(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104079
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】ガス計測用アダプタ
(51)【国際特許分類】
G01N 21/03 20060101AFI20220701BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20220701BHJP
G01N 21/3504 20140101ALN20220701BHJP
【FI】
G01N21/03 B
G01N21/05
G01N21/3504
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219071
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕也
(72)【発明者】
【氏名】井上 正行
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 文彦
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 敬之
(72)【発明者】
【氏名】牧野 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 孝宏
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB02
2G057AB06
2G057AC03
2G057BA05
2G057BB06
2G057BC10
2G057BD02
2G057BD04
2G057DC07
2G059AA01
2G059BB01
2G059BB12
2G059CC04
2G059CC05
2G059CC07
2G059DD12
2G059EE01
2G059HH01
2G059HH06
2G059KK01
2G059MM01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】測定光が透過し、薄肉で成形可能なアダプタ形成用材料を用いて作製されたガス計測用アダプタを提供する。
【解決手段】ガスを通過させる流管部21と、流管部を通過するガスの成分を測定するための測定光を透過させる窓部31と、を備えたガス計測用アダプタであって、アダプタは、主成分としてシクロオレフィン系樹脂を含むアダプタ形成用材料を用いて作製されたものである。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを通過させる流管部と、前記流管部を通過する前記ガスの成分を測定するための測定光を透過させる窓部と、を備えたガス計測用アダプタであって、
前記アダプタは、主成分としてシクロオレフィン系樹脂を含むアダプタ形成用材料を用いて作製されたものである、ガス計測用アダプタ。
【請求項2】
前記アダプタ形成用材料は、さらに添加剤としてα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体を含む、請求項1に記載のガス計測用アダプタ。
【請求項3】
前記主成分と前記添加剤との合計量に対し、前記主成分のシクロオレフィン系樹脂が65~97質量%であり、前記添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体が3~35質量%である、請求項2に記載のガス計測用アダプタ。
【請求項4】
前記添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体が、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)である、請求項2または3に記載のガス計測用アダプタ。
【請求項5】
前記SEBS中のスチレン含有量が、5~60質量%である、請求項4に記載のガス計測用アダプタ。
【請求項6】
前記主成分のシクロオレフィン系樹脂が、シクロオレフィンコポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載のガス計測用アダプタ。
【請求項7】
前記窓部は、前記流管部より薄肉である、請求項1~6のいずれか1項に記載のガス計測用アダプタ。
【請求項8】
主成分としてシクロオレフィン系樹脂を含むアダプタ形成用材料。
【請求項9】
さらに添加剤としてα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体を含む、請求項8に記載のアダプタ形成用材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の呼吸気に含まれる所定の呼吸ガス(二酸化炭素、酸素、笑気、揮発性麻酔ガス等)を検出可能なセンサ、および当該センサに対して取外し可能に装着され、前記生体の呼吸気が通過可能な通路が形成されたガス計測用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
生体の呼吸を人工的に行う人工呼吸器の流路には、呼吸気等のガスの特定成分を測定するために、透明窓を有するガス計測用アダプタが取り付けられる。通常、こうしたガス計測用アダプタは、ガスを通過させる流管部と、前記流管部を通過する前記ガスの成分を測定するための測定光を透過させる窓部と、を備えた構成が一般的である。
【0003】
このガス計測用アダプタには、被検者の呼吸器が通過可能な通路である流管部が形成されている。被検者の呼吸気に含まれる所定の呼吸ガス(例えば二酸化炭素)の濃度を測定する場合、センサに設けられた発光部と受光部とを結ぶ光軸がこの通路を横切るように窓部が配置される。発光部から出射された測定光(例えば赤外光)は、受光部において受光され、受光強度に応じた信号がセンサより出力される(二酸化炭素の検出)。呼吸気中の二酸化炭素濃度が高いほど測定光(赤外光)が強く吸収され、受光強度が弱まる。よって、センサより出力される信号強度をモニタすることにより被検者の呼吸気に含まれる二酸化炭素濃度を測定することが可能となる。このようなガス計測用アダプタおよびセンサの例は、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1のガス計測用アダプタ(以下、エアウェイアダプタともいう)は、使い捨て可能な硬質樹脂製のエアウェイケースとして提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガス計測用アダプタにおいて、少なくともガス成分を測定するために測定光が通る窓部の部分は、測定光が透過し、かつ薄肉である必要がある。すなわち、ガス計測アダプタは、薄肉な部分を有し、光を受発光する精密性を有する優れた成形性が求められているのが現状であり、その部材の構成については更なる改善の余地があった。
