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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104200
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】気液分離装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 45/12 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
B01D45/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219259
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 哲暢
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克
【テーマコード(参考)】
4D031
【Fターム(参考)】
4D031AC01
4D031AC02
4D031BA01
4D031BA07
4D031BA10
4D031EA01
(57)【要約】
【課題】気液二相流体の流速に拘らず、旋回流発生部材よりも下流の位置で液体を捕集することができる気液分離装置を提供すること。
【解決手段】気液二相流体が流れる管部材21と、管部材21の内部に配置された旋回流発生部材22と、を備え、旋回流発生部材22によって気液二相流体を旋回させて気体と液体とを分離する気液分離装置16において、旋回流発生部材22は、管部材21の中心軸Oを中心にして螺旋状延び、管部材21を軸方向から見たときに、管径方向の先端32aが管部材21の全周にわたって連続する翼部32を有している。そして、管部材21と旋回流発生手段22との間には、管部材21の内周面25aに軸方向に延びる膨出部25dを形成することで、旋回流発生部材22よりも上流の第1空間Xと、旋回流発生部材22よりも下流の第2空間Yとを連通する連通部34が設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と液体が混在する気液二相流体が流れる管部材と、前記管部材の内部に配置された旋回流発生部材と、を備え、前記旋回流発生部材によって前記気液二相流体を旋回させて前記気体と前記液体とを分離する気液分離装置において、
前記旋回流発生部材は、前記管部材の中心軸を中心にして螺旋状に湾曲し、前記管部材を軸方向から見たときに、前記管部材の径方向の先端が前記管部材の全周にわたって連続する翼部を有し、
前記管部材と前記旋回流発生部材との間には、前記管部材の内周面に前記軸方向に延びる膨出部を形成することによって、前記旋回流発生部材よりも上流の第1空間と、前記旋回流発生部材よりも下流の第2空間とを連通する連通部が設けられる
ことを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
請求項1に記載された気液分離装置において、
前記連通部の管周方向の中央位置は、前記中心軸よりも重力方向の下方に位置する
ことを特徴とする気液分離装置。
【請求項3】
請求項2に記載された気液分離装置において、
前記連通部の管周方向の中央位置は、前記中心軸の鉛直下方位置よりも前記旋回流発生部材による前記気液二相流体の旋回方向にずれている
ことを特徴とする気液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液二相流体に含まれる気体と液体を分離する気液分離装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、管部材を流れる気液二相流体を旋回流発生部材によって旋回させ、気体と液体とに分離する気液分離装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-104906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の気液分離装置にあっては、旋回流発生部材が、管部材の中心軸を中心にして螺旋状に延びた翼部を有している。そして、翼部の管径方向の先端は、管部材を軸方向から見たときに管部材の全周にわたって連続しており、隣り合う翼部の間に軸方向に延びる隙間が生じ得ない。さらに、翼部は、その全長が管内周面に接触している。気液二相流体は、低流速時には、液体が微細な粒状にならず、旋回させる前に自然と気体から分離して管内周面に付着する水滴になる。水滴になった液体は、気体の流れによって管部材の内部を管軸方向に沿って流れるが、旋回流発生部材の翼部が管内周面に接触しているために流れが阻害されてしまう。このため、旋回流発生部材よりも気液二相流体の流れ方向の上流位置に排水パイプを設け、旋回流発生部材の配置領域に流れ込む前に水滴を貯水タンクに導く必要がある。
