(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104277
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】可逆熱変色性撚糸及びそれを用いた布帛、頭飾品、玩具
(51)【国際特許分類】
D02G 3/06 20060101AFI20220701BHJP
A63H 3/00 20060101ALI20220701BHJP
A63H 9/00 20060101ALI20220701BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220701BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220701BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220701BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220701BHJP
A41G 5/00 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
D02G3/06
A63H3/00 V
A63H9/00 R
B32B27/12
B32B27/20 A
B32B27/00 D
B32B7/12
A41G5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219380
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】中島 明雄
【テーマコード(参考)】
2C150
4F100
4L036
【Fターム(参考)】
2C150AA05
2C150BC02
2C150BC06
2C150CA01
2C150CA02
2C150DC17
2C150FB20
2C150FB43
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100AK41
4F100AK42
4F100AK51
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA05B
4F100CA05D
4F100CA13
4F100CA13C
4F100CB00
4F100CB00B
4F100CB00D
4F100DE01
4F100DE01C
4F100DG07
4F100DG07A
4F100DG07B
4F100DG07C
4F100DG07D
4F100DG07E
4F100GB84
4F100HB31
4F100JJ10C
4F100JL10
4F100JL10C
4F100JM01
4F100JM01C
4F100JN01
4F100JN01A
4F100JN01B
4F100JN01D
4F100JN01E
4F100JN06E
4F100JN18E
4F100JN21E
4F100JN24E
4F100JN28C
4F100JN28E
4F100YY00C
4L036MA04
4L036MA05
4L036MA37
4L036MA39
4L036PA21
4L036UA12
(57)【要約】
【課題】 温度変化による可逆的な色変化の視認性が良好であり、また、接着層を設けて各層間の接着性を向上させることにより層間剥離の発生が抑制され、可逆熱変色層が保護されることにより可逆熱変色層の耐久性に優れ、さらには光沢性を有する、玩具分野、装飾分野、デザイン分野等、多様な分野への応用性を備えた商品性の高い可逆熱変色性撚糸を提供する。
【解決手段】 透明性樹脂フィルム(3)からなる平糸の一方の広幅の面に、第一の透明性接着層(4)、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料がバインダー樹脂中に分散状態に固着された可逆熱変色層(5)、第二の透明性接着層(6)、透明性樹脂層(7)を順次設けてなる可逆熱変色性平糸(2)からなる可逆熱変色性撚糸(1)。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性樹脂フィルムからなる平糸の一方の広幅の面に、第一の透明性接着層、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料がバインダー樹脂中に分散状態に固着された可逆熱変色層、第二の透明性接着層、透明性樹脂層を順次設けてなる可逆熱変色性平糸からなる可逆熱変色性撚糸。
【請求項2】
前記第一の透明性接着層及び第二の透明性接着層が、光安定剤を含有してなる請求項1記載の可逆熱変色性撚糸。
【請求項3】
前記透明性樹脂層が、透明性樹脂フィルムである請求項1又は2記載の可逆熱変色性撚糸。
【請求項4】
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1~50μmであり、且つ、前記バインダー樹脂の固形分100質量部に対して、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が50~200質量部の範囲で配合されてなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の可逆熱変色性撚糸。
【請求項5】
前記可逆熱変色層の平均厚さが1~50μmであり、且つ、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D)と前記可逆熱変色層の平均厚さ(T)が、下記式(I)を満たす請求項1乃至4のいずれか一項に記載の可逆熱変色性撚糸。
0.002≦D/T<1 (I)
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の可逆熱変色性平糸と、糸とからなる可逆熱変色性撚糸。
【請求項7】
前記糸の周囲に、前記可逆熱変色性平糸が設けられてなる請求項6記載の可逆熱変色性撚糸。
【請求項8】
前記糸が、金属光沢性、真珠光沢性、ホログラム性、虹彩性、光干渉性、光反射性のいずれかから選ばれる光学性状を有する光輝性糸である請求項6又は7記載の可逆熱変色性撚糸。
【請求項9】
前記光輝性糸が、さらに透明性を有してなる透明性光輝性糸である請求項8記載の可逆熱変色性撚糸。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の可逆熱変色性撚糸を用いてなる布帛。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の可逆熱変色性撚糸を具備してなる頭飾品。
【請求項12】
前記頭飾品が、ヘアーウィッグ又はヘアーエクステンションである請求項11記載の頭飾品。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の可逆熱変色性撚糸を具備してなる玩具。
【請求項14】
前記玩具が、人形、動物形象玩具、ぬいぐるみ、又はそれらの付属品である請求項13記載の玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆熱変色性撚糸及びそれを用いた布帛、頭飾品、玩具に関する。さらに詳細には、温度変化により可逆的に色変化する可逆熱変色性撚糸及びそれを用いた布帛、頭飾品、玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基体上に、熱変色材と固着剤(以下、「バインダー」と表記する)とからなる組成物により形成される可逆熱変色層を設け、さらに可逆熱変色層をカバーする保護層を設けた可逆熱変色性糸及びそれを適用した撚糸が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
上記の可逆熱変色性糸は、着色剤として微小カプセルに内包された熱変色材を用いることにより、温度変化によって有色から無色、或いは、無色から有色に可逆的に色変化するものであるが、熱変色材はカプセルに内包されているため、一般的な非熱変色性の着色剤を用いる場合と比べて糸の色が薄くなり易く、色変化が視認され難い傾向にある。
糸の色を濃くするために、組成物中の熱変色材の配合割合を増やすことが考えられるが、熱変色材の配合割合を増加すると、可逆熱変色層の、基体又は保護層に対する接着性が低下し易く、特に、上記の可逆熱変色性糸を撚糸に適用する際に、糸にかかる応力によって、可逆熱変色層と基体、又は、可逆熱変色層と保護層の間で層間剥離が生じて、可逆熱変色層が外的要因から保護されなくなり、可逆熱変色層の熱変色機能が損なわれ易くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60-165477号公報のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、温度変化による可逆的な色変化の視認性が良好であり、可逆熱変色層の耐久性に優れた光沢性を有する可逆熱変色性撚糸を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、透明性樹脂フィルムからなる平糸の一方の広幅の面に、第一の透明性接着層、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料がバインダー樹脂中に分散状態に固着された可逆熱変色層、第二の透明性接着層、透明性樹脂層を順次設けてなる可逆熱変色性平糸からなる可逆熱変色性撚糸を要件とする。
また、前記第一の透明性接着層及び第二の透明性接着層が、光安定剤を含有してなること、前記透明性樹脂層が、透明性樹脂フィルムであること、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1~50μmであり、且つ、前記バインダー樹脂の固形分100質量部に対して、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が50~200質量部の範囲で配合されてなること、前記可逆熱変色層の平均厚さが1~50μmであり、且つ、前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D)と前記可逆熱変色層の平均厚さ(T)が、下記式(I)を満たすこと
0.002≦D/T<1 (I)
を要件とする。
さらには、前記可逆熱変色性平糸と、糸とからなる可逆熱変色性撚糸を要件とする。
また、前記糸の周囲に、前記可逆熱変色性平糸が設けられてなること、前記糸が、金属光沢性、真珠光沢性、ホログラム性、虹彩性、光干渉性、光反射性のいずれかから選ばれる光学性状を有する光輝性糸であること、前記光輝性糸が、さらに透明性を有してなる透明性光輝性糸であることを要件とする。
さらには、前記可逆熱変色性撚糸を用いてなる布帛、前記可逆熱変色性撚糸を具備してなる頭飾品、前記可逆熱変色性撚糸を具備してなる玩具を要件とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、温度変化による可逆的な色変化の視認性が良好であり、また、接着層を設けて各層間の接着性を向上させることにより層間剥離の発生が抑制され、可逆熱変色層が保護されることにより可逆熱変色層の耐久性に優れ、さらには光沢性を有する、玩具分野、装飾分野、デザイン分野等、多様な分野への応用性を備えた商品性の高い可逆熱変色性撚糸、及びそれを用いた布帛、頭飾品、玩具等の製品を提供できる。
また、接着層中にさらに光安定剤を含有させることにより、可逆熱変色層が耐久性と共に耐光性にも優れ、さらに光沢性を有する可逆熱変色性撚糸、及びそれを用いた布帛、頭飾品、玩具等の製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【
図2】加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【
図3】加熱発色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
【
図4】本発明の可逆熱変色性撚糸の一実施例の説明図である。
【
図5】本発明の可逆熱変色性撚糸の他の実施例の説明図である。
【
図6】本発明の可逆熱変色性撚糸の他の実施例の説明図である。
【
図7】本発明に用いられる可逆熱変色性平糸の一実施例の縦断面図である。
【
図8】本発明に用いられる可逆熱変色性平糸の他の実施例の縦断面図である。
【
図9】本発明に用いられる可逆熱変色性平糸の他の実施例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の可逆熱変色性撚糸(1)(以下、「撚糸」と表すことがある)は、
図4に示される、透明性樹脂フィルム(3)からなる平糸の一方の広幅の面に、第一の透明性接着層(4)、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料がバインダー樹脂中に分散状態に固着された可逆熱変色層(5)、第二の透明性接着層(6)、透明性樹脂層(7)を順次設けてなる可逆熱変色性平糸(2)からなる。
ここで、第一の透明性接着層又は第二の透明性接着層は、以下、「透明性接着層」又は「接着層」と表すことがある。
【0009】
本発明に適用される透明性樹脂フィルムは、可逆熱変色性撚糸に光沢性を付与することができ、さらに、可逆熱変色性平糸を加工して撚糸とする際の応力や、擦過等の外的要因による、第一の透明性接着層及び可逆熱変色層の損傷を防止するものであり、可逆熱変色層の耐久性に優れた、光沢性を有する可逆熱変色性撚糸とすることができる。透明性樹脂フィルムとしては、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認できるものであれば特に限定されるものではない。
透明性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸、レーヨン、キュプラ等の汎用の樹脂からなるフィルムを例示できる。
【0010】
透明性樹脂フィルムの厚さは3~50μm、好ましくは6~25μm、より好ましくは6~12μmの範囲が実用を満たす。透明性樹脂フィルムの厚さが50μmを超えると、可逆熱変色性平糸を撚糸に加工し難く、また、糸としての柔軟な風合いを損ない易くなる。一方、厚さが3μm未満では、厚さが薄すぎるためフィルムの強度に乏しく、また、第一の透明性接着層及び可逆熱変色層を、応力や擦過等の外的要因から保護する効果に乏しくなり易くなる。
【0011】
透明性樹脂フィルムが有する透明性とは、可視光領域(JIS B 7079で規定される380~780nmの波長領域)の波長の光を透過する性質のことであり、透明性樹脂フィルムの可視光領域における光透過率(可視光透過率)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。可視光透過率が5%未満の場合、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認し難くなる。
なお、上記の可視光透過率は,可視光領域の波長の光を透過する透明基材上に透明性樹脂フィルムを設け、分光光度計〔(株)日立製作所製、製品名:U-3210〕を用いて380nmから780nmの波長領域で測定し、最大値と最小値の中間値とした。
【0012】
本発明の撚糸を構成する可逆熱変色層には、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)(イ)成分及び(ロ)成分の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を、マイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が含有される。
可逆熱変色性組成物としては、特公昭51-44706号公報、特公昭51-44707号公報、特公平1-29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅(ΔH)が比較的小さい特性(ΔH=1~7℃)を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を用いることができる(
図1参照)。
【0013】
また、特公平4-17154号公報、特開平7-179777号公報、特開平7-33997号公報、特開平8-39936号公報、特開2005-1369号公報等に記載されているヒステリシス幅が大きい特性(ΔH=8~70℃)を示し、温度変化による発色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度t
1以下の温度域での発色状態、または完全消色温度t
4以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔発色開始温度t
2~消色開始温度t
3の間の温度域(実質二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を用いることもできる(
図2参照)。
【0014】
以下に各(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分について具体的に説明する。
【0015】
(イ)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(ロ)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物等が挙げられ、これらの中でも、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、及びビスキナゾリン化合物が好ましい。
【0016】
フタリド化合物としては、例えば、ジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、及びそれらの誘導体等が挙げられ、これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物、及びその誘導体が好ましい。
また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0017】
以下に(イ)成分に用いることができる化合物を例示する。
3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、
3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、
3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-n-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-アセトアミド-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-プロピル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、
3,6-ビス(N-フェニル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3,6-ジメトキシフルオラン、
3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、
2-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-クロロアミノ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジ-n-ペンチルアミノフルオラン、
2-ジベンジルアミノ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-(N-メチルアニリノ)-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-キシリジノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
6-ジエチルアミノ-1,2-ベンゾフルオラン、
6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-1,2-ベンゾフルオラン、
6-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-1,2-ベンゾフルオラン、
2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン、
2-ジエチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ブチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ペンチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジメチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-n-ブチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-n-ペンチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
3′,6′-ビス〔フェニル(2-メチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-エチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
2,6-ビス(2′-エチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6-ビス(2′,4′-ジエチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2-(4′-ジメチルアミノフェニル)-4-メトキシキナゾリン、
4,4′-エチレンジオキシ-ビス〔2-(4-ジエチルアミノフェニル)キナゾリン〕
【0018】
なお、フルオラン類としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する化合物のほか、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基等のアルキル基、塩素原子等のハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
【0019】
(ロ)成分、即ち電子受容性化合物は、(イ)成分から電子を受け取り、(イ)成分の顕色剤として機能する化合物である。
電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群〔酸ではないが、可逆熱変色性組成物中で酸として作用して(イ)成分を発色させる化合物群〕、及び電子空孔を有する化合物群等から選択される化合物が挙げられる。上記の(ロ)成分の中でも、活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。
【0020】
活性プロトンを有する化合物群としては、フェノール性水酸基を有する化合物及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体、酸性リン酸エステル及びその誘導体、アゾ-ル系化合物及びその誘導体、1,2,3-トリアゾール及びその誘導体、環状カルボスルホイミド類、炭素数2~5のハロヒドリン類、スルホン酸及びその誘導体、並びに無機酸類等が挙げられる。カルボン酸及びその誘導体としては、芳香族カルボン酸及びその誘導体、又は、炭素数2~5の脂肪族カルボン酸及びその誘導体が好ましい。
偽酸性化合物群としては、フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩、カルボン酸の金属塩、酸性リン酸エステルの金属塩、スルホン酸の金属塩、芳香族カルボン酸無水物、脂肪族カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸とスルホン酸の混合無水物、シクロオレフィンジカルボン酸無水物、尿素及びその誘導体、チオ尿素及びその誘導体、グアニジン及びその誘導体、並びにハロゲン化アルコール類等が挙げられる。
電子空孔を有する化合物群としては、硼酸塩類、硼酸エステル類、及び無機塩類等が挙げられる。
【0021】
上記の(ロ)成分の中でも、より有効に熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
フェノール性水酸基を有する化合物には、モノフェノール化合物からポリフェノール化合物まで広く含まれ、さらに、ビスフェノール化合物及びトリスフェノール化合物、フェノール-アルデヒド縮合樹脂等もこれに含まれる。フェノール性水酸基を有する化合物は、少なくともベンゼン環を2以上有することが好ましい。また、フェノール性水酸基を有する化合物は、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0022】
