(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104135
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】軟包材シート、包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20220701BHJP
B65D 75/26 20060101ALI20220701BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D75/26
B32B15/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219160
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】昭和電工パッケージング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】苗村 正
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E067AB01
3E067AB81
3E067AB96
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3E067BB14A
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3E086CA01
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3E086CA29
4F100AB01D
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4F100JL12E
(57)【要約】 (修正有)
【課題】表面保護層と、印刷インキ層と、金属箔よりなるバリア層と、シーラント層とを少なくとも備える軟包材シートであって、当該表面保護層を通じて摩擦や衝撃等の力を加えたり、水中で大きく変形させたりした場合にも印刷像にズレや掠れ、脱落等の欠陥が生じ難いものを提供すること。
【解決手段】印刷インキ層11とバリア層13との間に、-30℃~60℃のガラス転移温度を有する飽和共重合ポリエステル樹脂を含む印刷アンカーコート層12を介在させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を袋状容器に収納してなる包装体を作製するために用いる軟包材シートであって、
前記軟包材シートは、外側より順に、
オーバープリントコート層と、
印刷インキ層と、
印刷アンカーコート層と、
金属箔よりなるバリア層と、
熱融着性樹脂よりなるシーラント層と、
を少なくとも備えており、
前記印刷アンカーコート層を構成するアンカーコート剤が、-30℃~60℃のガラス転移温度を有する飽和共重合ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする、
軟包材シート。
【請求項2】
前記オーバープリントコート層をなすオーバーコート剤がセルロース系オーバーコート剤よりなる、請求項1の軟包材シート。
【請求項3】
前記バリア層と前記シーラント層との間に、合成樹脂フィルムよりなる補強層が配置させられている、請求項1又は2の軟包材シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの軟包材シートよりなる袋状容器に内容物を収納したのち、この袋状容器の開口縁部をヒートシールしてなる、密封された包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟包材シート及びこの軟包材シートよりなる袋状容器に内容物を充填してなる包装体、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や医薬品、化学品等の長期保管を要する製品は、例えば、上方開口の成形容器に収容したのち蓋材で熱封緘したソリッド包装体として、或いは、各種軟包材シートよりなる袋状容器(軟包装容器)に密封した包装体として、市場を流通している。
【0003】
軟包材シートとしては、例えば特許文献1に、少なくとも表面保護層と、アルミニウム箔よりなるバリア層と、熱融着性樹脂フィルムよりなるシーラント層とを備えるシートが記載されている。また同文献には、包装体として、このシートを矩形状に加工したのちシーラント層が内側となるように二つ折りし、左右の縁部をサイドシールして上方開口の袋状容器を作製してから、この容器に内容物を収納し、開口部をトップシールしてなる態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、包装体の表面には、内容物の情報を表示したり、広告等の意匠をあしらったりする目的で、これをなす軟包材シートのバリア層上面側に印刷インキ層を設けることがある。しかし、軟包材シート及びこれを用いてなる包装体の保管環境や使用状況によっては、印刷像にズレや掠れ、脱落等の欠陥(以下、単に印刷欠陥と略すことがある。)が生じることがあり、この印刷欠陥は、かかる軟包材シートや軟包装体の表面に接触する水分によっても惹起される。
【0006】
例えば、内容物が室温でも変質したり、劣化したりしやすい食品や医薬品、化学薬品等である場合、包装体は、10℃以下程度の低温で保管される。このとき湿度が高いと包装体の表面に結露が生じ、この結露水が軟包材シートの内部に経時的に浸透するとともに、印刷インキ層とバリア層の界面にも浸入することによって、両層の密着力が低下する事態が生じ得る。結果、保管後に包装体をベルトコンベアーで輸送したり、段ボール箱に梱包したり、開梱後に店頭に陳列させたりするさい、包装体表面に強い摩擦や衝撃等の外力が加わったり、包装体じたいが大きく変形させられたりすると、その表面に前記印刷欠陥が生じ得、外観が損なわれる。そのため、軟包装体を構成する軟包材シートは、それら外力や変形等に因る前記印刷欠陥が、畢竟、水中でも生じないことが理想と考える。
【0007】
上記理念に基づき、本発明者は、表面保護層と、印刷インキ層と、金属箔よりなるバリア層と、シーラント層とを少なくとも備える軟包材シートであって、当該表面保護層に摩擦や衝撃等の外力が加わったり、水中に一定時間浸漬させた状態で変形させたりした場合にも、印刷インキ層にズレや掠れ、脱落等の印刷欠陥が生じ難いものを提供することを、本発明の課題に設定した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は検討の結果、前記軟包材シートの表面保護層をオーバープリントコート剤で構成するとともに、その印刷インキ層とバリア層との間に印刷アンカーコート層を介在させ、かつ、この層を形成するアンカーコート剤として所定範囲のガラス転移温度を有する飽和共重合ポリエステル樹脂を用いることによって、この軟包材シートに前記印刷欠陥が生じ難くなることを見出し、本発明を完成させた。即ち本発明は、以下に示す軟包材シート及び包装体に関する。
