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特開2022-104308伝送システム、伝送ケーブル、伝送方法、および表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104308
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】伝送システム、伝送ケーブル、伝送方法、および表示装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20220701BHJP
   H04L 25/49 20060101ALI20220701BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
H04L25/02 303Z
H04L25/49 K
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219433
(22)【出願日】2020-12-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(ACCEL)「近接場結合集積技術による革新的情報処理システムの実現と応用展開」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】平木 克良
(72)【発明者】
【氏名】黒田 忠広
【テーマコード(参考)】
5K012
5K029
【Fターム(参考)】
5K012AB03
5K012AC01
5K012AC08
5K012AC10
5K029FF03
5K029JJ00
5K029LL02
(57)【要約】
【課題】安定的に信号伝送が可能な伝送システム、伝送ケーブル、伝送方法および表示装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による伝送システムは、矩形信号が入力される第1の電極および前記矩形信号の微分信号を出力する第2の電極を有する非接触の結合素子を含む送信回路と、前記送信回路から出力される前記微分信号を伝送線を介して受信し、前記微分信号と閾値とを比較することにより、前記矩形信号を復元する受信回路とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形信号が入力される第1の電極および前記矩形信号の微分信号を出力する第2の電極を有する非接触の結合素子を含む送信回路と、
前記送信回路から出力される前記微分信号を伝送線を介して受信し、前記微分信号と閾値とを比較することにより、前記矩形信号を復元する受信回路とを備えることを特徴とする伝送システム。
【請求項2】
前記送信回路は基板に実装され、
前記第1の電極および前記第2の電極は、前記基板において互いに対向する1対の配線パターンであることを特徴とする請求項1に記載の伝送システム。
【請求項3】
前記1対の配線パターンは前記基板における異なる2つの配線層に形成されることを特徴とする請求項2に記載の伝送システム。
【請求項4】
前記1対の配線パターンは前記基板における同一の配線層に形成されることを特徴とする請求項2に記載の伝送システム。
【請求項5】
前記第1の電極および前記第2の電極のそれぞれは終端抵抗を介して接地配線に接続されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の伝送システム。
【請求項6】
前記微分信号は差動信号対をなし、
前記結合素子は、前記差動信号対の一方の差動信号に対応する第1の結合素子と、前記差動信号対の他方の差動信号に対応する第2の結合素子とを含むことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の伝送システム。
【請求項7】
前記第1の結合素子と前記第2の結合素子とは対称をなすように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の伝送システム。
【請求項8】
前記受信回路は前記微分信号とヒステリシスを有する閾値とを比較し、前記矩形信号を復元するヒステリシスコンパレータを備えることを特徴とする請求項6に記載の伝送システム。
【請求項9】
第1の接続部および第2の接続部を有する接続ケーブルをさらに備え、
前記第1の接続部は前記送信回路に接続され、前記第2の接続部には前記受信回路が配されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の伝送システム。
【請求項10】
前記受信回路に接続される表示パネルをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の伝送システム。
