IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

特開2022-104230船外機用エンジンカバーおよび船外機
<>
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図1
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図2
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図3
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図4
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図5
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図6
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図7
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図8
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図9
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図10
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図11
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図12
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図13
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図14
  • 特開-船外機用エンジンカバーおよび船外機 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104230
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】船外機用エンジンカバーおよび船外機
(51)【国際特許分類】
   B63H 20/32 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
B63H20/32 510
B63H20/32 553
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219305
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩之
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】秦 良輔
(57)【要約】
【課題】形状などのエンジンカバーの制約を緩和できるエンジンカバーとこれを備えた船外機とを提供する。
【解決手段】船外機は、プロペラを回転させるエンジンと、エンジンを収容するエンジンカバー21とを備える。エンジンカバー21は、エンジンの上方に配置され、エンジンと直接向かい合う2つの分割カバーR41、L41を備える。2つの分割カバーR41、L41は、互いに連結されており、平面視でエンジンに重なる2つの連結部R52、L52を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを収容する船外機用エンジンカバーであって、
前記エンジンの上方に配置され、前記エンジンと直接向かい合う2つの分割カバーを備え、
前記2つの分割カバーは、互いに連結されており、平面視で前記エンジンに重なる2つの連結部を含む、船外機用エンジンカバー。
【請求項2】
前記2つの連結部の間隔は、いずれの位置でも一定である、請求項1に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項3】
前記2つの連結部の間に配置されており、前記2つの連結部を接着した接着層をさらに備える、請求項1または2に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項4】
前記2つの連結部は、平面視における前記2つの連結部のいずれの位置でも前記接着層を介して接着されている、請求項3に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項5】
前記2つの分割カバーは、前記エンジンと直接向かい合う2つのハウジング部を含み、
前記2つの連結部は、前記2つのハウジング部から外方に突出した2つのフランジ部を含み、
前記2つのフランジ部は、前記接着層によって接着されている、請求項3または4に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項6】
前記フランジ部は、前記連結部のいずれの位置にも設けられている、請求項5に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項7】
前記2つの連結部を締結するボルトをさらに備える、請求項3~6のいずれか一項に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項8】
前記2つの分割カバーは、前記エンジンに供給される空気が通過する筒状の吸気リングを形成する2つのバンド部を含み、
前記2つのバンド部は、前記2つのバンド部の両端で重なり合っており、
前記2つの連結部は、前記2つのバンド部の両端を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項9】
前記吸気リングの外径は、前記吸気リングの先端に近づくにしたがって増加している、請求項8に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項10】
前記吸気リングの内径は、前記吸気リングの先端に近づくにしたがって連続的に増加しており、
前記吸気リングの内径の最大値は、前記吸気リングの外径の最小値よりも大きい、請求項9に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項11】
前記2つの連結部のそれぞれは、前記エンジンの前方に配置される前端と、前記エンジンの上方に配置される上端と、前記エンジンの後方に配置される後端と、を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項12】
前記2つの分割カバーは、平面視で前記エンジンの前方の位置から前記エンジンの後方の位置まで延びる仮想の面である分割ラインを境に分割されており、
前記分割ラインは、平面視において前記2つの分割カバーの右端および左端からの距離が等しい位置を通過している、請求項11に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項13】
平面視における前記2つの分割カバーの輪郭線の少なくとも一部は、平面視における前記エンジンの輪郭線の外に配置されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項14】
前記2つの分割カバーの外に配置されており、前記2つの連結部の少なくとも一部に重なる外装パネルをさらに備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の船外機用エンジンカバー。
【請求項15】
プロペラを回転させるエンジンと、
前記エンジンを収容する、請求項1~14のいずれか一項に記載の船外機用エンジンカバーと、を備える、船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを収容する船外機用エンジンカバーとこれを備えた船外機とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンを覆うカウリングを備える船外機が開示されている。エンジンが配置されたエンジンルームは、カウリングのトップカウルおよびボトムカウルによって形成されている。特許文献1の図1は、トップカウルが一体の1つの部材であるように描かれている。特許文献1の図3は、トップカウルがエンジンと直接向かい合うように描かれている。
【0003】
特許文献2には、エンジンを覆うエンジンカバーを備える船外機が開示されている。エンジンカバーは、トップ部とボトム部とに分割されている。ボトム部は、フロントボトム部と一対のサイドボトム部とに分割されている。トップ部およびフロントボトム部の境界は、シール構造によってシールされている。エンジンカバー内の他の境界も、シール構造によってシールされている。特許文献2の図2は、トップ部が一体の1つの部材であり、エンジンと直接向かい合うように描かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-069823号公報
