れた位置から挿入され、また、挿入口22を通じて、他方の側(n)から一方の側(m)に向ってハウジング(2、3)の挿入空間20に高さ方向「α」において離れた位置から挿入される。
【0018】
挿入口21、22は、相手端子11を逃がす貫通口としても機能する。例えば、相手端子11が一方の挿入口21から一方の側「m」及び他方の側(n)に向って挿入された場合であって、相手端子11がハウジング(2、3)の大きさに比して長さを有する場合、相手端子11は挿入空間20を貫通し、更に、他方の挿入口22から突出し得る。従って、相手端子11の長さに注意を払うことなく、コネクタの接続を行うことができる。
【0019】
端子6を取り付けるため、ハウジング本体2の奥行き方向「β」における一方の側(f)に、各端子6について1個の溝25aが、高さ方向「α」に沿って設けられている。本実施形態では、端子6は3個設けられていることから、幅方向「γ」に沿って計3個の溝25aが設けられている。各端子6は、第二の「β-γ」面(Y面)と、ハウジング(2、3)の高さ方向「α」と幅方向「γ」によって形成される「α-β」面(Z面)に亘って設けた開口部27を通じて、高さ方向「α」における他方の側(n)から一方の側(m)に向って挿入空間20に挿入される。このとき、各溝25aに、端子6の一部(621)が、高さ方向「α」に沿って圧入され、端子6は、その一端側61aにおいてハウジング本体2に固定されて片持ち梁状に弾性支持される。
【0020】
ハウジング本体2に端子を固定した後、開口部27に、蓋状部材3を取り付ける。ハウジング本体2に蓋状部材3を取り付けることにより、挿入空間20を実質的に閉じて、ゴミ等の異物が挿入空間20に入り込むことを防止することができる。また、蓋状部材3を設けることにより、ハウジング本体2からの端子6が抜け落ちてしまうことを防止することもできる。蓋状部材3は、ハウジング本体2に設けた開口部27に、奥行き方向「β」における他方の側(b)から一方の側(f)に向って奥行き方向「β」に沿ってスライドさせることにより取り付ける。
【0021】
蓋状部材3は、上部が開いた略箱状の本体31と、本体31の先端側に設けた係止部32と、更に、本体31の後端側において立設した状態で設けた閉塞部35を有する。
本体31には、挿入口22を規定するため高さ方向「α」において貫通した開口部が設けられている。係止部32には、幅方向「γ」に弾性変形し得る弾性係止片32aが設けられており、蓋状部材3をハウジング本体2に取り付けた際に、開口部27に設けた突起28に係止され得る。閉塞部35は、「α-β」面(Z面)において、ハウジング本体2の奥行き方向「β」における一方の側(f)とは反対側(b)のハウジング本体2の周壁における開口部27の開口部分と相補形状を成しており、蓋状部材3をハウジング本体2に取り付けた際に、ハウジングの周壁を実質的に閉塞し得る。
【0022】
図13に、端子6の上側斜視図、
図14に、その下側斜視図、
図15に、その側面図、更に、
図16に、その平面図を、それぞれ示す。端子6は、一枚の金属板を打ち抜き、折り曲げることにより略板状に形成されている。
【0023】
各端子6は、一端側61aに、基部621及び固定部630を含み、一端側61aとは反対の他端側61bに、自由端を形成している弾性部材62を備える。端子6をハウジング本体2に取り付けた際、一端側61aは、奥行き方向「β」における一方の側(f)に位置付けられ、他端側61bは、奥行き方向「β」における一方の側(f)とは反対側(b)に位置付けられる。
【0024】
基部621は、幅方向「γ」における両側部にそれぞれに、外方に突出する圧入突起621aを有する。各端子6の基部621を、高さ方向「α」において離れた位置から、ハウジング本体2に設けたそれぞれの溝25a(
図9等参照)に圧入することにより、各端子6は、圧入突起621aを利用してハウジング本体2に圧入固定される。
【0025】
固定部630は、基部621との間で側面視略L字状を成す部分であって、基部621を溝25aに圧入された状態で、基板13の、例えば裏面に沿って位置付けられる。固定部630は、半田等を利用して被固定部材である基板13に固定される。従って、固定部630は、固定金具8と同様に、基板13等へのコネクタ1の取り付けに利用することもできる。
【0026】
