(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104133
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
B41J2/165 209
B41J2/165 101
B41J2/165 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219156
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョンビン
(72)【発明者】
【氏名】菅原 宏人
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EC24
2C056EC37
2C056EC39
2C056EC41
2C056EC54
2C056FA10
2C056FA13
2C056JA01
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】第1色のインクを吐出可能な複数の第1ノズル列と、第2色のインクを吐出可能な複数の第2ノズル列とを有するヘッドを備えたインクジェットプリンタにおいて、混色した可能性があるインクを確実に排出しつつ、且つ、インクの排出量を抑制可能なフラッシング技術を提供する。
【解決手段】
FPGA20は、ノズル列K1~K12からブラックインクを排出し、且つ、ノズル列C1~C12からシアンインクを排出するフラッシングにおいて、ノズル列C1~C12に近いノズル列K1~K2を構成する各ノズル11aから単位時間あたりに排出するブラックインクの量を、ノズル列C1~C12から離れたノズル列K7~K12を構成する各ノズル11aから単位時間あたりに排出するブラックインクの量よりも多くする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1色のインクを吐出する複数の第1ノズルと第2色のインクを吐出する複数の第2ノズルとが形成されたノズル面を有するヘッドと、
前記ヘッドを制御するコントローラとを備え、
前記複数の第1ノズルは、少なくとも第1ノズル列及び第2ノズル列を形成し、
前記複数の第2ノズルは、少なくとも第3ノズル列を形成し、
前記第1ノズル列、前記第2ノズル列、及び前記第3ノズル列は、所定の方向に並んでおり、
前記第1ノズル列は、前記所定の方向において、前記第2ノズル列と前記第3ノズル列の間に位置し、
前記コントローラは、前記複数の第1ノズルから前記第1色のインクを排出し、且つ、前記複数の第2ノズルから前記第2色のインクを排出するフラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記第1ノズル列を構成する各第1ノズルから単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの量を、前記第2ノズル列を構成する各第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの量よりも多くする、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記フラッシングは、前記第1色のインク及び前記第2色のインクが吐出される媒体に対して行われる、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記フラッシングにおいて、前記コントローラは、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記第1ノズル列を構成する各第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出回数を、前記第2ノズル列を構成する各第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出回数よりも多くする、請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記フラッシングにおいて、前記コントローラは、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記第1ノズル列を構成する各第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出回数と、前記第2ノズル列を構成する各第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出回数とを同じとし、且つ、前記第1ノズル列を構成する各第1ノズルからの1回の排出量を、前記第2ノズル列を構成する各第1ノズルからの1回の排出量よりも多くする、請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記フラッシングにおいて、前記コントローラは、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記第2ノズル列を構成する少なくとも1つの第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出量をゼロとする、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記フラッシングにおいて、前記コントローラは、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記第2ノズル列を構成する各第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出量をゼロとする、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記媒体を前記所定の方向に搬送する搬送機構をさらに備え、
前記複数の第2ノズルは、前記複数の第1ノズルに対して前記所定の方向の下流に位置し、
前記第1ノズル列と前記第3ノズル列とは前記所定の方向に隣接し、
前記フラッシングにおいて、
前記コントローラは、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記第3ノズル列を構成する各第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの量を、前記第1ノズル列を構成する各第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの量よりも多くする、請求項2~6のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
前記ヘッドを搭載し、前記所定の方向と反対方向に移動することにより、前記ヘッドを、前記媒体に対して相対的に移動させるキャリッジをさらに備える、請求項2~6のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記フラッシングにおいて、
前記コントローラは、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量よりも多くする、請求項7に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記コントローラは、前記搬送機構による前記媒体の搬送速度が高くなるほど、前記フラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量、及び、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を増やす、請求項7又は9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
前記コントローラは、前記キャリッジの移動速度が高くなるほど、前記フラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量、及び、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を増やす、請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記コントローラは、前記複数の第1ノズルからの前記第1色のインクの吐出周波数、及び、前記複数の第2ノズルからの前記第2色のインクの吐出周波数が高くなるほど、前記フラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量、及び、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を増やす、請求項7又は9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項13】
