(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104166
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
B60C23/04 110A
B60C23/04 110D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219206
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 浩人
(57)【要約】
【課題】タイヤのホイールへ確実に固定することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器3は、電子機器本体部30と、固定部40とを備える。電子機器本体部30は、タイヤ1の内側に取り付けられる。固定部40は、ホイール20のリム部23の外周面23aに載置される脚部42を有し、電子機器本体部30を支持する。脚部42は、ホイール20の周方向に貫通する貫通孔部43を有している。固定部40は、貫通孔部43に挿通したバンド50を外周面23aに巻締めてリム部23に取り付けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの内側に取り付けられる電子機器本体部と、
ホイールのリム部の外周面に載置される脚部を有し、前記電子機器本体部を支持する固定部と、を備える電子機器において、
前記脚部は、前記ホイールの周方向に貫通する貫通孔部を有しており、
前記固定部は、前記貫通孔部に挿通したバンドを前記外周面に巻締めて前記リム部に取り付けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記脚部は、制振部材を介して前記外周面に載置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制振部材は、両面テープであることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電子機器本体部は、タイヤにおける物理量を計測するセンサ部、計測されたデータを外部へ送信する通信部、およびタイヤ内の他の機器に電力を供給する電源部のうち少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記電子機器本体部に接続された配線の端部が樹脂によってモールドされていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記固定部は、前記電子機器本体部に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに取り付けられるセンサや電源等の電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着された空気入りタイヤには、タイヤの摩耗推定等のために各種のセンサやセンサに電力を供給するための電源等が取り付けられる。
【0003】
特許文献1には、車両のタイヤの内側に配置され、車両のホイールに取り付けられるタイヤ状態計測装置が記載されている。タイヤ状態計測装置は、ホイールの外周面において周方向に沿って延在し、ホイールの外周面を挟み込む支持部と、支持部に取り付けられ、タイヤの状態を計測する計測部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のタイヤ状態計測装置では、計測部の支持部への取り付けについて明記されていないが、例えば同文献の
図1には、計測部を支持部に載置して支持する構成が記載されている。ここで計測部が矩形状であり、円環状に配置された支持部の外周面に載置した場合、計測部と支持部の接触面どうしの間に隙間が生じて十分に固定できないという問題点がある。例えば、計測部と支持部の接触面どうしを接着等によって固定した場合、万一固定が十分でないと、計測部が支持部から剥がれて不具合が生じることも懸念される。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タイヤのホイールへ確実に固定することができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は電子機器である。電子機器は、タイヤの内側に取り付けられる電子機器本体部と、ホイールのリム部の外周面に載置される脚部を有し、前記電子機器本体部を支持する固定部と、を備える電子機器において、前記脚部は、前記ホイールの周方向に貫通する貫通孔部を有しており、前記固定部は、前記貫通孔部に挿通したバンドを前記外周面に巻締めて前記リム部に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電子機器をタイヤのホイールへ確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電子機器を取り付けた空気入りタイヤの縦断面図である。