【特許文献2】特開2018-192840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のトップカウルと特許文献2に記載のトップ部とは、いずれも、エンジンと直接向かい合う一体の1つの部材である。このような大きい部材が一体であると、形状や材料などが制約される。形状の自由度を高めるために、特許文献1に記載のトップカウルを分割することが考えられるものの、適切な位置でトップカウルを分割しないと、分割されたトップカウルの全ての部品を効果的に小さくすることができず、形状などの制約を緩和できない。特許文献2に記載のトップ部を分割する場合も、適切な位置でトップ部を分割しないと、形状などの制約を緩和できない。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、形状などのエンジンカバーの制約を緩和できるエンジンカバーとこれを備えた船外機とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、エンジンを収容する船外機用エンジンカバーであって、前記エンジンの上方に配置され、前記エンジンと直接向かい合う2つの分割カバーを備え、前記2つの分割カバーは、互いに連結されており、平面視で前記エンジンに重なる2つの連結部を含む、船外機用エンジンカバーを提供する。
この構成によれば、エンジンカバーにおいてエンジンの上方に位置する部分が2つに分割されている。言い換えると、エンジンと直接向かい合う2つの分割カバーがエンジンカバーに設けられている。これにより、エンジンカバーの形状の自由度を高めることができる。さらに、2つの分割カバーの2つの連結部は、エンジンの上方に配置されており、平面視でエンジンに重なる。したがって、2つの分割カバーは、平面視でエンジンに重なる位置で分割されている。そのため、2つの分割カバーが平面視でエンジンに重ならない位置だけで分割されている場合に比べて、2つの分割カバーの大きさの差を減らすことができ、形状などのエンジンカバーの制約を緩和できる。
【0008】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも一つが、前記船外機用エンジンカバーに加えられてもよい。
前記2つの連結部の間隔は、いずれの位置でも一定である。
この構成によれば、2つの分割カバーに設けられた2つの連結部の間隔が、場所に応じて変化しているのではなく、いずれの位置でも一定である。2つの連結部の間隔が一定でない場合、2つの連結部の間に介在する別のカバーが必要になることがある。2つの連結部の間隔が一定であれば、このようなカバーを設けることなく、2つの分割カバーを連結できる。
【0009】
前記船外機用エンジンカバーは、前記2つの連結部の間に配置されており、前記2つの連結部を接着した接着層をさらに備える。
この構成によれば、2つの連結部の間に接着層が介在している。接着層は、乾いた接着剤の薄膜である。2つの連結部のそれぞれは、化学的または物理的に接着層に結合されている。これにより、2つの連結部が接着層を介して互いに連結されている。さらに、接着層は、2つの連結部の間の隙間を塞いでいる。したがって、2つの連結部を連結できるだけでなく、エンジンカバーの密閉性を高めることができる。
【0010】
前記2つの連結部は、平面視における前記2つの連結部のいずれの位置でも前記接着層を介して接着されている。
この構成によれば、2つの連結部が広い範囲で接着されている。具体的には、2つの連結部の間に介在する接着層は、平面視における2つの連結部のいずれの位置にも配置されている。したがって、接着剤が2つの連結部に接触する範囲が広く、接着層の面積が大きい。これにより、2つの連結部の接着強度とエンジンカバーの密閉性とを高めることができる。
【0011】
前記2つの分割カバーは、前記エンジンと直接向かい合う2つのハウジング部を含み、前記2つの連結部は、前記2つのハウジング部から外方に突出した2つのフランジ部を含み、前記2つのフランジ部は、前記接着層によって接着されている。
この構成によれば、2つのハウジング部と2つのフランジ部とが、2つの分割カバーに設けられている。2つのハウジング部は、エンジンと直接向かい合っており、2つのフランジ部は、2つのハウジング部から外方に突出している。2つのハウジング部から折り返された2つのフランジ部を設けることにより、2つの分割カバーの剛性を高めることができる。2つの連結部に含まれる2つのフランジ部は、接着層によって接着されている。言い換えると、2つのフランジ部を設けることで、接着剤が2つの連結部に接触する範囲を広げることができ、2つの連結部の接着強度を高めることができる。
【0012】
前記フランジ部は、前記連結部のいずれの位置にも設けられている。
この構成によれば、連結部の特定の位置だけにフランジ部が設けられているのではなく、連結部のいずれの位置にもフランジ部が設けられている。これにより、接着剤が2つの連結部に接触する範囲を広げることができ、2つの連結部の接着強度を高めることができる。したがって、2つの分割カバーが2つの連結部で分離することを防止できる。さらに、接着剤の塗布範囲が広がり、接着層の面積が増加するので、エンジンカバーの密閉性をさらに高めることができる。
【0013】
前記船外機用エンジンカバーは、前記2つの連結部を締結するボルトをさらに備える。
この構成によれば、2つの連結部を、接着剤で接着するだけでなく、ボルトで締結する。これにより、2つの連結部の連結強度を高めることができる。さらに、2つの連結部をボルトで締結すると、接着剤が乾く前に、2つの分割カバーが固定される。したがって、接着剤が乾くまで、2つの分割カバーを静止させたり、治具で2つの分割カバーを固定したりする必要がない。さらに、2つの連結部をボルトで締結すると、2つの分割カバーが適切な位置関係で固定されるので、2つの分割カバーがずれた状態で接着されることを防止できる。
【0014】
前記2つの分割カバーは、前記エンジンに供給される空気が通過する筒状の吸気リングを形成する2つのバンド部を含み、前記2つのバンド部は、前記2つのバンド部の両端で重なり合っており、前記2つの連結部は、前記2つのバンド部の両端を含む。
この構成によれば、エンジンに供給される空気が通過する筒状の吸気リングが2つの分割カバーに設けられている。吸気リングは、2つのバンド部に分割されている。2つのバンド部の両端は、2つの連結部の一部である。したがって、2つの分割カバーは、吸気リングを通る位置で分割されている。吸気リングは、通常、平面視におけるエンジンの中心またはこれに近い位置に配置される。したがって、吸気リングを通る位置で2つの分割カバーを分割すれば、2つの分割カバーの大きさの差を減らすことができる。
【0015】
前記吸気リングの外径は、前記吸気リングの先端に近づくにしたがって増加している。
この構成によれば、吸気リングの外周面の直径が、吸気リングの先端に近づくにしたがって段階的または連続的に増加している。したがって、水が吸気リングの外周面を伝って吸気リングの先端から吸気リングの中に入り難い。吸気リングが一体の1つの部材である場合、吸気リングの製法や材料によっては、吸気リングをこのように形成できないことがある。吸気リングを2つのバンド部に分割すれば、吸気リングをこのように形成できる。
【0016】
前記吸気リングの内径は、前記吸気リングの先端に近づくにしたがって連続的に増加しており、前記吸気リングの内径の最大値は、前記吸気リングの外径の最小値よりも大きい。
この構成によれば、吸気リングの内周面の直径が、吸気リングの先端に近づくにしたがって連続的に増加している。したがって、吸気リングの先端によって形成された入口から吸気リングに吸い込まれる空気に加わる抵抗を減少させることができる。これにより、吸気の圧力損失を低減でき、エンジンの出力を向上できる。吸気リングでの吸気の圧力損失を低減することにより、エンジンカバー内の負圧を弱めることができ、エンジンカバーの繋ぎ目からエンジンカバー内に入る水を減らすことができる。さらに、吸気リングの内径の最大値が吸気リングの外径の最小値よりも大きいので、吸気リングの外径は、吸気リングの先端に近づくにしたがって段階的または連続的に増加する。したがって、水が吸気リングの外周面を伝って吸気リングの先端から吸気リングの中に入り難い。
【0017】
前記2つの連結部のそれぞれは、前記エンジンの前方に配置される前端と、前記エンジンの上方に配置される上端と、前記エンジンの後方に配置される後端と、を含む。
この構成によれば、2つの分割カバーが、エンジンの上方だけでなく、エンジンの前方および後方でも分割されている。2つの連結部は、エンジンの上方を経由してエンジンの前方からエンジンの後方に延びている。したがって、2つの分割カバーは、左右に分割されている。船外機用のエンジンカバーは、通常、概ね左右対称な形状を有している。したがって、2つの分割カバーを左右に分割すれば、2つの分割カバーの大きさの差を減らすことができる。
【0018】
前記2つの分割カバーは、平面視で前記エンジンの前方の位置から前記エンジンの後方の位置まで延びる仮想の面である分割ラインを境に分割されており、前記分割ラインは、平面視において前記2つの分割カバーの右端および左端からの距離が等しい位置を通過している。
この構成によれば、2つの分割カバーが分割ラインを境に分割されている。分割ラインは、平面視において2つの分割カバーを左右に二等分または左右に概ね二等分している。具体的には、分割ラインは、平面視において2つの分割カバーの右端および左端からの距離が等しい位置を通過している。これにより、2つの分割カバーを等しいまたは概ね等しい大きさにすることができる。
【0019】
平面視における前記2つの分割カバーの輪郭線の少なくとも一部は、平面視における前記エンジンの輪郭線の外に配置されている。
この構成によれば、平面視におけるエンジンの輪郭線の少なくとも一部が、平面視で2つの分割カバーに重なっている。したがって、2つの分割カバーは、平面視における2つの分割カバーの輪郭線の少なくとも一部が平面視におけるエンジンの輪郭線の外に配置される大きさを有している。このような大きなエンジンカバーを分割するので、形状などのエンジンカバーの制約を緩和できる。
【0020】
平面視における前記2つの分割カバーの輪郭線は、平面視における前記エンジンの輪郭線を前記エンジンの全周にわたって取り囲んでいてもよい。この場合、平面視における2つの分割カバーの輪郭線のいずれの部分も、平面視におけるエンジンの輪郭線の外に配置されている。このような大きなエンジンカバーを分割するので、形状などのエンジンカバーの制約を緩和できる。
