(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104175
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】水中移動体及び検査システム
(51)【国際特許分類】
B63C 11/00 20060101AFI20220701BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
B63C11/00 B
B63C11/00 Z
B63B49/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219220
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】394019370
【氏名又は名称】株式会社ウオールナット
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】新 弘治
(72)【発明者】
【氏名】成澤 行雄
(72)【発明者】
【氏名】沖安 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】金谷 武伴
(57)【要約】
【課題】検査対象をより精度よく検査できる水中移動体及びこれを備えた検査システムを提供する。
【解決手段】水中移動体10は、検査対象の検査用のものである。水中移動体10は、推力発生部13を有する本体部12を備える。水中移動体10は、水中を撮像する水中カメラ15を備える。水中移動体10は、水上に位置して水上を撮像する気中カメラ31を備える。水中移動体10は、水中の音声を取得するマイクロフォン25を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の検査用の水中移動体であって、
推力発生部を有する本体部と、
水中を撮像する水中カメラと、
水上に位置して水上を撮像する気中カメラと、
水中の音声を取得するマイクロフォンと、
を備えることを特徴とする水中移動体。
【請求項2】
水中カメラと気中カメラとマイクロフォンとにより取得されるデータに同期信号を含む
ことを特徴とする請求項1記載の水中移動体。
【請求項3】
同期信号は、時報である
ことを特徴とする請求項2記載の水中移動体。
【請求項4】
推力発生部は、本体部の上部と後部との少なくともいずれかに位置し、
マイクロフォンは、前記本体部の下部に位置して前記本体部の少なくとも前方の音声を取得する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の水中移動体。
【請求項5】
水中カメラにより撮像可能な複数の目印を検査対象に少なくとも本体部の幅方向に所定の間隔で照射する目印照射手段を備える
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の水中移動体。
【請求項6】
本体部よりも前方の位置で前記本体部の幅方向に延びて配置され、水中カメラの撮像範囲に位置可能なスケールを備える
ことを特徴とする請求項1ないし5いずれか一記載の水中移動体。
【請求項7】
スケールの位置を調整する位置調整手段を備える
ことを特徴とする請求項6記載の水中移動体。
【請求項8】
請求項1ないし7いずれか一記載の水中移動体と、
前記水中移動体の水中カメラと気中カメラとマイクロフォンとにより取得されたデータを解析する解析手段と、
を備えることを特徴とする検査システム。
【請求項9】
解析手段は、水中移動体の水中カメラと気中カメラとマイクロフォンとにより取得されたデータの少なくともいずれかに基づき、検査対象の不具合箇所を特定する機能を有する
ことを特徴とする請求項8記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の検査用の水中移動体及びこれを備えた検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔操縦により水中の検査対象を検査する水中ドローンなどの水中移動体を備える検査システムが知られている。このような検査システムは、水中移動体にカメラを備え、水中でカメラにより撮像した画像データを、ソフトウェアなどを用いて解析することによって、検査対象の不具合の有無などを検査可能となっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば導水管の内部などを検査する場合、水中ロボットカメラにより撮像した画像データに基づいて破損などの不具合を発見することはできるものの、その破損に起因する漏水などの不具合を発見することが容易でない。また、水中カメラにより撮像した画像データの目視のみで検査対象の不具合を検査する場合には、見落としが生じないよう画像データの解析技術者に熟練が求められる。また、水中カメラで確認できるような規模の大きい損傷を伴わない漏水を発見することも容易ではない。