【
図2】
図1における電子機器の部分の拡大図である。
【
図4】
図2に示すA-A線による電子機器およびリム部の一部の断面図である。
【
図5】電子機器の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】電子機器の機能構成の別例を示すブロック図である。
【
図7】電子機器の機能構成の更に別例を示すブロック図である。
【
図8】変形例に係る電子機器の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに
図1から
図8を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態に係る電子機器を取り付けた空気入りタイヤの縦断面図である。空気入りタイヤ1は、タイヤ本体10、ホイール20および電子機器3を備える。
図1において電子機器3はタイヤ周方向から見た端面を表している。タイヤ本体10は、リング状に形成されたトレッド部11によって地面に接触する。トレッド部11の軸方向(タイヤ幅方向)の両端に連続してサイド部12が設けられ、サイド部12のホイール20側のリム端部25に対応する位置にビード部13が形成されている。
【0012】
タイヤ本体10の中央部にはホイール20が嵌め合わされている。ホイール20は、車軸を連結する円筒状のハブ部21を中心にして、ディスク部22が放射状に延びるように設けられている。ディスク部22は、外周縁に連結された円筒状のリム部23を支持している。
【0013】
リム部23は、胴部24のタイヤ幅方向における両側にリム端部25を有している。リム端部25は、それぞれタイヤ幅方向の外側に向かうにつれて径方向の外側へ向かうように屈曲して延びるように設けられている。リム端部25には、タイヤ本体10のビード部13が嵌め合わされる。
【0014】
リム端部25間における胴部24には、タイヤ幅方向の中央部において、径方向の中心側へ穿つように凹部26が全周に亘って形成されている。ホイール20は、胴部24に凹部26を設けることによって、リム部23の高剛性化と軽量化を図ることができる。尚、凹部26は、設けられていなくても良く、この場合、胴部24の外周面24aは、タイヤ幅方向において平坦状に形成される。
【0015】
リム部23の外周面23aは、胴部24の外周面24aおよび凹部26の底面26aを含んでいる。電子機器3は、外周面23aのうち凹部26の底面26aに取り付けられる。尚、電子機器3は、外周面23aのうち底面26a以外の箇所に取り付けられていても良く、また凹部26が設けられていない場合には、タイヤ幅方向において平坦状となる外周面24aの任意の位置に取り付けられる。
【0016】
図2は
図1における電子機器3の部分の拡大図であり、
図3は電子機器3の外観を示す斜視図である。電子機器3は、電子機器本体部30および固定部40を備える。電子機器本体部30は、後述するように、タイヤ1における物理量を計測するセンサ部、計測されたデータを外部へ送信する通信部、およびタイヤ内の他の機器に電力を供給する電源部等のうち少なくとも1つが設けられている。
【0017】
固定部40は、ベース部41および脚部42を有する。ベース部41は平板状であり、上面41aが平面状となっている。ベース部41の上面41aには、電子機器本体部30の底面30aが接触し固定される。例えば電子機器本体部30が直方体状で底面30aが平面状とすれば、底面30aとベース部41の上面41aとの接触におけるガタつきが抑制される。電子機器本体部30は、底面30aとベース部41の上面41aを接着して固定しても良いし、ベース部41にねじ等の締結具34を用いて固定しても良い。
【0018】
脚部42は、板状をなし、ベース部41のタイヤ周方向の両端部に設けられている。脚部42は、ホイール20におけるリム部23の外周面23aにシート状の制振部材60を介して載置される。制振部材60は、樹脂製であり、例えばゴムシートなどを用いることでホイール20からの振動を減衰し、電子機器本体部30へ大きな振動が伝わるのを防ぎ、更に周方向への電子機器本体部30の移動を防ぐ。また制振部材60は、両面テープなどの接着性があるものであっても良く、両面テープの心材の厚みに応じた弾性によって振動を減衰し、接着によって周方向への電子機器本体部30の移動を防ぐ。
