(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104016
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】太陽電池モジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/20 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
H01G9/20 203
H01G9/20 119
H01G9/20 117
H01G9/20 303A
H01G9/20 303B
H01G9/20 205
H01G9/20 121
H01G9/20 105
H01G9/20 307
H01G9/20 113B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218981
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】浅子 ひかり
(57)【要約】
【課題】接続強度を向上させることができる太陽電池モジュールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 光透過性を有する第1電極層と、第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層とで挟まれた発電層と、を有する太陽電池と、前記第1電極層の前記第2電極層側の面において、前記発電層および前記第2電極層が設けられていない箇所に設けられた第1引出電極と、前記第2電極層の前記第1電極層とは反対側の面に設けられた第2引出電極と、前記第1引出電極および前記第2引出電極と接続された基板と、前記基板と前記太陽電池との間に設けられたアンダーフィル部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する第1電極層と、第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層とで挟まれた発電層と、を有する太陽電池と、
前記第1電極層の前記第2電極層側の面において、前記発電層および前記第2電極層が設けられていない箇所に設けられた第1引出電極と、
前記第2電極層の前記第1電極層とは反対側の面に設けられた第2引出電極と、
前記第1引出電極および前記第2引出電極と接続された基板と、
前記基板と前記太陽電池との間に設けられたアンダーフィル部と、を備えることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記第1引出電極および前記第2引出電極は、導電性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記第1引出電極および前記第2引出電極は、前記第1電極層に対する平面視において、非対称に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記発電層の側面を封止する封止部を備え、
前記アンダーフィル部は、前記封止部に接し、
前記封止部と水との接触角と、前記アンダーフィル部と水との接触角との差が45°以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記太陽電池の各層の積層方向において、1つ以上の角部の前記封止部が、前記太陽電池の側面よりも前記基板側に突出するとともに、他の領域の前記封止部よりも前記基板側に突出していることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記封止部は、前記第2電極層の前記第1電極層とは反対側の面上まで延在していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記太陽電池を各層の積層方向で切った場合の断面において、前記封止部の延在量に偏りが有ることで、前記封止部の一部が前記基板に接地して、前記封止部の一部とは異なる前記封止部の一部が前記基板に接地しないことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記太陽電池を各層の積層方向で切った場合の断面において、前記太陽電池の外周全体に対して、前記封止部側面と前記アンダーフィル部との接触範囲は、20%以下であることを特徴とする請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記太陽電池を各層の積層方向で切った場合の断面において、前記太陽電池の外周全体に対して、前記封止部の前記基板側の面と前記アンダーフィル部との接触範囲は、40%以下であることを特徴とする請求項4から請求項8のいずれかの一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記太陽電池を各層の積層方向で切った場合の断面において、前記太陽電池の外周全体に対して、前記封止部と前記アンダーフィル部との接触範囲は、60%以下であることを特徴とする請求項4から請求項9のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記太陽電池の厚みは、2.5mm以下であることを特徴とする請求項4から請求項10のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項12】
前記発電層は、固体であることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項13】
前記発電層は、表面に色素が担持された半導体粒子を備える層であることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項14】
平面視における前記太陽電池の面積よりも、前記第1引出電極および前記第2引出電極と前記基板との接触面積が小さいことを特徴とする請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項15】
前記アンダーフィル部は、前記太陽電池の側面まで延在していることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項16】
前記アンダーフィル部は、前記太陽電池の前記基板側の面の全面あるいは一部と接触していることを特徴とする請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項17】
光透過性を有する第1電極層と、第2電極層とで、光入射によって発電を行なう発電層が挟まれ、前記第1電極層が前記第2電極層および前記発電層よりも平面視で大きい面積を有する太陽電池と、基板とが接続された太陽電池モジュールの製造方法であって、