【0005】
さらに、水没部分と非水没部分とを有する検査対象の場合、水中カメラによって水中から非水没部分を撮像しても、高精度の画像を得ることはできず、非水没部分の破損などの不具合を知ることが困難である。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、検査対象をより精度よく検査できる水中移動体及びこれを備えた検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の水中移動体は、検査対象の検査用の水中移動体であって、推力発生部を有する本体部と、水中を撮像する水中カメラと、水上に位置して水上を撮像する気中カメラと、水中の音声を取得するマイクロフォンと、を備えるものである。
【0008】
請求項2記載の水中移動体は、請求項1記載の水中移動体において、水中カメラと気中カメラとマイクロフォンとにより取得されるデータに同期信号を含むものである。
【0009】
請求項3記載の水中移動体は、請求項2記載の水中移動体において、同期信号は、時報であるものである。
【0010】
請求項4記載の水中移動体は、請求項1ないし3いずれか一記載の水中移動体において、推力発生部は、本体部の上部と後部との少なくともいずれかに位置し、マイクロフォンは、前記本体部の下部に位置して前記本体部の少なくとも前方の音声を取得するものである。
【0011】
請求項5記載の水中移動体は、請求項1ないし4いずれか一記載の水中移動体において、水中カメラにより撮像可能な複数の目印を検査対象に少なくとも本体部の幅方向に所定の間隔で照射する目印照射手段を備えるものである。
【0012】
請求項6記載の水中移動体は、請求項1ないし5いずれか一記載の水中移動体において、本体部よりも前方の位置で前記本体部の幅方向に延びて配置され、水中カメラの撮像範囲に位置可能なスケールを備えるものである。
【0013】
請求項7記載の水中移動体は、請求項6記載の水中移動体において、スケールの位置を調整する位置調整手段を備えるものである。
【0014】
請求項8記載の検査システムは、請求項1ないし7いずれか一記載の水中移動体と、前記水中移動体の水中カメラと気中カメラとマイクロフォンとにより取得されたデータを解析する解析手段と、を備えるものである。
【0015】
請求項9記載の検査システムは、請求項8記載の検査システムにおいて、解析手段は、水中移動体の水中カメラと気中カメラとマイクロフォンとにより取得されたデータの少なくともいずれかに基づき、検査対象の不具合箇所を特定する機能を有するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水中カメラにより取得された検査対象の水没部分の画像データ、気中カメラにより撮像された検査対象の非水没部分の画像データ、及び、マイクロフォンにより取得された水中の音声データに基づき、検査対象をより精度よく検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態の水中移動体を示す側面図である。
【
図3】同上水中移動体を含む検査システムの説明図である。
【
図4】同上水中移動体による検査対象の検査状態を模式的に示す説明図である。
【
図5】同上水中移動体の照射手段による目印の照射状態での水中カメラの画像を模式的に示す説明図である。
【
図6】同上水中移動体のスケールによる検査対象の不具合部分の測定状態での水中カメラの画像を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1及び
図2において、10は水中移動体を示す。水中移動体10は、水中ドローン、あるいはROV(Remotely Operated Vehicle)などと呼ばれる遠隔無人操作水中ロボットである。本実施の形態の水中移動体10は、検査対象を検査するための検査用ロボットである。一例として、本実施の形態の水中移動体10は、導水管の漏水調査に用いられる。
【0020】
水中移動体10は、本体部12を備えている。本体部12は、長手状に形成されており、この長手方向の両端を前後として使用される。本実施の形態において、本体部12は、前後方向に長い円筒状に配置されている。以下、
図1に示す矢印FR方向を前方向、矢印RR方向を後方向として説明する。また、
図1に示す矢印U方向を上方向、矢印D方向を下方向とし、前後方向及び上下方向と交差または直交する方向を左右方向または両側方向とする。