【請求項11】
第1の接続部および第2の接続部を有する伝送ケーブルであって、
前記第1の接続部は、矩形信号に対応する微分信号を出力する送信回路に接続可能であり、
前記第2の接続部は、前記微分信号を前記矩形信号に復元する受信回路を備えることを特徴とする伝送ケーブル。
【請求項12】
第1の電極および第2の電極を有する非接触の結合素子を用いて矩形信号を微分信号に変換し、
前記微分信号を伝送線を介して受信回路に伝送し、
前記受信回路によって前記微分信号を前記矩形信号に復元することを特徴とする伝送方法。
【請求項13】
複数の画素を含む表示パネルと、
送信回路と、
受信回路とを備え、
前記送信回路は、矩形信号が入力される第1の電極および前記矩形信号の微分信号を出力する第2の電極を有する非接触の結合素子を含み、
前記受信回路は、前記微分信号を伝送線を介して受信し、前記微分信号と閾値とを比較することにより、前記矩形信号を復元し、
復元された前記矩形信号は前記表示パネルに入力されることを特徴とする表示装置。
【請求項14】
前記送信回路は基板に実装され、
前記第1の電極および前記第2の電極は、前記基板において互いに対向する1対の配線パターンであり、
前記1対の配線パターンは前記基板における異なる2つの配線層に形成されることを特徴とする請求項13に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伝送システム、伝送ケーブル、伝送方法、および表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、誘導性結合または容量性結合など非接触結合を用いた伝送システムが案出されている。特許文献1に記載された伝送システムは、誘導性結合を用いてベースバンドの矩形信号を伝送する送信回路と、伝送された矩形信号と閾値とを比較することにより、矩形信号を復元する受信回路とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-053814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非接触結合素子は、直流成分の減衰量が大きくなる周波数特性を有している。このため、特許文献1に記載の伝送システムにおいて、同じシンボルの矩形信号が連続する場合、信号のレベルが次第に低下し、閾値よりも低くなることがある。この結果、信号を正しく復元できず、安定した信号伝送を行うことができなかった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、安定した信号伝送が可能な伝送システム、伝送ケーブル、伝送方法、および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、矩形信号が入力される第1の電極および前記矩形信号の微分信号を出力する第2の電極を有する非接触の結合素子を含む送信回路と、前記送信回路から出力される前記微分信号を伝送線を介して受信し、前記微分信号と閾値とを比較することにより、前記矩形信号を復元する受信回路とを備えることを特徴とする伝送システムが提供される。
【0007】
本発明の他の観点によれば、第1の接続部および第2の接続部を有する伝送ケーブルであって、前記第1の接続部は、矩形信号に対応する微分信号を出力する送信回路に接続可能であり、前記第2の接続部は、前記微分信号を前記矩形信号に復元する受信回路を備えることを特徴とする伝送ケーブルが提供される。
【0008】
本発明の他の観点によれば、第1の電極および第2の電極を有する非接触の結合素子を用いて矩形信号を微分信号に変換し、前記微分信号を伝送線を介して受信回路に伝送し、前記受信回路によって前記微分信号を前記矩形信号に復元することを特徴とする伝送方法が提供される。
【0009】
複数の画素を含む表示パネルと、送信回路と、受信回路とを備え、前記送信回路は、矩形信号が入力される第1の電極および前記矩形信号の微分信号を出力する第2の電極を有する非接触の結合素子を含み、前記受信回路は、前記微分信号を伝送線を介して受信し、前記微分信号と閾値とを比較することにより、前記矩形信号を復元し、復元された前記矩形信号は前記表示パネルに入力されることを特徴とする表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安定的に信号伝送が可能な伝送システム、伝送ケーブル、伝送方法、および表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態における伝送システムの回路ブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態における信号波形の一例である。