前記第1電極層の前記第2電極層側の面において、前記発電層および前記第2電極層が設けられていない箇所に第1引出電極を設け、前記第2電極層の前記第1電極層とは反対側の面に第2引出電極を設け、前記第1引出電極および前記第2引出電極を前記基板接続し、前記基板と前記太陽電池との間にアンダーフィル部を設ける、ことを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給源として、太陽電池が開発されている。例えば、光透過性を有する第1電極層と、第2電極層とで発電層が挟まれ、第1電極層が第2電極層および発電層よりも平面視で大きい面積を有する太陽電池が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような太陽電池では、例えば、第1電極層において発電層および第2電極層が設けられていない箇所と、第2電極層とに、引出電極が設けられる。太陽電池を基板に実装する際に、これらの引出電極が基板に接続される。しかしながら、太陽電池と基板との間に十分な接続強度が得られないおそれがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、接続強度を向上させることができる太陽電池モジュールおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る太陽電池モジュールは、光透過性を有する第1電極層と、第2電極層と、前記第1電極層と前記第2電極層とで挟まれた発電層と、を有する太陽電池と、前記第1電極層の前記第2電極層側の面において、前記発電層および前記第2電極層が設けられていない箇所に設けられた第1引出電極と、前記第2電極層の前記第1電極層とは反対側の面に設けられた第2引出電極と、前記第1引出電極および前記第2引出電極と接続された基板と、前記基板と前記太陽電池との間に設けられたアンダーフィル部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記太陽電池モジュールにおいて、前記第1引出電極および前記第2引出電極は、導電性樹脂であってもよい。
【0008】
上記太陽電池モジュールにおいて、前記第1引出電極および前記第2引出電極は、前記第1電極層に対する平面視において、非対称に配置されていてもよい。
【0009】
上記太陽電池モジュールにおいて、前記発電層の側面を封止する封止部を備え、前記アンダーフィル部は、前記封止部に接し、前記封止部と水との接触角と、前記アンダーフィル部と水との接触角との差が45°以下であってもよい。
【0010】
上記太陽電池モジュールにおいて、前記太陽電池の各層の積層方向において、1つ以上の角部の前記封止部が、前記太陽電池の側面よりも前記基板側に突出するとともに、他の領域の前記封止部よりも前記基板側に突出していてもよい。
【0011】
上記太陽電池モジュールにおいて、前記封止部は、前記第2電極層の前記第1電極層とは反対側の面上まで延在していてもよい。
【0012】
上記太陽電池モジュールにおいて、前記太陽電池を各層の積層方向で切った場合の断面において、前記封止部の延在量に偏りが有ることで、前記封止部の一部が前記基板に接地して、前記封止部の一部とは異なる前記封止部の一部が前記基板に接地していなくてもよい。
【0013】
上記太陽電池モジュールにおける前記太陽電池を各層の積層方向で切った場合の断面において、前記太陽電池の外周全体に対して、前記封止部側面と前記アンダーフィル部との接触範囲は、20%以下であってもよい。
【0014】
上記太陽電池モジュールにおける前記太陽電池を各層の積層方向で切った場合の断面において、前記太陽電池の外周全体に対して、前記封止部の前記基板側の面と前記アンダーフィル部との接触範囲は、40%以下であってもよい。
【0015】
上記太陽電池モジュールにおける前記太陽電池を各層の積層方向で切った場合の断面において、前記太陽電池の外周全体に対して、前記封止部と前記アンダーフィル部との接触範囲は、60%以下であってもよい。
【0016】
上記太陽電池モジュールにおいて、前記太陽電池の厚みは、2.5mm以下であってもよい。
【0017】
上記太陽電池モジュールにおいて、前記発電層は、固体であってもよい。
【0018】
上記太陽電池モジュールにおいて、前記発電層は、表面に色素が担持された半導体粒子を備える層であってもよい。
【0019】
上記太陽電池モジュールにおいて、平面視における前記太陽電池の面積よりも、前記第1引出電極および前記第2引出電極と前記基板との接触面積が小さくてもよい。
【0020】
上記太陽電池モジュールにおいて、前記アンダーフィル部は、前記太陽電池の側面まで延在していてもよい。
【0021】
上記太陽電池モジュールにおいて、前記アンダーフィル部は、前記太陽電池の前記基板側の面の全面あるいは一部と接触していてもよい。
【0022】
上記太陽電池モジュールの製造方法は、光透過性を有する第1電極層と、第2電極層とで、光入射によって発電を行なう発電層が挟まれ、前記第1電極層が前記第2電極層および前記発電層よりも平面視で大きい面積を有する太陽電池と、基板とが接続された太陽電池モジュールの製造方法であって、前記第1電極層の前記第2電極層側の面において、前記発電層および前記第2電極層が設けられていない箇所に第1引出電極を設け、前記第2電極層の前記第1電極層とは反対側の面に第2引出電極を設け、前記第1引出電極および前記第2引出電極を前記基板接続し、前記基板と前記太陽電池との間にアンダーフィル部を設ける、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、接続強度を向上させることができる太陽電池モジュールおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(a)は第1実施形態に係る色素増感太陽電池の製造途中の平面図(その1)であり、(b)は(a)のI-I線に沿う断面図である。
【
図2】(a)は第1実施形態に係る色素増感太陽電池の製造途中の平面図(その2)であり、(b)は(a)のI-I線に沿う断面図である。
【
図3】(a)は第1実施形態に係る色素増感太陽電池の製造途中の平面図(その3)であり、(b)は(a)のI-I線に沿う断面図である。
【
図4】(a)は第1実施形態に係る色素増感太陽電池の製造途中の平面図(その4)であり、(b)は(a)のI-I線に沿う断面図である。
【
図5】(a)は第1実施形態に係る色素増感太陽電池の製造途中の平面図(その5)であり、(b)は(a)のI-I線に沿う断面図である。
【
