(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104132
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】キャビテーション処理装置およびキャビテーション処理方法
(51)【国際特許分類】
B23P 17/00 20060101AFI20220701BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B23P17/00 A
B26F3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219154
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】澤越 純
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 章
(72)【発明者】
【氏名】徳道 世一
(72)【発明者】
【氏名】上坂 洋雄
【テーマコード(参考)】
3C060
【Fターム(参考)】
3C060AA16
3C060AB02
3C060CE11
3C060CE23
3C060CE28
(57)【要約】
【課題】部品の表面および深部に対して、均等にキャビテーション効果(残留応力等)を与えるキャビテーション処理装置を提供する。
【解決手段】キャビテーション処理装置は、キャビテーション流体CをワークWに噴射するノズル2と、ワークWに衝突して分岐したキャビテーション流体Cの流れ方向を内側に囲い込むように変える方向切換部3と、回転軸4aを有する駆動装置4であって、回転軸4aとともにワークWを回転させる駆動装置4と、回転軸4aの一端を支持する支持部5と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビテーション流体をワークに噴射するノズルと、
前記ワークに衝突して分岐した前記キャビテーション流体の流れ方向を内側に囲い込むように変える方向切換部と、
回転軸を有する駆動装置であって、前記回転軸とともに前記ワークを回転させる駆動装置と、
前記回転軸の一端を支持する支持部と、
を有する、キャビテーション処理装置。
【請求項2】
前記方向切換部は、
前記ワークに衝突して分岐した前記キャビテーション流体の流れ方向を変える側壁と、
前記側壁に衝突して流れ方向が変わった前記キャビテーション流体の流れ方向を変える底部と、を有する、
請求項1に記載のキャビテーション処理装置。
【請求項3】
前記方向切換部は、凹形状である、
請求項1又は2に記載のキャビテーション処理装置。
【請求項4】
前記ノズルは、前記ワークの中心よりも偏心した位置に、前記キャビテーション流体を噴射して衝突させる、
請求項1~3のいずれかに記載のキャビテーション処理装置。
【請求項5】
前記側壁の高さは、前記ワークに前記キャビテーション流体が衝突する高さよりも高い、
請求項1~4のいずれかに記載のキャビテーション処理装置。
【請求項6】
前記ワークと前記側壁との水平方向の距離は、前記ワークの半径の半分以下である、
請求項1~5のいずれかに記載のキャビテーション処理装置。
【請求項7】
キャビテーション流体をノズルから噴射してワークの上表面に衝突させることにより、前記キャビテーション流体の流れ方向を分岐させ、
分岐した前記キャビテーション流体を方向切換部の側壁に衝突させることにより、前記キャビテーション流体の流れ方向を変え、
前記側壁で流れ方向を変えた前記キャビテーション流体を前記方向切換部の底部に衝突させることにより、前記キャビテーション流体の流れ方向を変え、
前記底部で流れ方向を変えた前記キャビテーション流体を前記ワークの下表面に衝突させる、
キャビテーション処理方法。
【請求項8】
駆動装置により前記ワークを回転させる、
請求項7に記載のキャビテーション処理方法。
【請求項9】
前記ワークの中心よりも偏心した位置に、前記ノズルから噴射した前記キャビテーション流体を衝突させる、
請求項7又は8に記載のキャビテーション処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の表面にキャビテーション処理をするためのキャビテーション処理装置およびキャビテーション処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機部品等の高機能部品に対して、キャビテーション処理をすることによって、各種部品の表面に圧縮残留応力を付加することや、ディンプル形状を形成させることで、摩擦を緩和するとともに潤滑油の保持等が行われる。キャビテーション処理は、表面処理、ピーニング、洗浄、剥離、切断、バリ取り等の総称である。
【0003】
しかし、液体(例えば、水)を利用したキャビテーションは、原理的に解明されていないことも多く、キャビテーションを安定的に制御するための方法の確立や装置化は容易ではない。
【0004】