フェノール性水酸基を有する化合物等の金属塩が含む金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛、及びモリブデン等を例示できる。
【0023】
以下に(ロ)成分に用いることができる化合物を例示する。
フェノール、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ジメチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジメチルオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-へプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン
【0024】
フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2~5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びその金属塩、1,2,3-トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0025】
(イ)成分及び(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
上記の可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル化及び二次加工に応用する場合は、低分子量のものは高熱処理を施すとカプセル外に蒸散するので、安定的にカプセル内に保持させるために炭素数10以上の化合物が好適に用いられる。
【0026】
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、例えば、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等を例示できる。
【0027】
エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族及び脂環或いは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられ、例えば、カプリル酸エチル、カプリル酸オクチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸ミリスチル、カプリン酸ドコシル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸n-デシル、ミリスチン酸3-メチルブチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸ノニル、パルミチン酸シクロヘキシル、ステアリン酸n-ブチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸ペンタデシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ベヘン酸イソプロピル、ベヘン酸ヘキシル、ベヘン酸ラウリル、ベヘン酸ベヘニル、安息香酸セチル、4-tert-ブチル安息香酸ステアリル、フタル酸ジミリスチル、フタル酸ジステアリル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジセチル、コハク酸ジラウリル、グルタル酸ジラウリル、アジピン酸ジウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、セバシン酸ジ-(n-ノニル)、1,18-オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル、エチレングリコールジミリステート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールジステアレート、ヘキシレングリコールジパルミテート、1,5-ペンタンジオールジステアレート、1,2,6-ヘキサントリオールトリミリステート、1,4-シクロヘキサンジオールジデシル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジミリステート、キシレングリコールジカプリネート、キシレングリコールジステアレート等を例示できる。
【0028】
また、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールとのエステル、不飽和脂肪酸又は分枝若しくは置換基を有する飽和脂肪酸と、分岐状であるか又は炭素数16以上の脂肪族アルコールとのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリル及び酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
上記のエステル化合物としては、例えば、酪酸2-エチルヘキシル、ベヘン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-エチルヘキシル、カプリン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、パルミチン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、ステアリン酸3,5,5-トリメチルヘキシル、カプロン酸2-メチルブチル、カプリル酸2-メチルブチル、カプリン酸2-メチルブチル、パルミチン酸1-エチルプロピル、ステアリン酸1-エチルプロピル、ベヘン酸1-エチルプロピル、ラウリン酸1-エチルヘキシル、ミリスチン酸1-エチルヘキシル、パルミチン酸1-エチルヘキシル、カプロン酸2-メチルペンチル、カプリル酸2-メチルペンチル、カプリン酸2-メチルペンチル、ラウリン酸2-メチルペンチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸2-メチルブチル、ステアリン酸3-メチルブチル、ステアリン酸1-メチルヘプチル、ベヘン酸2-メチルブチル、ベヘン酸3-メチルブチル、ステアリン酸1-メチルヘプチル、ベヘン酸1-メチルヘプチル、カプロン酸1-エチルペンチル、パルミチン酸1-エチルペンチル、ステアリン酸1-メチルプロピル、ステアリン酸1-メチルオクチル、ステアリン酸1-メチルヘキシル、ラウリン酸1,1-ジメチルプロピル、カプリン酸1-メチルペンチル、パルミチン酸2-メチルヘキシル、ステアリン酸2-メチルヘキシル、ベヘン酸2-メチルヘキシル、ラウリン酸3,7-ジメチルオクチル、ミリスチン酸3,7-ジメチルオクチル、パルミチン酸3,7-ジメチルオクチル、ステアリン酸3,7-ジメチルオクチル、ベヘン酸3,7-ジメチルオクチル、オレイン酸ステアリル、オレイン酸ベヘニル、リノール酸ステアリル、リノール酸ベヘニル、エルカ酸3,7-ジメチルオクチル、エルカ酸ステアリル、エルカ酸イソステアリル、イソステアリン酸セチル、イソステアリン酸ステアリル、12-ヒドロキシステアリン酸2-メチルペンチル、18-ブロモステアリン酸2-エチルヘキシル、2-ケトミリスチン酸イソステアリル、2-フルオロミリスチン酸2-エチルヘキシル、酪酸セチル、酪酸ステアリル、酪酸ベヘニル等を例示できる。
【0029】
さらに、色濃度-温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して変色し、温度変化に依存して色彩記憶性を与えるためには、特公平4-17154号公報に記載された5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールとのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールとのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコールとのエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールとのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等を例示できる。
【0030】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコール又はn-ヘプチルアルコールと、炭素数10~16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17~23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
上記の脂肪酸エステル化合物としては、例えば、酢酸n-ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ノニル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸n-ペンタデシル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-ウンデシル、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘニン酸n-ノニル、ベヘニン酸n-ウンデシル、ベヘニン酸n-トリデシル、ベヘニン酸n-ペンタデシル等を例示できる。
【0031】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、例えば、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、2-ウンデカノン、3-ウンデカノン、4-ウンデカノン、5-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、4-ドデカノン、5-ドデカノン、2-トリデカノン、3-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、8-ペンタデカノン、2-ヘキサデカノン、3-ヘキサデカノン、9-ヘプタデカノン、2-ペンタデカノン、2-オクタデカノン、2-ノナデカノン、10-ノナデカノン、2-エイコサノン、11-エイコサノン、2-ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を例示できる。
さらには、総炭素数が12~24のアリールアルキルケトン類、例えば、n-オクタデカノフェノン、n-ヘプタデカノフェノン、n-ヘキサデカノフェノン、n-ペンタデカノフェノン、n-テトラデカノフェノン、4-n-ドデカアセトフェノン、n-トリデカノフェノン、4-n-ウンデカノアセトフェノン、n-ラウロフェノン、4-n-デカノアセトフェノン、n-ウンデカノフェノン、4-n-ノニルアセトフェノン、n-デカノフェノン、4-n-オクチルアセトフェノン、n-ノナノフェノン、4-n-ヘプチルアセトフェノン、n-オクタノフェノン、4-n-ヘキシルアセトフェノン、4-n-シクロヘキシルアセトフェノン、4-tert-ブチルプロピオフェノン、n-ヘプタフェノン、4-n-ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル-n-ブチルケトン、4-n-ブチルアセトフェノン、n-ヘキサノフェノン、4-イソブチルアセトフェノン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を例示できる。
【0032】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、例えば、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を例示できる。
【0033】
酸アミド類としては、例えば、アセトアミド、プロピオン酸アミド、酪酸アミド、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベンズアミド、カプロン酸アニリド、カプリル酸アニリド、カプリン酸アニリド、ラウリン酸アニリド、ミリスチン酸アニリド、パルミチン酸アニリド、ステアリン酸アニリド、ベヘニン酸アニリド、オレイン酸アニリド、エルカ酸アニリド、カプロン酸N-メチルアミド、カプリル酸N-メチルアミド、カプリン酸N-メチルアミド、ラウリン酸N-メチルアミド、ミリスチン酸N-メチルアミド、パルミチン酸N-メチルアミド、ステアリン酸N-メチルアミド、ベヘニン酸N-メチルアミド、オレイン酸N-メチルアミド、エルカ酸N-メチルアミド、ラウリン酸N-エチルアミド、ミリスチン酸N-エチルアミド、パルミチン酸N-エチルアミド、ステアリン酸N-エチルアミド、オレイン酸N-エチルアミド、ラウリン酸N-ブチルアミド、ミリスチン酸N-ブチルアミド、パルミチン酸N-ブチルアミド、ステアリン酸N-ブチルアミド、オレイン酸N-ブチルアミド、ラウリン酸N-オクチルアミド、ミリスチン酸N-オクチルアミド、パルミチン酸N-オクチルアミド、ステアリン酸N-オクチルアミド、オレイン酸N-オクチルアミド、ラウリン酸N-ドデシルアミド、ミリスチン酸N-ドデシルアミド、パルミチン酸N-ドデシルアミド、ステアリン酸N-ドデシルアミド、オレイン酸N-ドデシルアミド、ジラウリン酸アミド、ジミリスチン酸アミド、ジパルミチン酸アミド、ジステアリン酸アミド、ジオレイン酸アミド、トリラウリン酸アミド、トリミリスチン酸アミド、トリパルミチン酸アミド、トリステアリン酸アミド、トリオレイン酸アミド、コハク酸アミド、アジピン酸アミド、グルタル酸アミド、マロン酸アミド、アゼライン酸アミド、マレイン酸アミド、コハク酸N-メチルアミド、アジピン酸N-メチルアミド、グルタル酸N-メチルアミド、マロン酸N-メチルアミド、アゼライン酸N-メチルアミド、コハク酸N-エチルアミド、アジピン酸N-エチルアミド、グルタル酸N-エチルアミド、マロン酸N-エチルアミド、アゼライン酸N-エチルアミド、コハク酸N-ブチルアミド、アジピン酸N-ブチルアミド、グルタル酸N-ブチルアミド、マロン酸N-ブチルアミド、アジピン酸N-オクチルアミド、アジピン酸N-ドデシルアミド等を例示できる。
【0034】
また、(ハ)成分として下記式(1)で示される化合物であってもよい。
【化1】
〔式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、mは0~2の整数を示し、X
1及びX
2のいずれか一方は-(CH
2)
nOCOR
2又は(CH
2)
nCOOR
2、他方は水素原子を示し、nは0~2の整数を示し、R
2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y
1及びY
2はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、r及びpはそれぞれ独立して、1~3の整数を示す〕
式(1)で示される化合物のうち、R
1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好ましく、さらにR
1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好ましい。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記式(2)で示される化合物である。
【化2】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、好ましくは炭素数10~24のアルキル基であり、より好ましくは炭素数12~22のアルキル基である)
式(2)で示される化合物としては、例えば、オクタン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸4-ベンジルオキシフェニルエチル等を例示できる。
【0035】
さらに、(ハ)成分として下記式(3)で示される化合物であってもよい。
【化3】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ独立して、1~3の整数を示し、X及びYはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す)
式(3)で示される化合物としては、例えば、オクタン酸1,1-ジフェニルメチル、ノナン酸1,1-ジフェニルメチル、デカン酸1,1-ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1-ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1-ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1-ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1-ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1-ジフェニルメチル等を例示できる。
【0036】
さらに、(ハ)成分として下記式(4)で示される化合物であってもよい。
【化4】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1~3の整数を示し、nは1~20の整数を示す)
式(4)で示される化合物としては、例えば、マロン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(3-メチルベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(4-クロロベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2-〔4-(2,4-ジクロロベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-(4-ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-〔4-(2-メチルベンジルオキシ)フェニル〕エタノールとのジエステル等を例示できる。
【0037】
さらに、(ハ)成分として下記式(5)で示される化合物であってもよい。
【化5】
(式中、Rは炭素数1~21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1~3の整数を示す)
式(5)で示される化合物としては、例えば、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4-ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル等を例示できる。
【0038】
さらに、(ハ)成分として下記式(6)で示される化合物であってもよい。
【化6】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1~3の整数を示し、nは1~20の整数を示す)
式(6)で示される化合物としては、例えば、こはく酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2-フェノキシエタノールとのジエステル等を例示できる。
【0039】
さらに、(ハ)成分として下記式(7)で示される化合物であってもよい。
【化7】
(式中、Rは炭素数4~22のアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基、炭素数4~22のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す)
式(7)で示される化合物としては、例えば、4-フェニル安息香酸デシル、4-フェニル安息香酸ラウリル、4-フェニル安息香酸ミリスチル、4-フェニル安息香酸シクロヘキシルエチル、4-ビフェニル酢酸オクチル、4-ビフェニル酢酸ノニル、4-ビフェニル酢酸デシル、4-ビフェニル酢酸ラウリル、4-ビフェニル酢酸ミリスチル、4-ビフェニル酢酸トリデシル、4-ビフェニル酢酸ペンタデシル、4-ビフェニル酢酸セチル、4-ビフェニル酢酸シクロペンチル、4-ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル、4-ビフェニル酢酸ヘキシル等を例示できる。
【0040】
さらに、(ハ)成分として下記式(8)で示される化合物であってもよい。
【化8】
(式中、Rは炭素数3~18のアルキル基又は炭素数3~18の脂肪族アシル基を示し、Xは水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子又はメチル基を示し、Zは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す)
式(8)で示される化合物としては、例えば、4-ブトキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ペンチルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-テトラデシルオキシ安息香酸フェノキシエチル、4-ヒドロキシ安息香酸フェノキシエチルとドデカン酸とのエステル、バニリン酸フェノキシエチルのドデシルエーテル等を例示できる。
【0041】
さらに、(ハ)成分として下記式(9)で示される化合物であってもよい。
【化9】
(式中、Rは炭素数4~22のアルキル基、炭素数4~22のアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す)
式(9)で示される化合物としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸オクチルの安息香酸エステル、4-ヒドロキシ安息香酸デシルの安息香酸エステル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘプチルの4-メトキシ安息香酸エステル、4-ヒドロキシ安息香酸ドデシルの2-メトキシ安息香酸エステル、4-ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシルメチルの安息香酸エステル等を例示できる。
【0042】
さらに、(ハ)成分として下記式(10)で示される化合物であってもよい。
【化10】
(式中、Rは炭素数3~18のアルキル基、炭素数6~11のシクロアルキルアルキル基、炭素数5~7のシクロアルキル基、炭素数3~18のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す)
式(10)で示される化合物としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸ノニルのフェノキシエチルエーテル、4-ヒドロキシ安息香酸デシルのフェノキシエチルエーテル、4-ヒドロキシ安息香酸ウンデシルのフェノキシエチルエーテル、バニリン酸ドデシルのフェノキシエチルエーテル等を例示できる。
【0043】
さらに、(ハ)成分として下記式(11)で示される化合物であってもよい。
【化11】
(式中、Rは炭素数3~8のシクロアルキル基又は炭素数4~9のシクロアルキルアルキル基を示し、nは1~3の整数を示す)
式(11)で示される化合物としては、例えば、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンプロピオン酸とのジエステル、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとシクロヘキサンプロピオン酸とのジエステル等を例示できる。
【0044】
さらに、(ハ)成分として下記式(12)で示される化合物であってもよい。
【化12】
(式中、Rは炭素数3~17のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキルアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは1~3の整数を示す)
式(12)で示される化合物としては、例えば、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールジエチレングリコールエーテルとラウリン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールトリエチレングリコールエーテルとシクロヘキサンカルボン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとオクタン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとノナン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとデカン酸とのジエステル、4-フェニルフェノールエチレングリコールエーテルとミリスチン酸とのジエステル等を例示できる。