【0007】
そこで本発明は、測定光が透過し、薄肉で成形可能なアダプタ形成用材料を用いて作製されたガス計測用アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガス計測用アダプタは、ガスを通過させる流管部と、前記流管部を通過する前記ガスの成分を測定するための測定光を透過させる窓部と、を備えたガス計測用アダプタであって、
前記アダプタは、主成分としてシクロオレフィン系樹脂を含むアダプタ形成用材料を用いて作製されたものである点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定光を透過し、薄肉で成形可能なアダプタ形成用材料を用いることで、一体で簡便に作製できるガス計測用アダプタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るガス計測用アダプタの左側面図である。
【
図2】
図1のセンサ取付部を拡大した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書中および図面中で使用される「上」「下」「左」「右」「前」「後」は、部材同士の位置関係を示すために便宜上用いるものであり、実際の使用状態における方向を限定するものではない。また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。さらに、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0012】
<ガス計測用アダプタ>
本発明のガス計測用アダプタは、ガスを通過させる流管部と、前記流管部を通過する前記ガスの成分を測定するための測定光を透過させる窓部と、を備えたガス計測用アダプタである。以下、図面を用いて、本発明のガス計測用アダプタの代表的な構成の一実施形態について簡単に説明するが、本発明のガス計測用アダプタの構成は、以下に説明する形態に何ら限定されるものではない。
【0013】
図1は、一実施形態に係るガス計測用アダプタ1の左側面図である。ガス計測用アダプタ1は、例えば、呼吸管理を要する患者など(以下、被検者とも称する)の呼吸気に含まれる特定成分(例えば、二酸化炭素)の濃度を光学的に測定する際に用いられるアダプタである。
【0014】
図1に示すように、ガス計測用アダプタ1は、前側の端部に設けられる第一接続アダプタ11と、後側の端部に設けられる第二接続アダプタ12と、第一接続アダプタ11と第二接続アダプタ12との間に設けられるセンサ取付部20と、を備えている。なお、ガス計測用アダプタ1の左側面と右側面とは対称な構成を有している。
【0015】
第一接続アダプタ11は、円筒形状に形成されており、例えばY字管等の接続部材を介して、人工呼吸器のエア供給源と呼気排出口とに接続される。第二接続アダプタ12は、第一接続アダプタ11よりも大径の円筒形状に形成されており、気管チューブやマスクといった被検者側の機器に接続される。
【0016】
図2は、ガス計測用アダプタ1のセンサ取付部20を拡大して示した部分拡大図である。センサ取付部20には、被検者の呼吸気に含まれる特定のガスの濃度を光学的に測定する例えば呼吸気濃度センサ(図示省略)が取り付けられる。
図2に示すように、センサ取付部20は、被検者の呼吸気を通過させる流管部21と、流管部21の中央部に設けられた窓部31と、を有している。
【0017】
流管部21は、第二接続アダプタ12から流れてくる被検者の呼吸気を第一接続アダプタ11に接続された呼気排出口(不図示)へと通過させる管部である。
【0018】
窓部31は、流管部21を通過する呼吸気の成分を測定するための光(例えば、赤外線)を透過させる窓である。窓部31は、センサ取付部20の左側面と右側面とに対向して設けられている。
【0019】
一対の窓部31には、センサ取付部20に呼吸気濃度センサが取り付けられた際に、呼吸気濃度センサに設けられている発光部と受光部とがそれぞれ対向して配置される。センサ取付部20に取り付けられた呼吸気濃度センサは、センサ取付部20の上部に対向して設けられている一対の係止部材22a、22bによって係止され、所定の位置に位置決めされる。
【0020】
窓部31は、呼吸気の成分を測定するための測定光を透過させるものである。呼吸気濃度センサから放射された光は、対向して配置されている窓部31を透過する。
【0021】
窓部31は、流管部21より薄肉であるのが好ましい。有効な光(測定光)を透過させやすくなるためである。さらに窓部31は、流管部21と一体的に成形されているのが好ましい。成形工数及び加工工数が少なくてよく、一体化により高強度化できるためである。ここで、「一体的に成形される」とは、窓部31と流管部21とが、各種の成形法により、一体の部品として成形されている状態であることを意味する。成形法は、例えば、射出成形を含む樹脂成形法を用いることができる。窓部31および流管部21は、金型での流動性が高く、かつ、測定光の吸収率が適切な、本発明のアダプタ形成用材料を用いて作製されてなるものであればよい。
【0022】
図3は、
図1のA-A線断面図であり、ガス計測用アダプタ1の内部の構成を示す断面図である。
図3に示すように、ガス計測用アダプタ1の内部には、被検者の呼吸気を通気させるための通気路41(41a、41b、41c)が形成されている。通気路41は、第一接続アダプタ11内の通気路41aと、センサ取付部20内の通気路41bと、第二接続アダプタ12内の通気路41cと、が連通された例えば一本の通気路として形成されている。
【0023】
第一接続アダプタ11の通気路41a、センサ取付部20の通気路41b、第二接続アダプタ12の通気路41cは、連通している。
【0024】
センサ取付部20の嵌合部23a、23bには、呼吸気濃度センサが嵌合される。嵌合部23a、23bは、窓部31の外面と窓部31の周囲に設けられている流管部21の外面とで構成されている。
【0025】
<アダプタ形成用材料>
