(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104340
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】加熱料理提供システム
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20220701BHJP
【FI】
A47J27/00 107
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219498
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】396007362
【氏名又は名称】株式会社ペッパーフードサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100094547
【弁理士】
【氏名又は名称】岩根 正敏
(72)【発明者】
【氏名】一瀬 邦夫
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA01
4B055BA23
4B055BA38
4B055CA68
4B055DB14
4B055FA01
4B055FA14
4B055FB54
4B055FC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】固形燃料等を着火したり、火力調整したりすることなく、料理の温度を温かい状態に長時間保つことのできる加熱料理提供システムを提供する。
【解決手段】加熱料理の提供方法を実施するための加熱料理提供システムであって、耐水加工を施した紙からなる紙鍋2と、紙鍋を載置できる蓄熱器1と、蓄熱器を加熱するため厨房に配置された加熱装置と、加熱料理3が容れられた紙鍋と、紙鍋を載置した蓄熱器と、蓄熱器を厨房から客席に運ぶために蓄熱器を載置する盆5を備える加熱料理提供システムである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厨房において加熱料理の具材を容れた鍋を加熱装置で加熱した後、上記鍋に容れられた加熱料理をお客様のもとに運び、お客様に加熱料理を加熱しながら食していただく加熱料理の提供方法を実施するための加熱料理提供システムであって、
上記鍋が耐水加工を施した紙からなる紙鍋であることと、
上記紙鍋を載置できる蓄熱器を備えることと、
上記蓄熱器を加熱するため厨房に配置された加熱装置を備えることと、
加熱料理が容れられた上記紙鍋と、該紙鍋を載置した上記蓄熱器と、該蓄熱器を厨房から客席に運ぶために上記蓄熱器を載置する盆とを備えることを特徴とする、
加熱料理提供システム。
【請求項2】
上記蓄熱器が磁性材料からなり、上記加熱装置が電磁誘導加熱器であることを特徴とする、請求項1に記載の加熱料理提供システム。
【請求項3】
上記蓄熱器がほぼ平面状の底面と該底面周縁が立ち上がった側面を有する皿状形状であることを特徴とする、請求項1に記載の加熱料理提供システム。
【請求項4】
上記蓄熱器を上記盆の上に載置した時、蓄熱器の底面と上記盆との間に非接触部が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の加熱料理提供システム。
【請求項5】
上記紙鍋の外延部と上記蓄熱器の間に空気層が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の加熱料理提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱料理提供システムに関するもので、特に、ガスコンロあるいはアルコール燃料等の裸火を使う熱源を不要にした加熱料理提供システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この明細書、特許請求の範囲、および図面において、「加熱料理」とは、すき焼き鍋、寄せ鍋、湯豆腐、ちゃんこ鍋等の日本の鍋料理のように加熱しながら食することが重要な役割を果たす料理を意味し、ポトフ、リゾット、ブイヤベース、キムチ鍋、トムヤンクン等の外国料理をも含む概念である。また、従来のレシピでは加熱しながら食する料理ではなくても、レシピを変えて、加熱しながら食する料理としたものもこの明細書等で定義する加熱料理に該当する。例えば、ハンバーグ、カレー、トンカツ、雑炊、リゾット等も加熱しながら食する料理として提供する場合は、この明細書等では加熱料理の範疇に属するものである。