【0045】
また、電子受容性化合物として没食子酸エステル(特公昭51-44706号公報、特開2003-253149号公報)等を用いた加熱発色型(加熱により発色し、冷却により消色する)の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を適用することもできる(
図3参照)。
【0046】
可逆熱変色性組成物は、上記の(イ)成分、(ロ)成分、及び(ハ)成分を必須成分とする相溶体であり、各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1~100、好ましくは0.1~50、より好ましくは0.5~20、(ハ)成分5~200、好ましくは5~100、より好ましくは10~100の範囲である(上記した割合はいずれも質量部である)。
【0047】
可逆熱変色性組成物は、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料(以下、「マイクロカプセル顔料」又は「顔料」と表すことがある)を形成したり、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂中に分散させて可逆熱変色性樹脂粒子を形成したりして使用することができるが、可逆熱変色性組成物は、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料とすることが好ましい。これは、マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成することができ、さらに、種々の使用条件において、可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
【0048】
マイクロカプセル化は、公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン-ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。さらにマイクロカプセルの表面には、目的に応じてさらに二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供したりすることもできる。
なお、マイクロカプセル化の際に、一般の染料や顔料等の非熱変色性着色剤を配合することにより、有色(1)から有色(2)への互変的色変化をもたらすこともできる。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料は、内包物:壁膜の質量比が7:1~1:1であることが好ましく、内包物と壁膜の質量比が上記の範囲内にあることにより、発色時の色濃度及び鮮明性の低下を防止することができる。より好ましくは、内包物:壁膜の質量比は6:1~1:1である。
【0049】
可逆熱変色層は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を、バインダー樹脂を含有してなるビヒクルに分散させて調製した印刷インキや塗料等の液状組成物を、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、及び転写印刷等の印刷方法、又は、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、及び浸漬塗装等の塗布方法により、第一又は第二の透明性接着層上に設けられる層である。
可逆熱変色層としては、ベタ柄、円形、楕円形、正方形、長方形、各種文字、記号、図形、模様の他、人、動物、植物、果実、食料品、乗物、建物、天体等の像であってもよい。
【0050】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を分散させるビヒクルは、溶剤と、バインダー樹脂と、必要により配合される各種添加剤とから構成され、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の熱変色機能や感度等に影響を及ぼさなければ特に限定されるものではない。
なお、可逆熱変色層は、上記の液状組成物中の溶剤等の揮発成分が揮発して、バインダー樹脂により形成される層である。
また、ビヒクル中に可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と共に、一般の染料や顔料等の非熱変色性着色剤を配合することにより、可逆熱変色層に有色(1)から有色(2)への互変的色変化をもたらすことができる。
【0051】
溶剤としては、水や各種有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、n-オクタン、イソオクタン、n-ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ヘキシレングリコール等を例示できる。
【0052】
バインダー樹脂としては、例えば、アイオノマー樹脂、イソブチレン-無水マレイン酸共重合樹脂、アクリロニトリル-アクリリックススチレン共重合樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレン共重合樹脂、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニルグラフト共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルスチレン、アクリル酸エステル樹脂、ポリメチルメタクリレート、エポキシアクリレート樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール樹脂変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、エポキシ樹脂変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂、ポリイソブチレン、ブチルゴム、環化ゴム、塩素化ゴム、ポリビニルアルキルエーテル、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、石油系炭化水素樹脂、ケトン樹脂、トルエン樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、アクリル酸エステル系エマルジョン、メタクリル酸エステル系エマルジョン、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合樹脂エマルジョン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン、スチレン-アクリル酸エステル共重合樹脂エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョン、塩化ビニリデン系エマルジョン、ポリ酢酸ビニル系エマルジョン、ポリオレフィン系エマルジョン、ロジンエステル系エマルジョン、エポキシ樹脂系エマルジョン、ポリウレタン系エマルジョン、合成ゴムラテックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリスチレン、クマロンプラスチック、ポリブテン、フェノキシプラスチック、液状ポリブタジエン、液状ゴム、石油系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂等の合成樹脂、
セルロース誘導体、アルギン酸誘導体、ロジン誘導体、デンプン類、多糖類、ガム類、天然ゴム、セラック、寒天、カゼイン、ニカワ、ゼラチン、ポリテルペン等の天然又は半合成樹脂等を例示できる。
【0053】
本発明の撚糸及びそれを用いた布帛、頭飾品、玩具等の製品は、後述する水付着具や加熱変色具、冷熱変色具等によって簡便に変色させることができるが、温水や冷水等の液体を用いて変色させる場合、バインダー樹脂は水不溶性樹脂であることが好ましい。バインダー樹脂として水不溶性樹脂を用いることにより、撚糸及びそれを用いた製品を上記の水付着具や加熱変色具、冷熱変色具によって変色させる際にバインダー樹脂が溶解しないため、可逆熱変色層が変形したり欠損したりし難く、また、可逆熱変色層中に含有されるマイクロカプセル顔料が流動することを抑制して、可逆熱変色層に変色しない箇所が生じたり、可逆熱変色層の変色が不均一となることを抑制することができる。
【0054】
添加剤としては、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、潤滑剤、防黴剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
【0055】
本発明において、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1~50μm(好ましくは0.5~30μm、より好ましくは1~20μm)の範囲にあり、且つ、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が50~200質量部(好ましくは90~160質量部)の範囲で配合されることが好ましい。最も好ましくは、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径が1~20μmの範囲にあり、且つ、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が90~160質量部の範囲で配合されることである。
マイクロカプセル顔料の平均粒子径が上記の範囲内にあることにより、高濃度の発色性を示して可逆熱変色層の温度変化による色変化等が視認され易くなり、さらに、マイクロカプセル顔料のビヒクルへの分散安定性を向上させ易くなる。また、バインダー樹脂の固形分に対して、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が上記の範囲内で配合されることにより、可逆熱変色層に隣接して設けられる第一及び第二の透明性接着層の接着性が損なわれ難くなる。
よって、マイクロカプセル顔料の平均粒子径と、バインダー樹脂の固形分に対するマイクロカプセル顔料の配合割合が共に上記の範囲内にあることにより、可逆熱変色層の温度変化による色変化等の視認性がより良好であり、さらに各層間の接着性が向上して、可逆熱変色性平糸を加工して撚糸とする際の応力による、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルムからなる平糸、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の層間剥離の発生が抑制され、透明性樹脂フィルムからなる平糸及び透明性樹脂層により可逆熱変色層が擦過等の外的要因から保護される効果に優れた、光沢性を有する可逆熱変色性撚糸を容易に得ることができる。
なお、「バインダー樹脂の固形分」とは、バインダー樹脂自体の固形分だけでなく、バインダー樹脂が可逆熱変色層を形成する際に作用する架橋剤や硬化剤等の添加剤の固形分も含むものである。
【0056】
平均粒子径の測定は、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア〔(株)マウンテック製、製品名:マックビュー〕にて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定した値である。
また、全ての粒子或いは大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合は、粒度分布測定装置〔ベックマン・コールター(株)製、製品名:Multisizer 4e〕にて、コールター法により等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定することも可能である。
さらに、上記のソフトウェア又はコールター法による測定装置を用いて計測した数値を基にして、キャリブレーションを行ったレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製、製品名:LA-300〕にて、体積基準の粒子径及び平均粒子径を測定しても良い。
【0057】
可逆熱変色層は、平均厚さ(T)が1~50μm(好ましくは3~40μm、より好ましくは5~30μm)の範囲にあり、且つ、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D)と可逆熱変色層の平均厚さ(T)が、下記式(I)を満たすことが好ましい。
0.002≦D/T<1 (I)
最も好ましくは、可逆熱変色層の平均厚さ(T)が5~30μmの範囲にあり、且つ、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D)と可逆熱変色層の平均厚さ(T)が、上記式(I)を満たすことである。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径を可逆熱変色層の平均厚さで除した値(D/T)が上記の範囲内にあることにより、可逆熱変色性撚糸が柔軟な風合いを有すると共に、可逆熱変色層の温度変化による色変化等の視認性が良好であり、また、可逆熱変色層に隣接して設けられる第一及び第二の透明性接着層の接着性が損なわれ難くなる。
よって、可逆熱変色層の平均厚さ(T)が上記の範囲内にあり、且つ、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D)と可逆熱変色層の平均厚さ(T)が上記式(I)を満たすことにより、柔軟な風合いを有し、可逆熱変色層の温度変化による色変化等の視認性が良好であり、さらに各層間の接着性が向上して、可逆熱変色性平糸を加工して撚糸とする際の応力による、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルムからなる平糸、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の層間剥離の発生が抑制され、透明性樹脂フィルムからなる平糸及び透明性樹脂層により可逆熱変色層が擦過等の外的要因から保護される効果に優れた、光沢性を有する可逆熱変色性撚糸を容易に得ることができる。
なお、可逆熱変色層の平均厚さ(T)は、光学顕微鏡や電子顕微鏡による可逆熱変色層の断面写真を元に、目視による測定や画像解析ソフトにより、可逆熱変色層の最大厚さ(T1)と最小厚さ(T2)を算出し、下記式(II)により求めた値である。
T=(T1+T2)/2 (II)
【0058】
透明性樹脂層は第二の透明性接着層上に設けられ、可逆熱変色性撚糸に光沢性を付与することができ、さらに、可逆熱変色性平糸を加工して撚糸とする際の応力や、擦過等の外的要因による、第二の透明性接着層及び可逆熱変色層の損傷を防止して、可逆熱変色層の耐久性に優れた、光沢性を有する可逆熱変色性撚糸とすることができる。
【0059】
透明性樹脂層は、透明性樹脂を含有してなる印刷インキや塗料等の液状組成物を、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、及び転写印刷等の印刷方法、又は、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、及び浸漬塗装等の塗布方法により、第二の透明性接着層上に設けられる層である。
【0060】
上記の液状組成物は、溶剤と、透明性樹脂と、必要により配合される各種添加剤とから構成され、透明性樹脂を溶剤に溶解又は分散する、或いは、エマルジョン等の形態で使用される。液状組成物は、隣接する第二の透明性接着層の接着性に影響を及ぼさず、また、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認できれば特に限定されるものではない。
なお、透明性樹脂層は、上記の液状組成物中の溶剤等の揮発成分が揮発して、透明性樹脂により形成される層である。
【0061】
溶剤としては、水や各種有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、n-オクタン、イソオクタン、n-ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ヘキシレングリコール等を例示できる。
【0062】
透明性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ-アクリレート共重合樹脂、ウレタン樹脂、エチレン樹脂、ウレタン-アクリル共重合樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレア樹脂、尿素樹脂、尿素-メラミン共重合樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、マレイン化ロジン、ビニルブチラール樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂等の熱硬化性樹脂、二液硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等を例示できるが、耐擦過性に優れ、第二の透明性接着層及び可逆熱変色層の損傷を防止し易いことから、架橋性樹脂が好適である。
架橋性樹脂は、樹脂分子中に反応性の官能基を有し、架橋剤と反応、或いは自己重合や自己縮合等の架橋反応により三次元構造を形成可能な樹脂であり、緻密な構造の透明性樹脂層を形成できる。架橋性樹脂としては、例えば、重合開始剤とアクリル酸エステル系樹脂からなる紫外線硬化型樹脂、イソシアネート系硬化剤とポリオール系樹脂、アミン系硬化剤とエポキシ樹脂、カルボジイミド系硬化剤とポリエステル系樹脂からなる熱硬化性樹脂等を例示できる。
透明性樹脂は、一種又は二種以上を適宜混合して用いることができる。
【0063】
添加剤としては、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、潤滑剤、防黴剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
【0064】
また、透明性樹脂層としては、透明性樹脂フィルムを用いることが好適である。透明性樹脂フィルムは、可逆熱変色性平糸を加工して撚糸とする際の応力や、擦過等の外的要因による、第二の透明性接着層及び可逆熱変色層の損傷を防止する効果によりいっそう優れ、可逆熱変色層の耐久性をよりいっそう向上させた可逆熱変色性撚糸とすることができる。
透明性樹脂フィルムとしては、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認できるものであれば特に限定されるものではなく、上記した、平糸に用いられる透明性樹脂フィルムと同様のものを用いることができる。
【0065】
また、透明性樹脂層は光沢性に加えて光輝性を有していてもよく、透明性樹脂層中に、後述する透明性金属光沢顔料若しくは透明性真珠光沢層を含有させる、又は、透明性樹脂層として、透明性光輝性樹脂フィルムを用いることにより、光輝性を有する透明性樹脂層とすることができる。
透明性光輝性樹脂フィルムとしては、後述する、透明性金属光沢顔料を用いた単一層又は積層構成の透明性金属光沢性樹脂フィルム、透明性真珠光沢顔料を用いた単一層又は積層構成の透明性真珠光沢性樹脂フィルム、透明性多層フィルムからなる透明性真珠光沢性樹脂フィルム、透明性ホログラム性樹脂フィルム、透明性虹彩性樹脂フィルム、透明性光反射性樹脂フィルム等を例示できる。
透明性樹脂層が光輝性を有することにより、前述の、応力や擦過等の外的要因による、第二の透明性接着層及び可逆熱変色層の損傷を防止する効果に加えて、可逆熱変色性撚糸に光輝性を付与することができ、可逆熱変色層の温度変化による色変化等と共に光輝性が視認されるようになるため、色変化の多様性を満足させる可逆熱変色性撚糸とすることができる。
光輝性を有する透明性樹脂層としては、透明性光輝性樹脂フィルムを用いることが好ましく、可逆熱変色性平糸を加工して撚糸とする際の応力や、擦過等の外的要因による、第二の透明性接着層及び可逆熱変色層の損傷を防止する効果に優れ、可逆熱変色層の耐久性を向上させることができる。
【0066】
透明性樹脂層の厚さは3~50μm、好ましくは6~25μm、より好ましくは6~20μmの範囲が実用を満たす。透明性樹脂層の厚さが50μmを超えると、可逆熱変色性平糸を撚糸に加工し難く、また、糸としての柔軟な風合いを損ない易くなる。一方、厚さが3μm未満では厚さが薄すぎるため、第二の透明性接着層及び可逆熱変色層を、応力や擦過等の外的要因から保護する効果に乏しくなり易くなる。
【0067】
透明性樹脂層が有する透明性とは、可視光領域(JIS B 7079で規定される380~780nmの波長領域)の波長の光を透過する性質のことであり、透明性樹脂層の可視光領域における光透過率(可視光透過率)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。可視光透過率が5%未満の場合、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認し難くなる。
なお、上記の可視光透過率は,可視光領域の波長の光を透過する透明基材上に透明性樹脂層を設け、分光光度計〔(株)日立製作所製、製品名:U-3210〕を用いて380nmから780nmの波長領域で測定し、最大値と最小値の中間値とした。
【0068】
本発明の撚糸を構成する第一の透明性接着層は、透明性樹脂フィルムからなる平糸と可逆熱変色層の間に設けられ、透明性樹脂フィルムからなる平糸に対する可逆熱変色層の接着性を向上させるものである。また、第二の透明性接着層は、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間に設けられ、透明性樹脂層に対する可逆熱変色層の接着性を向上させるものである。よって、可逆熱変色性平糸を加工して撚糸とする際の応力による、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルムからなる平糸、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の層間剥離の発生が抑制され、透明性樹脂フィルムからなる平糸及び透明性樹脂層により可逆熱変色層が応力や擦過等の外的要因から保護され、可逆熱変色層の耐久性に優れた、光沢性を有する可逆熱変色性撚糸を得ることができる。
また、第一及び第二の透明性接着層中には光安定剤を含有させることもでき、第一の透明性接着層が可逆熱変色層の一方の面に設けられ、第二の透明性接着層が可逆熱変色層の他方の面に設けられることにより、可逆熱変色層の耐光性を向上させることができる。よって、光安定剤を含有してなる第一及び第二の透明性接着層を設けることにより、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルムからなる平糸、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性を向上させ、可逆熱変色性平糸を加工して撚糸とする際の応力による、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルムからなる平糸、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の層間剥離の発生が抑制され、透明性樹脂フィルムからなる平糸及び透明性樹脂層により可逆熱変色層が応力や擦過等の外的要因から保護されることに加えて、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止することができる。つまり、応力や擦過、光等の外的要因から可逆熱変色層を保護する効果を発現させて、可逆熱変色層の耐久性や耐光性に優れた、光沢性を有する可逆熱変色性撚糸を得ることができるため、第一及び第二の透明性接着層には光安定剤を含有させることが好ましい。
【0069】
第一及び第二の透明性接着層に含有される光安定剤は、(イ)成分、(ロ)成分、及び(ハ)成分からなる可逆熱変色性組成物の光劣化を防止することができる。
光安定剤のうち、紫外線吸収剤は、太陽光等に含まれる紫外線を効果的にカットして、(イ)成分の光反応による励起状態によって生ずる光劣化を防止するものである。また、酸化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤等は光による酸化反応を抑制するものである。
光安定剤は、(イ)成分1質量%に対して、好ましくは0.3~24質量%、より好ましくは0.3~16質量%の割合で配合される。
光安定剤は、一種又は二種以上を適宜混合して用いることができる。
【0070】
紫外吸収収剤としては、例えば、
2,4-ヒドロキシベンゾフェノン、
2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、
2,2′-ジヒドロキシ-4,4′-ジメトキシベンゾフェノン、
