(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022104347
(43)【公開日】2022-07-08
(54)【発明の名称】炭酸カルシウムを含有する乳白延伸ポリプロピレンフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220701BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20220701BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20220701BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220701BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
C08K3/26
C08L23/10
B32B27/32 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020219508
(22)【出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】三井化学東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】若木 裕之
(72)【発明者】
【氏名】田村 拓也
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA20
4F071AA84
4F071AA88
4F071AB18
4F071AB21
4F071AD01
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4F100AA08B
4F100AA20A
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4J002DE236
4J002FD016
4J002GB00
4J002GG02
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】炭酸カルシウム粉末を配合した延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、炭酸カルシウムの使用量を低減しながら、効果的に空孔を形成可能な技術を提供する。
【解決手段】プロピレン重合体組成物(A)を少なくとも一方向に延伸してなる延伸フィルムであって、該プロピレン重合体組成物が、プロピレン重合体(a1)並びに炭酸カルシウム粉末(a2)を含有し、炭酸カルシウム粉末(a2)が、1~5μmの範囲内の平均粒子径を有し、かつ、P(リン)を200から1000(ppm)、及びS(イオウ)を500から2000(ppm)含有する、延伸フィルム。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン重合体組成物(A)を少なくとも一方向に延伸してなる延伸フィルムであって、該プロピレン重合体組成物が、プロピレン重合体(a1)並びに炭酸カルシウム粉末(a2)を含有し、
炭酸カルシウム粉末(a2)が、1~5μmの範囲内の平均粒子径を有し、かつ、P(リン)を200から1000(ppm)、及びS(イオウ)を500から2000(ppm)含有する、延伸フィルム。
【請求項2】
炭酸カルシウム粉末(a2)の含有量が1~15質量%である、請求項1に記載の延伸フィルム。
【請求項3】
プロピレン重合体組成物(A)が、更に平均粒子径が0.1~0.5μmの酸化チタン粉末(a3)を3%質量未満含有する、請求項1又は2に記載の延伸フィルム。
【請求項4】
炭酸カルシウム粉末(a2)が、0.3から0.8μm×0.3から0.8μm×5から20μmの棒状構造を20質量%以上含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の延伸フィルム。
【請求項5】
二軸方向に延伸してなる請求項1から4のいずれか一項に記載の延伸フィルム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の延伸フィルムの両面上に、それぞれ厚み0.5から1.5μmの表面層及び裏面層が形成されている、多層ポリプロピレンフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウムを含有する延伸ポリプロピレンフィルムに関し、より具体的には、少ない炭酸カルシウムの使用量で低密度化を実現可能であり、柔軟性も優れた延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンフィルムは、機械特性に優れ、軽量であり、また耐水性・耐湿性、電気特性に優れることから、食品包装用、粘着テープ、紙器類とのラミネート用途、電気絶縁材料用等に広く用いられている。また、ポリプロピレン樹脂に空孔を形成することで、隠蔽性、断熱性、クッション性、透水性・透気性を付与する試みも多数なされており、幅広い用途に用いられている。