【0003】
加熱料理の従来例として、調理されたビーフステーキを陶器製の大皿に盛りつけるのではなく、鉄製の皿の上に肉を置きその鉄製の皿を電磁誘導加熱器で300℃程度に加熱し、その高温状態の鉄製の皿に肉を置いた状態で料理を客席に運び、客席で皿の余熱で皿上の肉を更に加熱する料理がある。お客様はその状態で料理を食する(なお、野菜を添えたりソースをかけたりすることは、お客様の前で行う場合と厨房において行う場合がある)。この場合は、鉄製の皿は料理を盛り付ける皿としての機能と、鉄の高い透磁率により電磁誘導加熱器と協働して高温にする機能と、皿の大きい熱容量により余熱により肉を客席で保温するという、少なくとも三つの機能を有する。
【0004】
鍋料理は暖かい状態で食すべきものである。従って、料理店や旅館で提供する場合には、具材を入れた鍋と、温度を維持するために鍋を加熱する熱源とともに提供する必要がある。例えば、レストランや旅館などで鍋もの料理を提供する際、具材を容れた小さな土鍋等を、固形燃料、卓上コンロ、卓上電磁調理器等とともにお客様のもとに運び、旅館の従業員が固形燃料等を着火したり、火力調整したりすることがある。時には、お客様自身がそれらを行うこともある。
【0005】
特許文献1(特開2003-249336)は、適温に加熱した保温性に優れた鉄皿に、ライスとスライスした生の牛肉などを載せてお客様に提供し、お客様自らがコショウとオリジナルのバター及びソースを生の牛肉などに混ぜて好みの焼き加減に焼き、ライスとともに食する加熱料理を提供する際に使用する、電磁誘導加熱によって加熱される鉄板の温度を制御する装置を開示している。その明細書中に、「生肉を焼く場合においては、250℃を越える高温で一気に表面を焼かなければ、肉のうま味が出てしまい、味の悪いものとなる。一方、鉄皿が300℃を越える高温であると、鉄皿上に載せた種々の素材が焦げてしまい、好ましくない。そこで、鉄皿の加熱温度は、290~300℃が適温とされている」と記載されている。
【0006】
特許文献2(特開2007-054417)は、皿状の容器を電磁誘導加熱し、そこに、ご飯、野菜等に加えて生肉を載せ、容器の余熱によって肉を焼く料理に使用される電磁誘導加熱用容器を、断面図および斜視図とともに開示している。そのような電磁誘導加熱用容器を溶湯鍛造によって製造する手順の一例をも開示している。
【0007】
特許文献3(特開2002-177144)には、紙鍋を用いて蒸し料理を調理する蒸し調理具及び蒸し調理方法が開示されている。なお、この紙鍋は熱源として裸火が想定されている。
【0008】
特許文献4(特開2004-344290)は、それ以前の紙鍋を概括している。それによると、従来技術の使い捨て鍋としては、例えば、厚めの和紙にポリプロピレンなどの合成樹脂をコーティングまたは含浸した正方形シート片に折り目を入れて形成された使い捨て鍋、厚めの和紙の表面に耐水耐油性のバリヤ層を設け、更にその上にシリコーン樹脂塗工層を設けたシートから形成された紙鍋、ポリアミド樹脂からなる短繊維と微小繊維状結合分子を抄造した薄葉紙状物を高温、高圧下でカレンダー加工した難燃性合成紙から形成された紙容器などがある。
【0009】
特許文献5(特開平10-284235)には、電磁誘導調理器で渦電流によって紙鍋自体に熱を発生させる紙鍋とその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003-249336号公報
