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特開2022-10425回転電機のスロットコイル用絶縁材とその成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022010425
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】回転電機のスロットコイル用絶縁材とその成形方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20220107BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20220107BHJP
   H02K 15/085 20060101ALI20220107BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20220107BHJP
   B29C 45/38 20060101ALI20220107BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H02K3/34 B
H02K3/04 E
H02K15/085
H02K15/02 Z
B29C45/38 A
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020077333
(22)【出願日】2020-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】391029392
【氏名又は名称】中川特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【氏名又は名称】町田 光信
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(72)【発明者】
【氏名】小川 典孝
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
5H603
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
4F202AA24
4F202AC07
4F202AE10
4F202AG06
4F202AG24
4F202AH33
4F202AM32
4F202AR08
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK06
4F202CK15
4F206AA24
4F206AC07
4F206AE10
4F206AG06
4F206AG24
4F206AH33
4F206AM32
4F206AR08
4F206AR12
4F206JA07
4F206JL02
4F206JQ81
5H603AA09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CB03
5H603CB23
5H603CC05
5H603CC17
5H603CC18
5H603CD22
5H603CE02
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DA14
5H604DB01
5H604PB02
5H604PB03
5H604QA01
5H615AA01
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP13
5H615PP14
5H615QQ03
5H615QQ12
5H615RR01
5H615SS09
5H615SS44
5H615TT36
(57)【要約】
【課題】肉厚を薄く、しかも正確な形状を製造できる、回転電機のスロットコイル用絶縁材とその成形方法を提供する。
【解決手段】ゲート173、173から耳状フランジ16、16に流入した熱可塑性合成樹脂は、耳状フランジ16、16の対向壁161、161にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、耳状フランジ16、16、長辺側フランジ15、15を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁131、132及び隔壁133に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、形状が正確で、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、耳状フランジ16、16、長辺側フランジ15、15が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁131、132及び隔壁133に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機のステータに設けられたスロットに挿入され、導線を挿入するために断面形状が矩形で、複数の貫通孔が形成され、熱可塑性合成樹脂で成形され、かつ前記貫通孔は互いに平行で、前記導線を互いに電気的に絶縁するための隔壁及び外周壁からなる絶縁材と、
前記貫通孔と断面形状が相似形で、かつ前記貫通孔に挿入される導線と
で構成されるスロットコイルを有する回転電機において、
前記絶縁材は、前記貫通孔の一端の外周に形成され、かつ前記隔壁及び前記外周壁より肉厚のフランジが成形されたものである
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材において、
前記フランジは、前記スロットに挿入したときの位置決め用ストッパーであり、成形時に溶融樹脂が均等に流れるように断面積が同一部分を含むものである
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材において、
前記絶縁材の材料は、耐熱性と電気絶縁性を有する液晶性全芳香族ポリエステルの熱可塑性合成樹脂であり、
前記隔壁及び前記外周壁の肉厚は、0.15ないし0.55mmである
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法であって、
前記絶縁材を射出成形により成形するとき、前記絶縁材の溶融した材料を流入させるゲートが前記フランジに配置されている