端子6は、一端側61aにおいてのみハウジング本体2に固定され、挿入空間20において片持ち梁状に設けられる。弾性部材62が形成された他端側61bは固定されていない。よって、弾性部材62は、ハウジング本体2の挿入空間20において、遊びを設けた状態で設置され、端子6の他端側61bは 挿入空間20において、また、ハウジング(2、3)、特に、その挿入口21に対して、相対的に移動し得る。端子6の大きさは、挿入空間20に遊びを設けた状態で設置され得るものとする必要はあるが、端子6が第一の「β-γ」面(X面)において占める大きさは、挿入口21が当該面(X面)において占める所定の領域(x)より大きくても勿論よいし、同様に、端子6が第二の「β-γ」面(Y面)において占める大きさは、挿入口21が当該面(Y面)において占める所定の領域(y)より大きくても勿論よい。この結果、弾性部材62は、他の部材による、例えば振動の影響を受けることはなく、共振周波数も適切に抑制することができる。また、従来技術で説明した従来のコネクタと異なり、端子6に固定された可動ハウジングが存在しないことから、端子6にかかる負荷を軽減することができ、端子の耐久性を向上させることができる。
【0027】
弾性部材62は、高さ方向「α」における一方の側(m)と他方の側(n)の間に延在する複数の高さ部分622、623と、一方の側(m)又は他方の側(n)にそれぞれ頂部631a、632a、633a、634aを有する複数の湾曲部分631、632、633、634と、更に、他端側61bの端部において自由端を形成している接触部材64を含む。湾曲部分633、634は、接触部材64の一部をも構成する。複数の高さ部分622、623と、複数の湾曲部分631、632、633、634は、交互に連結されており、更に、これらの部分と接触部材64は、全体として、奥行き方向「β」に向って延びるように互いに連結されている。
【0028】
高さ部分622、623は、高さ方向「α」における一方の側(m)と他方の側(n)の間に延在する略直線の部材として形成されているが、多少傾斜した状態とされていてもよい。
湾曲部分631、632、633、634は、高さ部分622、623と共に、接触部材64を、端子6の一端側61aと連結する部分であって、それらの全体で、接触部材64に弾性を付与する。湾曲部分631、633は、略U字部として形成されており、それらの頂部631a、633aは、高さ方向「α」における他方の側(n)、言い換えれば、挿入口22の側に向けられている。また、湾曲部分632も、湾曲部分631、633と同様に、略U字部として形成されているが、その頂部632aは、高さ方向「α」における一方の側(m)、言い換えれば、挿入口21の側に向けられている。一方、湾曲部分634は、略半分のU字部として形成されており、その頂部634aは、高さ方向「α」における他方の側(n)、言い換えれば、挿入口22の側に向けられている。
【0029】
図4、
図5によく示されるように、端子6がハウジング本体2に設置された際、湾曲部分633、634の少なくとも一部、例えば、湾曲部633、634の頂部633a、634aよりも、若干、挿入口22に寄った部分633b、634bは、第二の「β-γ」面(Y面)において、挿入口22が占める所定の領域(y)の範囲内に位置付けられている。これにより、湾曲部633、634の一部633b、634bを誘い込み部分として利用して、挿入口22に対して位置ずれを生じた状態で挿入された相手端子11を、挿入空間20に確実に誘い込むことができる。尚、本実施形態、及び、後述する実施形態及び参考例における「位置ずれ」には、相手端子11が高さ方向「α」に略完全に沿って直線的に挿入された場合に生じ得る「位置ずれ」のみならず、例えば、相手端子11が高さ方向「α」に完全には沿わない方向、即ち、斜め方向で挿入された場合に生じ得る「位置ずれ」も含む。また、直線的に挿入されるか斜め方向で挿入されるかに関わらず、相手端子11が挿入口22から大きくずれた状態で、無理やり挿入されるような「位置ずれ」も含む。即ち、本明細書における「位置ずれ」には、相手端子11が、高さ方向「α」において離間された位置から、挿入口22に挿入された場合に生じ得る、全ての「位置ずれ」態様を含む。本実施形態、及び、後述する実施形態及び参考例における全ての「位置ずれ」態様において、相手端子11を挿入空間20に確実に誘い込むことができる。
【0030】