前記ノズル面と、前記媒体との間の距離を調節するよう構成された調節機構をさらに備え、
前記コントローラは、前記ノズル面と前記媒体との間の距離が大きくなるほど、前記フラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量、及び、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を増やす、請求項2~12のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項14】
前記コントローラは、前記フラッシングにおいて、前記第1色と前記媒体の色との明度差である第1明度差と、前記第2色と前記媒体の色との明度差である第2明度差との差に基づいて、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量、及び、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を調節する、請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項15】
前記コントローラは、前記フラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルからの前記第1色のインクの吐出回数に基づいて、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を調節する、請求項に1~6のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項16】
前記ノズル面を覆うキャップをさらに備え、
前記フラッシングでは、前記第1色のインク及び前記第2色のインクが前記キャップ中に排出される、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数色のインクを吐出可能なヘッドを有する、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2色のインクを吐出可能なインクジェット式記録ヘッドを備える、プリンタが知られている(特許文献1参照)。このインクジェット式記録ヘッドは、第1色のインクを吐出可能な1列の第1ノズル列と、第2色のインクを吐出可能な1列の第2ノズル列とを有する。第1ノズル列と第2ノズル列は第1方向に並べられている。また、第1ノズル列と第2ノズル列はいずれも、第1方向と直交する第2方向に延びている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のインクジェット式記録ヘッドのように、第1ノズル列と第2ノズル列とが第1方向に並んでいる場合、第1ノズル列から吐出された第1色のインクのミストが、第2ノズル列を構成する複数のノズル内の第2色のインクと混ざる可能性がある。同様に、第2ノズル列から吐出された第2色のインクのミストが、第1ノズル列を構成する複数のノズル内の第1色のインクと混ざる可能性がある。そこで、一般には、印刷とは別に第1ノズル列及び第2ノズル列からインクを吐出することにより、第1ノズル列及び第2ノズル列から混色した可能性があるインクを排出するフラッシングが行われる。
【0005】
ここで、ヘッド及び印刷装置の小型化、並びに多色化を図るため、1個のヘッドにおいて、第1方向に並べられた複数の第1ノズル列と、第1方向に並べられた複数の第2ノズル列とを設け、複数の第1ノズル列と複数の第2ノズル列とを第1方向に並べることが考えられる。この場合、複数の第1ノズル列に最も近い第2ノズル列が、第1色のインクのミストの影響を最も受けやすく、複数の第1ノズル列から最も離れた第2ノズル列が、第1色のインクのミストの影響を最も受けにくいと考えられる。同様に、複数の第2ノズル列に最も近い第1ノズル列が、第2色のインクのミストの影響を最も受けやすく、複数の第2ノズル列から最も離れた第1ノズル列が、第2色のインクのミストの影響を最も受けにくいと考えられる。
【0006】
そこで、複数の第1ノズル列に最も近い第2ノズル列におけるインクの混色を防止するため、各第2ノズル列におけるフラッシング量を、複数の第1ノズル列に最も近い第2ノズル列におけるフラッシング量と同じにした場合、第1色のインクのミストの影響が小さい第2ノズル列からは、過剰な量のインクが排出されることになる。同様に、複数の第2ノズル列に最も近い第1ノズル列におけるインクの混色を防止するため、各第1ノズル列におけるフラッシング量を、複数の第2ノズル列に最も近い第1ノズル列におけるフラッシング量と同じにした場合、第2色のインクのミストの影響が小さい第1ノズル列からは、過剰な量のインクが排出されることになる。
【0007】
本発明は、第1色のインクを吐出可能な複数の第1ノズル列と、第2色のインクを吐出可能な複数の第2ノズル列とを有するヘッドを備えたインクジェットプリンタにおいて、混色した可能性があるインクを確実に排出しつつ、且つ、インクの排出量を抑制可能なフラッシング技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に従えば、第1色のインクを吐出する複数の第1ノズルと第2色のインクを吐出する複数の第2ノズルとが形成されたノズル面を有するヘッドと、
前記ヘッドを制御するコントローラとを備え、
前記複数の第1ノズルは、少なくとも第1ノズル列及び第2ノズル列を形成し、
前記複数の第2ノズルは、少なくとも第3ノズル列を形成し、
前記第1ノズル列、前記第2ノズル列、及び前記第3ノズル列は、所定の方向に並んでおり、
前記第1ノズル列は、前記所定の方向において、前記第2ノズル列と前記第3ノズル列の間に位置し、
前記コントローラは、前記複数の第1ノズルから前記第1色のインクを排出し、且つ、前記複数の第2ノズルから前記第2色のインクを排出するフラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記第1ノズル列を構成する各第1ノズルから単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの量を、前記第2ノズル列を構成する各第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの量よりも多くする、インクジェットプリンタが提供される。
【0009】
前記フラッシングは、前記第1色のインク及び前記第2色のインクが吐出される媒体に対して行われてもよい。
【0010】
前記フラッシングにおいて、前記コントローラは、前記第1ノズル列を構成する各第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出回数を、前記第2ノズル列を構成する各第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出回数よりも多くしてもよい。
【0011】
前記フラッシングにおいて、前記コントローラは、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記第1ノズル列を構成する各第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出回数と、前記第2ノズル列を構成する各第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出回数とを同じとし、且つ、前記第1ノズル列を構成する各第1ノズルからの1回の排出量を、前記第2ノズル列を構成する各第1ノズルからの1回の排出量よりも多くしてもよい。
【0012】
前記フラッシングにおいて、前記コントローラは、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記第2ノズル列を構成する少なくとも1つの第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出量をゼロとしてもよい。
【0013】
前記フラッシングにおいて、前記コントローラは、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記第2ノズル列を構成する各第1ノズルからの前記単位時間あたりの排出量をゼロとしてもよい。
【0014】
本発明の態様に従うインクジェットプリンタは、前記媒体を前記所定の方向に搬送する搬送機構をさらに備えてもよく、
前記複数の第2ノズルは、前記複数の第1ノズルに対して前記所定の方向の下流に位置してもよく、