図3】本発明の第1実施形態における送信回路の回路図である。
図4】本発明の第1実施形態における受信回路の回路図である。
図5】本発明の第1実施形態における制御装置の回路基板の平面図である。
図6】本発明の第1実施形態における制御装置の回路基板の断面図である。
図7】本発明の第2実施形態における受信回路の回路図である。
図8】本発明の第3実施形態における微分回路の平面図である。
図9】本発明の第3実施形態における微分回路の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。明細書全般における同じ参照符号は、実質的に同一の構成要素を意味する。図に示した各構成の大きさおよび厚さは、説明の便宜のために示したもので、本発明が図示の構成の大きさおよび厚さに必ずしも限定されるものではない。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態における伝送システムの回路ブロック図であり、電子機器と信号を送受信するシステムの回路ブロック図である。電子機器は、例えば、表示装置であって、制御装置1とディスプレイ3とを含み得る。制御装置1とディスプレイ3とは、接続ケーブル2によって互いに電気的に接続される。
【0014】
制御装置1は、例えば、STB(Set Top Box)のような据え置き型の装置である。制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、信号処理回路11、送信回路12等を備える。CPUは、あらかじめ定められたアプリケーションプログラムに従い、制御装置1の全体の動作およびタイミングコントローラ32を含むディスプレイ3の全体の動作を制御する。ROMは、不揮発メモリ等のように電源遮断後においても記憶内容を保持し続ける。RAMは、CPUの動作のためのワークエリアとして用いられる。
【0015】
信号処理回路11は、電波またはケーブル等を介して放送信号を受信する。信号処理回路11は、復調、誤り訂正、復号処理を行うことによって、ディジタル放送、ケーブルテレビの放送信号等を映像信号および音声信号に変換する。復調処理において、例えば、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)復調が用いられ得る。誤り訂正において、例えば、Viterbi復号が用いられ得る。復号処理において、例えば、RS(Reed Solomon)復号化が用いられ得る。信号処理回路11は、さらに、DSP(Digital Signal Porcessor)、フレームメモリ等により構成され、ガンマ補正、ノイズリダクション処理等を映像信号に実行する。信号処理回路11は、映像信号および音声信号をシリアルの差動信号として、送信回路12に出力する。ここで、差動信号は、矩形波のディジタル信号であり、例えば、シリアルLVDS(Low Voltage Differential Signaling)信号等であり得る。差動信号は、互いに位相の異なる2つの信号を有し、1レーンにおいて2本の配線を用いて送信される信号である。差動信号は、コモンモード電圧を中心にして所定の電位差で変化する。コモンモード電圧は、例えば、1.2V等であり得る。所定の電位差は、例えば、LVDS信号において350mV等であり得る。
【0016】
送信回路12は、信号処理回路11から入力される矩形波のディジタル信号を微分信号に変換する。送信回路12は、接続ケーブル2を介して、微分信号をディスプレイ3に送信する。接続ケーブル2は、錫メッキ軟銅線等の導体、導体の周囲を覆う絶縁体、遮蔽テープ、編組シールド、シース等を備える。絶縁体は、例えば、ポリエチレン等であり得る。遮蔽テープは、例えば、アルミ、ポリエステル等で構成され得る。編組シールドは、例えば、錫メッキ軟銅線等であり得る。シースは、例えば、ポリ塩化ビニール等でありうる。接続ケーブル2は、両方の端部に接続端子を備える。接続ケーブル2は、複数の差動信号線20を備える。差動信号線20-1は微分信号の一方の信号をディスプレイ3に伝送し、差動信号線20-2は微分信号の他方の信号をディスプレイ3に伝送する。差動信号線20の数は、レーン数に応じて増減し得る。
【0017】
ディスプレイ3は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等の平面型表示装置である。ディスプレイ3は、受信回路31、タイミングコントローラ32、データドライバ33、データ線34、ゲートドライバ35、ゲート線36、パネル37を備える。受信回路31は、接続ケーブル2を介して、制御装置1から微分信号を受信する。受信回路31は、微分信号を矩形波のディジタル信号に復元し、タイミングコントローラ32に送信する。