【0003】
ポリプロピレンに空孔を設ける技術は、従来から多くの提案がなされているが、その一つとして、炭酸カルシウム粉末を配合し、延伸時にボイドを形成し、密度を下げることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかし密度を下げるためには大量の炭酸カルシウムを添加する必要があった。炭酸カルシウムは比較的高価であり、フィルムの物理的、化学的性質に影響を与える可能性があり、または燃焼しても灰として残るため、炭酸カルシウムの使用量を低減するため、より少ない使用量で効果的に空孔を形成できる技術が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記技術背景に鑑み、本発明は、炭酸カルシウム粉末を配合した延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、炭酸カルシウムの使用量を低減しながら、効果的に空孔を形成可能な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の粒径及び化学組成を有する炭酸カルシウム粉末を使用すること、より具体的には特定の平均粒子径及び特定のリン及びイオウ含有量の炭酸カルシウム粉末を使用することで、延伸による空孔形成の効率が大幅に向上擦ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
[1]
プロピレン重合体組成物(A)を少なくとも一方向にしてなる延伸フィルムであって、該プロピレン重合体組成物が、プロピレン重合体(a1)並びに炭酸カルシウム粉末(a2)を含有し、
炭酸カルシウム粉末(a2)が、1~5μmの範囲内の平均粒子径を有し、かつ、P(リン)を200から1000(ppm)、及びS(イオウ)を500から2000(ppm)含有する、延伸フィルム、
に関する。
【0007】
下記、[2]から[5]は、いずれも本発明の好ましい態様又は実施形態である。
[2]
炭酸カルシウム粉末(a2)の含有量が1~15質量%である、[1]に記載の延伸フィルム。
[3]
プロピレン重合体組成物(A)が、更に平均粒子径が0.1~0.5μmの酸化チタン粉末(a3)を3%質量未満含有する、[1]又は[2]に記載の延伸フィルム。
[4]
炭酸カルシウム粉末(a2)が、0.3から0.8μm×0.3から0.8μm×5から20μmの棒状構造を20質量%以上含有することを特徴とする、[1]から[3]のいずれか一項に記載の延伸フィルム。
[5]
[1]から[4]のいずれか一項に記載の延伸フィルムの両面上に、それぞれ厚み0.5から1.5μmの表面層及び裏面層が形成されている、多層ポリプロピレンフィルム。
。
【発明の効果】
【0008】
本発明の延伸フィルムは、従来技術と比較してより少量の炭酸カルシウム粉末で同等の空孔形成による軽量化が可能であり、あるいは同等の炭酸カルシウム粉末添加量でより軽量化が可能である、という実用上高い価値を有する技術的効果を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は粉砕石灰石の走査型電子顕微鏡写真(20000倍)であり、(b)は調製炭酸カルシウムの走査型電子顕微鏡写真(20000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、プロピレン重合体組成物(A)を少なくとも一方向に延伸してなる延伸フィルムであって、該プロピレン重合体組成物が、プロピレン重合体(a1)並びに炭酸カルシウム粉末(a2)を含有し、炭酸カルシウム粉末(a2)が、1~5μmの範囲内の平均粒子径を有し、かつ、P(リン)を200から1000(ppm)、及びS(イオウ)を500から2000(ppm)含有する、延伸フィルム、である。
すなわち、本発明の延伸フィルムは、プロピレン重合体組成物(A)で構成され、プロピレン重合体組成物(A)はその構成成分として、プロピレン重合体(a1)、及びに炭酸カルシウム粉末(a2)を含有する。
【0011】
プロピレン重合体(a1)
プロピレン系重合体(a1)としては、プロピレンから導かれる構成単位を有する重合体であればよく、それ以外の限定は特に存在しない。したがって、プロピレン系重合体(a1)はプロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンとそれ以外の単量体との共重合体であってもよい。中でも、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されている樹脂を好ましく使用することができる。例えば、密度が890~930kg/m3程度の、プロピレンの単独重合体若しくは、プロピレン共重合体、すなわち、プロピレンと共に、他の少量のα-オレフィン等から選ばれる少なくとも1種以上のコモノマーからなる共重合体を使用することができる。
