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特開2022-104109FRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104109
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】FRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 167/08 20060101AFI20220701BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20220701BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C09D167/08
C09D4/02
C09D5/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219116
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴博
(72)【発明者】
【氏名】奥田 英明
(72)【発明者】
【氏名】水口 順子
(72)【発明者】
【氏名】馬野 大嗣
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA202
4J038DD121
4J038FA072
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA09
4J038PA07
4J038PA17
4J038PB07
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】 本発明は、溶剤としてキシレンを殆ど使用せず、乾燥性、耐湿性を向上させて、LED電球に対応した自動車灯具反射部材向けの下塗り塗料として使用できる組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は多官能(メタ)アクリレート(A)および油変性アルキド樹脂(B)を含む金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物であって、
前記多官能(メタ)アクリレート(A)が、分子内に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ前記多官能(メタ)アクリレート(A)および前記油変性アルキド樹脂(B)の総量100質量部に対して、25~45質量部の量で含有し、
前記油変性アルキド樹脂(B)が、前記多官能(メタ)アクリレート(A)および前記油変性アルキド樹脂(B)の総量100質量部に対して、55~75質量部の量で含有し、かつ前記油変性アルキド樹脂(B)が、油長35~50%、酸価0.01~10mgKOH/g、水酸基価80~130mgKOH/gおよび重量平均分子量80,000~150,000を有する、金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能(メタ)アクリレート(A)および油変性アルキド樹脂(B)を含む金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物であって、
前記多官能(メタ)アクリレート(A)が、分子内に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ前記多官能(メタ)アクリレート(A)および前記油変性アルキド樹脂(B)の総量100質量部に対して、25~45質量部の量で含有し、
前記油変性アルキド樹脂(B)が、前記多官能(メタ)アクリレート(A)および前記油変性アルキド樹脂(B)の総量100質量部に対して、55~75質量部の量で含有し、かつ前記油変性アルキド樹脂(B)が、油長35~50%、酸価0.01~10mgKOH/g、水酸基価80~130mgKOH/gおよび重量平均分子量80,000~150,000を有する、金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
【請求項2】
前記油変性アルキド樹脂(B)が、トール油、大豆油、サフラワー油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油及びこれらの油脂の混合物よりなる群から選択された少なくとも1種によって変性されてなるものである、請求項1記載の金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
【請求項3】
前記油変性アルキド樹脂(B)の変性に用いる油脂成分(b)は、単独または2種以上の油脂を混合したときのヨウ素価が80~160を有するものである、請求項1または2に記載の金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物が、更に光重合開始剤(C)を、前記成分(A)および(B)の総量100質量部に対して、1~15質量部の量で配合する、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物が、更に表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、密着性付与剤およびそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
【請求項6】
前記活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物が、更に、有機顔料、無機顔料、有機ビーズ、無機ビーズおよびそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車灯具などの反射板部材は、軽量で耐食性、耐熱性、耐衝撃性に優れる観点から、ガラス繊維などのフィラーで強化した不飽和ポリエステル樹脂(BMC:バルクモールディングコンパウンド)などの繊維強化プラスチック(以下、「FRP」とも言う。)の表面を鏡面にして使用することが多い。FRPに鏡面を形成する方法として、アルミニウムなどの金属を蒸着やスパッタする方法が一般的であるが、繊維の偏析や混入した気泡などにより、平滑な素材表面を得ることが難しく、通常FRP表面に下塗り塗料を塗装硬化した後に金属の蒸着を行うことで鏡面を得る方法がとられている。
