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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104022
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】シート体験システム
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20220701BHJP
【FI】
B60N2/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218988
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】大島 祐貴
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DE08
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】乗物の走行中においてシートの着座者が安静状態になっている場合には、その安静状態を持続させることを可能とするシート体験システムを提供することを目的とする。
【解決手段】シート体験システム1は、乗物に設置されるシート本体S0と、シート本体S0上の着座者Pの生体情報を取得するセンサ11,12を有するシートSと、センサ11,12から生体情報を取得する制御部100を備える。制御部100は、着座者Pによって設定される設定ルートに従って乗物を目的地まで道案内するナビゲーション処理を実行可能であり、ナビゲーション処理において設定ルートで道案内を実行している際に、生体情報に基づいて着座者Pが安静状態にあると判定した場合には、設定ルートよりも走行距離が長いルートを提示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に設置されるシート本体と、前記シート本体上の着座者の生体情報を取得するセンサを有するシートと、
前記センサから生体情報を取得する制御部と、を備えたシート体験システムであって、
前記制御部は、
着座者によって設定される設定ルートに従って前記乗物を目的地まで道案内するナビゲーション処理を実行可能であり、
前記ナビゲーション処理において前記設定ルートで道案内を実行している際に、生体情報に基づいて着座者が安静状態にあると判定した場合には、前記設定ルートよりも走行距離が長いルートを提示することを特徴とするシート体験システム。
【請求項2】
前記制御部は、
生体情報に基づいて着座者の睡眠状態を、少なくとも、第1睡眠状態と、前記第1睡眠状態よりも眠りが浅い第2睡眠状態とに判別可能であり、
前記乗物が自動運転モードで走行している際に、前記睡眠状態が前記第2睡眠状態になった場合には、手動運転モードへの切り替えを提示することを特徴とする請求項1に記載のシート体験システム。
【請求項3】
前記制御部は、
生体情報に基づいて着座者の睡眠状態を、少なくとも、第1睡眠状態と、前記第1睡眠状態よりも眠りが浅い第2睡眠状態とに判別可能であり、
前記乗物が自動運転モードで走行している際に、前記睡眠状態が前記第1睡眠状態になってから所定時間が経過したと判定した場合には、手動運転モードへの切り替えを提示することを特徴とする請求項1に記載のシート体験システム。
【請求項4】
前記センサは、着座者の呼吸情報を取得する呼吸センサを含み、
前記制御部は、
呼吸情報に基づいて着座者の睡眠状態を判別することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のシート体験システム。
【請求項5】
前記センサは、着座者の脳波情報を取得する脳波センサを含み、
前記制御部は、
呼吸情報と脳波情報とに基づいて着座者の睡眠状態を判別することを特徴とする請求項4に記載のシート体験システム。
【請求項6】
前記センサは、着座者からの圧力値を取得する圧力センサを含み、
前記制御部は、
呼吸情報と圧力値とに基づいて着座者の睡眠状態を判別することを特徴とする請求項4に記載のシート体験システム。
【請求項7】
前記制御部と通信可能なサーバをさらに備え、
前記制御部は、
前記センサから取得した生体情報を、着座者の識別情報とともに前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記制御部から送信された生体情報を前記識別情報とともに蓄積することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のシート体験システム。
【請求項8】
前記制御部は、