接触部材64は、弾性部材62の端部において自由端を形成する。接触部材64は、奥行き方向「β」にて互いに離間された一対の接触片624、625と、奥行き方向「β」における一方の側(m)と他方の側(n)の間に延在し、一対の接触片624、625を、高さ方向「α」における一方の側(m)の端部にて連結する板状支持部640と、更に、接触部材64の一部でもある湾曲部分633、634に加え、これら湾曲部分633、634を連結する板状支持部642と、更に、板状支持部642と板状支持部640を連結する、高さ方向「α」における一方の側(m)と他方の側(n)の間に延在する板部641を含む。相手端子11との接点62aは、これら一対の接触片624、625を、高さ方向「α」における他方の側(n)によった位置の一部において、それぞれ奥行き方向「β」において互いに接近する側に向って「く」の字状に折り曲げられることによって凸状に形成されている。「く」の字状に折り曲げたことにより、一対の接触片624、625は、高さ方向「α」において挿入空間20の奥へ向うにつれて互いに接近する傾斜を成し、これらの傾斜部分624a、625aは、湾曲部633、634の誘い込み部633b、634bと協働して相手端子11を誘導し、相手端子11を接点62aへと確実に導く。挿入口21、22を通じて挿入空間20に挿入された相手端子11は、最終的に、これら一対の接触片624、625に形成された接点62a間に挟持され、弾性接触した状態で端子6と接続される。
【0031】
図3、4、5、8、9等から明らかなように、本構成では、端子6の接点62a以外の弾性部材62の少なくとも一部、例えば、一対の接触片624、625の少なくとも一部624a、625a、又は、624b、625bが、接点62aとともに、挿入口21によって画定された第一の「β-γ」面(X面)における所定の領域(x)の範囲内に位置付けられ、また、挿入口22によって画定された第二の「β-γ」面(Y面)における所定の領域(y)の範囲内に位置付けられている。言い換えれば、挿入口21、22は、接点62aに対して、大きく開口している。この場合、挿入口21、22に対して位置ずれを生じた状態で挿入された相手端子11は、接点62aと接触する前に、接点62a以外の、例えば、部分624a、625a、又は、624b、625bにおいて、相手端子11と衝突することになり、この衝突を通じて、自由端として形成された接触部材64を弾性部材62の働きによって所定の領域(x)又は(y)において移動させ、位置ずれを補正した状態で、相手端子11を接点62aと確実に接触させることができる。このように、接触片624、625は、挿入口21、22を通じて挿入された相手端子11を、接点62aに誘い込む働きを有するだけでなく、挿入口21、22に対して位置ずれを生じた状態で挿入された相手端子11との衝突を通じて、位置ずれを補正する機能を有する。従って、本構成によれば、可動ハウジングを設けることなく、相手端子11の挿入時における位置ずれを許容することができる。尚、相手端子11が挿入口22から大きくずれた状態で、無理やり挿入されるような「位置ずれ」をも許容するため、端子6の一部を、挿入口22からずれた場所に設けてもよい。言い換えれば、本構成では、相手端子11との接点62a以外の部分が、挿入口22の範囲内に位置付けられていれば足り、挿入口22の範囲外に、端子6の一部が位置付けられている態様をも含む。
【0032】
図17乃至
図20に、コネクタ1の使用態様の一例を示す。
図17は、相手端子11が、高さ方向「α」における一方の側(m)から他方の側(n)に向って挿入口21を通じて挿入空間20に挿入されて、一対の接触片624、625にそれぞれ設けた接点62aによって挟持された状態、言い換えれば、相手端子11と端子6が完全に接続されたときの状態を示す断面斜視図である。
一方、
図18は、相手端子11が、高さ方向「α」における他方の側(n)から一方の側(m)に向って挿入口22を通じて挿入空間20に挿入され、相手端子11と端子6が完全に接続された状態を示す側部断面図である。
これらの図からも明らかなように、本構成によれば、相手端子11は、高さ方向「α」における一方の側(m)から他方の側(n)に向ってのみならず、高さ方向「α」における他方の側(n)から一方の側(m)に向って挿入することもできる。
【0033】
図19、
図20は、相手端子11と端子6が完全に接続される前の状態を示した側部断面図、更に言えば、弾性部材62の過剰な変位を防止するための構成を説明する図であって、
図19は、相手端子11が、挿入口21を通じて高さ方向「α」における一方の側(m)から他方の側(n)に向って挿入されて、一対の接触片624、625と衝突したときの状態を、
図20は、相手端子11が、挿入口22を通じて高さ方向「α」における他方の側(n)から一方の側(m)に向って挿入されて、一対の接触片624、625と衝突したときの状態を、それぞれ示す。