前記第1ノズル列と前記第3ノズル列とは前記所定の方向に隣接してもよく、
前記フラッシングにおいて、
前記コントローラは、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記第3ノズル列を構成する各第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの量を、前記第1ノズル列を構成する各第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの量よりも多くしてもよい。
【0015】
前記フラッシングにおいて、
前記コントローラは、前記複数の第1ノズルの位置と前記複数の第2ノズルの位置とに基づいて、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量よりも多くしてもよい。
【0016】
前記コントローラは、前記搬送機構による前記媒体の搬送速度が高くなるほど、前記フラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量、及び、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を増やしてもよい。
【0017】
本発明の態様に従うインクジェットプリンタは、前記ヘッドを搭載し、前記所定の方向と反対方向に移動することにより、前記ヘッドを、前記媒体に対して相対的に移動させるキャリッジをさらに備えてもよい。
【0018】
前記コントローラは、前記キャリッジの移動速度が高くなるほど、前記フラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量、及び、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を増やしてもよい。
【0019】
前記コントローラは、前記複数の第1ノズルからの前記第1色のインクの吐出周波数、及び、前記複数の第2ノズルからの前記第2色のインクの吐出周波数が高くなるほど、前記フラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量、及び、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を増やしてもよい。
【0020】
本発明の態様に従うインクジェットプリンタは、前記ノズル面と、前記媒体との間の距離を調節するよう構成された調節機構をさらに備えてもよく、
前記コントローラは、前記ノズル面と前記媒体との間の距離が大きくなるほど、前記フラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量、及び、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を増やしてもよい。
【0021】
前記コントローラは、前記フラッシングにおいて、前記第1色と前記媒体の色との明度差である第1明度差と、前記第2色と前記媒体の色との明度差である第2明度差との差に基づいて、前記複数の第1ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第1色のインクの総量、及び、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を調節してもよい。
【0022】
前記コントローラは、前記フラッシングにおいて、前記複数の第1ノズルからの前記第1色のインクの吐出回数に基づいて、前記複数の第2ノズルから前記単位時間あたりに排出する前記第2色のインクの総量を調節してもよい。
【0023】
本発明の態様に従うインクジェットプリンタは、前記ノズル面を覆うキャップをさらに備えてもよく、
前記フラッシングでは、前記第1色のインク及び前記第2色のインクが前記キャップ中に排出されてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の態様によれば、第2色のインクのミストが侵入した可能性が高い第1ノズルからは、第2色のインクと混色している可能性が高い第1色のインクを確実に排出することができるとともに、第2色のインクのミストが侵入した可能性が低い第1ノズルから第1色のインクが必要以上に排出されるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態のインクジェットプリンタの構成を概略的に示す平面図である。
【
図2】本実施形態のインクジェットプリンタが備えるヘッドの一例を示す底面図であり、(a)はブラックインク及びシアンインクを吐出可能なヘッドの底面の一例を示し、(b)はマゼンタインク及びイエローインクを吐出可能なヘッドの底面の一例を示す。
【
図3】
図2におけるIII-III線断面図である。
【
図4】本実施形態のインクジェットプリンタにおける電気的な構成を概略的に示すブロック図である。
【
図5】フラッシングテーブルの一例を示す図であり、(a)はブラックインク及びシアンインクを吐出可能なヘッドにおけるフラッシング量の一例を示し、(b)はマゼンタインク及びイエローインクを吐出可能なヘッドにおけるフラッシング量の一例を示す。
【
図6】本実施形態のインクジェットプリンタが実行する印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】変形例1及び変形例2におけるフラッシング量を説明するための図であり、(a)はブラックインク及びシアンインクを吐出可能なヘッドにおけるフラッシング量の一例を示し、(b)はマゼンタインク及びイエローインクを吐出可能なヘッドにおけるフラッシング量の一例を示す。。
【
図8】変形例3におけるフラッシング量を説明するための図であり、(a)はブラックインク及びシアンインクを吐出可能なヘッドにおけるフラッシング量の一例を示し、(b)はマゼンタインク及びイエローインクを吐出可能なヘッドにおけるフラッシング量の一例を示す。
【
図9】変形例4におけるフラッシング量を説明するための図であり、(a)は各色のインクの明度とシートの明度との差を示し、(b)はブラックインク及びイエローインクを吐出可能なヘッドにおけるフラッシング量の一例を示し、(c)はシアンインク及びマゼンタインクを吐出可能なヘッドにおけるフラッシング量の一例を示す。
【
図10】変形例5に係る印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】変形例6に係る印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】変形例7に係るインクジェットプリンタの構成を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタについて、
図1~6を参照しつつ説明する。
【0027】
図1において、シートSの搬送方向上流側をインクジェットプリンタ1の前方、搬送方向下流側をインクジェットプリンタ1の後方と定義する。なお、本実施形態における搬送方向は、本発明の所定の方向の一例である。また、シートSが搬送される面(
図1の紙面と平行な面)と平行で、且つ、前記搬送方向と直交する方向をシート幅方向と定義する。尚、
図1における左側がインクジェットプリンタ1の左方であり、
図1における右側がインクジェットプリンタ1の右方である。さらに、シートSの搬送面と直交する方向(
図1の紙面に直交する方向)を、インクジェットプリンタ1の上下方向と定義する。
図1において、紙面表側が上方、紙面裏側が下方である。以下では、前後左右上下を適宜使用して説明する。
【0028】
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、筐体2と、プラテン3と、2個のラインヘッド4A、4Bと、2個の搬送ローラ5A、5Bと、2個のヘッドホルダ6A、6Bと、メンテナンスユニット8と、制御装置10とを備える。
【0029】
プラテン3は筐体2内に平置きされている。プラテン3の上面には、例えば紙などのシートS(媒体の一例)が載置される。2個のラインヘッド4A、4Bは、プラテン3の上方に前後方向に並設されている。なお、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、2個のラインヘッド4A、4Bを備えるが、ラインヘッドの数は2個に限定されない。
【0030】