2,2′,4,4′-テトラヒドロキシベンゾフェノン、
2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、
2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、
ビス-(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)-メタン、
2-(3′,5′-ジ-tert-アミル-2′-ヒドロキシフェニル)ベンゾフェノン、
4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、
2-ヒドロキシ-4-オクタデシルオキシベンゾフェノン、
2,2′-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、
4-ベンジルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、
2-(3′,5′-ジ-tert-アミル-2′-ヒドロキシフェニル)ベンゾフェノン
等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、
サリチル酸フェニル、
サリチル酸4-tert-ブチルフェニル、
サリチル酸4-オクチルフェニル、
2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-4-ヒドロキシベンゾエート、
1-ヒドロキシベンゾエート、
3-tert-ブチル-1-ヒドロキシベンゾエート、
1-ヒドロキシ-3-tert-オクチルベンゾエート、
レゾルシノールモノベンゾエート
等のサリチル酸系紫外線吸収剤、
2-エチル-2-シアノ-3,3′-ジフェニルアクリレート、
2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3′-ジフェニルアクリレート、
2-エチルヘキシル-2-シアノ-3-フェニルシンナート
等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、
2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
2-〔3,5-ビス(a,a-ジメチルベンジル)-2-ヒドロキシフェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール、
2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、
2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、
2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、
2-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、
β-〔3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオン酸-ポリエチレングリコール300エステル、
2-(3-ドデシル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
ビス{β-〔3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル〕}プロピオン酸-ポリエチレングリコール300エステル、
2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル-5-プロピルオクチレート)-5-クロロベンゾトリアゾール、
2-〔2-ヒドロキシフェニル-3,5-ジ-(1,1′-ジメチルベンジル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール、
2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、
2-(3-tert-ブチル-5-オクチルオキシカルボニルエチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、
2-(2-ヒドロキシ-5-テトラオクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
2-(2-ヒドロキシ-4-オクトオキシフェニル)ベンゾトリアゾール、
2-〔2′-ヒドロキシ-3′-(3″,4″,5″,6″-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5′-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、
2-(5-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール
等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、
エタンジアミド-N-(2-エトキシフェニル)-N′-(4-イソドデシルフェニル)、
2,2,4,4-テトラメチル-20-(β-ラウリル-オキシカルボニル)-エチル-7-オキサ-3,20-ジアゾジスピロ(5,1,11,2)ヘンエイコ酸-21-オン
等の蓚酸アニリド系紫外線吸収剤、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ペントキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジフェニル-6-〔2-ヒドロキシ-4-(2-ブトキシエトキシ)フェニル〕-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ペントキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ジ-p-トレイル-6-〔2-ヒドロキシ-4-(2-ヘキシルオキシエトキシ)フェニル〕-1,3,5-トリアジン、
2-{4-〔(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ〕-2-ヒドロキシフェニル}-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-{4-〔(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ〕-2-ヒドロキシフェニル}-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2-[4-{〔2-ヒドロキシ-3-(2′-エチル)ヘキシル〕オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、
2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-〔2,4-ビス(ブチルオキシフェニル)〕-1,3,5-トリアジン、
2-{2-ヒドロキシ-4-〔(1-オクチルオキシカルボニルエトキシ)フェニル〕}-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン
等のトリアジン系紫外線吸収剤
等を例示できる。
【0071】
酸化防止剤(老化防止剤)としては、例えば、
コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、
ポリ{〔6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2-4-ジイル〕〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕}ヘキサメチレン、
2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタペチル-4-ピペリジル)、
N,N′-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス〔N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタペチル-4-ピペリジル)アミノ〕-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、
ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバシン酸)、
4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、
ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、
8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4,5]デカン-2,4-ジオン
等のヒンダードアミン系酸化防止剤、
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、
2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、
2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、
オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、
2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、
4,4-チオビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、
2,2-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、
4,4-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、
3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-〔β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル}、
2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、
1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、
1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、
テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、
2,2-エチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、
ビス〔3,3-ビス-(4′-ヒドロキシ-3′-tert-ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕-グリコールエステル、
1,3,5-トリス(3′,5′-ジ-tert-ブチル-4′-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-[1H,3H,5H]-トリオン、
トコフェノール、
1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、
ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、
トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、
1,6-ヘキサジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、
2,2-チオエチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、
N,N′-ヘキサメチレンビス(3,5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、
トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、
2,2,4-トリメチル-1,2-ハイドロキノン、
スチレートフェノール、
2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、
ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート
等のフェノール系酸化防止剤、
ジラウリル-3,3′-チオジプロピオネート、
ジミリスチル-3,3′-チオジプロピオネート、
ジステアリル-3,3′-チオジプロピオネート、
ステアリルチオプロピルアミド
等の硫黄系酸化防止剤、
トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、
ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、
3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスファネート-ジエチルエステル、
トリフェニルホスファイト、
ジフェニルイソデシルホスファイト、
フェニルイソデシルホスファイト、
4,4′-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、
オクタデシルホスファイト、
トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、
ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、
9,10-ジヒドロキシ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン、
10-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロキシ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、
10-デシロキシ-9,10-ジヒドロキシ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン、
サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、
サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、
2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、
2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、
オクチル化ジフェニルアミン
等のリン酸系酸化防止剤
等を例示できる。
【0072】
一重項酸素消光剤としては、カロチン類、色素類、アミン類、フェノール類、ニッケル錯体類、スルフィド類等が挙げられ、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、β-カロチン、1,3-シクロヘキサジエン、2-ジエチルアミノメチルフラン、2-フェニルアミノメチルフラン、9-ジエチルアミノメチルアントラセン、5-ジエチルアミノメチル-6-フェニル-3,4-ジヒドロキシピラン、ニッケルジメチルジチオカルバメート、ニッケル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-O-エチルホスホナート、ニッケル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-O-ブチルホスホナート、ニッケル〔2,2′-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)〕n-ブチルアミン、ニッケル〔2,2′-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)〕2-エチルヘキシルアミン、ニッケルビス〔2,2′-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)〕、ニッケルビス〔2,2′-スルホンビス(4-オクチルフェノラート)〕、ニッケルビス(2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル-N-n-ブチルアルドイミン)、ニッケルビス(ジチオベンジル)、ニッケルビス(ジチオビアセチル)等を例示できる。
【0073】
スーパーオキシドアニオン消光剤としては、例えば、スーパーオキシドジスムターゼとコバルト、及びニッケルの錯体等を例示できる。
【0074】
オゾン消光剤としては、例えば、4,4′-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、N-フェニル-β-ナフチルアミン、α-トコフェロール、4,4′-メチレン-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、P,P′-ジアミノジフェニルメタン、2,2′-メチレン-ビス(6-tert-ブチル-p-クレゾール)、N,N′-ジフェニル-P-フェニレンジアミン、N,N′-ジフェニルエチレンジアミン、N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン等を例示できる。
【0075】
第一及び第二の透明性接着層は、透明性接着性樹脂を含有してなる印刷インキや塗料等の液状組成物を、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、及び転写印刷等の印刷方法、又は、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、及び浸漬塗装等の塗布方法により、透明性樹脂フィルムからなる平糸、可逆熱変色層、又は透明性樹脂層上に、それぞれ設けられる層である。
【0076】
上記の液状組成物は、溶剤と、透明性接着性樹脂と、必要により配合される各種添加剤とから構成されるが、さらに光安定剤を含有させることが好ましい。透明性接着性樹脂は溶剤に溶解又は分散する、或いは、エマルジョン等の形態で使用される。液状組成物は、隣接する可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認され、また、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の熱変色機能や感度等に影響を及ぼさなければ特に限定されるものではない。
なお、第一及び第二の透明性接着層は、上記の液状組成物中の溶剤等の揮発成分が揮発して、透明性接着性樹脂により形成される層である。
【0077】
溶剤としては、水や各種有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、n-オクタン、イソオクタン、n-ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ヘキシレングリコール等を例示できる。
【0078】
透明性接着性樹脂としては、例えば、イソシアネート樹脂、ウレア樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル-ウレタン共重合樹脂等を例示できる。
第一の透明性接着層と第二の透明性接着層とで、異なる種類の透明性接着性樹脂を用いることができるが、同一の透明性接着性樹脂を用いることが好ましい。
上記の樹脂の中でも、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル-ウレタン共重合樹脂等の可撓性を有する樹脂が好ましく、可逆熱変色性平糸を加工して撚糸とする際の平糸の屈曲に対して接着層が追従し、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性が保持され易くなるため、層間剥離の発生を抑制することができる。
透明性接着性樹脂は、一種又は二種以上を適宜混合して用いることができる。
【0079】
本発明の撚糸及びそれを用いた布帛、頭飾品、玩具等の製品は、後述する水付着具や加熱変色具、冷熱変色具等によって簡便に変色させることができるが、温水や冷水等の液体を用いて変色させる場合、透明性接着性樹脂は水不溶性樹脂であることが好ましい。バインダー樹脂として水不溶性樹脂を用いることにより、撚糸及びそれを用いた製品を上記の水付着具や加熱変色具、冷熱変色具によって変色させる際に透明性接着性樹脂が溶解しないため、第一又は第二の透明性接着層が変形や欠損して接着性が損なわれることを抑制することができる。
【0080】
添加剤としては、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、潤滑剤、防黴剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
【0081】
第一及び第二の透明性接着層の厚さは0.5~20μm、好ましくは1~10μm、より好ましくは2~5μmの範囲が実用を満たす。第一及び第二の透明性接着層の厚さが20μmを超えると、可逆熱変色性平糸を撚糸に加工し難く、また、糸としての柔軟な風合いを損ない易くなる。一方、厚さが0.5μm未満では、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルムからなる平糸、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性を向上させる効果を発現し難くなり、また、接着層中に光安定剤を含む場合、耐光性を向上させる効果に乏しくなり易くなる。
【0082】
第一及び第二の透明性接着層が有する透明性とは、可視光領域(JIS B 7079で規定される380~780nmの波長領域)の波長の光を透過する性質のことであり、第一及び第二の透明性接着層の可視光領域における光透過率(可視光透過率)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。可視光透過率が5%未満の場合、隣接する可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化等が視認し難くなる。
なお、上記の可視光透過率は,可視光領域の波長の光を透過する透明基材上に第一又は第二の透明性接着層を設け、分光光度計〔(株)日立製作所製、製品名:U-3210〕を用いて380nmから780nmの波長領域で測定し、最大値と最小値の中間値とした。
【0083】
図4に示す通り、本発明の可逆熱変色性撚糸(1)は、上記の可逆熱変色性平糸(2)に、右(S)撚り又は左(Z)撚りをかけることにより片側方向にのみに撚りがかかった、片撚り形態の撚糸である。
従来、可逆熱変色層中に含有されるマイクロカプセル顔料は、汎用の非熱変色性着色剤よりも粒子径が大きく、可逆熱変色層の厚さが大きくなり易いため、可逆熱変色性平糸は、硬い触感となり易いという問題があった。しかしながら、可逆熱変色性平糸を加工して撚糸とすることにより糸に膨らみを持たせることができ、柔らかい触感となるため、可逆熱変色性平糸は撚糸とすることが好適である。
また、可逆熱変色性平糸は、可逆熱変色層が一方の広幅の面、又は他方の広幅の面の二方向からしか視認されないため、視認する方向によっては可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認され難いことがあった。しかしながら、可逆熱変色性平糸を加工して撚糸とすると、可逆熱変色層が撚糸の全面から視認されるようになり、可逆熱変色層の温度変化による色変化等が視認され易くなるため、可逆熱変色性平糸は撚糸とすることが好適である。
図4に示される片撚り形態の撚糸において、可逆熱変色性平糸に撚りをかける回数は、平糸1mあたり100~1000回であることが好ましい。撚りをかける回数が上記の範囲内にあることにより、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が撚糸の全面からよりいっそう視認し易くなると共に、柔らかい触感を有する撚糸とし易くなる。
【0084】
また、本発明の可逆熱変色性撚糸は、上記の可逆熱変色性平糸と、糸とからなる構成とすることもできる。
図5に示す通り、可逆熱変色性平糸(2)と糸(8)を引き揃えて、右(S)撚り又は左(Z)撚りをかけることにより得られる、片側方向にのみ撚りがかかった片撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)が挙げられる。また、可逆熱変色性平糸を芯糸として、芯糸に2本の糸をたすき状に撚り合わせた、たすき撚り形態の撚糸等が挙げられる。
また、