例えば、部品の内面を表面処理するためのシステムであって、内部に部品が位置付け可能なタンク、タンク内の流体であって、部品がタンク内に位置付けられたときに、部品を沈めることができる流体、流体内に沈められたノズルであって、第1の方向に向けられたキャビテーション流体の流れを生成するノズル、及び流体内に沈められた偏向ツールであって、キャビテーション流体の流れを、第1の方向から第2の方向に再方向付けする偏向面を有し、第1の方向が部品の内面から離れ、第2の方向が部品の内面に向かう偏向ツールを有する、システムが開示されている。(例えば、特開2020-157470号公報、以下、「特許文献1」参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、偏向ツールによってキャビテーション流体の流れ方向を変えることによって、複雑な形状のワーク内部にキャビテーション処理をすることができる。しかし、キャビテーション処理対象となるワークの狙った位置に確実にキャビテーションを与えるためには、改良の余地がある。
【0006】
例えば、キャビテーション流体を直接ワークに衝突させた場合や、単にキャビテーション流体の流れ方向を変えて直接ワークに衝突させた場合、ワークの狙った位置ではなく、狙った位置の周囲にキャビテーション処理がされてしまうことがある。
【0007】
また、液中においてノズルから噴射されたキャビテーション流体は、キャビテーション気泡を内在している。キャビテーション気泡は、一時的に液中に滞留することが知られている。キャビテーション気泡が分散した状態でキャビテーション流体をワークに衝突させても、ワークの狙った位置に最適なキャビテーション効果(残留応力等)を与えることができない。最適なキャビテーション効果を与えるためには、多くの処理回数や時間を要する。
【0008】
また、円筒形状の部品(の表面)に対して均等にキャビテーション効果を与えるためには、ワークの位置調整やキャビテーション効果(残留応力)の深さの確認等が必要であり、処理回数や時間を要する。
【0009】
本発明は、部品の表面および深部に対して、均等にキャビテーション効果(残留応力等)を与えるキャビテーション処理装置およびキャビテーション処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点は、
キャビテーション流体をワークに噴射するノズルと、
前記ワークに衝突して分岐した前記キャビテーション流体の流れ方向を内側に囲い込むように変える方向切換部と、
回転軸を有する駆動装置であって、前記回転軸とともに前記ワークを回転させる駆動装置と、
前記回転軸の一端を支持する支持部と、
を有する、キャビテーション処理装置である。
【0011】
本発明の第2の観点は、
キャビテーション流体をノズルから噴射してワークの上表面に衝突させることにより、前記キャビテーション流体の流れ方向を分岐させ、
分岐した前記キャビテーション流体を方向切換部の側壁に衝突させることにより、前記キャビテーション流体の流れ方向を変え、
前記側壁で流れ方向を変えた前記キャビテーション流体を前記方向切換部の底部に衝突させることにより、前記キャビテーション流体の流れ方向を変え、
前記底部で流れ方向を変えた前記キャビテーション流体を前記ワークの下表面に衝突させる、
キャビテーション処理方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のキャビテーション処理装置およびキャビテーション処理方法によれば、部品の表面および深部に対して、均等にキャビテーション効果(残留応力等)を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態のキャビテーション処理装置を示す斜視図
【
図2】第1実施形態のキャビテーション処理装置を示す正面図
【
図3】第2実施形態のキャビテーション処理装置を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態のキャビテーション処理装置1は、原子力分野等で利用される高機能部材や、一般的な金属部材等の表面に対して、キャビテーション処理を行う。キャビテーション処理装置1は、
図1に示すように、ノズル2と、方向切換部3と、駆動装置4と、支持部5と、を有する。ノズル2は、ワークWに対してキャビテーション流体C1を噴射する。方向切換部3は、ワークWに衝突および分岐したキャビテーション流体C2の流れ方向を変える。駆動装置4は、回転軸4aを有する。回転軸4aは、例えば、軸対称形状(円筒、丸棒等)を有し、ワークWの中心に挿入し固定される。駆動装置4の駆動に伴って、回転軸4aが回転する。支持部5は、回転軸4aの先端に配置され、回転軸4aを支持する。
【0015】
ノズル2は、高圧流体供給源(不図示)から供給されるキャビテーション流体C1を噴射する。キャビテーション流体C1は、ワークWの上表面に衝突する。そして、キャビテーション流体C1は分岐し、流れ方向が切り換わる。ここで、ワークWの上表面に対するキャビテーション効果が一次的に与えられる。
【0016】