図6】(a)は第1実施形態に係る色素増感太陽電池の製造途中の平面図(その6)であり、(b)は(a)のI-I線に沿う断面図である。
【
図7】(a)は第1実施形態に係る色素増感太陽電池の製造途中の平面図(その7)であり、(b)は(a)のI-I線に沿う断面図である。
【
図8】(a)は第1実施形態に係る色素増感太陽電池の製造途中の平面図(その8)であり、(b)は(a)のI-I線に沿う断面図である。
【
図9】(a)は負極引出電極および正極引出電極を例示する断面図であり、(b)は(a)のA-A線断面図を上下反転させたものである。
【
図10】(a)および(b)は色素増感太陽電池と電子基板との接続を例示する図である。
【
図12】(a)および(b)は水との接触角を例示する図である。
【
図16】基板に対する封止部の延在量に偏りが生じている場合を例示する図である。
【
図17】
図9(a)のA-A線断面における色素増感太陽電池20の外周全体を例示する図である。
【
図18】封止部の電子基板側の面とアンダーフィル部との接触範囲を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態)
本実施形態に係る色素増感太陽電池(以下、太陽電池と呼ぶ)について、その製造方法を追いながら説明する。
【0026】
まず、
図1(a)および
図1(b)で例示するように、光透過性基板10として平面視で矩形のガラス基板を用意する。その光透過性基板10の一辺の長さは5mm~40mm、例えば10mmの正方形である。また、光透過性基板10の厚さは0.1mm~3mm、例えば1.1mmである。なお、ガラス基板に代えて透明なプラスチック板を光透過性基板10として使用してもよい。
【0027】
次いで、光透過性基板10の上に光透過性電極層(以下、透明電極とも呼ぶ第1電極層)11としてITO(Indiumm Tin Oxide)層を0.1μm~0.5μmの厚さに形成する。なお、ITO層に代えて、FTO(Fluorine doped Tin Oxide)層、酸化亜鉛層、インジウム-錫複合酸化物層と銀層との積層膜、及びアンチモンがドープされた酸化錫層のいずれかを透明電極11として形成してもよい。
【0028】
さらに、透明電極11の上にチタンアルコキシドから調整したアルコール溶液を塗布し、そのアルコール溶液を加熱して乾燥させることにより、逆電子移動防止層12を5nm~0.1μm程度の厚さに形成する。本工程における乾燥温度は特に限定されず、450℃~650℃、例えば550℃に加熱することにより逆電子移動防止層12を形成する。
【0029】
なお、光透過性基板10の角の一部領域(以下、角部と呼ぶ)10aには逆電子移動防止層12を形成せずに透明電極11が露出した状態にする。その角部10aは、発電層の面積に対して0.2%~5.6%の面積であり、例えば2%の領域である。角部10aの形状は特に限定されないが、ここでは三角形である。
【0030】
次いで、
図2(a)および
図2(b)で例示するように、逆電子移動防止層12の上に第1の酸化チタンペースト13aを1μm~20μm、例えば5μmの厚さにスクリーン印刷法により形成する。その第1の酸化チタンペースト13aとして、ここでは日揮触媒化成製のPST-30NRDを採用する。第1の酸化チタンペースト13aに含まれる酸化チタン粒子の平均粒径は5nm~50nm、例えば20nmである。また、光透過性基板10の上での第1の酸化チタンペースト13aの印刷面積は、0.01cm
2~4cm
2、例えば0.98cm
2とする。なお、第1の酸化チタンペースト13aは上記に限定されず、エチルセルロース等の溶媒に酸化チタン粒子を混錬しペーストを第1の酸化チタンペースト13aとして採用し得る。
【0031】
次に、
図3(a)および
図3(b)で例示するように、第1の酸化チタンペースト13aの上に第2の酸化チタンペースト14aとして日揮触媒化成製のPST-400Cをスクリーン印刷法により形成する。第2の酸化チタンペースト14aの厚さは特に限定されないが、ここではその厚さを0.3μm~100μm、例えば42μmとする。さらに、光透過性基板10の上での第2の酸化チタンペースト14aの印刷面積は、0.011cm
2~4.1cm
2、例えば1cm
2とする。なお、第1の酸化チタンペースト13aと同様に、エチルセルロース等の溶媒に酸化チタン粒子を混錬しペーストを第2の酸化チタンペースト14aとして使用してもよい。
【0032】
また、第2の酸化チタンペースト14aに含まれる酸化チタン粒子の平均粒径は、第1の酸化チタンペースト13aにおける平均粒径よりも大きい50nm~600nm、例えば400nmである。なお、酸化チタンの粒径は、走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡で一つの画像に80~150結晶粒程度入るように倍率を調整し、合計で400結晶粒以上となるように複数枚の写真を得て、写真上の結晶粒全数について計測してFeret径を用いればよい。また、その平均値を平均粒径とすればよい。
【0033】
なお、光透過性基板10の角部10aには第1の酸化チタンペースト13aと第2の酸化チタンペースト14aを形成せずに透明電極11が露出した状態にする。
【0034】
次に、
図4(a)および
図4(b)で例示するように、第1および第2の酸化チタンペースト13a、14aの各々を加熱することにより有機物を蒸散させ、第1および第2の酸化チタンペースト13a、14aをそれぞれ発電層13と反射層14にする。各酸化チタンペースト13a、14aの加熱条件は特に限定されない。本実施形態では各酸化チタンペースト13a、14aを450℃~650℃、例えば600℃の温度に加熱する。また、加熱時間は、10分~120分、例えば30分とする。
【0035】
これにより、発電層13の上面13pと側面13qの各々が反射層14で覆われた構造が得られる。また、塗布法で形成した発電層13においては側面13qが上面13pの垂線Gに対して傾斜しており、これにより発電層13の中央から端部13rに向かうにつれて発電層13が薄くなる。なお、この例では発電層13の複数の側面13qの全てに反射層14を形成したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、複数の側面13qのうちの一部の側面13qのみに反射層14を形成してもよい。更に、発電層13を円柱状にして側面13qを一つのみとし、その側面13qの一部のみに反射層14を形成してもよい。
【0036】
なお、本実施形態ではこのように各酸化チタンペースト13a、14aから発電層13と反射層14を形成したが、発電層13と反射層14の材料はこれに限定されない。例えば、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、Cr、及びNbのいずれかの酸化物の半導体粒子から発電層13と反射層14の各々を形成してもよい。さらに、SrTiO3やCaTiO3等のペロブスカイト型酸化物の粒子で発電層13と反射層14の各々を形成してもよい。