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法。
【請求項5】
請求項4に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法であって、
前記射出成形を行う成形機は、0.1秒以内に射出速度がピークに達する高速射出成形機であり、
前記溶融した材料を前記ゲートから射出成形金型に流入させる射出方向は、前記フランジの肉厚方向に向けられている
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法であって、
前記ゲートは、ピンポイントゲートである
ことを特徴とする回転電機のスロットコイル用絶縁材の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機のスロットコイル用絶縁材とその成形方法に関する。さらに詳しくは、回転電機のステータに配置された導線の絶縁に使用される回転電機のスロットコイル用絶縁材とその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ、発電機等の回転電機のステータとして、セグメントコイルを有する回転電機が提案されている。セグメントコイルの導線は、モータの効率向上とのために断面形状が真四角、平角線等の矩形のものが用いられている(特許文献1、特許文献2)。更に、組立効率の向上のために、このセグメントコイルをスロットコイルにするものも提案されている。スロットコイルの絶縁材を絶縁紙に換えて、樹脂で射出成形で成形し、これに平角線コイルをステータのスロットに挿入して組立てて、セグメントコイルとするものである(特許文献3)。この絶縁材の一端にフランジ(鍔部)を形成し、このフランジにより絶縁材料とスロットの間の隙間を封止して、巻線固定用のワニスの流れを封止するものである。
【0003】
セグメントコイルによる電動モータの損失を防ぐには、スロットコイルの導線間を電気的に絶縁性を高くする必要がある。絶縁性を高くするには肉厚を厚くすることで実現できるが、導線の密度が低くなり電動モータの変換効率が低下し、しかもモータが大型化する。一方、電動モータの銅損による発熱は避けられないので、絶縁材には耐熱性も要求される。即ち、セグメントコイルを構成する絶縁材は、絶縁性と耐熱性の両方が要求され、しかも導線間の隙間は狭いので、薄肉のものが要求されるので、可能な限り薄く形成しなければならない。しかしながら、一般的に絶縁性と耐熱性の両方が要求され、かつ薄肉の成形品を射出成形により成形することは、金型内での樹脂の流れが悪く困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-35687号公報
【特許文献2】特開2019-161964号公報
【特許文献3】特開2018-125924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような背景で発明されたものであり、以下の目的を達成するものである。
本発明の目的は、肉厚を薄く、しかも正確な形状を製造できる、回転電機のスロットコイル用絶縁材とその成形方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、絶縁性、耐熱性が高い熱可塑性合成樹脂で成形された、回転電機のスロットコイル用絶縁材とその成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために、次の手段を採る。
即ち、本発明1の回転電機のスロットコイル用絶縁材は、回転電機のステータに設けられたスロットに挿入され、導線を挿入するために断面形状が矩形で、複数の貫通孔が形成され、熱可塑性合成樹脂で成形され、かつ前記貫通孔は互いに平行で、前記導線を互いに電気的に絶縁するための隔壁及び外周壁からなる絶縁材と、前記貫通孔と断面形状が相似形で、かつ前記貫通孔に挿入される導線とで構成されるスロットコイルを有する回転電機において、前記絶縁材は、前記貫通孔の一端の外周に形成され、かつ前記隔壁及び前記外周壁より肉厚のフランジが成形されたものであることを特徴とする。
【0007】
本発明2の回転電機のスロットコイル用絶縁材は、本発明1において、前記フランジは、前記スロットに挿入したときの位置決め用ストッパーであり、成形時に溶融樹脂が均等に流れるように断面積が同一部分を含むものであることを特徴とする。
本発明3の回転電機のスロットコイル用絶縁材は、本発明1又は2において、前記絶縁材の材料は、耐熱性と電気絶縁性を有する液晶性全芳香族ポリエステルの熱可塑性合成樹脂であり、前記隔壁及び前記外周壁の肉厚は、0.15ないし0.55mmであることを特徴とする。
本発明4の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成型方法は、本発明3において、前記絶縁材を射出成形により成形するとき、前記絶縁材の溶融した材料を流入させるゲートが前記フランジに配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明5の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成型方法は、本発明4において、前記射出成形を行う成形機は、0.1秒以内に射出速度がピークに達する高速射出成形機であり、前記溶融した材料を前記ゲートから射出成形金型に流入させる射出方向は、前記フランジの肉厚方向に向けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明6の回転電機のスロットコイル用絶縁材の成型方法は、本発明5において、前記ゲートは、ピンポイントゲートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の回転電機のスロットコイル用絶縁材とその成形方法は、導線を挿入するための貫通孔の一端の外周に、肉厚のフランジが成形されている。従って、絶縁材の成形時に、フランジがランナーとして機能し、肉厚の薄い貫通孔の外周壁及び隔壁に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入するため、形状が正確で滑らかな成形品を作ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の回転電機のスロットコイル用絶縁材を備えた回転電機のステータを示す要部の斜視図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す全体斜視図である。