【0019】
脚部42は、タイヤ周方向に貫通する貫通孔部43を有する。本実施形態では各脚部42において、それぞれ2つの貫通孔部43がタイヤ幅方向に併設されている。貫通孔部43のタイヤ周方向に直交する断面は、タイヤ径方向を短手方向とする長方形状となっている。
【0020】
図4は、
図2に示すA-A線による電子機器3およびリム部23の一部の断面図である。脚部42に設けられた貫通孔部43にはバンド50が挿通されている。本実施形態では、2つのバンド50をタイヤ幅方向に並べて用いている。各バンド50は、タイヤ幅方向において同じ位置にある各脚部42の対応する貫通孔部43に挿通されている。尚、
図4において、電子機器本体部30の内部構成は図示を省略している。
【0021】
バンド50は、リム部23の外周面23a(底面26aを含む)に沿って巻かれ、締結具51によって両端部が連結されて外周面23aに巻締められている。
図4に示す締結具51は、ベース51aにバンド50の一方の端部を取り付け、他方の端部をラチェットレバー51bによって引き込んでバンド50を締めるラチェット式のものである。尚、締結具52は公知の種々の形式を用いることができる。
【0022】
図3に戻り、電子機器本体部30の側面には端子部31が設けられている。端子部31は、接続される配線70によってタイヤ内の他の機器と電気的に接続される。配線70の端部は、端子部31に半田付けやコネクタ等によって接続されている。
【0023】
配線70の端部および端子部31は樹脂等によってモールドされている。配線70の端部および端子部31を覆う樹脂は、電子機器本体部30の側面に接着され固定されている。尚、電子機器本体部30が単独で動作し、他の機器との接続が不要である場合には端子部31は設けられていなくて良い。
【0024】
図5は、電子機器3の機能構成の一例を示すブロック図である。電子機器本体部30は、センサ部35aおよび制御回路部35bを有する。電子機器本体部30は、センサ部35aおよび制御回路部35bの両方を内部に収容する構成であっても良いし、制御回路部35bを内部に収容し、センサ部35aを電子機器本体部30の外部のタイヤ1内に配置する構成であっても良い。
【0025】
センサ部35aは、例えば加速度センサ、歪センサ、圧力センサおよび温度センサ等であり、タイヤ1における物理量を計測する。制御回路部35bは、センサ部35aから計測データを取得し、適宜デジタル変換等のデータ処理を行う。
【0026】
端子部31には、外部へ計測データを送信する通信部や電力を供給する電源部等を備える他の機器が接続されている。制御回路部35bは、通信部を備える他の機器へ端子部31を介して計測データを送る。また制御回路部35bは、電源部を備える他の機器から端子部31を介して電力供給を受ける。尚、電子機器本体部30は、適宜、通信部や電源部を有する構成としてもよい。
【0027】
図6は、電子機器の機能構成の別例を示すブロック図である。電子機器本体部30は、通信部36を有する。通信部36は、例えばWiFi(登録商標)等の無線通信方式に基づいて外部機器へ計測データを送信する。外部機器は、電子機器から送信されてくる計測データを一次的に記憶する記憶装置や、計測データを表示する表示装置、計測データに基づいてタイヤ1で発生しているタイヤ力や摩耗量などを推定する推定装置などである。
【0028】
端子部31には、タイヤ1における物理量を計測するセンサ部や電力を供給する電源部等を備える他の機器が接続されている。通信部36は、センサ部を備える他の機器から端子部31を介して計測データを取得する。また通信部36は、電源部を備える他の機器から端子部31を介して電力供給を受ける。尚、電子機器本体部30は、適宜、電源部を有する構成としてもよい。
【0029】
図7は、電子機器3の機能構成の更に別例を示すブロック図である。電子機器本体部30は、電源部37を有する。電源部37は、蓄電池または発電型の素子等によって構成されており、センサ部や通信部を備える他の機器へ端子部31を介して電力を供給する。
【0030】
また電源部37は、リチウムイオン電池のような充電型の電池を備え、タイヤ1の外部から電力供給を受ける構成であってもよい。電源部37への電力供給は、例えば車軸に設けられるスリップリング等を介する給電方式、車体側とタイヤ1側との間で電磁誘導回路や電界給電回路を構成する方式など用いることができる。
【0031】
次に電子機器3の動作について説明する。電子機器3は、バンド50がリム部23の外周面23a(凹部26の底面26aを含む)に巻締められていることによって、外周面23aに押し付けられて固定される。電子機器3は、電子機器本体部30が固定部40の脚部42で外周面23aに接触して固定されることによって、ガタつきが少なく確実にホイール20に固定することができる。