【0018】
タイミングコントローラ32は、パネル37を制御するタイミング信号を生成する。タイミング信号は、例えば、データドライバ33に画素データを供給するタイミング、ゲートドライバ35にシフトクロックを供給するタイミング、画素の劣化防止のためのフレーム/ライン毎の反転パルス等を供給するタイミング等を制御し得る。
【0019】
パネル37は、マトリクス状に配置された複数の画素を備える。それぞれの画素は、発光素子、画素回路を備える。ディスプレイ3が有機ELディスプレイである場合、発光素子は、有機材料の発光層を有する。画素回路は、スイッチトランジスタ、駆動トランジスタ、コンデンサ等を備える。スイッチトランジスタおよび駆動トランジスタは、薄膜トランジスタ等を含む。それぞれの発光素子において、RGB(R:Red,G:Green,B:Blue)のカラーフィルタが設けられる。また、カラーフィルタを設ける代わりに、各色に発光可能な発光素子を用いてもよい。
【0020】
データドライバ33は、データ線34を介して、輝度信号に応じたデータ電圧をパネル37に印加する。ゲートドライバ35は、ゲート線36を介して、画素回路のスイッチトランジスタのゲートを駆動する。ゲートドライバ35は、順次、ゲート線36を選択する。ゲートドライバ35は、選択されたゲート線36に接続されたスイッチトランジスタをオンにする電圧をゲート線36に印加する。画素回路は、データ電圧に応じた駆動電流を発光素子に供給し、発光素子を発光させる。
【0021】
図2は、本実施形態における信号波形の一例である。図2において、横軸は時刻を表し、縦軸は振幅電圧を表す。図2(A)は、送信回路12における差動信号の信号波形である。差動信号は、ディジタル信号であり、矩形信号等であり得る。時刻t1において、矩形信号の電圧は、ローレベルからハイレベルに遷移する。時刻t2において、矩形信号の電圧は、ハイレベルからローレベルに遷移する。時刻t3,t4においても、同様に矩形信号の電圧が遷移する。
【0022】
図2(B)は、接続ケーブル2における微分信号の信号波形であり、図2(A)の矩形信号を微分した信号である。時刻t1において、矩形信号の電圧がローレベルからハイレベルに遷移すると、微分信号は矩形信号の電圧の変化量に応じたパルス波をなす。時刻t2において、矩形信号の電圧がハイレベルからローレベルに遷移すると、微分信号は矩形信号の電圧の変化量に応じたパルス波をなす。このように、微分信号は、矩形信号の立ち上がりに応じて正の電圧を有するパルス波を形成し、矩形信号の立ち下がりに応じて負の電圧を有するパルス波を形成する。
【0023】
図2(C)は、受信回路31の出力の波形であり、微分波形を矩形信号に復元した信号の波形である。図2(B)において、微分信号の電圧が所定の閾値th_H以上である場合、受信回路31の出力信号はハイレベルに遷移する。受信回路31が閾値th_L以下の電圧の微分信号を受信するまで、受信回路31はハイレベルの電圧を出力する。また、図2(B)において、微分信号の電圧が所定の閾値th_L以下である場合、受信回路31の出力信号はローレベルに遷移する。受信回路31が閾値th_H以上の電圧の微分信号を受信するまで、受信回路31はローレベルの電圧を出力する。
【0024】
時刻t1において、微分信号が正の電圧のパルス波であり、閾値th_H以上であるので、受信回路31はハイレベルの電圧を出力する。時刻t1~t2において、受信回路31が負の電圧のパルス波を受信しないので、受信回路31はハイレベルの電圧を出力し続ける。時刻t2において、微分信号が負の電圧のパルス波であり、閾値th_L以下であるので、受信回路31はローレベルの電圧を出力する。時刻t2~t3において、受信回路31が正の電圧のパルス波を受信しないので、受信回路31はローレベルの電圧を出力し続ける。このように、受信回路31は、微分信号に応じて、ローレベルからハイレベルへの矩形信号の電圧の遷移またはハイレベルからローレベルへの矩形信号の電圧の遷移を検知する。受信回路31は検知した電圧の遷移に基づき、ハイレベルの電圧またはローレベルの電圧を出力し、微分信号から矩形信号を復元する。
【0025】
図3は、本実施形態における送信回路の回路図である。信号処理回路11は、複数のレーンを介して矩形信号P1,N1を送信回路12に出力する。送信回路12は、変換IC13、駆動回路14、微分回路15、接続コネクタ16を備える。変換IC13は、オペアンプ131、デシリアライザ132、フォーマッタ133、シリアライザ134、オペアンプ135、コントローラ136、PLL(Phase Locked Loop)137を備える。オペアンプ131は、信号処理回路11とデシリアライザ132とを接続する。オペアンプ131は、矩形信号P1,N1のレーン毎に設けられ、矩形信号P1,N1の差分信号を出力する。デシリアライザ132は、シリアルの差分信号をパラレル信号に変換する。パラレル信号は、フォーマッタ133に入力される。