【0009】
1)内容物を袋状容器に収納してなる包装体を作製するために用いる軟包材シートであって、この軟包材シートは、外側より順に、オーバープリントコート層と、印刷インキ層と、印刷アンカーコート層と、金属箔よりなるバリア層と、熱融着性樹脂よりなるシーラント層とを少なくとも備えており、この印刷アンカーコート層を構成するアンカーコート剤が、-30℃~60℃のガラス転移温度を有する飽和共重合ポリエステル樹脂を含むことを特徴とする、軟包材シート。
【0010】
2)前記オーバープリントコート層をなすオーバーコート剤がセルロース系オーバーコート剤よりなる、1)の軟包材シート。
【0011】
3)前記バリア層と前記シーラント層との間に、合成樹脂フィルムよりなる補強層が配置させられている、1)又は2)の軟包材シート。
【0012】
4)1)~3)のいずれかの軟包材シートよりなる袋状容器に内容物を収納したのち、この袋状容器の開口縁部をヒートシールしてなる、密封された包装体。
【発明の効果】
【0013】
1)の軟包材シートは、表面保護層をオーバープリントコート剤で構成するとともに、印刷インキ層とバリア層の間に介在させる印刷アンカーコート層を、ガラス転移温度が-30℃~60℃の飽和共重合ポリエステル樹脂よりなるアンカーコート剤で形成した点に特徴があり、当該表面保護層に摩擦や衝撃等の外力が加わったり、水中に一定時間浸漬させた状態で変形させたりした場合にも、印刷インキ層にズレや掠れ、脱落等の印刷欠陥が生じ難い。
【0014】
2)の軟包材シートは、オーバープリントコート層がセルロース系オーバーコート剤よりなり、高い耐水性を有するため、この軟包材シートよりなる包装体には印刷欠陥が一層生じ難い。
【0015】
3)の軟包材シートは、バリア層とシーラント層との間に合成樹脂フィルムよりなる補強層が配置させられており、この補強層によって全体の強度が高められているため、この軟包材シートよりなる包装体には印刷欠陥がより一層生じ難い。また、この補強層によりこの軟包材シートは所謂デッドホールド性が高められており、加工のために折り畳んでも戻りがほとんどないため、複雑な形状の袋状容器の作製が容易である。
【0016】
4)の包装体は、1)~3)のいずれかの軟包材シートよりなる袋状容器に内容物を収納したのち、この袋状容器の開口縁部をヒートシールしてなる密封製品であり、その表面に水が接触した後、摩擦や衝撃力等の外力や大きな変形が加わったとしても、前記印刷欠陥が生じ難く、かかる効果は、特に2)の軟包材シートにおいて良好である。また、4)の包装体のうち3)の軟包材シートを用いたものは、この軟包材シートの全体の強度が所定の補強層によって高められているとともに、デッドホールド性にも優れるため、印刷欠陥防止性がより一層良好であるとともに、形態保持性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】本発明の包装体の斜視図と、開口部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る軟包材シート(1)、並びにこれよりなる袋状容器(2)、及びこれに内容物(C)を充填してなる包装体(3)について、
図1~3を通じて詳細に説明する。ただしそれら図面により本発明の範囲が限定されることはない。
【0019】
図1は、軟包材シート(1)の断面図である。
図1(a)の態様は、最外層たるオーバープリントコート層(10)と、印刷インキ層(11)と、印刷アンカーコート層(12)と、バリア層(13)と、接着剤層(14)と、補強層(15)と、内面側アンカーコート層(16)と、最内層たるシーラント層(17)とを備える。この態様では印刷インキ層(11)が断続層であり、オーバープリントコート層(10)は部分的に印刷アンカーコート層(12)と密着させられている。なお、接着剤層(14)、補強層(15)及び内面側アンカーコート層(16)は任意であり、省略できる。
図1(b)の態様は、
図1(a)の軟包材シート(1)において、印刷インキ層(11)が連続層とさせられた態様である。
図1(c)の態様は、
図1(b)の軟包材シート(1)において、補強層(15)及び内面側アンカーコート層(16)が省略させられた態様である。
【0020】
オーバープリントコート層(10)は、軟包材シート(1)の保護層兼耐水層である。このオーバープリントコート層(10)により、包装体(3)の表面に接触した水が印刷インキ層(12)に到達し難くなるとともに、軟包材シート(1)及び包装体(3)の表面に加わる外力や変形等に因る印刷インキ層(12)の印刷欠陥も防止でき、それらに因るバリア層(13)のクラックやピンホール等の欠陥をも予防できる。
オーバープリントコート層(10)は、各種公知のオーバーコート剤で構成する。このオーバーコート剤は、各種公知のバインダー樹脂を溶媒に溶解させてなる組成物であり、硬化剤(後述)やその他機能性の添加剤(後述)を含め得る。
バインダー樹脂としては、例えば、シェラック樹脂等の動物系オーバーコート剤、合成樹脂系オーバーコート剤、及びセルロース系オーバーコート剤等からなる群より選ばれる少なくとも一種が挙げられる。合成樹脂系オーバーコート剤としては、例えばエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、及びポリエステル樹脂(不飽和共重合ポリエステル樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂等)等が挙げられる。セルロース系オーバーコート剤としては、例えばニトロセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース及び酢酸・酪酸セルロース等が挙げられる。これらの中でも耐水性が良好であり、印刷欠陥防止性に長ける点で、セルロース系オーバーコート剤が好ましく、特にニトロセルロース及び/又は酢酸セルロースが好ましい。
溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等が挙げられる(以下、溶媒というときは同様。)。
硬化剤としては、例えばポリイソシアネート、ポリエポキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物、ケチミン化合物及びメラミン化合物等が挙げられる(以下、硬化剤というときは同様。)。
オーバープリントコート層(10)は、オーバーコート剤を印刷インキ層(11)に塗工し、通常80~170℃で乾燥させることによって、形成できる。塗工量は特に限定されず、例えば通常0.3~1g/m2、好ましくは0.4~0.7 g/m2であればよい。
オーバープリントコート層(10)の層数は限定されず、シングルコートであってもよいし、二層以上のマルチコートであってもよい。マルチコートは、同一種のオーバーコート剤で構成してもよいし、二種以上のオーバーコート剤で構成してもよい。