本発明のガス計測用アダプタは、主成分としてシクロオレフィン系樹脂を含むアダプタ形成用材料を用いて作製されたものである。すなわち、本発明の実施形態のアダプタ形成用材料は、主成分としてシクロオレフィン系樹脂を含むものである。測定光を透過し、薄肉で成形できるアダプタ形成用材料を用いることで、一体で簡便に作製できるガス計測用アダプタを提供することができる。ガス計測用アダプタは、ガス成分を測定するための測定光が通る部分(窓部)とガスを通過させる部分(流菅部)を有するが、窓部と流管部を硬質樹脂材料を用いて構成した場合と比較して、本発明のアダプタ形成用材料を用いることで、更に成形性に優れた構成とすることができる(各実施例と比較例とを対比参照のこと)。
【0026】
前記アダプタ形成用材料は、さらに添加剤としてα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体を含むことが好ましい。これにより、靭性を持ったアダプタ形成用材料とすることができる。そのため、高強度及び高靭性なガス計測用アダプタを提供することができる。
【0027】
前記アダプタ形成用材料は、前記主成分と前記添加剤との合計量に対し、前記主成分のシクロオレフィン系樹脂の含有量が65~97質量%であり、前記添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体の含有量が3~35質量%であることが好ましい。さらに、前記主成分と前記添加剤との合計量に対し、前記主成分のシクロオレフィン系樹脂の含有量が70~95質量%であり、前記添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体の含有量が5~30質量%であることがより好ましい。上記範囲であれば、測定光をより一層透過することができ、より薄肉に成形可能であり、かつ靭性を持ったアダプタ形成用材料とすることができる。そのため、より一層、一体で簡便に成形(作製)可能であり、より高強度及び高靭性なガス計測用アダプタを提供することができる。
【0028】
添加剤であるα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体は、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)であることが好ましい。これにより、靭性を持ったアダプタ形成用材料とすることができる。そのため、高強度及び高靭性なガス計測用アダプタを提供することができる。
【0029】
前記SEBS中のスチレン含有量は、5~60質量%であることが好ましい。このような含有量とすることにより、靭性に優れたアダプタ形成用材料とすることができる。そのため、より高強度及び高靭性なガス計測用アダプタを提供することができる。上記観点から、前記SEBS中のスチレン含有量は、9~58質量%であることがより好ましい。なお、SEBS中のスチレン含有量は、赤外分光法(IR)、核磁気共鳴法(NMR)等により測定することができる。
【0030】
上記シクロオレフィン系樹脂は、シクロオレフィンコポリマー(COC)であることが好ましい。ガス計測用アダプタは、ガス成分を測定するための測定光が通る部分(窓部)とガスを通過させる部分(流菅部)とを有するが、窓部と流管部を硬質樹脂材料を用いて構成した場合、硬質樹脂材料の流動性が低く、成形性が十分でなく、一体かつ薄肉成形が難しい(アダプタの製品歩留まりが悪く、コスト高になる)が、本発明で用いるシクロオレフィン系樹脂、なかでもシクロオレフィンコポリマー(COC)は、流動性が高く、成形性に優れた構成とすることができ、一体かつ薄肉成形可能であり、さらに透明性にも優れ、赤外透過率も高いことを見出した。このCOCをアダプタ形成用材料として用いることで、窓部と流管部とが一体的に形成されたガス計測用アダプタの成形性に優れ、一体で簡便に作製することができるガス計測用アダプタを提供できることを見出したものである。なお、COCの赤外透過率が高いのは、透明でかつCO2分子の吸収帯である4.3μm付近に吸収帯を持たないためと考えられる。
【0031】
以下、上記したアダプタ形成用材料の各成分について、より詳しく説明する。
【0032】
<主成分>
アダプタ形成用材料は、主成分としてシクロオレフィン系樹脂を含むものであればよい。主成分のシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンコポリマー(COC)及びシクロオレフィンポリマー(COP)のいずれも利用可能である。必要に応じて、COCとCOPとを併用してもよい。
【0033】
シクロオレフィンコポリマー(COC)及びシクロオレフィンポリマー(COP)としては、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィンの重合体、環状共役ジエンの重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、およびこれら重合体の水素化物、並びにこれらの共重合体などが挙げられる。なかでも、流動性が高く、一体かつ薄肉成形可能であり、さらに透明性にも優れ、赤外透過率も高いシクロオレフィンコポリマー(COC)が好ましい。
【0034】
シクロオレフィンコポリマー(COC)及びシクロオレフィンポリマー(COP)の合成法としては、例えば、下記式(1)~(7)に示す従来公知の合成法が挙げられる。即ち、
式(1)に示すノルボルネン類の付加共重合(反応性の高いノルボルネン類をモノマーに使用した、ノルボルネン類とα-オレフィンとの付加共重合)、
式(2)に示すノルボルネン類の水素化開環メタセシス重合、
式(3)に示すアルキリデンノルボルネン類のトランスアニュラー反応、
式(4)に示すノルボルネン類の付加重合、
式(5)に示すシクロペンタジエンの1,2-、1,4-付加重合および水添反応、
式(6)に示すシクロヘキサジエンの1,2-、1,4-付加重合および水添反応、
式(7)に示す共役ジエン類の環化重合、
等が挙げられる。また、例えば、式(2)のR1、R2を適宜選択することにより、下記A~Fで表される化学構造を有するノルボルネン類の水素化開環メタセシス重合体を得ることができる。ここで、下記Aで表される化学構造を有するノルボルネン類の水素化開環メタセシス重合体は、R1、R2が共に水素原子の例である。下記Bで表される化学構造を有するノルボルネン類の水素化開環メタセシス重合体は、R1が水素原子であり、R2がフェニル基の例である。下記Cで表される化学構造を有するノルボルネン類の水素化開環メタセシス重合体は、R1が水素原子であり、R2がシクロヘキシル基の例である。下記Dで表される化学構造を有するノルボルネン類の水素化開環メタセシス重合体は、R1とR2とが互いに連結されてシクロペンタン環を形成した例である。下記Eで表される化学構造を有するノルボルネン類の水素化開環メタセシス重合体は、R1とR2とが互いに連結されてアルキル基を有するノルボルナン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン)環として、6-メチル-ノルボルナン環を形成した例である。下記Fで表される化学構造を有するノルボルネン類の水素化開環メタセシス重合体は、R1とR2とが互いに連結されてノルボルナン環を形成した例である。同様に、式(1)のR1、R2、R3、式(4)のR1、R2、式(7)のRを適宜選択することで、異なる化学構造を有する重合体を得ることができる。即ち、置換基の種類(さらには分子量分布等)の設計により、耐衝撃性や延伸性などの特性を高めたり、付与させたりすることができる。