前記センサから取得した生体情報を報知することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のシート体験システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサを有するシートを備えたシート体験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員の着座姿勢を検出するために、シート上に複数の圧力センサを配置した車両用シートが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-65504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両用シートは、運転者の着座姿勢を評価して提示するだけであるので、あまり有効に利用できないという問題がある。ところで、乗物の走行中においては、走行中の振動等によりシートの着座者が安静状態になる場合があるが、従来、このような安静状態を持続させるための手段が構築されていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、シートの新たな価値を提案するべく、乗物の走行中においてシートの着座者が安静状態になっている場合には、その安静状態を持続させることを可能とするシート体験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るシート体験システムは、乗物に設置されるシート本体と、前記シート本体上の着座者の生体情報を取得するセンサを有するシートと、前記センサから生体情報を取得する制御部と、を備える。
前記制御部は、着座者によって設定される設定ルートに従って前記乗物を目的地まで道案内するナビゲーション処理を実行可能であり、前記ナビゲーション処理において前記設定ルートで道案内を実行している際に、生体情報に基づいて着座者が安静状態にあると判定した場合には、前記設定ルートよりも走行距離が長いルートを提示する。
【0007】
この構成によれば、乗物の走行中においてシートの着座者が安静状態になっている場合には、設定ルートよりも走行距離が長いルートが提示されるので、提示されたルートを着座者が選択することで、着座者の安静状態を持続させることができる。
【0008】
また、前記制御部は、生体情報に基づいて着座者の睡眠状態を、少なくとも、第1睡眠状態と、前記第1睡眠状態よりも眠りが浅い第2睡眠状態とに判別可能であり、前記乗物が自動運転モードで走行している際に、前記睡眠状態が前記第2睡眠状態になった場合には、手動運転モードへの切り替えを提示してもよい。
【0009】
この構成によれば、乗物が自動運転モードで走行している際に、着座者の睡眠状態が第2睡眠状態になった場合には、手動運転モードへの切り替えが提示されるので、第1睡眠状態よりも覚醒した状態の着座者に、手動運転モードへの切り替えの提示を気づかせやすくすることができる。
【0010】
また、前記制御部は、生体情報に基づいて着座者の睡眠状態を、少なくとも、第1睡眠状態と、前記第1睡眠状態よりも眠りが浅い第2睡眠状態とに判別可能であり、前記乗物が自動運転モードで走行している際に、前記睡眠状態が前記第1睡眠状態になってから所定時間が経過したと判定した場合には、手動運転モードへの切り替えを提示してもよい。
【0011】
この構成によれば、乗物が自動運転モードで走行している際に、睡眠状態が第1睡眠状態になってから所定時間が経過した場合、つまり着座者が第1睡眠状態よりも覚醒した状態となっている場合には、手動運転モードへの切り替えが提示されるので、第1睡眠状態よりも覚醒した状態の着座者が、手動運転モードへの切り替えの提示に気づきやすいとともに、手動運転モードに切り替えた際に着座者が覚醒した状態で運転を行うことができる。
【0012】
また、前記センサは、着座者の呼吸情報を取得する呼吸センサを含み、前記制御部は、呼吸情報に基づいて着座者の睡眠状態を判別してもよい。
【0013】
この構成によれば、呼吸情報に基づいて着座者の睡眠状態を良好に判別することができる。
【0014】
また、前記センサは、着座者の脳波情報を取得する脳波センサを含み、前記制御部は、呼吸情報と脳波情報とに基づいて着座者の睡眠状態を判別してもよい。
【0015】
この構成によれば、呼吸情報と脳波情報とに基づいて着座者の睡眠状態を判別するので、着座者の睡眠状態を精度よく判別することができる。
【0016】
また、前記センサは、着座者からの圧力値を取得する圧力センサを含み、前記制御部は、呼吸情報と圧力値とに基づいて着座者の睡眠状態を判別してもよい。
【0017】