【0021】
前記船外機用エンジンカバーは、前記2つの分割カバーの外に配置されており、前記2つの連結部の少なくとも一部に重なる外装パネルをさらに備える。
この構成によれば、2つの連結部が外装パネルで保護されている。外装パネルは、2つの分割カバーの外に配置されている。2つの分割カバーの外から2つの連結部を見ると、外装パネルが2つの連結部の少なくとも一部に重なっており、2つの連結部の少なくとも一部が外装パネルで隠れている。ミストやしぶきは、2つの連結部に到達する前に外装パネルに衝突する。したがって、2つの連結部の間を通過してエンジンカバーの中に入る水を減らすことができ、エンジンカバーの防水性を高めることができる。さらに、2つの連結部を外装パネルで隠すと、2つの連結部の境界に水圧が直接加わらないので、2つの連結部の堅牢性(robustness)を高めることができる。
【0022】
本発明の他の実施形態は、プロペラを回転させるエンジンと、前記エンジンを収容する前記エンジンカバーと、を備える、船外機を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、形状などのエンジンカバーの制約を緩和できるエンジンカバーとこれを備えた船外機とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る船外機の左側面図である。
図2】船外機に備えられたエンジンカバーの左側面図である。
図3】エンジンカバーに備えられたトップカバーの分解斜視図である。
図4】トップカバーの正面図である。
図5】トップカバーに備えられたメインカバーの斜視図である。
図6】右分割カバーおよび左分割カバーが連結された状態を示すメインカバーの平面図である。
図7】右分割カバーおよび左分割カバーが離れた状態を示すメインカバーの平面図である。
図8】右分割カバーおよび左分割カバーが離れた状態を示すメインカバーの正面図である。
図9】右分割カバーの左側面図である。
図10】左分割カバーの右側面図である。
図11図9の一部を拡大した拡大図である。
図12】右分割カバーの右連結部と左分割カバーの左連結部とを連結するボルトの平面図である。
図13図12に示すXIII-XIII線に沿う右連結部および左連結部の断面図である。
図14】右連結部および左連結部を接着する接着剤が塗布された接着剤の塗布範囲を示す右分割カバーの左側面図である。
図15】本発明の第2実施形態に係る吸気リングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
以下では、基準姿勢の船外機本体4について説明する。基準姿勢は、プロペラシャフト18の中心線Lpがチルトシャフト7の中心線Ltに直交する方向に水平に延びる姿勢である。前後方向、上下方向、および左右方向は、基準姿勢の船外機本体4に基づいて定義される。左右方向は、幅方向に相当する。船外機本体4の前後方向、上下方向、および左右方向は、エンジンカバー21の前後方向、上下方向、および左右方向に相当する。以下の説明における「上端」は、ある部材の中で最も上方に位置する部分を意味する。つまり、「上端」は、最上端を意味する。下端、前端、後端、右端、左端、外端、および内端についても同様である。
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態に係る船外機3の左側面図である。船舶1は、水面に浮かぶ船体2と、船体2を推進させる船外機3とを備えている。船外機3は、推力を発生する船外機本体4と、船外機本体4を船体2の後部に取り付ける懸架装置5とを含む。船外機3は、さらに、船体2に対して船外機本体4を上下に回動させるチルト装置25を含む。
【0027】
船外機本体4は、船体2の後方に配置されている。懸架装置5は、船体2に固定されるクランプブラケット6と、左右方向に延びるチルトシャフト7を介してクランプブラケット6に支持されたスイベルブラケット8と、鉛直な姿勢でスイベルブラケット8に保持されたステアリングシャフト9とを含む。船外機本体4は、ステアリングシャフト9の上端部および下端部に連結されている。
【0028】
船外機本体4は、ステアリングシャフト9と共にクランプブラケット6に対してステアリングシャフト9まわりに左右に回動可能である。船外機本体4は、さらに、ステアリングシャフト9およびスイベルブラケット8と共にクランプブラケット6に対してチルトシャフト7まわりに上下に回動可能である。したがって、船外機本体4は、船体2に対して左右に回動可能であり、船体2に対して上下に回動可能である。
【0029】
船外機本体4は、プロペラ19を回転させるエンジン10と、エンジン10の回転をプロペラ19に伝達するドライブトレイン11とを含む。船外機本体4は、さらに、エンジン10およびドライブトレイン11を収容するケーシング20を含む。ケーシング20は、エンジン10を収容するエンジンカバー21と、エンジン10の下方に配置されたエギゾーストガイド22と、エギゾーストガイド22の下方に配置されたアッパーケース23と、アッパーケース23の下方に配置されたロワーケース24とを含む。エンジンカバー21およびエギゾーストガイド22は、水面よりも上方に配置される。
【0030】
エンジン10は、燃料と空気とを含む混合気の燃焼に伴って往復するピストンと、ピストンを収容するシリンダと、ピストンの往復に伴って回転するクランクシャフト10cと、ピストンとクランクシャフト10cとを接続するコネクティングロッドとを含む。シリンダは、ピストンを収容するシリンダボディと、混合気が燃焼する燃焼室をピストンおよびシリンダボディと共に形成するシリンダヘッドとを含む。スタータモータがエンジン10を始動させると、クランクシャフト10cは、鉛直な回転中心Lcまわりに一定の回転方向に回転し続ける。
【0031】
ドライブトレイン11は、上下方向に延びるドライブシャフト12と、前後方向に延びるプロペラシャフト18と、ドライブシャフト12の回転をプロペラシャフト18に伝達する前後進切替ギヤ13とを含む。ドライブシャフト12は、エンジン10の下方に配置されている。エンジン10は、エギゾーストガイド22の上に置かれている。ドライブシャフト12は、エギゾーストガイド22、アッパーケース23、およびロワーケース24内に配置されている。前後進切替ギヤ13およびプロペラシャフト18は、ロワーケース24内に配置されている。プロペラシャフト18は、ロワーケース24から後方に突出している。プロペラ19は、ロワーケース24の後方でプロペラシャフト18に取り付けられている。プロペラ19は、ロワーケース24の後方に配置されている。
【0032】
前後進切替ギヤ13は、ドライブシャフト12と共に回転するピニオン14と、ピニオン14に噛み合うフロントギヤ15と、ピニオン14に噛み合うリアギヤ16とを含む。前後進切替ギヤ13は、さらに、フロントギヤ15およびリアギヤ16の一方に噛み合う接続位置とフロントギヤ15およびリアギヤ16の両方から離れた切断位置との間で移動可能なドッグクラッチ17を含む。船外機3は、接続位置と切断位置との間でドッグクラッチ17を移動させるシフト装置26を含む。
【0033】
ピニオン14、フロントギヤ15、およびリアギヤ16は、いずれも、ベベルギヤである。ピニオン14は、ドライブシャフト12と同軸であり、フロントギヤ15およびリアギヤ16は、プロペラシャフト18と同軸である。フロントギヤ15およびリアギヤ16は、間隔を空けてプロペラシャフト18を取り囲んでいる。フロントギヤ15は、リアギヤ16の前方に配置されている。ドッグクラッチ17は、フロントギヤ15およびリアギヤ16の間に配置されている。エンジン10の回転がドライブシャフト12を介してピニオン14に伝達されると、フロントギヤ15およびリアギヤ16は、互いに反対の方向に回転する。
【0034】
ドッグクラッチ17は、プロペラシャフト18に対してプロペラシャフト18の軸方向に移動可能であり、プロペラシャフト18と共に回転する。ドッグクラッチ17がフロントギヤ15に噛み合うと、正転方向の回転が、ドッグクラッチ17を介してフロントギヤ15からプロペラシャフト18に伝達される。これにより、プロペラ19が正転方向に回転する。ドッグクラッチ17がリアギヤ16に噛み合うと、逆転方向の回転が、ドッグクラッチ17を介してリアギヤ16からプロペラシャフト18に伝達される。これにより、プロペラ19が逆転方向に回転する。
【0035】
図2は、船外機3に備えられたエンジンカバー21の左側面図である。図3は、エンジンカバー21に備えられたトップカバー32の分解斜視図である。図4は、トップカバー32の正面図である。
エンジンカバー21は、エンジンカウルとも呼ばれる外装部品である。図2に示すように、エンジンカバー21は、エンジン10の上部を収容するトップカバー32と、エンジン10の下部を収容するボトムカバー31とを含む。トップカバー32は、下に向けられたカップ状である。トップカバー32は、エンジン10の上方からエンジン10に被せられている。ボトムカバー31は、トップカバー32の下方に配置されている。トップカバー32の筒状の下端部は、ボトムカバー31の筒状の上端部に嵌められている。トップカバー32とボトムカバー31との間の隙間は、シールによって密閉されている。トップカバー32は、ボトムカバー31に支持されている。ボトムカバー31は、エギゾーストガイド22(図1参照)に取り付けられている。
【0036】
エンジン10は、上下方向におけるトップカバー32およびボトムカバー31の間に配置されている。トップカバー32およびボトムカバー31の内表面は、エンジン10の全体を収容する収容室を形成している。トップカバー32は、エンジン10の全周にわたってエンジン10を取り囲んでおり、平面視でエンジン10に重なっている。ボトムカバー31は、エンジン10の下方に配置されており、平面視でエンジン10に重なっている。ボトムカバー31は、エンジン10の全周にわたってエンジン10を取り囲んでいる。
