(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104316
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】脳刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/377 20210101AFI20220701BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
A61B5/04 320N
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219454
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】竹田 真己
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053JJ04
4C053JJ13
4C053JJ21
4C053JJ40
4C127AA03
4C127BB05
4C127CC04
4C127DD05
4C127FF02
4C127GG11
(57)【要約】
【課題】観測される脳波の位相のずれに応じた信号で脳を刺激すること。
【解決手段】脳波計(11+C1)で計測された脳波の時間的な履歴である脳波パターン(21)に基づいて、脳波パターン(21)の特徴を抽出する特徴抽出手段(C2)と、脳波パターン(21)の特徴に基づいて、脳を刺激するための波形(16)を生成する波形生成手段(C3)であって、脳波の発生源での脳波の位相と脳波計(11+C1)で測定される位置での脳波の位相とのずれに基づいて、脳波パターン(21)の波形の位相に対して位相がずれた脳波を刺激するための波形(16)を生成する波形生成手段(C3)と、被験者(2)の脳に波形生成手段(C3)で生成された波形の刺激を与える刺激手段(C4)と、を備えた脳刺激装置(1)。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の脳波を測定する脳波計と、
前記脳波計で計測された脳波の時間的な履歴である脳波パターンに基づいて、脳波パターンの特徴を抽出する特徴抽出手段と、
前記特徴抽出手段で抽出された脳波パターンの特徴に基づいて、脳を刺激するための波形を生成する波形生成手段であって、脳波の発生源での脳波の位相と前記脳波計で測定される位置での脳波の位相とのずれに基づいて、前記脳波パターンの波形の位相に対して位相がずれた前記脳波を刺激するための波形を生成する前記波形生成手段と、
前記被験者の脳に電気的に刺激を与える刺激手段であって、前記波形生成手段で生成された波形の刺激を与える前記刺激手段と、
を備えたことを特徴とする脳刺激装置。
【請求項2】
前記脳波パターンの特徴として、脳波パターンの周波数のパワー比を使用する
ことを特徴とする請求項1に記載の脳刺激装置。
【請求項3】
前記脳波を刺激する波形として、前記脳波パターンの周波数に対応する波形を包絡波とし且つ前記脳波パターンの周波数よりも高周波数の波形を使用する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の脳刺激装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の脳活動に対して電流刺激を与える脳刺激装置に関し、特に、てんかんやうつ病、言語障害、統合失調症、パーキンソン病、脳卒中患者のリハビリテーション、難治性疼痛、睡眠障害等の脳活動に関連する疾患に対する治療にも使用可能な脳刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の脳科学研究において、脳活動に関連する疾患に対して電流刺激によって症状の改善を図る技術として、以下の特許文献1-3、非特許文献1に記載の技術が公知である。
特許文献1(特開2018-68511号公報)には、刺激付与装置(2)の電極(26)を介して被験者の脳波を計測し、脳波の判定結果から、DMN(Default Mode Network)を活性化させるように第2電極(27)から微弱電流を発生させて、刺激を付与する技術が記載されている。特許文献1に記載の技術では、脳波信号の周波数スペクトルからα波、β波、θ波、δ波の信号成分を特定し、複数の脳領域(複数のチャンネル)でα波成分の位相が同位相となっていなかったり、α波成分の振幅が閾値以上となっていないようなDMNが不活動状態の場合には、DMNを活性化させるべく被験者の頭部に刺激を付与している。また、特許文献1に記載の技術では、付与する刺激は、全ての領域に対してα帯域の周波数で振幅し且つ同位相の交流電流(サイン波)や、同周波数且つ同位相の交流電流を付与したり、DMNに係る活動性が低い一部の脳領域に対してのみ他のDMN該当領域と同位相の微弱電流を付与したり、DMN該当領域ではない領域に対して脳波を減退させるように微弱電流を付与したり、DMN該当領域に係るα波成分の位相差に応じて刺激を付与するタイミングを制御したりしている。
【0003】
特許文献2(特表2020-500567号公報)には、睡眠時に測定された脳波信号に含まれるゆっくりとした振動の発生に応じて、スピンドル類似刺激を脳に印加して、睡眠中の脳刺激による記憶力の向上を図る技術が記載されている。特許文献2では、スピンドル類似刺激のスピンドル成分(230)の周波数は、脳波のスピンドル成分の周波数の範囲内に設定されたり、同位相に設定されている。
【0004】
特許文献3(特開昭62-155863号公報)には、検出された脳波のα波の成分と同位相の微弱な電流を電極(12)から流して、脳波中のα波を同期させて高めて、意識集中、瞑想、精神安定状態に入りやすくする技術が記載されている。