この構成によれば、呼吸情報と圧力値とに基づいて着座者の睡眠状態を判別するので、着座者の睡眠状態を精度よく判別することができる。
【0018】
また、前記シート体験システムは、前記制御部と通信可能なサーバをさらに備え、前記制御部は、前記センサから取得した生体情報を、着座者の識別情報とともに前記サーバに送信し、前記サーバは、前記制御部から送信された生体情報を前記識別情報とともに蓄積してもよい。
【0019】
この構成によれば、着座者の生体情報が識別情報とともにサーバに蓄積されるので、サーバに蓄積された生体情報に基づいて、様々な処理を制御部で行うことができる。
【0020】
また、前記制御部は、前記センサから取得した生体情報を報知してもよい。
【0021】
これによれば、制御部が生体情報を報知するので、着座者が自身の生体情報を知ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、乗物の走行中においてシートの着座者が安静状態になっている場合には、その安静状態を持続させることが可能となる。
【0023】
また、着座者の睡眠状態に基づいて手動運転モードへの切り替えの提示を行うことで、覚醒した状態の着座者が、手動運転モードへの切り替えの提示に気づきやすいとともに、手動運転モードに切り替えた際に着座者が覚醒した状態で運転を行うことができる。
【0024】
また、呼吸情報に基づいて着座者の睡眠状態を判別することで、着座者の睡眠状態を良好に判別することができる。
【0025】
また、呼吸情報と脳波情報とに基づいて着座者の睡眠状態を判別することで、着座者の睡眠状態を精度よく判別することができる。
【0026】
また、呼吸情報と圧力値とに基づいて着座者の睡眠状態を判別することで、着座者の睡眠状態を精度よく判別することができる。
【0027】
また、着座者の生体情報を識別情報とともにサーバに蓄積することで、サーバに蓄積された生体情報に基づいて、様々な処理を制御部で行うことができる。
【0028】
また、制御部が生体情報を報知することで、着座者が自身の生体情報を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係るシート体験システムを示す図である。
図2】カーナビゲーションの画面を示す図(a)と、複数のルートを着座者に選択させる画面を示す図(b)である。
図3】着座者に遠回りルートを提示する画面を示す図(a)と、着座者が遠回りルートを選択した場合の画面を示す図(b)である。
図4】高速道路上を自動運転モードで車両が走行しているときの画面を示す図(a)と、着座者に手動運転モードへの切り替えを提示する画面を示す図(b)である。
図5】ナビゲーション処理を示すフローチャートである。
図6】睡眠状態判定処理を示すフローチャートである。
図7】変形例に係る睡眠状態判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、シート体験システム1は、シートSと、制御部100と、サーバSVとを備えている。シートSは、例えば、乗物の一例としての車両に設置される車両用シートとして構成される。なお、本発明において、前後、左右、上下は、シートSに座る着座者Pを基準とする。
【0031】
シートSは、車両に設置されるシート本体S0と、センサの一例としての心拍センサ11および呼吸センサ12とを有している。シート本体S0は、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを有する。シートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3は、クッションパッドと、クッションパッドを被覆する表皮とを備えている。
【0032】
心拍センサ11は、シート本体S0上の着座者Pの生体情報である心拍情報を取得するセンサである。心拍センサ11は、シートバックS2の表皮の裏に設けられている。
【0033】
呼吸センサ12は、着座者Pの生体情報である呼吸情報を取得するセンサである。呼吸センサ12は、シートバックS2の表皮の裏に設けられている。
【0034】
車両は、車両を道案内するための画面を表示可能なモニター21と、車両の自動運転モードを開始または終了するための運転モード切替ボタン22とを備えている。運転モード切替ボタン22は、例えば、自動運転モードでないときに押されると、自動運転モードを開始するための開始信号を出力し、自動運転モード中に押されると、自動運転モードを終了するための終了信号を出力するように構成されている。
【0035】