【0005】
しかしながら、排水パイプを設けたり、当該排水パイプを貯水タンクに接続したりすると各部材の配置の自由度が悪くなり、気液分離装置としてコスト低減の妨げになるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、気液二相流体の流速に拘らず、旋回流発生部材よりも下流の位置で液体を捕集することができる気液分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の気液分離装置は、気体と液体が混在する気液二相流体が流れる管部材と、前記管部材の内部に配置された旋回流発生部材と、を備え、前記旋回流発生部材によって前記気液二相流体を旋回させて前記気体と前記液体とを分離する。ここで、前記旋回流発生部材は、前記管部材の中心軸を中心にして螺旋状に延び、前記管部材を軸方向から見たときに、管径方向の先端が前記管部材の全周にわたって連続する翼部を有する。そして、前記管部材と前記旋回流発生部材との間には、前記管部材の内周面に前記軸方向に延びる膨出部を形成することによって、前記旋回流発生部材よりも上流の第1空間と、前記旋回流発生部材よりも下流の第2空間とを連通する連通部が設けられる。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明では、管部材を軸方向から見たときに、旋回流発生部材が有する翼部の管径方向の先端が管部材の全周にわたって連続する場合であっても、気液二相流体の流速に拘らず、旋回流発生部材よりも下流の位置で液体を捕集することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の気液分離装置を適用した内燃機関の排気還流システムを示す全体システム図である。
図2】実施例1の気液分離装置を示す断面図である。
図3A】実施例1の旋回流発生部材を示す斜視図である。
図3B】実施例1の旋回流発生部材を示す側面図である。
図4図2に示すA-A断面図である。
図5】実施例1の気液分離装置における高流速時の気液二相流体の流れを示す説明図である。
図6】実施例1の気液分離装置における低流速時の気液二相流体の流れを示す説明図である。
図7】実施例1の気液分離装置の第1変形例を示す要部断面図である。
図8】実施例1の気液分離装置の第2変形例を示す要部断面図である。
図9】実施例1の気液分離装置の第3変形例を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の気液分離装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0011】
(実施例1)
まず、実施例1における気液分離装置の構成を、「適用例のシステム全体構成」、「気液分離装置の詳細構成」、「旋回流発生部材の詳細構成」に分けて説明する。
【0012】
[適用例のシステム全体構成]
図1は、実施例1の気液分離装置16を適用した内燃機関1の排気還流システムSを示す全体システム図である。実施例1の気液分離装置16は、図1に示す内燃機関1の排気還流システムSに適用されている。ここで、図1に示した内燃機関1は、走行用駆動源として車両に搭載されるディーゼルエンジンであり、4つの気筒(不図示)を有している。各気筒には、それぞれ吸気通路2と排気通路3が接続されている。
【0013】
吸気通路2は、端部に吸気口2aが形成され、この吸気口2a側から順に、吸気濾過用のエアクリーナー4、ターボ過給機5のコンプレッサ5a、吸気を冷却するインタークーラー6、吸入空気量を調整するためのスロットル弁7が設けられている。排気通路3には、内燃機関1側から順に、ターボ過給機5のタービン5b、排気を浄化するための排気浄化触媒8、排気流量を調整するための排気絞り弁9が設けられている。なお、排気絞り弁9の下流側にはマフラー10が設けられ、その先に排気口3aが形成されている。
【0014】