【0037】
続いて、
図5(a)および
図5(b)で例示するように、色素を含む溶媒15に発電層13と反射層14とを浸漬し、発電層13と反射層14の各々に色素を吸着させる。その溶媒15として、ここではトルエンに色素として綜研化学株式会社製のMK-2を溶解させた溶媒を使用する。また、溶媒15の温度は0℃~80℃、例えば50℃とし、浸漬時間は10分~12時間、例えば1時間とする。なお、発電層13に含まれる酸化チタン粒子の方が反射層14に含まれる酸化チタン粒子よりも平均粒径が小さいため、発電層13には微細な隙間が多数生じる。その結果、発電層13に吸着する色素の量は、反射層14に吸着する色素の量よりも多くなる。
【0038】
なお、色素は上記に限定されず、金属錯体色素や有機色素を色素として用いてもよい。このうち、金属錯体色素としては、例えば、ルテニウム-シス-ジアクア-ビピリジル錯体、ルテニウム-トリス錯体、ルテニウム-ビス錯体、オスミウム-トリス錯体、オスミウム-ビス錯体等の遷移金属錯体がある。また、亜鉛-テトラ(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン、鉄-ヘキサシアニド錯体も金属錯体色素の一例である。
【0039】
また、有機色素としては、例えば、9-フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、テトラフェニルメタン系色素、キノン系色素、アゾ系色素、インジゴ系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素、及びカルバゾール化合物系色素等がある。
【0040】
次に、
図6(a)および
図6(b)で例示するように、反射層14の上に固体電解質前駆体16を1μL~50μL、例えば20μL程度滴下することにより、反射層14を介して発電層13に固体電解質前駆体16を浸透させる。その固体電解質前駆体16として、本実施形態ではヨウ素、1、3-ジメチルイミダゾリウムヨージド(DMII)、アセトニトリル、分子量100万のポリエチレンオキシドを均一になるように混合した溶液を使用する。
【0041】
その後、発電層13を加熱することにより固体電解質前駆体16に含まれる余剰のアセトニトリルを揮発させ、固体電解質が含侵した発電層13を得る。なお、その加熱条件は特に限定されないが、50℃~150℃、例えば100℃の温度に発電層13を加熱する。また、加熱時間は1分~60分、例えば30分である。その後に、発電層13を室温に戻す。なお、その固体電解質は反射層14にも含まれる。但し、前述のように発電層13に含まれる酸化チタン粒子の方が反射層14に含まれる酸化チタン粒子よりも平均粒径が小さいため、発電層13には微細な隙間が多数生じる。そのため、発電層13に含まれる固体電解質の量は、反射層14に含まれる固体電解質の量よりも多くなる。
【0042】
なお、固体電解質前駆体16に含まれる電解質はDMIIに限定されない。例えば、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等のヨウ素塩であって、室温付近で固体状態にある塩や溶融状態にある常温溶融塩をイオン液体として使用し得る。そのような常温溶融塩としては、例えば、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウムヨージド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヨージド(BMII)、1-エチル-ピリジニウムヨージド等のヨウ化4級アンモニウム塩化合物等がある。
【0043】
次に、
図7(a)および
図7(b)で例示として説明する。正極板(第2電極層)17はチタン箔と白金層である。チタン箔の表面にスパッタ法で白金層を形成している。ここでは正極板としてチタン箔を用いたが、正極板17の層構造は特に限定されるものではない。そして、その正極板17の白金層側を反射層14に密着させる。このとき、減圧雰囲気中又は真空中で反射層14に正極板17を密着させることにより、反射層14と正極板17との間に気泡が入るのを防止できる。なお、正極板17の材料としては、上記の白金の他に、パラジウム、ロジウム、及びインジウム等の触媒機能を有する金属もある。また、グラファイトで正極板17を形成してもよい。更に、白金を担持したカーボン、インジウム-錫複合酸化物、アンチモンがドープされた酸化錫、及びフッ素がドープされた酸化錫で正極板17を形成してもよい。その他の材料としては、ポリ(3、4-エチレンジオキシチオフエン)(PEDOT)、及びポリチオフェン等の有機半導体がある。
【0044】
正極板17の形と大きさは特に限定されないが、ここでは光透過性基板10の角部10aを除いた正方形状の正極板17を使用する。また、正極板17の一辺の長さは5mm~40mmとし、正極板17の厚さは50μm~200μmとする。
【0045】
続いて、
図8(a)および
図8(b)で例示するように、光透過性基板10から正極板17の各側面に紫外線硬化樹脂を塗布し、更に紫外線の照射で紫外線硬化樹脂を硬化させることにより封止部19を形成する。なお、紫外線硬化樹脂を塗布してから紫外線を照射するまでの時間が長すぎると、紫外線硬化樹脂が発電層13に浸入してその表面を覆ってしまう。これを防ぐために、紫外線硬化樹脂を塗布してから10分以内に紫外線を照射するのが好ましい。なお、
図8(b)では、
図8(a)のI-I線断面図を上下反転させてある。封止部19は、光透過性基板10の表面にまで延在していてもよい。また、封止部19は、正極板17の光透過性基板10の表面にまで延在していてもよい。
【0046】
以上により、本実施形態に係る太陽電池20が完成する。上述したように、太陽電池20では、光透過性を有する透明電極11と、正極板17とで、光入射によって発電を行なう発電層13が挟まれている。
【0047】
この太陽電池20においては、透明電極11が負極として機能し、発電層13に充填された固体電解質に含まれるヨウ化物イオン(I-)と三ヨウ化物イオン(I3
-)が、透明電極11と正極板17との間で電子を伝導する担い手となる。また、走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡などの各種顕微鏡で反射層14を含む発電層13の断面の端部を観察したとき、透明電極11と反射層14とが接触していることを確認できる。
【0048】