【特許文献2】特開2007-054417号公報
【特許文献3】特開2002-177144号公報
【特許文献4】特開2004-344290号公報
【特許文献5】特開平10-284235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
旅館などで鍋もの料理を提供する際、具材を容れた小さな土鍋等を、固形燃料、卓上コンロ、卓上電磁調理器等とともにお客様のもとに運び、旅館の従業員が固形燃料等を着火したり、火力調整したり、時にはお客様自身がそれらを行う方式の欠点は、多数のお客様に対処する場合には多数の接客人員を必要とすること、燃料切れなどの際に従業員を呼ばせるなどでお客様を煩わせること、さらに火災防止管理の観点からも裸火を使うことには不安があることなどが挙げられる。
【0012】
本発明の課題は、厨房において加熱料理の具材を容れた鍋を加熱装置で加熱した後、上記鍋に容れられた加熱料理をお客様のもとに運び、お客様に加熱料理を加熱しながら食して頂く加熱料理の提供方法を実施するための加熱料理提供システムであって、旅館、レストランなどの従業員あるいはお客様自身が固形燃料等を着火したり、火力調整したりすることなく、料理の温度を温かい状態に長時間保つことができる、加熱料理提供システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題は、請求項1に記載の加熱料理提供システムによって解決された。
具体的には、厨房において加熱料理の具材を容れた鍋を加熱装置で加熱した後、上記鍋に容れられた加熱料理をお客様のもとに運び、お客様に加熱料理を加熱しながら食していただく加熱料理の提供方法を実施するための加熱料理提供システムであって、
上記鍋が耐水加工を施した紙からなる紙鍋であることと、
上記紙鍋を載置できる蓄熱器を備えることと、
上記蓄熱器を加熱するため厨房に配置された加熱装置を備えることと、
加熱料理が容れられた上記紙鍋と、該紙鍋を載置した上記蓄熱器と、該蓄熱器を厨房から客席に運ぶために上記蓄熱器を載置する盆とを備えることを特徴とする、
加熱料理提供システムによって解決された。
そして、種々の実施形態が、請求項2から5に記載されている。
【発明の効果】
【0014】
旅館やレストランなどですき焼き鍋等の鍋料理を提供する際、従来技術では、上記したように具材を容れた小さな土鍋等を、固形燃料、卓上コンロ、卓上電磁調理器等の加熱装置とともにお客様のもとに運び、料理を加熱装置で加熱しながら食して頂くことが普通である。加熱装置が固形燃料や卓上コンロの場合は、燃料切れあるいは火力低下の際に接客係をお客様が呼ぶなどお客様にとっても旅館等側にとっても煩しいことがあった。また加熱装置が卓上電磁調理器の場合は電気配線を客席に予め設置しなければならず、また多数のお客様が同時に使うことが多いので瞬間的に必要な電力が大きく、大電力に対応する十分な給電装置が必要である。本発明はこれらの問題点を解消する。
【0015】
すなわち、請求項1に記載の発明は次の効果を奏する。
1)固形燃料、卓上コンロ、卓上電磁調理器等の加熱装置をお客様のもとに置かずに、加熱料理を加熱したり、それの温度の低下速度を遅くしたりすることができるので、お客様は暖かい状態で長時間にわたって加熱料理を食することができる。
2)接客係の従業員の手間を少なくでき、またお客様に火が消えたときに接客係を呼ばせる煩わしさを無くすことができる。
3)裸火をお客様のテーブルに置かないので、レストランや旅館の防火管理の観点から安全となる。
4)さらに、紙鍋は使い捨てとすることができるので、厨房における皿洗い作業等の負担が軽減される。
【0016】
請求項2の発明では、上記効果に加え、厨房においても裸火を使わないので、レストランや旅館の防火管理の観点から安全となる。また、調理の際の温度管理をマニュアル化することが容易となる。