図3図3(a)は、図2のP矢視図、図3(b)は図3(a)のQ部拡大図である。
図4図4は、図2のA-A断面図である。
図5図5は、本発明の回転電機のスロットコイル用絶縁材を成形する射出成形機の射出速度波形を示すグラフである。
図6図6(a)は、本発明の第2の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図、図6(b)は本発明の第3の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図である。
図7図7(a)は、本発明の第4の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図、図7(b)は本発明の第5の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図である。
図8図8(a)は、本発明の第6の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図、図8(b)は本発明の第7の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔スロットコイル用絶縁材の第1の実施の形態〕
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の回転電機のスロットコイル用絶縁材を備えた回転電機のステータを示す要部の斜視図である。図1に示すように、回転電機のステータ100に放射状に複数形成されたスロット101には、絶縁材1と導線11で構成されたスロットコイル12が装着されている。図2は、本発明の第1の実施の形態のスロットコイル用絶縁材1を示す全体斜視図、図3(a)は図2のP矢視図、図3(b)は図3(a)のQ部拡大図、図4図2のA-A断面図である。図2から図4に示すように、本発明の第1の実施の形態の絶縁材1は、矩形断面の導線11を挿入するための6個の貫通孔13が形成されている。貫通孔13は、導線11と断面形状が相似形の矩形に形成され、互いに平行に形成されている。導線(日本工業規格等で規定する「平角銅線」等を意味する。)は、絶縁被膜のないもの、又は、樹脂等(60~100μ程度)による被覆線を使用する。絶縁材1は、熱可塑性合成樹脂で射出成形により成形されている。
【0013】
図4に示すように、絶縁材1は、貫通孔13の外周壁131、132及び隔壁133の厚さ(a、b、c)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材1には、貫通孔13の上端の外周にフランジ14が成形されている。フランジ14は、2個の長辺側フランジ15、15と2個の耳状フランジ16、16で構成されている。長辺側フランジ15、15は2個の長辺の全長に渡って形成され、耳状フランジ16、16は、長辺側フランジ15、15の一端に、長辺側フランジ15、15から直角に突出して形成されている。長辺側フランジ15、15の厚さd、耳状フランジ16、16の厚さe、長辺側フランジ15、15と耳状フランジ16、16の高さfは、外周壁131、132及び隔壁133の厚さa、b、cよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ14は、図1のスロット101に絶縁材1を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材1を成形後、フランジ14は切断する必要が無い。
【0014】
図3(a)に示すように、図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、スプルー171からランナー172を経由し、ゲート173、173を介して耳状フランジ16、16に各々流入する。ゲート173、173は、小さな点で耳状フランジ16、16に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がゲート173、173から耳状フランジ16、16に流入する方向は、耳状フランジ16、16の肉厚方向である。図3(b)に示すように、ゲート173、173から耳状フランジ16、16に流入した熱可塑性合成樹脂は、耳状フランジ16、16の対向壁161、161にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、耳状フランジ16、16、長辺側フランジ15、15を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁131、132及び隔壁133に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、形状が正確で、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、耳状フランジ16、16、長辺側フランジ15、15が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁131、132及び隔壁133に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【0015】
本発明の実施の形態の絶縁材1の材料として使用する熱可塑性合成樹脂は、液晶性全芳香族ポリエステルが好ましい。液晶性全芳香族ポリエステルは、電気的な絶縁性、耐熱性があり、しかも温度管理(成形温度320℃~400℃)を正確にすれば、流動性が高いので、成形性が良い。但し、液晶性全芳香族ポリエステルは、成形時の溶融粘度が低く、固化速度が速いため、0.2mm以下の超薄肉製品の場合、薄肉部で樹脂が固化し十分な流動性が得られない場合がある。そのため、汎用の成形機では成形できないので、図5に示すような、0.1秒以内に射出速度がピークに達するような特性を有する高速射出成形機を用いる射出成形が好ましい。
【0016】
〔スロットコイル用絶縁材の第2の実施の形態〕