吸気通路2と排気通路3とは、低圧EGR通路11及び高圧EGR通路12によって接続されている。ここで、「EGR」とは、内燃機関1において燃焼後の排気の一部を取り出して再度吸気させる技術(Exhaust Gas Recirculation)であり、排気再循環ともいう。
【0015】
低圧EGR通路11は、コンプレッサ5aより上流の吸気通路2と排気浄化触媒8より下流の排気通路3とを接続している。一方、高圧EGR通路12は、コンプレッサ5aより下流の吸気通路2とタービン5bより上流の排気通路3とを接続している。これにより、低圧EGR通路11では、タービン5bを通過した排気を、コンプレッサ5aの吸気側に戻すこととなる。また、高圧EGR通路12では、タービン5bに流れ込む前の排気を、コンプレッサ5aを通過してきた吸気側に戻すこととなる。
【0016】
低圧EGR通路11には、吸気通路2に導かれる排気を冷却するためのEGRクーラ13と、低圧EGR通路11を介して吸気通路2に還流される排気の流量を調整するための低圧EGR弁14と、が設けられている。高圧EGR通路12には、高圧EGR通路12を介して吸気通路2に還流される排気の流量を調整するための高圧EGR弁15が設けられている。
【0017】
ここで、低圧EGR通路11では、ターボ過給機5のタービン通過排気量を低下させることなく排気の還流を可能とし、NOx低減効果が大きい。しかしながら、EGRガスは、EGRクーラ13での冷却或いは、寒冷時のエアと混ざることによって凝縮水の発生が懸念される。そこで、実施例1の排気還流システムSでは、低圧EGR弁14の下流位置であって、ターボ過給機5のコンプレッサ5aの上流位置(図1において一点鎖線Xで囲む位置)に気液分離装置16を設置し、凝縮水を捕集して排水する。
【0018】
[気液分離装置の詳細構成]
図2は、実施例1の気液分離装置16を示す断面図である。実施例1の気液分離装置16は、管部材21と、旋回流発生部材22と、貯水タンク23と、バイパスパイプ24と、を備えている。
【0019】
管部材21は、一端が吸気口2a及び低圧EGR弁14に連通し、他端がターボ過給機5のコンプレッサ5aに連通し、気体と微粒子状の液体(凝縮水)が混ざり合った状態の排気(以下、「気液二相流体」という)が流れる。また、管部材21は、車載されたときに中心軸Oが水平方向に沿うように配置され、第1パイプ25、第2パイプ26、第3パイプ27の三本の管状体が連結されることで形成されている。第1パイプ25、第2パイプ26、第3パイプ27は、気液二相流体の流れ方向の上流側(図2において右側、以下「流体流入側」という)から、気液二相流体の流れ方向の下流側(図2において左側、以下「流体流出側」という)に向かって順に連結されている。
【0020】
なお、以下の説明では、管部材21の軸方向(中心軸Oに沿った方向)を「管軸方向」といい、管部材21の径方向(中心軸Oに直交する方向)を「管径方向」という。さらに、管部材21の周方向(中心軸Oを中心とした円周方向)を「管周方向」という。
【0021】
第1パイプ25は、旋回流発生部材22が内部に配置された直管部材である。第1パイプ25の内部には、旋回流発生部材22が配置された旋回領域22aと、第1パイプ25の内径寸法を流体流出側に向かって次第に拡大するテーパ領域25bと、第2パイプ26が突き当てられる段差部25cと、が形成されている。ここで、テーパ領域25bは、旋回領域22aよりも流体流出側に形成されている。また、段差部25cは、テーパ領域25bよりも流体流出側に形成されている。第1パイプ25の内径寸法は、旋回領域22a、テーパ領域25b、段差部25cの順に大きくなっている。
【0022】
さらに、第1パイプ25の内周面25aには、膨出部25dが形成されている。膨出部25dは、第1パイプ25の内周面25aの一部を、段差をもって管径方向の外方に突出させる(へこませる)ことで形成され、管軸方向に延びる溝形状を呈している。また、膨出部25dは、第1パイプ25の流体流入側の端部(不図示)から、少なくとも旋回領域22aの流体流出側の端部に至るまで延びている。さらに、膨出部25dは、水平方向に沿った所定の幅寸法Wを有しており、管周方向の中央位置25eが管部材21の中心軸Oの鉛直方向の下方に位置している。
【0023】
しかも、膨出部25dは、底面25fが水平方向に沿った平坦面に形成され、深さH(第1パイプ25の内周面25aから膨出部25dの底面25fまでの距離)は、管周方向の中央位置25eが最も浅く、管周方向の両端部に向かって次第に深くなる。
【0024】