【0034】
本構成によれば、弾性部材62の弾性作用を利用して、弾性部材62の少なくとも一部を、挿入空間20におけるいずれかの内壁と衝突させて、弾性部材62の過剰な変位を防止することができる。
【0035】
例えば、
図19に示すように、相手端子11が挿入口21を通じて挿入され、接触片624、625と衝突した場合、弾性部材62の働きにより、接触部材64も、相手端子11とともに、高さ方向「α」における一方の側(m)から他方の側(n)に向って押され、この結果、湾曲部分633、634の少なくとも一部、例えば、頂部633a、634aが、ハウジングを構成する蓋状部材3の内壁33a、34aと衝突し得る。これにより、他方の側(n)への過剰な変位が防止される。
【0036】
また、
図20に示すように、相手端子11が挿入口22を通じて挿入されて、接触片624、625と衝突した場合、弾性部材62の働きにより、接触部材64も、相手端子11とともに、高さ方向「α」における他方の側(n)から一方の側(m)に向って押され、この結果、一対の接触片624、625及び板状支持部640の高さ方向「α」における一方の側(m)の縁部640aが、挿入空間20の内壁24aと衝突し得る。これにより、一方の側(m)への過剰な変位が防止される。
【0037】
<第二の実施形態>
次いで、本発明の第二の実施形態によるコネクタについて説明する。第一の実施形態におけるコネクタ1に対応する部材には、同じ参照番号を使用し、「AB」の文字を付記する。特に説明しない事項については、コネクタ1と同様に考えてよい。
【0038】
図21に、本発明の第二の実施形態によるコネクタ1Aの上側斜視図、
図22に、
図1のコネクタ1Aの平面図、
図23に、
図22のXXIII-XXIII線断面図、
図24に、その底面図をそれぞれ示す。第二の実施形態によるコネクタ1Aは、端子6Aの形状、及び、相手端子11の挿入方向、即ち、相手端子11を、ハウジング(2A、3A)の挿入空間20Aに一方の側(m)から他方の側(n)に向ってのみ挿入することを意図した構成となっている点で、第一の実施形態によるコネクタ1と異なる。その他の点については、基本的に、第一の実施形態によるコネクタ1と同様又は対応する構成を有すると考えることができる。尚、相手端子11を、他方の側(n)から一方の側(n)に挿入することもできるが、基本的に、そのような挿入態様は意図していない。
【0039】
コネクタ1Aも、第一の実施形態におけるコネクタ1と同様に、ハウジング(2A、3A)と、ハウジング(2A、3A)に固定された端子6A及び固定金具8Aを含む。
【0040】
図25に、ハウジング本体2Aの斜視図、
図26に、その平面図、更に、
図27に、その底面図を、それぞれ示す。また、
図28に、蓋状部材3Aの上側斜視図、
図29に、その下側斜視図を、それぞれ示す。
【0041】
ハウジング本体2A及び蓋状部材3Aにより、ハウジング(2A、3A)の内部に、挿入空間20Aが形成されている。挿入空間20Aには、端子6Aの一部が、挿入された相手端子11と接触し得る状態で、且つ、相手端子11との接触を通じて挿入空間20Aの内部で可動し得る状態で位置付けられている。第一の実施形態と同様に、高さ方向「α」における一方の側「m」及び他方の側(n)の双方の側が、それぞれ開口されているが、一方の側「m」のみが相手端子11を挿入するための挿入口21Aとして機能され、他方の側「n」は、主として、相手端子11を逃がす貫通口22Aとしてのみ機能する。相手端子11は、挿入口21Aを通じて、一方の側(m)から他方の側(n)に向って、ハウジング(2A、3A)の挿入空間20Aに高さ方向「α」において離間された位置から挿入される。
【0042】
挿入口21Aは、ハウジング(2A、3A)の奥行き方向「β」と幅方向「γ」によって形成される第一の「β-γ」面(X面)において所定の領域(xA)を占めている。
挿入口21Aには、挿入空間20Aへの相手端子11の誘い込みを容易にするため、傾斜面21Aa、21Abが設けてある。
【0043】
各端子6Aは、第二の「β-γ」面(Y面)と「α-β」面(Z面)に亘って設けた開口部27Aを通じて、高さ方向「α」における他方の側(n)から一方の側(m)に向って挿入空間20Aに挿入され、ハウジング本体2Aの所定位置に固定される。
【0044】
ハウジング本体2Aに端子6Aを固定した後、端子6Aを取り付けるために設けた開口部27Aに、蓋状部材3Aを取り付ける。蓋状部材3Aは、上部が開いた略箱状の本体31Aと、本体31Aの先端側に設けた係止部32Aと、更に、本体31Aの後端側に設けた閉塞部35Aを有する。第一の実施形態における蓋状部材3Aと多少形状が異なるが、その機能において実質的な相違はない。
