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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104300
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】着用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/018 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
A41D13/018
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219421
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】三浦 渉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 瞳
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐亮
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC04
(57)【要約】
【課題】エアバッグを膨張させるガス発生器として、小型で軽量なものを使用可能な着用エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】保護対象者1に装着されるとともに、保護対象者の転倒時に作動されるガス発生器20から供給される膨張用ガスGにより膨張し、保護対象者の保護対象部位5を転倒先から保護する膨張部位37を配設させて構成されるエアバッグ30、を備えた着用エアバッグ装置10である。エアバッグは、膨張完了時の膨張部位に、保護対象部位を覆って、転倒先との接触時に保護対象部位を保護可能に圧縮される受止ストロークを確保可能な厚さ寸法Tを有して膨張する保護膨張部40(L,R)を、配設させ、かつ、内容積を減少させる容積削減部位50を、配設させている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象者に装着されるとともに、保護対象者の転倒時に作動されるガス発生器から供給される膨張用ガスにより膨張し、保護対象者の保護対象部位を転倒先から保護する膨張部位を配設させて構成されるエアバッグ、を備えた着用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
膨張完了時の前記膨張部位に、保護対象部位を覆って、転倒先との接触時に保護対象部位を保護可能に圧縮される受止ストロークを確保可能な厚さ寸法を有して膨張する保護膨張部を、配設させ、かつ、
内容積を減少させる容積削減部位を、配設させて、
構成されていることを特徴とする着用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグの前記保護膨張部が、前記エアバッグの内側面に沿うように貫通する中空部を配設させた筒形状として、構成され、
前記容積削減部位が、前記中空部から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグが、膨張完了時の外側面に、外方へ突出する突出部を備え、
前記保護膨張部が、該突出部を備えた部位に配設され、
前記突出部の周囲が、前記容積削減部位を構成していることを特徴とする請求項1に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグが、膨張完了時の内側面に配設される内側パネルと、外側面に配設される外側パネルと、の外周縁相互を結合させて、袋状に形成される構成として、
前記外側パネルが、
前記エアバッグの外側面に沿って複数に分割された分割パネルから形成されるとともに、
前記突出部を形成する領域の中央分割パネルと、該中央分割パネルの両側に隣接する側方分割パネルと、を備えて構成され、
前記中央分割パネルと前記側方分割パネルとの相互に結合される結合縁が、ともに、前記突出部の領域に、山形状に突出する凸部を配設させて、構成され、
前記突出部が、前記凸部により、形成されていることを特徴とする請求項3に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグが、膨張完了時の内側面に配設される内側パネルと、外側面に配設される外側パネルと、の外周縁相互を結合させて、袋状に形成される構成として、
前記外側パネルが、外側パネル用基布から形成されるとともに、前記外側パネル用基布における前記突出部の領域における外縁側に、離隔された部位相互を結合させた摘み部を配設させて構成され、
前記エアバッグが、前記摘み部を設けた前記外側パネルと前記内側パネルとの外周縁相互を結合させて、形成され、
前記突出部が、前記摘み部により、形成されていることを特徴とする請求項3に記載の着用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記エアバッグの前記保護膨張部が、保護対象者の腰部における左右の大腿骨転子部付近を保護するように、前記エアバッグの左右に配設されるとともに、厚さ寸法を厚くする頂部部位を、それぞれ、左右方向に延すように、配設させて構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の着用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護対象者に着用させて、保護対象者の転倒時等に、膨張させたエアバッグの膨張部位により、保護対象者の保護対象部位を保護する着用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、着用エアバッグ装置としては、着用した保護対象者(例えば、高齢者)の転倒時、加速度センサや角速度センサによって、転倒を検知して、ガス発生器から吐出した膨張用ガスにより膨張した所定位置の各エアバッグが、それぞれ、保護対象者の保護対象部位である臀部や腰部、あるいは、頭部やその左右の側部、を覆うものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。また、1つのガス発生器からの膨張用ガスを流入させてエアバッグを膨張させて、保護対象者の保護対象部位としての腰部の周囲を囲むように、覆うものもあった(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-317002号公報
【特許文献2】国際公開第2010/090317号公報