第2パイプ26は、第1パイプ25に連結される水平部26aと、水平部26aに直交状態で接続された垂直部26bと、を有するT字管部材である。
【0025】
水平部26aは、一端が第1パイプ25に差し込み可能であって、第1パイプ25に差し込んだ状態で、第1パイプ25の内周面25aに接触している。また、水平部26aの一端は、段差部25cに突き当てられている。水平部26aの軸方向は、管部材21の中心軸Oに一致し、水平方向に延びている。
【0026】
水平部26aと垂直部26bとの接続部分には排水開口26cが形成され、水平部26aと垂直部26bは連通している。排水開口26cは、重力方向(中心軸Oの鉛直方向の下方)に開放し、垂直部26bは、水平部26aから重力方向に沿って延在している。これにより、気液二相流体から分離された液体は、自重により排水開口26cを介して垂直部26bを流下する。
【0027】
さらに、垂直部26bは、中間部が下方に向かって液体の流通面積が次第に狭くなる縮形部26dに接続している。これにより、縮形部26dの先端(下端)に形成された先端開口26eの開口面積は、排水開口26cの開口面積よりも小さくなっている。垂直部26b、排水開口26c、縮形部26d、先端開口26eは、排水パイプに相当する。
【0028】
第3パイプ27は、第2パイプ26の水平部26aの他端に差し込み可能であって、第2パイプ26に差し込んだ状態で、水平部26aの内周面との間に間隙αが生じる外径寸法に設定された直管部材である。間隙αにはスペーサー28が嵌合されている。スペーサー28は、第3パイプ27の外周面の全周を取り囲む円筒形状を呈しており、第2パイプ26の水平部26aと第3パイプ27とのそれぞれに接触する。つまり、スペーサー28によって、水平部26aの他端は閉塞される。また、第3パイプ27は、一方の端部27aが排水開口26cの上方に位置するまで第2パイプ26に差し込まれている。さらに、第3パイプ27は、第2パイプ26から突出した位置に、周面を貫通する通気口27bが形成されている。この通気口27bには、バイパスパイプ24の第2端部24bが接続されている。
【0029】
貯水タンク23は、第2パイプ26の垂直部26bの下方に設置されたタンク本体23aを有している。このタンク本体23aは、上面に第1開口23bが形成され、側面に第2開口23cが形成され、底面に図示しない排水開口が形成されている。
【0030】
第1開口23bは、連通管23dを介して垂直部26bの先端開口26eに接続されている。第2開口23cには、バイパスパイプ24の第1端部24aが接続されている。排水開口は、適宜開閉可能であり、タンク本体23a内に貯留された液体が一定量に達したら開放し、貯留した液体をタンク外へ放出することができる。
【0031】
バイパスパイプ24は、両端が開放した管状体であり、第1端部24aがタンク本体23aに形成された第2開口23cに接続され、第2端部24bが第3パイプ27に形成された通気口27bに接続されている。これにより、タンク本体23aの内部空間は、バイパスパイプ24を介して第3パイプ27の内部に連通する。
【0032】
[旋回流発生部材の詳細構成]
実施例1の旋回流発生部材22は、第1パイプ25の旋回領域22aに配置され、管部材21を流れる気液二相流体の流れ方向を規定して、気液二相流体を旋回流にする。旋回流発生部材22は、図3Aに示すように、翼支持部31と、翼支持部31の外周面31aに設けられた複数(ここでは四枚)の翼部32と、を備えている。
【0033】
翼支持部31は、図3Aに示すように、先端部31bがR面に形成された円錐形状を呈している。旋回流発生部材22は、先端部31bを流体流入側に向け、流体流出側に向かうに連れて翼支持部31の外径寸法が次第に拡大する向きで旋回領域22aに配置される。また、旋回流発生部材22は、旋回領域22aに配置されたとき、翼支持部31の軸方向Oが管部材21の中心軸Oに一致する。
【0034】
複数(四枚)の翼部32は、それぞれ翼支持部31の外周面31aから管径方向に突出し、翼支持部31の軸方向Oを中心にして、翼支持部31の軸方向Oの回りに等角度間隔で設けられ、螺旋状に取り巻いている。ここで、旋回流発生部材22が旋回領域22aに配置されたとき、翼支持部31の軸方向Oが管部材21の中心軸Oに一致する。このため、各翼部32は、旋回流発生部材22が旋回領域22aに配置された状態において、管部材21の中心軸Oを中心にして螺旋状に湾曲しながら延びることとなる。
【0035】
