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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010420
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】炊飯器
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/00 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
A47J27/00 103B
A47J27/00 103E
A47J27/00 109G
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021188823
(22)【出願日】2021-11-19
(62)【分割の表示】P 2018561397の分割
【原出願日】2018-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2017002917
(32)【優先日】2017-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】508157370
【氏名又は名称】バルミューダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148518
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 玄
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 明人
(72)【発明者】
【氏名】石津 征一
(72)【発明者】
【氏名】茂木 文明
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA61
4B055CA01
4B055CB02
4B055GD02
(57)【要約】
【課題】 粒感のある食感で濃厚な味のご飯を炊き上げることができる炊飯器を提供する。
【解決手段】 本発明に係る炊飯器1は、飯米Rを収容する内釜5と、内釜5の外側に設けられ、加熱水wを収容する外釜4と、外釜4を加熱する釜ヒーター8と、外釜4に取り付けられ、内釜5を外釜4から離間させるスペーサー6とを備え、内釜5に、内釜5の外側に向けて突出する羽根部24が設けられ、スペーサー6に、外釜4に取り付けられた状態で内釜5の羽根部21を下方から支持する複数の支持部29が設けられるとともに、複数の支持部29の間に外釜4と内釜5の羽根部24とが対向して形成される対向空間30が設けられ、釜ヒーター8による外釜4の加熱により加熱水wが気化してなる水蒸気が、スペーサー6により離間した内釜5と外釜4との間及び対向空間30を通って内釜5の内部に流入し、飯米Rを加熱する
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飯米を収容する内釜と、
前記内釜の外側に設けられ、加熱水を収容する外釜と、
前記外釜を加熱する加熱手段と、
前記外釜に取り付けられ、前記内釜を前記外釜から離間させる離間手段とを備え、
前記内釜に、前記内釜の外側に向けて突出する羽根部が設けられ、
前記離間手段に、前記外釜に取り付けられた状態で前記内釜の羽根部を下方から支持する複数の支持部が設けられるとともに、前記複数の支持部の間に前記外釜と前記内釜の羽根部とが対向して形成される対向空間が設けられ、
前記加熱手段による前記外釜の加熱により前記加熱水が気化してなる水蒸気が、前記離間手段により離間した前記内釜と前記外釜との間及び前記対向空間を通って前記内釜の内部に流入し、前記飯米を加熱することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記離間手段が、前記外釜に取り付けられた状態で前記内釜に当接して前記内釜を位置決めする当接部と、前記加熱水が気化してなる水蒸気の通気に供する経路を形成する通気部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記外釜に、前記外釜の外側に向けて突出する羽根部が設けられ、