オーバープリントコート層(10)の厚みも特に制限されず、例えば保護層としての強度を確保するとともに耐水層としてのバリア機能を考慮すると、通常0. 3~2μm、好ましくは0.4~1.5μmであればよい。
【0021】
印刷インキ層(11)は、軟包材シート(1)、袋状容器(2)及び包装体(3)の各表面に、内容物(C)の情報や、意匠を与える層であり、各種公知の印刷インキで構成する。
印刷インキは、着色材及びバインダー樹脂を含む組成物であり、活性エネルギー線非硬化型のものと、硬化型のものとが挙げられる。
着色材としては、顔料及び/又は染料が挙げられる。顔料としては例えば二酸化チタン、亜鉛華、グロスホワイト、パライト、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、沈降性シリカ、エアロジル、タルク、アルミナホワイト、マイカ、合成ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、カーボンブラック、マグネタイト及びベンガラ等の、有機系又は無機系の顔料が挙げられる。尚、顔料のサイズは特に限定されず、例えば平均一次粒子径が通常0.1~5μm、好ましくは0.5~3μmであればよい。一方、染料としては、例えばアントラキノン系染料、アゾ系染料及びキノリン系染料等が挙げられる。着色材の含有量は特に限定されず、通常0.5~40重量%、好ましくは2~10重量%であればよい。
バインダー樹脂としては、活性エネルギー線非硬化型バインダー樹脂及び/又は活性エネルギー線硬化型バインダー樹脂が挙げられる。前者バインダー樹脂としては、例えばシェラック樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース及び酢酸・酪酸セルロース、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及びポリエステル樹脂(不飽和共重合ポリエステル樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂等)等が挙げられる。一方、後者バインダー樹脂としては、例えば各種公知のジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレート、並びに分子内に(メタ)アクリロイル基を5~6個有する(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。なお、ポリ(メタ)アクリレート類には、各種公知のウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートといった変性ポリ(メタ)アクリレートが含まれる。活性エネルギー線としては、紫外線や電子線等が挙げられる。
印刷インキには、任意に溶媒、硬化剤、重合開始剤、その他の添加剤を含め得る。溶媒には、バインダー樹脂が活性エネルギー線硬化型の場合において、各種公知の(メタ)アクリレートを反応性希釈剤として含めることができる。重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン系開始剤、アセトフェノン系開始剤及びベンゾイン系開始剤等の光重合開始剤が挙げられる。添加剤としては、界面活性剤、可塑剤、シランカップリング剤、帯電防止剤等が挙げられる。
印刷インキ層(11)は、グラビア印刷やオフセット印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷法で形成でき、単色刷りであってもよいし、多色刷りであってもよい。
印刷インキ層(11)全体の厚みは特に限定されず、例えば印刷欠陥の予防の観点より、通常0.5~4μm、好ましくは0.8~3μmであればよい。
【0022】
印刷アンカーコート層(12)は、印刷インキ層(11)とバリア層(13)を接合する層であり、両層間に印刷アンカーコート層(12)を介在させることによって、オーバープリントコート層(10)の表面に接触した水が印刷インキ層(11)に達しても、印刷インキ層(11)とバリア層(13)の密着力が低下し難くなる。そのため、軟包材シート(1)、袋状容器(2)及び包装体(3)の各表面に摩擦や衝撃等の外力が加わったり、それらが水中で過度に変形させられたりした場合であっても前記印刷欠陥が生じ難くなると考えられる。
印刷アンカーコート層(12)を構成するアンカーコート剤(以下、外面側アンカーコート剤ともいう。)は、ガラス転移温度(JIS K7121-2012)が-30℃以上60℃以下の飽和共重合ポリエステル樹脂よりなり、前記溶媒を含む。
飽和共重合ポリエステル樹脂は各種公知の方法で製造できる。構成原料としては、ポリオール、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン及び不飽和モノマーが挙げられる。ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA及びビスフェノールA-アルキレンオキサイド付加体等の脂肪族、脂環族乃至芳香族のジオール、並びにグリセリン、トリメチロールプルパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン及びジトリメチロールエタン等のトリ乃至テトラオール等が挙げられる。また、ポリカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びフマル酸等の脂肪族、脂環族乃至芳香族のジカルボン酸、並びにトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸及び無水ピロメリット酸等のトリ乃至テトラカルボン酸等が挙げられ、これらはアルコールエステルであってもよい。当該アルコールとしては、メタノール、エタノール及びブタノール等が挙げられる。また、ヒドロキシカルボン酸としては、例えばp-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシエトキシ安息香酸、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸及び酒石酸等が挙げられ、二種以上を併用できる。また、ラクトンとしては、β-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン及びε-カプロラクトン等が挙げられる。また、不飽和モノマー(グラフトモノマー)としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びフマル酸等が挙げられる。
飽和共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が-30℃未満であると印刷アンカーコート層(12)が柔らかくなりすぎ、また60℃を超えると印刷アンカーコート層(12)が硬くなりすぎ、いずれの場合も印刷インキ層(12)に印刷欠陥が、特に軟包材シート(1)を水中で処理した場合において、強く生じる傾向にある。この観点より、ガラス転移温度は、好ましくは-20℃以上40℃以下であるのがよい。