【0035】
【0036】
【0037】
シクロオレフィンコポリマー(COC)及びシクロオレフィンポリマー(COP)は、上記したような従来公知の合成法を用いて作製してもよいし、市販品を用いてもよい。このうち、前記シクロオレフィンコポリマー(COC)の市販品としては、例えば、Topas Advanced Polymers GmbH社製、TOPAS(登録商標)5013、8007、6017、6015、6013、9506等;三井化学株式会社製、APEL(登録商標)6509T、6011T、6013T、6015T、5014DP、5014CL等が挙げられる。なかでも、TOPAS(登録商標)5013、8007、APEL(登録商標)6509が好ましい。例えば、TOPAS(登録商標)は、ジシクロペンタジエンとエチレンとから合成されたノルボルネンと、エチレンとを、メタロセン触媒を用いて共重合した下記式(1a)で表されるコポリマー(上記式(1)で表されるコポリマーの1種)である。APEL(登録商標)も、下記式(1b)で表されるコポリマー(上記式(1)で表されるコポリマーの1種)である。これらTOPAS(登録商標)(下記式(1a)で表されるコポリマー)、APEL(登録商標)(下記式(1b)で表されるコポリマー)は、流動性が高く、一体かつ薄肉成形可能であり、さらに透明性にも優れ、赤外透過率も高いことから好ましい。なお、式(1b)中のR1、R2としては、相互に独立して、例えば、上記式(2)のR1、R2として例示した上記A~Fに示す水素原子、アルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、シクロアルキル基、R1とR2とが互いに連結されて形成されたシクロオレフィン環基、アルキル基などを有するシクロオレフィン環基、ノルボルナン環基、アルキル基などを有するシノルボルナン環基などの置換基などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0038】
【0039】
【0040】
前記シクロオレフィンポリマー(COP)の市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社製、ZEONOR(登録商標)1060R、1020R等が挙げられる。
【0041】
シクロオレフィンコポリマー(COC)及びシクロオレフィンポリマー(COP)を上記市販品ではなく、従来公知の合成法を用いて作製する場合には、以下に示す公報記載の方法等を利用して製造することができるが、これらに何ら制限されるものではない。例えば、特開平08-012712号公報(シクロオレフィンコポリマーの製造法)、特開平07-224122号公報(シクロオレフィンコポリマーおよびその調製法)、特開平06-271628号公報(シクロオレフィンコポリマーの製造法)、特開平06-271627号公報(シクロオレフィンコポリマーの製造法)、特開2020-066683号公報(ノルボルネン系開環重合体水素化物、樹脂組成物および成形体)、再表2016/143424号公報(シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物、シンジオタクチックジシクロペンタジエン開環重合体、およびそれらの製造方法)、特開2015-086288号公報(シクロオレフィンモノマー、重合性組成物、樹脂成形体、架橋性樹脂成形体および架橋樹脂成形体)等に記載の方法を用いて製造することができるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0042】
また、アダプタ形成用材料中の「主成分」の含有量は、主成分と添加剤との合計量に対し、50質量%以上であればよいが、好ましくは、上記したように65~97質量%であり、より好ましくは70~95質量%である。
【0043】
<添加剤>
前記アダプタ形成用材料は、上記主成分のシクロオレフィン系樹脂に加えて、添加剤として、α-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体を含むことが好ましい。α-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体としては、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、変性ポリオレフィン、低密度ポリエチレン(LDPE)、および水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)などが挙げられる。優れた弾性および靭性を付与し得る観点から、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)が好ましい。
【0044】
前記SEBS中のスチレン含有量、および前記主成分と前記添加剤との合計量に対する前記添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体の含有量は、上記した通りである。
【0045】
前記α-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体は、従来公知の合成法を用いて作製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記α-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体の市販品としては、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック(水添)共重合体(SEBS)では、JSR株式会社製、DYNARON(登録商標)8300P(スチレン含有量9質量%)、8600P(スチレン含有量15質量%)、8903P(スチレン含有量35質量%)、9901P(スチレン含有量53質量%);KRATON(クレイトン)社製、A1536(スチレン含有量42質量%)、A1535(スチレン含有量58質量%)などが挙げられる。エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)では、三井化学株式会社製、三井EPT X-3012Pなどが挙げられる。エチレン-メタクリル酸共重合体では、三井・ダウポリケミカル株式会社製、ニュクレルAN4213Cなどの各ニュクレル製品などが挙げられる。低密度ポリエチレン(LDPE)では、日本ポリエチレン株式会社製、ノバテック(登録商標)LD LJ902などが挙げられる。