【0005】
非特許文献1には、長期記憶の向上を図るために、睡眠時に測定された脳波のゆっくりとした波(低周波脳波)に応じて、同じ周波数かつ同じ位相の電流刺激を与える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-68511号公報(「0019」-「0020」、「0027」、「0038」-「0041」、「0065」-「0069」、「0072」、
図7、
図8、
図11、
図13、
図15)
【特許文献2】特表2020-500567号公報(「0036」-「0048」)
【特許文献3】特開昭62-155863号公報(第2ページ左下欄第19行-第3ページ右上欄第3行)
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Nicholas Ketz,他4名、"Closed-Loop Slow-Wave tACS Improves Sleep-Dependent Long-Term Memory Generalization by Modulating Endogenous Oscillations", The Journal of Neuroscience, August 15 2018, 38(33):7314-7326
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記従来技術では、脳活動に電流刺激を与える際に、測定された脳波と同位相の電流を与えたりして、内因性の脳波位相を考慮せずに電流を与えていた。すなわち、容積伝導の影響により、脳の内部における脳波の電位発生源から頭の外表面に設置される脳波計の検出位置に脳波が到達するまでに時間的なずれが生じることで、脳波の位相遅れが生じる。
従って、従来の手法では、電流刺激の効果が不十分であったり、内因性の脳波の位相と逆位相の場合は、逆効果になる可能性がある。これは、人を対象とした脳科学研究における電流刺激の効果が一貫した傾向を示していない原因の一つの可能性があるだけでなく、臨床応用に電流刺激を用いる際の危険因子の一因にもなる。
【0009】
本発明は、観測される脳波の位相のずれに応じた信号で脳を刺激することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の脳刺激装置は、
被験者の脳波を測定する脳波計と、
前記脳波計で計測された脳波の時間的な履歴である脳波パターンに基づいて、脳波パターンの特徴を抽出する特徴抽出手段と、
前記特徴抽出手段で抽出された脳波パターンの特徴に基づいて、脳を刺激するための波形を生成する波形生成手段であって、脳波の発生源での脳波の位相と前記脳波計で測定される位置での脳波の位相とのずれに基づいて、前記脳波パターンの波形の位相に対して位相がずれた前記脳波を刺激するための波形を生成する前記波形生成手段と、
前記被験者の脳に電気的に刺激を与える刺激手段であって、前記波形生成手段で生成された波形の刺激を与える前記刺激手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の脳刺激装置において、
前記脳波パターンの特徴として、脳波パターンの周波数のパワー比を使用する
ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の脳刺激装置において、
前記脳波を刺激する波形として、前記脳波パターンの周波数に対応する波形を包絡波とし且つ前記脳波パターンの周波数よりも高周波数の波形を使用する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、観測される脳波に同期させた信号を付与する従来技術に比べて、観測される脳波の位相のずれに応じた信号で脳を刺激することができ、脳波の発生源に目的の刺激を付与することができる。
請求項2に記載の発明によれば、周波数のパワー比を使用しない場合に比べて、ノイズの悪影響を抑制できる。
請求項3に記載の発明によれば、包絡波を有する高周波数の波形を使用して、脳波パターンに対応した高周波の刺激を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図2は実施例1の扇絵図の変換装置の制御部の説明図である。
【
図4】
図4は実施例1の検出された波形と生成波形の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例0016】
図1は本発明の脳刺激装置の説明図である。
図1において、本発明の脳刺激装置1は、被験者2の頭部3に装着されるヘッドギア4と、ヘッドギア4と信号の送受信が可能なコンピュータ装置6とを有する。コンピュータ装置6は、コンピュータ本体7と、表示部の一例としてのディスプレイ8と、入力部の一例としてのキーボード9およびマウス10を有する。
【0017】
ヘッドギア4には、脳波の検出部の一例としての第1の電極11が複数配置されている。また、ヘッドギア4には、刺激付与部の一例としての第2の電極12が複数配置されている。第2の電極12は、コンピュータ装置6からの制御信号に応じて、電気的な刺激の一例としての電流を頭部3に付与可能に構成されている。なお、第1の電極11と第2の電極12を1つの電極で兼用、共通化させる構成とすることも可能である。また、各電極11,12の数は、一例として32個(すなわち、32チャンネル)としているが、個数は例示した数値に限定されず、設計や仕様等に応じて任意に変更可能である。