【0037】
トップカバー32は、エンジン10を収容するメインカバー34と、メインカバー34の外表面上に配置された少なくとも1つの外装パネル33とを含む。図3は、5つの外装パネル33が設けられた例を示している。5つの外装パネル33は、メインカバー34の上方に配置されたトップパネル33tと、メインカバー34の前方および後方にそれぞれ配置されたフロントパネル33fおよびリアパネル33rと、メインカバー34の右方および左方にそれぞれ配置されたライトパネル33Rおよびレフトパネル33Lを含む。いずれの外装パネル33も、メインカバー34に取り付けられている。
【0038】
図3に示すように、メインカバー34は、左右に分割されている。メインカバー34は、互いに連結された2つの分割カバーを含む。一方の分割カバーは、右分割カバーR41であり、他方の分割カバーは、左分割カバーL41である。右分割カバーR41および左分割カバーL41は、左右に並んでいる。右分割カバーR41は、左分割カバーL41の右方に配置されている。エンジン10は、右分割カバーR41および左分割カバーL41の間に配置されている。右分割カバーR41および左分割カバーL41は、エンジン10を介して左右に向かい合っている。
【0039】
右分割カバーR41は、第1分割カバーであり、左分割カバーL41は、第2分割カバーである。右分割カバーR41の構成要素の先頭の「右」は、「第1」に置き換えることができる。左分割カバーL41の構成要素の先頭の「左」は、「第2」に置き換えることができる。例えば、右分割カバーR41の右連結部R52は、第1連結部であり、左分割カバーL41の左連結部L52は、第2連結部である。右連結部R52および左連結部L52以外の右分割カバーR41および左分割カバーL41の構成要素についても同様である。
【0040】
フロントパネル33f、トップパネル33t、およびリアパネル33rは、右分割カバーR41および左分割カバーL41の上方に配置されており、平面視で右分割カバーR41および左分割カバーL41に重なっている。トップパネル33tは、後述する吸気リング38の上方に配置されており、平面視で吸気リング38に重なっている。フロントパネル33f、トップパネル33t、およびリアパネル33rは、右分割カバーR41および左分割カバーL41のそれぞれに取り付けられている。ライトパネル33Rは、右分割カバーR41に取り付けられており、レフトパネル33Lは、左分割カバーL41に取り付けられている。ライトパネル33Rは、右分割カバーR41の右方に配置されており、レフトパネル33Lは、左分割カバーL41の左方に配置されている。
【0041】
フロントパネル33fおよびリアパネル33rは、前後に離れている。トップパネル33tは、リアパネル33rからフロントパネル33fまで前方に延びている。フロントパネル33fおよびリアパネル33rは、トップパネル33tから下方に延びている。フロントパネル33fの下端は、トップパネル33tの下端よりも下方に配置されている。リアパネル33rの下端も、トップパネル33tの下端よりも下方に配置されている。リアパネル33rは、左右方向におけるライトパネル33Rおよびレフトパネル33Lの間に配置されている。
【0042】
エンジンカバー21の外表面は、エンジン10に供給される空気が通過する吸気口39を形成している。図2は、エンジンカバー21の左側面で開口した吸気口39を示している。図2に示す吸気口39は、トップパネル33tと左分割カバーL41とによって形成されている。エンジンカバー21の外の空気は、エンジンカバー21の外表面で開口する吸気口39からトップパネル33tとメインカバー34との間の空間に流入する。その後、この空気は、吸気リング38を介してメインカバー34の中に入る。これにより、空気がエンジン10に供給される。
【0043】
図3に示すように、右分割カバーR41および左分割カバーL41は、互いに連結された2つの連結部を含む。一方の連結部は、右分割カバーR41に設けられた右連結部R52であり、他方の連結部は、左分割カバーL41に設けられた左連結部L52である。図4に示すように、右連結部R52および左連結部L52は、重なり合っており、互いに接している。トップパネル33t、フロントパネル33f、およびリアパネル33rは、メインカバー34の外、つまり、右分割カバーR41および左分割カバーL41の外に配置されており、右連結部R52および左連結部L52に重なっている。フロントパネル33f、トップパネル33t、およびリアパネル33rは、右連結部R52および左連結部L52の全体または殆ど全体を覆っている。
【0044】
図5は、トップカバー32に備えられたメインカバー34の斜視図である。図6は、右分割カバーR41および左分割カバーL41が連結された状態を示すメインカバー34の平面図である。図7および図8は、右分割カバーR41および左分割カバーL41が離れた状態を示すメインカバー34の平面図および正面図である。図9は、右分割カバーR41の左側面図である。図10は、左分割カバーL41の右側面図である。図11は、図9の一部を拡大した拡大図である。
【0045】
図5に示すように、メインカバー34は、下に向けられたカップ状である。メインカバー34の筒状の下端部によって形成された開口は、ボトムカバー31(図2参照)によって塞がれている。メインカバー34は、エンジン10を収容するハウジング35と、ハウジング35の外からハウジング35の中に空気を案内する筒状の吸気リング38とを含む。ハウジング35および吸気リング38のそれぞれは、2つに分割されている。
【0046】
図6に示すように、ハウジング35は、エンジン10の全周にわたってエンジン10を取り囲む筒状の周壁37と、エンジン10の上方に位置する上壁36とを含む。吸気リング38は、上壁36から上方に延びている。上壁36および吸気リング38は、平面視でエンジン10に重なっている。周壁37は、上壁36の全周から下方に延びている。周壁37は、エンジン10の前方に位置する前壁37fと、エンジン10の後方に位置する後壁37rと、エンジン10の右方および左方に位置する一対の側壁37sとを含む。
【0047】
メインカバー34の内表面は、トップカバー32の内表面に相当する。上壁36の下面および周壁37の内周面は、メインカバー34の内表面に含まれる。上壁36の下面は、鉛直方向にエンジン10と直接向かい合っている。周壁37の内周面は、水平方向にエンジン10と直接向かい合っている。したがって、メインカバー34の内表面は、エンジン10と直接向かい合っている。メインカバー34の内表面は、シリンダヘッドやシリンダボディなどのエンジン10の主要部品と直接向かい合っていてもよいし、カバーなどの主要部品に取り付けられたエンジン10の付属部品と直接向かい合っていてもよい。
【0048】
吸気リング38は、上下方向に延びる筒状である。吸気リング38の内周面は、ハウジング35の内表面で開口している。図6は、吸気リング38が円筒状である例を示している。筒状であれば、吸気リング38は、円筒以外の形状であってもよい。吸気リング38の内径および外径は、吸気リング38の基端38p(図11参照)から吸気リング38の先端38d(図11参照)まで一定である。吸気リング38の高さ、つまり、吸気リング38の基端38pから吸気リング38の先端38dまでの吸気リング38の軸方向(吸気リング38の中心線の方向)の距離は、吸気リング38の内径および外径よりも小さい。
【0049】
メインカバー34は、平面視でエンジン10よりも大きい。メインカバー34は、エンジン10よりも左右方向に長く、エンジン10よりも前後方向に長い。平面視におけるメインカバー34の輪郭線34oは、平面視における右分割カバーR41および左分割カバーL41の輪郭線に相当する。平面視におけるメインカバー34の輪郭線34oの少なくとも一部は、平面視におけるエンジン10の輪郭線10oの外に配置されている。図6は、平面視におけるメインカバー34の輪郭線34oが、平面視におけるエンジン10の輪郭線10oをエンジン10の全周にわたって取り囲んでいる例を示している。平面視におけるメインカバー34の輪郭線34oのいずれの部分も、平面視におけるエンジン10の輪郭線10oの外に配置されている。
【0050】
図6および図7を比較すると分かるように、メインカバー34は、分割ラインDLで分割されている。分割ラインDLは、右分割カバーR41および左分割カバーL41の境界を示す仮想の面である。分割ラインDLは、1つ以上の平面または曲面であってもよいし、平面および曲面の両方を含んでいてもよい。図6は、分割ラインDLが鉛直な平面であり、平面視で直線である例を示している。分割ラインDLは、平面視で左右方向に対して直交する直線であり、平面視でエンジン10の前方の位置からエンジン10の後方の位置まで延びている。
【0051】
右分割カバーR41および左分割カバーL41の境界を示す分割ラインDLは、平面視で右分割カバーR41の右端R41Rおよび左分割カバーL41の左端L41Lからの距離が等しい位置を通過している。言い換えると、メインカバー34は、左右方向におけるメインカバー34の中央で2つに分割されている。右分割カバーR41および左分割カバーL41は、分割ラインDLに関して面対称または概ね面対称である。右分割カバーR41および左分割カバーL41は、分割ラインDLに関して非対称であってもよい。分割ラインDLは、ハウジング35および吸気リング38のそれぞれを通過している。
【0052】