【0012】
共重合体である場合においては、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。このプロピレンの共重合体における他のα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテンなどの、エチレンと炭素原子数が4~20程度のα-オレフィンを例示することができる。この様な他のα-オレフィンは、1種単独で又は2種以上のα-オレフィンを組み合わせて共重合させてもよい。また、α-オレフィン以外のコモノマーの存在を排除するものではない。
【0013】
プロピレン系重合体(a1)は、プロピレン由来の構成単位の割合が通常50モル%以上である。プロピレン由来の構成単位の割合は、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。
プロピレン由来の構成単位の割合が50モル%以上である場合、コモノマー由来の構成単位の割合は50モル%以下となる。通常のポリプロピレンにおいては、コモノマー由来の構成単位の割合は25モル%以下となる場合が多い。ランダム共重合体の場合には、10モル%以下であることが好ましく、7モル%以下であることが特に好ましい。ブロック共重合体の場合には、20モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることが特に好ましい。
【0014】
これらプロピレン系重合体(a1)の中でも、得られるフィルムの延伸性と耐熱性のバランス等の観点から、示差走査熱量計(DSC)に基づく融点が135~165℃、特に137~163℃の範囲にあるプロピレン系重合体が好ましく、ホモポリプロピレン、又はプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体が特に好ましい。
【0015】
プロピレン系重合体(a1)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2160g荷重)は特に限定はされないが、延伸加工性などの点から、通常、0.01~100g/10分、好ましくは0.1~70g/10分の範囲にある。
【0016】
プロピレン系重合体(a1)は、種々公知の製造方法、具体的には、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒やシングルサイト触媒のようなオレフィン重合用触媒を用いて製造することができる。特にはシングルサイト触媒を用いて製造することができる。シングルサイト触媒は、活性点が均一(シングルサイト)である触媒であり、例えばメタロセン触媒(いわゆるカミンスキー触媒)やブルックハート触媒などがあげられる。メタロセン触媒は、メタロセン系遷移金属化合物と、有機アルミニウム化合物及び上記メタロセン系遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物とからなる触媒であり、無機物に担持されていてもよい。
【0017】
炭酸カルシウム粉末(a2)
延伸フィルムを構成するプロピレン重合体組成物(A)に含有される炭酸カルシウム粉末(a2)は、1~5μmの範囲内の平均粒子径を有し、かつ、P(リン)を200から1000(ppm)、及びS(イオウ)を500から2000(ppm)含有する、炭酸カルシウム粉末である。
炭酸カルシウム粉末(a2)には、上記の平均粒子径及び組成以外に特に制限はなく、これら平均粒子径及び組成の条件を満たす限りにおいて、石灰石等を粉砕した天然鉱物由来のものであってもよく、生物由来のものであってもよく、化学的に合成されたものであってもよい。尤も、天然に得られる石灰石の多くは、P(リン)及びS(イオウ)をほとんど含んでいない(例えば、P:10-100(ppm)、S:<10(ppm))ため、上記の組成条件を満たさない場合が多く、その様な場合、別途P(リン)、及びS(イオウ)を添加して使用する。
【0018】
化学的に合成された炭酸カルシム(いわゆる「調製炭酸カルシウム」)は、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムに硫酸、硫化水素、リン酸、酸化リンを化学的に反応させることによって製造することができる。また炭酸カルシウム粉末に硫酸カルシウム粉末、リン酸カルシウム粉末を混ぜることにより、イオウ成分、リン成分を物理的に分散させることができる。この様に、製造工程においてリン及びイオウを有する原料を添加することで、P(リン)及びS(イオウ)の含有量を、本発明において必要とされる範囲内に調整することができる。
【0019】