【0003】
この用途に使用される下塗り塗料は、電球、エンジン、太陽光などの耐熱性に加えて、真空蒸着やスパッタ工程にて、金属を溶融する熱源や高温のまま塗膜に衝突付着する金属への耐熱性も必要とされ、従来から塗膜硬度などが優れる活性エネルギー線硬化型塗料が用いられてきた。
【0004】
上記下塗り塗料には、繊維が偏析した不均一な素材表面への密着と蒸着金属との密着を両立させ、耐食性、耐熱性、繰り返し冷熱耐性にすぐれる油変性のアルキド樹脂が処方されてきた。油変性アルキド樹脂は、大豆油などの単官能脂肪酸、フタル酸などの2官能以上の酸もしくはその酸無水物とエチレングリコールなどの2官能以上のアルコールの脱水縮合反応によって製造される。脱水縮合反応に用いる溶剤は、水の溶融性が低く、脱水縮合反応温度に適した沸点が求められ、従来からキシレン(オルト型、メタ型、パラ型およびエチルベンゼンなどの混合物)が一般に用いられてきた。また、キシレンは塗料用シンナーとしても使用できるため脱溶剤や溶剤置換などをすることなく使用できた。
【0005】
しかしながら、キシレンは、ベンゼン、トルエンと並んで有害物質として人体や水中生物などへの影響があり、近年、一定量以上のキシレンを含有する塗料は適用範囲が厳しく制限されている。キシレン代替え溶剤によりアルキド樹脂を製造する試みは行われているが、代替え溶剤が塗料のシンナーには適していないため、塗装作業性や塗装外観などが低下する。また、キシレンの脱溶剤も試されているが、脱溶剤にかかるエネルギーが大きく、脱溶剤後のアルキド樹脂の安定性が悪くなり、貯蔵安定性が低下するなどの問題があった。アルキド樹脂を用いない金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物の開発も行われているが、様々な素材の組み合わせである自動車灯具の反射板部材には、素材の選択性の幅が狭い。
【0006】
近年、自動車灯具の光源としてのLED電球の使用が増加しており、それにともなって灯具内部に方向指示機能が組み込まれるなど、反射部材は複雑な形状に変化し、電子部品の一部となっている。このような部材に塗装を行った場合、部位による乾燥差、膜厚差が生じやすく、従来塗料よりも脱溶剤性が良く、膜厚の許容範囲の広い塗料が求められている。また、省エネ、環境対応の観点からUV照射前の脱溶剤工程であるプレヒートも低温化、短時間化が求められているが高沸点であるキシレンによって制限かかっている。旧来自動車灯具に使用されたフィラメントやHID型の電球は、光の発生とともに大きな熱を発していたため、雨や洗車で灯具内部に水が浸入しても灯具の使用により内部空間は乾燥していた。しかし、光放射方向へ熱が発生しないLED電球では、灯具内部空間の湿気が除去できないため、塗膜の耐湿性向上が求められている。2020年の自動車カタログをみるとフィラメントやHID電球を使用した自動車は存在せず、ほぼLED電球化されている。
【0007】
特許文献1(WO1995/032250号)には、少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と、油変性アルキド樹脂とを含有するFRP用金属蒸着用紫外線硬化型下塗り液状組成物が記載されているが、この組成物は希釈剤としてキシレンが必須であるので、キシレンの使用を制限する用途では使用できない。特許文献1のアルキド樹脂を用いた組成物をLED電球向けの自動車灯具反射部材に適用した場合、高沸点のキシレンを多く含むため、複雑な形状の部材では、プレヒート乾燥工程で風通りの悪い部位や厚膜部位で乾燥不良による白化や蒸着後の鏡面不良を生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO1995/032250号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特許文献1の下塗り塗料組成物を改良して、溶剤としてキシレンを殆ど使用せず、乾燥性、耐湿性を向上させて、LED電球に対応した自動車灯具反射部材向けの下塗り塗料として使用できる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
多官能(メタ)アクリレート(A)および油変性アルキド樹脂(B)を含む金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物であって、
前記多官能(メタ)アクリレート(A)が、分子内に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ前記多官能(メタ)アクリレート(A)および前記油変性アルキド樹脂(B)の総量100質量部に対して、25~45質量部の量で含有し、
前記油変性アルキド樹脂(B)が、前記多官能(メタ)アクリレート(A)および前記油変性アルキド樹脂(B)の総量100質量部に対して、55~75質量部の量で含有し、かつ前記油変性アルキド樹脂(B)が、油長35~50%、酸価0.01~10mgKOH/g、水酸基価80~130mgKOH/gおよび重量平均分子量80,000~150,000を有する、金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
[2]
前記油変性アルキド樹脂(B)が、トール油、大豆油、サフラワー油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油及びこれらの油脂の混合物よりなる群から選択された少なくとも1種によって変性されてなるものである、[1]の金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
[3]
前記油変性アルキド樹脂(B)の変性に用いる油脂成分(b)は、単独または2種以上の油脂を混合したときのヨウ素価が80~160を有するものである、[1]または[2]に記載の金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
[4]