さらに、旋回流発生部材22が旋回領域22aに配置されたとき、各翼部32の管径方向の先端32aは、第1パイプ25に形成された膨出部25dに対向する部分以外が、第1パイプ25の内周面25a(管部材21の内周面)に接触する。一方、各翼部32の翼支持部31に対する取巻角度θ1は、約90°に設定されている。「取巻角度θ1」とは、図4に示すように、旋回流発生部材22を管軸方向から見たときに、翼部32の流体流入側の端部32bの突出方向L1と、翼部32の流体流出側の端部32cの突出方向L2とでなす角度である。取巻角度θ1が約90°であることから、翼部32の流体流出側の端部32cは、旋回流発生部材22を管軸方向から見たとき、隣り合う翼部32の流体流入側の端部32bに管軸方向で重複する。なお、端部32b,32cに生じたR形状や、金型の抜き勾配の都合上、隣り合う翼部32の流体流入側の端部32bと流体流出側の端部32cとが管軸方向で重複しないこともある。
【0036】
そして、旋回流発生部材22は、複数(四枚)の翼部32の取巻角度θ1が約90°に設定されたことから、管軸方向から見たときに、図4に示すように、翼部32の先端32aが管部材21の全周にわたって連続している。すなわち、旋回流発生部材22を管軸方向から見たとき、翼部32の管径方向の先端32aに沿った軌跡で、管部材21の中心軸Oを囲むことが可能である。これにより、隣り合う翼部32同士の対向する側面32xの間に、管軸方向に延びる隙間が生じ得ない。
【0037】
そして、実施例1の気液分離装置16は、管部材21である第1パイプ25の内周面25aと、旋回流発生部材22の翼部32の先端32aとの間に、旋回流発生部材22を配した第1パイプ25の内周面25aに膨出部25dを形成することによって、連通部34が設けられている。つまり、管部材21の内周面25aには、連通部34が形成されている。連通部34は、管軸方向に沿って延び、旋回流発生部材22が配置された旋回領域22aよりも上流(流体流入側)の第1空間X(図2参照)と、旋回流発生部材22が配置された旋回領域22aよりも下流(流体流出側)の第2空間Y(図2参照)とを連通する空間である。また、連通部34の管周方向の中央位置は、膨出部25dの管周方向の中央位置25eに一致し、中心軸Oの鉛直方向の下方に位置している。
【0038】
さらに、連通部34の高さは、膨出部25dの深さHに一致し、管周方向の中央位置で最も小さく、管周方向の両端部で最も大きくなるように設定される。連通部34の高さ(膨出部25dの深さH)は、最も小さい管周方向の中央位置で管部材21の半径寸法の5%程度に設定されている。また、連通部34の水平方向の幅は、膨出部25dの幅寸法Wに一致し、旋回領域22aでの管部材21の内周面(第1パイプ25の内周面25a)の円周長さの15%程度に設定されている。
【0039】
次に、実施例1の気液分離装置16の作用を、「高流速時の液体捕集作用」、「低流速時の液体捕集作用」に分けて説明する。
【0040】
「高流速時の液体捕集作用」
図1に示す排気還流システムSでは、吸気口2aから取り入れた外気と、低圧EGR通路11を介して排気通路3から取り入れた排気とが、5m/s~110m/sの速さでターボ過給機5のコンプレッサ5aへと流れ込む。外気や排気には水分が含まれており、コンプレッサ5aに流れ込んだ気体をEGRクーラ13にて冷却するときに冷却水温度が低すぎる場合や外気の温度が低い場合には凝縮水が発生し、それが気体と混ざり合って気液二相流体になる。
【0041】
気液二相流体の流速が比較的速い場合(高流速時、例えば20m/s~110m/s)には、凝縮水は微細な粒状になって気体と共に混相して流れていく。
【0042】
実施例1の気液分離装置16では、図2に示すように、管部材21の第1パイプ25の内部に旋回流発生部材22が配置されている。旋回流発生部材22は、翼支持部31の外周面31aから管径方向に突出し、管部材21の中心軸O1を中心にして螺旋状に湾曲した複数の翼部32を有している。
【0043】
そのため、図5に示すように、管部材21に流入した気液二相流体は、旋回流発生部材22が設置された旋回領域22aを通過する際、翼部32に沿って流れることで流れ方向が規定され、旋回しながら流れる旋回流になる。そして、気液二相流体が旋回したことで発生した遠心力により、質量の大きい液体が、第1パイプ25の内周面25aに向かって誘導される。第1パイプ25の内周面25aに向かって誘導された液体は、第1パイプ25の内周面25aに付着し、凝集して水滴となり、気体から分離される。一方、液体が分離した空気は、旋回しながら管軸方向に沿って直線的に流れていき、第1パイプ25から第2パイプ26へと流れ、第3パイプ27に流入する。