飽和共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、各種公知の手段で調節できる。例えば構成原料の観点より、ガラス転移温度を低めたい場合には脂肪族ポリオール及び/又は脂肪族ポリカルボン酸を選択すればよい。また、ガラス転移温度を高めたい場合にはトリ乃至テトラオール、及びトリ乃至テトラカルボン酸を選択できる。また、ガラス転移温度は飽和共重合ポリエステル樹脂の分子量の調節によっても調節できる。分子量は、具体的には、数平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法におけるポリスチレン換算値)で通常8000~20000であればよい。分子量の調節手段としては、例えば重縮合反応を減圧下に行う方法等が挙げられる。
外面側アンカーコート剤は、一液硬化型及び二液硬化型のいずれであってもよく、前記硬化剤を含めることができる。
外面側アンカーコート剤には、機能性の添加剤を含めてもよい。例えば界面活性剤を含めると印刷アンカーコート層(12)の表面張力を調節でき、例えば印刷抜け(印刷インキの非印字部分)の回避が可能となる。また、可塑剤を含めると印刷アンカーコート層(12)の硬さを調節でき、印刷の掠れや脱落の防止が可能となる。また、シランカップリング剤を含めると、印刷アンカーコート層(12)とバリア層(13)との密着性が向上する結果、印刷欠陥の防止が可能となる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。可塑剤としては脂肪族ジカルボン酸アルキルエステルとして例えばアジピン酸アルキルエステル及びリン酸アルキルエステル、トリメリット酸エステルアルキル等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えばγ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及びγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。添加剤の含有量は特に限定されず、通常0.1~4重量%であればよい。
印刷アンカーコート層(12)は、外面側アンカーコート剤をバリア層(13)の片面に塗工し、例えば70~90℃で乾燥させることによって形成できる。塗工量は特に限定されず、例えば通常1~5g/m2、好ましくは2~4 g/m2であればよい。
印刷アンカーコート層(12)は、水の接触角が通常65~80°、好ましくは70~78°であると、印刷欠陥を好適に防止できる。この接触角は、印刷アンカーコート層(12)の表面に1μLの水を滴下し30秒経過した後の測定値であり、各種公知の水接触角計で測定できる。
印刷アンカーコート層(12)の厚みは特に制限されず、印刷欠陥防止性や、印刷インキ層(11)と印刷アンカーコート層(12)との密着性等を考慮すると、通常0.5~3μm、好ましくは0.8~2μmであればよい。
【0023】
バリア層(13)は、包装体(3)の内容物(C)をガスや水蒸気、光等から保護するための層であり、金属箔で構成する。
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔及びニッケル箔等が挙げられ、バリア機能、成形性及びコスト等を考慮するとアルミニウム箔が好適である。アルミニウム箔としては、純アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔が挙げられ、軟質材(O材)が好ましく、特にJIS H4160で規定される1000系のアルミニウム合金箔のO材又は8000系アルミニウム合金箔のO材が好適である。
金属箔が適度な表面粗さを有する場合、印刷アンカーコート層(12)とバリア層(13)の密着性が良好になるとともに、印刷欠陥も生じ難くなる。表面粗さは、例えば算術平均粗さRa(JIS B0601-2013)が0.05μm~1μmであればよい。
金属箔の外面及び/又は内面には所定の化成処理液よりなる下地層(図示略)を形成できる。化成処理液としては、例えば、リン酸と、クロム系化合物と、フッ素系化合物及び/又はバインダー樹脂とを含む水-アルコール溶液が挙げられる。クロム系化合物としてはクロム酸及び/又はクロム(III)塩を、フッ素系化合物としてはフッ化物の金属塩及び/又はフッ化物の非金属塩を、バインダー樹脂としてはアクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂等が、夫々挙げられる。化成処理液の使用量は特に限定されず、通常、金属箔の片面当たりのクロム付着量が0.1~50mg/m2となる範囲であればよい。
バリア層(13)の厚みは特に限定されないが、例えば軟包材シート(1)全体の強度と、印刷欠陥防止性及びデッドホールド性とのバランスを考慮すると、通常6~50μm、好ましくは10~35μmであればよい。
【0024】
接着剤層(14)は、バリア層(13)とシーラント層(17)の間のデラミネーション予防のために利用する任意の層である。例えば軟包材シート(1)に補強層(15)を設ける場合、この補強層(15)が接着剤層(14)を介してバリア層(13)と接合させられるため、軟包材シート(1)全体の強度が高まり、ひいては印刷欠陥の予防にもつながる。
接着剤層(14)は、各種公知の接着剤で構成する。具体的には、例えば塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系接着剤や、ポリエステル樹脂系接着剤(不飽和共重合ポリエステル樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂等)、ポリウレタン樹脂系接着剤等が挙げられる。なかでもポリウレタン樹脂系接着剤、特に二液硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤は、バリア層(13)と接着剤層(14)の密着性の点で好ましい。
二液硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤としては、特に二液硬化型ポリエーテル-ウレタン樹脂系接着剤及び/又は二液硬化型ポリエステル-ウレタン樹脂系接着剤が好適である。これらはいずれも主剤と硬化剤よりなり、主剤としては各種公知のポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールが挙げられ、また、硬化剤としては各種公知のポリイソシアネートを使用できる。ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リレンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネート、並びにそれらの誘導体(イソシアヌレート体、ビウレット体及びアダクト体等)が挙げられる。