請求項3の発明では、紙鍋の側面が崩れた場合にも蓄熱器の側面により料理具材が支えられ、それ以上広がらなくすることができる。また、紙鍋の外側面を蓄熱器の内側面で支える構造とすることにより、水分の多い鍋料理においても紙鍋が崩れることがない。
請求項4の発明では、蓄熱器から盆への熱の流れを抑制し、蓄熱器の温度低下速度を遅らせ、それに応じて料理の温度低下速度も遅くなる。
請求項5の発明では、蓄熱器から大気への熱の流れを抑制し、蓄熱器の温度低下速度を遅らせ、それに応じて料理の温度低下速度も遅くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る加熱料理提供システムを用いた厨房での加熱料理の準備段階を示す側面図である。
【
図3】加熱調理された加熱料理と紙鍋と蓄熱器を電磁誘導加熱器から盆の上に移した状態の側面図である。
【
図4】本発明に係る加熱料理提供システムを用いて調理され客席に運ばれた状態の加熱料理の一例の斜視図である。
【
図5】紙鍋の周縁部を外側に延在させてその外延部と蓄熱器の間に閉空間を形成した実施形態を示す側面図である。
【
図6】蓄熱器を取り囲むように二重の円筒体を配置して空気層を形成した実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る加熱料理提供システムの実施形態を、詳細に説明する。
図1と
図2は、それぞれ本発明に係る加熱料理提供システムを用いた厨房での加熱料理の提供方法の第1~第3のステップの状態を示す側面図と上面図である。この例では、加熱料理としてハンバーグにソースをかけたものを例として示している。
【0019】
加熱料理の提供方法の第1のステップでは、蓄熱器1の上に紙製の紙鍋2を載置する。蓄熱器1は、提供する加熱料理の特性に合わせて平面状あるいは側面に立ち上がり部1aを有する皿状とすることができる。加熱料理が水分量の少ない例えばトンカツ等の場合は平面状の形状が好ましく、加熱料理が水分量の多い例えばすき焼き等の場合は側面を有する皿状の形状が好ましい。例えば、特許文献2に開示されているような、厚さ5~10mm程度、直径200mm程度の截頭円錐形の鍋状形状の鉄製皿を蓄熱器1として使用できる。
【0020】
紙鍋2は、加熱料理の具材を容れるための紙製の容器である。紙鍋として種々の公知の紙鍋が使用できる。例えば、特許文献4に開示されている、1)厚めの和紙にポリプロピレンなどの合成樹脂をコーティングまたは含浸した正方形シート片に折り目を入れて形成された紙鍋、2)厚めの和紙の表面に耐水耐油性のバリヤ層を設け、更にその上にシリコーン樹脂塗工層を設けたシートから形成された紙鍋、3)ポリアミド樹脂からなる短繊維と微小繊維状結合分子を抄造した薄葉紙状物を高温、高圧下でカレンダー加工した難燃性合成紙から形成された紙鍋等を、加熱料理の特性に合わせて使うことができる。例えば、トンカツなどの水分の比較的少ない加熱料理の場合は上記1)の紙鍋を使うことができる。他方、すき焼きのように水分が多い加熱料理の場合は上記2)の紙鍋を使うことが好ましい。
【0021】
加熱料理の提供方法の第2のステップでは、加熱料理の具材3を紙鍋2の中に容れる。
図2はハンバーグの場合を示し、成形したハンバーグ3aを置き、その上にソース3bをかけ、茹でブロッコリ3c、茹でニンジン3d、茹でトウモロコシ3e、茹でシメジ3fを添えている。勿論、他のものを付け合わせとすることも可能である。加熱料理がすき焼きの場合は、ネギ、焼き豆腐、肉等を具材3として紙鍋2の中に容れる。
【0022】