制御部100は、図示しないCPU、ROM、RAM、書換可能な不揮発性メモリ等を有し、予め記憶されたプログラムを実行する機能を有している。具体的に、制御部100は、図2(a),(b)に示すように、着座者Pがモニター21上の各種操作ボタンを操作することによって設定される設定ルートに従って車両を目的地まで道案内するナビゲーション処理を実行可能となっている。
【0036】
詳しくは、着座者Pがモニター21上の目的地ボタンB2を押すと、制御部100は、目的地を設定するための図示せぬ画面をモニター21に表示する。着座者Pが目的地を設定すると、制御部100は、車両の現在地と目的地に基づいて、図2(b)に示すように、複数のルートをモニター21に表示する。着座者Pが複数の中から所定のルートを選択し、案内開始ボタンB1を押すと、制御部100は、着座者Pによって設定された設定ルートに従って道案内を開始する。
【0037】
なお、制御部100は、道案内を開始した後は、案内開始ボタンB1の代わりに図3(a)に示す案内終了ボタンB3を表示する。そして、制御部100は、案内終了ボタンB3が押された場合、または、車両が目的地に到着した場合に、ナビゲーション処理を終了する。
【0038】
また、制御部100は、心拍センサ11および呼吸センサ12から生体情報を取得可能であるとともに、運転モード切替ボタン22から自動運転モードを開始・終了するための信号を取得可能となっている。そして、制御部100は、取得した情報・信号に基づいて、様々な処理を実行している。
【0039】
なお、運転モード切替ボタン22から出力される信号は、車両に搭載された、図示せぬECU(Electronic Control Unit)で取得され、ECUによって車両を自動運転させる自動運転制御が実行される。ECUは、自動運転制御において、例えば、車両に搭載したカメラ等のセンサを用いて、走行レーンから外れないように車両を走行させる処理や、自車両の前方を走る車両と自車両との間隔を所定値以上に保つ処理などを実行する。本実施形態では、ECUは、高速道路の走行中に限り、運転モード切替ボタン22からの信号に基づいて自動運転制御を実行することとする。
【0040】
制御部100は、図3(a),(b)に示すように、ナビゲーション処理において設定ルートで道案内を実行している際に、心拍情報に基づいて着座者Pが安静状態にあると判定した場合には、設定ルートよりも走行距離が長いルートを提示する機能を有している。ここで、安静状態であるか否かの判定方法としては、例えば、着座者Pの心拍が所定値以下である場合に安静状態であると判定する方法が挙げられる。なお、心拍のしきい値である所定値は、着座者Pに対応した数値となるように、着座者Pによって予め設定されていてもよいし、制御部100がサーバSVに蓄積した心拍情報に基づいて設定してもよい。
【0041】
また、制御部100は、呼吸情報に基づいて着座者Pの睡眠状態を、第1睡眠状態と、第1睡眠状態よりも眠りが浅い第2睡眠状態とに判別可能となっている。ここで、睡眠状態の判定は、特開2017-80297号公報で開示されている判定方法を用いることができる。具体的に、この判定方法は、呼吸センサによって着座者の呼吸データを取得し、取得した呼吸データに基づいて、呼吸データ(圧力信号)の単位時間当たりの変化度合であるP_velを演算により算出し、P_velについての着座者に眠気が生じる確率を尤度とし、尤度に眠気の生じる事前確率を乗じるベイズフィルタを使用して、着座者の覚醒状態を判定する方法である。制御部100は、この方法を利用することで、覚醒状態を第1睡眠状態と判定し、覚醒状態以外の状態を第2睡眠状態と判定することができる。そして、制御部100は、図4(a),(b)に示すように、車両が自動運転モードで走行している際に、睡眠状態が第2睡眠状態になった場合には、手動運転モードへの切り替えを提示する機能を有している。
【0042】
また、制御部100は、サーバSVと通信可能であり、心拍センサ11および呼吸センサ12から取得した生体情報を、着座者Pの識別情報とともにサーバSVに送信する機能を有している。ここで、識別情報は、着座者Pが、例えばモニター21に表示される設定用の画面において、手入力で入力することができる。サーバSVは、制御部100から送信された生体情報を識別情報とともに蓄積する機能を有している。
【0043】
また、制御部100は、心拍センサ11から取得した生体情報をモニター21に表示することで(図2(b)、図4(a)等参照)、生体情報を着座者Pに報知する機能を有している。
【0044】
次に、制御部100の動作について詳細に説明する。制御部100は、図5に示すナビゲーション処理と、図6に示す自動運転制御中に行う処理である睡眠状態判定処理を実行可能となっている。
【0045】