【0021】
本体部12には、水中移動体10を水中で移動させるための推力を発生する推力発生部(スラスタ)13が配置されている。推力発生部13は、回転翼(スクリュ)13aと、この回転翼13aの外方を囲んで保護する円筒状の保護部13bと、回転翼13aを駆動させる例えばモータなどのアクチュエータである駆動部と、を備える。推力発生部13は、左右に対をなして配置される。これら複数の推力発生部13により発生される推力によって、水中移動体10が水中を前後、左右、上下に自在に移動可能となっている。
【0022】
好ましくは、推力発生部13は、本体部12の上部と後部との少なくともいずれかに配置される。本実施の形態では、推力発生部13は、本体部12の上部と後部とにそれぞれ配置されている。
【0023】
本体部12の上部に位置する左右の推力発生部13は、本体部12の前後方向の略中央部に配置されている。これらの推力発生部13は、本体部12の左右方向の中央部を基準として左右に離れ、本体部12の斜め上方の位置に、斜め上方を回転翼13aの回転軸方向として配置されている。
【0024】
本体部12の後部に位置する左右の推力発生部13は、本体部12の後端よりも後方に突出している。これらの推力発生部13は、本体部12の左右両側において上下方向の中央部、本実施の形態では本体部12の中心軸よりも下方に回転翼13aの回転軸が位置するように配置されている。回転翼13aの回転軸は、前後方向に沿って配置されている。
【0025】
また、本体部12には、水中を撮像する水中カメラ15が配置されている。水中カメラ15は、複数のレンズ及びイメージセンサなどを備え、水中を撮像した複数の静止画または動画のデータを取得し、そのデータを出力または記憶可能となっている。本実施の形態において、水中カメラ15は、可視光カメラとするが、これに限らず、赤外線カメラなどでもよい。好ましくは、水中カメラ15は、ハイビジョン画像を撮像可能となっている。また、水中カメラ15は、好ましくは録音機能を有する。
【0026】
水中カメラ15は、本体部12の前方の所定範囲を撮像範囲とする。水中カメラ15は、本体部12の前部に配置されている。図示される例では、水中カメラ15は、本体部12の中心軸上に撮像中心が配置されている。水中カメラ15は、本体部12の前端よりも前方に突出する位置に最前のレンズが位置するように本体部12に収容されている。水中カメラ15の撮像側である前部は、保護カバー16によって覆われている。保護カバー16は、ガラスや合成樹脂などの、透光性を有する、すなわち透明な部材によりドーム状に形成されている。
【0027】
また、保護カバー16は、ガード部材17により障害物などとの衝突に対し前方が保護されている。ガード部材17は、水中カメラ15の撮像範囲を妨げないようにフレーム状に形成されている。ガード部材17は、金属などの剛性を有する部材により形成されている。本実施の形態において、ガード部材17は、保護カバー16の両側から前方に延びる側部部材17a,17aと、これら側部部材17a,17aを保護カバー16の前方の上下の位置で左右に連結する連結部材17b,17bと、によりフレーム状となっている。
【0028】
なお、本実施の形態において、保護カバー16及びガード部材17は、本体部12の後端部においても、本体部12の前端部と略前後対称に同様に配置される。そのため、本体部12の内部が前後の保護カバー16によって液密に封じられ、水中カメラ15が本体部12の内部に液密に収納されている。
【0029】
また、本体部12には、水中カメラ15による水中の撮像を補助する水中ライト20が配置されている。水中ライト20は、少なくとも水中カメラ15の撮像範囲全体を含む範囲に、水中カメラ15の撮像を補助する光を照射する。本実施の形態において、水中ライト20は、少なくとも水中カメラ15の撮像範囲全体を含む範囲に可視光を照射するが、水中カメラ15が赤外線カメラなどである場合には、赤外光を照射してもよい。水中ライト20は、例えば円筒状に形成されている。
【0030】
図示される例では、水中ライト20は、前後方向に長手方向である軸方向を沿わせて本体部12の左右両側に対をなして配置されている。すなわち、本実施の形態の水中ライト20は、水中カメラ15を基準として互いに反対側の位置に配置されている。水中ライト20は、本体部12の前端近傍に配置され、前方を照明する。図示される例では、水中ライト20は、本体部12の後部に位置する左右の推力発生部13と同軸または略同軸に配置される。
【0031】
水中ライト20の照射側である前部は、ライト保護カバー21によって覆われている。ライト保護カバー21は、ガラスや合成樹脂などの、透光性を有する、すなわち透明な部材によりドーム状に形成されている。