【0044】
これに対し、水滴化して気体から分離した液体は、図5に示すように、旋回流の流れによって、第1パイプ25の内周面25aに付着したまま、旋回領域22aからテーパ領域25bを通過し、第2パイプ26へと流れていく。第2パイプ26に流れ込んだ液体は、第2パイプ26の内周面26fに付着したまま流れ、排水開口26cへと流れ込み、垂直部26bを流下する。その後、先端開口26eを介して排出されてタンク本体23aに貯留される。
【0045】
このように、実施例1の気液分離装置16は、気液二相流体が高流速で流れるときには、旋回流発生部材22によって気液二相流体を旋回させ、遠心力によって気体と液体とを分離することができる。また、液体を第1パイプ25の内周面25aに向けて誘導し、内周面25aに付着させることで、液体の再飛散を抑制しつつ、貯水タンク23に捕集することができる。
【0046】
[低流速時の液体捕集作用]
実施例1の排気還流システムSにおいて、気液二相流体の流速が比較的遅いとき(低流速時、例えば5m/s~20m/s)には、凝縮水は微細な粒状になりにくい。この場合、気液二相流体は、図6に示すように、旋回流発生部材22が配置された旋回領域22aに流れ込む前、つまり旋回する前に自然と気体と液体とが分離し、水滴になった液体が第1パイプ25の内周面25aに付着する。なお、気体は、旋回領域22aを通過する際、翼部32に沿って流れて旋回流になり、旋回しながら管軸方向に沿って直線的に流れていき、第1パイプ25から第2パイプ26へと流れ、第3パイプ27に流入する。
【0047】
一方、第1パイプ25の内周面25aに付着した液体は、気体と共に混相して流れることができず、気体の流れによって第1パイプ25の内周面25aに付着したまま旋回領域22aに向かって流れていく。
【0048】
ここで、実施例1では、旋回流発生部材22が翼支持部31を取り巻く翼部32を有している。そして、翼部32は、管径方向の先端32aが、第1パイプ25の内周面25aに接触すると共に、翼支持部31に対する取巻角度θ1が約90°に設定され、管軸方向から見たときに、管部材21の全周にわたって連続している。また、第1パイプ25の内周面25aと旋回流発生部材22の翼部32との間には、管部材21である第1パイプ25に形成された膨出部25dによって連通部34が形成されている。連通部34は、第1パイプ25と旋回流発生部材22との間で管軸方向に沿って延び、旋回領域22aよりも上流の第1空間Xと、旋回領域22aよりも下流の第2空間Yとを連通する。
【0049】
このため、旋回領域22aに流れ込む前に気体から分離した液体(水滴)は、連通部34を流れることで、管部材21の内部を中心軸Oにと水平に流れ、第1空間Xから第2空間Yに流れ込むことができる。つまり、第1パイプ25の内周面25aに付着した液体は、旋回流発生部材22によって流れが阻害されず、旋回領域22aを円滑に通過することができる。
【0050】
そして、旋回領域22aを通過した液体は、第1パイプ25の内周面25aに付着したまま、テーパ領域25bを通過し、第2パイプ26へと流れていく。第2パイプ26に流れ込んだ液体は、第2パイプ26の内周面26fに付着したまま流れ、排水開口26cへと流れ込み、垂直部26bを流下する。その後、先端開口26eを介して排出されてタンク本体23aに貯留される。
【0051】
このように、実施例1の気液分離装置16では、気液二相流体の流速が遅く、旋回領域22aを通過する前に気体と液体とが自然と分離した場合であっても、第1パイプ25の内周面25aと翼部32との間に設けた連通部34を介して液体を流すことができる。このため、翼部32の先端32aが、管軸方向から見たときに、管部材21の全周にわたって連続していても、翼部32によって液体の流れが阻害されることがなく、旋回流発生部材22の流体流出側で液体を捕集することができる。この結果、気液二相流体の流速に拘らず、旋回流発生部材22よりも下流の位置で液体を捕集することができる。
【0052】
そして、実施例1の気液分離装置16では、連通部34は、管部材21である第1パイプ25の内周面25aに形成された管軸方向に延びる膨出部25dによって形成されている。そのため、旋回流発生部材22の翼部32の先端32aに部分的な切欠きやへこみ等を形成する必要がなく、旋回流発生部材22を容易に形成することができる。
【0053】