キャビテーション流体C1が、ワークWの中心よりも偏心した位置に衝突することで、キャビテーション流体Cの速度や分岐後のキャビテーション流体Cの流れ方向が安定する。例えば、ノズル2の延長線がワークWの回転中心からずれた位置を通るようにノズル2を配置したり、ノズル2から噴射されるキャビテーション流体C1の噴射角度を傾けたりすることにより、キャビテーション流体C1をワークWの中心よりも偏心させる。
【0017】
例えば、キャビテーション流体C1をワークWの中心よりも左右のどちらか一方に偏心させる場合、偏心させた側に分岐するキャビテーション流体C2の量が多くなり、反対側に分岐するキャビテーション流体C2の量は少なくなる。キャビテーション流体C2の量が多ければ、流れ方向に与える影響も大きく、さらに、キャビテーション流体C2に内包されるキャビテーション気泡CAの拡散を抑制できる。そのため、キャビテーション流体C2の衝撃力を維持できる。
【0018】
また、ノズル2からワークWの上表面までの距離S(スタンドオフ距離)を調整することによって、ワークWの表面に対する衝撃力が変化する。
【0019】
方向切換部3は、ワークWに衝突して分岐したキャビテーション流体C2の流れ方向を、方向切換部3の内側に囲い込むように変える。方向切換部3は、側壁3aと、底部3bを有する。側壁3aは、ワークWに衝突して分岐したキャビテーション流体C2の流れ方向を二次的に変える。底部3bは、側壁3aに衝突して流れ方向が変わったキャビテーション流体C3の流れ方向を三次的に変える。側壁3aおよび底部3bにより、方向切換部3は凹形状を形成することが望ましい。ただし、凹形状でなくとも、キャビテーション流体C1がワークWの上表面に衝突した際に発生するキャビテーション流体Cの周囲を取り巻くキャビテーション気泡CAや、キャビテーション流体C2の流れ方向を方向切換部3の内側に囲い込む形状であればよい。
【0020】
図2および
図3に示すように、キャビテーション流体C1がワークWの上表面に衝突した際に発生するキャビテーション流体Cの周囲を取り巻くキャビテーション気泡CAや、方向切換部3がキャビテーション流体C2の流れ方向を方向切換部3の内側に囲い込む形状が重要である。側壁3aおよび底部3bは、例えば、平面状や円弧状である。
図2は、側壁3aおよび底部3bが平面状の例を示す。
図3は、側壁3aが平面状で、底部3bが円弧状の例を示す。
図2と
図3では、方向切換部3の内側におけるキャビテーション流体Cの流れ方向やワークWへの衝突位置が異なる。
【0021】
方向切換部3が凹形状である場合、以下に説明する高さH1~H3と、幅W1、W2が重要である。
【0022】
高さH3は、側壁3aの高さである。高さH2は、ワークWにキャビテーション流体Cが衝突する高さである。高さH3を高さH2よりも高くすることで、キャビテーション流体C1がワークWに衝突して分岐したキャビテーション流体C2が方向切換部3の外部(外側)に漏れ出ることを防止できる。
【0023】
幅W1は、底部3bの内面の幅である。幅W2は、ワークWと側壁3aとの水平方向の距離である。キャビテーション流体Cの周囲を取り巻くキャビテーション気泡CAや、キャビテーション流体C2を、複数回の流れ方向の切り換えによってワークWの下表面に衝突させることが好ましい。そのため、キャビテーション流体Cの周囲を取り巻くキャビテーション気泡CAや、ワークWに衝突して分岐したキャビテーション流体C2が通過する幅W2は、ワークWの半径以下であることが好ましい。これにより、より効果的にキャビテーション流体Cを囲い込むことができる。
【0024】
例えば、ワークWが円筒形の場合、回転軸4aの回転により、キャビテーションの処理位置が順次変わる。ノズル2から噴射されるキャビテーション流体CがワークWの表面に衝突することで、一次的にワークWの表面に対するキャビテーション効果を与えることができる。更に、ワークWが回転することにより、一次的にキャビテーション効果が与えられた表面が下方に回り込み、方向切換部3の内側に囲い込んだキャビテーション流体Cの周囲を取り巻くキャビテーション気泡CAや、キャビテーション流体C4をワークWの表面に再び衝突させることで、二次的にワークWの表面に対するキャビテーション効果を与えることができる。すなわち、一次的なキャビテーション効果に加えて、よりワークWの深い位置にキャビテーション効果を与えることができる。
【0025】
支持部5は、回転軸4aを支持する。支持部5は、回転軸4aの回転を止めないように、内部に回転支持機構を有する。
【0026】
キャビテーション処理装置1は、キャビテーション気泡CAの量を調整する制御装置6を有してもよい。例えば、液中内において、キャビテーション気泡CAは、温度変化による影響を受ける。制御装置6は、例えば、市販の温度調整装置である。最適な温度は、例えば、40~50℃である。制御装置6は、液中内の環境やワークWに対して求めるキャビテーション効果に応じて、温度を調整する。
【0027】
次に、本実施形態のキャビテーション処理工程について説明する。
最初にワークWを回転軸4aに固定するとともに、ノズル2の高さ等のキャビテーション処理の条件出しを行う。なお、ワークWの固定作業の前または後で、タンクT内を液体(例えば、水)で満たす。キャビテーション処理を液中で行うことによって、キャビテーション気泡CAやキャビテーション流体Cを安定的に囲い入れることに繋がり、最適な量のキャビテーション気泡CAをワークWに衝突させ、最適なキャビテーション効果が得られる。