【0032】
また、ライト保護カバー21は、ライトガード部材22により障害物などとの衝突に対し前方が保護されている。ライトガード部材22は、水中ライト20の照明を妨げないようにフレーム状に形成されている。ライトガード部材22は、金属などの剛性を有する部材により形成されている。本実施の形態において、ライトガード部材22は、ガード部材17と同様の形状に形成されている。すなわち、ライトガード部材22は、ライト保護カバー21の両側から前方に延びる側部部材22a,22aと、これら側部部材22a,22aをライト保護カバー21の前方で左右に連結する連結部材22b,22bと、によりフレーム状となっている。
【0033】
さらに、水中ライト20の本体部12とは反対側の側部、すなわち外側部は、側部ガード部材23によって覆われている。側部ガード部材23は、例えば合成樹脂などにより形成されている。本実施の形態において、側部ガード部材23は、水中ライト20の側面に沿う半円筒状に形成されている。側部ガード部材23は、消耗品であるため、好ましくは、水中ライト20に対して着脱可能に取り付けられる。
【0034】
また、本体部12には、水中の音声を取得するマイクロフォン25が配置されている。マイクロフォン25は、ハイドロフォンと呼ばれる水中用の集音装置である。マイクロフォン25は、推力発生部13の駆動により生じる音声をノイズとして取得しにくいように、推力発生部13から可能な限り離れた位置に配置することが好ましい。本実施の形態において、マイクロフォン25は、本体部12の下部に配置されている。図示される例では、マイクロフォン25は、本体部12の下部の前端近傍に配置されている。すなわち、マイクロフォン25は、水中カメラ15よりも下方に配置されている。
【0035】
本実施の形態において、マイクロフォン25は、円筒状に形成されている。マイクロフォン25は、本体部12の下部に取り付けられた脚部27に対し、取付部材28を介して取り付けられて、前後方向に長手方向である軸方向を沿わせて配置されている。図示される例では、マイクロフォン25は、本体部12の直下、すなわち左右方向の中央部にて本体部12の下方に離れて位置する。マイクロフォン25は、取得した音声をデータとして出力可能としてもよいが、本実施の形態では、データを記憶可能となっている。そのため、本実施の形態において、マイクロフォン25は、取付部材28に対して着脱可能に取り付けられ、記憶したデータを回収可能となっている。
【0036】
脚部27は、フットバー、あるいは橇などとも呼ばれ、水中移動体10の水中での姿勢を安定させるとともに、水中移動体10を載置する際の支持部として機能するものである。脚部27は、本体部12から下方に延びるブラケット29を介して本体部12の下部の両側部に取り付けられている。脚部27は、前後方向に沿って長手状に配置され、前端部及び後端部がそれぞれ上方に向かって反り返るように屈曲されている。脚部27は、水中移動体10の最下部に位置する。脚部27の前後両端部は、それぞれ本体部12の前端及び後端よりも前方及び後方に延びている。
【0037】
取付部材28は、例えば板状に形成され、左右の脚部27間に橋渡されて取り付けられている。取付部材28上にマイクロフォン25が固定されているため、マイクロフォン25は脚部27の下部よりも上方に位置し、導水管の管躯体や障害物などに直接接触しないように配置される。
【0038】
また、本体部12には、水上すなわち気中を撮像する気中カメラ31が配置されている。気中カメラ31は、複数のレンズ及びイメージセンサなどを備え、気中を撮像した複数の静止画または動画のデータを取得し、その取得したデータを出力または記憶可能となっている。本実施の形態において、気中カメラ31は、可視光カメラとするが、これに限らず、赤外線カメラなどでもよい。気中カメラ31は、防水処理されている。また、気中カメラ31は、好ましくは録音機能を有する。
【0039】
気中カメラ31は、本体部12の前方の所定範囲を撮像範囲とする。気中カメラ31は、本体部12の前部に配置されている。図示される例では、気中カメラ31は、本体部12の左右方向の中央部にて、本体部12の上方に撮像中心が配置されている。すなわち、気中カメラ31は、水中カメラ15よりも上方に配置されている。気中カメラ31は、本体部12の前端よりも前方に突出する位置に最前のレンズが位置するように本体部12の上部に配置されている。
【0040】
また、気中カメラ31の左右両側には、気中カメラ31による気中の撮像を補助する気中ライト32が配置されている。気中ライト32は、少なくとも気中カメラ31の撮像範囲全体を含む範囲に、気中カメラ31の撮像を補助する光を照射する。本実施の形態において、気中ライト32は、少なくとも気中カメラ31の撮像範囲全体を含む範囲に可視光を照射するが、気中カメラ31が赤外線カメラなどである場合には、赤外光を照射してもよい。気中ライト32は、防水処理されている。気中ライト32は、例えば円筒状に形成されている。