加熱料理の提供方法の第3のステップでは、具材3を容れた紙鍋2を載置した蓄熱器1を厨房の加熱装置4、例えば電磁誘導加熱器で加熱する。電磁誘導加熱器とは、内蔵するコイル4aに交流電流を流し、電磁誘導で磁場を発生させ、その磁場で磁性体の内部に渦電流を発生させ、その渦電流の電気抵抗によりその磁性体の温度を上昇させ、その熱により調理する装置である。料理の種類にも依存するが、賞味の観点および火傷等に対する安全性の観点から、蓄熱器1は例えば300℃程度に加熱装置4により加熱する。なお、加熱装置4として電磁誘導加熱器を使用する場合は、蓄熱器4は磁性体である必要があり、鉄製が好ましいが、鉄でなくても強磁性を有する素材であれば使用可能である。さらに、本発明のシステムを使用する際、加熱装置4は電磁誘導加熱器でなくてもよく、例えば、炭火、ガスレンジ、ニクロム線ヒータ等を加熱装置4として使用しても本発明を実施することができる。但し、電磁誘導加熱器で加熱することが火災等の安全性の観点からは好ましい。
【0023】
図3は、加熱調理された具材(加熱料理)3と紙鍋2と蓄熱器1とを、加熱装置4である電磁誘導加熱器から盆5の上に移した状態の側面図である。
加熱料理の提供方法の第4のステップでは、
図3に示すように、加熱装置4で加熱された蓄熱器1、紙鍋2およびその中の具材(加熱料理)3を盆5の上に移し、厨房から客席に運ぶ。即ち、盆5は、本発明のシステムにおいては加熱料理が容れられた上記紙鍋2と、該紙鍋を載置した上記蓄熱器1と、該蓄熱器を厨房から客席に運ぶために上記蓄熱器を載置するものであり、盆5を経て熱が散逸することを防止するために、盆5は木製などの熱伝導率が小さい材料で形成することが好ましい。さらに蓄熱器1と盆5の接触面を通って熱伝導により熱が盆5に散逸するのを防止するため、蓄熱器1と盆5の間に空間を形成されるように、
図3に示すように盆5に窪み5aを設け、盆5と蓄熱器1の間に非接触部6を形成することは好ましい。
【0024】
加熱料理の提供方法の第5のステップでは、盆5に載せたまま加熱調理された具材(加熱料理)3と紙鍋2と蓄熱器1を客席のテーブルに置き、お客様に加熱料理を提供する。
図4は、本発明に係る加熱料理提供システムを用いて調理され客席に運ばれた状態の加熱料理の一例の斜視図である。
【0025】
本発明に係る加熱料理提供システムで提供された加熱料理、例えばソース3bが十分に掛けられたハンバーグ3aの料理は、ハンバーグとソースは蓄熱器1の上の紙鍋2に容れられているので、従来技術で行われているようにハンバーグを陶器製の皿に載せ、ソースを掛けてお客様に提供する場合に比して、高温状態が長く持続される。例えば、厚さ5~10mm程度、直径200mm程度の皿状の蓄熱器1を厨房で300℃程度に加熱しておいた場合、料理の温度を温かいと感じさせる程度の温度をお客様が通常店内で食する時間程度は十分に維持することができる。すき焼きのように多くの熱量を要する場合においても、例えば蓄熱器1の熱容量を大きくしたり、厨房での加熱温度を高くするとともに、後述するように蓄熱器1からの無駄な熱散逸を防止すること等で容易に対処することができる。
【0026】
本発明の加熱料理提供システムで高い温度を長時間にわたって維持できるという効果は、蓄熱器1と紙鍋2を使っていることによって得られる効果である。紙鍋を使わずに蓄熱器の上に直接に加熱料理(例えばソースを掛けたハンバーグ等)を容れたものを電磁誘導加熱器で加熱してお客様に提供するシステムである場合には、蓄熱器と加熱料理が直接接触するので蓄熱器から熱伝導により熱が加熱料理に急速に伝わる。そして、加熱料理の水分(例えばソース等)が高温の蓄熱器により蒸発することにより気化熱を奪い蓄熱器の温度が急速に低下する。また、その水分の高温の下部と低温の上部の間で熱対流が起こることにより熱移動が激しく起こり、これによっても蓄熱器の熱を急速に外部に放出してしまう。このように、従来技術によるときは気化熱および熱対流により急速に蓄熱器の温度が低下する。本発明に係る加熱料理提供システムでは紙鍋を介して間接的に緩慢に熱が蓄熱器から加熱料理に移動するので、急速な温度低下は起こらない。従って、気化も対流も穏やかに起こり、長時間にわたって高温状態が維持され、料理はグツグツと長い時間にわたって沸騰している状態となり、食するお客様を楽しませることができるものとなる。
なお、蓄熱器を使わず紙鍋で料理を提供する場合は、当然に料理の温度が急速に低下することは避けられず、紙鍋を使用した従来技術のように、何らかの加熱装置を客席におかねばならない。