図5に示すナビゲーション処理において、制御部100は、まず、着座者Pによって、目的地とルートが設定され、案内開始ボタンB1が押されたか否かを判定する(S11)。ステップS11において案内開始ボタンB1が押されていないと判定すると(No)、制御部100は、本処理を終了する。
【0046】
ステップS11において案内開始ボタンB1が押されたと判定すると(Yes)、制御部100は、着座者Pによって設定された設定ルートに従って道案内を開始する(S12)。ステップS12の後、制御部100は、心拍センサ11および呼吸センサ12から生体情報を取得し(S13)、生体情報を識別情報とともにサーバSVに送信する(S14)。
【0047】
ステップS14の後、制御部100は、ステップS13で取得した心拍情報をモニター21に表示する(S15)。ステップS15の後、制御部100は、心拍情報に基づいて着座者Pが安静状態であるか否かを判定する(S16)。
【0048】
ステップS16において着座者Pが安静状態であると判定した場合には(Yes)、制御部100は、設定ルートよりも長い遠回りルートをモニター21に表示する(S17)。ステップS17の後、制御部100は、遠回りルートが着座者Pによって選択されたか否かを判定する(S18)。
【0049】
ステップS18において遠回りルートが選択されたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、遠回りルートでの道案内を開始する(S19)。ステップS19の後、または、ステップS16またはステップS18でNoと判定した場合には、制御部100は、目的地に到着したという第1条件と、案内終了ボタンB3が押されたという第2条件のいずれかの条件が満たされたか否かを判定する(S20)。
【0050】
ステップS20において第1条件および第2条件のいずれも満たしていないと判定した場合には(No)、制御部100は、ステップS13の処理に戻る。ステップS20において第1条件または第2条件を満たしたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、本処理を終了する。
【0051】
図6に示す睡眠状態判定処理において、制御部100は、まず、運転モード切替ボタン22からの信号に基づいて、着座者Pによって自動運転モードの開始が選択されたか否かを判定する(S41)。ステップS41において自動運転モードの開始が選択されていないと判定すると(No)、制御部100は、本処理を終了する。
【0052】
ステップS41において睡眠状態判定処理の開始が選択されたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、心拍センサ11および呼吸センサ12から生体情報を取得し(S42)、生体情報を識別情報とともにサーバSVに送信する(S43)。ステップS43の後、制御部100は、ステップS42で取得した心拍情報をモニター21に表示する(S44)。
【0053】
ステップS44の後、制御部100は、呼吸情報に基づいて着座者Pの睡眠状態が第2睡眠状態であるか否かを判定する(S45)。ステップS45において睡眠状態が第2睡眠状態であると判定した場合には(Yes)、制御部100は、手動運転モードへの切り替えを勧めるメッセージを提示する(S46)。
【0054】
具体的には、ステップS46において、制御部100は、メッセージをモニター21に表示するとともに、スピーカからメッセージに対応した音声または報知音などの音を発生させることで、着座者Pを目覚めさせる。なお、音の発生の代わりに、シートSに設けた振動デバイスを振動させてもよい。また、音の発生と振動を組み合わせて実行してもよい。
【0055】
ステップS46またはステップS45でNoと判定した場合には、制御部100は、運転モード切替ボタン22からの信号に基づいて、自動運転モードの終了が選択されたか否かを判定する(S47)。ステップS47において自動運転モードの終了が選択されていないと判定した場合には(No)、制御部100は、ステップS42の処理に戻る。ステップS47において自動運転モードの終了が選択されたと判定した場合には(Yes)、制御部100は、本処理を終了する。
【0056】
次に、制御部100の動作の一例について詳細に説明する。
図2(a)に示すように、着座者Pがモニター21上の目的地ボタンB2を押すと、制御部100は、目的地を設定するための図示せぬ画面をモニター21に表示する。着座者Pが目的地を設定すると、制御部100は、車両の現在地と目的地に基づいて、図2(b)に示すように、複数のルートをモニター21に表示する。着座者Pが複数の中から所定のルートを選択し、案内開始ボタンB1を押すと、制御部100は、着座者Pによって設定された設定ルートに従って道案内を開始するとともに、モニター21に着座者Pの心拍数を表示する。