前記活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物が、更に光重合開始剤(C)を、前記成分(A)および(B)の総量100質量部に対して、1~15質量部の量で配合する[1]~[3]のいずれかに記載の金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
[5]
前記活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物が、更に表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、密着性付与剤およびそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
[6]
前記活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物が、更に、有機顔料、無機顔料、有機ビーズ、無機ビーズおよびそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、塗料配合中のキシレン含有量が1%未満であっても貯蔵安定性、塗装外観に優れた金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物を提供する。本発明では、油変性アルキド樹脂が油長35~50%、酸価0.01~10mgKOH/g、水酸基価80~130mgKOH/gおよび重量平均分子量80,000~150,000に調整することにより、キシレンの含有量を大きく減らすことが可能になった。
【0012】
本発明は、難接着素材(具体的には、不飽和ポリエステル樹脂)の自動車灯具反射部材への密着性、省エネ、環境対応、LED電球へ対応する観点から、耐湿性の向上とキシレンを極力含まないアルキド樹脂を用いた金属蒸着を行うFRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記FRP用活性エネルギー線硬化性下塗り塗料は、多官能(メタ)アクリレート(A)および油変性アルキド樹脂(B)を含む活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物であって、多官能(メタ)アクリレート(A)が、分子内に4個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、かつ前記多官能性(メタ)アクリレート(A)および前記油変性アルキド樹脂(B)の総量100質量部に対して、25~45質量部の量で含有し、前記油変性アルキド樹脂(B)が、前記多官能(メタ)アクリレート(A)および前記油変性アルキド樹脂(B)の総量100質量部に対して、55~75質量部の量で含有し、かつ前記油変性アルキド樹脂(B)が、油長35~50%、酸価0.01~10mgKOH/g、水酸基価80~160mgKOH/gおよび重量平均分子量80,000~150,000を有するものである。
【0014】
多官能(メタ)アクリレート(A)
本発明の活性エネルギー線硬化性塗料下塗り塗料組成物の成分(A)は、分子内に少なくとも4個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートである。「少なくとも4個」の(メタ)アクリロイル基を有することが必要であるが、例えば多価アルコールとアクリル酸の脱水反応より合成される化合物の場合、1分子当たりの(メタ)アクイロイル基が平均3.5個以上のものを4官能の多官能(メタ)アクリレートとして考えて使用することができる。本発明においては、上記多官能(メタ)アクリレートは、紫外線照射によって光重合開始剤の作用により重合し、硬化して、下塗り塗膜を形成する。
【0015】
上記多官能(メタ)アクリレート(A)としては、具体的には、(a)少なくとも4個以上のヒドロキシル基を有するポリオールと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるもの、(b)分子内に末端イソシアネット基を少なくとも4個有する化合物に、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加して得られるウレタンアクリレート等を挙げることができる。
【0016】
(a)少なくとも4個のヒドロキシル基を有するポリオールと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるもの多官能(メタ)アクリレート(A)
少なくとも4個のヒドロキシル基を有する多価アルコールと(メタ)アクリレートとを脱アルコール化反応することによって、調製することができ、多官能(メタ)アクリレート(A)の具体例として、例えば、平均官能基数が3.5以上のペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの混合物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;平均官能基数が3.5以上のジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートとジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートの混合物;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート;平均官能基数が4.0以上のトリトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートとトリトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレートの混合物;平均官能基数が5.5以上のジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの混合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの混合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;平均官能基数が6.5以上のトリペンタエリスリトール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート(A)は、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