【特許文献3】国際公開第2019/207474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2に記載されているように、保護対象部位の数に対応した複数のエアバッグを使用しては、膨張用ガスを供給するガス発生器も複数必要となって、嵩張ったり、あるいは、重くなって、保護対象者に着用させる着用エアバッグ装置としては、課題がある。また、特許文献3に記載されているように、1つのガス発生器からの膨張用ガスを、保護対象者の腰部を囲むように配設させたエアバッグの全体に流す構成であれば、エアバッグの容量が大きいことから、大きなガス発生器が必要となって、保護対象者が着用する着用エアバッグ装置として、小型で軽量なガス発生器が望まれる。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、エアバッグを膨張させるガス発生器として、小型で軽量なものを使用可能な着用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る着用エアバッグ装置では、保護対象者に装着されるとともに、保護対象者の転倒時に作動されるガス発生器から供給される膨張用ガスにより膨張し、保護対象者の保護対象部位を転倒先から保護する膨張部位を配設させて構成されるエアバッグ、を備えた着用エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、
膨張完了時の前記膨張部位に、保護対象部位を覆って、転倒先との接触時に保護対象部位を保護可能に圧縮される受止ストロークを確保可能な厚さ寸法を有して膨張する保護膨張部を、配設させ、かつ、
内容積を減少させる容積削減部位を、配設させて、
構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る着用エアバッグ装置では、保護対象者に装着された状態でエアバッグが膨張すれば、エアバッグの膨張部位における保護膨張部が、保護対象者の保護対象部位を覆うように配設され、そして、転倒先と接触し、保護対象部位を保護可能な受止ストロークとして圧縮されつつ、保護対象部位を転倒先から保護する。その際、エアバッグは、所定の受止ストロークを確保して厚く膨張する保護膨張部を配設させているものの、容積を削減するような容積削減部位を配設させており、エアバッグの全体の容積を増加させることを抑制して、効率的に、保護対象部位の保護を厚くして、エアバッグを膨張させることができる。そのため、ガス発生器から吐出する膨張用ガスの吐出量を抑制できて、着用エアバッグ装置に使用するガス発生器として、小型で軽量のものを使用可能となる。
【0008】
したがって、本発明に係る着用エアバッグ装置では、エアバッグを膨張させるガス発生器として、小型で軽量なものを使用することが可能となる。
【0009】
そして、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記エアバッグの前記保護膨張部が、前記エアバッグの内側面に沿うように貫通する中空部を配設させた筒形状として、構成され、
前記容積削減部位を、前記中空部から構成してもよい。
【0010】
このような構成では、膨張完了時のエアバッグの保護膨張部は、保護対象者側の内側面から外側面までの厚さ寸法を、中空部を配設させて、厚くすることができて、着用エアバッグ装置を装着した保護対象者が転倒して、保護対象部位を転倒先と接触させようとしても、保護膨張部は、外側面側が直ちに転倒先と接触する状態となって、中空部を押し潰しつつ、外側面側が内側面側に接近する状態に圧縮されて、保護対象部位を転倒先から保護できる。その際、保護膨張部の中空部における外周側や内周側の膨張部位自体の圧縮変形に加えて、中空部が押し潰される際の中空部の周縁の膨張部位の圧縮変形も加わって、衝撃エネルギーの吸収量を多くして、保護膨張部は、クッション性よく、保護対象部位を転倒先から保護できる。すなわち、このような構成では、保護対象部位をクッション性よく受け止め可能な受止ストロークを、保護膨張部の内側面側から外側面側までの中空部を介在させた厚さ寸法が大きくなることから、長く確保可能となる。そして勿論、上記構成のエアバッグでは、膨張用ガスを流入させない中空部を有していることから、容積増加を抑えて構成することができる。
【0011】
そしてさらに、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記エアバッグが、膨張完了時の外側面に、外方へ突出する突出部を備え、
前記保護膨張部が、該突出部を備えた部位に配設され、
前記突出部の周囲が、前記容積削減部位を構成してもよい。
【0012】
このような構成では、膨張完了時のエアバッグの保護膨張部は、保護対象者側の内側面から外側面までの厚さ寸法を、突出部を配設させて、厚くすることができて、着用エアバッグ装置を装着した保護対象者が転倒して、保護対象部位を転倒先と接触させようとしても、突出部を設けて厚さ寸法を厚くした保護膨張部が、転倒先と接触し、圧縮変形されつつ、クッション性よく、保護対象部位の転倒先との干渉を防止できる。すなわち、このような構成では、膨張完了時のエアバッグの保護膨張部が、突出部により、保護対象部位をクッション性よく受け止め可能な受止ストロークを、長く確保できる。そして勿論、エアバッグは、保護膨張部を形成する突出部の周囲に、突出部と相対的に凹むような非突出部の形態として、容積削減部位を配設させることができることから、容積増加を抑えて、突出部を設けた保護膨張部を配設させることができる。
【0013】
この場合、前記エアバッグが、膨張完了時の内側面に配設される内側パネルと、外側面に配設される外側パネルと、の外周縁相互を結合させて、袋状に形成される構成として、
前記外側パネルが、
前記エアバッグの外側面に沿って複数に分割された分割パネルから形成されるとともに、
前記突出部を形成する領域の中央分割パネルと、該中央分割パネルの両側に隣接する側方分割パネルと、を備えて構成され、
前記中央分割パネルと前記側方分割パネルとの相互に結合される結合縁が、ともに、前記突出部の領域に、山形状に突出する凸部を配設させて、構成され、
前記突出部が、前記凸部により、形成されていてもよい。
【0014】
このような構成では、エアバッグの外側パネルにおける中央分割パネルの両側の縁に、両側の側方分割パネルの対応する縁と、を相互に結合すると、エアバッグの膨張時には、山形状に突出する凸部が突出部を形成することとなり、そして、凸部の周囲の部位が、非突出部として、容積削減部位を形成できる。すなわち、上記の構成では、外側パネルを所定形状に分割した分割パネルにより、保護膨張部の突出部とその突出部に隣接する容積削減部位とを、簡便に形成できる。
【0015】
また、突出部を設けて保護膨張部を形成する構成としては、前記エアバッグが、膨張完了時の内側面に配設される内側パネルと、外側面に配設される外側パネルと、の外周縁相互を結合させて、袋状に形成される構成として、
前記外側パネルが、外側パネル用基布から形成されるとともに、前記外側パネル用基布における前記突出部の領域における外縁側に、離隔された部位相互を結合させた摘み部を配設させて構成され、
前記エアバッグが、前記摘み部を設けた前記外側パネルと前記内側パネルとの外周縁相互を結合させて、形成され、
前記突出部が、前記摘み部により、形成されていてもよい。
【0016】