図6に示す通り、糸(8)を芯糸として、芯糸の周囲に可逆熱変色性平糸(2)が設けられる形態の可逆熱変色性撚糸(1)とすることもでき、形態としては、丸撚り、蛇腹撚り、羽衣撚り等の形態が挙げられる。
可逆熱変色性平糸と、糸とからなる可逆熱変色性撚糸は、可逆熱変色性平糸のみを加工して得られる片撚り形態の可逆熱変色性撚糸とは異なる風合い、装飾性を有すると共に、撚糸としての耐久性を向上させることができるため、好適に用いられる。
図5に示される片撚り形態の撚糸において、可逆熱変色性平糸及び糸に撚りをかける回数は、平糸1mあたり100~1000回であることが好ましい。撚りをかける回数が上記の範囲内にあることにより、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が撚糸の全面からよりいっそう視認し易くなると共に、柔らかい触感を有し、さらに耐久性により優れる撚糸とし易くなる。
【0085】
糸としては特に限定されず汎用のものを用いることができるが、例えば、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、キュプラ等の化学繊維、綿糸、絹糸、麻糸、毛糸等の天然繊維、混紡糸や混撚糸、ラメ糸、モール糸等を例示できる。また、紙、合成紙、編布、織布、及び不織布等の布帛、合成皮革、レザー、プラスチック、エラストマー、樹脂フィルム、ゴム等からなる平糸も用いることができる。
【0086】
可逆熱変色性平糸がカール性を有する場合、製品等に適用する際に取り扱い難いことがあるが、カール性を有する可逆熱変色性平糸は加工して撚糸とすることによりカール性が抑制され、製品等に適用する際に容易に取り扱うことができることから、可逆熱変色性平糸は撚糸とすることが好適である。
【0087】
図7に示す通り、本発明に適用される可逆熱変色性平糸(2)は、可逆熱変色層(5)の一方の面に第一の透明性接着層(4)、他方の面に第二の透明性接着層(6)が設けられ、第一の透明性接着層の外面(第一の透明性接着層の、可逆熱変色層が設けられる反対の面)に透明性樹脂フィルム(3)からなる平糸が設けられ、第二の透明性接着層の外面(第二の透明性接着層の、可逆熱変色層が設けられる反対の面)に透明性樹脂層(7)が設けられてなる構成であるが、
図8に示す通り、透明性樹脂層(7)が、平糸を構成する透明性樹脂フィルムと同一の透明性樹脂フィルム(3)であり、且つ、第一の透明性接着層中に含有される透明性接着性樹脂と第二の透明性接着層中に含有される透明性接着性樹脂が同一の樹脂である可逆熱変色性平糸が、最も好適である。
上記構成の可逆熱変色性平糸は、可逆熱変色層を中間層として、可逆熱変色層の一方の面と他方の面にそれぞれ設けられる層が同一である。よって、第一及び第二の透明性接着層を形成する過程で生じる透明性接着性樹脂の収縮が、可逆熱変色層の一方の面と他方の面のそれぞれで均一に起こり易く異方性を生じ難いため、可逆熱変色性平糸にカール性が生じることが抑制され、撚糸に加工する際に可逆熱変色性平糸を容易に取り扱うことができる。また、可逆熱変色性撚糸の製造時において、透明性樹脂フィルムの熱膨張や応力による歪も、可逆熱変色層の一方の面と他方の面のそれぞれで均一に起こり易いため、カール性が抑制された可逆熱変色性撚糸を得ることができ、可逆熱変色性撚糸を製品等に適用する際の取り扱い性に優れる。
【0088】
本発明の片撚り形態の撚糸は、可逆熱変色性平糸に撚りをかけることにより周方向から可逆熱変色層が視認されるため、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認される。
可逆熱変色性平糸と、糸とからなる片撚り形態の撚糸において、糸としては平糸が好ましく、可逆熱変色性平糸の広幅の面と糸(平糸)の広幅の面が互いに密着し易くなるため、撚糸の耐久性をより向上させることができる。さらに糸としては、可逆熱変色性平糸と略同一の幅である平糸がより好ましく、略同一の幅とすることにより、可逆熱変色性平糸の広幅の面と糸(平糸)の広幅の面における密着性を高めると共に、可逆熱変色性平糸を撚糸に加工する際に安定して撚ることができるため、撚糸の耐久性をより向上させることができ、好適である。ここで「略同一」とは、可逆熱変色性平糸の幅(W1)と、可逆熱変色性平糸と共に撚られる糸(平糸)の幅(W2)が、全く同一の幅であること表し、また、本発明においては、可逆熱変色性平糸の幅(W1)と、可逆熱変色性平糸と共に撚られる糸(平糸)の幅(W2)が、0.8≦W2/W1≦1.2を満たすことも含んでいる。可逆熱変色性平糸の幅に対する、糸(平糸)の幅の比率(W2/W1)が上記の範囲内にあれば、可逆熱変色性平糸の幅と糸(平糸)の幅は同一であるとみなすことができる。好ましくは、0.85≦W2/W1≦1.15であり、より好ましくは、0.9≦W2/W1≦1.1である。
平糸としては透明性樹脂フィルムからなる平糸が好ましく、撚糸の耐久性と耐熱性を向上させながらも、可逆熱変色層の温度変化による色変化等の視認性を向上させることができる。
【0089】
本発明の、糸を芯糸として、芯糸の周囲に可逆熱変色性平糸が設けられる形態の撚糸は、可逆熱変色層が視認できる箇所でのみ、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認される。そのため、芯糸の周囲に可逆熱変色層が隙間なく巻かれた形態の撚糸(例えば、丸撚り形態の撚糸)は、可逆熱変色層の温度変化による色変化等が撚糸の全面で視認され、芯糸の周囲に可逆熱変色性平糸が緩く巻かれた形態の撚糸(例えば、蛇腹撚り形態の撚糸)は、可逆熱変色層の温度変化による色変化等と、芯糸の色が交互に視認される。
糸としては、断面形状が円形である糸が好ましく、糸の周囲に可逆熱変色性平糸を設ける際に、糸の外面と可逆熱変色性平糸の広幅の面が密着し易いため、撚糸の耐久性をより向上させることができる。円形としては、真円形状や楕円形状が挙げられるが、真円形状が好ましい。
また、糸としては、透明性を有する糸が好ましく、芯糸を通して可逆熱変色性平糸の可逆熱変色層が視認されるため、可逆熱変色層の温度変化による色変化等が撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認され易くなり、好適である。
【0090】
上記した糸は、さらに、金属光沢性、真珠光沢性、ホログラム性、虹彩性、光干渉性、光反射性のいずれかから選ばれる光学性状を有する光輝性糸であることが好ましい。光輝性糸を用いることによって、可逆熱変色性撚糸に光輝性を付与することができ、温度変化による色変化等と光輝性が同時に視認されるようになるため、色変化の多様性を満足させる可逆熱変色性撚糸とすることができる。光輝性糸を用いる場合、可逆熱変色性平糸に撚りをかける回数は、平糸1mあたり100~1000回であることが好ましい。撚りをかける回数が上記の範囲内にあることにより、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化と、光輝性が、撚糸の全面からよりいっそう均一且つ明瞭に視認され易くなると共に、柔らかい触感を有し、さらに耐久性に優れる撚糸とし易くなる。
【0091】
可逆熱変色性平糸及び光輝性糸が透明性を有しておらず、可逆熱変色性平糸側から光輝性糸が視認されない、又は、光輝性糸側から可逆熱変色性平糸が視認されない場合であっても、本発明の片撚り形態の撚糸は、可逆熱変色性平糸と光輝性糸を一緒にして撚りをかけることにより、可逆熱変色層の温度変化による色変化等と光輝性糸が示す光輝性が同時に視認され、撚糸の全面で均一に光輝性を伴う色変化を視認することができる。
可逆熱変色性平糸と、糸とからなる片撚り形態の撚糸において、光輝性糸としては光輝性平糸が好ましく、可逆熱変色性平糸の広幅の面と光輝性糸(光輝性平糸)の広幅の面が互いに密着し易くなるため、撚糸の耐久性をより向上させることができると共に、可逆熱変色層と光輝性平糸により発現する光輝性を伴う色変化を、より明瞭に視認することができる。さらに光輝性糸としては、可逆熱変色性平糸と略同一の幅である光輝性平糸がより好ましく、略同一の幅とすることにより、可逆熱変色性平糸の広幅の面と光輝性糸(光輝性平糸)の広幅の面における密着性を高め、光輝性を伴う色変化をよりいっそう明瞭に視認することができ、さらに可逆熱変色性平糸を撚糸に加工する際に、撚糸としての形態が安定し易くなるため好適である。ここで「略同一」とは、可逆熱変色性平糸の幅(W1)と、可逆熱変色性平糸と共に撚られる光輝性糸(光輝性平糸)の幅(W2)が、全く同一の幅であること表し、また、本発明においては、可逆熱変色性平糸の幅(W1)と、可逆熱変色性平糸と共に撚られる光輝性糸(光輝性平糸)の幅(W2)が、0.8≦W2/W1≦1.2を満たすことも含んでいる。可逆熱変色性平糸の幅に対する、光輝性糸(光輝性平糸)の幅の比率(W2/W1)が上記の範囲内にあれば、可逆熱変色性平糸の幅と光輝性糸(光輝性平糸)の幅は同一であるとみなすことができる。好ましくは、0.85≦W2/W1≦1.15であり、より好ましくは、0.9≦W2/W1≦1.1である。
【0092】
本発明の、光輝性糸を芯糸として、芯糸の周囲に可逆熱変色性平糸が設けられる形態の撚糸は、可逆熱変色層が視認できる箇所でのみ可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認される。そのため、芯糸の周囲に可逆熱変色性平糸が緩く巻かれた形態の撚糸(例えば、蛇腹撚り形態の撚糸)では、可逆熱変色層の温度変化による色変化と芯糸による光輝性が交互に視認される。
糸としては、断面形状が円形である光輝性糸が好ましく、糸の周囲に可逆熱変色性平糸を設ける際に、糸の外面と可逆熱変色性平糸の広幅の面が密着し易いため、撚糸の耐久性を向上させることができる。円形としては、真円形状や楕円形状が挙げられるが、真円形状が好ましい。
【0093】
金属光沢性を有する光輝性糸としては、汎用の糸に金属光沢層を設けてなる糸、支持体上に金属光沢層を設けてなる光輝性積層体からなる平糸、金属光沢性を有する光輝性樹脂フィルムからなる平糸等が挙げられる。
金属光沢層としては、金属板や金属箔を設けることにより形成される層、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、ニッケル等の金属を用いた蒸着により形成される層、金属光沢顔料をビヒクル中に分散させて調製した印刷インキや塗料等の液状組成物を用いて、スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷方法、又は、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等の塗布方法により形成される層等が挙げられ、上記の金属光沢層を、糸又は支持体上に形成することにより、金属光沢層を設けてなる積層構成の糸や、光輝性積層体を得ることができる。
なお、液状組成物により形成される金属光沢層は、液状組成物中の溶剤等の揮発成分が揮発して、それ以外の化合物により形成される層である。
【0094】
金属光沢性を有する光輝性樹脂フィルムは、金属光沢顔料を透明性熱可塑性樹脂又は透明性熱硬化性樹脂中に溶融ブレンドさせて、ペレット、粉末、又はペースト等の成形用樹脂組成物を調製し、押出成形、カレンダー成形、インフレーション成形等の各種成形手段によりシート状、フィルム状等の平面状形態に成形することにより得ることができ、単一層の樹脂フィルムである。
金属光沢性を有する光輝性糸としては、金属光沢層を有する積層構成の糸、金属光沢層を有する光輝性積層体からなる平糸、単一層の光輝性樹脂フィルムからなる平糸を用いることができる。
なお、上記の光輝性積層体や光輝性樹脂フィルムを、適宜幅にスリッターで裁断することによって、金属光沢性を有する平糸を得ることができる。
【0095】
金属光沢顔料としては、微細なアルミニウム、銅、真鍮、金、銀、ニッケル等を粉末状にした金属粉末、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂等に常法により金属を蒸着したものを粉末状にした金属粉末、ガラス片等の芯物質の表面を、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化バナジウム、酸化鉄等の金属酸化物で被覆した透明性金属光沢顔料、カラーフロップ性を有する透明性金属光沢顔料等が挙げられる。
【0096】
ガラス片等の芯物質の表面を金属酸化物で被覆した透明性金属光沢顔料としては、例えば、フレーク形状のガラス片を芯物質とし、その表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した透明性金属光沢顔料や、ホウ珪酸ガラス片を芯物質とし、その表面を二酸化珪素で被覆し、さらに酸化チタンで被覆した二層被覆型の透明性金属光沢顔料等を例示できる。
フレーク形状のガラス片を芯物質とし、その表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した透明性金属光沢顔料は、芯物質にガラスを用いることで、高い金属光沢性と透明性を有する。また、金属酸化物の被覆率により金色、銀色、銅色、或いはメタリック色等を呈する。
ホウ珪酸ガラス片を芯物質とし、その表面を二酸化珪素で被覆し、さらに酸化チタンで被覆した二層被覆型の透明性金属光沢顔料は、芯物質に用いるホウ珪酸ガラスが一般のガラスよりも耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性等に優れているため、芯物質の厚さを薄くしても割れ難い状態を維持できる。よって、反射面積あたりの質量を小さくすることができると共に、顔料の光透過性を向上させることが可能となる。また、金属酸化物の被覆率により金色、銀色、銅色、或いはメタリック色等を呈する。
【0097】
カラーフロップ性を有する透明性金属光沢顔料としては、例えば、コレステリック液晶型金属光沢顔料や、酸化珪素を一種又は二種以上の金属酸化物で被覆した透明性金属光沢顔料等を例示できる。
コレステリック液晶型金属光沢顔料について説明する。コレステリック液晶型金属光沢顔料として用いられる液晶ポリマーは、光の干渉効果によって広いスペクトル領域で入射する光の一部の領域のみが反射し、これ以外の領域は全て光が透過する性質を有する。反射スペクトルの領域は、螺旋状のポリマーのピッチ幅、及び材料の屈折率によって決まり、また、反射スペクトル領域は左及び右螺旋に偏光した光線成分に分割され、その際、螺旋の回転方向に応じて一方は反射され、他方は透過させることが可能となる。これによりコレステリック液晶型金属光沢顔料は全体的なスペクトル領域にわたり、透過及び反射する性質、即ち、優れた金属光沢性と視点により色相が変化するカラーフロップ性を有する。また、コレステリック液晶型金属光沢顔料は金属光沢性と共に透明性も有する。
酸化珪素を一種又は二種以上の金属酸化物で被覆した透明性金属光沢顔料は、光透過性を有すると共に、光の干渉効果によって視覚する角度や光の当たる角度で様々な色彩を表現できるカラーフロップ性と優れた金属光沢性を有する。また、二種以上の金属酸化物で酸化珪素を多層に被覆する場合、光反射率の異なる金属酸化物を用いることで、より効果的にカラーフロップ性と金属光沢性を付与できる。金属酸化物としては、例えば、酸化錫、酸化チタン、酸化鉄等を例示できる。
【0098】
真珠光沢性を有する光輝性糸としては、汎用の糸に真珠光沢層を設けてなる糸、支持体上に真珠光沢層を設けてなる光輝性積層体からなる平糸、真珠光沢性を有する光輝性樹脂フィルムからなる平糸等が挙げられる。
真珠光沢層は、真珠光沢顔料をビヒクル中に分散させて調製した印刷インキや塗料等の液状組成物を、スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷方法、又は、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等の塗布方法により形成される層であり、上記の真珠光沢層を、糸又は支持体上に形成することにより、真珠光沢層を設けてなる積層構成の糸や、支持体上に真珠光沢層を設けてなる光輝性積層体を得ることができる。
なお、液状組成物により形成される真珠光沢層は、液状組成物中の溶剤等の揮発成分が揮発して、それ以外の化合物により形成される層である。
【0099】
真珠光沢性を有する光輝性樹脂フィルムは、真珠光沢顔料を透明性熱可塑性樹脂又は透明性熱硬化性樹脂中に溶融ブレンドさせて、ペレット、粉末、又はペースト等の成形用樹脂組成物を調製し、押出成形、カレンダー成形、インフレーション成形等の各種成形手段によりシート状、フィルム状等の平面状形態に成形することにより得ることができ、単一層の光輝性樹脂フィルムである。
真珠光沢性を有する光輝性糸としては、真珠光沢性を有する積層構成の糸、真珠光沢性を有する光輝性積層体からなる平糸、単一層の光輝性樹脂フィルムからなる平糸を用いることができる。
なお、上記の光輝性積層体や光輝性樹脂フィルムを、適宜幅にスリッターで裁断することによって、真珠光沢性を有する平糸を得ることができる。
【0100】
真珠光沢顔料としては、グアニンから構成される魚鱗箔、絹雲母、塩基性炭酸鉛、酸性ヒ酸鉛、オキシ塩化ビスマス等の他、天然雲母、合成雲母、薄片状酸化アルミニウム等の芯物質の表面を、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化バナジウム、酸化鉄等の金属酸化物で被覆した透明性真珠光沢顔料が挙げられる。
【0101】
天然雲母を芯物質とする透明性真珠光沢顔料としては、例えば、天然雲母粒子の表面を酸化チタンで被覆したもの、酸化チタンの上層をさらに酸化鉄や非変色性着色剤で被覆したもの、天然雲母粒子の表面を酸化鉄で被覆したもの等が挙げられ、天然雲母粒子の表面を41~44質量%の酸化チタンで被覆した粒度が5~50μmの金色真珠光沢顔料、天然雲母粒子の表面を30~38質量%の酸化チタンで被覆し、その上層を0.5~10質量%の非変色性有色顔料で被覆した粒度が5~60μmの金色真珠光沢顔料、天然雲母粒子の表面を16~39質量%の酸化チタンで被覆した粒度が5~100μmの銀色真珠光沢顔料、天然雲母粒子の表面を45~58質量%の酸化チタンで被覆したメタリック色真珠光沢顔料、天然雲母粒子の表面を45~58質量%の酸化チタンで被覆し、その上層を0.5~10質量%の非変色性着色剤で被覆したメタリック色真珠光沢顔料等を例示できる。また、金属酸化物の被覆率により金色、銀色、銅色、或いはメタリック色等を呈する。
合成雲母を芯物質とし、その表面を金属酸化物で被覆した透明性真珠光沢顔料は、芯物質として天然雲母を用いた系に較べて不純物や鉄等の着色因子となる金属イオンの含有量が少なく、光輝性に優れ、キラキラ光る様相を呈すると共に高い透明性を有する。また、金属酸化物の被覆率により、金色、銀色、銅色、或いはメタリック色等を呈する。合成雲母としては、例えば、KMg3(AlSi3O10)F2を例示できる。
合成雲母の形状は特定されないが、例えば、偏平形状や鱗片形状のものを例示できる。
薄片状酸化アルミニウムを芯物質とし、その表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した透明性真珠光沢顔料は、芯物質の酸化アルミニウム表面の反射率が高く、粒度分布がシャープであるため、優れた光輝性と高い透明性を有する。また、金属酸化物の被覆率によって、金色、銀色、銅色、或いはメタリック色等を呈する。
【0102】
金属光沢層又は真珠光沢層を設ける支持体としては、特に限定されるものではないが、紙、合成紙、編布、織布、及び不織布等の布帛、合成皮革、レザー、プラスチック、エラストマー、ゴム等が挙げられ、形態としては平面状、シート状、フィルム状のものが好ましい。
また、支持体としては汎用の樹脂からなるフィルムが好適であり、樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-アクリル酸エステル共重合樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン-プロピレン共重合樹脂、塩化ビニル-プロピレン共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリアセテート、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩酸ゴム、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリペプチド樹脂等を例示できる。
上記の樹脂の中でも、柔軟性に富み、且つ、安全性に優れることから、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂等の樹脂を用いた樹脂フィルムが好ましい。
【0103】
金属光沢顔料又は真珠光沢顔料を溶融ブレンドさせる透明性熱可塑性樹脂又は透明性熱硬化性樹脂としては、無色透明又は有色透明のものを使用することができる。
透明性熱可塑性樹脂又は透明性熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレン-ジメチレンテレフタレート、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、アイオノマー樹脂、エチレン-プロピレン共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン-アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン-メタクリル酸エステル共重合樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂、シクロオレフィンコポリマー等の透明性を有する熱可塑性樹脂、
エポキシ樹脂、エポキシアクリレート、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、アリール樹脂、シリコーン樹脂等の透明性を有する熱硬化性樹脂を例示できる。
金属光沢顔料又は真珠光沢顔料は、樹脂中に0.1~40質量%、好ましくは0.3~30質量%、より好ましくは0.5~25質量%の割合で配合される。金属光沢顔料又は真珠光沢顔料の配合割合が40質量%を超えると、樹脂中への分散に際して分散安定性や加工適性に欠け易くなる。一方、配合割合が0.1質量%未満では、所望の光輝性を示し難くなる。
【0104】
金属光沢顔料又は真珠光沢顔料を分散させるビヒクルは、溶剤と、バインダー樹脂と、必要により配合される各種添加剤とから構成される。
溶剤としては水や各種有機溶剤が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、n-オクタン、イソオクタン、n-ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ヘキシレングリコール等を例示できる。
【0105】
バインダー樹脂としては、例えば、アイオノマー樹脂、イソブチレン-無水マレイン酸共重合樹脂、アクリロニトリル-アクリリックススチレン共重合樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレン共重合樹脂、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニルグラフト共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ポリブタジエン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルスチレン、アクリル酸エステル樹脂、ポリメチルメタクリレート、エポキシアクリレート樹脂、アルキルフェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール樹脂変性アルキド樹脂、スチレン変性アルキド樹脂、エポキシ樹脂変性アルキド樹脂、アクリル変性アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、ブチラール樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂、ポリイソブチレン、ブチルゴム、環化ゴム、塩素化ゴム、ポリビニルアルキルエーテル、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、石油系炭化水素樹脂、ケトン樹脂、トルエン樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩、アクリル酸エステル系エマルジョン、メタクリル酸エステル系エマルジョン、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルジョン、スチレン-アクリル酸エステル共重合体エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョン、塩化ビニリデン系エマルジョン、ポリ酢酸ビニル系エマルジョン、ポリオレフィン系エマルジョン、ロジンエステル系エマルジョン、エポキシ樹脂系エマルジョン、ポリウレタン系エマルジョン、合成ゴムラテックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリスチレン、クマロンプラスチック、ポリブテン、フェノキシプラスチック、液状ポリブタジエン、液状ゴム、石油系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂等の合成樹脂、