なお、電気的な刺激を電極で付与する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、コイル(電磁石)を使用して、複数のコイルから発生する磁場による電磁誘導で脳の特定の位置に電気的な刺激を付与する構成とすることも可能である。
【0018】
(実施例1の制御部の説明)
図2は実施例1の扇絵図の変換装置の制御部の説明図である。
制御部の一例としてのコンピュータ本体7は、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/Oを有する。また、コンピュータ本体7は、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリを有する。また、コンピュータ本体7は、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリを有する。また、コンピュータ本体7は、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置を有する。よって、コンピュータ本体7は、ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0019】
(コンピュータ本体7の機能)
コンピュータ本体7は、キーボード9やマウス10、第1の電極11、その他の図示しないセンサ等の信号出力要素からの入力信号に応じた処理を実行して、ディスプレイ8、第2の電極12等の被制御要素に制御信号を出力する機能(処理手段)を有している。
【0020】
脳波検出手段C1は、第1の電極11からの入力信号に基づいて、被験者2の脳波を検出する。なお、第1の電極11および脳波検出手段C1により、実施例1の脳波計(11+C1)が構成されている。なお、脳波計自体は従来公知(例えば、特許文献1-3等参照)であり、種々の構成を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0021】
特徴抽出手段C2は、脳波検出手段C1で検出された脳波の時間的な履歴である脳波パターン(すなわち、脳波の波形)に基づいて、脳波パターンの特徴を抽出する。実施例1の特徴抽出手段C2では、脳波パターンの特徴として周波数のパワー比を抽出する。具体的には、実施例1の特徴抽出手段C2は、まず、予め定められた脳波解析時間(一例として5秒間)における脳波パターンにおいて、予め定められた設定周波数(より正確には「設定周波数帯」、一例として10~15Hz)でフィルタリング(バンドパスフィルタ)を行う。次に、予め定められた脳波解析時間ステップ(脳波解析時間間隔、一例として100ms)毎に、脳波解析時間における設定周波数パワーと、全周波数(一例として1Hz-250Hz)パワーを計算し、パワー比(設定周波数パワー/全周波数パワー)を計算する。
【0022】
図3は実施例1の生成波形の説明図である。
波形生成手段C3は、特徴抽出手段C2で抽出された脳波パターンの特徴に基づいて、被験者2の脳を刺激するための波形16を生成する。
図3において、実施例1では、設定周波数に対応する包絡波(エンベロープ波)16aを有し、設定周波数よりも高周波数の波形16を生成する。この時の波形16の周波数は、一例として、設定周波数の5倍の周波数を有する波形16とすることが可能であるが、例示した数値に限定されず、実験や治療結果、個人差等に応じて、任意の倍数の高周波数とすることが可能である。なお、波形16は、
図3で例示したエンベロープ波16aを有する波形であることが望ましいが、設定周波数に応じたサイン(sin)波とすることも可能であるし、三角波や鋸波、矩形波等とすることも不可能ではない。
【0023】
図4は実施例1の検出された波形と生成波形の説明図である。
なお、
図4の波形は、説明をわかりやすくするためにsin波で説明しているが、実際に観測される波形や生成される波形はsin波に限定されない。
また、実施例1の波形生成手段C3は、特徴抽出手段C2で抽出されたパワー比が、予め定められたパワー比閾値(一例として0.2)を超えているかを計算する。そして、パワー比がパワー比閾値を超えていたタイミングに基づいて、刺激タイムポイント、すなわち、生成波形の付与時期(付与タイミング)を設定する。実施例1の波形生成手段C3は、脳波の発生源での脳波の位相と脳波計(11+C1)で測定される位置(各第1の電極11の位置)での脳波の位相とのずれに基づいて、脳波パターンの波形の位相に対して位相がずれた波形を生成する。
図4において、実施例1では、脳波計(11+C1)で観測される波形21は、脳波の電位発生源である神経源で発生する波形22に対して、神経源から第1の電極11に到達する時間分だけ位相がずれる。
例えば、神経源と第1の電極11との距離およびその間の容積伝導は、脳刺激装置1が使用される用途に応じて異なり、例えば、用途がうつ病の対応であれば、脳波の電位発生源は左背外側前頭前野となり、各第1の電極11との距離と容積伝導を使用可能である。
【0024】
従来の構成では、観測された波形21に同期させる波形23を形成していたが、この波形の刺激では、神経源に到達する際のタイムラグで波形24のように位相がずれ、神経源において、波形22と波形24とでは、位相のずれが大きくなる恐れがあり、目的とする電気刺激の効果が得られにくい問題があった。
これに対して、実施例1では、観測される脳波の波形21の位相のずれθ1に基づいて、第2の電極12と神経源との距離に応じて位相をずらした波形16(
図4では、エンベロープ波16aで表記)を生成する。したがって、生成された波形16(16a)は、神経源に到達した場合に、波形22との位相のずれがなく、神経源に対して目的とする電気刺激を付与することが可能である。なお、ずれθ1は、電位発生源(神経源)の脳部位と第1の電極11の間の距離および容積伝導により求められる。