前記離間手段は、前記外釜の羽根部を外側及び下方から覆うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の炊飯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気を利用して炊飯を行う炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高性能な電気炊飯器が様々なメーカーから発売されており、多くの炊飯器では、例えば特許文献1に記載されているように、飯米から「おねば」と呼ばれる澱粉を主成分とする粘液質の液体を出すような炊飯が行われている。おねばは食べた瞬間は甘味として感じられるが、おねばを出す過程で米が傷付いて味の成分も漏出しており、炊き上がったご飯が粒感のある食感にはならず、濃厚な味にもならない。
【0003】
また、炊飯器では炊きムラの抑制が課題となっているが、例えば釜の中の米が釜の熱でのみ加熱される場合には、釜の中の外側(釜の周壁や底壁に近い側)にある米は温度が上がって水を吸いやすくなる一方、釜の中の内側(釜の周壁や底壁から遠い側)にある米は温度が上がらず水を吸いにくく炊きムラになりやすいので、これを回避するために短時間で釜の中の水を熱湯にするとともに、米を対流させたりおどらせたりする制御が行われている。このような制御は、おねばを出すための炊き方としてはともかく、粒感のある食感や濃厚な味を得るためには適当ではなく、これらを得るためには、特許文献2に記載されているように、米を釜の熱のみならず水蒸気の熱によっても加熱することが有効と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-178号公報
【特許文献2】特公昭32-5987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の炊飯器自体は、マイコン制御によらずに加熱釜内の加熱水がなくなった時点で電熱装置による加熱が切れるもので、加熱水が一気に100℃まで上昇して炊飯釜内の米及び水を加熱するので、米を煮崩れさせないように炊いて粒感のある食感を出すことは難しい。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、粒感のある食感で濃厚な味のご飯を炊き上げることができる炊飯器を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る炊飯器は、飯米を収容する内釜と、前記内釜の外側に設けられ、加熱水を収容する外釜と、前記外釜を加熱する加熱手段と、前記外釜に取り付けられ、前記内釜を前記外釜から離間させる離間手段とを備え、前記内釜に、前記内釜の外側に向けて突出する羽根部が設けられ、前記離間手段に、前記外釜に取り付けられた状態で前記内釜の羽根部を下方から支持する複数の支持部が設けられるとともに、前記複数の支持部の間に前記外釜と前記内釜の羽根部とが対向して形成される対向空間が設けられ、前記加熱手段による前記外釜の加熱により前記加熱水が気化してなる水蒸気が、前記離間手段により離間した前記内釜と前記外釜との間及び前記対向空間を通って前記内釜の内部に流入し、前記飯米を加熱することを特徴とする。
【0008】
この炊飯器では、内釜を外釜から離間させる離間手段を備えているので、外釜から離間した内釜の外面が水蒸気の結露する場所として確保され、その水蒸気の凝縮熱により飯米を加熱することによって、飯米に水を吸わせながらじっくりとムラを抑制しつつ浸漬することができる。
【0009】
また、内釜に、内釜の外側に向けて突出する羽根部が設けられ、離間手段に、外釜に取り付けられた状態で内釜の羽根部を下方から支持する複数の支持部が設けられるとともに、複数の支持部の間に外釜と内釜の羽根部とが対向して形成される対向空間が設けられ、加熱手段による外釜の加熱により加熱水が気化してなる水蒸気が、離間手段により離間した内釜と外釜との間及び対向空間を通って内釜の内部に流入し、飯米を加熱するので、加熱水は、外釜と内釜との間の上方が支持部によりある程度閉ざされた空間の中で加熱されることになり、加熱水の加熱効率を高めることができる一方、それが高温になって気化した場合には、水蒸気が対向空間を通って内釜の内部に流入する。
【0010】
したがって、飯米は、内釜の熱により側方及び下方から、内釜の内部に流入してくる水蒸気により上方から包み込まれるように加熱され、内釜の中でどの位置にある飯米もムラなく吸水して荷崩れせずに炊かれ、飯米の形が保たれたままの、粒感のある食感で濃厚な味のご飯を炊き上げることができる。
【0011】
前記離間手段は、前記外釜に取り付けられた状態で前記内釜に当接して前記内釜を位置決めする当接部と、前記加熱水が気化してなる水蒸気の通気に供する経路を形成する通気部とを備えてもよい。これにより、当接部に位置決めされた内釜が外釜の内側でがたつかず、炊飯器の使用感が向上するとともに、加熱水は、外釜と内釜との間の上方が当接部によりある程度閉ざされた空間の中で加熱されることになり、加熱水の加熱効率を高めることができる一方、それが高温になって気化した場合には、水蒸気が隙間を通って内釜の内部に流入することができる。