【0041】
図示される例では、気中カメラ31及び気中ライト32は、本体部12の上部に配置された把持部である手持ちバー34に取り付けられ、水中移動体10の最上部に位置する。好ましくは、気中カメラ31及び気中ライト32は、ユニット状に構成され、手持ちバー34に対し一体的に着脱可能に取り付けられている。
【0042】
手持ちバー34は、水中移動体10を把持するためのものである。手持ちバー34は、本体部12の上部の両側部に取り付けられている。手持ちバー34は、本体部12の上部の推力発生部13,13間に配置されている。手持ちバー34は、直線状に形成され、前後方向に沿って長手状に配置されている。手持ちバー34の前後両端部は、それぞれ本体部12の前端及び後端よりも前方及び後方に延びている。
【0043】
手持ちバー34には、必要に応じて浮力調整機構35が取り付けられる。浮力調整機構35は、例えば手持ちバー34の下部に沿って、本体部12の上部と手持ちバー34との間に配置される。
【0044】
好ましくは、気中カメラ31及び気中ライト32は、チルト機構37を介して手持ちバー34の上部に取り付けられている。チルト機構37は、気中カメラ31及び気中ライト32の角度を変更可能とするものである。本実施の形態において、チルト機構37は、側方から見て時計回り方向及び反時計回り方向に回動可能であり、気中カメラ31及び気中ライト32の軸方向、すなわち気中カメラ31の撮像方向及び気中ライト32の照明方向を、本体部12の軸方向に対して上下に傾斜させることが可能となっている。チルト機構37は、モータなどのアクチュエータにより駆動されて、回動角度を操作可能となっている。本実施の形態において、気中カメラ31及び気中ライト32は、一体的に回動角度を操作可能となっている。
【0045】
本実施の形態において、手持ちバー34の前端部は、脚部27の前端部と補強部材40を介して連結されている。図示される例では、左右の手持ちバー34の前端部が、左右の脚部27の前端部と補強部材40により連結されている。補強部材40は、気中カメラ31よりも下方、かつ、水中カメラ15の両側方に位置する。また、本実施の形態において、補強部材40は、水中カメラ15と水中ライト20との間の位置で上下方向に沿って位置する。図示される例では、補強部材40は、上側から下側に向かい、徐々に拡開されるように配置される。
【0046】
好ましくは、本体部12には、スケール42が位置調整手段であるマニピュレータ43を介して配置される。スケール42は、検査対象におけるひび割れなどの不具合や破損の計測を可能とするものである。スケール42は、本体部12よりも前方の位置で本体部12の幅方向に延びて配置される。スケール42は、水中カメラ15の撮像範囲に位置可能である。スケール42は、水中カメラ15の撮像範囲内に常時位置していてもよいし、マニピュレータ43によって、必要時にのみ水中カメラ15の撮像範囲内に位置するように移動されてもよい。
【0047】
スケール42は、本体部12の最前部に配置されている。スケール42は、障害物への衝突を考慮し、また、根掛かりしても外れやすいように、合成樹脂などにより薄板状に形成され、曲がりやすくなっている。
【0048】
マニピュレータ43は、スケール42の位置を本体部12の前方の壁面などに設置できるように調整可能とするものである。マニピュレータ43は、棒状に延びて形成されている。本実施の形態において、マニピュレータ43は、一側の補強部材40に基端部が取り付けられ、先端部にスケール42が取り付けられている。図示される例では、マニピュレータ43は、一側の補強部材40の下端部にて脚部27の前端部の上方の位置に基端部が上下方向に回動可能に取り付けられている。マニピュレータ43は、モータなどのアクチュエータにより駆動されて、スケール42の位置を操作可能となっている。
【0049】
また、好ましくは、本体部12には、目印照射手段であるレーザ照射部45が配置される。レーザ照射部45は、水中カメラ15の撮像範囲にて検査対象に少なくとも本体部12の幅方向に所定の間隔で水中カメラ15により撮像可能な複数の目印を照射する。例えば、レーザ照射部45は、
図5に示すように、目印として複数本、例えば2本のレーザ光Lを所定の間隔Gで平行な直線状に照射する。レーザ光Lの間隔としては、例えば200mmなどとする。レーザ光Lとしては、好ましくは緑色のレーザ光(グリーンレーザ)が用いられる。
【0050】
図1及び