【0045】
図30、31に、端子6Aの上側斜視図、
図32に、その下側斜視図、
図33に、その側面図、更に、
図34に、その平面図を、それぞれ示す。
【0046】
端子6Aは、その一端側61Aaにおいてハウジング本体2Aに固定されて片持ち梁状に弾性支持される。各端子6Aは、一端側61Aaに、基部621A及び固定部630Aを含み、一端側61Aaとは反対の他端側61Abに、自由端を形成している弾性部材62Aを備える。端子6Aをハウジング本体2Aに取り付けた際、一端側61Aaは、奥行き方向「β」における一方の側(f)に位置付けられ、他端側61Abは、奥行き方向「β」における一方の側(f)とは反対側(b)に位置付けられる。
【0047】
基部621Aは、圧入突起621Aaを有し、ハウジング本体2Aに設けたそれぞれの溝25aA(
図27等参照)に圧入することにより、ハウジング本体2Aに圧入固定される。固定部630Aは、固定金具8Aと同様に、基板13等に固定される。
【0048】
弾性部材62Aは、高さ方向「α」における一方の側(m)と他方の側(n)の間に延在する複数の高さ部分622A、623A、626と、一方の側(m)又は他方の側(n)にそれぞれ頂部631Aa、632Aa、633Aaを有する複数の湾曲部分631A、632A、633Aと、更に、他端側61Abの端部において自由端を形成している接触部材64Aを含む。複数の高さ部分622A、623Aと、複数の湾曲部分631A、632A、633Aは、交互に連結されており、更に、これらの部分と接触部材64Aは、全体として、奥行き方向「β」に向って延びるように互いに連結されている。
【0049】
高さ部分622A、623A、626は、高さ方向「α」における一方の側(m)と他方の側(n)の間に延在する略直線の部材として形成されているが、多少傾斜した状態とされていてもよい。高さ部分626は、接触部材64Aの一部を構成する。
湾曲部分631A、632A、633Aは、高さ部分622A、623Aと共に、接触部材64Aを、端子6Aの一端側61Aaと連結する部分であって、接触部材64Aに弾性を付与する。湾曲部分631A、633Aは、略U字部として形成されており、それらの頂部631Aa、633Aaは、高さ方向「α」における他方の側(n)、言い換えれば、貫通口22Aの側に向けられている。また、湾曲部分632Aも、湾曲部分631A、633Aと同様に、略U字部として形成されているが、その頂部632Aaは、高さ方向「α」における一方の側(m)、言い換えれば、挿入口21Aの側に向けられている。
【0050】
接触部材64Aは、弾性部材62の端部において自由端を形成する。接触部材64Aは、奥行き方向「β」にて互いに離間された一対の接触片624A、625Aと、奥行き方向「β」においてこれら一対の接触片624A、625Aを間に挟み込んだ状態で、且つ、奥行き方向「β」にて互いに離間された一対の高さ部分626、627と、奥行き方向「β」における一方の側(f)と他方の側(b)の間に延在し、高さ部分626、627をそれらの高さ方向「α」における中間位置にて連結する板状連結部640Aと、高さ部分626と接触片624Aを連結する湾曲部分635と、高さ部分627と接触片625Aを連結する湾曲部分636を含む。相手端子11との接点62Aaは、これら一対の接触片624A、625Aを、高さ方向「α」における他方の側(n)に寄った位置の一部において、それぞれ奥行き方向「β」において互いに接近する側に向って「く」の字状に折り曲げられることによって凸状に形成されている。「く」の字状に折り曲げたことにより、一対の接触片624A、625Aは、高さ方向「α」において挿入空間20Aの奥へ向うにつれて互いに接近する傾斜を成し、これらの傾斜部分624Aa、625Aaは、相手端子11を誘導し、接点62Aaへと確実に導く。挿入口21Aを通じて挿入空間20Aに挿入された相手端子11は、最終的に、これら一対の接触片624A、625Aに形成された接点62Aaと弾性接触した状態で端子6Aと接続される。
【0051】
図22、23によく示されるように、端子6Aがハウジング本体2Aに設置された際、湾曲部分635、636の少なくとも一部、例えば、湾曲部635、636の頂部635a、636aよりも、若干、挿入口21Aに寄った部分635b、636bは、第一の「β-γ」面(X面)において、挿入口21Aが占める所定の領域(xA)の範囲内に位置付けられている。これにより、湾曲部635、636の一部635b、636bを誘い込み部分として利用して、挿入口21Aに対して位置ずれを生じた状態で挿入された相手端子11を、挿入空間20Aに確実に誘い込むことができる。