接着剤層(14)の厚みは特に限定されないが、前記デラミネーションの予防効果等を考慮すると、通常1~5μm、好ましくは2~3.5μmであればよい。
【0025】
補強層(15)は、軟包材シート(1)の全体の強度を高めることによって、印刷欠陥防止性やデッドホールド性を向上させるための任意の層であり、各種公知の合成樹脂フィルムで構成する。
合成樹脂フィルムは、延伸型及び無延伸型のいずれであってもよく、例えばポリアミドフィルム、ポリオレフィンフィルム及びポリエステルフィルムが挙げられる。ポリアミドフィルムとしては、例えば6-ナイロンフィルム等が挙げられる。また、ポリオレフィンフィルムとしては、例えば高密度ポリエチレンフィルム、中密度ポリエチレンフィルム、線状低密度ポリエチレンフィルム、ホモポリプロピレンフィルム、ポリ(エチレン-プロピレン)ランダム共重合体フィルム及びポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体フィルム等が挙げられ、これらは無水マレイン酸や酢酸ビニル等で酸変性されていてもよい。また、ポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム及びポリブチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
合成樹脂フィルムのうちポリエステルフィルムによると、軟包材シート(1)の全体の強度が高まるため、軟包材シート(1)や袋状容器(2)、包装体(3)が大きく変形した場合にも印刷欠陥が生じ難くなり、また、軟包材シート(1)のデッドホールド性も良好となる。かかる観点より、ポリエステルフィルムとしては延伸ポリエステルフィルムが特に好ましい。
補強層(15)の厚みは特に限定されないが、印刷欠陥の予防及びデッドホールド性等の観点より、通常10~50μm、好ましくは10~35μmであればよい。
【0026】
内面側アンカーコート層(16)は、補強層(15)とシーラント層(17)とを接着させる目的で利用する任意の層であり、この目的を達するアンカーコート剤(以下、内面側アンカーコート剤ともいう。)であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。
内面側アンカーコート剤としては、具体的には、ポリエステル樹脂系アンカーコート剤及び/又は接着剤を使用できる。前者アンカーコート剤は、一液硬化型及び二液硬化型のいずれであってもよく、シーラント層(17)を後述のホットメルト接着剤で構成する場合に有用であって、例えば印刷アンカーコート層(12)をなす外面側アンカーコート剤と同じものを使用できる。また、後者接着剤は、シーラント層(17)を後述の熱融着性樹脂フィルムで構成する場合に有用であり、例えば接着剤層(14)をなす接着剤と同じものを、特に二液硬化型ポリエーテル-ウレタン樹脂系接着剤及び/又は二液硬化型ポリエステル-ウレタン樹脂系接着剤を好適に使用できる。
内面側アンカーコート層(16)の厚みは特に限定されないが、シーラント層(17)との接着性の観点より、通常1~5μm、好ましくは2~3.5μmであればよい。
【0027】
シーラント層(17)は、軟包材シート(1)の最内面を構成するとともに、包装体(3)の内面を構成する層であり、各種公知の各種公知のホットメルト接着剤及び/又は熱融着性樹脂フィルムよりなる。
【0028】
ホットメルト接着剤としては、ベース樹脂、ワックス及び粘着付与樹脂を含む組成物が挙げられる。ベース樹脂としては、ポリオレフィン樹脂及びエチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、ポリオレフィン樹脂としては高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ポリ(エチレン-プロピレン)ランダム共重合体及びポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。また、酢酸ビニル共重合体としては例えばエチレン・エチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。また、粘着付与樹脂としては、ロジン、不均化ロジン、水素化ロジン及び重合ロジン等のロジン類、並びにロジン類とグリコール、グリセリン及びペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル類、並びにテルペン及び/又はスチレン等を構成モノマーとする炭化水素樹脂等が挙げられる。また、ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、シリコン系ワックス(シリコーンワックス)、フッ素系ワックス及びアミド系ワックス等が挙げられる。
シーラント層(17)をホットメルト接着剤で構成する手段としては、ホットアプリケーターやグラビアコーター等が挙げられる。
【0029】
熱融着性樹脂フィルムは、無延伸型及び延伸型のいずれかであればよく、このフィルムをなす熱融着性樹脂としては、例えばポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニル樹脂及びポリスルホン樹脂等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、例えばホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレン等のポリプロピレン類、並びに低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレン等のポリエチレン類、並びにポリ(エチレン-プロピレン)ランダム共重合体及びポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体等のポリエチレン・プロピレン類等が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。ポリビニル樹脂としてはポリスチレン樹脂等が挙げられる。
熱融着性樹脂フィルムは、単層又は多層であってよい。多層の熱融着性樹脂フィルムは、同一樹脂種の単層熱融着性樹脂フィルムが二以上組合さったものであってよく、樹脂種が異なる単層熱融着性樹脂フィルムが二以上組み合わさったものであってもよい。具体的には、一種又は二種以上の上記熱融着性樹脂を共押し出ししてなる多層フィルムや、例えば上記ポリプロピレン類よりなるフィルムと上記ポリビニル樹脂よりなるフィルムを任意の順序で組み合わせてなる多層シーラントフィルムが挙げられる。
熱融着性樹脂フィルムとしては、包装体(3)の開封時に凝集剥離しうる態様(
図3(c)参照)のものが好ましい。そのようなものとしては、例えば低密度ポリエチレン樹脂フィルムが好ましく、無添加のものが特に好ましい。
【0030】