【0046】
前記α-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体を上記市販品ではなく、従来公知の方法を用いて製造する場合には、以下に示す公報に記載の方法等を利用して製造することができるが、これらに何ら制限されるものではない。例えば、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)については、特開2004-083622号公報(ゴム組成物及びその製造方法並びにゴム成形品及びその製造方法)の段落「0015」~「0016」に記載の方法を用いることができる。詳しくは、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)の水添の方法、反応条件については、特に限定はなく、通常は、20~150℃、0.1~10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下に水添することによって行われる。この場合、水添率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、又は反応時間等を変えることにより任意に選定することができる。また、上記水添触媒として通常は、元素周期表第11族、第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族、第10族金属のいずれかを含む化合物、例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を用いることができる。上記水添触媒として具体的には、例えば、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物、Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒、Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒、Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体、及び水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等が挙げられる。これらの中でも、Ti、Zr、Hf、Co、Niのいずれかを含むメタロセン化合物は、不活性有機溶媒中、均一系で水添反応できる点で好ましい。更に、Ti、Zr、Hfのいずれかを含むメタロセン化合物がより好ましい。特にチタノセン化合物とアルキルリチウムとを反応させた水添触媒は安価で工業的に特に有用な触媒であるので好ましい。水添触媒の具体的な例として、例えば、特開平1-275605号公報、特開平5-271326号公報、特開平5-271325号公報、特開平5-222115号公報、特開平11-292924号公報、特開2000-37632号公報、特開昭59-133203号公報、特開昭63-5401号公報、特開昭62-218403号公報、特開平7-90017号公報、特公昭43-19960号公報、特公昭47-40473号公報に記載の水添触媒が挙げられる。尚、上記水添触媒は1種のみ用いてもよく、又は2種以上を併用することもできる。
【0047】
また、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)の製造方法については、特表2015-513584号公報(高流動水素化スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマーおよびその用途)の段落「0032」~「0049」に記載の方法などを用いることもできる。このうち、選択的に水素化された低粘度スチレン-ブタジエン-スチレン(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン水添ブロック共重合体;SEBS)の水素化は、先行技術において知られている幾つかの水素化または選択的な水素化法のいずれかにより実施することができる。このような水素化は、例えば、米国特許第3,595,942号明細書;同第3,634,549号明細書;同第3,670,054号明細書;同第3,700,633号明細書等において教示されているような方法を用いて達成される。これらの方法は、芳香族環またはエチレン性不飽和結合を含むポリマーの水素化に適した触媒の作用に基づくものである。このような触媒または触媒前駆体は、アルキルアルミニウム、または元素周期表の第1族、第2族、もしくは第3族から選択される金属、特にリチウム、マグネシウムもしくはアルミニウムの水素化物などの適した還元剤と組み合わせた、ニッケルまたはコバルトなどの第8族、第9族、第10族の金属を含むことが好ましい。この調製は、適した溶媒または希釈剤中で20~80℃の温度で行うことができる。有用な他の触媒としてチタンベースの触媒系が含まれる。
【0048】
また、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)以外のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体についても、従来公知の方法を用いて製造することができる。
【0049】
(他の添加剤)