【0027】
加熱装置を客席に置かずに料理の温度を高温で更に長時間にわたって維持しながら加熱料理を提供するためには、上記したように蓄熱器から過度に急速に熱が逃げて蓄熱器の温度が下がることを避ける必要がある。そして、蓄熱器から熱が逃げる経路には次の経路がある。1)蓄熱器から紙鍋を経て加熱料理への経路。2)蓄熱器から盆への熱散逸経路。3)蓄熱器から大気への熱散逸経路。さらに、それぞれの経路に、熱伝導経路、対流経路、熱放射経路がある。
【0028】
熱伝導は二つの物体が接触しているときに起こり、温度差に比例して熱伝導が起こる。対流は物体の表面に空気や水等の流体が存在するとき、その流体が加熱されその流体分子の移動とともに熱が持ち去られる現象であるので、その流体の流量と流速が大きければ大きいほど急速に熱が持ち去られて物体の温度が急速に低下する。熱放射は物体の表面から電磁波エネルギとして絶対温度の4乗に比例して熱が逃げだす現象である。
【0029】
熱伝導は物体の接触によりおこるので、接触面積を少なくすることが熱伝導による物体の温度低下防止に効果的である。他方、対流を少なくするためには、物体表面近傍の空気層の空気の流れを小さくすることが好ましい。物体表面近傍の空気は粘性の効果で流速が遠くよりは遅いことを利用して、物体表面近傍の空気層を小さな区画に分割して対流による分子の移動距離を小さくすることも、対流による物体の温度低下防止に効果的である。また、熱放射は温度の4乗に比例するので、物体を多層に被覆することが、熱放射による物体の温度低下防止に効果的である。
【0030】
上記した物理法則により、「蓄熱器から盆への経路」での接触による熱散逸を防止するために、先に指摘した
図3に示すように、盆5に窪み5aを設けて盆5と蓄熱器1の間に非接触部6を形成することは好ましく、更に熱散逸を防止する観点から、上記非接触部6は閉空間を形成するものとする。
【0031】
また、「蓄熱器から大気への経路」での熱散逸は、空気の熱対流と熱放射に起因する。対流による熱散逸を防止するために、
図5に示すように、紙鍋2の周縁部を蓄熱器1の外側に延在させその紙鍋2の外延部2aと蓄熱器1の間に空気層7を形成することが好ましくい。これにより空気の熱対流と熱放射が小さくなるからである。更に熱散逸を防止する観点から、上記空気層7は閉空間を形成するものとする。
【0032】
さらに、[蓄熱器から大気への経路」での熱放射による熱散逸を防止するためには、
図6に示すように、蓄熱器1を取り囲む円筒体8を配置することが好ましい。この場合二重の円筒体8a,8bを配置することはさらに好ましい。熱放射を効果的に防止できるからである。
図6の場合、熱放射はa,b,cと三段で起こり、外側の円筒体8bの温度はかなり低いので、全体としての熱放射はかなり低減される。
図5の構成にして対流による散逸を少なくすることと、
図6の構成にして熱放射による熱散逸を少なくすることを組み合わせた構成とすることも当然あり得る。
【0033】
以上、本発明に係る加熱料理提供システムを加熱料理の提供方法とともに説明したが、本発明は、既述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の技術的思想の範囲内において、種々の変更が可能であることは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る加熱料理提供システムは、ホテル・旅館での食事の提供の際、および外食産業、特にフランチャイズチェーン店において温かい料理である加熱料理を提供する際に、好適に利用することができるシステムである。
【符号の説明】
【0035】
1 蓄熱器
1a 立ち上がり部
2 紙鍋
2a 外延部
3,3a,3b,3c,3e,3f 具材(加熱料理)
4 加熱装置(電磁誘導加熱器)
4a コイル
5 盆
5a 窪み
6 非接触部(閉空間)
7 空気層(閉空間)
8,8a,8b 円筒体