図1に示すように、ラインヘッド4Aは、10個のヘッド11Aを備える。10個のヘッド11Aは、シート幅方向に沿って千鳥状に2列に配置されている。同様に、ラインヘッド4Bは、10個のヘッド11Bを備える。10個のヘッド11Bは、シート幅方向に沿って千鳥状に2列に配置されている。本実施形態において、各ヘッド11Aには、図示しないインク供給部から、ブラックのインク及びシアンのインクが供給される。そして、各ヘッド11Aからは、ブラック(K)及びシアン(C)のインクが吐出される。各ヘッド11Bには、図示しないインク供給部から、マゼンタのインク及びイエローのインクが供給される。そして、各ヘッド11Bからは、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインクが吐出される。なお、本実施形態では、ラインヘッド4Aが10個のヘッド11Aを備え、ラインヘッド4Bが10個のヘッド11Bを備えるが、ラインヘッド4Aが備えるヘッド11A及びラインヘッド4Bが備えるヘッド11Bの数はそれぞれ、10個に限定されない。
【0031】
搬送ローラ5Aはプラテン3に対して前側に配置され、搬送ローラ5Bはプラテン3に対して後側に配置されている。2個の搬送ローラ5A、5Bは、図示しないモータによってそれぞれ駆動され、プラテン3上のシートSを後方へ搬送する。また、シートSは、搬送方向の上流端を含む供給ロールと、搬送方向の下流端を含む回収ロールとからなるロール状のシートであってもよい。この場合、供給ロールは搬送方向上流側の搬送ローラ5Aに取り付けられてもよく、回収ロールは搬送方向下流側の搬送ローラ5Bに取り付けられてもよい。あるいは、シートSは、搬送方向の上流端を含む供給ロールのみを含むロール状のシートであってもよい。この場合、供給ロールは搬送方向上流側の搬送ローラ5Aに取り付けられてもよい。
【0032】
筐体2には、ラインヘッド4A、4Bにそれぞれ対応して、ヘッドホルダ6A、6Bが設けられている。ヘッドホルダ6A、6Bは、プラテン3の上方で、且つ、搬送ローラ5A、5Bの間の位置において、前後に並設されている。ヘッドホルダ6Aによってラインヘッド4Aが保持され、ヘッドホルダ6Bによってラインヘッド4Bが保持される。
【0033】
メンテナンスユニット8は、筐体2において、プラテン3の側方(本実施形態では右側)に配置されている。メンテナンスユニット8には、ラインヘッド4A、4Bにそれぞれ対応して、キャップ8A、8Bが設けられている。
【0034】
筐体2には、さらに、
図4に示されるヘッド移動機構7とヘッド昇降機構9とが設けられている。ヘッド移動機構7は、ガイドレール、プーリ、及び、プーリに掛け回されヘッドホルダ6A、6Bと接続された無端ベルト等を備え、ヘッドホルダ6A、6Bを、ラインヘッド4A、4Bとともに、印刷位置とメンテナンス位置とに、シート幅方向に移動させる。印刷位置とは、ラインヘッド4A、4Bが、プラテン3と対向する位置であり、メンテナンス位置とは、ラインヘッド4A、4Bがそれぞれ、キャップ8A、8Bと対向する位置である。印刷が終了すると、ヘッド移動機構7は、ヘッドホルダ6A、6Bを印刷位置からメンテナンス位置に移動させる。メンテナンス位置において、キャップ8A、8Bはそれぞれ、ラインヘッド4A、4Bの底面を覆う。そして、印刷を開始する際、ヘッド移動機構7は、ヘッドホルダ6A、6Bをメンテナンス位置から印刷位置に移動させる。ヘッド昇降機構9は、カム及びギア等を備え、ヘッドホルダ6A、6Bを、ラインヘッド4A、4Bとともに、上下方向に移動させる。ユーザは、ヘッド昇降機構9を使用することにより、印刷対象となる媒体の厚みに応じて、ラインヘッド4A、4Bのノズル面と、媒体の印刷面との間の上下方向の距離を調整することができる。
【0035】
制御装置10は、パーソナルコンピュータ等の外部装置1000と相互に通信が可能である。制御装置10は、外部装置1000又はインクジェットプリンタ1が具備する操作部(不図示)からの指示に基づいて、ラインヘッド4A、4B、搬送ローラ5A、5B、及びヘッド移動機構7の動作を制御する。
【0036】
図2(a)に示すように、本実施形態の各ヘッド11Aは、プラテン3と対向する底面として、ノズル面41Aを有する。ノズル面41Aには、1680個のノズル11aが開口している。ノズル面41Aにおいて、1680個のノズル11aは、搬送方向に並べられた24列のノズル列を形成している。そして、各ノズル列は、シート幅方向に並べられた70個のノズル11aにより形成されている。搬送方向上流側の12列のノズル列を構成する840個のノズル11aからはブラックインクが吐出され、搬送方向下流側の12列のノズル列を構成する840個のノズル11aからはシアンインクが吐出される。ブラックインクを吐出する12列を構成するノズル11aはそれぞれ、シート幅方向にずれて配置され、シート幅方向に対して所定の解像度となるように配置されている。また、シアンインクを吐出する12列を構成するノズル11aはそれぞれ、シート幅方向にずれて配置され、シート幅方向に対して所定の解像度となるように配置されている。
【0037】
図2(b)示すように、本実施形態の各ヘッド11Bは、プラテン3と対向する底面として、ノズル面41Bを有する。ノズル面41Bには、1680個のノズル11aが開口している。ノズル面41Bにおいて、1680個のノズル11aは、搬送方向に並べられた24列のノズル列を形成している。そして、各ノズル列は、シート幅方向に並べられた70個のノズル11aにより形成されている。搬送方向上流側の12列のノズル列を構成する840個のノズル11aからはマゼンタインクが吐出され、搬送方向下流側の12列のノズル列を構成する840個のノズル11aからはイエローインクが吐出される。マゼンタインクを吐出する12列を構成するノズル11aはそれぞれ、シート幅方向にずれて配置され、シート幅方向に対して所定の解像度となるように配置されている。また、イエローインクを吐出する1212列を構成するノズル11aはそれぞれ、シート幅方向にずれて配置され、シート幅方向に対して所定の解像度となるように配置されている。
【0038】
なお、ノズル面41A、41Bの各々に開口するノズル11aの数、ノズル列の数、及び、各ノズル列を形成するノズル11aの数は、上記の数に限定されない。また、ノズル面41Aに開口するノズル11aの数と、ノズル面41Bに開口するノズル11aの数とが異なっていてもよい。
【0039】
以下の説明では、
図2(a)に示されるように、ノズル面41Aにおける搬送方向上流側の12列のノズル列をそれぞれ、搬送方向の下流側からノズル列K1~K12と記載し、ノズル面41Aにおける搬送方向下流側の12列のノズル列をそれぞれ、搬送方向の上流側からノズル列C1~C12と記載する。また、
図2(b)に示されるように、ノズル面41Bにおける搬送方向上流側の12列のノズル列をそれぞれ、搬送方向の下流側からノズル列M1~M12と記載し、ノズル面41Bにおける搬送方向下流側の12列のノズル列をそれぞれ、搬送方向の上流側からノズル列Y1~Y12と記載する。
【0040】
次に、ヘッド11A、11Bを構成する流路基板42について説明する。なお、流路基板42の構造は、ヘッド11A、11Bにおいて共通しているため、以下では、ヘッド11Aにおける流路基板42を例にとり、説明する。流路基板42には、1680個のノズル11a、1680個のノズル11aとそれぞれ連通する1680個の個別流路12が形成されている。また、流路基板42には、搬送方向に並ぶ12列の共通流路13が形成されている。各共通流路13はシート幅方向に延びており、各共通流路13には140個の個別流路12が連通している。そして、流路基板42には、1680の個別流路12にそれぞれ対応して、1680個の駆動素子43が配置されている。
図3に示すように、各個別流路12は圧力室12aを含み、各駆動素子43は圧力室12aと上下方向に対向するように配置されている。共通流路13には、流路基板42に設けられたインク供給口を介して、図示しないインク供給部からインクが供給され、共通流路13に供給されたインクが、各個別流路12に供給される。なお、流路基板42に形成される共通流路13の数、及び、各共通流路13と連通する個別流路12の数は、上記の数に限定されない。
【0041】
そして、後述するように、ドライバIC44から駆動信号が入力されることにより駆動素子43が変形すると、その駆動素子43と対向する圧力室12aが、
図3の破線で示されるように変形する。これにより、圧力室12aの内圧が上昇し、ノズル11aからインクが吐出される。一方、駆動素子43が変形から回復すると、
図3の実線で示されるように、圧力室12aの変形も回復する。これにより、圧力室12aの内圧が回復し、個別流路12には共通流路13からインクが流れ込む。このように、ドライバIC44から入力される駆動信号に応じて駆動素子43が変形と回復とを繰り返すことにより、対応するノズル11aからインクが吐出される。なお、駆動素子43としては、例えば、電圧を付与することにより圧電変形(圧電歪み)が生じる圧電素子を用いることができる。