図6(a)は、本発明の第2の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図である。本発明の第2の実施の形態の絶縁材2は、第1の実施の形態の絶縁材1の耳状フランジ16、16が無く、ゲート173、173の位置が異なることである。貫通孔23の個数と形状は第1の実施の形態の絶縁材1と同一である。また、絶縁材2は、断面の図示はしないが、貫通孔23の外周壁231、232及び隔壁233の厚さ(a、b、c)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材2には、貫通孔23の上端の外周にフランジ24が成形されている。フランジ24は、2個の長辺側フランジ25、25で構成されている。長辺側フランジ25、25は2個の長辺の全長に渡って形成されている。長辺側フランジ25、25の厚さd、長辺側フランジ25、25の高さfは、外周壁231、232及び隔壁233の厚さa、b、cよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ24は、図1のスロット101に絶縁材2を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材2を成形後、切断する必要が無い。
【0017】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、ゲート273、273を介して長辺側フランジ25、25に各々流入する。ピンサイドゲート273、273は、長辺側フランジ25、25の長さ方向の中間位置に設けられ、小さな点で長辺側フランジ25、25に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がピンサイドゲート273、273から長辺側フランジ25、25に流入する方向は、長辺側フランジ25、25の肉厚方向である。ピンサイドゲート273、273から長辺側フランジ25、25に流入した熱可塑性合成樹脂は、長辺側フランジ25、25の対向壁(図示せず)にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、長辺側フランジ25、25を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁231、232及び隔壁233に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、長辺側フランジ25、25が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁231、232及び隔壁233に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【0018】
〔スロットコイル用絶縁材の第3の実施の形態〕
図6(b)は、本発明の第3の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図である。本発明の第3の実施の形態の絶縁材3は、第2の実施の形態の絶縁材2の貫通孔23の個数が異なる点と、短辺側フランジが追加された点である。すなわち、第3の実施の形態の絶縁材3は、貫通孔33の個数が8個で2列に形成されている。また、絶縁材3は、断面の図示はしないが、貫通孔33の外周壁331、332及び隔壁333の厚さ(a、b、c)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材3には、貫通孔33の上端の外周にフランジ34が成形されている。フランジ34は、2個の長辺側フランジ35、35と2個の短辺側フランジ38、38で構成されている。長辺側フランジ35、35は2個の長辺の全長に渡って形成されている。また、短辺側フランジ38、38は、2個の短辺の全長に渡って形成されている。長辺側フランジ35、35、短辺側フランジ38、38の厚さd、長辺側フランジ35、35、短辺側フランジ38、38の高さfは、外周壁331、332及び隔壁333の厚さa、b、cよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ34は、図1のスロット101に絶縁材3を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材3を成形後、切断する必要が無い。
【0019】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、ピンサイドゲート373、373を介して長辺側フランジ35、35に各々流入する。ピンサイドゲート373、373は、長辺側フランジ35、35の長さ方向の中間位置に設けられ、小さな点で長辺側フランジ35、35に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がピンサイドゲート373、373から長辺側フランジ35、35に流入する方向は、長辺側フランジ35、35の肉厚方向である。ピンサイドゲート373、373から長辺側フランジ35、35に流入した熱可塑性合成樹脂は、長辺側フランジ35、35の対向壁(図示せず)にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、長辺側フランジ35、35、短辺側フランジ38、38を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁331、332及び隔壁333に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、長辺側フランジ35、35、短辺側フランジ38、38が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁331、332及び隔壁333に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【0020】
〔スロットコイル用絶縁材の第4の実施の形態〕