さらに、本実施形態では、上記のように第2の酸化チタンペースト14aに含まれる酸化チタン粒子の平均粒径が、第1の酸化チタンペースト13aに含まれる酸化チタン粒子の平均粒径よりも大きい。これを反映して、反射層14に含まれる酸化チタン粒子の平均粒径は、発電層13に含まれる酸化チタン粒子の平均粒径よりも大きくなる。その結果、反射層14の光反射率が発電層13の光反射率よりも大きくなる。
【0049】
この太陽電池20は、電子基板上に実装される。そこで、
図9(a)で例示するように、透明電極11の正極板17側の面であって発電層13および正極板17が設けられていない領域(角部10aに対応する領域)に、負極引出電極21(第1引出電極)を設ける。また、正極板17の透明電極11とは反対側の面に、正極引出電極22(第2引出電極)を設ける。例えば、正極引出電極22は、平面視で正極板17の略中央に位置する。負極引出電極21および正極引出電極22の材料は、例えば、銀などの金属を含む導電性樹脂である。
図9(b)は、
図9(a)のA-A線断面図を上下反転させたものである。
【0050】
負極引出電極21および正極引出電極22が導電性樹脂であることから、
図10(a)で例示するように、負極引出電極21および正極引出電極22を用いて、電子基板60などに太陽電池20を接続することができる。しかしながら、導電性樹脂だけで太陽電池20を電子基板60に接続する場合、
図10(b)で例示するように、外部圧力によって太陽電池20が電子基板60から剥がれやすくなる。
【0051】
そこで、本実施形態においては、
図11で例示するように、負極引出電極21および正極引出電極22を電子基板60に接続するとともに、太陽電池20と電子基板60との間にアンダーフィル部50を配置する。これにより、太陽電池20と電子基板60との間の接続強度が高くなり、外部圧力に対する耐久性が向上する。アンダーフィル部50は、封止部19とも接していることが好ましい。なお、アンダーフィル部50は、絶縁性を有している。
【0052】
特に、
図9(a)で例示したように、本実施形態に係る太陽電池20に対する平面視において、負極引出電極21と正極引出電極22との位置関係が太陽電池20の中心に対して点対称となっておらず、非対称である。これは、面積に対する有効な発電可能面積を大きくするために、一方の引出電極が偏った位置(例えば、端部)に配置されるからである。
図9(a)の例では、正極引出電極22が略中央に位置し、負極引出電極21が角部に位置している。このように、太陽電池20に対する平面視において、導電性樹脂が存在する範囲が偏ることになる。この偏りに起因して、太陽電池20と電子基板60との接続強度は、外部圧力に対して弱くなる。このような負極引出電極21と正極引出電極22との位置関係が非対称に位置する場合に、アンダーフィル部50を用いることによって、顕著な効果が得られることになる。
【0053】
なお、封止部19とアンダーフィル部50との親和性が高い方が、太陽電池20と電子基板60との接続強度が高くなる。したがって、封止部19とアンダーフィル部50との親和性が高い方が好ましい。親和性は、物質同士の混ざりやすさを表す。また、極性が近い材料同士であると、物質同士が混ざりやすくなる、このため、極性が近い材料同士の親和性が高いことになる。極性は、有機物界面の水との接触角θを用いて判断することができる。
【0054】
図12(a)で例示するように、水との接触角θが小さいものほど、極性は高くなる。
図12(b)で例示するように、水との接触角θが大きいものほど、極性は低くなる。これらの接触角θの差(接触角差)が小さい材料同士は、極性が近くなり、親和性が高くなる。そこで、例えば、封止部19と水との接触角と、アンダーフィル部50と水との接触角との差(接触角差)が45°以下であることが好ましい。
【0055】
アンダーフィル部50および封止部19に用いることができる樹脂は、例えば、アクリル、ウレタン、シリコン、ナイロン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン樹脂を任意に混合し組み合わせた樹脂でもよい。各化合物に関してはエリスリトール型ポリ(メタ)アクリレート化合物、グリシジルエーテル型(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート化合物、シクロデカン型ジ(メタ)アクリレート化合物、メチロール型(メタ)アクリレート化合物、グリコール型ジ(メタ)アクリレート、ジオキサン型ジ(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールF型(メタ)アクリレート化合物、ジメチロール型(メタ)アクリレート化合物、イソシアヌル酸型ジ(メタ)アクリレート化合物、エリスリトール型ポリ(メタ)アクリレート化合物、グリシジルエーテル型(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート化合物、シクロデカン型ジ(メタ)アクリレート化合物、メチロール型(メタ)アクリレート化合物、グリコール型ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールSを含んでもよい)、グリシジルアミン型エポキシ化合物、ナフタレンエポキシ化合物、ノボラックエポキシ化合物、シロキサン-変性エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、ビフェニルエポキシ化合物、DCPDエポキシ化合物、変性エポキシ化合物、末端イソシアネート基を含有するウレタン化合物、カルボキシル基を含有するウレタン化合物、イミド環を含有するウレタン化合物、オルガノポロシロキサン系シリコン化合物、飽和あるいは不飽和ポリエステル単体あるいはこれらを混合した樹脂を任意に組み合わせてもよい。また、ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン、ポリアクリル、ポリビニル、などの消泡剤、イミダゾール類やアミン類などの硬化触媒、フェノール系化合物、リン系化合物、アミン系化合物等の酸化防止剤、フェノール樹脂などの各種添加剤を配合してもよい。これらの材料を用いることで、アンダーフィル部50と封止部19との親和性が高まり、太陽電池20と電子基板60との接着強度が向上する。
【0056】
アンダーフィル部50および封止部19に、光反射材や強度補助材を混合してもよい。また、アンダーフィル部50および封止部19の表面に撥水加工等を施してもよい。
【0057】
なお、
図9(a)で例示したように、平面視における色素増感太陽電池20の面積よりも、負極引出電極21および正極引出電極22と電子基板60との接触面積が小さいと、アンダーフィル部50が色素増感太陽電池20と接する接触面積が大きくなり、色素増感太陽電池20と電子基板60との接続強度が高くなる。