図2に示すように、レーザ照射部45は、本体部12の下部に配置されている。図示される例では、レーザ照射部45は、マイクロフォン25の上方に位置する。本実施の形態において、レーザ照射部45は、本体部12の左右方向の中央部を基準として左右に離れて位置する。また、レーザ照射部45は、両側の補強部材40,40間に位置する。さらに、レーザ照射部45は、本体部12の前端寄りに位置している。
【0051】
そして、本体部12には、制御部49が配置されている。制御部49は、本体部12に収容されている。制御部49は、推力発生部13、水中カメラ15、マイクロフォン25、及び、気中カメラ31の動作をそれぞれ制御する。その他に、制御部49は、水中ライト20、気中ライト32、チルト機構37、マニピュレータ43、及び、レーザ照射部45の動作を制御してもよいし、水中カメラ15、マイクロフォン25、及び、気中カメラ31により取得されたデータを記憶したり、出力したり、解析したりする機能を備えていてもよい。
【0052】
制御部49は、
図3に示す操作員POにより、有線または無線の所定のコントローラCを介して入力された操作信号に応じて、少なくとも推力発生部13、水中カメラ15、マイクロフォン25、及び、気中カメラ31(
図1)の動作を制御する。本実施の形態では、
図1に示す制御部49は、所定のコントローラCを介して入力された操作信号に応じて、さらに水中ライト20、気中ライト32、チルト機構37、マニピュレータ43、及び、レーザ照射部45の動作を制御する。すなわち、水中移動体10は、
図3に示す操作員POにより遠隔操作される。
【0053】
水中移動体10の電源は、本体部12に内蔵されたバッテリから取ってもよいし、外部電源から有線により電力を供給してもよい。
【0054】
そして、水中移動体10は、解析手段50とともに、検査システム52を構成している。解析手段50は、例えばPCなどのコンピュータであり、インストールされたソフトウェアを備える。解析手段50は、好ましくは画像データを表示可能なモニタ54を有する。また、解析手段50は、好ましくは水中カメラ15と気中カメラ31とマイクロフォン25とのいずれかにより取得したデータを解析して不具合を検出する人工知能を有する。
【0055】
次に、本実施の形態の水中移動体10及び検査システム52の作用について説明する。
【0056】
図4に示すように、下水道の導水管などの検査対象Sにおいては、水没部分と非水没部分とが生じる場合がある。このような検査対象Sを検査する場合、水中移動体10は、水中カメラ15に加えて、マイクロフォン25、及び、気中カメラ31を用いる。そして、水中移動体10は、気中カメラ31及び気中ライト32を水上に出し、それ以外を水中に没する状態を維持するように、気中カメラ31及び気中ライト32を本体部12に取り付けた後、必要に応じて浮力調整機構35を取り付け、浮力バランスを調整する。なお、水中移動体10は、気中カメラ31及び気中ライト32を取り外すことで、非水没部分を有さない検査対象を検査する場合にも使用可能である。
【0057】
水中移動体10は、気中カメラ31及び気中ライト32を水上に出した状態で導水管などの検査対象Sに沿って推力発生部13により発生させた推力で水中を移動する。その間、水中カメラ15、気中カメラ31、及び、マイクロフォン25は、それぞれデータを連続取得する。水中ライト20及び気中ライト32は、水中カメラ15及び気中カメラ31の撮像範囲を照明し、これらの撮像を補助する。これらのデータには、好ましくは、同期信号を記録しておく。同期信号としては、好ましくは時報を用いる。すなわち、時報の音を、水中カメラ15、気中カメラ31、及び、マイクロフォン25に同期信号として同時に記録する。また、水中カメラ15には、好ましくは距離情報を録音する。
【0058】
水中移動体10によるデータ取得が終了すると、取得されたデータを、解析手段50を用いて解析する。この解析の際には、解析技術者がモニタ54に表示された水中カメラ15で取得された画像データ、気中カメラ31で取得された画像データ、及び、マイクロフォン25で取得された音声データの周波数特性を目視解析、または、解析手段50の人工知能により画像データ及び/または音声データを解析して、ひび割れCRなどの破損、破損に起因する漏水WLなどの不具合を認識する。例えば、解析手段50の人工知能は、マイクロフォン25により取得された音声データから、漏水音特有の周波数特性を検出することで、不具合を認識する。具体的には、人工知能は、音声データに対し周波数解析(FFT)を実施し、推力発生部13の駆動音、水流音、導水管との接触による発生音、および、背景ノイズをフィルタリングし、その結果を音紋に変換し、漏水音、ノイズなどを教師データとして自己学習させて、漏水音を自動検出する。