【0042】
図4に示すように、制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)101の他に、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、不揮発性メモリ104などを備える。ROM102には、CPU101が各種動作を制御するためのプログラム及び各種データ等が格納されている。RAM103は、CPU101が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記憶する記憶領域、又は、データ処理を実行する際の作業領域として使用される。不揮発性メモリ104としては、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)を用いることができる。なお、CPU101に代えてMPU(Microprocessor Unit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)を使用してもよい。
【0043】
また、ヘッド11A、11Bの各々には、1680個の駆動素子43の他に、コントローラとしてのFPGA20、EEPROM等の不揮発性メモリ30、及びドライバIC44が設けられている。FPGA20とドライバIC44とは、1680個の制御線33によって接続されている。そして、ドライバIC44は、1680個の信号線34によって、1680個の駆動素子43と接続されている。
【0044】
不揮発性メモリ30には、各ノズル11aを識別するノズルID、複数のノズル列を識別する列ID、ノズル11aのシート幅方向の位置を識別する行IDなどが記憶されている。また、不揮発性メモリ30には、ノズルIDと列IDとの対応関係、ノズルIDと行IDとの対応関係などが、テーブルとして記憶されている。さらに、不揮発性メモリ30には、ノズル列と、当該ノズル列に属する各ノズル11aの単位時間あたりのフラッシング量との対応関係を規定した、フラッシングテーブルTA、TB(
図5(a)、5(b)参照)が記憶されている。
【0045】
制御装置10が外部装置1000から画像データを受信すると、FPGA20は、制御装置10による制御の下、制御線33を介してドライバIC44に制御信号を出力する。ドライバIC44は、FPGA20から入力された制御信号に基づいて、駆動素子43を駆動する駆動信号を生成し、生成した駆動信号を、信号線34を介して駆動素子43に出力する。
【0046】
そして、ドライバIC44から供給された駆動信号に基づいて駆動素子43が駆動することにより、当該駆動信号に応じた量のインクが、当該駆動素子43に対応するノズル11aから吐出される。
【0047】
次に、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1で実行されるフラッシングについて説明する。
【0048】
上述したように、ヘッド11Aのノズル面41Aには、ブラックインクを吐出可能なノズル列K1~K12と、シアンインクを吐出可能なノズル列C1~C12とが、搬送方向に並ぶように形成されている。また、ヘッド11Bのノズル面41Bには、マゼンタインクを吐出可能なノズル列M1~M12と、イエローインクを吐出可能なノズル列Y1~Y12とが、搬送方向に並ぶように形成されている。つまり、ヘッド11A、11Bの各々は、異なる2色のインクを吐出可能である。そして、このような構成を有するヘッド11A、11Bの各々では、第1色のインクを吐出することにより発生した第1色のインクのミストが、第2色のインクを吐出可能なノズル11aに侵入し、第2色のインクに第1色のインクのミストが混ざるという問題が生じる。同様に、第2色のインクを吐出することにより発生した第2色のインクのミストが、第1色のインクを吐出可能なノズル11aに侵入し、第1色のインクに第2色のインクのミストが混ざるという問題が生じる。そこで、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1では、各ノズル11a内の混色したインクを排出するために、印刷とは無関係に各ノズル11aからインクを吐出する、フラッシングを実行する。
【0049】
ここで、インクジェットプリンタ1には、ヘッド移動機構7及びメンテナンス機構8が設けられている。このため、ヘッド移動機構7によってラインヘッド4A、4Bをメンテナンス位置に移動させた後、ノズル面41A、41Bがキャップ8A、8Bと対向した状態でフラッシングを実行することが考えられる。しかしながら、インクのミストはノズル11aからインクを吐出する際、つまり、印刷中に発生するため、ノズル11a内のインクに他色のインクのミストが混ざるという問題も、印刷中に生じやすい。また、メンテナンス位置でフラッシングを実行する場合、ヘッド移動機構7により、ラインヘッド4A、4Bを印刷位置とメンテナンス位置との間で往復移動させるための時間も必要となる。
【0050】
そこで、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1では、印刷中に、より具体的には、ノズル面41A、41BがシートSと対向している状態で、シートSに対してフラッシングを実行する。
【0051】
フラッシングを実行する際、ヘッド11A、11Bの各々に設けられたFPGA20は、不揮発性メモリ30に記憶されたフラッシングテーブルTa、Tbに基づいてフラッシングが実行されるように、ドライバIC44に対して制御信号を出力する。これにより、フラッシングテーブルTa、Tbに設定されたフラッシング量に基づいて、フラッシングが実行される。
【0052】
ここで、不揮発性メモリ30に記憶されたフラッシングテーブルTa、Tbについて、
図5(a)、(b)を参照しつつ説明する。なお、
図5(a)、(b)に示されるフラッシング量は一例に過ぎず、これらの数値に限定することを意図するものではない。
【0053】
ヘッド11Aにおいて、ノズル列C1~C12は、搬送方向の上流側から、この順番で並んでいる。つまり、ノズル列C1~C12は、ノズル列K1~K12からの距離が遠くなるように並んでいる。換言すると、搬送方向において、ノズル列C1~C2は、ノズル列C3~C12とノズル列K1~K12との間に並んでいる。また、ノズル列C1は、搬送方向において、ノズル列K1に隣接している。このため、ノズル列K1~K12からブラックインクを吐出する際に発生したブラックインクのミストの影響は、ノズル列K1~K12に近いノズル列ほど大きいと考えられる。そこで、本実施形態のフラッシングテーブルTaでは、例えば、ノズル列C1~C2に属するノズル11aからのフラッシング量を40pl/secと設定し、ノズル列C3~C6に属するノズル11aからのフラッシング量を20pl/secと設定し、ノズル列C7~C12に属するノズル11aからのフラッシング量を10pl/secと設定している。つまり、ノズル列K1~K12に近いノズル列ほど、フラッシング量が多くなるように、ノズル列C1~C12のフラッシング量を設定している。
【0054】
同様に、ヘッド11Aにおいて、ノズル列K1~K12は、搬送方向の下流側から、この順番で並んでいる。つまり、ノズル列K1~K12は、ノズル列C1~C12からの距離が遠くなるように並んでいる。換言すると、搬送方向において、ノズル列K1~K2は、ノズル列K3~K12とノズル列C1~C12との間に並んでいる。そして、ノズル列C1~C12からシアンインクを吐出する際に発生したシアンインクのミストの影響は、ノズル列C1~C12に近いノズル列ほど大きいと考えられる。そこで、本実施形態のフラッシングテーブルTaでは、例えば、ノズル列K1~K2に属するノズル11aからのフラッシング量を20pl/secとし、ノズル列K3~K6に属するノズル11aからのフラッシング量を10pl/secと設定し、ノズル列K7~K12に属するノズル11aからのフラッシング量を0pl/secと設定している。つまり、ノズル列C1~C12に近いノズル列ほど、フラッシング量が多くなるように、ノズル列K1~K12のフラッシング量を設定している。
【0055】