セルロース誘導体、アルギン酸誘導体、ロジン誘導体、デンプン類、多糖類、ガム類、天然ゴム、セラック、寒天、カゼイン、ニカワ、ゼラチン、ポリテルペン等の天然又は半合成樹脂等を例示できる。
金属光沢顔料又は真珠光沢顔料は、バインダー樹脂中に0.1~40質量%、好ましくは0.2~30質量%、より好ましくは0.5~20質量%の割合で配合される。金属光沢顔料又は真珠光沢顔料の配合割合が40質量%を超えると、バインダー樹脂中への分散に際して分散安定性や加工適性に欠け易くなる。一方、配合割合が0.1質量%未満では、所望の光輝性を示し難くなる。
【0106】
添加剤としては、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、潤滑剤、防黴剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
【0107】
また、真珠光沢性を有する光輝性樹脂フィルムとしては、互いに異なる屈折率のポリマーからなる10層以上の層を中間層に設けた光干渉現象を呈する透明性多層フィルムの、該多層フィルムに透光性染料を含有してなる樹脂フィルムを用いることもできる。透明性真珠光沢性樹脂フィルムは、約30~500nmの均一な厚さをもつ極めて薄い透光性の熱可塑性樹脂からなるフィルム(薄膜層)が少なくとも10層以上積層してなり、接触して隣接する層は異なる材料の透光性の樹脂で、少なくとも0.03の数値で屈折率を異にしており、且つ、層中に透光性染料を含有してなる。よって、透光性染料によって層の反射色、透過色の少なくとも1つの色調を増強したり、変化させたりする。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂等を例示できる。
透光性染料としては、例えば、アゾ染料、アントラキノン染料、ピリドン染料、ピラゾロン誘導体染料等を例示できる。なお、透光性染料は一層或いは二層以上の層に含まれており、全ての層に含まれていてもよい。染料の添加量については、未添加の系と比較して薄膜層の透過色の少なくとも一つ、又は、薄膜層の反射光の少なくとも一つ、又は、それら両者を強めたり、変化させるのに十分な量が添加される。
真珠光沢性を有する透明性光輝性樹脂フィルムとして具体的には、BASF社製、製品名:AURORA FILM等を例示できる。
なお、上記の光輝性樹脂フィルムを、適宜幅にスリッターで裁断することによって、真珠光沢性を有する平糸を得ることができる。
【0108】
ホログラム性を有する光輝性糸としては、汎用のホログラムを用いたホログラム性を有する光輝性樹脂フィルムからなる平糸等が挙げられる。
ホログラムとしては、微細な凹凸模様の少なくとも片面に光反射層を設けたものであり、透明性樹脂フィルム等の基材に凹凸模様を設けた透明性ホログラム形成層に金属化合物等から形成される透明性反射層を設けたレリーフ型(エンボス型)ホログラムや、体積型ホログラム(リップマンホログラム)等が挙げられる。
なお、上記の光輝性樹脂フィルムを、適宜幅にスリッターで裁断することによって、ホログラム性を有する平糸を得ることができる。
【0109】
虹彩性を有する光輝性糸としては、虹彩性を有する光輝性樹脂フィルムからなる平糸等が挙げられる。
虹彩性を有する光輝性樹脂フィルムとしては、例えば、基材表面に該基材と屈折率が0.05以上の差がある透明な金属化合物(例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、硫化カドミウム、弗化マグネシウム、弗化セリウム等)の薄膜層を形成し、該薄膜と屈折率が0.05以上の差がある凹凸の透明樹脂層を順に積層したものや、屈折率が異なる透明なプラスチック薄膜を多層に積層した透明性虹彩性樹脂フィルムを例示できる。
透明性虹彩性樹脂フィルムとして具体的には、ENGELHARD社製、製品名:IRIDESCENT FILM等を例示できる。
なお、上記の光輝性樹脂フィルムを、適宜幅にスリッターで裁断することによって、虹彩性を有する平糸を得ることができる。
【0110】
光干渉性を有する光輝性糸としては、光干渉性を有する光輝性積層体からなる平糸等が挙げられる。
光干渉性を有する光輝性積層体としては、例えば、金属性鏡面の基材表面に有色又は無色の塗料によって、光の干渉を引き起こす程度に薄い膜厚である透明皮膜を被覆形成した光輝性積層体を例示できる。
なお、上記の光輝性積層体を、適宜幅にスリッターで裁断することによって、光干渉性を有する平糸を得ることができる。
【0111】
光反射性の光学性状には、再帰反射性も含まれ、光反射性を有する光輝性糸としては、光反射性を有する光輝性積層体からなる平糸、光反射性を有する透明性光輝性樹脂フィルムからなる平糸等が挙げられる。
光反射性を有する光輝性積層体としては、例えば、アルミ蒸着層等の光反射層上に高屈折率ガラスビーズの単層を設けた再帰反射性を有する光輝性積層体を例示できる。
光反射性を有する光輝性樹脂フィルムとしては、例えば、光反射性を有する複数のポリエステル薄膜を、延伸軸をずらしながら積層した構造を有し、鏡面のような金属光沢性を有すると共に、視認する角度によって金属光沢性の色変化を呈し、さらに、視認する角度によっては透明性を有する透明性光反射性樹脂フィルムを例示できる。
透明性光反射性樹脂フィルムとして具体的には、(株)ホログラムサプライ製、製品名:マジカルフィルム(ミラージュフィルム)等を例示できる。
なお、上記の光輝性積層体や光輝性樹脂フィルムを、適宜幅にスリッターで裁断することによって、光反射性を有する平糸を得ることができる。
【0112】
光輝性積層体又は光輝性樹脂フィルムからなる平糸の厚さは3~50μm、好ましくは5~40μm、より好ましくは10~30μmの範囲が実用を満たす。光輝性積層体又は光輝性樹脂フィルムの厚さが50μmを超えると、可逆熱変色性平糸を撚糸に加工し難く、また、糸としての柔軟な風合いを損ない易くなる。一方、厚さが3μm未満では、厚さが薄すぎるため強度に乏しく、糸としての耐久性を満たし難く、また、所望の光輝性を示し難くなる。
【0113】
上記の光輝性糸は、さらに透明性を有してなる透明性光輝性糸であることが好ましい。
可逆熱変色性平糸と光輝性糸とからなる片撚り形態の撚糸において、光輝性糸が透明性光輝性糸であると、透明性光輝性糸を通して可逆熱変色性平糸の可逆熱変色層が視認されるため、可逆熱変色層と透明性光輝性糸により発現する光輝性を伴う色変化が撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認され易くなるため、好適である。
また、光輝性糸を芯糸として、芯糸の周囲に可逆熱変色性平糸が設けられる形態の撚糸において、光輝性糸が透明性光輝性糸であると、芯糸を通して可逆熱変色性平糸の可逆熱変色層が視認されるため、可逆熱変色層と透明性光輝性糸により発現する光輝性を伴う色変化が撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認され易くなるため、好適である。
【0114】
透明性光輝性糸としては、透明性を有する汎用の糸に、透明性金属光沢顔料を含む金属光沢層を設けてなる糸や、透明性真珠光沢顔料を含む真珠光沢層を設けてなる糸、透明性を有する光輝性樹脂フィルムからなる平糸等が挙げられる。
透明性を有する光輝性樹脂フィルムとしては、上記の透明性金属光沢顔料又は透明性真珠光沢顔料を、透明性熱可塑性樹脂又は透明性熱硬化性樹脂中に溶融ブレンドさせてペレット、粉末、又はペースト等の成形用樹脂組成物を調製し、押出成形、カレンダー成形、インフレーション成形等の各種成形手段によりシート状、フィルム状等の平面状形態に成形した、単一層の透明性光輝性樹脂フィルムを用いることができる。
また、透明性金属光沢顔料又は透明性真珠光沢顔料を、上記のビヒクル中に分散させて調製した印刷インキや塗料等の液状組成物を用いて、上記した印刷手段又は塗布手段により、透明性支持体上に透明性光輝層(透明性金属光沢層又は透明性真珠光沢層)を形成した、積層構成の透明性光輝性樹脂フィルムを用いることもできる。
また他にも、上記した透明性真珠光沢性樹脂フィルム、透明性ホログラム性樹脂フィルム、透明性虹彩性樹脂フィルム、透明性光反射性樹脂フィルム等の透明性光輝性樹脂フィルムを用いることもできる。
透明性を有する光輝性樹脂フィルムとしては、単一層又は積層構成の透明性光輝性樹脂フィルムを用いることができる。
なお、上記の透明性光輝性樹脂フィルムを、適宜幅にスリッターで裁断した光輝性平糸を透明性光輝性糸として用いることができる。
【0115】
透明性熱可塑性樹脂又は透明性熱硬化性樹脂としては、無色透明又は有色透明のものを使用することができ、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認できるものであれば特に限定されるものではない。
透明性熱可塑性樹脂又は透明性熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレン-ジメチレンテレフタレート、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、アイオノマー樹脂、エチレン-プロピレン共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン-アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン-メタクリル酸エステル共重合樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂、シクロオレフィンコポリマー等の熱可塑性樹脂、
エポキシ樹脂、エポキシアクリレート、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿
素樹脂、アリール樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を例示できる。
透明性金属光沢顔料又は透明性真珠光沢性顔料は、透明性熱可塑性樹脂又は透明性熱硬化性樹脂中に、0.1~40質量%、好ましくは0.3~30質量%の割合で配合される。透明性金属光沢顔料又は透明性真珠光沢性顔料の配合割合が40質量%を超えると、樹脂中への分散に際して分散安定性や加工適性に乏しくなり易い。一方、配合割合が0.1質量%未満では、所望の光輝性を示し難くなる。
【0116】
透明性支持体としては、無色透明又は有色透明のものを使用することができ、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認できるものであれば特に限定されるものではない。
透明性支持体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアミド樹脂等の汎用の樹脂を用いたシート状、フィルム状等の平面状形態の熱可塑性樹脂成形体等を例示できる。柔軟性に富み、且つ、安全性に優れることから、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル樹脂等の樹脂を用いた透明性プラスチックシートが好ましい。
【0117】
光輝性糸の有する透明性とは、可視光領域(JIS B 7079で規定される380~780nmの波長領域)の波長の光を透過する性質のことであり、透明性を有する光輝性糸の可視光領域における光透過率(可視光透過率)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上である。可視光透過率が5%未満の場合、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認し難くなる。
なお、上記の可視光透過率は、可視光領域の波長の光を透過する透明基材上に透明性光輝性糸を設け、分光光度計〔(株)日立製作所製、製品名:U-3210〕を用いて380nmから780nmの波長領域で測定し、最大値と最小値の中間値とした。
【0118】
本発明の撚糸は、可逆熱変色性平糸と、透明性真珠光沢性樹脂フィルム又は透明性虹彩性樹脂フィルムからなる光輝性平糸とから構成される、片撚り形態の撚糸が最も好適に用いられる。
上記形態の撚糸は、可逆熱変色性平糸の広幅の面と光輝性平糸の広幅の面が互いに密着し易くなるため、撚糸の耐久性を向上させることができると共に、可逆熱変色層と光輝性平糸により発現する光輝性を伴う色変化をより明瞭に視認することができる。
また、可逆熱変色層中に含有されるマイクロカプセル顔料は、汎用の非熱変色性着色剤よりも粒子径が大きく、可逆熱変色層の厚さが大きくなり易いため、可逆熱変色性平糸は硬い触感となり易い。一方で、透明性真珠光沢性樹脂フィルム又は透明性虹彩性樹脂フィルムは、薄膜を多層に積層して形成されるため、光輝性平糸は柔らかい触感を有する。
よって、可逆熱変色性平糸と光輝性平糸とから構成される片撚り形態の可逆熱変色性撚糸は、耐久性に優れると共に、可逆熱変色層と光輝性平糸により発現する光輝性を伴う色変化が撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、さらに、可逆熱変色性平糸と共に柔らかい触感の光輝性平糸を撚ることにより、可逆熱変色性撚糸に柔らかい触感を付与することができるため、最も好適に用いられる。
【0119】
また、可逆熱変色性平糸と光輝性糸とからなる片撚り形態の撚糸において、可逆熱変色性平糸として、透明性樹脂層が光輝性を有する光輝性可逆熱変色性平糸を用いる構成とすることもできる。ここで、透明性樹脂層が示す光学性状と、光輝性糸が示す光学性状が同じである場合、透明性樹脂層が光輝性を有していない可逆熱変色性平糸を用いる場合と比べて、強い光輝性を伴う色変化が強く視認される。一方、透明性樹脂層が示す光学性状と、光輝性糸が示す光学性状が互いに異なる場合、それぞれの光学性状が混ざり合った光輝性が視認され、透明性樹脂層が光輝性を有していない可逆熱変色性平糸を用いる場合には視認され難い、特異的な光輝性を伴う色変化が視認されるため、好適である。
上記の光輝性糸は、透明性光輝性糸であることが好ましい。光輝性糸が透明性を有すると、透明性光輝性糸を通して光輝性可逆熱変色性平糸が視認され、撚糸の全面で視認される光輝性を伴う色変化がよりいっそう明瞭に視認されるため、好適である。
【0120】
本発明に適用される平糸の幅(W′)は100~5000μm、好ましくは100~2000μm、より好ましくは150~1000μmであり、上記の範囲内にあることにより、可逆熱変色性平糸の温度変化による色変化等や、光輝性平糸の光輝性が明瞭に視認される共に、撚糸の耐久性を満足させることができる。
また、平糸の厚さ(T′)は8~190μm、好ましくは10~100μm、より好ましくは10~50μmであり、上記の範囲内にあることにより、撚糸が柔軟な風合いを有すると共に、撚糸としての耐久性を満足させることができ、製品等への適用性に優れるものとすることができる。
【0121】
本発明に適用される平糸は、例えば、透明性樹脂フィルムの一方の面に第一の透明性接着層、可逆熱変色層、第二の透明性接着層、透明性樹脂層を順次設けた可逆熱変色性積層体を、適宜幅にスリッターで裁断することで、
図7に示す可逆熱変色性平糸を得ることができる。
本発明に適用される平糸を構成する可逆熱変色性積層体は、例えば、透明性樹脂フィルムの一方の面に第一の透明性接着層を設け、第一の透明性接着層の外面(第一の透明性接着層の、透明性樹脂フィルムが設けられる側と反対の面)に可逆熱変色層を設けて得た積層体と、透明性樹脂フィルムの一方の面に第二の透明性接着層を設けて得た積層体とを、第二の透明性接着層を介して、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルムとを貼り付けて作製することができる。
また、透明性樹脂フィルムの一方の面に、接着層を設けて得た積層体を、スリッターで半分に裁断し、裁断して得られた一方の積層体の、接着層(第一の透明性接着層)の外面(接着層の、透明性樹脂フィルムが設けられる側と反対の面)に、可逆熱変色層を設けて得た積層体と、裁断して得られた他方の積層体とを、他方の積層体の接着層(第二の透明性接着層)を介して、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルムを貼り付けて可逆熱変色性積層体を作製することもできる。
これらの可逆熱変色性積層体を、適宜幅にスリッターで裁断することによって、
図7に示す可逆熱変色性平糸を得ることができる。
【0122】
上記の積層体は、別途、接着剤層を設けて作製することもできる。例えば、透明性樹脂フィルムの一方の面に第一の透明性接着層、可逆熱変色層を順次設けてなる積層体の、可逆熱変色層の外面(可逆熱変色層の、第一の透明性接着層が設けられる側と反対の面)にさらに接着剤層を設けた積層体と、透明性樹脂フィルムの一方の面に第二の透明性接着層を設けてなる他方の積層体とを、接着剤層と第二の透明性接着層を介して、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルムを貼り付けて可逆熱変色性積層体を作製することもでき、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルムをより強固に接着させた可逆熱変色性積層体とすることができる。
この積層体を、適宜幅にスリッターで裁断することによって、
図9に示す、透明性樹脂フィルム(3)からなる平糸の一方の広幅の面に、第一の透明性接着層(4)、可逆熱変色層(5)、接着剤層(9)、第二の透明性接着層(6)、透明性樹脂フィルム(3)を順次設けてなる可逆熱変色性平糸(2)が得られる。
接着剤層に用いられる接着剤としては、可逆熱変色層中に含有される可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の熱変色機能や感度等に影響を及ぼさず、可逆熱変色層の図柄、文字、温度変化による色変化が視認できるものであれば特に限定されるものではない。
接着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を例示できる。
【0123】
本発明の撚糸は、手により熱を与えたり、水付着具により熱や冷熱を与えたり、加熱具又は冷却具を用いたりすることにより変色させることができる。
水付着具としては、先端部に筆穂や繊維ペン体等を有する筆記又は塗布具、容器内に水を収容し、且つ、容器内の水を導出する繊維体や刷毛を設けた筆記具又は塗布具、ローラー形態の塗布具等を例示できる。
加熱具としては、PTC素子等の抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等の媒体を充填した加熱変色具、スチームやレーザー光等を用いた加熱変色具、ヘアドライヤーの適用等が挙げられる。
冷却具としては、ペルチエ素子を用いた通電冷熱変色具、冷水や氷片等の媒体を充填した冷熱変色具、畜冷剤、冷蔵庫や冷凍庫の適用等が挙げられる。
簡便に撚糸を変色させることができることから、手により熱を与える方法や、水付着具により熱又は冷熱を与える方法、温水等の媒体を充填した加熱変色具、冷水や氷片等の媒体を充填した冷熱変色具を用いることが好ましい。
【0124】
本発明の撚糸は、布帛に使用でき、温度変化による色変化の視認性が良好であり、可逆熱変色層の耐久性に優れる布帛を得ることができる。また、第一及び第二の透明性接着層中に光安定剤を含む場合には、可逆熱変色層の耐久性と耐光性に優れる布帛を得ることができる。
布帛としては特に限定されるものではないが、例えば、織物、編物、組物、不織布、パイル生地等を例示できる。布帛は、経糸又は緯糸の少なくとも一方に可逆熱変色性撚糸を用いることによって作製することができる。
【0125】
また、本発明の撚糸は、頭飾品に使用でき、温度変化による色変化の視認性が良好であり、可逆熱変色層の耐久性に優れる頭飾品を得ることができる。また、第一及び第二の透明性接着層中に光安定剤を含む場合には、可逆熱変色層の耐久性と耐光性に優れる頭飾品を得ることができる。
頭飾品としては特に限定されるものではないが、例えば、ヘアーウィッグやヘアーエクステンション等を例示できる。
【0126】
また、本発明の撚糸は、玩具に使用でき、温度変化による色変化の視認性が良好であり、可逆熱変色層の耐久性に優れる玩具を得ることができる。また、第一及び第二の透明性接着層中に光安定剤を含む場合には、可逆熱変色層の耐久性と耐光性に優れる玩具を得ることができる。
玩具としては特に限定されるものではないが、例えば、可逆熱変色性撚糸からなる毛髪又は体毛を備えた人形若しくは動物形象玩具、可逆熱変色性撚糸からなる体毛を備えたぬいぐるみ、又はそれらの付属品等を例示できる。ここで、付属品としては、例えば、人形玩具用のヘアーエクステンション、人形玩具用の衣類又はスカーフ等が挙げられる。
本発明の撚糸は、好ましくは、人形若しくは動物形象玩具等の玩具に備えられる毛髪若しくは体毛、又は、人形玩具用の付属品として用いられる。これらの毛髪若しくは体毛、又は付属品に、手により熱を与える方法や、水付着具により熱又は冷熱を与えたりする方法によって、簡便に色変化をさせることができ、楽しむことができる。このような色変化は繰り返し行うことができる。
また、可逆熱変色性撚糸を用いた上記の玩具と、水付着具とを組み合わせて、玩具セットとすることもできる。
【0127】
本発明の撚糸を用いた製品としてさらに、以下のものを例示できる。
(1)玩具類
アクセサリー玩具、描画玩具、玩具用絵本、積木玩具、ブロック玩具、粘土玩具、流動玩具、こま、凧、楽器玩具、料理玩具、鉄砲玩具、捕獲玩具、背景玩具、及び乗物、動物、植物、建築物、食品等を模した玩具等、
(2)衣類
Tシャツ、トレーナー、ブラウス、ドレス、水着、レインコート、スキーウェア等の被服、靴及び靴紐等の履物、ハンカチ、タオル、風呂敷等の布製身の回り品、手袋、ネクタイ、帽子、スカーフ、マフラー等、
(3)屋内装飾品
絨毯、カーテン、カーテン紐、テーブル掛け、敷物、クッション、カーペット、ラグ、椅子張り地、シート、マット、額縁、造花、写真立て等、
(4)家具
布団、枕、マットレス、ベッド等の寝具、椅子、ソファー等、
(5)装飾品
指輪、腕輪、ティアラ、イヤリング、髪止め、付け爪、リボン、スカーフ、時計、眼鏡、付けまつげ、付け髭、付け眉毛等、
(6)その他
鞄、包装用容器、刺繍糸、運動用具、釣り具、コースター、楽器、財布等の袋物、傘、及び教習具等。
【実施例0128】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中の部は質量部を示す。
【0129】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aの調製
(イ)成分として、2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ペンチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン2部と、(ロ)成分として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部と、(ハ)成分として、ステアリン酸シクロヘキシルメチル50部とからなる可逆熱変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30部と、助溶剤50部とからなる混合溶液に投入した後、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、さらに攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、平均粒子径(DA)が4.6μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aを得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aは、完全発色温度t1が14℃、完全消色温度t4が38℃であり、温度変化により桃色から無色に可逆的に変化した。
【0130】
可逆熱変色性平糸Aの作製(
図7参照)
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料A30部を、ポリエステル樹脂エマルジョン(固形分:50%)60部と、レベリング剤1部と、消泡剤1部と、粘度調整剤0.5部と、水5部と、カルボジイミド系硬化剤(固形分:40%)2.5部とからなるビヒクル中に均一に混合して、スクリーン印刷に用いられる印刷用インキである可逆熱変色性液状組成物を調製した。
ウレタン樹脂98部、イソシアネート系硬化剤2部とからなるビヒクル中に均一に混合して、グラビヤ印刷に用いられる印刷用インキである液状組成物を調製した。