【0052】
図22、23、26、33等から明らかなように、本構成では、端子6の接点62Aa以外の弾性部材62Aの少なくとも一部、例えば、一対の接触片624A、625Aの少なくとも一部624Ab、625Abが、接点62Aaとともに、挿入口21Aによって画定された第一の「β-γ」面(X面)における所定の領域(xA)の範囲内に位置付けられている。言い換えれば、挿入口21Aは、接点62Aaに対して、大きく開口している。この場合、挿入口21Aに対して位置ずれを生じた状態で挿入された相手端子11は、接点62Aaと接触する前に、接点62Aa以外の、例えば、部分624Ab、625Abにおいて、相手端子11と衝突することになり、この衝突を通じて、自由端として形成された接触部材64Aを、弾性部材62Aの働きにより所定の領域(xA)において移動させ、位置ずれを補正した状態で、相手端子11を接点62Aaと確実に接触させることができる。このように、接触片624A、625Aは、挿入口21Aを通じて挿入された相手端子11を、接点62Aaに誘い込む働きを有するだけでなく、挿入口21Aに対して位置ずれを生じた状態で挿入された相手端子11との衝突を通じて、位置ずれを補正する機能をも有する。
【0053】
図35に、コネクタ1Aの使用態様の一例を示す。
図35は、相手端子11が、高さ方向「α」における一方の側(m)から他方の側(n)に向って挿入口21Aを通じて挿入空間20Aに挿入されて、一対の接触片624A、625Aにそれぞれ設けた接点62Aaによって挟持された状態、言い換えれば、相手端子11と端子6Aが完全に接続されたときの状態を示す断面斜視図である。
【0054】
本構成においても、弾性部材62Aの弾性作用を利用して、弾性部材62Aの少なくとも一部を、挿入空間20Aにおけるいずれかの内壁と衝突させて、弾性部材62Aの過剰な変位を防止することができる。例えば、
図23、
図35等から明らかなように、板状連結部640Aの、高さ方向「α」における一方の側(m)及び他方の側(n)の縁部640Aa、640Abを、挿入空間20Aを形成するハウジング本体2Aのいずれかの内壁、例えば、ハウジング本体2Aの奥側に形成した上段部35、下段部36)のそれぞれと衝突させることができるようになっている。これにより、一方の側(m)及び他方の側(n)への過剰な変位が防止される。
【0055】
<参考例>
次いで、本発明の技術思想を利用した参考例に係るコネクタについて説明する。第一の実施形態におけるコネクタ1に対応する部材には、同じ参照番号を使用し、「B」の文字を付記する。特に説明しない事項については、コネクタ1と同様に考えてよい。
【0056】
図36に、参考例に係るコネクタ1Bの上側斜視図、
図37に、
図36のコネクタ1Bの分解斜視図、
図38に、その平面図、
図39に、その底面図をそれぞれ示す。
【0057】
コネクタ1Bは、主として、ハウジング2Bの形状、端子6Bの形状、及び、相手端子11の挿入方向、即ち、相手端子11を、ハウジング2の挿入空間20Bに一方の側(m)から他方の側(n)に向ってのみ挿入することを意図した構成となっている点で、第一の実施形態によるコネクタ1と異なる。尚、相手端子11を、他方の側(n)から一方の側(n)に挿入することもできるが、基本的に、そのような挿入態様は意図していない。その他の点については、基本的に、第一の実施形態又は第二の実施形態によるコネクタ1、1Aと同様又は対応する構成を有すると考えることができる。
【0058】
コネクタ1Bも、第一の実施形態におけるコネクタ1と同様に、ハウジングと、ハウジングに固定された端子6A及び固定金具8Aを含む。但し、ハウジング2Bは、ハウジング単体で構成され、第一の実施形態及び第二の実施形態のように、ハウジング本体2と蓋状部材3とに分離されていない。
【0059】
図40に、ハウジング2Bの斜視図、