そして、シートSが搬送方向に搬送される際には、ヘッド11Aのノズル面41AとシートSの表面との間に、搬送方向の気流が生じる。このため、ヘッド11Aでは、搬送方向の下流側に配置されているノズル列C1~C12の方が、搬送方向の上流側に配置されているノズル列K1~K12よりも、ミストの影響を受けやすいと考えられる。そこで、本実施形態のフラッシングテーブルTaでは、ノズル列C1~C2に属するノズル11aからのフラッシング量が、ノズル列K1~K2に属するノズル11aからのフラッシング量よりも多くなるように、ノズル列C1~C2及びノズル列K1~K2のフラッシング量を設定している。さらに、ノズル列C1~C12におけるフラッシング量の合計が、ノズル列K1~K12におけるフラッシング量の合計よりも多くなるように、各ノズル列のフラッシング量を設定している。例えば、ノズル列C1に属するノズル11aからのフラッシング量を40pl/secとし、ノズル列K1に属するノズル11aからのフラッシング量を20pl/secとするために、ノズル列C1に属する各ノズル11aから2plのインクを1秒間で20回排出し、ノズル列K1に属する各ノズル11aから2plのインクを1秒間で10回排出してもよい。つまり、ノズル列C1に属するノズル11aからの単位時間あたりの排出回数を、ノズル列K1に属するノズル11aからの単位時間あたりに排出回数よりも多くしてもよい。または、ノズル列C1に属する各ノズル11aから40plのインクを1秒間で1回排出し、ノズル列K1に属する各ノズル11aから20plのインクを1秒間で1回排出してもよい。つまり、ノズル列C1に属する各ノズル11aからの単位時間あたりの排出回数と、ノズル列K1に属する各ノズル11aからの単位時間あたりの排出回数とを同じとし、且つ、ノズル列C1に属する各ノズル11aからの1回の排出量を、ノズル列K1に属する各ノズル11aからの1回の排出量よりも多くしてもよい。
【0056】
ヘッド11Bにおいて、ノズル列Y1~Y12は、搬送方向の上流側から、この順番で並んでいる。つまり、ノズル列Y1~Y12は、ノズル列M1~M12からの距離が遠くなるように並んでいる。換言すると、搬送方向において、ノズル列Y1~Y2は、ノズル列Y3~Y12とノズル列M1~M12との間に並んでいる。また、ノズル列Y1は、搬送方向において、ノズル列M1に隣接している。このため、ノズル列M1~M12からマゼンタインクを吐出する際に発生したマゼンタインクのミストの影響は、ノズル列M1~M12に近いノズル列ほど大きいと考えられる。そこで、本実施形態のフラッシングテーブルTbでは、例えば、ノズル列Y1~Y2に属するノズル11aからのフラッシング量を40pl/secと設定し、ノズル列Y3~Y6に属するノズル11aからのフラッシング量を20pl/secと設定し、ノズル列Y7~Y12に属するノズル11aからのフラッシング量を10pl/secと設定している。つまり、ノズル列M1~M12に近いノズル列ほど、フラッシング量が多くなるように、ノズル列Y1~Y12のフラッシング量を設定している。
【0057】
同様に、ヘッド11Bにおいて、ノズル列M1~M12は、搬送方向の下流側から、この順番で並んでいる。つまり、ノズル列M1~M12は、ノズル列Y1~Y12からの距離が遠くなるように並んでいる。換言すると、搬送方向において、ノズル列M1~M2は、ノズル列M3~M12とノズル列Y1~Y12との間に並んでいる。そして、ノズル列Y1~Y12からイエローインクを吐出する際に発生したイエローインクのミストの影響は、ノズル列Y1~Y12に近いノズル列ほど大きいと考えられる。そこで、本実施形態のフラッシングテーブルTbでは、例えば、ノズル列M1~M2に属するノズル11aからのフラッシング量を20pl/secとし、ノズル列M3~M6に属するノズル11aからのフラッシング量を10pl/secと設定し、ノズル列M7~M12に属するノズル11aからのフラッシング量を0pl/secと設定している。つまり、ノズル列Y1~Y12に近いノズル列ほど、フラッシング量が多くなるように、ノズル列M1~M12のフラッシング量を設定している。
【0058】
そして、シートSが搬送方向に搬送される際には、ヘッド11Bのノズル面41BとシートSの表面との間に、搬送方向の気流が生じる。このため、ヘッド11Bでは、搬送方向の下流側に配置されているノズル列Y1~Y12の方が、搬送方向の上流側に配置されているノズル列M1~M12よりも、ミストの影響を受けやすいと考えられる。そこで、本実施形態のフラッシングテーブルTbでは、ノズル列Y1~Y2におけるフラッシング量が、ノズル列M1~M2におけるフラッシング量よりも多くなるように、ノズル列Y1~Y2及びノズル列M1~M2のフラッシング量を設定している。さらに、ノズル列Y1~Y12におけるフラッシング量の合計が、ノズル列M1~M12におけるフラッシング量の合計よりも多くなるように、各ノズル列のフラッシング量を設定している。
【0059】
なお、例えば、ノズル列K1に属する各ノズル11aから20pl/secのインクを排出し、ノズル列K3に属する各ノズル11aから10pl/secのインクを排出するためには、ノズル列K1に属する各ノズル11aから2plのインクを1秒間で10回排出し、ノズル列K3に属する各ノズル11aから2plのインクを1秒間で5回排出してもよく、ノズル列K1に属する各ノズル11aから20plのインクを1秒間で1回排出し、ノズル列K3に属する各ノズル11aから10plのインクを1秒間で1回排出してもよい。つまり、ノズル列K1に属する各ノズル11aからの単位時間あたりの排出回数を、ノズル列K3に属する各ノズル11aからの単位時間あたりの排出回数よりも多くしてもよく、ノズル列K1に属する各ノズル11aからの単位時間あたりの排出回数と、ノズル列K3に属する各ノズル11aからの単位時間あたりの排出回数とを同じとし、且つ、ノズル列K1に属する各ノズル11aからの1回の排出量を、ノズル列K3に属する各ノズル11aからの1回の排出量よりも多くしてもよい。
【0060】
次に、本実施形態のインクジェットプリンタ1における印刷処理の流れについて、
図6を参照しつつ説明する。
【0061】
まず、ステップS10において、制御装置10は、ラインヘッド4A、4Bをメンテナンス位置に位置付けた状態で、外部装置1000から印刷ジョブを受信したか判断する。印刷ジョブを受信していないと判断した場合(ステップS10:NO)、制御装置10は、ラインヘッド4A、4Bをメンテナンス位置に位置付けた状態で、印刷ジョブを受信するまで待機する。一方、印刷ジョブを受信したと判断した場合(ステップS10:YES)、制御装置10は、ステップS20の処理を実行する。
【0062】
ステップS20において、制御装置10は、ヘッド移動機構7を制御して、ラインヘッド4A、4Bをメンテナンス位置から印刷位置に移動した後、各ヘッド11A、11Bを制御して、1つの画像の印刷を開始する。そして、1つの画像の印刷を開始した後、制御装置10は、ステップS30の処理を実行する。
【0063】
ステップS30において、制御装置10は、1つの画像の印刷を開始してからの経過時間が所定時間に達したか、つまり、フラッシングタイミングであるか判断する。フラッシングタイミングではないと判断した場合(ステップS30:NO)、制御装置10は、ステップS50の処理を実行する。一方、フラッシングタイミングであると判断した場合(ステップS30:YES)、制御装置10は、ステップS40の処理を実行する。
【0064】
ステップS40において、制御装置10は、各ヘッド11A、11Bを制御して、現在印刷している1つの画像上でフラッシングを実行する。そしてフラッシングを実行した後、制御装置10は、ステップS50の処理を実行する。
【0065】
ステップS50において、制御装置10は、1つの画像の印刷が完了したか判断する。1つの画像の印刷が完了していないと判断した場合(ステップS50:NO)、制御装置10は、ステップS30の処理を実行する。一方、1つの画像の印刷が完了したと判断した場合(ステップS50:YES)、制御装置10は、ステップS60の処理を実行する。
【0066】
ステップS60において、制御装置10は、印刷ジョブに含まれる全ての画像の印刷が完了したか判断する。全ての画像の印刷が完了したと判断した場合(ステップS60:YES)、制御装置10は、ヘッド移動機構7を制御して、ラインヘッド4A、4Bを印刷位置からメンテナンス位置に移動し、印刷処理を終了する。一方、全ての画像の印刷が完了していないと判断した場合(ステップS60:NO)、制御装置10は、ステップS70の処理を実行する。
【0067】
ステップS70において、制御装置10は、次の画像の印刷を開始するタイミングであるか判断する。次の画像の印刷を開始するタイミングではないと判断した場合(ステップS70:NO)、次の画像の印刷を開始するタイミングまで待機する。一方、次の画像の印刷を開始するタイミングであると判断した場合(ステップS70:YES)、制御装置10は、ステップS20の処理を実行する。
【0068】
上記実施形態におけるフラッシングよれば、他色のインクのミストが侵入した可能性が高いノズル11aからは、混色している可能性が高いインクを確実に排出することができるとともに、他色のインクのミストが侵入した可能性が低いノズル11aからインクが必要以上に排出されるのを抑制できる。