透明性樹脂フィルム(3)として、厚さ12μmの透明性PETフィルム(可視光透過率:99%)の一方の面に、液状組成物を用いて200メッシュのグラビヤロール版にて全面ベタ印刷を行い、80℃で加熱硬化して、厚さ2μmの第一の透明性接着層(4)(可視光透過率:98%)を形成した。
次いで、第一の透明性接着層(4)の外面(第一の透明性接着層の、透明性樹脂フィルムが設けられる側と反対の面)に、可逆熱変色性液状組成物を用いて120メッシュのスクリーン版にてベタ印刷を行い、110℃で加熱して平均厚さ(T
A)15μmの可逆熱変色層(5)を形成した。
次いで、可逆熱変色層(5)の外面(可逆熱変色層の、第一の透明性接着層が設けられる側と反対の面)に、液状組成物を用いて200メッシュのグラビヤロール版にて全面ベタ印刷を行い、厚さ2μmの第二の透明性接着層(6)(可視光透過率:98%)を形成した。
次いで、第二の透明性接着層(6)の外面(第二の透明性接着層の、可逆熱変色層が設けられる側と反対の面)に、透明性樹脂層(7)として厚さ12μmの透明性PETフィルム(可視光透過率:99%)を載置し、圧接した状態で、80℃で加熱硬化して可逆熱変色性積層体を作製した。
上記の可逆熱変色性積層体をマイクロスリッターにて250μmの糸状になるように裁断して、厚さ43μmの可逆熱変色性平糸(2)(可逆熱変色性平糸A)を作製した。
上記の可逆熱変色性積層体は、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、また、最外層の透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層により可逆熱変色層が保護されているため、マイクロスリッターで裁断する際に歯が接触しても可逆熱変色層に破損や傷が発生し難かった。
得られた可逆熱変色性平糸Aは、38℃以上で無色、14℃以下で桃色に可逆的に変化し、20~33℃の温度域において、上記したいずれかの色を保持した。温度変化による色変化は、平糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色性平糸は、可逆熱変色層を中間層として可逆熱変色層の一方の面と他方の面にそれぞれ設けられる層が同一であるため、カール性が抑制されており、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
【0131】
可逆熱変色性平糸A′の作製(
図7参照)
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料A30部を、ポリエステル樹脂エマルジョン(固形分:50%)60部と、レベリング剤1部と、消泡剤1部と、粘度調整剤0.5部と、水5部と、カルボジイミド系硬化剤(固形分:40%)2.5部とからなるビヒクル中に均一に混合して、スクリーン印刷に用いられる印刷用インキである可逆熱変色性液状組成物を調製した。
光安定剤として、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(BASF社製、製品名:チヌビンPS)5部を、アクリル樹脂50部、ウレタン樹脂43部、イソシアネート系硬化剤2部とからなるビヒクル中に均一に混合して、グラビヤ印刷に用いられる印刷用インキである液状組成物を調製した。
透明性樹脂フィルム(3)として、厚さ12μmの透明性PETフィルム(可視光透過率:99%)の一方の面に、液状組成物を用いて200メッシュのグラビヤロール版にて全面ベタ印刷を行い、80℃で加熱硬化して、厚さ2μmの第一の透明性接着層(4)(可視光透過率:96%)を形成した。
次いで、第一の透明性接着層(4)の外面(第一の透明性接着層の、透明性樹脂フィルムが設けられる側と反対の面)に、可逆熱変色性液状組成物を用いて120メッシュのスクリーン版にてベタ印刷を行い、110℃で加熱して、平均厚さ(T
A′)15μmの可逆熱変色層(5)を形成した。
次いで、可逆熱変色層(5)の外面(可逆熱変色層の、第一の透明性接着層が設けられる側と反対の面)に、液状組成物を用いて200メッシュのグラビヤロール版にて全面ベタ印刷を行い、厚さ2μmの第二の透明性接着層(6)(可視光透過率:96%)を形成した。
次いで、第二の透明性接着層(6)の外面(第二の透明性接着層の、可逆熱変色層が設けられる側と反対の面)に、透明性樹脂層(7)として厚さ12μmの透明性PETフィルム(可視光透過率:99%)を載置し、圧接した状態で、80℃で加熱硬化して可逆熱変色性積層体を作製した。
上記の可逆熱変色性積層体をマイクロスリッターにて250μmの糸状になるように裁断して、厚さ43μmの可逆熱変色性平糸(2)(可逆熱変色性平糸A′)を作製した。
上記の可逆熱変色性積層体は、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、また、最外層の透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層により可逆熱変色層が保護されているため、マイクロスリッターで裁断する際に歯が接触しても可逆熱変色層に破損や傷が発生し難くかった。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、可逆熱変色層の耐光性に優れていた。
得られた可逆熱変色性平糸A′は、38℃以上で無色、14℃以下で桃色に可逆的に変化し、20~33℃の温度域において、上記したいずれかの色を保持した。温度変化による色変化は、平糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色性平糸は、可逆熱変色層を中間層として可逆熱変色層の一方の面と他方の面にそれぞれ設けられる層が同一であるため、カール性が抑制されており、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
【0132】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bの調製
(イ)成分として、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド1.5部と、(ロ)成分として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部と、(ハ)成分として、ステアリン酸シクロヘキシルメチル50部とからなる可逆熱変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30部と、助溶剤50部とからなる混合溶液に投入した後、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、さらに攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、平均粒子径(DB)が10.0μmの可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bを得た。
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bは、完全発色温度t1が13℃、完全消色温度t4が38℃であり、温度変化により青色から無色に可逆的に変化した。
【0133】
可逆熱変色性平糸Bの作製(
図7参照)
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料B40部と、桃色の一般顔料0.5部を、ポリエステル樹脂エマルジョン(固形分:50%)50部と、レベリング剤1部と、消泡剤1部と、粘度調整剤0.5部と、水4.5部と、カルボジイミド系硬化剤(固形分:40%)2.5部とからなるビヒクル中に均一に混合して、スクリーン印刷に用いられる印刷用インキである可逆熱変色性液状組成物を調製した。
光安定剤として、2,4-ビス(2―ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-〔2,4-ビス(ブチルオキシフェニル)〕-1,3,5-トリアジン(BASF社製、製品名:チヌビン460)3部を、アクリル樹脂50部、ウレタン樹脂45部、イソシアネート系硬化剤2部とからなるビヒクル中に均一に混合して、グラビヤ印刷に用いられる印刷用インキである液状組成物を調製した。
透明性樹脂フィルム(3)として、厚さ12μmの透明性PETフィルム(可視光透過率:99%)の一方の面に、液状組成物を用いて150メッシュのグラビヤロール版にて全面ベタ印刷を行い、80℃で加熱硬化して、厚さ3μmの第一の透明性接着層(4)(可視光透過率:95%)を形成した。次いで、第一の透明性接着層(4)の外面(第一の透明性接着層の、透明性樹脂フィルムが設けられる側と反対の面)に、可逆熱変色性液状組成物を用いて100メッシュのスクリーン版にてベタ印刷を行い、100℃で加熱硬化して、平均厚さ(T
B)20μmの可逆熱変色層(5)を形成し、透明性樹脂フィルム上に第一の透明性接着層、可逆熱変色層を順次設けた積層体を作製した。
透明性樹脂層(7)として厚さ12μmの透明性PETフィルム(可視光透過率:99%)の一方の面に、液状組成物を用いて150メッシュのグラビヤロール版にて全面ベタ印刷を行い、厚さ3μmの第二の透明性接着層(6)(可視光透過率:95%)を形成し、透明性樹脂層上に第二の透明性接着層を設けた積層体を作製した。
次いで、上記2つの積層体を、第二の透明性接着層を介して、可逆熱変色層と透明性PETフィルムとを貼り付けて、80℃で加熱硬化して、可逆熱変色性積層体を作製した。
上記の可逆熱変色性積層体をマイクロスリッターにて375μmの糸状になるように裁断して、厚さ50μmの可逆熱変色性平糸(2)(可逆熱変色性平糸B)を作製した。
上記の可逆熱変色性積層体は、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、また、最外層の透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層により可逆熱変色層が保護されているため、マイクロスリッターで裁断する際に歯が接触しても可逆熱変色層に破損や傷が発生し難かった。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、可逆熱変色層の耐光性に優れていた。
得られた可逆熱変色性平糸Bは、38℃以上で桃色、13℃以下で紫色に可逆的に変化し、20~33℃の温度域において、上記したいずれかの色を保持した。温度変化による色変化は、平糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色性平糸は、可逆熱変色層を中間層として可逆熱変色層の一方の面と他方の面にそれぞれ設けられる層が同一であるため、カール性が抑制されており、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
【0134】
可逆熱変色性平糸B′の作製(
図7参照)
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料B40部と、桃色の一般顔料0.5部を、ポリエステル樹脂エマルジョン(固形分:50%)50部と、レベリング剤1部と、消泡剤1部と、粘度調整剤0.5部と、水4.5部と、カルボジイミド系硬化剤(固形分:40%)2.5部とからなるビヒクル中に均一に混合して、スクリーン印刷に用いられる印刷用インキである可逆熱変色性液状組成物を調製した。
光安定剤として、2,4-ビス(2―ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-〔2,4-ビス(ブチルオキシフェニル)〕-1,3,5-トリアジン(BASF社製、製品名:チヌビン460)3部を、アクリル樹脂50部、ウレタン樹脂45部、イソシアネート系硬化剤2部とからなるビヒクル中に均一に混合して、グラビヤ印刷に用いられる印刷用インキである液状組成物を調製した。
透明性樹脂フィルム(3)として、厚さ12μmの透明性PETフィルム(可視光透過率:99%)の一方の面に、液状組成物を用いて150メッシュのグラビヤロール版にて全面ベタ印刷を行い、80℃で加熱硬化して、厚さ3μmの第一の透明性接着層(4)(可視光透過率:95%)を形成した。次いで、第一の透明性接着層(4)の外面(第一の透明性接着層の、透明性樹脂フィルムが設けられる側と反対の面)に、可逆熱変色性液状組成物を用いて100メッシュのスクリーン版にてベタ印刷を行い、100℃で加熱硬化して、平均厚さ(T
B′)20μmの可逆熱変色層(5)を形成し、透明性樹脂フィルム上に第一の透明性接着層、可逆熱変色層を順次設けた積層体を作製した。
透明性樹脂層(7)として、厚さ18μmの透明性虹彩性樹脂フィルム(ENGELHARD社製、製品名:IRIDESCNT FILM IF-8181 R/G)(可視光透過率:75%)の一方の面に、液状組成物を用いて150メッシュのグラビヤロール版にて全面ベタ印刷を行い、厚さ3μmの第二の透明性接着層(6)(可視光透過率:95%)を形成し、透明性樹脂層上に第二の透明性接着層を設けた積層体を作製した。
次いで、上記2つの積層体を、第二の透明性接着層を介して、可逆熱変色層と透明性虹彩性樹脂フィルムとを貼り付けて、80℃で加熱硬化して、光輝性可逆熱変色性積層体を作製した。
上記の光輝性可逆熱変色性積層体をマイクロスリッターにて375μmの糸状になるように裁断して、厚さ50μmの可逆熱変色性平糸(2)(可逆熱変色性平糸B′)を作製した。
上記の光輝性可逆熱変色性積層体は、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、また、最外層の透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層により可逆熱変色層が保護されているため、マイクロスリッターで裁断する際に歯が接触しても可逆熱変色層に破損や傷が発生し難くかった。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、可逆熱変色層の耐光性に優れていた。
得られた可逆熱変色性平糸B′は、38℃以上で虹彩性を有する桃色、13℃以下で虹彩性を有する紫色に可逆的に変化し、20~33℃の温度域において、上記したいずれかの色を保持し、色変化の多様性を満足させるものであった。温度変化による色変化は、平糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
【0135】
実施例1
可逆熱変色性撚糸の作製(
図4参照)
可逆熱変色性平糸A(2)を撚糸機にセットして平糸1mあたり300回の撚りをかけて、片側方向にのみ撚りがかかった片撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)を作製した。可逆熱変色性平糸Aはカール性が抑制されているため、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
得られた撚糸は柔らかい触感を有しており、また、カール性が抑制されているため、製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上で無色であり、14℃以下で桃色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持した。温度変化による色変化は、撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D
A)が4.6μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が96.8質量部であり、D/T(D
A/T
A)が0.307であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性により優れるものであった。
【0136】
実施例2
可逆熱変色性撚糸の作製(
図4参照)
可逆熱変色性平糸A′(2)を撚糸機にセットして平糸1mあたり300回の撚りをかけて、片側方向にのみ撚りがかかった片撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)を作製した。可逆熱変色性平糸A′はカール性が抑制されているため、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
得られた撚糸は柔らかい触感を有しており、また、カール性が抑制されているため、製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上で無色であり、14℃以下で桃色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持した。温度変化による色変化は、撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D
A)が4.6μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が96.8質量部であり、D/T(D
A/T
A′)が0.307であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過、光等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性と耐光性により優れるものであった。
【0137】
実施例3
可逆熱変色性撚糸の作製(
図4参照)
可逆熱変色性平糸B(2)を撚糸機にセットして平糸1mあたり180回の撚りをかけて、片側方向にのみ撚りがかかった片撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)を作製した。可逆熱変色性平糸Bはカール性が抑制されているため、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
得られた撚糸は柔らかい触感を有しており、また、カール性が抑制されているため、製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上で桃色であり、13℃以下で紫色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持した。温度変化による色変化は、撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D
B)が10.0μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が153.8質量部であり、D/T(D
B/T
B)が0.500であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過、光等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性と耐光性により優れるものであった。
【0138】
実施例4
可逆熱変色性撚糸の作製(
図4参照)
可逆熱変色性平糸B′(2)を撚糸機にセットして平糸1mあたり180回の撚りをかけて、片側方向にのみ撚りがかかった片撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)を作製した。
得られた撚糸は柔らかい触感を有していた。また、可逆熱変色性平糸B′は撚糸に加工することによりカール性が抑制されるため、得られた撚糸は製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上で虹彩性を有する桃色であり、13℃以下で虹彩性を有する紫色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持し、色変化の多様性を満足させるものであった。温度変化による光輝性を伴う色変化は、撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D
B)が10.0μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が153.8質量部であり、D/T(D
B/T
B′)が0.500であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過、光等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性と耐光性により優れるものであった。
【0139】
実施例5
可逆熱変色性撚糸の作製(
図5参照)
糸(8)として、厚さ12μmの透明性PETフィルム(可視光透過率:99%)をマイクロスリッターにて250μmの糸状になるように裁断して、平糸(以下、「透明性平糸」と表すことがある)を得た。
可逆熱変色性平糸A′(2)と透明性平糸(8)を撚糸機にセットして平糸1mあたり250回の撚りをかけて、片側方向にのみ撚りがかかった片撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)を作製した。可逆熱変色性平糸Aはカール性が抑制されているため、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
得られた撚糸は柔らかい触感を有すると共に、撚糸としての耐久性と耐熱性に優れるものであった。さらに、可逆熱変色性平糸と透明性平糸の幅を同一とすることにより、それぞれの平糸を引き揃えて撚りをかける際に、可逆熱変色性平糸の広幅の面と透明性平糸の広幅の面が互いに密着し、撚糸としての耐久性をさらに向上させることができた。また、撚糸はカール性が抑制されているため、製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上で無色であり、14℃以下で桃色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持した。また、可逆熱変色性平糸と共に撚られる糸が透明性樹脂フィルムからなり、透明性平糸側から可逆熱変色性平糸が視認されるため、温度変化による色変化の視認性は損なわれず、撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認された。上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D
A)が4.6μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が96.8質量部であり、D/T(D
A/T
A′)が0.307であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過、光等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性と耐光性により優れるものであった。
【0140】
実施例6
可逆熱変色性撚糸の作製(
図5参照)
糸(8)として、厚さ15μmの不透明ホログラム性樹脂フィルム(可視光透過率:0%)をマイクロスリッターにて250μmの糸状になるように裁断して、不透明ホログラム性平糸(以下、「光輝性平糸」と表すことがある)を得た。
可逆熱変色性平糸A′(2)と光輝性平糸(8)を撚糸機にセットして平糸1mあたり250回の撚りをかけて、片側方向にのみ撚りがかかった片撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)を作製した。可逆熱変色性平糸A′はカール性が抑制されているため、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
得られた撚糸は柔らかい触感を有すると共に、撚糸としての耐久性に優れるものであった。また、撚糸はカール性が抑制されているため、製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上で可逆熱変色性平糸が無色であり、光輝性平糸によるホログラム性のみが視認された。14℃以下では、桃色の可逆熱変色性平糸と光輝性平糸によってホログラム性を有する桃色が視認され、20~33℃の温度域において上記したいずれかの様相を保持し、色変化の多様性を満足させるものであった。上記の変化は繰り返し行うことができた。また、可逆熱変色性平糸と光輝性平糸の幅を同一とすることにより、それぞれの平糸を引き揃えて撚りをかける際に、可逆熱変色性平糸の広幅の面と光輝性平糸の広幅の面が互いに密着し、撚糸としての耐久性を向上させると共に、温度変化による光輝性を伴う色変化の視認性をさらに向上させることができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D
A)が4.6μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が96.8質量部であり、D/T(D
A/T