また、連通部34を形成する第1パイプ25に形成する膨出部25dは、管軸方向に延びる溝形状を呈している。そのため、膨出部25dの深さHや水平方向の幅寸法Wを調整することで連通部34の形状を所望の形状に容易に設定することができる。
【0054】
また、膨出部25dは、第1パイプ25の内周面25aの一部に形成されている。つまり、膨出部25dの幅寸法Wは、内周面25aの円周長さよりも短い。そのため、連通部34は、第1パイプ25の内周面25aと翼部32との間の管周方向の一部に形成された空間となる。これにより、翼部32の先端32aは、連通部34に対向する部分以外は、第1パイプ25の内周面25aに接触する。そのため、管部材21によって旋回流発生部材22を支持することができ、旋回流発生部材22の振動に対する強度を確保することができる。
【0055】
また、実施例1の気液分離装置16では、連通部34の管周方向の中央位置(膨出部25dの管周方向の中央位置25e)が、管軸方向から見たときに、管部材21の中心軸Oよりも重力方向の下方に位置している。これにより、自重によって管部材21の下部に流れ落ちた液体が連通部34に流れ込むことができるため、液体の捕集を円滑に行うことができる。
【0056】
特に、実施例1では、連通部34の管周方向の中央位置(中央位置25e)が、管部材21の中心軸Oの鉛直方向の下方に位置している。そのため、重力により管部材21の下部に流れ落ちた液体は、連通部34に確実に流入することができる。
【0057】
しかも、実施例1の気液分離装置16では、第2パイプ26と第3パイプ27との間に間隙αが生じている。このため、第2パイプ26の内周面26fに付着した液体が間隙αに入り込み、第3パイプ27への液体の流入を防止できる。さらに、流体流出側の第3パイプ27が第2パイプ26に挿入されているので、管部材21の外径寸法の拡大を抑制することができ、気液分離装置16の設置に必要なスペースを抑制することができる。
【0058】
また、実施例1では、第2パイプ26の水平部26aの他端には、間隙αを封鎖するスペーサー28が嵌合されている。そのため、第2パイプ26と第3パイプ27の間から気体が漏れ出ることを防止し、気体を円滑に第3パイプ27へと流入させることができる。
【0059】
さらに、実施例1では、第3パイプ27と貯水タンク23とがバイパスパイプ24を介して連通している。そのため、第3パイプ27を流れる気流により、貯水タンク23の内部を負圧にすることができ、垂直部26bを流下する液体の流れを円滑にすることができる。なお、図2では、バイパスパイプ24が、タンク本体23aの側面に形成された第2開口23cに連結されているがこれに限らず、例えば、タンク本体23aの上面に形成された開口にバイパスパイプ24を接続してもよい。
【0060】
以上、本発明の気液分離装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
【0061】
実施例1の気液分離装置16では、連通部34の管周方向の中央位置(膨出部25dの管周方向の中央位置25e)が、管部材21の中心軸Oの鉛直下方に位置する例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、図7に示すように、連通部34の管周方向の中央位置(膨出部25dの管周方向の中央位置25e)を、中心軸Oの鉛直下方位置に対し、旋回流発生部材22による気液二相流体の旋回方向(図7では時計回り方向)に、所定の角度ずれた位置に設定してもよい。
【0062】
これにより、第1パイプ25の内周面25aに付着した液体の一部が旋回流によって管周方向に流されても、連通部34に流れ込むことができる。このため、液体の流れが旋回流発生部材22によって阻害されず、旋回流発生部材22の下流で適切に捕集することができる。
【0063】
なお、旋回流発生部材22の旋回方向は、図7に示す時計回り方向に限らず、反対方向に旋回させるものであってもよい。さらに、連通部34の管周方向の中央位置(膨出部25dの管周方向の中央位置25e)を鉛直方向に対してずらす角度、つまり、中心軸Oを通って鉛直下方に延びる線分と、中心軸Oと連通部34の管周方向の中央位置(膨出部25dの管周方向の中央位置25e)とを結ぶ線分とでなす角度は、任意に設定することができる。
【0064】