【0012】
さらに、前記外釜に、前記外釜の外側に向けて突出する羽根部が設けられ、前記離間手段は、前記外釜の羽根部を外側及び下方から覆ってもよい。これにより、使用者が加熱された外釜の羽根部に直接触れる事態を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、飯米の形が保たれたままの、粒感のある食感で濃厚な味のご飯を炊き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】発明を実施するための形態に係る炊飯器の外観を示す斜視図である。
図2図1の炊飯器の蓋が開いた状態を示す斜視図である。
図3図1の炊飯器の部分断面図である。
図4図1の炊飯器の制御系を示すブロック図である。
図5】(a)は図1の炊飯器の外釜及びスペーサーの分解状態を示す斜視図、(b)は外釜及びスペーサーの取付状態を示す斜視図である。
図6図1の炊飯器の制御部による処理を示す流れ図である。
図7図1の炊飯器の外釜の温度変化を示す説明図である。
図8図1の炊飯器における水蒸気の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0016】
図1乃至4は、本形態に係る炊飯器を示す。この炊飯器1は、本体2と、蓋体3と、本体2の内部に着脱自在に設けられて加熱水wを収容する外釜4と、外釜4の内側に着脱自在に設けられて飯米R及び水Wを収容する内釜5と、内釜5を外釜4から離間して位置決めするスペーサー6と、蓋体3の内側に着脱自在に設けられた内蓋7と、外釜4を加熱する釜ヒーター8と、外釜4の温度を検出する釜温度センサー9と、釜ヒーター8の温度を検出するヒーター温度センサー10と、内蓋7を加熱して内蓋7への水滴の付着を防止する蓋ヒーター11と、釜ヒーター8及び蓋ヒーター11の加熱を制御する制御部(マイコン)12と、制御部12に制御されて釜ヒーター8のオン/オフを切り替える釜ヒーター制御用リレー及び蓋ヒーター11のオン/オフを切り替える蓋ヒーター制御用トライアックが設けられた電源基板13とを備える。
【0017】
蓋体3には、蓋体3を開閉するための開蓋ボタン14と、炊飯を開始するための炊飯ボタン15と、炊飯を取り消すための取消ボタン16と、炊飯モード(「白米」、「玄米」、「おかゆ」等の調理対象に関するモードや、「炊込み」、「早炊き」等の炊き方に関するモード等)の選択や炊飯予約をするためのファンクションボタン17と、各種情報を表示するための表示部18とが設けられている。
【0018】
外釜4はアルミニウムからなり、底壁部19と、周壁部20と、周壁部20の上縁から外釜4の外側に向けて突出した羽根部21とを有する。一方、内釜5はステンレスからなり、底壁部22と、周壁部23と、周壁部23の上縁から内釜5の外側に向けて突出した羽根部24とを有する。
【0019】
スペーサー6は、図5に示すように、円環状で樹脂製のアッパー部材25及びロワー部材26により構成され、アッパー部材25及びロワー部材26が外釜4の羽根部21を上下から挟んで外釜4に取り付けられる。
【0020】
アッパー部材25は、周壁部20の上縁付近を内側から覆うとともに、羽根部21を上方から一部覆うもので、円環状の内面に全周にわたって複数設けられ、周壁部23に当接して内釜5を位置決めする当接部27と、隣接する当接部27の間に設けられ、周壁部23との間に隙間を形成する複数の凹部28と、円環状の上面の3箇所に等間隔で設けられ、羽根部24を下方から支持する支持部29とを備える。ロワー部材26は、羽根部21を外側及び下方から覆い、使用者が加熱された羽根部21に直接触れる事態を防止する。当接部27が周壁部23に当接し、支持部29が羽根部24を支持して内釜5が外釜4の内側にセットされた状態では、スペーサー6で覆われた羽根部21と羽根部24とが対向して両者の間に対向空間30が形成される。
【0021】
炊飯器1による炊飯時、使用者は、外釜4に加熱水wを内釜5の底壁部22に届かない所定の水位まで入れるとともに、内釜5に飯米R及び水Wを所定量入れ、ファンクションボタン17及び炊飯ボタン14を操作する。図6に示すように、制御部12は、ファンクションボタン17によりモードが選択され(ステップ1(図6において「S.1」と記載。以下同様。))、炊飯ボタン14が押されると(ステップ2)、釜ヒーター8をオンにするとともに(ステップ3)、蓋ヒーター11をオンにする(ステップ4)。
【0022】