【0057】
ナビゲーション処理中において、制御部100は、心拍情報に基づいて着座者Pが安静状態であるか否かを判定する。着座者Pが安静状態であると判定した場合には、制御部100は、図3(a)に示すように、遠回りルートを着座者Pに促すメッセージと、遠回りルートを選択するための選択ボタンB4をモニター21に表示する。具体的には、例えば、「身体状態が安静状態です。少し遠回りして安静状態を持続してみては、どうでしょうか?」というメッセージがモニター21に表示される。なお、メッセージを表示する際において、スピーカから、メッセージに対応した音声または報知音などの音を発生させるように、制御部100を構成してもよい。
【0058】
着座者Pがメッセージに促されて安静状態を維持したいと考えて、着座者Pが選択ボタンB4を押すと、制御部100は、図3(a)に示すように、遠回りルートでの道案内を開始する。なお、本実施形態では、遠回りルートを促すメッセージとともに着座者Pの心拍数がモニター21に表示されているので、メッセージを見た着座者Pは、心拍数の表示を確認することで、自分が本当に安静状態であるかを知ることが可能となっている。
【0059】
図4(a)に示すように、制御部100は、高速道路上において自動運転モードで走行している車両を道案内している場合には、モニター21に着座者Pの心拍数を表示する。自動運転モード中において、制御部100は、呼吸情報に基づいて着座者Pの睡眠状態が第2睡眠状態であるか否かを判定する。
【0060】
着座者Pの睡眠状態が第2睡眠状態であると判定した場合には、図4(b)に示すように、制御部100は、手動運転モードへの切り替えを着座者Pに促すメッセージをモニター21に表示する。具体的には、例えば、「眠りが浅くなったので、今のうちに手動運転モードへの切り替えをお勧めします。」というメッセージがモニター21に表示されるとともに、スピーカからメッセージに対応した音声または報知音などの音が出力される。
【0061】
着座者Pがメッセージに従って運転モード切替ボタン22を押すと、制御部100が睡眠状態判定処理を終了するとともに、ECUが自動運転制御を終了する。
【0062】
ここで、高速道路のみで自動運転制御を行う場合には、例えば、高速道路の出口に降りるときやサービスエリアに寄るときなどのどこかのタイミングで、手動運転モードへ切り替えることが望まれるが、自動運転制御中に着座者Pが寝てしまった場合には、手動運転モードへの切り替えができなくなる。そのため、着座者Pが寝てしまった場合に、報知音などで着座者Pを起こすことが考えられる。
【0063】
しかしながら、着座者Pが深い眠りについている場合には、報知音などで着座者Pが起きない場合がある。これに対し、本実施形態では、制御部100は、着座者Pの眠りが浅くなったときに、報知音などで手動運転モードへの切り替えを提示するので、自動運転モードから手動運転モードへの切り替えをスムーズに行うことができる。
【0064】
なお、手動運転モードへの切り替えの提示のタイミングは、車両の現在地から高速道路の出口やサービスエリアなどの第2目的地までの距離を考慮して決めてもよい。例えば、車両の現在地から第2目的地までの距離が所定距離以下であるという条件と、睡眠状態が第2睡眠状態であるという条件の両方が満たされた場合に、手動運転モードへの切り替えを提示することができる。なお、第2目的地である高速道路の出口は、着座者Pが設定した設定ルートに基づいて制御部100が設定する。また、第2目的地であるサービスエリアは、着座者Pが設定ルートを設定するときに、着座者Pが2番目の目的地として手入力により設定する。
【0065】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
車両の走行中においてシートSの着座者Pが安静状態になっている場合には、設定ルートよりも走行距離が長いルートが提示されるので、提示されたルートを着座者Pが選択することで、着座者Pの安静状態を持続させることができる。
【0066】
車両が自動運転モードで走行している際に、着座者Pの睡眠状態が第2睡眠状態になった場合には、手動運転モードへの切り替えが提示されるので、第1睡眠状態よりも覚醒した状態の着座者Pに、手動運転モードへの切り替えの提示を気づかせやすくすることができる。
【0067】
着座者Pの生体情報が識別情報とともにサーバSVに蓄積されるので、サーバSVに蓄積された生体情報に基づいて、様々な処理を制御部100で行うことができる。
【0068】
制御部100が生体情報を報知するので、着座者Pが自身の生体情報を知ることができる。
【0069】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0070】