【0058】
図11で例示したように、アンダーフィル部50は、太陽電池20の側面まで延在していることが好ましい。アンダーフィル部50が太陽電池20の側面まで接することによって、当該側面からの外部衝撃を緩和することができる。例えば、
図13で例示するように、アンダーフィル部50は、透明電極11よりも光透過性基板10側の位置まで延在していることが好ましい。アンダーフィル部50は、太陽電池20の側面全体を覆っていることが好ましい。
【0059】
アンダーフィル部50は、太陽電池20の電子基板60側の面の全面あるいは一部にのみ接していてもよい。太陽電池20の電子基板60側の面(正極板17)にアンダーフィル部50が接することで、太陽電池20と電子基板60との接続強度を高めることが出来る。
図14で例示するように、太陽電池20の側面にアンダーフィル部50を接触させないようにすることで、アンダーフィル部50の使用量を低減し、材料費を抑えることができる。
【0060】
積層方向において、1つ以上の角部の封止部19が、太陽電池20の側面よりも高く形成されていることが好ましい。具体的には、
図15で例示するように、1つ以上の角部における封止部19が、太陽電池20の側面よりも電子基板60側に突出するとともに、他の領域の封止部19よりも電子基板60側に突出していることが好ましい。この場合、電子基板60と太陽電池20との隙間が大きくなるため、アンダーフィル部50を充填しやすくなる。
【0061】
図11で例示したように、封止部19が正極板17の光透過性基板10とは反対側の面にまで延在していることによって、アンダーフィル部50と封止部19との接触面積が大きくなり、太陽電池20と電子基板60との接続強度が向上する。
【0062】
図16で例示するように、電子基板60に対する封止部19の延在量に偏りが生じている場合がある。すなわち、電子基板60に対して封止部19が接続される箇所と、電子基板60に対して封止部19が接続されていない箇所とが混在する場合がある。この場合、
図16で例示するように、角部4点のいずれか1つ以上が浮いた状態になる場合がある。言い換えると、太陽電池20を各層の積層方向で切った場合の断面において、封止部19の延在量に偏りが有ることで、封止部19の一部が電子基板60に接地して、封止部19の一部とは異なる封止部19の一部が電子基板60に接地しないことがある。このような場合において、封止部19も利用して太陽電池20と電子基板60とを接続しようとすると、所定の方向からの外部圧力に対して太陽電池20と電子基板60との接続強度が弱くなり得る。このような構造においてアンダーフィル部50を用いることで、太陽電池20と電子基板60との接続強度を向上させることができる。
【0063】
正極板17の光透過性基板10とは反対側の面から光透過性基板10の正極板17とは反対側の面までの厚み(太陽電池20の厚み)は、2.5mm以下であってもよい。この場合、太陽電池20を薄層化(小型化)することができる。しかしながら、太陽電池20の全体の表面積は小さくなり、封止部19がアンダーフィル部50と接触できる面積は減ることになる。この構成において、封止部19と水との接触角と、アンダーフィル部50と水との接触角との差(接触角差)が45°以下であると、アンダーフィル部50と封止部19との親和性による接着効果が効果的に大きくなる。
【0064】
図17は、
図9(a)のA-A線断面における太陽電池20の外周全体αを例示する図である。符号「α」で示した網掛け部分は、何らかの部材が設けられていることを示しているのではなく、太陽電池20の外周を示している。太陽電池20の外周全体αに対して、封止部19の側面とアンダーフィル部50との接触範囲が20%以下であると、アンダーフィル部50の使用量を抑えてコストを抑制することができる。この構成において、封止部19と水との接触角と、アンダーフィル部50と水との接触角との差(接触角差)が45°以下であると、アンダーフィル部50と封止部19との親和性による接着効果を効果的に得ることができる。
【0065】
図18は、封止部19の電子基板60側の面とアンダーフィル部50との接触範囲βを例示する図である。符号「β」で示した網掛け部分は、何らかの部材が設けられていることを示しているのではなく、封止部19の電子基板60側の面とアンダーフィル部50との接触範囲を示している。封止部19と水との接触角と、アンダーフィル部50と水との接触角との差(接触角差)が45°以下である場合において、
図9(a)のA-A線断面における太陽電池20の外周全体α(
図17)に対して、封止部19の電子基板60側の面とアンダーフィル部50との接触範囲βが40%以下であると、アンダーフィルと封止部の親和性による密着効果が効果的に大きくなる。このため、アンダーフィル部50の使用量を抑えてコストを抑制しつつ、大きな接着強度とすることができるので、コストの削減となる。
【0066】
図9(a)のA-A線断面における太陽電池20の外周全体αに対して、封止部19とアンダーフィル部50との接触範囲が60%以下であるとアンダーフィル部50の使用量を抑えてコストを抑制することができる。この構成において、封止部19と水との接触角と、アンダーフィル部50と水との接触角との差(接触角差)が45°以下であると、アンダーフィル部50と封止部19との親和性による接着効果を効果的に得ることができる。
【0067】
図19で例示するように、封止部19は、太陽電池20の電子基板60側の面にまで延在して回り込んでおり、太陽電池20と電子基板60との間にアンダーフィル部50が配置されていることが好ましい。この場合、封止部19とアンダーフィル部50との接触面積が増え、太陽電池20と電子基板60との接着強度が向上する。
【実施例0068】
(実施例)
10mm×10mm×1.1mmのガラス/ITO基板のITO表面に、チタンアルコキシドから調製したアルコール溶液を塗布し、加熱することにより逆電子移動防止層を形成した。逆電子移動防止層を形成したITO表面に、酸化チタンペーストをスクリーン印刷法により0.98cm2の面積で印刷を行った。この上に粒径の大きな酸化チタンペーストを1cm2の面積で印刷した。このとき、1つの角に対して、縦2mm×横2mmの直角三角形の面積は取出し電極として残しておく。塗布した酸化チタンペーストをガラス/ITO基板ごと加熱し、酸化チタンペースト中に含まれる有機物成分を消失させた。このようにして得られた発電層と光反射層を、色素溶液に浸漬し、色素吸着を行った。
【0069】
別途、10mm×10mm×100μm(厚み)のチタン基板の1つの角に対して、縦2mm×横2mmの直角三角形の面積を切り落とし、5角形の基板を作製した。5角形の基板の一方の表面に白金をスパッタし、正極板を作製した。