(b)分子内に少なくとも4個の末端イソシアヌレート基を有する化合物に、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加して得られるウレタン型の多官能(メタ)アクリレート(A):
水酸基含有(メタ)アクリレート化合物として、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。分子内に少なくとも4個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物として、例えば、イソホロンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネー、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(cis-,trans-混合)およびこれらのヌレート型三量体などが挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、分子内の平均官能基数が3.5以上になるように、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を単独または2種以上併用してもよい。
【0018】
本発明の下塗り塗料組成物は、上記多官能(メタ)アクリレート(A)を、多官能(メタ)アクリレート(A)と油変性アルキド樹脂(B)との総量100質量部に対して、25~45質量部含有させて構成する。25質量部未満であると塗装外観、光沢、耐熱性、耐水性、耐湿性に劣り、45質量部を超えると密着性が低下するので、上記範囲に限定される。好ましくは、30~40質量部である。
【0019】
油変性アルキド樹脂(B)
本発明の成分(B)は、油変性アルキド樹脂である。上記油変性アルキド樹脂(B)は、FRPに対する密着性を付与する。本発明で使用する油変性アルキド樹脂(B)は、油長35~50%、酸価0.01~10mgKOH/g、水酸基価80~130mgKOH/gおよび重量平均分子量80,000~150,000を有することが必要である。
【0020】
上記油変性アルキド樹脂は、多価アルコールと多塩基酸又はその酸無水物に加えて、更に、変性剤として、油脂又は油脂脂肪酸を使用することによって得ることができる。
【0021】
油変性アルキド樹脂に用いる多価アルコールとしては、特に限定されず、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチレングリコール,ボリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2-ヘキシレングリコール、1,6-へキサンジオール、ヘプタンジオール、1,10-デカンジオール、シクロへキサンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、3-シクロへキセン-1,1-ジメタノール、 4-メチル-3-シクロへキセン-1,1-ジメタノール、3-メチレン-1,5-ペンタンジオール、 (2-ヒドロキシエトキシ)-1-プロパノール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ブタノール、5-(2-ヒドロキシエトキン)-ペンタノール、3-(2-ヒドロキシプロポキシ)-1-ブタノール、4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-1-ブタノール、5-(2-ヒドロキシブロポキシ)-1-ペンタノール、1-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ブタノール、1-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ペンタノール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、ジグリセリン、ポリカプロラクトン、1,2,6-へキサントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタントリオ一ル、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、3-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-プロパンジオール、3-(2-ヒドロキシプロポキシ)-1,2-プロパンジオール、6-(2-ヒドロキシエトキシ)-1,2-へキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール、スピログリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシプロピロキシフェニル)プロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ジ(2-ヒドロキシエチル)-1-アセトキシエチルイソシアヌレート、ジ(2-ヒドロキシエチル)-2-アセトキシエチルイソシアヌレート、マニトール、グルコース等のポリオール類を挙げることができ、更に、これらのポリオール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-力プロラクトン、γ-プチロラクトン等を付加反応させて得られるアルキレンオキサイド変性又はラクトン変性のポリオール;過剰のこれらのポリオール類と多塩基酸又はその酸無水物とを縮合して得られる末端水酸基を有するポリエステルポリオール、 ポリエーテルポリオール等をも挙げることができる。
【0022】
上記多塩基酸又はその酸無水物としては、特に限定されず、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメット酸、メチルシクロへキセントリカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テトラヒドロフタル酸、へキサヒドロフタル酸、ハイミック酸、コハク酸、ドデシニルコハク酸、メチルグルタル酸、ピメリン酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、カービック酸,ヘット酸、アコニット酸、グルタコン酸、これらの酸無水物等を挙げることができる。