右分割カバーR41は、メインカバー34のハウジング35の一部である右ハウジング部R42と、メインカバー34の吸気リング38の一部である右バンド部R46と、右ハウジング部R42および右バンド部R46から外方に突出した右フランジ部R50とを含む。左分割カバーL41は、ハウジング35の残りの部分である左ハウジング部L42と、吸気リング38の残りの部分である左バンド部L46と、左ハウジング部L42および左バンド部L46から外方に突出した左フランジ部L50とを含む。
【0053】
図7および図8に示すように、右分割カバーR41および左分割カバーL41は、いずれも、一体の1つの部材である。右ハウジング部R42は、右バンド部R46および右フランジ部R50と一体である。左ハウジング部L42は、左バンド部L46および左フランジ部L50と一体である。図6に示すように、右ハウジング部R42、右バンド部R46、および右フランジ部R50は、分割ラインDL上で、左ハウジング部L42、左バンド部L46、および左フランジ部L50に接している。
【0054】
右分割カバーR41は、合成樹脂または金属製であってもよいし、これら以外の材料で形成されていてもよい。左分割カバーL41についても同様である。右分割カバーR41の材料は、左分割カバーL41の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。合成樹脂は、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維で強化された繊維強化プラスチック(FRP(Fiber Reinforced Plastics))であってもよい。右分割カバーR41および左分割カバーL41がFRP製である場合、右分割カバーR41および左分割カバーL41は、SMC(Sheet Molding Compound)を用いたSMC成形法により成形されてもよい。
【0055】
SMC成形法により右分割カバーR41および左分割カバーL41を成形する場合、右分割カバーR41または左分割カバーL41をその上部から成形してもよいし、その側部から成形してもよい。言い換えると、右分割カバーR41または左分割カバーL41の上下方向を、シート状の素材であるSMCを金型で圧縮する圧縮方向に一致させてもよいし、右分割カバーR41または左分割カバーL41の左右方向をSMCの圧縮方向に一致させてもよい。
【0056】
右分割カバーR41または左分割カバーL41をその上部から成形する場合、メインカバー34の側面(右分割カバーR41の右側面または左分割カバーL41の左側面)は、アンダーカットが生じない形状に制約される。右分割カバーR41または左分割カバーL41をその側部から成形する場合、メインカバー34の側面にはこのような制約がない。したがって、メインカバー34の側面の形状の自由度を高めることができる。さらに、右分割カバーR41または左分割カバーL41をその上部から成形する場合に比べて、メインカバー34の側面の平滑度を高めることができる。
【0057】
SMCを金型で圧縮すると、SMCが金型内で流動した後に硬化し、右分割カバーR41または左分割カバーL41が成形される。右分割カバーR41および左分割カバーL41が左右方向に短いので、右分割カバーR41または左分割カバーL41をその側部から成形する場合は、その上部から成形する場合に比べて、SMCの流動長が短い。SMCの流動長が長いと、SMCが最後に到達する最終充填部で成形不良や強度の低下が生じることがある。硬化速度の遅いSMCを使えば、これらを回避できるものの、SMCの種類が制限される。密度の高いSMCに制限される場合は、エンジンカバー21を軽量化できない。右分割カバーR41または左分割カバーL41をその側部から成形すれば、これらを回避できる。
【0058】
図9に示すように、右ハウジング部R42は、エンジン10に直接対向する内表面R45と、左ハウジング部L42に接する平坦な側方端面R43と、ボトムカバー31(図2参照)のまわりに配置される下方端面R44とを含む。側方端面R43は、上方に凸のU字状である。下方端面R44は、右方に凸のU字状である。側方端面R43は、下方端面R44から上方に延びている。内表面R45は、側方端面R43から右方に凹んでいる。
【0059】
図10に示すように、左ハウジング部L42は、エンジン10に直接対向する内表面L45と、右ハウジング部R42に接する平坦な側方端面L43と、ボトムカバー31のまわりに配置される下方端面L44とを含む。側方端面L43は、上方に凸のU字状である。下方端面L44は、左方に凸のU字状である。側方端面L43は、下方端面L44から上方に延びている。内表面L45は、側方端面L43から左方に凹んでいる。側方端面L43は、右ハウジング部R42の側方端面R43に重ねられており、接している。
【0060】
図7に示すように、右バンド部R46は、右ハウジング部R42の側方端面R43から右方に凹んでいる。側方端面R43は、右バンド部R46の前後で2つに分かれている。右バンド部R46は、左バンド部L46に接する平坦な2つの端面と、一方の端面から他方の端面に延びる内表面R49とを含む。2つの端面の一方は、内表面R49から前方に延びる平坦な前方端面R47であり、2つの端面の他方は、内表面R49から後方に延びる平坦な後方端面R48である。前方端面R47および後方端面R48は、右バンド部R46の両端に相当する。
【0061】
左バンド部L46は、左ハウジング部L42の側方端面L43から左方に凹んでいる。側方端面L43は、左バンド部L46の前後で2つに分かれている。左バンド部L46は、右バンド部R46に接する平坦な2つの端面と、一方の端面から他方の端面に延びる内表面L49とを含む。2つの端面の一方は、内表面L49から前方に延びる平坦な前方端面L47であり、2つの端面の他方は、内表面L49から後方に延びる平坦な後方端面L48である。前方端面L47および後方端面L48は、左バンド部L46の両端に相当する。
【0062】
図9に示すように、右バンド部R46の前方端面R47および後方端面R48は、右ハウジング部R42の側方端面R43から上方に延びている。前方端面R47および後方端面R48は、側方端面R43を含む1つの平面上に配置されている。右バンド部R46の内表面R49は、前方端面R47および後方端面R48から右方に凹んでいる。内表面R49は、右ハウジング部R42の内表面R45から上方に延びている。
【0063】
図10に示すように、左バンド部L46の前方端面L47および後方端面L48は、左ハウジング部L42の側方端面L43から上方に延びている。前方端面L47および後方端面L48は、側方端面L43を含む1つの平面上に配置されている。左バンド部L46の内表面L49は、前方端面L47および後方端面L48から左方に凹んでいる。内表面L49は、左ハウジング部L42の内表面L45から上方に延びている。
【0064】
右バンド部R46の前方端面R47および後方端面R48は、それぞれ、左バンド部L46の前方端面L47および後方端面L48に接している。右バンド部R46の内表面R49と左バンド部L46の内表面L49とは、左右に離れている。内表面R49は、吸気リング38の内周面の一部であり、内表面L49は、吸気リング38の内周面の残りの部分である。内表面R49および内表面L49は、いずれも、平面視で半円状である。
【0065】
図9に示すように、右フランジ部R50は、右ハウジング部R42の側方端面R43から外方に突出した平坦な端面R51を含む。端面R51は、右バンド部R46の前方端面R47から前方に突出しており、右バンド部R46の後方端面R48から後方に突出している。したがって、端面R51は、右バンド部R46の前方端面R47および後方端面R48からも外方に突出している。
【0066】
右フランジ部R50は、右ハウジング部R42の側方端面R43に沿って側方端面R43の長手方向に延びている。右フランジ部R50は、右バンド部R46の前方端面R47および後方端面R48に沿って吸気リング38の軸方向に延びている。右フランジ部R50は、側方端面R43のいずれの位置にも設けられている。右フランジ部R50は、前方端面R47および後方端面R48のいずれの位置にも設けられている。
【0067】
図10に示すように、左フランジ部L50は、左ハウジング部L42の側方端面L43から外方に突出した平坦な端面L51を含む。端面L51は、左バンド部L46の前方端面L47から前方に突出しており、左バンド部L46の後方端面L48から後方に突出している。したがって、端面L51は、左バンド部L46の前方端面L47および後方端面L48からも外方に突出している。
【0068】
左フランジ部L50は、左ハウジング部L42の側方端面L43に沿って側方端面L43の長手方向に延びている。左フランジ部L50は、左バンド部L46の前方端面L47および後方端面L48に沿って吸気リング38の軸方向に延びている。左フランジ部L50は、側方端面L43のいずれの位置にも設けられている。左フランジ部L50は、前方端面L47および後方端面L48のいずれの位置にも設けられている。
【0069】
右フランジ部R50の端面R51と左フランジ部L50の端面L51とは、重ね合わされており、互いに接している。右フランジ部R50の端面R51は、右ハウジング部R42の側方端面R43と右バンド部R46の前方端面R47および後方端面R48とを含む1つの平面上に配置されている。同様に、左フランジ部L50の端面L51は、左ハウジング部L42の側方端面L43と左バンド部L46の前方端面L47および後方端面L48とを含む1つの平面上に配置されている。
【0070】
図11に示すように、右フランジ部R50の端面R51の外縁R51oは、右ハウジング部R42の側方端面R43の外縁R43oのまわりに配置されている。端面R51の外縁R51oは、右バンド部R46の前方端面R47の外縁R47oの前方に配置されている。端面R51の外縁R51oは、右バンド部R46の後方端面R48の外縁R48oの後方に配置されている。