前記アダプタ形成用材料には、主成分および添加剤:α-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体以外の他の添加剤として、例えば、着色剤、安定剤、無機充填剤などが本発明の効果を損なわない範囲で利用可能である。具体的には、前記着色剤には、染料;硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなどの顔料が挙げられる。安定剤には、ヒンダードフェノール、ヒドロキノン、チオエーテル、ホスファイト類およびこれらの置換体および組合せなどの酸化防止剤および熱安定剤、レゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、ステアリン酸、モンタン酸などの高級脂肪酸およびその金属塩、エステル、ハーフエステル、ステアリルアルコールの誘導体などをはじめとする種々の滑剤および離型剤、酸化アンチモンなどの難燃助剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリアルキレングリコールなどの帯電防止剤、結晶化促進剤、シランカップリング剤などが挙げられる。前記無機充填剤には、ガラスファイバー、カーボンファイバー、セラミックファイバー等の繊維状のもの、マイカ、ガラスビーズ、シリカ、チタン酸バリウム、ハイドロタルサイト、ゼオライト等の粒状、粉状、板状のものが挙げられる。他の添加剤は、主成分や添加剤の諸性質を考慮して配合量が適宜決められる。
【0050】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【実施例0051】
<サンプルの作製>
以下に示す実施例のうち主成分のシクロオレフィン系樹脂と、添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体とを用いる場合、これらを押出機を用いて溶融混錬した。そして溶融混錬した材料を射出成形機等を用いて射出成型して各サンプルを作製した。実施例のうち添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体を用いず、主成分のシクロオレフィン系樹脂を単独で用いる場合、混錬を行う必要がない(押出機も必要がない)ため、主成分の樹脂材料を射出成形機等を用いて(加熱して)溶融し射出成型して各サンプルを作製した。以下に示す実施例及び比較例では、添加剤を併用する場合は押出機を用いて、表1に示す主成分および添加剤の混合比率で溶融混練した。添加剤を用いない場合は、表1に示す主成分のみを用いた。その後、
図1に示すガス計測用アダプタの金型内に射出して成形を行い、
図1に示すガス計測用アダプタのサンプルを作製した。詳しくは以下に説明する。
【0052】
(実施例1-1)
射出成形機(株式会社ソディック製、商品名:射出成型機LA40)を用い、アダプタ形成用材料として、以下に示すシクロオレフィン系樹脂を主成分として単独で使用した。この主成分のシクロオレフィン系樹脂からなるアダプタ形成用材料を射出成形機に投入し、加熱溶融した後、
図1に示すガス計測用アダプタの金型内に射出して成形を行い、ガス計測用アダプタのサンプル1-1を作製した。
【0053】
なお、実施例1-1のアダプタ形成用材料の主成分のシクロオレフィン系樹脂には、シクロオレフィンコポリマー(COC)である三井化学株式会社製、APEL(登録商標)6509(上記式(1b)で表されるノルボルネン類とα-オレフィンとの付加共重合体)を用いた。
【0054】
(実施例1-2)
アダプタ形成用材料として、主成分のシクロオレフィン系樹脂90質量%と、添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体10質量%とを併用した。これらの主成分と添加剤とからなるアダプタ形成用材料を押出機を用いて溶融混練を行った。その後、溶融混錬した材料を実施例1-1と同じ射出成形機を用いて
図1に示すガス計測用アダプタの金型内に射出して成形を行い、ガス計測用アダプタのサンプル1-2を作製した。
【0055】
なお、シクロオレフィン系樹脂としては、実施例1-1と同じ製品を用いた。添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体としては、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)であるJSR株式会社製、DYNARON(登録商標)8300P(スチレン含有量9質量%)を用いた。
【0056】
(実施例1-3)
添加剤のスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)として、DYNARON(登録商標)8300Pに代えて、JSR株式会社製のDYNARON(登録商標)8600P(スチレン含有量15質量%)を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-3を作製した。
【0057】
(実施例1-4)
主成分と添加剤との混合比率を主成分95質量%と、添加剤5質量%とに変更し、さらに添加剤のスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)として、DYNARON(登録商標)8300Pに代えて、JSR株式会社製のDYNARON(登録商標)8903(スチレン含有量35質量%)を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-4を作製した。
【0058】
(実施例1-5)
主成分と添加剤との混合比率を主成分90質量%と、添加剤10質量%とに変更したこと以外は、実施例1-4と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-5を作製した。
【0059】
(実施例1-6)
主成分と添加剤との混合比率を主成分95質量%と、添加剤5質量%とに変更し、さらに添加剤のスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)として、DYNARON(登録商標)8300Pに代えて、JSR株式会社製のDYNARON(登録商標)9901(スチレン含有量53質量%)を用いた以外は、実施例1-2と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-6を作製した。
【0060】
(実施例1-7)
主成分と添加剤との混合比率を主成分90質量%と、添加剤10質量%とに変更したこと以外は、実施例1-6と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-7を作製した。
【0061】
(実施例1-8)
主成分と添加剤との混合比率を主成分85質量%と、添加剤15質量%とに変更したこと以外は、実施例1-6と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-8を作製した。
【0062】
(実施例1-9)