このような構成では、エアバッグの膨張時、摘み部を設けた部位が、山形状に突出する突出部を形成することとなり、そして、摘み部から離れた突出部の周囲の部位が、非突出部として、容積削減部位を形成できる。すなわち、上記の構成では、外側パネルに摘み部を設けるだけで、保護膨張部の突出部とその突出部に隣接する容積削減部位とを、簡便に形成できる。
【0017】
そして、本発明に係る着用エアバッグ装置では、前記エアバッグの前記保護膨張部が、保護対象者の腰部における左右の大腿骨転子部付近を保護するように、前記エアバッグの左右に配設されるとともに、厚さ寸法を厚くする頂部部位を、それぞれ、左右方向に延すように、配設させて構成されていてもよい。
【0018】
このような構成では、エアバッグの膨張完了時、厚く膨らむ保護膨張部が、損傷すれば治療等の長引く左右の大腿骨付近における出っ張っている大腿骨転子部付近を、覆って保護できることから、転倒した際の保護対象者を好適に保護することができる。また、膨張完了時の保護膨張部が、その厚さ寸法を厚くする頂部部位を、左右方向に延すように、配設させていれば、保護対象者が回転するように転倒しても、回転する左右の大腿骨転子部付近を幅広く覆えて、好適に、保護対象部位としての左右の大腿骨転子部付近を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る第1実施形態の着用エアバッグ装置の概略正面図と概略背面図である。
図2】第1実施形態の着用エアバッグ装置に使用するエアバッグを平らに展開させた状態での膨張時の概略背面図である。
図3】第1実施形態のエアバッグの概略断面図であり、図2のIII-III部位に対応する。
図4】第1実施形態のエアバッグの概略断面図であり、図2のIV-IV部位に対応する。
図5】第1実施形態のエアバッグの構成材料を示す展開図である。
図6】第1実施形態の着用エアバッグ装置の作動時における概略縦断面図である。
図7】第1実施形態の着用エアバッグ装置を装着した保護対象者の転倒時の状態を説明する図である。
図8】第1実施形態の着用エアバッグ装置の作動時における保護膨張部の挙動を説明する図である。
図9】第2実施形態の着用エアバッグ装置の概略正面図と概略背面図である。
図10】第2実施形態の着用エアバッグ装置に使用するエアバッグを平らに展開させた状態での膨張時の概略背面図である。
図11】第2実施形態のエアバッグの概略断面図であり、図10のXI-XI部位に対応する。
図12】第2実施形態のエアバッグの構成材料を示す展開図である。
図13】第2実施形態の着用エアバッグ装置の作動時における概略縦断面図である。
図14】第3実施形態の着用エアバッグ装置の概略正面図と概略背面図である。
図15】第3実施形態の着用エアバッグ装置に使用するエアバッグを平らに展開させた状態での膨張時の概略背面図である。
図16】第3実施形態のエアバッグの概略断面図であり、図15の XVI- XVI部位に対応する。
図17】第3実施形態のエアバッグの構成材料を示す展開図である。
図18】第3実施形態の着用エアバッグ装置の作動時における概略縦断面図である。
図19】エアバッグを保護対象者に装着する装着部材の変形例を説明する図である。
図20】エアバッグを保護対象者に装着する装着部材の他の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の着用エアバッグ装置10は、図1~6に示すように、ガス発生器20と、ガス発生器20からの膨張用ガスGにより膨張するエアバッグ30と、保護対象者1の転倒を検知するセンサ部18を備えてガス発生器20を作動させる作動制御装置17と、ガス発生器20、エアバッグ30、及び、作動制御装置17を保持して、保護対象者1に装着するベスト型の装着部材11と、を備えて構成されている。
【0021】
装着部材11は、保護対象者1の上半身1aに装着可能なベストとして構成され、保護対象者1の上半身1aの正面を覆う左前部12及び右前部13を備えるとともに、保護対象者1の上半身1aの背面を覆う背面部14を備えて構成され、さらに、左前部12と右前部13との内側縁12a,13a相互を結合させるファスナー等の締結具16を備えて構成されている。
【0022】
作動制御装置17は、上下前後左右の3軸周りの角速度を検知可能な角速度センサと、上下前後左右の3軸方向の加速度を検知可能な加速度センサと、を有してなるセンサ部18を備えるとともに、センサ部18からの信号により、保護対象者1が通常動作と異なった転倒動作を行っていると検知されると、ガス発生器20を作動させるように構成されている。なお、具体的には、作動制御装置17は、センサ部18からの信号により、保護対象者1が通常動作と異なった転倒動作を開始していると、種々の閾値から判定可能な判定手段を備えて、判定手段の判定に基づいて、保護対象者1が転倒したと検出し、そして、ガス発生器20を作動させる。また、作動制御装置17には、センサ部18の作動用やガス発生器20の作動用信号の出力用に、図示しない電池等からなる電源も内蔵されている。
【0023】
作動制御装置17は、装着部材11における背面部14の下部14a側に、保護対象者1の衣服等と接触しないように、図示しないカバー布等に覆われて、取り付けられている。
【0024】
ガス発生器20は、図4に示すように、内部に圧縮された二酸化炭素等からなる膨張用ガスGを貯留した略円柱状の本体部20aと、本体部20aの先端の小径の略円柱状のガス吐出部20bと、を備えて構成され、ガス吐出部20bには、膨張用ガスGを吐出する吐出口20cが配設されている。ガス発生器20は、保護対象者1の転倒を検知した作動制御装置17の作動信号を入力して、本体部20aとガス吐出部20bとの境界部位付近に配設された図示しないイニシエータを作動させて、図示しないバーストディスクを破断することにより、本体部20a内に貯留した膨張用ガスGをガス吐出部20bの吐出口20cから吐出する構成としている。
【0025】
エアバッグ30は、保護対象者1の保護対象部位5としての腰部2における左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を覆って、転倒先8(図7参照)の接地面等から保護するもので、膨張用ガスGを流入させて膨張する膨張部位37として、左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を含めた腰部2の側面を覆う略長方形状の本体膨張部39(L,R)と、左右の本体膨張部39(L,R)の上端相互に連通される連通膨張部38と、を備えて構成されている。
【0026】
本体膨張部39(L,R)は、下部側に左右の大腿骨転子部3(L,R)の外方を覆って保護する保護膨張部40(L,R)を配設させ、その上側に、連通膨張部38と連通する上縁側膨張部47を配設させている。
【0027】
連通膨張部38には、膨張用ガスGを流入させる流入口34が開口され、流入口34の周縁には、ガス発生器20のガス吐出部20b側と接続される曲り筒形状の接続口部35が配設されている。ガス吐出部20bは、接続口部35に挿入され、クランプ21を締結されて、接続口部35と連結されている。