【0071】
右フランジ部R50の高さは、側方端面R43の外縁R43oから端面R51の外縁R51oまでの最短距離である。右フランジ部R50の高さは、右フランジ部R50の幅に相当する。右フランジ部R50の厚みは、側方端面R43に直交する方向への右フランジ部R50の距離である。右フランジ部R50の高さは、右フランジ部R50の厚みよりも大きい。右フランジ部R50の高さは、吸気リング38の高さ、つまり、吸気リング38の基端38pから吸気リング38の先端38dまでの吸気リング38の軸方向の距離よりも小さい。
【0072】
左フランジ部L50の端面L51の外縁は、左ハウジング部L42の側方端面L43の外縁のまわりに配置されている。端面L51の外縁は、左バンド部L46の前方端面L47の外縁の前方に配置されている。端面L51の外縁は、左バンド部L46の後方端面L48の外縁の後方に配置されている。左フランジ部L50の高さは、側方端面L43の外縁から端面R51の外縁までの最短距離である。左フランジ部L50の高さは、左フランジ部L50の幅に相当する。左フランジ部L50の厚みは、側方端面L43に直交する方向への左フランジ部L50の距離である。左フランジ部L50の高さは、左フランジ部L50の厚みよりも大きい。左フランジ部L50の高さは、吸気リング38の高さよりも小さい。
【0073】
前述のように、右分割カバーR41および左分割カバーL41は、互いに連結された右連結部R52および左連結部L52を含む。右連結部R52は、右フランジ部R50、右ハウジング部R42、および右バンド部R46によって形成されている。左連結部L52は、左フランジ部L50、左ハウジング部L42、および左バンド部L46によって形成されている。図6に示すように、右連結部R52および左連結部L52は、平行に向かい合っている。右連結部R52および左連結部L52の間隔は、いずれの位置でも一定である。右連結部R52および左連結部L52は、重なり合っており、互いに接している。
【0074】
右連結部R52および左連結部L52は、平面視でエンジン10に重なっている。右連結部R52は、エンジン10の前方に配置された前端R52fと、エンジン10の上方に配置された上端R52uと、エンジン10の後方に配置された後端R52rとを含む。同様に、左連結部L52は、エンジン10の前方に配置された前端L52fと、エンジン10の上方に配置された上端L52uと、エンジン10の後方に配置された後端L52rとを含む。右連結部R52の上端R52uと左連結部L52の上端L52uとは、平面視でエンジン10に重なっている。右連結部R52の前端R52fおよび後端R52rは、平面視でエンジン10に重なっていない。同様に、左連結部L52の前端L52fおよび後端L52rは、平面視でエンジン10に重なっていない。
【0075】
右連結部R52および左連結部L52は、分割ラインDLに沿って前後に延びている。言い換えると、右連結部R52および左連結部L52は、分割ラインDLを形成している。右連結部R52および左連結部L52は、分割ラインDL上で互いに接している。右連結部R52の前端R52f、上端R52uおよび後端R52rは、分割ラインDLに沿って配置されている。同様に、左連結部L52の前端L52f、上端L52uおよび後端L52rは、分割ラインDLに沿って配置されている。
【0076】
右連結部R52は、右バンド部R46を境に前後に2つに分かれている。図9に示すように、右連結部R52は、右ハウジング部R42に沿って右バンド部R46から前方に延びる前方連結部R53と、右ハウジング部R42に沿って右バンド部R46から後方に延びる後方連結部R54とを含む。同様に、左連結部L52は、左バンド部L46を境に前後に2つに分かれている。図10に示すように、左連結部L52は、左ハウジング部L42に沿って左バンド部L46から前方に延びる前方連結部L53と、左ハウジング部L42に沿って左バンド部L46から後方に延びる後方連結部L54とを含む。前方連結部R53は、前方連結部L53に重ねられており、後方連結部R54は、後方連結部L54に重ねられている。
【0077】
図9に示すように、右連結部R52は、左連結部L52と向かい合う平坦な端面R55を含む。端面R55は、右フランジ部R50の端面R51と、右ハウジング部R42の側方端面R43と、右バンド部R46の前方端面R47および後方端面R48とを含む。図10に示すように、左連結部L52は、右連結部R52と向かい合う平坦な端面L55を含む。端面L55は、左フランジ部L50の端面R51と、左ハウジング部L42の側方端面L43と、左バンド部L46の前方端面L47および後方端面L48とを含む。端面R55および端面L55のそれぞれは、分割ラインDL上に位置する、分割ラインDLと平行な平面である。
【0078】
図7および図8に示すように、右連結部R52の端面R55と左連結部L52の端面L55とは、互いに平行である。右連結部R52の端面R55と左連結部L52の端面L55との間隔は、いずれの位置でも一定である。右連結部R52の端面R55と左連結部L52の端面L55とは、重なり合っており、互いに接している。右連結部R52の端面R55のいずれの部分も、分割ラインDL上に配置されている。同様に、左連結部L52の左平行端のいずれの部分も、分割ラインDL上に配置されている。
【0079】
右分割カバーR41の奥行(前後方向の長さ。以下同様)は、右分割カバーR41の高さ(上下方向の長さ。以下同様)よりも大きい。右分割カバーR41の高さは、右分割カバーR41の幅(左右方向の長さ。以下同様)よりも大きい。同様に、左分割カバーL41の奥行は、左分割カバーL41の高さよりも大きい。左分割カバーL41の高さは、左分割カバーL41の幅よりも大きい。右分割カバーR41の奥行、高さ、および幅は、それぞれ、左分割カバーL41の奥行、高さ、および幅と等しい。右分割カバーR41の奥行と左分割カバーL41の奥行とは、メインカバー34の奥行に相当する。右分割カバーR41の高さと左分割カバーL41の高さとは、メインカバー34の高さに相当する。メインカバー34の幅は、右分割カバーR41の右端R41Rから左分割カバーL41の左端L41Lまでの左右方向の距離である。メインカバー34の奥行は、メインカバー34の高さよりも大きい。メインカバー34の幅は、メインカバー34の高さよりも大きい。これらの寸法は、一例であり、これに限られるものではない。
【0080】
図12は、右分割カバーR41の右連結部R52と左分割カバーL41の左連結部L52とを連結するボルト56の平面図である。図13は、図12に示すXIII-XIII線に沿う右連結部R52および左連結部L52の断面図である。図14は、右連結部R52および左連結部L52を接着する接着剤が塗布された接着剤の塗布範囲を示す右分割カバーR41の左側面図である。
【0081】
右分割カバーR41の右連結部R52と左分割カバーL41の左連結部L52とは、少なくとも1つのボルト56によって互いに連結されている。図6は、複数対のボルト56およびナット57によって右連結部R52および左連結部L52が連結されており、いずれのボルト56の頭部も右連結部R52に埋め込まれた例を示している。ナット57を設ける代わりに、ボルト56の軸部が挿入される雌ネジを左連結部L52に設けてもよい。ボルト56の頭部を右連結部R52に埋め込む代わりに、ボルト56の軸部が挿入される通り穴を右連結部R52に設けてもよい。
【0082】
図12および図13に示す例では、インサート成形によりボルト56の頭部が右連結部R52に埋め込まれており、ボルト56が右分割カバーR41に固定されている。ボルト56の軸部は、右連結部R52の端面R55から右連結部R52の端面R55に直交する方向に突出している。ボルト56の軸部は、ボルト56の軸方向(ボルト56の中心線の方向)に左連結部L52を貫通する通り穴に挿入されている。ナット57は、ボルト56の軸部に取り付けられている。右連結部R52および左連結部L52は、ボルト56およびナット57によってボルト56の軸方向に挟まれている。これにより、右連結部R52および左連結部L52が連結されている。
【0083】
右連結部R52および左連結部L52は、ボルト56による締結に加えて、接着剤で接着されている。接着剤は、右連結部R52および左連結部L52を連結する前に、右連結部R52の端面R55と左連結部L52の端面L55との少なくとも一方に塗布される。乾燥した接着剤の薄膜に相当する接着層58は、右連結部R52の端面R55と左連結部L52の端面L55との間に介在している。右連結部R52の端面R55と左連結部L52の端面L55とは、部分的に接着層58を介して向かい合っている。右連結部R52および左連結部L52のそれぞれは、化学的または物理的に接着層58に結合されている。これにより、右連結部R52および左連結部L52が接着層58を介して互いに連結されている。右連結部R52の端面R55と左連結部L52の端面L55との間の隙間の一部は、接着層58によって塞がれている。
【0084】
図14において太い二点鎖線で囲まれた領域は、接着剤の塗布範囲を示している。図14に示す例では、吸気リング38を境に塗布範囲が前後に2つに分かれている。前方の塗布範囲は、エンジン10の前方の位置P1からエンジン10の上方の位置P2まで連続している。後方の塗布範囲は、エンジン10の上方の位置P3からエンジン10の後方の位置P4まで連続している。位置P3は、位置P2よりも後方の位置である。接着層58は、塗布範囲の全域に残る。接着層58は、平面視における右連結部R52および左連結部L52のいずれの位置にも配置されている。したがって、右連結部R52および左連結部L52は、広い範囲で接着される。
【0085】