【0070】
固体電解質前駆体として、ヨウ素、1,3-ジメチルイミダゾリウムヨージド(DMII)、アセトニトリル、ポリエチレンオキシドを均一になるように混合した。色素吸着を施した負極の発電層と光反射層の上に固体電解質前駆体を滴下し、加熱して固体電解質前駆体に含まれる余剰のアセトニトリルを揮発させた。
【0071】
固体電解質を浸漬させた発電層を形成した負極を正極の白金側と対向させ、正負極の縦2mm×横2mmの直角三角形の面積が一致するように重ねた。このとき、減圧あるいは真空状態で正負極を対向させることで、固体電解質中への気泡の内包を抑制することが出来る。この状態で、負極のガラス/ITO基板の引出電極のない部分の側面に紫外線硬化樹脂を塗布し、負極の側面と正極板の白金の付いていない面の一部とに紫外線を照射することにより樹脂で封止した。一方で、負極引出電極部分については、負極引出電極部分の一部および正極板の白金の付いていない面の一部に紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線を照射することで樹脂を硬化させ、封止した。
【0072】
導電性接着剤として樹脂銀を用い、太陽電池を電子基板に固定し、アンダーフィル部を太陽電池と電子との間に充填することで、太陽電池を電子基板に固定した。
【0073】
(比較例)
比較例では、アンダーフィル部を用いずに、導電性接着剤だけで太陽電池を電子基板に固定した。
【0074】
実施例および比較例について、それぞれ100サンプルを作製した。各サンプルについて株式会社イマダ製高機能タイプデジタルフォースゲージにて押し込み試験を行い、100サンプルのうち電子基板からの太陽電池の剥離の有無を確認した。100サンプルのうち剥離が確認されたサンプル数が55個以下であれば合格「〇」と判定した。100サンプルのうち剥離が確認されたサンプル数が55個を上回れば不合格「×」と判定した。結果を表1に示す。
【表1】
【0075】
表1に示すように、実施例では、合格と判定された。これは、アンダーフィル部を用いることで、太陽電池と電子基板との接続強度が十分に高くなったからであると考えられる。比較例では、不合格と判定された。これは、アンダーフィル部を用いなかったことで、太陽電池と電子基板との接続強度が十分に高くならなかったからであると考えられる。
【0076】
次に、上記実施例の構造において、封止部およびアンダーフィル部に関して各化合物を組み合わせることで、水との接触角の制御を行った。封止部と水との接触角と、アンダーフィル部と水との接触角との差を変えた材料間での押し込み試験結果を表2に示す。このとき、株式会社イマダ製高機能タイプデジタルフォースゲージにて押し込み試験を行った。
【0077】
各接触角差について、100サンプルを作製した。100サンプルのうち、封止部とアンダーフィル部との界面での剥離が観察された数に応じて試験結果を示した。剥離が観察されたサンプル数が25個以下の場合を良好「〇」と判定し、25個より多く55個以下の場合をやや良好「△」、と判定した。結果を表2に示す。
【表2】
【0078】
水の接触角の測定法としては、封止部およびアンダーフィル部の断面にシリンジを用いて純水を滴下し、共和界面化学株式会社製のDM-701型全自動接触角計にて水との接触角を測定し、封止部およびアンダーフィル部と、水との接触角差を求めた。このとき、サンプルを樹脂埋め後、South Bay Technology社製900型Grinder・Polisherを用いて封止部およびアンダーフィル部の断面を作製した。まず、Buehler社製GritSize800〔p800〕、400〔p800〕、600〔p1200〕の研磨紙を用いて研磨し、次にHyprez社製の粒径9、6、3、1、0.25μmのダイヤモンドスラリーを研磨粉に用いて研磨した後、日本エンギス(株)製コロイダルシリカポリッシングコンパウンドにて研磨した。そしてSouth Bay Technology社製のクリーナーを用いて研磨した後、酢酸4g、過酸化水素水10g、イオン交換水26gの混合溶液にサンプルを浸し、表面のコロイダルシリカを除去した。研磨紙のGritSizeおよび研磨粉の粒径は上述の順番にて使用した。
【0079】
表2に示すように、接触角差が小さいほど剥離数が少なくなることが確認された。接触角差が45°以下であれば、良好「〇」と判定された。これは、接触角差が小さくなることで、封止部とアンダーフィル部との親和性が高くなったからであると考えられる。
【0080】
次に、上記実施例の構造では、10mm×10mmのガラス/ITO基板について、1つの角において縦2mm×横2mmの直角三角形の面積は取出し電極として用いたために、太陽電池に対する平面視において、基板に対する封止部の延在量に偏りが生じている場合と、偏りが生じていない場合とで、剥離数を調べた。
【0081】
上記実施例の構造について、サンプル数を600とした。封止部の配置に偏りの無い構造について、サンプル数を600とした。株式会社イマダ製高機能タイプデジタルフォースゲージにて押し込み試験を行ない、電子基板から太陽電池が剥離したサンプル数を調べた。結果を表3に示す。偏りがないときは、封止部とアンダーフィルの水との接触角差が45度以下であるときの剥離数差が30-14=16であるが、偏りがあるときは、剥離数差が58-24=24となって大きくなる。このため、偏りが有る方が、アンダーフィルの効果が大きくなり、接着強度が大きくなることがわかった。
【表3】
【0082】
次に、
図19のような封止部の回り込みが有る場合と、無い場合とで場合分けを行なった。さらに、封止部と水との接触角と、アンダーフィル部と水との接触角との差(接触角差)を0°と46.3°とで場合分けを行なった。いずれの態様についても、サンプル数を100とした。株式会社イマダ製高機能タイプデジタルフォースゲージにて押し込み試験を行ない、電子基板から太陽電池が剥離したサンプル数を調べた。結果を表4に示す。表4に示すように、接触角差が同じであれば、封止部の回り込みが有る方が、剥離数を抑えることができることがわかった。
【表4】
【0083】
次に、上記実施例の構造について、太陽電池の厚みを複数段階(0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、2.3mm、2.5mm、2.8mm、3mm、5mm)で変更した。さらに、
図19のような封止部の回り込みが有る場合と、無い場合とで場合分けを行なった。さらに、封止部と水との接触角と、アンダーフィル部と水との接触角との差(接触角差)を0°と46.3°とで場合分けを行なった。いずれの態様についても、サンプル数を100とした。アンダーフィル部は、封止部の側面まで延在させた。株式会社イマダ製高機能タイプデジタルフォースゲージにて押し込み試験を行ない、電子基板から太陽電池が剥離したサンプル数を調べた。結果を