【0026】
フォーマッタ133は、信号の伝送方式を異なる伝送方式に変換する。例えば、フォーマッタ133は、LVDS信号をV-by-One(登録商標)HS信号、eDP(embedded DisplayPort)信号等に変換する。変換した信号は、シリアライザ134に入力される。
【0027】
シリアライザ134は、パラレル信号をシリアル信号に変換し、オペアンプ135に出力する。オペアンプ135は、シリアル信号をシリアルの差動信号に変換する。このように、変換IC13は、シリアルの差動信号を異なる伝送方式のシリアルの差動信号に変換する。
【0028】
コントローラ136は、信号処理回路11からディスプレイ3の色深度ビット数の設定、プリエンファシスの設定等を受信する。色深度ビット数は、例えば、6,8,10,12ビット等であり得る。プリエンファシスの設定は、伝送路の特性によって生じる信号の立ち上がりおよび立ち下がりのなまりを補正するためのパラメータ等であり得る。また、コントローラ136には、接続コネクタ16および配線138-3を介して、ディスプレイ3から制御信号が入力される。制御信号は、ディスプレイ3の電源のオンまたはオフを表す信号、制御装置1とディスプレイ3との通信確立を表す信号等であり得る。PLL137は、位相比較器、ループフィルタ、電圧制御発振器、分周器等から構成され、フォーマッタ133、シリアライザ134の出力信号の位相を同期させる。変換IC13は、配線138-1,138-2を介して、駆動回路14に矩形信号P2,N2を出力する。
【0029】
駆動回路14は、オペアンプ141,142を備え、矩形信号P2,N2を所定の電圧に増幅する。駆動回路14は、変換IC13の矩形信号P2,N2のレーン毎に設けられる。駆動回路14は、配線143-1を介して微分回路15Pに矩形信号P3を出力し、配線143-2を介して微分回路15Nに矩形信号N3を出力する。
【0030】
微分回路15P,15Nは、差動信号を微分する回路であり、レーン毎の矩形信号P3,N3に対して設けられる。微分回路15Pは矩形信号P3を微分し、微分回路15Nは矩形信号N3を微分する。微分信号P4は、配線150-1を介して接続コネクタ16に入力され、微分信号N4は、配線150-2を介して接続コネクタ16に入力される。
【0031】
微分回路15P,15Nは、終端抵抗151,153、キャパシタ152を備える。キャパシタ152の一方の電極は駆動回路14の出力ノードに接続され、キャパシタ152の他方の電極は配線150を介して接続コネクタ16に接続される。終端抵抗151はキャパシタ152の一方の電極と接地配線に接続され、終端抵抗153はキャパシタ152の一方の電極と接地配線に接続される。接続コネクタ16は、接続ケーブル2と接続される。
【0032】
図4は、本実施形態における受信回路の回路図である。受信回路31は、接続コネクタ311、比較器312を備え、送信回路12から送信された微分信号P4,N4を矩形信号に復元する。接続コネクタ311は電気端子、ハウジングを備え、接続ケーブル2の端部に設けられたコネクタに着脱自在に接続され得る。
【0033】
比較器312は、2つの閾値th_H,th_Lを有するヒステリシスコンパレータであり、配線317-1および配線317-2を介して接続コネクタ311と電気的に接続される。微分信号P4,N4は配線317-1,317-2を介して比較器312に入力される。比較器312において、微分信号P4,N4の電圧差が閾値th_H,th_Lを超えると、比較器312は2つの閾値th_H,th_Lによってヒステリシスの動作を行い、微分信号P4,N4を矩形信号P5,N5に復元する。以下、図2を参照しながら比較器312の動作を説明する。
【0034】
図2の時刻t1において、微分信号P4が微分信号N4に対して閾値th_Hだけ高くなると、矩形信号P5,N5のレベルが反転する。時刻t11において、微分信号P4,N4の電圧差が閾値th_Hよりも小さくなったとしても、比較器312の状態は変化しない。このため、矩形信号P5,N5のレベルも変化しない。時刻t2において、微分信号P4,N4の電圧差が閾値th_Lよりも小さくなると、矩形信号P5,N5のレベルが反転する。
【0035】