シーラント層(17)の厚みは特に限定されないが、シール精度やシール強度を考慮すると、通常10~60μm、好ましくは24~45μmであればよい。
【0031】
軟包材シート(1)は、例えば、ドライラミネート法や溶融押し出しラミネート法、ヒートラミネート法、グラビアコート法等の各種公知の方法で製造できる。これら方法は組み合わせてもよい。
【0032】
本発明の包装体(3)は、軟包材シート(1)を加工した袋状容器(2)に内容物(C)を収納したのち、ヒートシールで密封したものである。
【0033】
袋状容器(2)は、開口部(21)、開口縁部(22)及び胴部(23)を有する。胴部(23)は、その周縁が少なくとも一の線状シール部(24)で封止されることによって、収納部を構成している。
【0034】
図2は、袋状容器(2)の斜視図である。
図2(a)の袋状容器(2)は、一枚の矩形状の軟包材シート(1)を横方向に、シーラント層(17)が内側になるようにして二つ折りしたものについて、サイドとボトムに計二箇所の線状シール部(24)を設けた態様である。
図2(b)の袋状容器(2)は、一枚の矩形状の軟包材シート(1)を縦方向に、シーラント層(17)が内側になるようにして二つ折りしたものについて、両サイドに計二箇所の線状シール部(24)を設けた態様である。
図2(c)の袋状容器(2)は、二枚の同寸法の矩形状軟包材シート(1)を、シーラント層(17)どうしが対向するようにして重ね合わせたものについて、両サイドとボトムに計三箇所の線状シール部(24)を設けた態様である。
図2(d)の袋状容器(2)は、
図2(c)の袋状容器(2)の幅中央に一箇所の線状シール部(24)を設けることによって、2気室とした態様である。
図2(e)の袋状容器(2)は、ガゼット袋の一態様であり、両サイドが内側に折りたたまれているとともに、背面側の胴部(23)に合掌型の線状シール部(24)が設けられている。
図2(f)の袋状容器(2)は、スタンディングパウチの一態様であり、底部には自立を可能とする底部(25)が形成されている。
以上は全て例示であり、各態様において、容器全体の形状、収納部の数・形状は限定されない。
【0035】
図2(f)の袋状容器(2)を例に、作製方法の一態様を示す。まず、所定寸法にカットした矩形状の軟包材シート(1)の縦長さ中央部に横方向の一の蛇腹折部を形成する。この蛇腹折り部には中心谷折筋が形成されており、この中心谷折筋の上側には山折筋と谷折筋が一本ずつ同幅で形成されており、この中心谷折筋の下側にも山折筋と谷折筋が一本ずつ同幅で形成されている。次に、かかる軟包材シート(1)を、シーラント層(17)が内側となるように、前記中心谷折筋において中割折りする。次に、そのようにして中割状に二つ折りされた軟包材シート(1)の両サイドをヒートシールすることによって、線状シール部(24)を形成する。その後、中割部を左右に開くことにより、
図2(f)で示すような三方型の袋状容器(2)が得られる。
【0036】
包装体(3)は、袋状容器(2)の収納部に内容物(C)を充填したのち、開口縁部(23)どうしを熱融着(線状シール)させてなる密封体である。
【0037】
内容物(C)は特に限定されず、食品又は非食品が挙げられる。食品としては、例えばクリームチーズやバター、ゼリー、羊かん、プリン、みそ、カレーやパスタソース、ジュース、ドレッシング等が挙げられる。非食品としては、例えば、糊やシーリング剤、粘土等の工業製品や、医薬品、化学薬品等が挙げられる。その他、ナフキンやガーゼ、コットン等の衛生用品も内容物(C)足り得る。なお、内容物(C)は、軟素材や流動素材、液状素材が適しているが、それら形態に限定されない。
【0038】
図3は、包装体(3)の斜視図及びその開封部(26)の部分断面図である。
図3(a)の包装体(3)は、
図2(f)の袋状容器(2)を本体とし、これに内容物(C)を充填したのち、開口縁部(23)どうしを熱融着させたものである。なお、内容物(C)は扁平ブロック状であり、そのようなものとしては、食品であれば、例えばクリームチーズやバター、ゼリー等が挙げられる。この包装体(3)は、両サイドとトップの計3箇所の線状シール部(24)によって封止されており、内容物(C)の長期品質保持が可能となっている。また、この包装体(3)の開封部(26)は、これをなす2つの開口縁部(22)が両方とも内側に折り曲げさせられることによって、摘み部として機能する。この摘み部は、袋状容器(2)を作製した後に形成してもよいし、軟包材シート(1)に予め形成しておいてもよい。
図3(b)は、
図3(a)の包装体(3)の開封部(26)の、開封前の部分断面図である。この開封部(26)は、本図が示すように、シーラント層(17)どうしがヒートシールさせられることによって、熱融着帯を構成している。なお本図では、便宜上、印刷インキ層(11)を省略している。
図3(c)は、
図3(a)の包装体(3)を開封する過程でのシーラント層(17)の破壊モードを示す。この破壊モードは凝集破壊であり、開封に伴い層内部でこの破壊が進行することによって、易開封が可能ならしめられている。なお、易開封はシーラント層(17)どうしの熱融着界面における界面破壊によって実現されていてもよい(図示略)。また、本図でも便宜上、印刷インキ層(11)を省略している。
開封後は内容物(C)を取り出し、その利用目的に供する。
【0039】
図3(a)の包装体(3)は、例えばトップシール部と両サイドシール部を折りたたんだ状態で外箱に収納したのち、冷蔵保管される。このとき包装体(3)の表面には結露が生じ得るが、既に述べたように、この包装体(3)をなす軟包材シート(1)は所定の層構成よりなり、かかる結露水がオーバープリントコート層(10)の内部に浸透したのち印刷インキ層(11)に達しても、この印刷インキ層(11)は印刷アンカーコート層(12)を介してバリア層(13)に接合させられているため、このバリア層(13)より剥離ないし脱落等し難くさせられている。そのため、包装体(3)を冷蔵保管後に搬送したり、梱包したりするさい、その表面に何らかの外力が表面に加わったとしても、印刷像に掠れやズレ、脱落等の欠陥が生じ難いと考えられる。
【実施例0040】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を更に詳細に説明するが、それら具体例により本発明の技術範囲が限定されることはない。
【0041】
<軟包材シート(1)の作製>
実施例1
12μm厚のアルミニウム箔(A8021H-O)の片面に、ガラス転移温度が-28℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液よりなる一液硬化型の外面側アンカーコート剤を、硬化後の厚みが約1.0μmとなるようにロールコーターで塗布し、70℃で30秒間乾燥させることによって、印刷アンカーコート層を形成させた。次にこの印刷アンカーコート層に白色印刷インキ(顔料:二酸化チタン、バインダー樹脂: 塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体。以下、共通。)を乾燥後の厚みが約2.0μmとなるようにロールコーターで塗布し、印刷インキ層を形成させた。次に、この印刷インキ層に硝化綿溶液を乾燥後の厚みが約1.0μmとなるようロールコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥させることによって、オーバープリントコート層を形成させた。