図20に示す。
図20の「■」は、封止部の回り込みが有る場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表し、「●」は、封止部の回り込みが無い場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表す。
図20の結果から、太陽電池の厚みが2.5mm以下であると、封止部と水との接触角と、アンダーフィル部と水との接触角との差が45°以下であると、アンダーフィル部と封止部との親和性による接着効果が効果的に大きくなることがわかった。
【0084】
次に、上記実施例の構造について、
図9(a)のA-A線断面に対応する断面における太陽電池の外周全体における、封止部とアンダーフィル部との接触範囲の比率を複数段階(20%、30%、45%、60%、63%、70%、80%)で変更した。さらに、太陽電池の厚みを2.5mmと3mmとで場合分けを行なった。さらに、封止部と水との接触角と、アンダーフィル部と水との接触角との差(接触角差)を0°と46.3°とで場合分けを行なった。いずれの態様についても、サンプル数を100とした。アンダーフィル部は、封止部の側面まで延在させた。株式会社イマダ製高機能タイプデジタルフォースゲージにて押し込み試験を行ない、電子基板から太陽電池が剥離したサンプル数を調べた。結果を
図21に示す。
図21の「■」は、太陽電池の厚みが2.5mmの場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表し、「●」は、太陽電池の厚みが3mmの場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表す。
図21の結果から、太陽電池20の外周全体αに対して、封止部19とアンダーフィル部50との接触範囲が60%以下であると、封止部と水との接触角と、アンダーフィル部と水との接触角との差が45°以下であると、アンダーフィル部と封止部との親和性による接着効果が効果的に大きくなることがわかった。
【0085】
次に、上記実施例の構造について、
図9(a)のA-A線断面に対応する断面における太陽電池の外周全体における、封止部側面とアンダーフィル部との接触範囲の比率を複数段階(5%、10%、13%、18%、21%、27%、31%)で変更した。さらに、太陽電池の厚みを2.5mmと3mmとで場合分けを行なった。さらに、
図19のような封止部の回り込みが有る場合と、無い場合とで場合分けを行なった。さらに、封止部と水との接触角と、アンダーフィル部と水との接触角との差(接触角差)を0°と46.3°とで場合分けを行なった。いずれの態様についても、サンプル数を100とした。アンダーフィル部は、封止部の側面まで延在させた。株式会社イマダ製高機能タイプデジタルフォースゲージにて押し込み試験を行ない、電子基板から太陽電池が剥離したサンプル数を調べた。結果を
図22に示す。
図22の「■」は、太陽電池の厚みが2.5mm、かつ封止部の回り込み無しの場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表し、「▲」は、太陽電池の厚みが3mm、かつ封止部の回り込み無しの場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表し、「×」は、太陽電池の厚みが2.5mm、かつ封止部の回り込み有りの場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表し、「●」は、太陽電池の厚みが3mm、かつ封止部の回り込み有りの場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表す。
図22の結果から、太陽電池20の外周全体αに対して、封止部の側面とアンダーフィル部との接触範囲が20%以下であると、封止部と水との接触角と、アンダーフィル部と水との接触角との差(接触角差)が45°以下であると、アンダーフィル部と封止部との親和性による接着効果を効果的に得ることができることがわかった。
【0086】
次に、上記実施例の構造において、
図9(a)のA-A線断面における太陽電池20の外周全体α(
図17)に対して、封止部19の電子基板60側の面とアンダーフィル部50との接触範囲β(
図18)の比率を複数段階(10%、15%、32%、38%、42%、47%、53%)で変更した。さらに、外周全体αにおける、封止部側面とアンダーフィル部との接触範囲の比率を18%と22%とで場合分けを行なった。さらに、太陽電池の厚みを2.5mmと3mmとで場合分けを行なった。さらに、封止部と水との接触角と、アンダーフィル部と水との接触角との差(接触角差)を0°と46.3°とで場合分けを行なった。いずれの態様についても、サンプル数を100とした。アンダーフィル部は、封止部の側面まで延在させた。株式会社イマダ製高機能タイプデジタルフォースゲージにて押し込み試験を行ない、電子基板から太陽電池が剥離したサンプル数を調べた。結果を
図23に示す。
図23の「■」は、外周全体αにおける、封止部側面とアンダーフィル部との接触範囲の比率が18%、かつ太陽電池の厚みが2.5mmの場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表し、「▲」は、外周全体αにおける、封止部側面とアンダーフィル部との接触範囲の比率が22%、かつ太陽電池の厚みが2.5mmの場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表し、「×」は、外周全体αにおける、封止部側面とアンダーフィル部との接触範囲の比率が18%、かつ太陽電池の厚みが3mmの場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表し、「●」は、外周全体αにおける、封止部側面とアンダーフィル部との接触範囲の比率が22%、かつ太陽電池の厚みが3mmの場合で、接触角差が46.3°の剥離数から接触角差が0°の剥離数を差し引いた剥離数差を表す。
図23の結果から、封止部と水との接触角と、アンダーフィル部と水との接触角との差(接触角差)が45°以下である場合において、
図9(a)のA-A線断面における太陽電池の外周全体α(
図17)に対して、封止部の電子基板側の面とアンダーフィル部50との接触範囲βが40%以下であると、アンダーフィルと封止部の親和性による密着効果が効果的に大きくなることがわかった。
【0087】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。