上述したように、ヒステリシスを有する比較器312によって微分信号P4,N4を矩形信号P5,N5に復元することが可能となる。矩形信号P5,N5は配線318-1,318-2を介してタイミングコントローラ32に入力される。また、タイミングコントローラ32からは、配線318-3を介して制御信号が接続コネクタ311に出力される。制御信号は、例えば、ディスプレイ3の電源のオンまたはオフを表す信号、制御装置1とディスプレイ3との通信確立を表す信号を含む。なお、受信回路31は、タイミングコントローラ32に設けられてもよい。
【0036】
図5は、本実施形態における制御装置の回路基板の平面図である。図6は、本実施形態における制御装置の回路基板の断面図であり、図5のVI-VI’線における回路基板の断面図である。図5において、回路基板4の主面に平行であり、直交する2方向をX方向およびY方向とし、回路基板4の主面に対する鉛直方向をZ方向とする。回路基板4は、絶縁層と配線層とを含む多層基板であり得る。絶縁層は、例えば、PCB(Printed Circuit Board)であり、紙フェノール、ガラスエポキシ等で構成され得る。配線層は、銅、アルミニウム等で構成され得る。回路基板4は、一の主面41においてビアホール154,157を備え、他の主面42においてビアホール158,159を備える。
【0037】
信号処理回路11と変換IC13とは、回路基板4の主面41において隣接して設けられる。信号処理回路11は、変換IC13と電気的に接続される。変換IC13は、配線138-1,138-2を介して駆動回路14と電気的に接続される。また、変換IC13は、配線138-3を介して接続コネクタ16と電気的に接続される。駆動回路14は、Y方向に所定の間隔で配置される。駆動回路14は、配線143-1,143-2を介してビアホール154と電気的に接続される。ビアホール154は、駆動回路14に隣接して、Y方向に沿って設けられる。微分回路15P,15Nは、対称をなして設けられることが好ましく、微分回路15P,15Nは、平面視においてX方向に関して対称をなす。
【0038】
キャパシタ152は、第1の電極152A、第2の電極152Bからなる。電極152A,152Bは、配線150-1,150-2と同様の素材で構成される。電極152A,152Bの素材は、例えば、銅、アルミニウム等であり得る。電極152A,152Bは、平面視において長方形をなす。電極152A,152Bの形状は長方形に限定されず、例えば、台形、平行四辺形等であってもよい。X方向における電極152A,152Bの長さは、例えば、5mmであり得る。Y方向における電極152A,152Bの長さは、例えば、1mmであり得る。また、電極152A,152Bは、断面視において配線層と同様の厚さを有し得る。
【0039】
平面視において、電極152A,152Bは、重なって設けられる。電極152A,152Bは、X方向に延在し、Y方向に所定の間隔を設けて配置される。所定の間隔は、電極152A,152Bと隣り合う他の電極152A,152Bとが、クロストークを生じない長さであればよい。所定の間隔は、例えば、Y方向における電極152A,152Bの長さの3倍以上であることが好ましい。断面視において、電極152A,152Bは、互いに異なる配線層に設けられ得る。電極152A,152Bは非接触であり、絶縁層を介して対向して設けられ得る。断面視における電極152A,152Bの間隔は、絶縁層の厚さと同様であり、例えば、1mmであり得る。
【0040】
主面41の配線層と電極152Aが設けられた配線層とは、ビアホール154を介して、主面41に対して鉛直方向に電気的に接続される。X方向における電極152Aの一方の端子は、ビアホール154と電気的に接続される。X方向における電極152Aの他方の端子は、ビアホール158と電気的に接続される。電極152Aが設けられた配線層と主面42の配線層とは、ビアホール158を介して、主面42に対して鉛直方向に電気的に接続される。ビアホール158は、主面42において終端抵抗151と電気的に接続される。
【0041】
終端抵抗153は、主面42においてビアホール159と電気的に接続される。主面42の配線層と電極152Bが設けられた配線層とは、ビアホール159を介して、主面42に対して鉛直方向に電気的に接続される。X方向における電極152Bの一方の端子は、ビアホール159と電気的に接続される。X方向における電極152Bの他方の端子は、ビアホール157と電気的に接続される。電極152Bが設けられた配線層と主面41の配線層とは、ビアホール157を介して、主面41に対して鉛直方向に電気的に接続される。ビアホール157は、主面41において配線150-1を介して接続コネクタ16と電気的に接続される。接続コネクタ16は、X方向における回路基板4の端部に沿って設けられる。接続コネクタ16は、接続ケーブル2を介して、ディスプレイ3と電気的に接続される。
【0042】