続けて、前記アルミニウム箔の他方の面に、二液硬化型ポリエステル-ウレタン樹脂系接着剤(以下、二液PUともいう。)を硬化後の厚みが3.0μmとなるようロールコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥させることによって、接着剤層を形成させた。次いで、この接着剤層に約12μm厚の延伸ポリエステルフィルム(以下、PETフィルムともいう。)を貼り合わせたのち、40℃で72時間のエージング処理を行うことによって、補強層を構成した。次にこのPETフィルムに、内面側アンカーコート剤として市販の一液硬化型ポリエステル樹脂系アンカーコート剤(以下、一液ACともいう。)を乾燥後の膜厚が約3.0μmとなるようにロールコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥させることによって、内面側アンカーコート層を形成させた。次に、このアンカーコート層にホットメルト接着剤(ベース樹脂:エチレン酢酸ビニル共重合体、粘着付与樹脂:ロジン類)(以下、HM接着剤ともいう。)を冷却後の厚みが約30μmとなるようにロールコーターで塗工し、シーラント層を構成することによって、軟包材シートA1を作製した。
【0042】
実施例2
軟包材シートA1にあって、内面側アンカーコート層を二液PUよりなる接着剤で構成したとともに(硬化後膜厚約3.0μm。以下、同様。)、シーラント層を厚さ約30μmの無添加低密度ポリエチレンフィルム(以下、LDPEフィルムともいう。)の貼り合わせによって構成した他は同様にして、軟包材シートA2を作製した。
【0043】
実施例3
軟包材シートA1にあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が35℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートBを作製した。
【0044】
実施例4
軟包材シートA1にあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が58℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートCを作製した。
【0045】
実施例5
軟包材シートA1にあって、オーバーコート剤として酢酸セルロース溶液を用いたとともに、外側のアンカーコート層をガラス転移温度が-28℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートD1を作製した。
【0046】
実施例6
軟包材シートD1にあって、内面側アンカーコート層を二液PUよりなる接着剤で構成したとともに、シーラント層をLDPEフィルムで構成した他は同様にして、軟包材シートD2を作製した。
【0047】
実施例7
軟包材シートD1にあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が-17℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートE1を作製した。
【0048】
実施例8
軟包材シートE1にあって、内面側アンカーコート層を二液PUよりなる接着剤で構成したとともに、シーラント層をLDPEフィルムで構成した他は同様にして、軟包材シートE2を作製した。
【0049】
実施例9
軟包材シートD1にあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が3℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートF1を作製した。
【0050】
実施例10
軟包材シートF1にあって、内面側アンカーコート層を二液PUよりなる接着剤で構成したとともに、シーラント層をLDPEフィルムで構成した他は同様にして、軟包材シートF2を作製した。
【0051】
実施例11
軟包材シートD1にあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が8℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートG1を作製した。
【0052】
実施例12
実施例11の軟包材シートG1にあって、内面側アンカーコート層を二液PUよりなる接着剤で構成したとともに、シーラント層をLDPEフィルムで構成した他は同様にして、軟包材シートG2を作製した。
【0053】
実施例13
軟包材シートD1にあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が35℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートHを作製した。
【0054】
実施例14
軟包材シートD1にあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が57℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートIを作製した。
【0055】
比較例1
軟包材シートA1にあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が-34℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートJを作製した。
【0056】
比較例2
軟包材シートA1にあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が67℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートK1を作製した。
【0057】
比較例3
軟包材シートK1にあって、内面側アンカーコート層を二液PUよりなる接着剤で構成したとともに、シーラント層をLDPEフィルムで構成した他は同様にして、軟包材シートK2を作製した。
【0058】
比較例4
軟包材シートJにあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が70℃の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートL1を作製した。
【0059】
比較例5
軟包材シートL1にあって、内面側アンカーコート層を二液PUよりなる接着剤で構成したとともに、シーラント層をLDPEフィルムで構成した他は同様にして、軟包材シートL2を作製した。
【0060】