前記実施形態では、睡眠状態が第2睡眠状態になった場合に手動運転モードへの切り替えを提示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、車両が自動運転モードで走行している際に、睡眠状態が第1睡眠状態になってから所定時間が経過したと判定した場合に、手動運転モードへの切り替えを提示してもよい。
【0071】
この場合、制御部100は、例えば図7に示す睡眠状態判定処理を実行すればよい。ここで、図7に示す睡眠状態判定処理は、図6に示す睡眠状態判定処理と同様のステップS41~S44,S46,S47の処理を有する他、新たなステップS61~S65の処理を有する。
【0072】
具体的に、制御部100は、ステップS41~S44の処理を実行した後、着座者Pの睡眠状態が第1睡眠状態になったことを示すフラグFが1であるか否かを判定する(S61)。ステップS61においてF=1でないと判定した場合には(No)、制御部100は、着座者Pの睡眠状態が第1睡眠状態であるか否かを判定する(S62)。ステップS62において睡眠状態が第1睡眠状態であると判定した場合には(Yes)、制御部100は、第1睡眠状態になったことを示すフラグFを1にする(S63)。
【0073】
ステップS63の後、または、ステップS61でYesと判定した場合には、制御部100は、第1睡眠状態になってから所定時間が経過したか否かを判定する(S64)。
【0074】
ステップS64において所定時間が経過したと判定した場合には(Yes)、制御部100は、手動運転モードへの切り替えを勧めるメッセージを提示する(S46)。ステップS46の後、制御部100は、フラグFを0に戻して(S65)、ステップS47の処理に移行する。また、制御部100は、ステップS62またはステップS64でNoと判定した場合には、ステップS47の処理に移行する。
【0075】
この形態によれば、車両が自動運転モードで走行している際に、睡眠状態が第1睡眠状態になってから所定時間が経過した場合、つまり着座者が第1睡眠状態よりも覚醒した状態となっている場合には、手動運転モードへの切り替えが提示されるので、第1睡眠状態よりも覚醒した状態の着座者に、手動運転モードへの切り替えの提示を気づかせやすくすることができる。
【0076】
前記実施形態では、着座者Pの安静状態を判定するためのセンサとして心拍センサ11を例示したが、本発明はこれに限定されず、着座者Pの安静状態を判定するための生体情報を取得可能なセンサであればどのようなセンサであってもよい。例えば、乗員からの荷重を検出する圧力センサによって、乗員の脈拍を検出可能である場合には、センサは、圧力センサであってもよい。また、呼吸センサは、着座者からの圧力値を取得する圧力センサであってもよいし、着座者に向けて電波を発する電波センサなどであってもよい。
【0077】
前記実施形態では、睡眠状態を判定するためのセンサとして呼吸センサ12を例示したが、本発明はこれに限定されず、センサは、例えば、着座者の脳波を検出する脳波センサであってもよい。この場合、睡眠状態の判定方法としては、例えば、脳波の振幅が第1閾値以上の場合に第1睡眠状態と判定し、脳波の振幅が第1閾値以下の第2閾値より低い場合に第2睡眠状態と判定する方法が挙げられる。
【0078】
また、呼吸センサと脳波センサとを併用して、睡眠状態の判定をしてもよい。具体的には、呼吸センサに基づいて着座者が覚醒状態になったと判定し、かつ、脳波の振幅が所定の閾値より低くなったと判定した場合に、着座者が覚醒状態(第1睡眠状態)になったと判定してもよい。
【0079】
また、呼吸センサと、圧力センサとを併用して、睡眠状態の判定をしてもよい。具体的には、呼吸センサに基づいて着座者が覚醒状態になったと判定し、かつ、圧力センサにより所定以上の大きな体動(圧力値の変動量が所定値以上)が観測された場合に、着座者が覚醒状態(第1睡眠状態)になったと判定してもよい。
【0080】
モニターに表示する生体情報は、心拍情報に限らず、呼吸情報や脳波情報などであってもよい。
【0081】
前記実施形態では、乗物として車両を例示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物、例えば、船舶や航空機などであってもよい。
【0082】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 シート体験システム
11 心拍センサ
12 呼吸センサ
100 制御部
P 着座者
S シート
S0 シート本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7