【0028】
なお、エアバッグ30は、膨張部位37の上縁37aに、複数の取付タブ30aが取り付けられており、これらの取付タブ30aを、縫製等により、装着部材11の内側面側に取り付けて、装着部材11に保持される。また、エアバッグ30は、着用エアバッグ装置10の作動前の状態では、本体膨張部39の下縁39b側を、上縁39a側に接近させるように、折り畳まれて、装着部材11に保持される。
【0029】
そして、エアバッグ30は、膨張完了時、保護対象者1側の内側面32から外側面33にかけての厚さ寸法Tを、膨張部位37の連通膨張部38や本体膨張部39の上縁側の縁側膨張部47より、保護膨張部40(L,R)を最も厚くするように構成されるとともに、保護膨張部40(L,R)の内部に、エアバッグ30の内容積を減少させる容積削減部位50を配設させて、構成されている。
【0030】
第1実施形態のエアバッグ30では、保護膨張部40(L,R)は、エアバッグ30の内側面32に沿い、かつ、膨張部位37の上縁37aに沿うような左右方向(腰部2の周方向でもあり、保護対象者1への着用状態では前後方向ともなる)に沿って貫通する中空部51を配設させた筒形状のループ状膨張部41として、構成されている。そして、第1実施形態では、中空部51が、容積削減部位50を構成している。また、エアバッグ30の保護膨張部40(L,R)では、エアバッグ30の内側面32から外側面33までの厚さ寸法Tを厚くする頂部45の部位は、各保護膨張部40における上下方向の中央付近として、左右方向に延びるように、配設されている。
【0031】
なお、膨張完了時の保護膨張部40(L,R)は、既述したように、中空部51を設けたループ状膨張部41としており(図3参照)、そして、湾曲板状のエアバッグ30の内側面32側の内層部41cと、外側面33側の外層部41dと、内層部41cと外層部41dとの上端側の相互の結合部位となる上側結合部41aと、内層部41cと外層部41dとの下端側の相互の結合部位となる下側結合部41bと、を備えて構成されている。そして、上側結合部41aは、連通膨張部38と連なっている本体膨張部39の上縁39a側の上縁側膨張部47の下方で、上縁側膨張部47と連なるように一体化されて、配設されている。
【0032】
第1実施形態のエアバッグ30を構成するエアバッグ用基布60としては、図5に示すように、エアバッグ30の外周壁31の内側面32側を形成する内側パネル61と、外周壁31の外側面33側を形成する外側パネル62と、左右の本体膨張部39(L,R)の外側の側面を形成する外側面パネル63,63と、左右の本体膨張部39(L,R)の内側の側面を形成する内側面パネル64,64と、各中空部51の内周壁を形成する周壁パネル65,65と、から構成されている。これらのエアバッグ用基布60の各パネルは、ポリエステル等の織布から形成されており、対応する縁相互を縫合され、さらに、外側パネル62に設けられた流入口34の周縁に接続口部35を結合させれば、エアバッグ30を形成できる。
【0033】
そして、着用エアバッグ装置10を製造する際には、エアバッグ30に取付タブ30aを取り付けるとともに、エアバッグ30の接続口部35に、クランプ21を利用して、ガス発生器20を組み付け、エアバッグ30の下縁39b側を上縁39a側に接近させるように折り畳んで、取付タブ30aを利用して、エアバッグ30を装着部材11に取り付けるとともに、予め、装着部材11に取り付けておいた作動制御装置17からの作動信号入力用の図示しないリード線をガス発生器20に接続させれば、装着部材11にエアバッグ30やガス発生器20等を保持させた着用エアバッグ装置10を製造することができる。
【0034】
第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、締結具16を利用して、装着部材11を保護対象者1の上半身1aに装着し、その後、図7に示すように、保護対象者1が転倒すると、センサ部18からの信号を入力していた作動制御装置17が、ガス発生器20を作動させて、ガス発生器20のガス吐出部20bの吐出口20cから膨張用ガスGが吐出されて、エアバッグ30が膨張することとなる(図6,7参照)。
【0035】
そして、保護対象者1に装着された状態でエアバッグ30が膨張すれば、エアバッグ30の膨張部位37における保護膨張部40(L,R)が、保護対象者1の保護対象部位5としての大腿骨転子部3(L,R)を覆うように配設され、図8のA~Cに示すように、転倒先8と接触し、大腿骨転子部3(L,R)を保護可能な受止ストロークSLとして圧縮されつつ、大腿骨転子部3(L,R)を転倒先8から保護する。その際、エアバッグ30は、所定の受止ストロークSLを確保して厚く膨張する保護膨張部40(L,R)を配設させているものの、容積を削減するような容積削減部位50としての中空部51を配設させており、エアバッグ30の全体の容積を増加させることを抑制して、効率的に、保護対象部位5の保護を厚くして、エアバッグ30を膨張させることができる。そのため、ガス発生器20から吐出する膨張用ガスGの吐出量を抑制できて、着用エアバッグ装置10に使用するガス発生器20として、小型で軽量のものを使用可能となる。
【0036】
したがって、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、エアバッグ30を膨張させるガス発生器20として、小型で軽量なものを使用することが可能となる。
【0037】
そして、第1実施形態の着用エアバッグ装置10では、エアバッグ30の保護膨張部40(L,R)が、エアバッグ30の内側面32に沿うように貫通する中空部51を配設させた筒形状として、構成され、容積削減部位50を、中空部51から構成している。
【0038】
そのため、第1実施形態では、膨張完了時のエアバッグ30の保護膨張部40(L,R)は、保護対象者1側の内側面32から外側面33までの厚さ寸法Tを、中空部51を配設させて、厚くすることができて、着用エアバッグ装置10を装着した保護対象者1が転倒して(図7参照)、保護対象部位5としての大腿骨転子部3(L,R)を転倒先8と接触させようとしても、保護膨張部40(L,R)は、図8のAに示すように、外側面33側が直ちに転倒先8と接触する状態となって、ついで、図8のB,Cに示すように、中空部51を押し潰しつつ、外側面33側が内側面32側に接近する状態に圧縮されて、保護対象部位5としての大腿骨転子部3(L,R)を転倒先8から保護できる。その際、保護膨張部40(L,R)としてのループ状膨張部41の中空部51における外周側の外層部41dや内周側の内層部41cの膨張部位自体の圧縮変形に加えて、中空部51が押し潰される際の中空部51の周縁の膨張部位としての上側結合部41aや下側結合部41bの圧縮変形も加わって、衝撃エネルギーの吸収量を多くして、保護膨張部40(L,R)は、クッション性よく、保護対象部位5を転倒先8から保護できる。すなわち、このような構成では、保護対象部位5をクッション性よく受け止め可能な受止ストロークSLを、保護膨張部40(L,R)の内側面32側から外側面33側までの中空部51を介在させた厚さ寸法Tが大きくなることから、長く確保可能となる。そして勿論、エアバッグ30は、膨張用ガスGを流入させない中空部51を有していることから、容積増加を抑えて構成することができる。