【0023】
上記変性剤として使用される油脂又は油脂脂肪酸としては特に限定されず、不乾性油、半乾性油及び乾性油のうちのいずれのものであっても良いが、好ましくはヨウ素価が80~160であるものである。このようなものとしては、例えば、トール油、大豆油、サフラワー油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油及びこれらの油脂の混合物よりなる群から選択されるものが挙げられる。ヨウ素価は、油脂100gに付加することのできるヨウ素のグラム数で表され、試料中の脂肪酸の二重結合の数が多いことを示す。ヨウ素価が80未満であると、二重結合を有する多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が低下して外観の低下や紫外線硬化性が低下して耐湿性、耐熱性を低下させてしまう。160を超えると乾性油成分が多くなるのでアルキド樹脂及び組成物の貯蔵安定性が低下する。
【0024】
本発明においては、上記油変性アルキド樹脂の油長は35~50%であることが必要である。「油長」とは、油の含有量を重量百分率に基づいて表した値をいう。油長が35%より小さいと、アルキド樹脂の粘度が上昇するため、塗装外観が悪化して鏡面に仕上がらない。また、油長が50%を超えると、アルキド樹脂の粘度が低下するため、塗装後に液垂れを起こして外観が低下する。
【0025】
本発明に使用する油変性アルキド樹脂(B)は、酸価を0.01~10mgKOH/gの範囲で有する必要がある。酸価が0.01mgKOH/gより少ないと、ほぼ反応終点まで反応するため時間を要し生産性が下がる。10mgKOH/gより大きいと、油変性アルキド樹脂および組成物の貯蔵安定性が低下し、塗膜の耐水性、耐湿性が低下する。酸価は、好ましくは1~7mgKOH/g、より好ましくは2~5mgKOH/gである。
【0026】
油変性アルキド樹脂(B)は、重量平均分子量80,000~150,000を有する必要がある。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定する。重量平均分子量が80,000より少ないと、塗膜の成膜性が低下してFRP素材の欠点を隠蔽できないため外観の低下や耐熱性が低下する。150,000を超えると、高粘度になり平滑な塗膜平面を得ることが難しく外観が低下して蒸着後に鏡面に仕上がらない。重量平均分子量は、好ましくは90,000~130,000であり、より好ましくは100,000~120,000である。
【0027】
本発明の下塗り塗料組成物は、上記油変性アルキド樹脂(B)を、多官能(メタ)アクリレート(A)と油変性アルキド樹脂(B)との総量100質量部に対して、55~75質量部含有させて構成する。55質量部未満であると密着性が低下する。75質量部を超えると、塗装外観、光沢、耐熱性、耐水性、耐湿性に劣る。油変性アルキド樹脂(B)は好ましくは、60~70質量部の量で添加される。
【0028】
光重合開始剤(C)
本発明の活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物は、更に光重合開始剤(C)を配合して、活性エネルギー線硬化性を付与する。光重合開始剤(C)としては特に限定されず、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、 ベンゾイン、α-メチルベンゾイン、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロルアントラキノン、2-アミノレアントラキノン、2-アミノアントラキノン、ベンゾフェノン、p-クロルベンゾフェノン、p-ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンゾフェノンメチルエーテル、メチルベンゾフェノン、4,4-ジクロロベンゾフェノン、4,4-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ジフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィ ド、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フエノキシアセトン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、ヒドロキシンクロへキシルフェニルケトン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、4-(2-アクリロキシ)オキシエトキシフェニル-2-ヒドロキシ-2-プロピルケトン、4-(2-ヒドロキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルフェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。これらのうち、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンが好ましい。本発明においては、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物は、上記光重合開始剤(C)を、多官能(メタ)アクリレート(A)および油変性アルキド樹脂(B)の合計100質量部に対して、1~15質量部含有させて構成する。1質量部未満であると活性エネルギー線硬化が進行せず、密着性、耐水性、耐湿性、耐熱性に劣り、15質量部を超えると活性エネルギー線照射後に未反応の光重合開始剤が残存し可塑剤となって密着性、耐水性、耐湿性、耐熱性などが低下する欠点がある。好ましくは、3~10質量部である。
その他の成分
本発明においては、上記成分に加えて、更に、溶剤、表面調整剤等を添加することができる。上記溶剤は、 本発明の下塗り塗料組成物を希釈して塗装しやすくする作用を有する。
【0030】