【0069】
さらに、上記実施形態によれば、フラッシングは、画像の印刷中に印刷位置で実行されるので、ラインヘッド4A、4Bを印刷位置とメンテナンス位置との間を往復移動させる必要がない。このため、ラインヘッド4A、4Bをメンテナンス位置に移動させてフラッシングを実行する場合と比べて、印刷時間を短縮することができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能である。以下、上記実施形態の各種変形例について説明する。
【0071】
(変形例1)
インクジェットプリンタ1は、通常印刷モードの他に、高速印刷モードを備えてもよい。高速印刷モードでは、シートSの搬送速度が通常モードにおける搬送速度よりも高く設定され、各ノズル11aからの吐出周波数も通常モードにおける吐出周波数よりも高く設定されているため、通常印刷モードよりも短時間で印刷処理を完了することができる。制御装置10は、例えば、図示しないユーザインターフェースを介してユーザが入力した情報に基づいて、通常印刷モードが選択されているか高速印刷モードが選択されているか判断する。
【0072】
高速印刷モードでは、通常印刷モードよりもシートSの搬送速度が高いため、ノズル面41A、41BとシートSの表面との間に生じる搬送方向の気流は、通常印刷モードよりも強くなると考えられる。また、高速印刷モードでは、通常印刷モードよりも各ノズル11aからの吐出周波数が高いため、インクのミストは通常印刷モードよりも多く発生すると考えられる。このため、高速印刷モードでは、各ノズル11aが受けるインクのミストの影響は、通常印刷モードよりも大きくなると考えられる。
【0073】
そこで、各ヘッド11A、11BのFPGA20は、通常印刷モードでは、
図5(a)、(b)に示される量のフラッシングを実行し、高速印刷モードでは、例えば
図7(a)、(b)に示されるように、各ノズル列に属するノズル11aからのフラッシング量を、増加させてもよい。つまり、シートSの搬送速度が高くなるほど、各ノズル列に属するノズル11aからのフラッシング量を増加させてもよく、各ノズル11aからの吐出周波数が高くなるほど、各ノズル列に属するノズル11aからのフラッシング量を増加させてもよい。なお、
図7(a)、(b)に示されるフラッシング量は一例に過ぎず、これらの数値に限定することを意図するものではない。
【0074】
変形例1によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(変形例2)
インクジェットプリンタ1は、普通紙印刷モードの他に、凹凸メディア印刷モードを備えてもよい。凹凸メディア印刷モードは、通常のシートSよりも厚い媒体に印刷するためのモードである。厚紙モードにおいて、ユーザは、ヘッド昇降機構9を操作することにより、ノズル面41A、41Bと媒体の印刷面との間の上下方向の距離を、普通紙印刷モードよりも広げることができる。制御装置10は、ヘッド昇降機構9から入力される信号に基づいて、普通紙印刷モードが選択されているか凹凸メディア印刷モードが選択されているか判断する。
【0076】
凹凸メディア印刷モードでは、ノズル面41A、41Bから媒体の印刷面までの上下方向の距離が普通紙印刷モードよりも長いため、インクのミストは普通紙印刷モードよりも多く発生すると考えられる。このため、凹凸メディア印刷モードでは、各ノズル11aが受けるインクのミストの影響は、普通紙印刷モードよりも大きくなると考えられる。
【0077】
そこで、各ヘッド11A、11BのFPGA20は、普通紙印刷モードでは、
図5(a)、(b)に示される量のフラッシングを実行し、凹凸メディア印刷モードでは、例えば
図7(a)、(b)に示されるように、各ノズル列に属するノズル11aからのフラッシング量を、増加させてもよい。つまり、ノズル面41A、41Bと媒体の印刷面との間の距離が大きくなるほど、各ノズル列に属するノズル11aからのフラッシング量を増加させてもよい。なお、
図7(a)、(b)に示されるフラッシング量は一例に過ぎず、これらの数値に限定することを意図するものではない。
【0078】
変形例2によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
(変形例3)
各ヘッド11A、11Bは、例えば不揮発性メモリ30に、各ノズル11aからの吐出回数を記憶するカウンタを備えてもよく、FPGA20は、カウンタに記憶された各ノズル11aからの吐出回数に応じて、各ノズル11aからのフラッシング量を調節してもよい。
【0080】
例えば、ブラックインク、シアンインク、及びイエローインクのみが使用され、マゼンタインクが使用されない画像パターンを印刷した場合、マゼンタインクを吐出するノズル11aからの吐出回数は、当該画像パターンを印刷する前から変化しない。また、マゼンタインクのミストが発生しないので、ノズル列Y1~Y12に属するノズル11aにマゼンタインクのミストが侵入するおそれもない。このため、当該画像パターンを印刷した後に実行するフラッシングでは、FPGA20は、例えば
図8(a)、(b)に示すように、ノズル列K1~K12、C1~C12、及びM1~M12からのフラッシング量を上記実施形態と同じとし、ノズル列Y1~Y12からのフラッシング量をゼロとしてもよい。つまり、ヘッド11Aにおいて、ノズル列K1~K12からの吐出回数に基づいて、ノズル列C1~C12からのフラッシング量を調節してもよく、ノズル列C1~C12からの吐出回数に基づいて、ノズル列K1~K12からのフラッシング量を調節してもよい。同様に、ヘッド11Bにおいて、ノズル列M1~M12からの吐出回数に基づいて、ノズル列Y1~Y12からのフラッシング量を調節してもよく、ノズル列Y1~Y12からの吐出回数に基づいて、ノズル列M1~M12からのフラッシング量を調節してもよい。なお、
図8(a)、(b)に示されるフラッシング量は一例に過ぎず、これらの数値に限定することを意図するものではない。
【0081】
変形例3によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、各ヘッド11A、11Bにおいて、一方の色のインクを吐出可能なノズル11aからのフラッシング量を、他方の色のインクを吐出可能なノズル11aからの吐出回数に応じて、より適切に調節することができる。
【0082】
(変形例4)
上記実施形態では、ヘッド11Aからはブラックインクとシアンインクとを吐出可能であり、ヘッド11Bからはマゼンタインクとイエローインクとを吐出可能であったが、ヘッド11Aから吐出可能なインクの色の組み合わせ及びヘッド11Bから吐出可能なインクの色の組み合わせは、これに限られない。例えば、ヘッド11Aからはブラックインクとイエローインクとを吐出可能であり、ヘッド11Bからはシアンインクとマゼンタインクとを吐出可能であってもよい。そして、ヘッド11Aのノズル面41Aでは、搬送方向上流側から、ノズル列K12~K1と、ノズル列Y1~Y12とがこの順で並んでおり、ヘッド11Bのノズル面41Bでは、搬送方向の上流側から、ノズル列C12~C1と、ノズル列M1~M12とがこの順で並んでいてもよい。
【0083】
ここで、
図9(a)に示すように、シートS、ブラックインク、イエローインク、シアンインク、及びマゼンタインクの、Lab色空間における明度(L)がそれぞれ、95、10、89、51、55である場合、ブラックインク、イエローインク、シアンインク、及びマゼンタインクの、シートSとの明度差はそれぞれ、85、6、44、40となる。そして、ブラックインクとシートSとの明度差と、イエローインクとシートSとの明度差との差は79であり、シアンインクとシートSとの明度差と、マゼンタインクとシートSとの明度差との差は4となる。これは、ブラックインクとイエローインクとが混ざった場合の方が、シアンインクとマゼンタインクとが混ざった場合よりも視認性が高い(目立ちやすい)ことを意味していると考えられる。また、ブラックインクの明度とイエローインクの明度とでは、イエローインクの明度の方が、ブラックインクの明度よりもシートSの明度に近い。このため、ブラックインクのミストがイエローインクに混ざった場合の方が、イエローインクのミストがブラックインクに混ざった場合よりも視認性が高い(目立ちやすい)と考えられる。
【0084】
そこで、
図9(b)に示す本変形例のフラッシングテーブルTa´では、ノズル列Y1~Y12におけるフラッシング量の合計が上記実施形態よりも大きくなるようにノズル列Y1~Y12におけるフラッシング量を設定するとともに、ノズル列K1~K12におけるフラッシング量の合計が上記実施形態よりも小さくなるようにノズル列K1~K12におけるフラッシング量を設定している。一方、