【0059】
そして、水中カメラ15と気中カメラ31とマイクロフォン25とにより取得されたデータの少なくともいずれかで不具合を認識したとき、これらデータに含まれる同期信号に基づき、これらデータを解析手段50で時間軸同期し、これらデータから同一箇所の記録を抽出して不具合箇所を特定する。
【0060】
このように、水中カメラ15、気中カメラ31、及び、マイクロフォン25を備えることにより、水中カメラ15により取得された検査対象の水没部分の画像データ、気中カメラ31により撮像された検査対象の非水没部分の画像データ、及び、マイクロフォン25により取得された水中の音声データに基づき、検査対象をより精度よく検査できる。
【0061】
すなわち、水中カメラ15では、水上の位置にある検査対象の天面側からの漏水などの不具合を撮像することが困難であるのに対し、本実施の形態では、気中カメラ31を備えることで、水上の位置にある不具合を撮像可能となる。また、マイクロフォン25により音声データを取得することで、水中カメラ15の画像データだけでなく、マイクロフォン25の音声データによって不具合を検出でき、熟練した解析技術者でなくても不具合を見落としにくくなる。
【0062】
水中カメラ15と気中カメラ31とマイクロフォン25とにより取得されるデータに同期信号を含むことで、同期信号を参照して、これらにより取得されたデータから同一箇所を容易に抽出可能となる。したがって、水中カメラ15と気中カメラ31とマイクロフォン25とにより取得されるデータのいずれかにより不具合を検出したときに、その不具合箇所と同一箇所の残りの他のデータを容易に照合できるため、不具合の検出精度が向上するとともに、実際の不具合の状態を高精度に確認できる。
【0063】
また、同期信号として時報を用いることで、同期信号を容易に生成できる。
【0064】
推力発生部13を本体部12の上部と後部との少なくともいずれかに配置し、マイクロフォン25を、本体部12の下部に位置して本体部12の少なくとも前方の音声を取得するようにすることで、マイクロフォン25により取得される音声データに、推力発生部13により生じるノイズが入りにくく、音声データの精度を向上できる。
【0065】
そして、水中移動体10の水中カメラ15と気中カメラ31とマイクロフォン25とにより取得されたデータを解析手段50により解析することで、検査対象を精度よく、かつ、安価に検査可能なシステムを構築できる。
【0066】
特に、解析手段50が、水中移動体10の水中カメラ15と気中カメラ31とマイクロフォン25とにより取得されたデータの少なくともいずれかに基づき、例えば人工知能により検査対象の不具合箇所を検出する機能を有することで、解析手段50の解析に基づいて、不具合の検出精度を向上できる。そのため、不具合の検出に要する人的コストや時間コストを抑制でき、安価かつ高精度に検査を実施可能になる。
【0067】
また、画像データから不具合を検出する場合と比較して、マイクロフォン25により取得された音声データは、漏水時特有の周波数特性によって不具合を検出することが比較的容易であるため、人工知能を用いて検査の自動化が可能になる。
【0068】
そして、特定した不具合箇所は、水中移動体10により詳細に調査可能である。
【0069】
例えば、水中移動体10は、変状を確認しながら進み、特定された不具合箇所において、レーザ照射部45から複数本のレーザ光Lを目印として本体部12の幅方向に所定の間隔Gで検査対象に照射し、その状態で水中カメラ15により画像を撮像することで、画像データに基づき、ひび割れCRなどの不具合の破損規模を、レーザ光Lの間隔Gによって推測できる(
図5)。
【0070】
緑色のレーザ光を目印として用いることで、目印が水の濁度に依らず、画像データ中に撮像されやすくなる。
【0071】
また、水中移動体10は、特定された不具合箇所において、本体部12の幅方向に延びるスケール42をひび割れCRなどの不具合箇所とともに水中カメラ15により画像を撮像することで、画像データに基づき、ひび割れCRなどの不具合の具体的な幅寸法を、スケール42を参照して実測できる(
図6)。
【0072】
スケール42の位置をマニピュレータ43により調整可能とすることで、水中カメラ15による撮像の際に、不具合箇所に対し適切な位置にスケール42を配置できる。
【0073】
また、水中移動体10を用いることで、導水管などの検査対象を断水することなく検査可能となる。
【符号の説明】
【0074】
10 水中移動体
12 本体部
13 推力発生部
15 水中カメラ
25 マイクロフォン
31 気中カメラ
42 スケール
43 位置調整手段であるマニピュレータ
45 目印照射手段であるレーザ照射部
50 解析手段
52 検査システム