上記溶剤としては特に限定されないが、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、石油系溶剤等を挙げることができる。濡れ性を高めるためにトルエン、キシレン等を併用することもできるが、これらは極力使用しないことが本発明の活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物には好ましい。上記溶剤の配合量は、 必要に応じて増減することができるが、キシレンの使用量は、下塗り塗料組成物の固形分重量に対して、3重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは使用しない方が好ましい。キシレンの使用量が3重量%以上になると環境規制などがより厳しくなることに加えて、高い温度と長時間のプレヒート条件が必要となり経済上不利である。
【0031】
上記表面調製剤としては特に限定されず、例えば、フッ素系添加剤、セルロース系添加剤等を挙げることができる。上記フッ素系添加剤は、表面張力を低下させて濡れ性を高めることにより、FRP素材に塗布するときのハジキを防止する作用を有する。上記フッ素系添加剤の具体例としては、例えば、メガファックF-558(大日本インキ化学工業社製)等を挙げることができる。上記セルロース系添加剤は、塗布時の造膜性を付与する作用を有する
【0032】
本発明においては、上記フッ素系添加剤の量が多くなると、蒸看アルミニウムやトップコ一トの密着性の低下等をきたし、上記セルロース系添加剤の量が多くなると、本発明の下塗り塗料組成物の固形分含有量が低下し、塗膜が付着しにくくなるので、上記フッ素添加剤及び上記セルロース系添 加剤を併用することが好ましい。
【0033】
本発明においては、上記表面調製剤の添加量は、本発明の活性エネルギー線硬化性下塗り塗料組成物の固形分100重量に対して、上記フッ素系添加剤及び上記セルロース系添加剤の合計量が、0.01~3.0質量部が好ましい。上記フッ素系添加剤を単独で用いる場合には、0.01~1.0質量部が好ましく、上記セルロース系添 加剤を単独で用いる場合には、0.5~5.0質量部が好ましい。
【0034】
上記活性エネルギー線硬化性塗料組成物はさらに、必要に応じて、表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、密着性付与剤、有機または無機顔料、有機ビーズ、無機ビーズおよびそれらの混合物等の通常用いられる添加剤を含んでもよい。これらの添加剤は、当業者において通常用いられる量の範囲で含むことができる。
【0035】
上記表面調整剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系重合物のレベリング剤、ハジキ防止剤、アマイドワックスなどの液ダレ防止剤、塗料のつき回りを向上させる静電助剤、蒸着金属の防錆剤などがあげられる。紫外線吸収剤としては、特に限定されず、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系などの紫外線吸収剤があげられる。光安定剤としては、特に限定されず、ヒンダードアミン系などの光安定化剤があげられる。酸化防止剤としては、特に限定されず、ヒンダードフェノール系酸化防止剤があげられる。貯蔵安定剤としては、4-メトキシフェノール、ジブチルヒドロキシトルエンなどがあげられる。密着性付与剤としては、特に限定されず、ベンゾトリアゾール系密着付与剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などがあげられる。有機または無機顔料としては、特に限定されず、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、アルミペーストなどがあげられる。有機ビーズ、無機ビーズおよびそれらの混合物としては、特に限定されず、シリカ、アルミナ、アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、有機顔料や無機顔料を内包した有機ビーズなどがあげられる。
【0036】
塗装方法
本発明の下塗り塗料組成物を用いて、自動車反射鏡を製造するにあたっては、例えば、FRP成形品を水系洗浄剤で洗浄した後、本発明の下塗り塗料組成物を成形品の表面に塗布し、その後紫外線を照射してベースコート眉を形成する。上記塗布は、エアースプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装等によって行うことができる。
【0037】
上記塗布においては、乾燥膜厚が8~50μmとなるように行い、上記紫外線照射の前に、70~130℃で、2~25分の条件で、プレヒートして溶剤を蒸発させる。上記プレヒ一卜の温度が70℃未満であると、溶剤が塗膜に残存して耐水性、耐熱性に劣り、130℃超えると塗膜表面がすぐに乾燥して内包溶剤の乾燥不足による外観不良や光重合開始剤の昇華が起こり、紫外線硬化性が低下して塗膜物性が低下する欠点がある。 好ましくは、80~120℃、より好ましくは90~110℃の条件でプレヒートして溶剤を蒸発させる。上記プレヒ一卜の蒸発時間が2分未満であると溶剤が塗膜に残存して耐水性、耐熱性に劣り、25分を超えると光重合開始剤の昇華が起こり、紫外線硬化性が低下して塗膜物性が低下する欠点がある。蒸発時間は、好ましくは、2~10分、より好ましくは2~5分の件でプレヒートして溶剤を蒸発させる。
【0038】
上記紫外線照射は、 上記プレヒートの後、500~5000mJ/cm2の積算光量条件で、本発明の下塗り塗料組成物を硬化させることができる。上記積算光量が500mJ/cm2未満であると、紫外線硬化不足により塗膜物性が低下する欠点がある。5000mJ/cm2超えると紫外線硬化性には影響はないが、紫外線ランプからの熱により素材が変形して外観が低下する欠点がある。 上記紫外線照射は、上記紫外線照射にあたっては、 通常当該分野で用いられている高圧水銀灯、メタルハライドランプ、UV-LEDランプ、電子線、キセノンランプ等の活性エネルギー線を用いることができる。
【0039】
こうして形成された下塗り層(「プライマー層」と呼ぶこともある。)の上に、各種層(例えば金属層など)を設けることができる。金属蒸着層として、例えば、アルミ蒸着層、インジウム蒸着層およびスズ蒸着層などが挙げられる。金属蒸着層は、真空法、スパッタリング法(例えば、DCマグネトロンスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームスパッタなど)、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法などの公知の方法によって設けることができる。また、金属蒸着層がアルミ蒸着層である場合は、蒸着アルミ顔料を含む塗料組成物を塗装することによって形成することもできる。