また、実施例1の気液分離装置16では、第1パイプ25の内周面25aの一部を、段差をもって管径方向の外方に突出させる(へこませる)ことで膨出部25dを形成した例を示した。しかしながら、これに限らず、第1パイプ25の内周面25aの一部を漸次的に管径方向の外方に突出させて膨出部25dを形成し、この膨出部25dを形成したことで連通部34を設けてもよい。つまり、例えば、図8に示すように、第1パイプ25の管軸方向から見た円周形状を、中心軸Oを通る水平線Lよりも上側半分を真円とし、水平線Lよりも下側半分を楕円としてもよい。なお、上記真円は、中心軸Oを中心とする円である。また、上記楕円は、中心軸Oを通る鉛直方向に沿った長半径を有する楕円である。
【0065】
ここで、旋回流発生部材22は、複数の翼部32が全て同じ形状であり、管軸方向から見たとき、翼部32の先端32aに沿った軌跡は中心軸Oを中心とした円を描く。そのため、旋回領域22aでは、水平線Lよりも下側の領域で、第1パイプ25の内周面25aと翼部32の先端32aとの間に隙間が生じ、連通部34となる。
【0066】
また、図8に示す例では、第1パイプ25の管軸方向から見た円周形状を、水平線Lよりも下側半分が中心軸Oを通る鉛直方向に沿った長半径を有する楕円とした例を示した。この場合、中心軸Oの鉛直方向の下方位置で、連通部34の深さが最も深くなるように設定される。しかしながら、これに限らず、図9に示すように、連通部34の深さが最も深くなる位置βを、中心軸Oの鉛直下方位置に対して、旋回流発生部材22による気液二相流体の旋回方向(図9では時計回り方向)に、所定の角度ずれた位置に設定してもよい。
【0067】
また、実施例1の気液分離装置16では、旋回流発生部材22が、円錐形状の翼支持部31と、翼支持部31の外周面31aから突出した複数の翼部32と、を有する例を示した。しかしながら、これに限らず、例えば、螺旋状にねじられた板部材によって旋回流発生部材を形成してもよい。すなわち、管部材21の中心軸Oを中心にして螺旋状に湾曲し、管径方向の先端が管軸方向から見たときに管部材21の全周にわたって連続する翼部を有する旋回流発生部材を備えた気液分離装置であれば、本発明を適用することができる。
【0068】
また、実施例1では、旋回流発生部材22が四枚の翼部32を、取巻角度θ1が約90°となるように設定した例を示した。しかしながら、管軸方向から見たときに翼部32の先端32aが管部材21の全周にわたって連続すればよく、翼部32の枚数や取巻角度θ1の角度は、任意に設定することができる。
【0069】
また、実施例1では、垂直部26bの先端開口26eに貯水タンク23を接続した例を示したが、垂直部26bや貯水タンク23は、必ずしも設置しなくてもよい。排水開口26cから排出された液体を貯留することなく管部材21の外部へと排出してもよい。さらに、バイパスパイプ24は、必ずしも設ける必要はない。
【0070】
また、実施例1の気液分離装置16は、排気還流システムSの中でも、低圧EGR弁14の下流位置であって、ターボ過給機5のコンプレッサ5aの上流位置(図1において一点鎖線Xで囲む位置)に設置する例を示したが、これに限らない。排気還流システムSの中で凝縮水が発生する位置に設置することができるため、インタークーラー6の下流位置であって、内燃機関1の気筒給気口の上流側(図1において一点鎖線Yで囲む位置)に気液分離装置16を設置してもよい。
【0071】
さらに、実施例1では、内燃機関1が車両に搭載されるディーゼルエンジンである例を示したが、これに限らず、内燃機関1はガソリンエンジンであっても適用可能である。
【0072】
そして、実施例1では、気液分離装置16を、内燃機関1の排気還流システムSに適用した例を示した。しかしながら、これに限らず、例えば冷凍サイクル装置に適用し、気体冷媒と液体冷媒とを分離するようにしてもよい。つまり、本発明の気液分離装置は、気液二相流体から気体と液体を分離する装置に適用することができる。
【0073】
さらに、管部材21の形状や、第1パイプ25等の接続箇所、径の寸法、使用する材料等についても、実施例1に示すものに限らず、任意に設定することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
16 気液分離装置
21 管部材
22 旋回流発生部材
22a 旋回領域
23 貯水タンク
25 第1パイプ
25a 内周面
25d 膨出部
25e 管周方向の中央位置
26 第2パイプ
26a 水平部
26b 垂直部
26c 排水開口
27 第3パイプ
31 翼支持部
32 翼部
32a 先端
34 連通部
X 第1空間
Y 第2空間
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9