右分割カバーR41および左分割カバーL41を連結するときは、接着剤を右連結部R52の端面R55と左連結部L52の端面L55との少なくとも一方に塗布する。その後、接着剤が乾燥する前に、右連結部R52の端面R55と左連結部L52の端面L55とを重ね合わせ、ボルト56で右連結部R52および左連結部L52を締結する。これにより、右連結部R52の端面R55と左連結部L52の端面L55とが互いに押し付けられた状態で、右分割カバーR41および左分割カバーL41がボルト56によって連結される。この状態で接着剤が乾くと、右連結部R52および左連結部L52に介在する接着剤が接着層58に変化し、右連結部R52および左連結部L52が接着される。
【0086】
以上のように第1実施形態では、エンジンカバー21においてエンジン10の上方に位置する部分が2つに分割されている。言い換えると、エンジン10と直接向かい合う右分割カバーR41および左分割カバーL41がエンジンカバー21に設けられている。これにより、エンジンカバー21の形状の自由度を高めることができる。さらに、右分割カバーR41および左分割カバーL41の右連結部R52および左連結部L52は、エンジン10の上方に配置されており、平面視でエンジン10に重なる。したがって、右分割カバーR41および左分割カバーL41は、平面視でエンジン10に重なる位置で分割されている。そのため、右分割カバーR41および左分割カバーL41が平面視でエンジン10に重ならない位置だけで分割されている場合に比べて、右分割カバーR41および左分割カバーL41の大きさの差を減らすことができ、形状などのエンジンカバー21の制約を緩和できる。
【0087】
本実施形態では、右分割カバーR41および左分割カバーL41に設けられた右連結部R52および左連結部L52の間隔が、場所に応じて変化しているのではなく、いずれの位置でも一定である。右連結部R52および左連結部L52の間隔が一定でない場合、右連結部R52および左連結部L52の間に介在する別のカバーが必要になることがある。右連結部R52および左連結部L52の間隔が一定であれば、このようなカバーを設けることなく、右分割カバーR41および左分割カバーL41を連結できる。
【0088】
本実施形態では、右連結部R52および左連結部L52の間に接着層58が介在している。接着層58は、乾いた接着剤の薄膜である。右連結部R52および左連結部L52のそれぞれは、化学的または物理的に接着層58に結合されている。これにより、右連結部R52および左連結部L52が接着層58を介して互いに連結されている。さらに、接着層58は、右連結部R52および左連結部L52の間の隙間を塞いでいる。したがって、右連結部R52および左連結部L52を連結できるだけでなく、エンジンカバー21の密閉性を高めることができる。
【0089】
本実施形態では、右連結部R52および左連結部L52が広い範囲で接着されている。具体的には、右連結部R52および左連結部L52の間に介在する接着層58は、平面視における右連結部R52および左連結部L52のいずれの位置にも配置されている。したがって、接着剤が右連結部R52および左連結部L52に接触する範囲が広く、接着層58の面積が大きい。これにより、右連結部R52および左連結部L52の接着強度とエンジンカバー21の密閉性とを高めることができる。
【0090】
本実施形態では、右ハウジング部R42および左ハウジング部L42と右フランジ部R50および左フランジ部L50とが、右分割カバーR41および左分割カバーL41に設けられている。右ハウジング部R42および左ハウジング部L42は、エンジン10と直接向かい合っており、右フランジ部R50および左フランジ部L50は、右ハウジング部R42および左ハウジング部L42から外方に突出している。右ハウジング部R42および左ハウジング部L42から折り返された右フランジ部R50および左フランジ部L50を設けることにより、右分割カバーR41および左分割カバーL41の剛性を高めることができる。右連結部R52および左連結部L52に含まれる右フランジ部R50および左フランジ部L50は、接着層58によって接着されている。言い換えると、右フランジ部R50および左フランジ部L50を設けることで、接着剤が右連結部R52および左連結部L52に接触する範囲を広げることができ、右連結部R52および左連結部L52の接着強度を高めることができる。
【0091】
本実施形態では、右連結部R52および左連結部L52の特定の位置だけに右フランジ部R50および左フランジ部L50が設けられているのではなく、右連結部R52および左連結部L52のいずれの位置にも右フランジ部R50および左フランジ部L50が設けられている。これにより、接着剤が右連結部R52および左連結部L52に接触する範囲を広げることができ、右連結部R52および左連結部L52の接着強度を高めることができる。したがって、右分割カバーR41および左分割カバーL41が右連結部R52および左連結部L52で分離することを防止できる。さらに、接着剤の塗布範囲が広がり、接着層58の面積が増加するので、エンジンカバー21の密閉性をさらに高めることができる。
【0092】
本実施形態では、右連結部R52および左連結部L52を、接着剤で接着するだけでなく、ボルト56で締結する。これにより、右連結部R52および左連結部L52の連結強度を高めることができる。さらに、右連結部R52および左連結部L52をボルト56で締結すると、接着剤が乾く前に、右分割カバーR41および左分割カバーL41が固定される。したがって、接着剤が乾くまで、右分割カバーR41および左分割カバーL41を静止させたり、治具で右分割カバーR41および左分割カバーL41を固定したりする必要がない。さらに、右連結部R52および左連結部L52をボルト56で締結すると、右分割カバーR41および左分割カバーL41が適切な位置関係で固定されるので、右分割カバーR41および左分割カバーL41がずれた状態で接着されることを防止できる。
【0093】
本実施形態では、エンジン10に供給される空気が通過する筒状の吸気リング38が右分割カバーR41および左分割カバーL41に設けられている。吸気リング38は、右バンド部R46および左バンド部L46に分割されている。右バンド部R46および左バンド部L46の両端は、右連結部R52および左連結部L52の一部である。したがって、右分割カバーR41および左分割カバーL41は、吸気リング38を通る位置で分割されている。吸気リング38は、通常、平面視におけるエンジン10の中心またはこれに近い位置に配置される。したがって、吸気リング38を通る位置で右分割カバーR41および左分割カバーL41を分割すれば、右分割カバーR41および左分割カバーL41の大きさの差を減らすことができる。
【0094】
本実施形態では、右分割カバーR41および左分割カバーL41が、エンジン10の上方だけでなく、エンジン10の前方および後方でも分割されている。右連結部R52および左連結部L52は、エンジン10の上方を経由してエンジン10の前方からエンジン10の後方に延びている。したがって、右分割カバーR41および左分割カバーL41は、左右に分割されている。船外機3用のエンジンカバー21は、通常、概ね左右対称な形状を有している。したがって、右分割カバーR41および左分割カバーL41を左右に分割すれば、右分割カバーR41および左分割カバーL41の大きさの差を減らすことができる。
【0095】
本実施形態では、右分割カバーR41および左分割カバーL41が分割ラインDLを境に分割されている。分割ラインDLは、平面視において右分割カバーR41および左分割カバーL41を左右に二等分または左右に概ね二等分している。具体的には、分割ラインDLは、平面視において右分割カバーR41および左分割カバーL41の右端および左端からの距離が等しい位置を通過している。これにより、右分割カバーR41および左分割カバーL41を等しいまたは概ね等しい大きさにすることができる。
【0096】
本実施形態では、平面視におけるエンジン10の輪郭線10oの少なくとも一部が、平面視で右分割カバーR41および左分割カバーL41に重なっている。したがって、右分割カバーR41および左分割カバーL41は、平面視における右分割カバーR41および左分割カバーL41の輪郭線の少なくとも一部が平面視におけるエンジン10の輪郭線10oの外に配置される大きさを有している。このような大きなエンジンカバー21を分割するので、形状などのエンジンカバー21の制約を緩和できる。
【0097】
本実施形態では、右連結部R52および左連結部L52が、トップパネル33tなどの外装パネル33で保護されている。外装パネル33は、右分割カバーR41および左分割カバーL41の外に配置されている。右分割カバーR41および左分割カバーL41の外から右連結部R52および左連結部L52を見ると、外装パネル33が右連結部R52および左連結部L52の少なくとも一部に重なっており、右連結部R52および左連結部L52の少なくとも一部が外装パネル33で隠れている。ミストやしぶきは、右連結部R52および左連結部L52に到達する前に外装パネル33に衝突する。したがって、右連結部R52および左連結部L52の間を通過してエンジンカバー21の中に入る水を減らすことができ、エンジンカバー21の防水性を高めることができる。さらに、右連結部R52および左連結部L52を外装パネル33で隠すと、右連結部R52および左連結部L52の境界に水圧が直接加わらないので、右連結部R52および左連結部L52の堅牢性(robustness)を高めることができる。
【0098】
次に、第2実施形態について説明する。
図15は、本発明の第2実施形態に係る吸気リング38の断面図である。図15は、吸気リング38の中心線を含む平面に沿う吸気リング38の断面を示している。図15において、前述の図1図14に示された構成と同等の構成については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0099】