【0040】
上記プライマー層の上に、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂成分を含む公知の塗料組成物などを用いて、コート層を設けてもよい。また、上記金属蒸着層の上に、必要に応じてコート層を設けてもよい。
【実施例0041】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0042】
4個以上の(メタ)アクイロイル基をもつ多官能(メタ)アクリレート(A)
以下には、実施例中で使用した分子内に4個以上の(メタ)アクイロイル基をもつ多官能(メタ)アクリレート(A)を例示する。多くは、市販品であり、具体的成分を解る範囲で記載する。合成したものもあるが、これについては、例示の後に合成方法を製造例1として記載する。実際に使用する時には、これらの多官能(メタ)アクリレートを単独または混合して、反応基数を制御して用いる。官能基数は表3~1~表4-2に記載している。
【0043】
分子内に4個以上の(メタ)アクイロイル基をもつ多官能(メタ)アクリレート(A)
分子内に4個以上の(メタ)アクイロイル基をもつ多官能(メタ)アクリレート(A)は、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとペンタアクリレートの混合物として新中村化学社製NKエステルA-DPH、NKエステルA-9500、東亜合成製アロニックスM-402、アロニックスM-403、三洋化成製ネオマーDA600;ペンタエリスリトールテトラアクリレートとトリアクリレートの混合物としてアロニックスM-450;アロニックスM-303、アロニックスM-305;NKエステルATMM-3L;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートとトリアクリレートの混合物として、アロニックスM-408を使用した。
【0044】
製造例1:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体とヒドロキシエチルアクリレートのウレタンアクリレートの製造
冷却管、攪拌装置、滴下装置、窒素導入管を備えた合成容器に、酢酸ブチル 100部と旭化成社製デュラネートTPA-100(3官能イソシアネート)100部を入れた 。さらに、2-ヒドロキシエチルアクリレートをイソシアネート基1当量に対して1当量となる量で加え、ジブチル錫ジラウリレートを0.1部、ジブチルヒドロキシトルエンを2-ヒドロキシエチルアクリレートに対して0.1%となる量で加え、室温で攪拌混合し、次いで、窒素雰囲気下80℃で攪拌しながら4時間反応させて、目的とするウレタンアクリレート(官能基数:3)を得た。
製造例2:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートとNKエステルATMM-3Lのウレタンアクリレートの製造
製造例1の旭化成社製デュラネートTPA-100(3官能イソシアネート)を1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートに変更し、2-ヒドロキシエチルアクリレートをNKエステルATMM-3Lに変更するほかは同様の方法で、目的とするウレタンアクリレート(官能基数:6)を得た。
【0045】
油変性アルキド樹脂(B)
以下に、実施例に使用した油変性アルキド樹脂の製造例を記載する。製造時の配合は、表1-1、1-2および表2にまとめたが、製造手法は以下の製造例に記載した。製造した実施例に使用するものおよび比較例に使用するものがあるが、その区別も表1-1~表2に記載する。表1-1~表2には、反応時の成分合計、生成水の量、得られた油変性アルキド樹脂のヨウ素価、油長(%)、水酸基価、酸価、重量平均分子量(Mw)、固形分(%)、キシレン量(%)も記載した。尚、表1-1~表2では、ヨウ素価より下の記載は測定値であるが、それ以外の数値は全て重量部を表示している。また、アルキド番号の下の欄は、実施例か比較例の違いと、比較例の場合どの点が違っているかを極めて簡単に記載している。
【0046】
【表1-1】
【0047】
【表1-2】
【0048】
【表2】
【0049】
製造例2:特許文献1(WO1995/032250号)のキシレンを多く含有する油変性アルキド樹脂の製造方法
アルキド-1:油長39%のトール油変性アルキド樹脂の合成
反応用コルベンにトール油脂肪酸2565g(8.88mol)とペンタエリスリトール963g(6.84mol)を仕込み、撹拌しながら、生成した水を系外に出しつつ2時間30分で230℃まで昇温した。その後、150℃まで冷却した後、ペンタエリスリトール582g(4.13mol)とエチレングリコール506g(8.16mol)を仕込み、撹拌しながら無水フタル酸2535g(17.13mol)、及び、循環用としてキシレン148gを加え、生成した水を系外に出しながら220℃まで3時間かけて昇温し、所定の酸価になるまで反応させた。反応終了後、キシレン5438gで希釈し、酸価5の透明な油長39%のトール油変性アルキド樹脂溶液を得た。トール油脂肪酸のヨウ素価は132、得られたアルキド樹脂の水酸基価は150mg/KOH・g、重量分子量は、112,000、固形分は53.3%、キシレンの含有量は46.7%であった。
【0050】
製造例3:キシレンをほとんど含まない油変性アルキド樹脂の製造方法
アルキド-2:油長39%のトール油変性アルキド樹脂の製造
反応用コルベンにトール油脂肪酸2565g(8.88mol)とペンタエリスリトール963g(6.84mol)を仕込み、撹拌しながら、生成した水を系外に出しつつ2時間30分で230℃まで昇温した。その後、150℃まで冷却した後、ペンタエリスリトール582g(4.13mol)とエチレングリコール506g(8.16mol)を仕込み、撹拌しながら無水フタル酸2535g(17.13mol)、及び、循環用としてキシレン148gを加え、生成した水を系外に出しながら220℃まで3時間かけて昇温し、所定の酸価になるまで反応させた。反応終了後、酢酸イソブチル5438gで希釈し、酸価4.8の透明な油長39%のトール油変性アルキド樹脂溶液を得た。得られたアルキド樹脂の水酸基価は150mg/KOH・g、重量分子量は、118,500、固形分は53.3%、キシレンの含有量は1.2%であった。