【0028】
次に、高圧水供給源(不図示)を起動し、ノズル2の位置を固定する。そして、キャビテーション流体C1をノズル2から噴射してワークWの上表面に衝突させ、キャビテーション流体C1の流れ方向を分岐させる(第1の方向切換)。なお、キャビテーション流体C1を、ワークWの中心よりも偏心した位置に衝突させることで、よりキャビテーション効果を与えることができる。
次に、分岐したキャビテーション流体C2を方向切換部3の側壁3aに衝突させ、キャビテーション流体C2の流れ方向を変える(第2の方向切換)。そして、キャビテーション流体C3を方向切換部3の底部3bに衝突させ、キャビテーション流体C3の流れ方向を変える(第3の方向切換)。
最後に、キャビテーション流体C4をワークWの下表面に衝突させる。これによって、ワークWの上表面に対する一次的なキャビテーション効果(表面に対する残留応力の付与)と、ワークWの下表面に対する二次的なキャビテーション効果(深部に対する残留応力の付与)を段階的に付与することができ、ワークWに過度の負荷をかけずに従来よりも短時間で圧縮応力を残留させることができる。
【0029】
次に、実施形態のキャビテーション処理装置1を利用したキャビテーション効果の検証テストについて、説明する。
【0030】
(検証テスト1)
キャビテーション処理装置1を利用して、ノズル2の位置を固定した。高圧水供給源(不図示)から供給される70MPaのキャビテーション流体C1を、回転軸4aに固定した検証用のワークW(ステンレス丸棒)の上表面に対して、ダイレクトに5分間衝突させた。
図4Aは、検証テスト1のテスト結果である。目視でワークWの左側表面が薄く剥がれていることがわかる。市販の残留応力測定装置を利用して残留応力を測定した結果、マイナス400MPaの圧縮応力が残留していた。
【0031】
(検証テスト2)
キャビテーション処理装置1を利用して、ノズル2の位置を固定した。高圧水供給源(不図示)から供給される70MPaのキャビテーション流体C1を、回転軸4aに固定した検証用のワークW(ステンレス丸棒)の上表面に対して衝突させた。その後、キャビテーション流体C2は、方向切換部3の側壁3aおよび底部3bに衝突し、方向切換部3の内側を介して、キャビテーション流体C4をワークWの下表面に対して、5分間衝突させた。
図4Bは、検証テスト2のテスト結果である。目視でワークWの表面に凹凸形状のディンプルが形成されていることがわかる。市販の残留応力測定装置を利用して残留応力を測定した結果、マイナス550MPaの圧縮応力が残留していた。
【0032】
検証テスト1と検証テスト2を比較した場合、検証テスト2の方が表面に比較的大きなディンプルが多く形成されるとともに、圧縮応力の数値がより深い値になっていることが判明した。そのため、ワークWの上表面に対する一次的なキャビテーション効果と、ワークWの下表面に対する二次的なキャビテーション効果には、違いがあることが判明した。
【0033】
検証テスト1で行ったワークWの上表面に対する一次的なキャビテーション効果の付与を長時間継続することで、検証テスト2で行ったワークWの下表面に対する二次的なキャビテーション効果のレベルまで至らせるには、かなり時間を要する。また、時間をかけ過ぎた場合、ワークW自体が脆くなってしまうこともある。
【0034】
(検証テスト3)
検証テスト1と検証テスト2の処理の双方を行なうテストを行った。具体的には、キャビテーション処理装置1を利用し、駆動装置4を駆動させることで、回転軸4aとワークWを回転させる。そして、ノズル2の位置を固定し、高圧水供給源(不図示)から供給される70MPaのキャビテーション流体C1を、回転軸4aに固定した検証用のワークW(ステンレス丸棒)の上表面に対して衝突させる。その後、方向切換部3の側壁3aおよび底部3bに衝突して方向切換部3の内側を介してキャビテーション流体C4を、ワークWの下表面に対して19分間衝突させた。
【0035】
図4Cは、検証テスト3のテスト結果である。検証テスト1におけるワークWの左側表面が薄く剥がれている状態と、検証テスト2におけるワークWの表面に凹凸形状のディンプルの両方が混在していることがわかる。市販の残留応力測定装置を利用して残留応力を測定した結果、マイナス550MPaの圧縮応力が残留していた。
検証テスト3によれば、ワークWの上表面に対する一次的なキャビテーション効果(表面に対する残留応力の付与)と、ワークWの下表面に対する二次的なキャビテーション効果(深部に対する残留応力の付与)を段階的に付与することができ、ワークWに過度の負荷をかけずに従来よりも短時間で圧縮応力を残留させることができる。
【0036】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 キャビテーション処理装置
2 ノズル
3 方向切換部
4 駆動装置
5 支持部
6 制御装置
C1~4 キャビテーション流体
CA キャビテーション気泡
S スタンドオフ距離
H1~3 高さ
W1~3 幅
W ワーク
T タンク