回路基板4において、電極152A,152Bは互いに対向し、絶縁層を介して異なる2つの配線層に設けられる。電極152A,152Bは、キャパシタ152を形成する。電極152Aに矩形信号が入力され、電極152Bから微分信号が出力される。このように、キャパシタ152は、矩形信号を微分信号に変換する。
【0043】
以上に述べたように、本実施形態によれば、送信回路において、第1の電極に矩形信号が入力され、第2の電極から微分信号が出力され、受信回路に出力される。受信回路は、微分信号と閾値とを比較することにより、微分信号を矩形信号に復元することができる。これにより、伝送システムは安定した信号伝送をすることが可能となる。
【0044】
[第2実施形態]
続いて、本実施形態における伝送システムについて説明する。本実施形態における伝送システムは、接続端子に受信回路が設けられる点において、第1実施形態における伝送システムと異なる。以下、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0045】
図7は、本実施形態における受信回路の回路図である。接続ケーブル2は、接続端子21、ケーブル22、接続端子23を備える。接続端子21は、制御装置1に接続される。ケーブル22は、差動信号線20-1,20-2を備え、受信回路31に微分信号P4,N4を伝送する。接続端子23は、受信回路31、端子231を備え、ディスプレイ3に接続される。微分信号P4,N4は、差動信号線20-1,20-2を介して受信回路31に入力される。
【0046】
受信回路31は、接続端子23の内部に設けられる。受信回路31は比較器312を備え、ケーブル22を介して接続端子21と電気的に接続される。また、受信回路31は、配線318-1,318-2を介して端子231と電気的に接続される。受信回路31は、比較器312を用いて、微分信号P4,N4を矩形信号P5,N5に復元する。矩形信号P5,N5は、端子231を介してディスプレイ3に送信される。このように、受信回路31が接続端子23に設けられることにより、ディスプレイ3は回路を改修することなく、制御装置1から送信された微分信号P4,N4を矩形信号P5,N5として受信することが可能となる。
【0047】
以上に述べたように、本実施形態によれば、既存の電子機器等の受信回路を改修することなく、電子機器に伝送システムを適用することが可能となる。
【0048】
[第3実施形態]
続いて、本実施形態における伝送システムについて説明する。本実施形態における伝送システムは、キャパシタを構成する第1の電極と第2の電極とが、同じ配線層に設けられる点において、第1実施形態における伝送システムと異なる。以下、第1実施形態と異なる構成を中心に説明する。
【0049】
図8および図9は、本実施形態における制御装置の回路基板の平面図である。図8において、電極152Aは、略長方形に形成される。電極152Aの一方の端子は、駆動回路14と電気的に接続される。電極152Aの他方の端子は、終端抵抗151を介して接地配線と電気的に接続される。電極152Bは、電極152Aと同様に略長方形に形成され、X-Y平面において電極152Aと対称をなして設けられる。電極152A,152Bの形状は長方形に限定されず、例えば、台形、平行四辺形等であってもよい。電極152Bの一方の端子は、配線150-1,150-2を介して接続コネクタ16と電気的に接続される。電極152Bの他方の端子は、終端抵抗153を介して接地配線と電気的に接続される。電極152A,152Bは、同一の配線層において、対向して設けられる。図9に示すように、電極152Aおよび152Bは、櫛形に形成されてもよい。電極152A,152Bが櫛形に形成される場合、電極152A,152BはX-Y平面において互いに対称をなして設けられ、電極152Aの配線パターンと電極152Bの配線パターンとが、交互に嵌合するように設けられる。このように、電極152A,152Bは、同一の配線層においてキャパシタ152を形成することが可能となる。なお、電極152A,152Bは、PCBに限らず、FPC(Flexible Printed Circuits)等に設けられてもよい。
【0050】
以上に述べたように、本実施形態によれば、微分回路を回路基板に表面実装することができ、回路基板を薄くすることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 :制御装置
12 :送信回路
15 :微分回路
151 :終端抵抗
152 :キャパシタ
152A:第1の電極
152B:第2の電極
2 :接続ケーブル
3 :ディスプレイ
31 :受信回路
312 :比較器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9