図9(c)に示す本変形例のフラッシングテーブルTb´では、ノズル列C1~C12におけるフラッシング量の合計、及びノズル列M1~M12におけるフラッシング量の合計がそれぞれ、上記実施形態よりも小さくなるようにノズル列C1~C12及びノズル列M1~M12におけるフラッシング量を設定している。つまり、ブラックインクとシートSとの明度差と、イエローインクとシートSとの明度差との差に基づいて、ノズル列K1~K12及びノズル列Y1~Y12におけるフラッシング量を調節している。同様に、シアンインクとシートSとの明度差と、マゼンタインクとシートSとの明度差との差に基づいて、ノズル列C1~C12及びノズル列M1~M12におけるフラッシング量を調節している。なお、
図9(b)、(c)に示されるフラッシング量は一例に過ぎず、これらの数値に限定することを意図するものではない。
【0085】
変形例4によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、異なるインクの色どうしが混ざった場合の視認性(目立ちやすさ)に応じて、フラッシング量を適切に調節することができる。
【0086】
なお、上記変形例1~4は、単独で又は適宜組み合わせて、上記実施形態に適用することができる。
【0087】
(変形例5)
上記実施形態の印刷処理において、制御装置10は、各ヘッド11A、11Bを制御して、現在印刷している画像上でフラッシングを実行したが、これには限られない。例えば、画像上ではフラッシングは実行せず、1つの画像の印刷が完了した後、次の画像の印刷が開始する前に、フラッシングを実行してもよい。
【0088】
この変形例について、
図10を参照しつつ説明する。なお、
図6に示される処理と同じ処理については、説明を適宜省略する。
【0089】
ステップS20において1つの画像の印刷を開始した後、制御装置10は、ステップS50の処理を実行する。
【0090】
そしてステップS50において、1つの画像の印刷が完了したと判断した場合(ステップS50:YES)、制御装置10は、ステップS60の処理を実行する。
【0091】
ステップS60において、制御装置10は、印刷ジョブに含まれる全ての画像の印刷が完了したか判断する。全ての画像の印刷が完了したと判断した場合(ステップS60:YES)、制御装置10は、印刷処理を終了する。一方、全ての画像の印刷が完了していないと判断した場合(ステップS60:NO)、制御装置10は、ステップS61の処理を実行する。
【0092】
ステップS61において、制御装置10は、1つの画像の印刷が完了してから所定時間が経過したか、つまり、フラッシングタイミングであるか判断する。フラッシングタイミングではないと判断した場合(ステップS61:NO)、制御装置10は、ステップS70の処理を実行する。一方、フラッシングタイミングであると判断した場合(ステップS61:YES)、制御装置10は、ステップS62の処理を実行する。
【0093】
ステップS62において、制御装置10は、各ヘッド11A、11Bを制御して、印刷が完了した1つの画像と次の画像との間の余白に対して、フラッシングを実行する。そしてフラッシングを実行した後、制御装置10は、ステップS70の処理を実行する。
【0094】
変形例5によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、画像上ではフラッシングを実行しないので、フラッシングの際に排出されたインクによる、印刷中の画像への影響は、上記実施形態よりも小さい。
【0095】
(変形例6)
上記変形例5では、画像上ではフラッシングは実行せず、1つの画像の印刷が完了した後、次の画像の印刷が開始する前に、フラッシングを実行したが、これには限られない。例えば、画像上でフラッシングを実行しつつ、印刷が完了した1つの画像と次の画像との間の余白に対してもフラッシングを実行してもよい。つまり、
図11に示されるような印刷処理を実行してもよい。なお、
図11における各ステップの処理内容は、
図6及び
図10と同じため、説明は省略する。
【0096】
変形例6によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
(変形例7)
制御部10は、上記実施形態、並びに上記変形例5及び6において、ラインヘッド4A、4Bがメンテナンス位置に位置付けられた状態でフラッシングを実行してもよい。具体的には、制御部10が、ステップS10において印刷ジョブを受信したと判断した(ステップS10:YES)後、ステップS20においてラインヘッド4A、4Bを印刷位置に移動する前に、メンテナンスユニット8のキャップ8A、8B上でフラッシングを実行することにより、キャップ8A、8Bの中にインクを排出してもよい。さらに、制御部10が、ステップS60において全ての画像の印刷が完了したと判断し(ステップS60:YES)、ラインヘッド4A、4Bをメンテナンス位置に移動した後、メンテナンスユニット8のキャップ8A、8B上でフラッシングを実行することにより、キャップ8A、8Bの中にインクを排出してもよい。
【0098】
変形例7によっても、上記実施形態と同様に、他色のインクのミストが侵入した可能性が高いノズル11aからは、混色している可能性が高いインクを確実に排出することができ、他色のインクのミストが侵入した可能性が低いノズル11aからインクが必要以上に排出されるのを抑制できる。
【0099】
(変形例8)
上記実施形態及び上記各変形例に係るインクジェットプリンタ1は、ラインヘッド4A、4B及びヘッドホルダ6A、6Bを備えていたが、この構成には限られない。例えば、
図12に示されるように、ラインヘッド4A、4B及びヘッドホルダ6A、6Bに代えて、ヘッド11A、11Bを1個ずつ搭載したキャリッジ106を備えてもよい。さらに、シート幅方向沿って平行に延びる2本のガイドレール15、16と、ガイドレール16に設けられたプーリ118、119と、プーリ118、119に掛け回され且つキャリッジ106と接続された無端ベルト117とを備えてもよい。そして、図示しないモータによりプーリ118、119が回転することにより、無端ベルト117がシート幅方向に沿って走行し、無端ベルト117の走行に伴って、キャリッジ106がシート幅方向に往復移動するように構成されてもよい。この構成において、ヘッド11Aとヘッド11Bはシート幅方向に並んでおり、ヘッド11Aはヘッド11Bの左側に配置されている。そして、ヘッド11Aでは、ノズル列K12~K1がシート幅方向の左から順に並んでおり、さらにその右側には、ノズル列C1~C12がシート幅方向の左から順に並んでいる。同様に、ヘッド11Bでは、ノズル列M12~M1がシート幅方向の左から順に並んでおり、さらにその右側には、ノズル列Y1~Y12がシート幅方向の左から順に並んでいる。そして、キャリッジ106がシート幅方向に沿って右から左に移動する際に、つまり、ヘッド11A、11BをシートSに対して相対的に移動させる際に、ヘッド11A、11BからシートSに対してインクを吐出することにより、シートSに対して印刷が行われるように構成されてもよい。この構成において、シート幅方向の左から右に向かう向きは、本発明の所定の方向の一例である。
【0100】
上記のような構成を有するインクジェットプリンタ1に対しても、上記実施形態及び上記変形例1~4におけるフラッシング技術を、単独で又は適宜組み合わせて、適用することができる。例えば、上記のような構成を有するインクジェットプリンタ1に変形例1を適用し、キャリッジ106の移動速度が高くなるほど、各ノズル列に属するノズル11aからのフラッシング量を増加させてもよい。
【0101】
変形例8においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0102】
シートSは、紙に限定されず、例えば、樹脂製のフィルムや布等であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 インクジェットプリンタ
4A、4B ラインヘッド
5A、5B 搬送ローラ
7 ヘッド移動機構
8 メンテナンスユニット
8A、8B キャップ
9 ヘッド昇降機構
10 制御装置
11A、11B ヘッド
11a ノズル
12 個別流路
12a 圧力室
13 共通流路
20 FPGA
30 不揮発性メモリ
33 制御線
34 信号線
41A、41B ノズル面
42 流路基板
43 駆動素子
44 ドライバIC
Ta、Tb、Ta´、Tb´ フラッシングテーブル
106 キャリッジ
115、116 ガイドレール
117 無端ベルト
118、119 プーリ
1000 外部装置