主成分と添加剤との混合比率を主成分95質量%と、添加剤5質量%とに変更し、さらに添加剤のスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)として、DYNARON(登録商標)8300Pに代えて、KRATON(クレイトン)社製のA1536(スチレン含有量42質量%)を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-9を作製した。
【0063】
(実施例1-10)
主成分と添加剤との混合比率を主成分90質量%と、添加剤10質量%とに変更したこと以外は、実施例1-9と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-10を作製した。
【0064】
(実施例1-11)
添加剤のスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)として、DYNARON(登録商標)8300Pに代えて、KRATON(クレイトン)社製のA1535(スチレン含有量58質量%)を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-11を作製した。
【0065】
(実施例1-12)
主成分と添加剤との混合比率を主成分85質量%と、添加剤15質量%とに変更したこと以外は、実施例1-11と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-12を作製した。
【0066】
(実施例1-13)
添加剤として、DYNARON(登録商標)8300Pに代えて、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)である三井化学株式会社製、三井EPT X-3012Pを用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-13を作製した。
【0067】
(実施例1-14)
添加剤として、DYNARON(登録商標)8300Pに代えて、エチレン-メタクリル酸共重合体である三井・ダウポリケミカル株式会社製、ニュクレルAN4213Cを用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-14を作製した。
【0068】
(実施例1-15)
添加剤として、DYNARON(登録商標)8300Pに代えて、低密度ポリエチレン(LDPE)である日本ポリエチレン株式会社製、ノバテック(登録商標)LD LJ902を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル1-15を作製した。
【0069】
(実施例2-1)
アダプタ形成用材料として、以下に示すシクロオレフィン系樹脂を単独で使用した。このシクロオレフィン系樹脂からなるアダプタ形成用材料を実施例1-1と同じ射出成形機に投入し、加熱溶融した後、
図1に示すガス計測用アダプタの金型内に射出して成形を行い、ガス計測用アダプタのサンプル2-1を作製した。
【0070】
なお、シクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンコポリマー(COC)であるTopas Advanced Polymers GmbH社製、TOPAS(登録商標)8007(ジシクロペンタジエンとエチレンから合成されたノルボルネンとエチレンを、メタロセン触媒を用いて共重合して得られた上記式(1a)で表されるコポリマーの1種)を用いた。
【0071】
(実施例2-2)
アダプタ形成用材料として、主成分のシクロオレフィン系樹脂95質量%と、添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体5質量%とを併用した。これらの主成分と添加剤とからなるアダプタ形成用材料を実施例1-2と同じ押出機を用いて溶融混練を行った。その後、溶融混錬した材料を実施例1-1と同じ射出成形機を用いて
図1に示すガス計測用アダプタの金型内に射出して成形を行い、ガス計測用アダプタのサンプル2-2を作製した。
【0072】
なお、シクロオレフィン系樹脂としては、実施例2-1と同じ製品を用いた。添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体としては、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)であるJSR株式会社製、DYNARON(登録商標)8903(スチレン含有量35質量%)を用いた。
【0073】
(実施例2-3)
添加剤のスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)として、DYNARON(登録商標)8300Pに代えて、JSR株式会社製のDYNARON(登録商標)9901(スチレン含有量53質量%)を用いたこと以外は、実施例2-2と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル2-3を作製した。
【0074】
(実施例2-4)
主成分と添加剤との混合比率を主成分90質量%と、添加剤10質量%とに変更したこと以外は、実施例2-3と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル2-4を作製した。
【0075】
(実施例2-5)
主成分と添加剤との混合比率を主成分85質量%と、添加剤15質量%とに変更したこと以外は、実施例2-3と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル2-5を作製した。
【0076】
(実施例2-6)
添加剤のスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)として、DYNARON(登録商標)8903に代えて、KRATON(クレイトン)社製、A1536(スチレン含有量42質量%)を用いたこと以外は、実施例2-2と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル2-6を作製した。
【0077】
(実施例2-7)
主成分と添加剤との混合比率を主成分85質量%と、添加剤15質量%とに変更し、さらに添加剤のスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)として、DYNARON(登録商標)8903に代えて、KRATON(クレイトン)社製、A1535(スチレン含有量58質量%)を用いたこと以外は、実施例2-2と同様にして、ガス計測用アダプタのサンプル2-7を作製した。