【0032】
また電子機器3は、ベース部41に取り付けられており、脚部42を介してリム部23に固定されるので、リム部23に直接または脚部42有しないベース部41を介して固定される場合に比べて、リム部23から伝わる振動を緩和することができる。
【0033】
電子機器3は、脚部42とリム部23の外周面23aとの間に制振部材60を介して固定されることによって、ホイール20から電子機器3への振動の伝搬を低減する。また、制振部材60として両面テープを用いることによって、脚部42とリム部23の外周面23aとの横方向(タイヤ周方向およびタイヤ幅方向)でのずれを防止することができる。
【0034】
電子機器3は、タイヤ1における物理量を計測するセンサ部、外部へ計測データを送信する通信部、および電力を供給する電源部等のうち少なくとも1つを備え、タイヤ1における物理量を計測に関する機能を発揮することができる。また、複数の電子機器3を用いて各機能を分散させることによって、個々の電子機器の小型軽量化、タイヤ1内での分散配置による重量アンバランスの抑制、1の機能に不具合が生じた場合の交換修理の容易化を図ることができる。
【0035】
また電子機器3は、電子機器本体部30の側面に設けた端子部31および配線70の端部を樹脂等によってモールドすることによって、配線70が端子部31から剥離することや配線70の端部における断線を防止することができる。
【0036】
(変形例)
図8は、変形例に係る電子機器3の外観を示す斜視図である。
図8に示す電子機器3は、電子機器本体部30と固定部40とを一体的に形成した構成となっている。変形例に係る電子機器3に関するその他の構成、例えば脚部42、貫通孔部43、制振部材60およびバンド50、並びに機能構成は、上述の実施形態と同様である。
【0037】
変形例に係る電子機器3は、電子機器本体部30と固定部40とを一体的に形成することによって、部品点数の削減および組立の容易化を図ることができる。
【0038】
次に実施形態および変形例に係る電子機器3の特徴について説明する。
電子機器3は、電子機器本体部30と、固定部40とを備える。電子機器本体部30は、タイヤ1の内側に取り付けられる。固定部40は、ホイール20のリム部23の外周面23aに載置される脚部42を有し、電子機器本体部30を支持する。脚部42は、ホイール20の周方向に貫通する貫通孔部43を有している。固定部40は、貫通孔部43に挿通したバンド50を外周面23aに巻締めてリム部23に取り付けられている。これにより、電子機器3は、電子機器本体部30が固定部40の脚部42で外周面23aに接触して固定されることによって、ガタつきが少なく確実にホイール20に固定することができる。
【0039】
また脚部42は、制振部材60を介してリム部23の外周面23aに載置されている。これにより、電子機器3は、ホイール20から電子機器3への振動の伝搬を低減することができる。
【0040】
また制振部材60は、両面テープである。これにより、電子機器3は、脚部42とリム部23の外周面23aとの横方向(タイヤ周方向およびタイヤ幅方向)でのずれを防止することができる。
【0041】
また電子機器本体部30は、タイヤ1における物理量を計測するセンサ部35a、計測されたデータを外部へ送信する通信部36、およびタイヤ1内の他の機器に電力を供給する電源部37のうち少なくとも1つを有する。これにより、電子機器3は、タイヤ1における物理量を計測に関する機能を発揮することができる。また、複数の電子機器3を用いて各機能を分散させることによって、個々の電子機器の小型軽量化、タイヤ1内での分散配置による重量アンバランスの抑制、1の機能に不具合が生じた場合の交換修理の容易化を図ることができる。
【0042】
また電子機器本体部30に接続された配線70の端部が樹脂によってモールドされている。これにより、電子機器3は、配線70が端子部31から剥離することや配線70の端部における断線を防止することができる。
【0043】
また固定部40は、電子機器本体部30に一体的に形成されている。これにより、電子機器3は、部品点数の削減および組立の容易化を図ることができる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0045】
1 タイヤ、 20 ホイール、 23 リム部、 23a 外周面、
3 電子機器、 30 電子機器本体部、 40 固定部、 42 脚部、
43 貫通孔部、 50 バンド、 60 制振部材、 70 配線。