【0039】
また、第1実施形態では、エアバッグ30の保護膨張部40(L,R)が、保護対象者1の腰部2における左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を保護するように、エアバッグ30の左右に配設されるとともに、厚さ寸法Tを厚くする頂部45を、それぞれ、左右方向に延すように、配設させて構成されている。
【0040】
そのため、第1実施形態では、エアバッグ30の膨張完了時、厚く膨らむ保護膨張部40(L,R)が、損傷すれば治療等の長引く左右の大腿骨付近における出っ張っている大腿骨転子部3(L,R)付近を、覆って保護できることから、転倒した際の保護対象者1を好適に保護することができる。また、膨張完了時の保護膨張部40(L,R)が、その厚さ寸法Tを厚くする頂部45を、左右方向に延すように、配設させていれば、保護対象者1が回転するように転倒しても、回転する左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を幅広く覆えて、好適に、保護対象部位5としての左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を保護することができる。
【0041】
勿論、上記の点を考慮しなければ、中空部50を内側面32に沿う上下方向に貫通させて、頂部45を上下方向に沿うように配設させてもよい。
【0042】
また、保護対象者1の保護対象部位5として、保護対象者1の頭部を保護するように、ループ状膨張部41からなる保護膨張部40を構成してもよい。
【0043】
つぎに、図9~13に示す第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aについて説明すると、第2実施形態の着用エアバッグ装置10Aでは、第1実施形態のエアバッグ30が、保護膨張部40(L,R)として、ループ状膨張部41を設けた構成としているのに対し、第2実施形態のエアバッグ30Aでは、突出部43を設けて保護膨張部40A(L,R)を構成している点が、異なっている。なお、装着部材11、センサ部18を有した作動制御装置17、及び、ガス発生器20は、第1実施形態と同じものが使用されている。
【0044】
第2実施形態のエアバッグ30Aは、図9~13に示すように、膨張完了時の外側面33に、外方へ突出する突出部43が配設されて、突出部43を設けた部位が、保護膨張部40A(L,R)を構成している。そして、突出部43の周囲における上下の両側が、容積削減部位50Aとしての非突出部52を構成している。
【0045】
第2実施形態のエアバッグ30Aは、第1実施形態のエアバッグ30と同様に、保護対象者1の保護対象部位5としての腰部2における左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を覆って、転倒先8(図7参照)の接地面から保護するもので、膨張用ガスGを流入させて膨張する膨張部位37として、左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を含めた腰部2の側面を覆う略長方形状の本体膨張部39(L,R)と、左右の本体膨張部39(L,R)の上端相互に連通される連通膨張部38と、を備えて構成されている。
【0046】
そして、本体膨張部39(L,R)は、下部側に左右の大腿骨転子部3(L,R)の外方を覆って保護するように、突出部43を設けて構成された保護膨張部40A(L,R)を配設させ、その上下両側に、膨張時の保護膨張部40A(L,R)より厚さ寸法を小さくした上縁側膨張部47と下縁側膨張部48と、を配設させている。なお、これらの上縁側膨張部47と下縁側膨張部48は、突出部43と相対的に凹むような形状となって、非突出部52を形成し、そしてさらに、突出部43と異なって、保護対象部位5を保護する構成で無いことから、極力、エアバッグ30Aの容積を削減できるように、厚肉としなくともよい。そのため、これらの上縁側膨張部47と下縁側膨張部48とは、容積削減部位50Aとしての非突出部52を構成することとなる。
【0047】
連通膨張部38には、第1実施形態と同様に、膨張用ガスGを流入させる流入口34が開口され、流入口34の周縁には、ガス発生器20のガス吐出部20b側と接続される曲り筒形状の接続口部35が配設されている。ガス吐出部20bは、接続口部35に挿入され、クランプ21を締結されて、接続口部35と連結されている。
【0048】
なお、エアバッグ30Aは、第1実施形態と同様に、膨張部位37の上縁37aに、複数の取付タブ30aが配設されており、これらの取付タブ30aを、縫製等により、装着部材11の内側面側に取り付けて、装着部材11に保持される。また、エアバッグ30Aは、着用エアバッグ装置10Aの作動前の状態では、第1実施形態と同様に、本体膨張部39の下縁39b側を、上縁39a側に接近させるように、折り畳まれて、装着部材11に保持される。
【0049】
そして、エアバッグ30Aは、膨張完了時、保護対象者1側の内側面32から外側面33にかけての厚さ寸法Tを、膨張部位37の連通膨張部38や本体膨張部39の上縁側の上縁側膨張部47や下縁側の下縁側膨張部48より、保護膨張部40A(L,R)を最も厚くするように構成されている。この保護膨張部40Aは、上下の縁側膨張部47,48から略台形形状(略四角錐台形状)に突出する突出部43を設けて、厚さ寸法Tを厚くしている。略台形形状の突出部43は、その頂部45を左右方向に延びるように配設させている。
【0050】
第2実施形態のエアバッグ30Aを構成するエアバッグ用基布70としては、、図12に示すように、ポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されて、エアバッグ30Aの外周壁31の内側面32側を形成する内側パネル71と、外周壁31の外側面33側を形成する外側パネル72と、を備えて構成されている。そして、外側パネル72が、エアバッグ30Aの外側面33に沿って複数に分割された分割パネル73,75,77から形成されている。これらの分割パネル73,75,77は、突出部43を形成する領域の中央分割パネル73と、中央分割パネル73の左右両側に隣接する側方分割パネル75,77と、を備えて構成されている。そして、中央分割パネル73と側方分割パネル75,77との相互に結合される結合縁74c,76c,78cが、ともに、突出部43の領域に、山形状に突出する凸部74d,76d,78dを配設させて、構成されている。
【0051】
中央分割パネル73は、左右の本体膨張部39L,39Rの外側面33側における左右方向の中央部に配設されるものであり、側方分割パネル75は、左右の本体膨張部39L,39Rの外側面33側における左右方向の端縁側に配設されるものである。そして、側方分割パネル77は、左右の本体膨張部39L,39Rの外側面33側における相互に接近する縁側と、連通膨張部38の外側面33側とを、形成する共用側方分割パネル77としている。