比較例6
軟包材シートD1にあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が-34℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートMを作製した。
【0061】
比較例7
軟包材シートMにあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が67℃の飽和共重合ポリエステル樹脂の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートN1を作製した。
【0062】
比較例8
軟包材シートN1にあって、内面側アンカーコート層を二液PUよりなる接着剤で構成したとともに、シーラント層をLDPEフィルムで構成した他は同様にして、軟包材シートN2を作製した。
【0063】
比較例9
軟包材シートMにあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が5℃の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートO1を作製した。
【0064】
比較例10
軟包材シートO1にあって、内面側アンカーコート層を二液PUよりなる接着剤で構成したとともに、シーラント層をLDPEフィルムで構成した他は同様にして、軟包材シートO2を作製した。
【0065】
比較例11
軟包材シートMにあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が30℃の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートP1を作製した。
【0066】
比較例12
軟包材シートP1にあって、内面側アンカーコート層を二液PUよりなる接着剤で構成したとともに、シーラント層をLDPEフィルムで構成した他は同様にして、軟包材シートP2を作製した。
【0067】
比較例13
軟包材シートMにあって、印刷アンカーコート層をガラス転移温度が70℃の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の溶液で構成した他は同様にして、軟包材シートQ1を作製した。
【0068】
比較例14
軟包材シートQ1にあって、内面側アンカーコート層を二液PUよりなる接着剤で構成したとともに、シーラント層をLDPEフィルムで構成した他は同様にして、軟包材シートQ2を作製した。
【0069】
比較例15
軟包材シートA1にあって、印刷アンカーコート層を省略した他は同様にして、常法に従い、軟包材シートRを作製した。
【0070】
実施例の軟包材シートの層構成を表1に、比較例の軟包材シートのそれらを表2に示す。
【0071】
1.印刷欠陥の評価:水中揉み試験
本試験は次のようにして行う。
【0072】
(常温水処理)
一の軟包材シートより10cm角の試験片を三枚切り出し、うち一枚を片方の手のひら中央に乗せる。このとき、オーバープリントコート層が上面となるようにする。次いで他方の手のひらをこの試験片に被せ、両手で挟んだまま24℃の水に沈める。次に水中で、片方の手のひらの内側にこの試験片を丸め込むようにして堅く一回握り締め、強く変形させてから、拳を水から引き上げる。次いで指を開き、濡れたままの試験片A1を広げて皺をのばす。そして、主に皺が寄っていた部分における印刷インキ層の剥がれの有無を目視観察した。以上の評価は、他の残り二枚の試験片についても行う。そして、本試験による評価は以下の基準で行う。
【0073】
○:(印刷インキ層の剥離が生じなかった試験片の枚数/浸漬させた試験片の枚数)の比=3/3
×:同比=2/3、1/3又は0/3
【0074】
(高温水処理)
一の軟包材シートより10cm角の試験片を三枚切り出し、うち一枚を80℃の高温水に3日間浸漬させた後、室温下に取り出し、表面に付着した水を不織布で軽く拭き取る。続けてかかる試験片について、上記常温水処理と同じ操作を行い、主に皺が寄っていた部分における印刷インキ層の剥がれの有無を目視観察した。以上の評価は、他の残り二枚の試験片についても行う。そして、本試験による評価は以下の基準で行う。
【0075】
◎: (印刷インキ層の剥離が生じなかった試験片の枚数/浸漬させた試験片の枚数)の比=3/3
○:同比=2/3
×:同比=1/3又は0/3
【0076】
なお、高温水処理は、試験片内部への水の浸透を促進させるための強制的な操作である。
【0077】
2.印刷欠陥の評価:摩擦試験
本試験は、
図4で概念的に示される摺動試験装置を用いて行う。この装置は、ステンレス製の支柱41と、その先端に接続させられているステンレス製の球状部材42(直径10mm)と、ステンレス製の支持台43とで少なくとも構成される。また、この球状部材42は綿ガーゼで被覆させられている(図示略)。
【0078】
本試験では先ず、一の軟包材シートより10cm角の試験片を二枚作製する。次いで、一方の試験片を支持台43上に載置させ、四辺を粘着テープで固定する。次いで、オーバープリントコート層表面に、0.5ccの水を滴下させた後、球状部材42を、支柱41を降下させることによって、軽く押圧させる。その状態で支柱41を左右方向に、往復距離が2cm/秒となるようにして動かし、印刷面に掠れが発生するなど外観変化が生じた時点の往復回数を数える。ただし上限は30回とする。そして、摩擦力に対する印刷欠陥防止性を以下の基準で評価する。
【0079】
○:28回以上往復させても印刷面に外観変化が生じない。
△:25回以上27回以下の往復で外観変化が生じる。
×:24回以下の往復で外観変化が生じる。
【0080】
3.デッドホールド性試験
本試験は次のようにして行う。先ず、一の軟包材シートより10cm角の試験片を一枚作製し、支持台上に並置させ、四辺を粘着テープで固定したのち、24℃に温度調節したステンレス製平板(760g)を被せてから、1分間、放置する。次にこの平板を除き、折り畳まれた各サンプルの開き戻り加減を、1分間かけて目視観察する。そして、以下の基準でデッドホールド性を評価する。
【0081】
○:折りたたまれたサンプルが全く開かない。
×:折りたたまれたサンプルが僅かでも開く。
【0082】
試験1~3の評価結果を、実施例の軟包材シートについては表1に、比較例のそれらを表2に示す。
【0083】
【0084】
本発明の軟包材シートは、クリームチーズ、ゼリー及び羊かん等の食品や、糊、シーリング剤及び粘土等の工業製品、その他医薬品や化学薬品等の内容物を収納するための袋状容器として利用できる。
(1)軟包材シート:(10)オーバープリントコート層、(11)印刷インキ層、(12)印刷アンカーコート層、(13)バリア層、(14)接着剤層、(15)補強層、(16)内面側アンカーコート層、(17)シーラント層
(2)袋状容器:(21)開口部、(22)開口縁部、(23)胴部、(24)線状シール部、(25)底部
(3)包装体:(26)開封部
(C)内容物