刺激手段C4は、第2の電極12を介して、被験者2の脳に電気的に刺激を与える刺激手段であって、波形生成手段C3で生成された波形16の刺激を与える。
【0025】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の脳刺激装置1では、脳波計11+C1で計測された脳波パターンに応じて、波形16が生成される。実施例1で生成される波形16は、神経源から第1の電極11に到達する時間のずれに応じて、第2の電極12と神経源との距離分の位相がずれた波形が生成される。従って、第2の電極12から電気刺激が付与されると、神経源において、目的とする位相の電気刺激が付与される。よって、実施例1では観測される脳波の位相のずれに応じた信号で脳を刺激することができる。したがって、従来では神経源における位相のずれで目的とする効果が得られない場合があることに対して、実施例1では、神経源において目的とする電気刺激を付与することができる。
【0026】
また、実施例1の脳刺激装置1では、脳波パターンの特徴を抽出する際に、脳波パターンの周波数のパワー比を使用している。特許文献1に記載の振幅の閾値を使用して特徴の抽出を行う場合は、脳波パターンにノイズが含まれると、本来閾値を超えていないのに、ノイズで閾値を超えたと誤判定される場合がある。これに対して、周波数のパワー比を使用する場合は、ノイズの周波数が設定周波数と同一になる可能性はほとんどなく、振幅の閾値を使用する場合に比べてノイズの悪影響が抑制される。
【0027】
さらに、実施例1の脳刺激装置1では、波形16として、設定周波数のエンベロープ波16aを有する高周波の波が生成される。一般に、神経細胞の発火(神経活動)は、観測される脳波よりも周波数が高い。これは観測される脳波が、数多くの神経細胞の発火の重ね合わせであるためである。したがって、脳波計11+C1で計測される脳波は、神経活動に対して低周波の波しか検知されていない。よって、実施例1では、これに対応して、観測される脳波パターンに対して、実験等に応じて高周波の波16を生成する。したがって、脳波計で観測される波形に同期する波形しか使用されない従来技術に比べて、神経活動(神経細胞の発火)に対して効果的な刺激を付与することができる。
【0028】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)~(H07)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、脳波計11+C1で観測される脳波パターンに基づいて、刺激手段C4で自動的に刺激を付与する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、利用者の入力(外部トリガ)があった場合にのみ刺激を付与する構成とすることが可能である。また、脳波パターンの観測と刺激する波形16の生成のみを行い刺激を行わない観測モードのみを備える構成とすることも可能である。
(H02)前記実施例において、脳波パターンの特徴を抽出する際に、周波数のパワー比を使用する構成を例示したがこれに限定されない。例えば、脳波パターンの観測波形21の振幅を閾値で判別する構成とすることも可能である。
【0029】
(H03)前記実施例において、設定周波数は、利用者の入力や治療対象の症状に応じてあらかじめ設定することが可能であるが、これに限定されない。例えば、観測される波形21で最もパワーの大きな周波数を設定周波数に自動的に選定する構成とすることも可能である。また、設定周波数は、1つの場合を例示したがこれに限定されない。2つ以上の設定周波数を使用して、各設定周波数に応じた波形を合成した波形を出力する波形16として生成することも可能である。さらに、設定周波数は、設定周波数帯のように所定の幅を持つ場合を例示したが、幅を有しない特定の値のみとすることも可能である。
(H04)前記実施例において、エンベロープ波16aを有する構成とすることが望ましいが、エンベロープ波16aを有しない構成とすることも可能である。すなわち、対象となる症状や利用者が付与したい刺激に応じて、生成される波形16が、設定周波数と同じ周波数であったり、設定周波数よりも低周波の構成とすることも可能である。
【0030】
(H05)前記実施例において、生成される波形16の位相は、神経源において発生する脳波の波形22の位相と一致するように位相をずらして形成したがこれに限定されない。例えば、目的とする刺激が、神経源で発生する脳波の波形22と逆位相である場合には、生成される波形16は、波形22の位相と一致する位相に対して更に半周期位相をずらした波とすることが可能である。すなわち、神経源に付与したい目的の波の位相に応じて、生成する波形16の位相を変更可能である。
(H06)前記実施例において、脳波の検出部である第1の電極11では、特定の設定周波数の計測を行う構成を例示したが、これに限定されない。例えば、ある電極(11a)では設定周波数(x)を計測し、別の電極(11b)では別の設定周波数(y)を計測するようにすることも可能である。
【0031】
(H07)前記実施例において、複数の第2の電極12の全てで、生成された特定の波形16を付与する構成を例示したがこれに限定されない。例えば、ある電極(12a)では、ある周波数(x′)の波形の刺激を付与し、別の電極(12b)では別の周波数(y′)の波形の刺激を付与する構成とすることも可能である。他にも、ある電極(12a)では、位相のずれがある量(θ1)の波形の刺激を付与し、別の電極(12b)では逆位相(θ1+π)の波形の刺激を付与するといった構成とすることも可能である。