【0052】
そして、中央分割パネル73は、外周縁74における上下の結合縁74a,74bを内側パネル71に結合させる縁とし、左右の凸部74dを設けた横側結合縁74cを、対応する側方分割パネル75,77の凸部76d,78dを設けた横側結合縁76c,78cに結合させる縁としている。
【0053】
側方分割パネル75は、外周縁76における上下の結合縁76a,76bと凸部76dを設けていない横側結合縁76eとを内側パネル71に結合させる縁とし、凸部76dを設けた横側結合縁76cを、中央分割パネル73の横側結合縁74cに結合させる縁としている。
【0054】
側方分割パネル77は、外周縁78における上下の結合縁78a,78bと凸部76dを設けていない横縁を含めた逆U字状の下側結合縁78fとを、内側パネル71に結合させる縁とし、凸部78dを設けた横側結合縁78cを、中央分割パネル73の横側結合縁74cに結合させる縁としている。
【0055】
そして、これらの中央分割パネル73と側方分割パネル75,77との対応する横側結合縁74c,76c,78c相互を縫合により結合させて、外側パネル72を形成し、そして、外側パネル72と内側パネル71との外周縁72a,71a相互を縫合により結合させ、さらに、取付タブ30aを取り付けるとともに、外側パネル72に設けられた流入口34の周縁に接続口部35を結合させれば、エアバッグ30Aを形成できる。
【0056】
そして、着用エアバッグ装置10Aを製造する際には、第1実施形態と同様に、エアバッグ30Aに、クランプ21を利用して、ガス発生器20を組み付け、エアバッグ30Aを折り畳んで、取付タブ30aを利用して、装着部材11に取り付けるとともに、予め、装着部材11に取り付けておいた作動制御装置17からの作動信号入力用の図示しないリード線をガス発生器20に接続させれば、装着部材11にエアバッグ30Aやガス発生器20等を保持させた着用エアバッグ装置10Aを製造することができる。そして、着用エアバッグ装置10Aは、締結具16を利用して、装着部材11を保護対象者1の上半身1aに装着し、その後、保護対象者1が転倒すると、センサ部18からの信号を入力していた作動制御装置17が、ガス発生器20を作動させて、ガス発生器20のガス吐出部20bの吐出口20cから膨張用ガスGが吐出されて、エアバッグ30Aが膨張することとなる(図11,13参照)。
【0057】
そして、第2実施形態では、膨張完了時のエアバッグ30Aの保護膨張部40A(L,R)は、保護対象者1側の内側面32から外側面33までの厚さ寸法Tを、突出部43を配設させて、厚くすることができて、着用エアバッグ装置10Aを装着した保護対象者1が転倒して、保護対象部位5としての大腿骨転子部3(L,R)を転倒先8と接触させようとしても、突出部43を設けて厚さ寸法Tを厚くした保護膨張部40A(L,R)が、転倒先8と接触し、圧縮変形されつつ、クッション性よく、大腿骨転子部3(L,R)の転倒先8との干渉を防止できる。すなわち、このような構成では、膨張完了時のエアバッグ30Aの保護膨張部40A(L,R)が、突出部43により、保護対象部位5(大腿骨転子部3)をクッション性よく受け止め可能な受止ストロークSLを、長く確保できる。そして勿論、エアバッグ30Aは、保護膨張部40Aを形成する突出部43の周囲における上下両側に、突出部43と相対的に凹むような非突出部52の形態として、容積削減部位50Aを配設させることができることから、容積増加を抑えて、突出部43を設けた保護膨張部40A(L,R)を配設させることができる。
【0058】
なお、第2実施形態のエアバッグ30Aでは、容積削減部位50Aを構成する非突出部52を、突出部43の上下両側に配設したが、容積削減部位50Aを構成する非突出部52は、突出部43の周囲のいずれかに、突出部43と相対的に凹むように配設させればよく、例えば、突出部43を本体膨張部39の下縁39b側に接近するように配設させる場合には、突出部43の上側の上縁側膨張部47だけで、容積削減部位50Aとしての非突出部52を構成したり、あるいは、突出部43の左右の両側、あるいは、左右の一方側に、容積削減部位50Aを構成する非突出部52を配設させてもよい。
【0059】
さらに、第2実施形態では、エアバッグ30Aが、膨張完了時の内側面32に配設される内側パネル71と、外側面33に配設される外側パネル72と、の外周縁71a,72a相互を結合させて、袋状に形成される構成としている。そして、外側パネル72が、エアバッグ30Aの外側面33に沿って複数(実施形態では5枚)に分割された分割パネル73,73,75,75,77から形成されるとともに、突出部43を形成する領域の中央分割パネル73と、中央分割パネル73の左右両側に隣接する側方分割パネル75,77と、を備えて構成され、中央分割パネル73と側方分割パネル75,77との相互に結合される結合縁74c,76c,78cが、ともに、突出部43の領域に、山形状に突出する凸部74d,76d,78dを配設させて、構成されている。
【0060】
そのため、第2実施形態のエアバッグ30Aでは、エアバッグ30Aの外側パネル72における中央分割パネル73の両側の縁74c,74cに対し、両側の側方分割パネル75,77の対応する縁76c,78c、を相互に結合すると、エアバッグ30Aの膨張時には、山形状に突出する凸部74d,76d,78dが突出部43を形成することとなり、そして、凸部74d,76d,78dを間にした上下両側の部位(縁側膨張部)47,48が、非突出部52として、容積削減部位50Aを形成できる。すなわち、第2実施形態では、外側パネル72を所定形状に分割した分割パネル73,75,77により、保護膨張部40Aの突出部43とその突出部43に隣接する容積削減部位50Aとを、簡便に形成できる。
【0061】
また、第2実施形態でも、エアバッグ30Aの保護膨張部40A(L,R)が、保護対象者1の腰部2における左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を保護するように、エアバッグ30Aの左右に配設されるとともに、厚さ寸法Tを厚くする頂部45を、それぞれ、左右方向に延すように、配設させて構成されている。
【0062】
そのため、第2実施形態でも、エアバッグ30Aの膨張完了時、厚く膨らむ保護膨張部40A(L,R)が、損傷すれば治療等の長引く左右の大腿骨付近における出っ張っている大腿骨転子部3(L,R)付近を、覆って保護できることから、転倒した際の保護対象者1を好適に保護することができる。また、膨張完了時の保護膨張部40A(L,R)が、その厚さ寸法Tを厚くする頂部45を、左右方向に延すように、配設させていれば、保護対象者1が回転するように転倒しても、回転する左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を幅広く覆えて、好適に、保護対象部位5としての左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を保護することができる。