図41に、その底面図を、それぞれ示す。ハウジング2Bは、樹脂から成る。ハウジング2Bの内部に、挿入空間20Bが形成されている。挿入空間20Bには、端子6Bの一部が、挿入された相手端子11と接触し得る状態で、且つ、相手端子11との接触を通じて挿入空間20Bの内部で可動し得る状態で位置付けられている。第一の実施形態と同様に、高さ方向「α」における一方の側「m」及び他方の側(n)の双方の側が、それぞれ開口されているが、一方の側「m」のみが相手端子11を挿入するための挿入口21Bとして機能され、他方の側「n」は、主として、相手端子11を逃がす貫通口22Bとしてのみ機能する。相手端子11は、挿入口21Bを通じて、一方の側(m)から他方の側(n)に向って、ハウジング2Bの挿入空間20Aに高さ方向「α」において離間された位置から挿入される。
【0060】
挿入口21Bは、ハウジング2Bの奥行き方向「β」と幅方向「γ」によって形成される第一の「β-γ」面(X面)において所定の領域(xB)を占め、一方、貫通口22Bは、同方向によって形成される実質的に平らな第二の「β-γ」面(Y面)において所定の領域(yB)を占めている。
【0061】
各端子6Bは、「α-β」面(Z面)にのみ設けた開口部27Bを通じて、奥行き方向「β」における他方の側(f)から一方の側(n)に向って挿入空間20Bに挿入され、ハウジング2Bの所定位置に固定される。このとき、開口部27Bは、「α-β」面(Z面)において、端子6Bの一部(621B)によって少なくとも一部を塞がれる。このように、各端子6Bは、ハウジング2Bに、奥行き方向「β」に沿って取り付けられ、また、ハウジング2Bの開口部27Bは、端子6Bを利用して塞がれることから、第一の実施形態及び第二の実施形態と異なり、蓋状部材は設けられていない。
【0062】
図42に、端子6Bの上側斜視図、
図43に、その側面図、
図44に、その平面図、更に、
図45に、その平面図を、それぞれ示す。端子6Bは、その一端側61Baにおいてハウジング2Bに固定されて片持ち梁状に弾性支持される。各端子6Bは、一端側61Baに、基部621B及び固定部630Bを含み、一端側61Baとは反対の他端側61Bbに、自由端を形成している弾性部材62Bを備える。端子6Bをハウジング2Bに取り付けた際、一端側61Baは、奥行き方向「β」における一方の側(f)に位置付けられ、他端側61Bbは、奥行き方向「β」における一方の側(f)とは反対側(b)に位置付けられる。
【0063】
基部621Bからは、奥行き方向「β」に沿って、固定用の板部610が延びている。板部610は、圧入突起610aを有し、ハウジング2Bに設けたそれぞれの溝25Ba(
図36,37等参照)に圧入することにより、各端子6Bは、ハウジング2Bに圧入固定される。固定部630Bは、固定金具8Bと同様に、基板13等に固定される。
【0064】
弾性部材62Bは、高さ方向「α」における一方の側(m)と他方の側(n)の間に延在する複数の高さ部分622B、623Bと、一方の側(m)又は他方の側(n)にそれぞれ頂部631Ba、632Ba、633Baを有する複数の湾曲部分631B、632B、633Bと、更に、他端側61Bbの端部において自由端を形成している接触部材64Bを含む。複数の高さ部分622B、623Bと、複数の湾曲部分631B、632B、633Bは、交互に連結されており、更に、これらの部分と接触部材64Bは、全体として、奥行き方向「β」に向って延びるように互いに連結されている。
【0065】
高さ部分622B、623Bは、高さ方向「α」における一方の側(m)と他方の側(n)の間に延在する略直線の部材として形成されているが、多少傾斜した状態とされていてもよい。
湾曲部分631B、632B、633Bは、高さ部分622B、623Bと共に、接触部材64Bを、端子6Bの一端側61Baと連結する部分であって、接触部材64Bに弾性を付与する。湾曲部分631B、633Bは、略U字部として形成されており、それらの頂部631Ba、633Baは、高さ方向「α」における他方の側(n)、言い換えれば、貫通口22Bの側に向けられている。また、湾曲部分632Bも、湾曲部分631B、633Bと同様に、略U字部として形成されているが、その頂部632Baは、高さ方向「α」における一方の側(m)、言い換えれば、挿入口21Bの側に向けられている。
【0066】
接触部材64Bは、弾性部材62Bの端部において自由端を形成する。接触部材64Bは、奥行き方向「β」にて互いに離間された一対の接触片624B、625Bと、奥行き方向「β」における一方の側(f)と他方の側(b)の間に延在し、一対の接触片624B、625Bを、高さ方向「α」における一方の側(n)の端部にて連結する板状連結部640Bを含む。相手端子11との接点62Baは、これら一対の接触片624B、625Bを、高さ方向「α」における一方の側(m)に寄った位置の一部において、それぞれ奥行き方向「β」において互いに接近する側に向って「く」の字状に折り曲げられることによって凸状に形成されている。「く」の字状に折り曲げたことにより、一対の接触片624B、625Bは、高さ方向「α」において挿入空間20の奥へ向うにつれて互いに接近する傾斜を成し、これらの傾斜部分624Ba、625Baは、相手端子11を誘導し、接点62Baへと確実に導く。挿入口21Bを通じて挿入空間20Bに挿入された相手端子11は、最終的に、これら一対の接触片624B、625Bに形成された接点62Baと弾性接触した状態で端子6Bと接続される。