【0078】
(実施例3-1)
アダプタ形成用材料として、以下に示すシクロオレフィン系樹脂を単独で使用した。この主成分のシクロオレフィン系樹脂からなるアダプタ形成用材料を実施例1-1と同じ射出成形機に投入し、加熱溶融した後、
図1に示すガス計測用アダプタの金型内に射出して成形を行い、ガス計測用アダプタのサンプル3-1を作製した。
【0079】
なお、シクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンコポリマー(COC)であるTopas Advanced Polymers GmbH社製、TOPAS(登録商標)5013(ジシクロペンタジエンとエチレンから合成されたノルボルネンとエチレンとを、メタロセン触媒を用いて共重合して得られた上記式(1a)で表されるコポリマーの1種)を用いた。
【0080】
(実施例3-2)
アダプタ形成用材料として主成分のシクロオレフィン系樹脂70質量%と、添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体30質量%とを併用した。これらの主成分と添加剤とからなるアダプタ形成用材料を実施例1-2と同じ押出機を用いて溶融混練を行った。その後、溶融混錬した材料を実施例1-1と同じ射出成形機を用いて
図1に示すガス計測用アダプタの金型内に射出して成形を行い、ガス計測用アダプタのサンプル3-2を作製した。
【0081】
なお、シクロオレフィン系樹脂としては、実施例3-1と同じ製品を用いた。添加剤のα-オレフィン由来の構造単位を有する(共)重合体としては、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)であるJSR株式会社製、DYNARON(登録商標)901(SEBS中のスチレン含量53質量%)を用いた。
【0082】
(実施例4)
アダプタ形成用材料として、以下に示すシクロオレフィン系樹脂を単独で使用した。このシクロオレフィン系樹脂からなるアダプタ形成用材料を実施例1-1と同じ射出成形機に投入し、加熱溶融した後、
図1に示すガス計測用アダプタの金型内に射出して成形を行い、ガス計測用アダプタのサンプル4を作製した。
【0083】
なお、シクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)である日本ゼオン株式会社製、ZEONOR(登録商標)1060Rを用いた。
【0084】
(実施例5)
アダプタ形成用材料として、以下に示すシクロオレフィン系樹脂を単独で使用した。このシクロオレフィン系樹脂からなるアダプタ形成用材料を実施例1-1と同じ射出成形機に投入し、加熱溶融した後、
図1に示すガス計測用アダプタの金型内に射出して成形を行い、ガス計測用アダプタのサンプル5を作製した。
【0085】
なお、シクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)である日本ゼオン株式会社製、ZEONOR(登録商標)1020Rを用いた。
【0086】
(比較例1)
アダプタ形成用材料として、既存の硬質樹脂材料を使用した。この硬質樹脂材料からなるアダプタ形成用材料を実施例1-1と同じ射出成形機に投入し、加熱溶融した後、
図1に示すガス計測用アダプタの金型内に射出して成形を行い、ガス計測用アダプタの比較用サンプル1を作製した。
【0087】
なお、硬質樹脂材料としては、PETG樹脂(PET樹脂中のEGの30~40%程度をシクロヘキサンジメタノールで置き換えたポリマー;グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)であるイーストマン・ケミカル・ジャパン株式会社製、イースターコポリエステル DN011を用いた。
【0088】
<成形性の評価>
実施例及び比較例で得られたガス計測用アダプタのサンプルの窓部(φ5.5mm、厚さ0.12mm)が成形できることを目視確認した。
【0089】
-成形性の評価基準-
○:製品の歩留まりが良く、一体かつ薄肉成形しても、全てのサンプル(サンプル数10個;n=10)で、薄肉の窓部が十分な形(精度)に成形できている。
【0090】
×:製品の歩留まりが悪く、一体かつ薄肉成形することで、流動性不足により、多くのサンプル(サンプル数10個;n=10)で、薄肉の窓部が十分な形(精度)に成形できていない。
【0091】
<赤外線透過率の評価>
実施例及び比較例で得られたガス計測用アダプタのサンプルのセンサ取付部にセンサ(を設置したときに、窓部(有効部)を透過する4.27±0.01μmの赤外線の強度を測定した。なお、窓部が十分な形(精度)に成形できていない比較例1については、評価できないため、表1では「評価不可」とした。
【0092】
-赤外線透過率の評価基準-
表1には、COC(APEL6509)を1.00としたときの比を記載した。0.90以上を合格とした。
【0093】
<耐衝撃落下の評価>
実施例及び比較例で作製したサンプルにつき、以下の条件で落下試験を行い、試験後損傷(ひび割れや係止部材(ツメ)の折れなど)がないことを、目視で確認した。なお、窓部が十分な形(精度)に成形できていない比較例1については、評価できないため、表1では「評価不可」とした。
【0094】
〔試験条件〕
・落下高さ :122cm
・落下数 :全部で26回の落下
・落下の仕方 :26回とも
図1の第二接続アダプタ12側を手で持って、サンプル(最下端部まで)の高さが122cmとなるように高さ調整した後、手を放して自由落下させた。
【0095】
・サンプル数 :3個(n=3)。
【0096】
-耐衝撃落下の評価基準-
破損個数0個:落下時の耐衝撃性が極めて良好である
破損個数1個:落下時の耐衝撃性が良好である
破損個数2個:落下時の耐衝撃性がやや良好である
破損個数3個:落下時の耐衝撃性が低い。
【0097】
耐衝撃落下については、破損個数なし(0個)から3個までを表1に示す。
【0098】
<色の評価>
実施例及び比較例で作製したサンプルにつき、流管部(厚さ3.5mmの箇所)を目視で、視認可、視認不可の2段階で評価した。結果を表1に示す。なお、窓部が十分な形(精度)に成形できていない比較例1についても、流管部は、評価可能なため色評価した。
【0099】
なお、色の評価に関しては、視認不可(白色)であっても問題なく使用可能である。ただし、アダプタ内部の様子が常時、可視化により観察できた方が、アダプタ内部にひび割れなどの破損が生じた際に発見しやすい点で優れている。かかる観点からは、視認可(無色透明)のものが好ましい。
【0100】