【0063】
上記の点を考慮しなければ、突出部43を設けて保護膨張部40Aを構成する場合、頂部45の配設方向は、上下方向に沿うように配設させてもよい。ちなみに、本体膨張部39の外側パネル72を上下方向に分割する三枚の分割パネルとし、各分割パネルの相互に隣接する部位に、第2実施形態のような凸部を形成すして、各分割パネル相互を結合させて外側パネルを形成すれば、突出部43の頂部45の配設方向を上下方向に沿うように配設することが可能となる。
【0064】
また、突出部43を設けて保護膨張部40Aを構成する場合には、大腿骨転子部3(L,R)付近を保護対象部位5とする場合だけで無く、保護対象者1の頭部を保護対象部位として、エアバッグを構成してもよい。
【0065】
さらに、突出部を設けて保護膨張部を形成する構成としては、図14~18に示す第3実施形態の着用エアバッグ装置10Bのように構成してもよい。なお、この第3実施形態の着用エアバッグ装置10Bでは、エアバッグ30Bの保護膨張部40B(L,R)に設ける突出部43Bの形状が略半円柱状(略三角柱状)に突出する形状としている点が、第2実施形態の突出部43の形状と異なっており、他の装着部材11、センサ部18を有した作動制御装置17、及び、ガス発生器20は、第2実施形態と同じものが使用されている。
【0066】
第3実施形態のエアバッグ30Bは、膨張完了時の外側面33に、外方へ突出する突出部43Bが配設されて、突出部43Bを設けた部位が、保護膨張部40B(L,R)を構成している。そして、突出部43Bの周囲における上下の両側が、容積削減部位50Bとしての非突出部52Bを構成している。
【0067】
第3実施形態のエアバッグ30Bは、第2実施形態のエアバッグ30Aと同様に、保護対象者1の保護対象部位5としての腰部2における左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を覆って、転倒先8(図7参照)の接地面等から保護するもので、膨張用ガスGを流入させて膨張する膨張部位37として、左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を含めた腰部2の側面を覆う略長方形状の本体膨張部39(L,R)と、左右の本体膨張部39(L,R)の上端相互に連通される連通膨張部38と、を備えて構成されている。
【0068】
そして、本体膨張部39(L,R)は、下部側に左右の大腿骨転子部3(L,R)の外方を覆って保護するように、突出部43Bを設けて構成された保護膨張部40B(L,R)を配設させ、その上下両側に、膨張時の保護膨張部40B(L,R)より厚さ寸法を小さくした上縁側膨張部47Bと下縁側膨張部48Bと、を配設させている。なお、これらの上縁側膨張部47Bと下縁側膨張部48Bは、突出部43Bと相対的に凹むような形状となって、非突出部52Bを形成し、そしてさらに、突出部43Bと異なって、保護対象部位5を保護する構成で無いことから、極力、エアバッグ30Bの容積を削減できるように、厚肉としなくともよい。そのため、これらの上縁側膨張部47Bと下縁側膨張部48Bとは、容積削減部位50Bとしての非突出部52Bを構成することとなる。
【0069】
連通膨張部38には、第2実施形態と同様に、膨張用ガスGを流入させる流入口34が開口され、流入口34の周縁には、ガス発生器20のガス吐出部20b側と接続される曲り筒形状の接続口部35が配設されている。ガス吐出部20bは、接続口部35に挿入され、クランプ21を締結されて、接続口部35と連結されている。
【0070】
なお、エアバッグ30Bは、第2実施形態と同様に、膨張部位37の上縁37aに、複数の取付タブ30aが配設されており、これらの取付タブ30aを、縫製等により、装着部材11の内側面側に取り付けて、装着部材11に保持される。また、エアバッグ30Bは、着用エアバッグ装置10Bの作動前の状態では、第2実施形態と同様に、本体膨張部39の下縁39b側を、上縁39a側に接近させるように、折り畳まれて、装着部材11に保持される。
【0071】
そして、エアバッグ30Bは、膨張完了時、保護対象者1側の内側面32から外側面33にかけての厚さ寸法Tを、膨張部位37の連通膨張部38や本体膨張部39の上縁側の上縁側膨張部47Bや下縁側の下縁側膨張部48Bより、保護膨張部40B(L,R)を最も厚くするように構成されている。この保護膨張部40Bは、上下の縁側膨張部47B,48Bから略半円柱状(略三角柱状)に突出する突出部43Bを設けて、厚さ寸法Tを厚くしている。略半円柱状の突出部43Bは、その頂部45を左右方向に延びるように配設させている。
【0072】
第3実施形態のエアバッグ30Bを構成するエアバッグ用基布80としては、図17に示すように、ポリエステル等の可撓性を有した織布から形成されて、膨張完了時の内側面32に配設される内側パネル81と、外側面33に配設される外側パネル82と、から構成され、エアバッグ30Bは、内側パネル81と外側パネル82との外周縁81a,82a相互を縫合により結合させて、袋状に形成される構成としている。
【0073】
さらに、外側パネル82は、外側パネル用基布83から形成されるとともに、外側パネル用基布83における突出部43Bの領域における外縁(第3実施形態では左右方向側の端縁であって上下方向に沿う縁)83a,83a側に、三角状の切欠き84を設けて、上下に離隔されて略左右方向に延びる直線状の部位(離隔縁)84a,84b相互を、縫合により結合させた摘み部85を配設させて、構成されている。
【0074】
そして、エアバッグ30Bは、摘み部85,85を設けた外側パネル82と内側パネル81との外周縁82a,81a相互を縫合により結合させるとともに、外側パネル82に設けられた流入口34の周縁に接続口部35を結合させれば、形成できる。
【0075】
そして、着用エアバッグ装置10Bは、第2実施形態と同様に、エアバッグ30Bにガス発生器20を組み付け、エアバッグ30Aを折り畳んで、取付タブ30aを利用して、装着部材11に取り付けるとともに、予め、装着部材11に取り付けておいた作動制御装置17からの作動信号入力用の図示しないリード線をガス発生器20に接続させれば、装着部材11にエアバッグ30Bやガス発生器20等を保持させた着用エアバッグ装置10Bを製造することができる。そして、着用エアバッグ装置10Bは、締結具16を利用して、装着部材11を保護対象者1の上半身1aに装着し、その後、保護対象者1が転倒すると、センサ部18からの信号を入力していた作動制御装置17が、ガス発生器20を作動させて、ガス発生器20のガス吐出部20bの吐出口20cから膨張用ガスGが吐出されて、エアバッグ30Bが膨張することとなる(図16,18参照)。
【0076】