吸気リング38の内径38iおよび外径38oの少なくとも一方は、吸気リング38の基端38pから吸気リング38の先端38dまで一定でなくてもよい。つまり、吸気リング38の内径38iおよび外径38oの少なくとも一方は、連続的または段階的に変化していてもよい。図15は、吸気リング38の内径38iおよび外径38oの両方が連続的に変化した例を示している。
【0100】
図15に示す例では、吸気リング38の内径38iおよび外径38oが、吸気リング38の先端38dに近づくにしたがって連続的に減少し、その後、吸気リング38の先端38dに近づくにしたがって連続的に増加している。吸気リング38の内径38iおよび外径38oは、吸気リング38の先端38dで最も大きい。吸気リング38の内径38iおよび外径38oは、吸気リング38の先端38dと吸気リング38の基端38pとの間の位置で最も小さい。吸気リング38の内径38iの最大値は、吸気リング38の外径38oの最大値よりも小さく、吸気リング38の外径38oの最小値よりも大きい。
【0101】
吸気リング38の内径38iおよび外径38oの最大値、つまり、吸気リング38の先端38dにおける吸気リング38の内径38iおよび外径38oは、吸気リング38の基端38pにおける吸気リング38の内径38iおよび外径38oよりも大きい。吸気リング38の先端38dは、吸気リング38の径方向に関して吸気リング38の基端38pよりも外方に配置されている。言い換えると、吸気リング38の先端38dが吸気リング38の基端38pに対してオーバーハングしており、吸気リング38の外周面がメインカバー34の外表面と吸気リング38の軸方向(吸気リング38の中心線の方向)に向かい合っている。吸気リング38の軸方向に見ると、吸気リング38の先端38dは、メインカバー34に重なっている。
【0102】
第2実施形態では、第1実施形態に係る効果に加えて、次の効果を奏することができる。具体的には、第2実施形態では、吸気リング38の外周面の直径が、吸気リング38の先端38dに近づくにしたがって段階的または連続的に増加している。したがって、水が吸気リング38の外周面を伝って吸気リング38の先端38dから吸気リング38の中に入り難い。吸気リング38が一体の1つの部材である場合、吸気リング38の製法や材料によっては、吸気リング38をこのように形成できないことがある。吸気リング38を右バンド部R46および左バンド部L46に分割すれば、吸気リング38をこのように形成できる。
【0103】
本実施形態では、吸気リング38の内周面の直径が、吸気リング38の先端38dに近づくにしたがって連続的に増加している。したがって、吸気リング38の先端38dによって形成された入口から吸気リング38に吸い込まれる空気に加わる抵抗を減少させることができる。これにより、吸気の圧力損失を低減でき、エンジン10の出力を向上できる。吸気リング38での吸気の圧力損失を低減することにより、エンジンカバー21内の負圧を弱めることができ、エンジンカバー21の繋ぎ目からエンジンカバー21内に入る水を減らすことができる。さらに、吸気リング38の内径38iの最大値が吸気リング38の外径38oの最小値よりも大きいので、吸気リング38の外径38oは、吸気リング38の先端38dに近づくにしたがって段階的または連続的に増加する。したがって、水が吸気リング38の外周面を伝って吸気リング38の先端38dから吸気リング38の中に入り難い。
【0104】
吸気リング38の先端38dから離れるにしたがって内径および外径が連続的に増加するテーパー状のリングを吸気リング38の先端38dに取り付けると、リングと吸気リング38との繋ぎ目に断面L字状の段差が形成される。この場合、テーパー状のリングを追加する必要があるだけでなく、段差がない場合に比べて吸気効率が低下する。吸気リング38の内径38iが連続的に変化しているので、吸気リング38の内周面はこのような段差を形成していない。したがって、テーパー状のリングを追加する場合に比べて、吸気効率を高めることができる。
【0105】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、右分割カバーR41の右連結部R52と左分割カバーL41の左連結部L52とを直接的に接触させるのではなく、右連結部R52および左連結部L52よりも強度が低いゴムまたは樹脂製のシールを、右連結部R52および左連結部L52の間に介在させてもよい。
【0106】
右連結部R52および左連結部L52の間隔を変化させてもよい。この場合、右分割カバーR41および左分割カバーL41と強度が等しいまたは概ね等しい別のカバーを右連結部R52および左連結部L52の間に介在させてもよい。
右連結部R52および左連結部L52を部分的に接着してもよい。つまり、平面視における右連結部R52および左連結部L52の全域ではなく、平面視における右連結部R52および左連結部L52の一部だけに接着層58を配置していてもよい。
【0107】
ボルト56を用いた締結または接着剤を用いた接着だけで右連結部R52および左連結部L52を連結してもよいし、締結および接着以外の方法により右連結部R52および左連結部L52を連結してもよい。
右ハウジング部R42の側方端面R43の全体ではなく、右ハウジング部R42の側方端面R43の一部だけに右フランジ部R50を設けてもよい。同様に、左ハウジング部L42の側方端面L43の全体ではなく、左ハウジング部L42の側方端面L43の一部だけに左フランジ部L50を設けてもよい。もしくは、右フランジ部R50および左フランジ部L50を右分割カバーR41および左分割カバーL41から省略してもよい。この場合、右ハウジング部R42および左ハウジング部L42を接着剤で接着すればよい。
【0108】
メインカバー34の吸気リング38を分割せずに、メインカバー34のハウジング35だけを分割してもよい。つまり、右分割カバーR41および左分割カバーL41の境界を示す分割ラインDLは、平面視で吸気リング38を通過していなくてもよい。吸気リング38をメインカバー34から省略してもよい。
メインカバー34を左右に二等分する位置ではなく、右または左に偏った位置でメインカバー34を分割してもよい。左右ではなく、前後にメインカバー34を分割してもよい。言い換えると、分割ラインDLは、平面視でメインカバー34の右方の位置からメインカバー34の左方の位置まで延びていてもよい。この場合、分割ラインDLは、前後方向に直交する鉛直な平面であってもよい。
【0109】
平面視におけるメインカバー34の輪郭線34oは、エンジン10の全周にわたってエンジン10を取り囲むのではなく、平面視でエンジン10に重なっていてもよい。つまり、エンジン10の一部が平面視におけるメインカバー34の輪郭線34oの外に配置されていてもよい。
メインカバー34の少なくとも一部が平面視でエンジン10に重なるのであれば、メインカバー34は、平面視でエンジン10より小さくてもよい。この場合、平面視におけるエンジン10の輪郭線10oは、メインカバー34の全周にわたってメインカバー34を取り囲んでいてもよいし、平面視でメインカバー34に重なっていてもよい。前者の場合、メインカバー34は、平面視でエンジン10に重なる位置だけで分割される。
【0110】
メインカバー34をその上から鉛直に見たときに、右分割カバーR41および左分割カバーL41がエンジン10に重なるのであれば、右分割カバーR41および左分割カバーL41の少なくとも一方は、メインカバー34を水平に見たときにエンジン10に重なっていなくてもよい。すなわち、エンジン10の全周にわたってエンジン10を取り囲む筒状のハウジング35の周壁37を、右ハウジング部R42および左ハウジング部L42から省略してもよい。
【0111】
右連結部R52および左連結部L52の全体ではなく、右連結部R52および左連結部L52の一部だけをトップパネル33tなどの外装パネル33で覆ってもよい。右連結部R52および左連結部L52の全体が外装パネル33から露出していてもよい。トップパネル33t、フロントパネル33f、リアパネル33r、ライトパネル33R、およびレフトパネル33Lの少なくとも一つを省略してもよい。
【0112】
前述の全ての構成の2つ以上が組み合わされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0113】
3:船外機、4:船外機本体、10:エンジン、10c:クランクシャフト、10o:エンジンの輪郭線、19:プロペラ、21:エンジンカバー、31:ボトムカバー、32:トップカバー、33:外装パネル、33L:レフトパネル、33R:ライトパネル、33f:フロントパネル、33r:リアパネル、33t:トップパネル、34:メインカバー、34o:メインカバーの輪郭線、35:ハウジング、36:上壁、37:周壁、38:吸気リング、38d:先端、38i:内径、38o:外径、38p:基端、L41:左分割カバー、L41L:左分割カバーの左端、L42:左ハウジング部、L43:側方端面、L46:左バンド部、L47:前方端面、L48:後方端面、L50:左フランジ部、L51:端面、L52:左連結部、L52f:左連結部の前端、L52r:左連結部の後端、L52u:左連結部の上端、L55:左連結部の端面、R41:右分割カバー、R41R:右分割カバーの右端、R42:右ハウジング部、R43:側方端面、R46:右バンド部、R47:前方端面、R48:後方端面、R50:右フランジ部、R51:端面、R52:右連結部、R52f:右連結部の前端、R52r:右連結部の後端、R52u:右連結部の上端、R55:右連結部の端面、56:ボルト、57:ナット、58:接着層、DL:分割ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15