A′)が0.307であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過、光等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性と耐光性により優れるものであった。
【0141】
実施例7
可逆熱変色性撚糸の作製(
図5参照)
糸(8)として、厚さ18μmの透明性真珠光沢性樹脂フィルム(BASF社製:製品名:AURORA 8181RG)(可視光透過率:70%)をマイクロスリッターにて250μmの糸状になるように裁断して、透明性真珠光沢性平糸(以下、「光輝性平糸」と表すことがある)を得た。
可逆熱変色性平糸B(2)と光輝性平糸(8)を撚糸機にセットして平糸1mあたり250回の撚りをかけて、片側方向にのみ撚りがかかった片撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)を作製した。可逆熱変色性平糸Bはカール性が抑制されているため、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
得られた撚糸は柔らかい触感を有すると共に、撚糸としての耐久性に優れるものであった。また、撚糸はカール性が抑制されているため、製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上では、桃色の可逆熱変色性平糸と光輝性平糸によって真珠光沢性を有する桃色が視認され、13℃以下では、紫色の可逆熱変色性平糸と光輝性平糸によって真珠光沢性を有する紫色が視認され、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持し、色変化の多様性を満足させるものであった。また、可逆熱変色性平糸と共に撚られる糸が透明性真珠光沢性樹脂フィルムからなり、光輝性平糸側から可逆熱変色性平糸が視認されるため、温度変化による光輝性を伴う色変化の視認性は損なわれず、撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認された。上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D
B)が10.0μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が153.8質量部であり、D/T(D
B/T
B)が0.500であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過、光等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性と耐光性により優れるものであった。
【0142】
実施例8
可逆熱変色性撚糸の作製(
図5参照)
糸(8)として、厚さ18μmの透明性虹彩性樹脂フィルム(ENGELHARD社製、製品名:IRIDESCNT FILM IF-8181 R/G)(可視光透過率:75%)をマイクロスリッターにて375μmの糸状になるように裁断して、透明性虹彩性平糸(以下、「光輝性平糸」と表すことがある)を得た。
可逆熱変色性平糸B(2)と光輝性平糸(8)を撚糸機にセットして平糸1mあたり180回の撚りをかけて、片側方向にのみ撚りがかかった片撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)を作製した。可逆熱変色性平糸Bはカール性が抑制されているため、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
得られた撚糸は柔らかい触感を有すると共に、撚糸としての耐久性に優れるものであった。また、撚糸はカール性が抑制されているため、得られた撚糸は製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上では、桃色の可逆熱変色性平糸と光輝性平糸によって虹彩性を有する桃色が視認され、13℃以下では、紫色の可逆熱変色層と光輝性平糸によって虹彩性を有する紫色が視認され、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持し、色変化の多様性を満足させるものであった。また、可逆熱変色性平糸と共に撚られる糸が透明性虹彩性樹脂フィルムからなり、光輝性平糸側から可逆熱変色性平糸が視認されるため、温度変化による光輝性を伴う色変化の視認性は損なわれず、撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認された。上記の変化は繰り返し行うことができた。また、可逆熱変色性平糸と光輝性平糸の幅を同一とすることにより、それぞれの平糸を引き揃えて撚りをかける際に、可逆熱変色性平糸の広幅の面と光輝性平糸の広幅の面が互いに密着し、撚糸としての耐久性を向上させると共に、温度変化による光輝性を伴う色変化の視認性をさらに向上させることができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D
B)が10.0μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が153.8質量部であり、D/T(D
B/T
B)が0.500であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過、光等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性と耐光性により優れるものであった。
【0143】
実施例9
可逆熱変色性撚糸の作製(
図5参照)
糸(8)として、厚さ18μmの透明性虹彩性樹脂フィルム(ENGELHARD社製、製品名:IRIDESCNT FILM IF-8181 R/G)(可視光透過率:75%)をマイクロスリッターにて375μmの糸状になるように裁断して、透明性虹彩性平糸(以下、「光輝性平糸」と表すことがある)を得た。
可逆熱変色性平糸B′(2)と糸(光輝性平糸)(8)を撚糸機にセットして平糸1mあたり180回の撚りをかけて、片側方向にのみ撚りがかかった片撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)を作製した。得られた撚糸は柔らかい触感を有すると共に、撚糸としての耐久性に優れるものであった。また、可逆熱変色性平糸B′は撚糸に加工することによりカール性が抑制されるため、撚糸は製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上では虹彩性を有する桃色であり、13℃以下で虹彩性を有する紫色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持し、色変化の多様性を満足させるものであった。また、可逆熱変色性平糸と共に撚られる糸が透明性虹彩性樹脂フィルムからなり、光輝性平糸側から可逆熱変色性平糸が視認されるため、温度変化による光輝性を伴う色変化の視認性は損なわれず、撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認された。さらに、透明性樹脂層と光輝性平糸が同じ透明性虹彩性樹脂フィルムからなり、可逆熱変色性平糸と光輝性平糸が示す光学性状が同じであるため、光輝性(真珠光沢性)が強く視認された。上記の変化は繰り返し行うことができた。また、可逆熱変色性平糸と光輝性平糸の幅を同一とすることにより、それぞれの平糸を引き揃えて撚りをかける際に、可逆熱変色性平糸の広幅の面と光輝性平糸の広幅の面が互いに密着し、撚糸としての耐久性を向上させると共に、温度変化による光輝性を伴う色変化の視認性をさらに向上させることができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D
B)が10.0μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が153.8部であり、D/T(D
B/T
B′)が0.500であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過、光等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性と耐光性により優れるものであった。
【0144】
実施例10
可逆熱変色性撚糸の作製(
図6参照)
可逆熱変色性平糸B(2)と、糸(8)として、断面形状が真円形状の透明ポリエステル繊維を撚糸機にセットして、上記の糸を芯糸として、芯糸の周囲に可逆熱変色性平糸Bが設けられるように撚りを施し、丸撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)を作製した。可逆熱変色性平糸Bはカール性が抑制されているため、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
得られた撚糸は柔らかい触感を有すると共に、撚糸としての耐久性に優れるものであった。また、上記の撚糸は、芯糸が周囲から視認されないように隙間なく可逆熱変色性平糸が巻かれており、芯糸の断面形状が真円形状であることにより、芯糸の周囲に可逆熱変色性平糸を設ける際に、芯糸の外面と可逆熱変色性平糸の広幅の面が密着するため、撚糸の耐久性を向上させることができた。さらに、撚糸はカール性が抑制されているため、製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上で桃色であり、13℃以下で紫色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持した。温度変化による色変化は、撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D
B)が10.0μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が153.8質量部であり、D/T(D
B/T
B)が0.500であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過、光等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性と耐光性により優れるものであった。
【0145】
実施例11
可逆熱変色性撚糸の作製
ホウ珪酸ガラスを芯物質とし、その表面を二酸化ケイ素で被覆し、さらに酸化チタンで被覆した二層被覆型の透明性金属光沢顔料〔メルク(株)製、製品名:Miraval 5423 Magic Lilac〕1部を、メチルイソブチルケトンに塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂を20%溶解した樹脂溶液45部、キシレン20部、メチルイソブチルケトン20部とからなるビヒクル中に均一に混合して、スプレー塗装に用いられる塗料である金属光沢性液状組成物を調製した。
糸として、断面形状が真円形状の透明ポリエステル繊維の全面に、上記の塗料を用いて、スプレー塗装を施して乾燥して、金属光沢層を設けた透明ポリエステル繊維(以下、「光輝性糸」と表すことがある)を得た。
可逆熱変色性平糸Bと、糸(金属光沢層を設けた透明ポリエステル繊維)を撚糸機にセットして、上記の糸を芯糸として、芯糸の周囲に可逆熱変色性平糸Bが設けられるように撚りを施し、蛇腹撚り形態の可逆熱変色性撚糸を作製した。可逆熱変色性平糸Bはカール性が抑制されているため、撚糸に加工する際に容易に取り扱うことができた。
得られた撚糸は柔らかい触感を有すると共に、撚糸としての耐久性に優れるものであった。また、上記の撚糸は、芯糸の断面形状が真円形状であることにより、芯糸の周囲に可逆熱変色性平糸を設ける際に、芯糸の外面と可逆熱変色性平糸の広幅の面が密着するため、撚糸の耐久性を向上させることができた。さらに、撚糸はカール性が抑制されているため、製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上では可逆熱変色平糸が桃色であり、可逆熱変色性平糸が巻かれている箇所では桃色が視認され、可逆熱変色性平糸が巻かれていない箇所では、金属光沢性を有する桃色が視認された。13℃以下では可逆熱変色性平糸が紫色であり、可逆熱変色性平糸が巻かれている箇所では紫色が視認され、可逆熱変色性平糸が巻かれていない箇所では、金属光沢性を有する紫色が視認された。これは、芯糸が透明性を有することにより芯糸を通して可逆熱変色性平糸が視認されるためであり、温度変化による色変化は撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、且つ、可逆熱変色性平糸が巻かれていない箇所では光輝性糸による金属光沢性が付与された、金属光沢性を有する桃色が視認された。20~33℃の温度域においては、上記したいずれかの色を保持し、色変化の多様性を満足させるものであった。上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(DB)が10.0μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が153.8質量部であり、D/T(DB/TB)が0.500であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過、光等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性と耐光性により優れるものであった。
【0146】
実施例12
可逆熱変色性撚糸の作製(
図6参照)
可逆熱変色性平糸B′(2)と、糸(8)として、断面形状が真円形状の透明ポリエステル繊維を撚糸機にセットして、上記の糸を芯糸として、芯糸の周囲に、可逆熱変色性平糸Bの透明性樹脂層(透明性虹彩性樹脂フィルム)が表面となるように撚りを施し、丸撚り形態の可逆熱変色性撚糸(1)を作製した。
得られた撚糸は柔らかい触感を有すると共に、撚糸としての耐久性に優れるものであった。また、上記の撚糸は、芯糸が周囲から視認されないように隙間なく可逆熱変色性平糸が巻かれており、芯糸の断面形状が真円形状であることにより、芯糸の外側に可逆熱変色性平糸を設ける際に、芯糸の外面と可逆熱変色性平糸の広幅の面が密着するため、撚糸の耐久性を向上させることができた。さらに、可逆熱変色性平糸B′は撚糸に加工することによりカール性が抑制されるため、得られた撚糸は製品等に適用する際の取り扱い性に優れるものであった。
可逆熱変色性撚糸は、38℃以上で虹彩性を有する桃色であり、13℃以下で虹彩性を有する紫色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持し、色変化の多様性を満足させるものであった。温度変化による光輝性を伴う色変化は、撚糸の全面で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れ、撚りをかける際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果を発現するため、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
なお、上記の撚糸は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径(D
B)が10.0μmであり、バインダー樹脂の固形分100質量部に対して配合されるマイクロカプセル顔料が153.8質量部であり、D/T(D
B/T
B′)が0.500であることにより、温度変化による色変化がより視認され易く、柔軟な風合いを有し、また、応力や擦過、光等の外的要因に対する可逆熱変色層の耐久性と耐光性により優れるものであった。
【0147】
実施例13
可逆熱変色性撚糸を用いた布帛の作製
緯糸に実施例10の可逆熱変色性撚糸を、経糸に紫色に着色したポリエステル繊維を用いて、織機にセットして平織の可逆熱変色性布帛を作製した。撚糸はカール性が抑制されているため布帛を作製する際に取り扱い易く、容易に織ることができた。また、得られた布帛は柔軟な風合いを有すると共に、耐久性に優れるものであった。
布帛は、38℃以上では可逆熱変色性撚糸が桃色であるため、桃色と紫色が交互に配置された格子模様が視認され、13℃以下では可逆熱変色性撚糸が紫色であるため、全面が紫色に視認され、20~33℃の温度域において上記したいずれかの様相を保持した。上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れるため、織る際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を保護する効果を発現して、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
【0148】
実施例14
可逆熱変色性撚糸を用いたヘアーエクステンションの作製
実施例5の可逆熱変色性撚糸を用いて、常法により留め具に植毛し、ヘアーエクステンション(頭飾品)を作製した。撚糸はカール性が抑制されているためヘアーエクステンションを作製する際に取り扱い易く、容易に留め具に植毛することができた。また、得られたヘアーエクステンションは柔軟な風合いを有すると共に、耐久性に優れるものであった。
ヘアーエクステンションは、38℃以上では無色であり、14℃以下では桃色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持した。また、可逆熱変色性平糸と共に撚られる糸が透明性樹脂フィルムからなる平糸(透明性平糸)であり、透明性平糸側から可逆熱変色性平糸が視認されるため、温度変化による色変化の視認性は損なわれず、ヘアーエクステンション全体で均一且つ明瞭に視認された。上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層との間の接着性に優れるため、植毛する際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を保護する効果を発現して、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
【0149】
実施例15
可逆熱変色性撚糸を用いた毛髪を備えた人形玩具の作製
実施例3の可逆熱変色性撚糸を、常法により人形の頭部に植毛し、可逆熱変色性撚糸を用いた毛髪を備えた人形玩具を作製した。撚糸はカール性が抑制されているため人形玩具を作製する際に取り扱い易く、容易に人形玩具の頭部に植毛することができた。また、得られた毛髪は柔軟な風合いを有していた。
人形玩具の毛髪は、38℃以上では桃色であり、13℃以下では紫色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持した。温度変化による色変化は、毛髪全体で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れるため、植毛する際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を保護する効果を発現して、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
【0150】
実施例16
可逆熱変色性撚糸を用いた人形玩具用ヘアーエクステンションの作製
実施例8の可逆熱変色性撚糸を、常法により留め具に植毛し、人形玩具用ヘアーエクステンションを作製し、人形玩具に備えられる毛髪に取り付けた。撚糸はカール性が抑制されているためヘアーエクステンションを作製する際に取り扱い易く、容易に留め具に植毛することができた。また、得られたヘアーエクステンションは柔軟な風合いを有すると共に、耐久性に優れるものであった。
人形玩具用ヘアーエクステンションは、38℃以上では虹彩性を有する桃色であり、13℃以下では虹彩性を有する紫色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持し、色変化の多様性を満足させるものであった。また、可逆熱変色性平糸と共に撚られる糸が透明性虹彩性樹脂フィルムからなる平糸(光輝性平糸)であり、光輝性平糸側から可逆熱変色性平糸が視認されるため、温度変化による光輝性を伴う色変化の視認性は損なわれず、ヘアーエクステンション全体で均一且つ明瞭に視認された。上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れるため、植毛する際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を保護する効果を発現して、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
【0151】
実施例17
可逆熱変色性撚糸を用いた毛髪を備えた動物形象玩具の作製
実施例12の可逆熱変色性撚糸を、常法により馬の形態をした動物形象玩具の尾部に植毛し、可逆熱変色性撚糸を用いた毛髪を備えた動物形象玩具を作製した。撚糸はカール性が抑制されているため動物形象玩具を作製する際に取り扱い易く、容易に動物形象玩具の尾部に植毛することができた。また、得られた毛髪は柔軟な風合いを有すると共に、耐久性に優れるものであった。
動物形象玩具の毛髪は、38℃以上では虹彩性を有する桃色であり、13℃以下では虹彩性を有する紫色であり、20~33℃の温度域において上記したいずれかの色を保持し、色変化の多様性を満足させるものであった。温度変化による光輝性を伴う色変化は、毛髪全体で均一且つ明瞭に視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
また、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に優れるため、植毛する際の応力によって層間剥離を生じることがなく、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を保護する効果を発現して、可逆熱変色層の耐久性に優れていた。さらに、接着層中に光安定剤を含有することにより、光による可逆熱変色層の劣化や損傷を防止するため、可逆熱変色層の耐光性にも優れていた。
【0152】
比較例1
可逆熱変色性平糸A″の作製
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料A30部を、ポリエステル樹脂エマルジョン(固形分:50%)60部と、レベリング剤1部と、消泡剤1部と、粘度調整剤0.5部と、水5部と、カルボジイミド系硬化剤(固形分:40%)2.5部とからなるビヒクル中に均一に混合して、スクリーン印刷に用いられる印刷用インキである可逆熱変色性液状組成物を調製した。
透明性樹脂フィルムとして、厚さ12μmの透明性PETフィルム(可視光透過率:99%)の一方の面に、可逆熱変色性液状組成物を用いて120メッシュのスクリーン版にてベタ印刷を行い、平均厚さ(TA″)が15μmとなるように可逆熱変色層を形成した。
次いで、可逆熱変色層の外面(可逆熱変色層の、透明性樹脂フィルムが設けられる側と反対の面)に、透明性樹脂層として厚さ12μmの透明性PETフィルム(可視光透過率:99%)を載置し、圧接した状態で、110℃で加熱して可逆熱変色性積層体を作製した。
上記の可逆熱変色性積層体をマイクロスリッターにて250μmの糸状になるように裁断して、厚さ39μmの可逆熱変色性平糸(可逆熱変色性平糸A″)を作製した。
上記の可逆熱変色性積層体は、マイクロスリッターで裁断する際には目立った破損や傷は発生しなかった。
得られた可逆熱変色性平糸A″は、38℃以上で無色、14℃以下で桃色に可逆的に変化し、20~33℃の温度域において、上記したいずれかの色を保持した。温度変化による色変化は平糸の全面で視認され、上記の変化は繰り返し行うことができた。
【0153】
可逆熱変色性平糸A″は、可逆熱変色層と透明性樹脂フィルム、及び、可逆熱変色層と透明性樹脂層の間の接着性に乏しいため、撚糸機にセットして平糸1mあたり300回の撚りをかけたところ、応力によって層間剥離が生じ、片側方向にのみ撚りがかかった片撚り形態の可逆熱変色性撚糸を作製することができなかった。また、透明性樹脂フィルム及び透明性樹脂層が可逆熱変色層を擦過等の外的要因から保護する効果が不十分であり、可逆熱変色層の耐久性に劣っていた。また、光安定剤を含有する層が設けられていないため、光による可逆熱変色層の劣化や損傷が防止されず、可逆熱変色層の耐光性にも劣っていた。
【0154】
応用例1
人形玩具セット
実施例15の人形玩具と、容器内に10℃の冷水を収容し、且つ、容器内の冷水を導出する刷毛を設けた塗布具とを組み合わせて人形玩具セットを得た。
可逆熱変色層が消色状態では人形玩具の毛髪は桃色であり、塗布具により冷水を塗布すると可逆熱変色層が発色状態となり、人形玩具の毛髪は紫色となり、室温(20℃)環境下では紫色の状態で保持された。さらに、紫色の毛髪を両手でしばらく挟み38℃以上の熱を与えると、可逆熱変色層が消色状態となり、毛髪は桃色となり、室温(20℃)環境下では桃色の状態で保持された。再び、塗布具により10℃の冷水を塗布すると、可逆熱変色性層が発色状態となり、毛髪を紫色とすることができた。