そして、第3実施形態でも、膨張完了時のエアバッグ30Bの保護膨張部40B(L,R)は、保護対象者1側の内側面32から外側面33までの厚さ寸法Tを、突出部43Bを配設させて、厚くすることができて、着用エアバッグ装置10Bを装着した保護対象者1が転倒して、保護対象部位5としての大腿骨転子部3(L,R)を転倒先8と接触させようとしても、突出部43Bを設けて厚さ寸法Tを厚くした保護膨張部40B(L,R)が、突出部43Bにより、保護対象部位5(大腿骨転子部3)を、クッション性よく受け止め可能な受止ストロークSLを長く確保して、保護できる。そして勿論、エアバッグ30Bは、保護膨張部40Bを形成する突出部43Bの上下両側に、突出部43Bと相対的に凹むような非突出部52Bの形態として、容積削減部位50Bを配設させることができることから、容積増加を抑えて、突出部43Bを設けた保護膨張部40B(L,R)を配設させることができる。
【0077】
なお、第3実施形態のエアバッグ30Bでも、容積削減部位50Bを構成する非突出部52Bを、突出部43Bの上下両側に配設したが、容積削減部位50Bを構成する非突出部52Bは、突出部43Bの周囲のいずれかに、突出部43Bと相対的に凹むように配設させればよく、例えば、突出部43Bを本体膨張部39の下縁39b側に接近するように配設させる場合には、突出部43Bの上側の上縁側膨張部47Bだけで、容積削減部位50Bとしての非突出部52Bを構成したり、あるいは、突出部43Bの左右の両側、あるいは、左右の一方側に、容積削減部位50Bを構成する非突出部52Bを配設させてもよい。
【0078】
また、第3実施形態では、エアバッグ30Bが、膨張完了時の内側面32に配設される内側パネル81と、外側面33に配設される外側パネル82と、の外周縁81a,82a相互を縫合により結合させて、袋状に形成される構成として、外側パネル82が、外側パネル用基布83から形成されるとともに、外側パネル用基布83における突出部43Bの領域における外縁83a側に、離隔された部位(離隔縁)84a,84b相互を縫合により結合させた摘み部85を配設させて構成されている。そして、エアバッグ30Bが、摘み部85を設けた外側パネル82と内側パネル81との外周縁82a,81a相互を結合させて、形成されて、突出部43Bが、摘み部85により、形成されている。
【0079】
そのため、第3実施形態では、エアバッグ30Bの膨張時、摘み部85を設けた部位が、山形状に突出する突出部43Bを形成することとなり、詳しくは、摘み部85からなる略半円錐形状の部位を左右両端に配置させた横置き三角柱状の突出部43Bを形成することとなり、そして、摘み部85から離れた突出部43bの周囲の上下両側の部位47B,48Bが、非突出部52Bとして、容積削減部位50Bを形成できる。すなわち、第3実施形態でも、外側パネル82に摘み部85を設けるだけで、保護膨張部40B(L,R)の突出部43Bとその突出部43Bに隣接する容積削減部位50B,50Bとを、簡便に形成できる。
【0080】
また、第3実施形態でも、エアバッグ30Bの保護膨張部40B(L,R)が、保護対象者1の腰部2における左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を保護するように、エアバッグ30Bの左右に配設されるとともに、厚さ寸法Tを厚くする頂部45を、それぞれ、左右方向に延すように、配設させて構成されている。
【0081】
そのため、第3実施形態でも、エアバッグ30Bの膨張完了時、厚く膨らむ保護膨張部40B(L,R)が、損傷すれば治療等の長引く左右の大腿骨付近における出っ張っている大腿骨転子部3(L,R)付近を、覆って保護できることから、転倒した際の保護対象者1を好適に保護することができる。また、膨張完了時の保護膨張部40B(L,R)が、その厚さ寸法Tを厚くする頂部45を、左右方向に延すように、配設させていれば、保護対象者1が回転するように転倒しても、回転する左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を幅広く覆えて、好適に、保護対象部位5としての左右の大腿骨転子部3(L,R)付近を保護することができる。
【0082】
勿論、上記の点を考慮しなければ、第3実施形態でも、突出部43Bを設けて保護膨張部40Aを構成する場合、頂部45の配設方向は、上下方向に沿うように配設させてもよい。ちなみに、エアバッグ30Bの本体膨張部39の上縁39aと下縁39bとを外縁(上下方向側の端縁であって、左右方向に沿う横縁となる)として、その外側パネル82の外縁部位に、摘み部85を形成すれば、突出部43Bの頂部45の配設方向を上下方向に沿うように配設させることが可能となる。
【0083】
また、突出部43Bを設けて保護膨張部40Bを構成する場合には、大腿骨転子部3(L,R)付近を保護対象部位5とする場合だけで無く、保護対象者1の頭部を保護対象部位として、エアバッグを構成してもよい。
【0084】
さらに、各実施形態等では、エアバッグ30等を保持する装着部材11として、ベストを例示したが、袖部を有したジャケットとしてもよく、さらに、図19に示すように、エアバッグ30を収納するようにエアバッグ30を覆うアウタカバーから、装着部材11Aを構成してもよい。この装着部材11Aでは、左右の端末相互を締結できる面ファスナー等の締結具16Aを備えており、エアバッグ30やガス発生器20等を取り付けた装着部材11Aを保護対象者1の腰部2付近に巻き付けて、締結具16Aを締結すれば、着用エアバッグ装置10を保護対象者1に装着させることができる。
【0085】
また、図20に示すように、両端に、相互に結合可能なクリップ材からなる締結具16Bを配設させたベルトから、装着部材11Bを構成してもよい。装着部材11Bは、両端に締結具16Bを配設させたベルト本体11aと、エアバッグ30の連通膨張部38付近を含めた上縁37aを覆って、上縁37a側を取り付けたカバー部11bと、ベルト本体11aを挿通可能として、カバー部11bの裏面側に取り付けた複数のベルト通し11cと、から構成されている。この装着部材11Bでは、ガス発生器20等を組み付けたエアバッグ30を取り付けた状態として、保護対象者1の腰部2付近に巻き付けて、締結具16Bを締結すれば、着用エアバッグ装置10を保護対象者1に装着させることができる。
【符号の説明】
【0086】
1…保護対象者、2…腰部、3(L,R)…大腿骨転子部、5…保護対象部位、8…転倒先、10,10A,10B…着用エアバッグ装置、20…ガス発生器、30,30A,30B…エアバッグ、31…外周壁、32…内側面、33…外側面、37…膨張部位、40(L,R),40A(L,R),40B(L,R)…保護膨張部、43,43B…突出部、45…頂部、50,50A,50B…容積削減部位、51…中空部、
71…内側パネル、71a…外周縁、72…外側パネル、72a…外周縁、73…中央分割パネル、74d…凸部、75…側方分割パネル、76d…凸部、77…(共用)側方分割パネル、78d…凸部、
81…内側パネル、81a…外周縁、82…外側パネル、82a…外周縁、83…外側パネル用基布、84a…(上)離隔縁、84b…(下)離隔縁、85…摘み部、
SL…受止ストローク、T…厚さ寸法、G…膨張用ガス。
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