図7(a)は、本発明の第4の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図である。本発明の第4の実施の形態の絶縁材4は、第1の実施の形態の絶縁材1の貫通孔13の形状が異なることと、短辺側フランジが追加されたことである。すなわち、第4の実施の形態の絶縁材4は、貫通孔43の形状が長方形で、個数は6個で同一である。また、絶縁材4は、断面の図示はしないが、貫通孔43の外周壁431、432及び隔壁433の厚さ(a、b、c)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材4には、貫通孔43の上端の外周にフランジ44が成形されている。フランジ44は、2個の長辺側フランジ45、45と2個の耳状フランジ46、46、1個の短辺側フランジ48で構成されている。長辺側フランジ45、45は2個の長辺の全長に渡って形成され、耳状フランジ46、46は、長辺側フランジ45、55の一端に、長辺側フランジ45、45から直角に突出して形成されている。また、短辺側フランジ48は長辺側フランジ45、55の他端に、短辺の全長に渡って形成されている。長辺側フランジ45、45、短辺側フランジ48の厚さd、耳状フランジ46、46の厚さe、長辺側フランジ45、45、短辺側フランジ48、耳状フランジ46、46の高さfは、外周壁431、432及び隔壁433の厚さa、b、cよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ44は、図1のスロット101に絶縁材4を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材4を成形後、切断する必要が無い。
【0021】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、ゲート473、473を介して耳状フランジ46、46に各々流入する。ゲート473、473は、小さな点で耳状フランジ46、46に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がゲート473、473から耳状フランジ46、46に流入する方向は、耳状フランジ46、46の肉厚方向である。ゲート473、473から耳状フランジ46、46に流入した熱可塑性合成樹脂は、耳状フランジ46、46の図示しない対向壁にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、耳状フランジ46、66、長辺側フランジ45、45、短辺側フランジ48を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁431、432及び隔壁433に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、耳状フランジ46、46、長辺側フランジ45、45、短辺側フランジ48が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁431、432及び隔壁433に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。第4の実施の形態の絶縁材4は、第1の実施の形態の絶縁材1と比較して短辺の長さが長いため、短辺側フランジ48のランナーとしての機能が効果的である。
【0022】
〔スロットコイル用絶縁材の第5の実施の形態〕
図7(b)は、本発明の第5の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図である。本発明の第5の実施の形態の絶縁材5は、第2の実施の形態の絶縁材2の貫通孔23の個数が異なることと、短辺側フランジが追加され、ゲートの流入位置が異なることである。すなわち、第5の実施の形態の絶縁材5は、貫通孔53の個数が4個で1列に形成されている。また、絶縁材5は、断面の図示はしないが、貫通孔53の外周壁531、532及び隔壁533の厚さ(a、b、c)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材5には、貫通孔53の上端の外周にフランジ54が成形されている。フランジ54は、2個の長辺側フランジ55、55と1個の短辺側フランジ58で構成されている。長辺側フランジ55、55は2個の長辺の全長に渡って形成されている。また、短辺側フランジ58は1個の短辺の全長に渡って形成されている。長辺側フランジ55、55、短辺側フランジ58の厚さd、長辺側フランジ55、55、短辺側フランジ58の高さfは、外周壁531、532及び隔壁533の厚さa、b、cよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ54は、図1のスロット101に絶縁材5を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材5を成形後、切断する必要が無い。
【0023】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、1個のピンサイトゲート573を介して短辺側フランジ58に流入する。ピンサイトゲート573は、短辺側フランジ58の長さ方向の中間位置に設けられ、小さな点で短辺側フランジ58に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がピンサイトゲート573から短辺側フランジ58に流入する方向は、短辺側フランジ58の肉厚方向である。ゲート573から短辺側フランジ58に流入した熱可塑性合成樹脂は、短辺側フランジ58の対向壁(図示せず)にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、短辺側フランジ58、長辺側フランジ55、55を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁531、532及び隔壁533に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、短辺側フランジ58、長辺側フランジ55、55がランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁531、532及び隔壁533に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【0024】
〔スロットコイル用絶縁材の第6の実施の形態〕