【0067】
図38乃至41等から明らかなように、本構成では、端子6Bの接点62Ba以外の弾性部材62Bの少なくとも一部、例えば、一対の接触片624B、625Bの少なくとも一部624Bb、625Bbが、接点62Baとともに、挿入口21Bによって画定された第一の「β-γ」面(X面)における所定の領域(xB)の範囲内に位置付けられ、また、貫通口22Bによって画定された第二の「β-γ」面(Y面)における所定の領域(yB)の範囲内に位置付けられている。言い換えれば、挿入口21B及び貫通口22Bは、接点62Baに対して、大きく開口している。この場合、挿入口21B(及び/又は、貫通口22B)に対して位置ずれを生じた状態で挿入された相手端子11は、接点62Baと接触する前に、接点62Ba以外の、例えば、部分624Bb、625Bbにおいて、相手端子11と衝突することになり、この衝突を通じて、自由端として形成された接触部材64Bを、弾性部材62Bの働きにより所定の領域(xB)又は(yB)において移動させ、位置ずれを補正した状態で、相手端子11を接点62Baと確実に接触させることができる。このように、接触片624B、625Bは、挿入口21B(又は貫通口22B)を通じて挿入された相手端子11を、接点62Baに誘い込む働きを有するだけでなく、挿入口21B(又は貫通口22B)に対して位置ずれを生じた状態で挿入された相手端子11との衝突を通じて、位置ずれを補正する機能をも有する。
【0068】
図46、
図47に、コネクタ1Bの使用態様の一例を示す。
図46は、相手端子11が、高さ方向「α」における一方の側(m)から他方の側(n)に向って挿入口21Bを通じて挿入空間20Bに挿入されて、一対の接触片624B、625Bにそれぞれ設けた接点62Baによって挟持された状態、言い換えれば、相手端子11と端子6Bが完全に接続されたときの状態を示す断面斜視図である。
一方、
図47は、相手端子11と端子6Bが完全に接続される前の状態を示した側部断面図、更に言えば、弾性部材62Bの過剰な変位を防止するための構成を説明する図であって、相手端子11Bが、挿入口21Bを通じて高さ方向「α」における一方の側(m)から他方の側(n)に向って挿入されて、一対の接触片624B、625Bと衝突したときの状態を示す。
【0069】
本構成においても、弾性部材62Bの弾性作用を利用して、弾性部材62Bの少なくとも一部を、挿入空間20Bにおけるいずれかの内壁と衝突させて、弾性部材62Bの過剰な変位を防止することができる。例えば、
図46、
図47等から明らかなように、板状連結部640Bの、高さ方向「α」における一方の側(m)及び他方の側(n)の縁部640Ba、640Bbを、挿入空間20Bを形成するハウジング2Bのいずれかの内壁、例えば、ハウジング2Bの奥側に形成した段部35B、底内壁36Bのそれぞれと衝突させることができるようになっている。これにより、一方の側(m)及び他方の側(n)への過剰な変位が防止される。
【0070】
以上の説明は、好ましい実施形態に関するものであり、物品を単に代表するものであることを理解すべきである。異なる実施形態の変形及び修正が上述の教示に照らして当業者に容易に明らかになることを認めることができる。従って、例示的実施形態並びに代替的な実施形態は、添付の特許請求の範囲で説明する物品及び方法の精神から逸脱することなく行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
1 コネクタ
2 ハウジング本体(ハウジング)
3 蓋状部材(ハウジング)
6 端子
8 固定金具
11 相手端子
13 基板
20 挿入空間
21 挿入口(第一の挿入口)
22 挿入口(第二の挿入口)
62 弾性部材
62a 接点
64 接触部材
622、623 高さ部分
624、625 接触片
631、632、633、634 湾曲部分
633a、634a 頂部
640 板状連結部
640a 縁部
x、y 所定の領域
X 第一の面
Y 第二の面