【0051】
製造例4:キシレンをほとんど含まない油変性アルキド樹脂の製造方法
アルキド-3:水酸基価 140mg/KOH・gの油長39%のトール油変性アルキド樹脂の製造
製造例3のエチレングリコール506g(8.16mol)を467.2g(6.85mol)に変更するほかは製造例3と同様の方法で酸価4.6の透明な油長39%のトール油変性アルキド樹脂溶液を得た。得られたアルキド樹脂の水酸基価は140mg/KOH・g、重量分子量は、108,000、固形分は53.1%、キシレンの含有量は1.2%であった。
【0052】
アルキド-4、5、20および21は、製造例4と同様の方法でエチレングリコールを調整することで目的とする水酸基価の油長39%のトール油変性アルキド樹脂を合成した。
【0053】
アルキド-6~8は、アルキド-5と同様の方法で行い、反応終点を調整することで目的とする酸価の油長39%のトール油変性アルキド樹脂を合成した。
【0054】
アルキド-9~12は、アルキド-5と同様の方法で行い、反応終点を調整することで目的とする重量分子量の油長39%のトール油変性アルキド樹脂を合成した。
【0055】
アルキド-13~17は、トール油脂肪酸とエチレングリコールの処方量調整する以外はアルキド-5と同様の方法で行い、目的とする重量分子量の油長のトール油変性アルキド樹脂を合成した。
【0056】
アルキド-18~19は、トール油脂肪酸をヒマシ油、サフラワー油に変更する以外は、アルキド-5と同様の方法で行い的とする油長39%の油変性アルキド樹脂を合成した。
【0057】
実施例1~42および比較例1~21
表3-1、3-2、4-1、4-2、表5および表6に示した配合で実施例および比較例の下塗り塗料を調整した。表3-1~4-2では、配合成分は、多官能性(メタ)アクリレート(A)、油変性アルキド樹脂(B)、光開始剤(ベンゾフェノンまたは1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)および表面調整剤(メガファックF-558)を含み、表5~表6では、多官能性(メタ)アクリレート(A)、2官能性モノマー(A)、油変性アルキド樹脂(B)、光開始剤(ベンゾフェノン)、表面調整剤(メガファックF-558)およびシンナーを含む。配合には、油変性アルキド樹脂(B)に含まれるキシレン量も記載している。メガファックF-558はDIC社から市販の表面調整剤である。表6中、「アル-番号」はアルキド-番号のことであり、アルキド樹脂の番号を意味する。
【0058】
FRP製自動車反射鏡の作製
不飽和ポリエステル樹脂を用いた自動車反射鏡用の繊維強化プラスチック(FRP)成形品をイソプロピルアルコール(IPA)で洗浄し、乾燥後、上記実施例および比較例で得られた各FRP用下塗り塗料組成物を、表3-1~表6に記載の所定の乾燥膜厚になるようにその表面にエアースプレー塗装した。その後、表3-1~6に記載の所定の条件でプレヒートして溶剤を除去し、80W/cmのオゾンタイプ拡散型の高圧水銀灯を使用し、3000mJ/cmの照射量で紫外線を照射することによって硬化させ、FRP成形品の表面にベースコート層を形成した。次に、得られたベースコート層の表面にアルミニウムを真空蒸着した後、更に、その上から上塗り塗料を、所定の乾燥膜厚になるようにエアースプレー塗布し、所定の条件で焼き付けてトップコート層を形成し、FRP製自動車反射鏡を作製した。
【0059】
得られたFRP製自動車反射鏡を、下記の項目について性能試験を行い、評価
した。結果を表3-1~表6に示した。
【0060】
【表3-1】
【0061】
【表3-2】
【0062】
【表4-1】
【0063】
【表4-2】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
性能試験評価方法
1.塗膜外観
外観を目視で観察して平滑な表面状態、虹、白化、クラック、フクレ等の欠陥の有無を検査し、欠陥のないものを◎、虹、白化、クラック、フクレ等の欠陥のないものを〇とし、僅かに欠陥のあるものを△とし、欠陥のあるものを×とした。
【0067】
2.光沢
目視観察により、光沢の良好なものを◎とし、充分なものを〇、部位差があるものを△、不充分なものを×とした。
【0068】
3.密着性
カッターナイフで反射鏡表面を100個の2mm巾の碁盤目に切り、この上か
らセロハン粘看テープを貼って急速に剥がすことによって、剥離しないで残った
碁盤目の数を数えて測定した。100/100残ったものを〇、99/100~
(23) WO95/032250
91/100残ったものを△、90/100以下残ったものを×とした。
【0069】
4.耐水性
40℃の恒温水槽に30時間浸漬し、取り出した後、軽く布でぬぐい、外観及
び密着性を上述の方法と同様にして評価した。
【0070】
5.耐湿性
55℃で湿度95%以上の蒸気槽に30時間浸漬し、取り出した後、軽く布でぬぐい、外観及び密着性を上述の方法と同様にして評価した。
【0071】
6.耐熱性
180℃の熱風循環式乾燥炉の中に96時間放置し、取り出した後、室温まで
放冷し、外観及び密着性を上述の方法と同様にして評価した。
【0072】
7.ポットライフ
40℃で3カ月間保存し、その貯蔵安定性を観察し、粘度変化が著しくなく、
ゲルの発生がないものを〇とし、粘度変化が著しいか又はゲル
が発生しているものを×と評価した。
【0073】
表3-1~6を見れば解るように、実施例の性能試験で全て良い結果が出ている。比較例1~8は旧特許(引用文献1)の実施例の油変性アルキド樹脂を用いたものであり、キシレンの配合量が高い。比較例9~15は、アルキド樹脂-5を用いたもので、比較例9と10は、油変性アルキド樹脂(B)の配合量が請求項の範囲を逸脱したものであり、比較例11~13は、多官能性(メタ)アクリレート(A)の官能基数が不足する例である。比較例14~21は油変性アルキド樹脂(B)の水酸基価や酸価などが請求項1の範囲を外れたものである。