そして、制御部12は、図7に示すように、外釜4が所定時間tをかけて徐々に加熱水wが沸騰しない所定温度Tになるように、釜ヒーター8による加熱を行うが(ステップ5)、この間、外釜4と内釜5との間では、水蒸気が凝縮して底壁部22及び周壁部23の外面に結露が生じ、その凝縮熱により内釜5の中の飯米R及び水Wは加熱される。例えば所定温度Tを60℃以下に設定しておけば、飯米Rはアルファ化せずに30パーセント程度までは水Wを吸うが、それ以上は吸水せず、そこまでが浸漬工程となる。
【0023】
次に、制御部12は、ヒーター温度センサー10のフィードバックを受けながら釜ヒーター8を100℃を超える所定温度Tに維持し(ステップ6)、外釜4の中の加熱水wがなくなるまで釜ヒーター8による加熱を続ける(ステップ7)。加熱水wが蒸発して一定水量以下になった場合には、外釜4の温度が加熱水wにより維持されなくなり急激な温度上昇が発生するので、制御部12は、釜温度センサー9の検出結果により、加熱水wがなくなったか否かを判断することができる。この沸騰工程では、加熱水wが気化してなる水蒸気が底壁部22及び周壁部23を通じて飯米R及び水Wを側方及び下方から加熱するとともに、図8に示すように、凹部28、対向空間30及び内蓋7と羽根部24との間を通り、内釜5の内部に流入して飯米R及び水Wを上方からも加熱する。
【0024】
外釜4の中の加熱水wがなくなると、制御部12は、釜ヒーター8をオフにして蒸らしを行う(ステップ8)。この蒸らし工程は所定時間tが経過するまで継続し(ステップ9)、所定時間tが経過すると、制御部12は、炊飯が完了したとして使用者にその旨を音その他で通知し(ステップ10)、蓋ヒーター11をオフにする(ステップ11)。
【0025】
本形態に係る炊飯器1では、制御部12が、まず加熱水wが沸騰しない所定温度になるまで釜ヒーター8による加熱を行い、底壁部22及び周壁部23の外面における水蒸気の凝縮熱により飯米Rを加熱するので、飯米Rに水Wを吸わせながらじっくりとムラを抑制しつつ浸漬することができる。続いて、制御部12が、加熱水wが沸騰するまで釜ヒーター8による加熱を行い、加熱水wが気化してなる水蒸気を内釜5の内部に流入させて飯米Rを加熱するので、飯米Rは内釜5の熱により側方及び下方から、内釜5の内部に流入してくる水蒸気により上方から包み込まれるように加熱され、内釜5の中でどの位置にある飯米Rもムラなく余力分を吸水して煮崩れせずに炊かれる。これにより、飯米Rの形が保たれたままの、粒感のある食感で濃厚な味のご飯を炊き上げることができる。
【0026】
また、炊飯器1は、内釜5を外釜4から離間して位置決めするスペーサー6を備えているので、外釜4から離間して位置決めされた内釜5の外面(底壁部22及び周壁部23の外面)が水蒸気の結露する場所として確保され、水蒸気の凝縮熱による加熱を安定化することができるとともに、位置決めされた内釜5が外釜4の内側でがたつかず、炊飯器1の使用感を向上させることができる。
【0027】
さらに、スペーサー6は、外釜4に取り付けられた状態で内釜5に当接して内釜5を位置決めする当接部27と、加熱水wが気化してなる水蒸気の通気に供する隙間(経路)を形成する凹部28と、羽根部24を下方から支持する3つの支持部29とを備え、3つの支持部29のそれぞれの間に羽根部21と羽根部24との対向空間30が形成され、この対向空間30も加熱水wが気化してなる水蒸気の通気に供する。したがって、加熱水wは、外釜4と内釜5との間の上方が当接部27及び支持部29によりある程度閉ざされた空間の中で加熱されることになり、加熱水wの加熱効率を高めることができる一方、それが高温になって気化した場合には、水蒸気が凹部28及び対向空間30を通って内釜5の内部に流入することができる。
【0028】
以上、本発明を実施するための形態について例示したが、本発明の実施形態は上述したものに限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更等してもよい。
【0029】
例えば、制御部12は釜センサー8により外釜4の温度を観察しながら制御を行うとしたが、内釜の温度や加熱水の温度を観察しながら制御を行ってもよい。
【0030】
また、通気部として隣接する当接部27の間に凹部28を設けたが、スペーサー6に凹部28を設けず円環状の全周にわたって周壁部23と当接させながら、適宜の箇所に水蒸気の通気に供する通気孔を設ける等の形態を採ってもかまわない。
【符号の説明】
【0031】
1 炊飯器
4 外釜
5 内釜
6 スペーサー(離間手段)
8 釜ヒーター(加熱手段)
12 制御部
24 羽根部
27 当接部
28 凹部(通気部)
29 支持部
30 対向空間
w 加熱水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8