図8(a)は、本発明の第6の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図である。本発明の第6の実施の形態の絶縁材6は、第1の実施の形態の絶縁材1の貫通孔13の個数と形状が異なることである。本発明の第6の実施の形態の絶縁材6は、貫通孔63の矩形の面積が大きく、個数は1個である。絶縁材6は、貫通孔63の外周壁631、632の厚さ(a、b)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材6には、貫通孔63の上端の外周にフランジ64が成形されている。フランジ64は、2個の長辺側フランジ65、65と2個の耳状フランジ66、66で構成されている。長辺側フランジ65、65は2個の長辺の全長に渡って形成され、耳状フランジ66、66は、長辺側フランジ65、65の一端に、長辺側フランジ65、65から直角に突出して形成されている。長辺側フランジ65、65の厚さd、耳状フランジ66、66の厚さe、長辺側フランジ65、65と耳状フランジ66、66の高さfは、外周壁631、632の厚さa、bよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ64は、図1のスロット101に絶縁材6を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材6を成形後、切断する必要が無い。
【0025】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、ゲート673、673を介して耳状フランジ66、66に各々流入する。ゲート673、673は、小さな点で耳状フランジ66、66に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がゲート673、673から耳状フランジ66、66に流入する方向は、耳状フランジ66、66の肉厚方向である。ゲート673、673から耳状フランジ66、66に流入した熱可塑性合成樹脂は、耳状フランジ66、66の図示しない対向壁にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、耳状フランジ66、66、長辺側フランジ65、65を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁631、632に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、耳状フランジ66、66、長辺側フランジ65、65が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁631、632に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【0026】
〔スロットコイル用絶縁材の第7の実施の形態〕
図8(b)は、本発明の第7の実施の形態のスロットコイル用絶縁材を示す要部の斜視図である。本発明の第7の実施の形態の絶縁材7は、第6の実施の形態の絶縁材6の長辺側フランジ65、65と耳状フランジ66、66が無く、短辺側フランジを設けたことである。すなわち、絶縁材7は、貫通孔73の外周壁731、732の厚さ(a、b)が同一で、0.15mmから0.55mmに薄く形成されている。絶縁材7には、貫通孔73の上端の外周にフランジ74が成形されている。フランジ74は、1個の短辺側フランジ78で構成されている。短辺側フランジ78の厚さd、短辺側フランジ78の高さfは、外周壁731、732の厚さa、bよりも大きく(例えば1mm)形成されている。このフランジ74は、図1のスロット101に絶縁材7を装着した時の位置決め用ストッパーとして作用し、ワニスの漏洩を止めることもできる。また、絶縁材7を成形後、切断する必要が無い。
【0027】
図示しない射出成形機のノズルから注入された熱可塑性合成樹脂は、1個のピンサイトゲート773を介して短辺側フランジ78に流入する。ピンサイトゲート773は、短辺側フランジ78の長さ方向の中間位置に設けられ、小さな点で短辺側フランジ78に接続するピンポイントゲートである。熱可塑性合成樹脂がピンサイトゲート773から短辺側フランジ78に流入する方向は、短辺側フランジ78の肉厚方向である。ゲート773から短辺側フランジ78に流入した熱可塑性合成樹脂は、短辺側フランジ78の図示しない対向壁にぶつかって90度方向転換して流入速度が減少し、短辺側フランジ78を熱可塑性合成樹脂で満たす。その後、肉厚の薄い外周壁731、732に熱可塑性合成樹脂が最適な流入速度で流れ込むため、熱可塑性合成樹脂の流れが良くなり、滑らかな成形品を作ることが可能となる。すなわち、短辺側フランジ78が、ランナーとして機能するため、肉厚の薄い外周壁731、732に熱可塑性合成樹脂が円滑に流入する。
【符号の説明】
【0028】
100…ステータ
101…スロット
1…絶縁材
11…導線
12…スロットコイル
13…貫通孔
131、132…外周壁
133…隔壁
14…フランジ
15…長辺側フランジ
16…耳状フランジ
161…対向壁
171…スプルー
172…ランナー
173…ゲート(ピンポイントゲート)
2…絶縁材
23…貫通孔
231、232…外周壁
233…隔壁
24…フランジ
25…長辺側フランジ
273…ゲート(ピンポイントゲート、ピンサイトゲート)
3…絶縁材
33…貫通孔
331、332…外周壁
333…隔壁
34…フランジ
35…長辺側フランジ
373…ゲート(ピンポイントゲート、ピンサイトゲート)
38…短辺側フランジ
4…絶縁材
43…貫通孔
431、432…外周壁
433…隔壁
44…フランジ
45…長辺側フランジ
46…耳状フランジ
473…ゲート(ピンポイントゲート)
48…短辺側フランジ
5…絶縁材
53…貫通孔
531、532…外周壁
533…隔壁
54…フランジ
55…長辺側フランジ
573…ゲート(ピンポイントゲート)
58…短辺側フランジ
6…絶縁材
63…貫通孔
631、632…外周壁
64…フランジ
65…長辺側フランジ
66…耳状フランジ
673…ゲート(ピンポイントゲート)
7…絶縁材
73…貫通孔
731、732…外周壁
74…フランジ
773…ゲート(ピンポイントゲート、又はピンサイトゲート)
78…短辺側フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8