炭酸カルシウム粉末(a2)のP(リン)の含有量は、300から800ppmであることが好ましく、400から700ppmであることがより好ましい。
炭酸カルシウム粉末(a2)のP(リン)の含有量は、当業界において公知の方法で測定することが可能であり、例えばICP質量分析法により測定することができ、より具体的には本願実施例に記載の方法により測定することができる。
【0020】
P(リン)の含有量は、炭酸カルシウムの原料、例えば石灰石等の天然原料、調製炭酸カルシウムの原料である炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等、を適宜選択することでも適宜調整することが可能であり、また、調製炭酸カルシウムの場合には、リン酸、酸化リン等の使用量を調整することや、それ以外の製造条件を変更することによっても、適宜調整することが可能である。
【0021】
炭酸カルシウム粉末(a2)のS(イオウ)の含有量は、800から1500ppmであることが好ましく、600から1200ppmであることがより好ましい。
炭酸カルシウム粉末(a2)のS(イオウ)の含有量は、当業界において公知の方法で測定することが可能であり、例えばICP発光分光分析法により測定することができ、より具体的には本願実施例に記載の方法により測定することができる。
【0022】
S(イオウ)の含有量は、炭酸カルシウムの原料、例えば石灰石等の天然原料、調製炭酸カルシウムの原料である炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム等、を適宜選択することでも適宜調整することが可能であり、また、調製炭酸カルシウムの場合には、硫酸、硫化水素等の使用量を調整することや、それ以外の製造条件を変更することによっても、適宜調整することが可能である。
【0023】
炭酸カルシウム粉末(a2)の平均粒子径は、1~5μmの範囲内である。ここで、炭酸カルシウム粉末(a2)の平均粒子径は、累積体積50%通過径(D50)であり、当業界において従来から慣用されている方法により測定することができる。例えば、マイクロトラックにより体積粒度分布を測定することにより測定することができ、より具体的には本願実施例に記載の方法により測定することができる。
【0024】
炭酸カルシウム粉末(a2)の平均粒子径は、1.0~4μmの範囲にあることが好ましく、1.5~3.0の範囲内にあることがより好ましい。
炭酸カルシウム粉末(a2)の平均粒子径は、当業界において公知の方法で調整することができ、例えば石灰石等の原料を粉砕する際の装置やその運転条件を好適なものに設定することで、適宜調整することがきる。
例えば、石灰石を粉砕するにあたっては、高圧ジェット気流旋回渦方式のジェットミルを使用して粉砕することが好ましい。高圧ジェット気流旋回渦方式のジェットミルとは、ミル内部に、大気あるいは不活性ガスを用いて、高圧ジェット気流による同心円の旋回渦を形成し、その高圧ジェット気流旋回渦中で、石灰石微粉末の粒子どうしを相互に衝突させることで、粉砕する装置を指す。
【0025】
また、炭酸カルシウム水溶液等の溶液から炭酸カルシウム粉末を析出させる場合には、溶液の濃度やpH、析出の際に添加する薬品の種類や濃度、添加速度、攪拌速度等を適宜設定することで、炭酸カルシウム粉末(a2)の平均粒子径を適宜調整することができる。また、析出した沈殿を乾燥する際の条件や、乾燥後の粉砕条件等を適宜設定することによっても、適宜調整することができる。
【0026】
本発明の延伸フィルムにおいては、炭酸カルシウム粉末(a2)の平均粒子径、P(リン)含有量、及びS(イオウ)含有量が上記条件を満たすことで、効率的に空孔(ボイド)が形成され、より少ない充填量でフィルムの密度を下げることができる。また、フィルムの密度を下げることで弾性率も低下し、多くの用途で求められる適切な柔軟性を実現することができる。
【0027】
本発明の延伸フィルムにおいて、炭酸カルシウム粉末(a2)の平均粒子径、P(リン)含有量、及びS(イオウ)含有量が上記条件を満たすことで、効率的に空孔が形成されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、所定量以上のP(リン)及びS(イオウ)は表面上で極性の酸化物の形態となり易く、これが非極性の樹脂と剥離し易いことから、延伸の際にプロピレン重合体(a1)と乖離しやすく、プロピレン重合体(a1)/炭酸カルシウム粉末(a2)間の乖離面積を増加させることで、効率的な空孔形成に寄与していることが推定される。また、この様な条件を満たす炭酸カルシウム粉末(a2)は、棒状の粒子形状を取り易い傾向があり、及び/又は比表面積が増大する傾向があり、この点からも、プロピレン重合体(a1)/炭酸カルシウム粉末(a2)間の乖離面積を増加させることで、効率的な空孔形成に寄与していることが推定される。
【0028】
炭酸カルシウム粉末(a2)の粒子形状には特に限定はないが、一層効率的に空孔を形成する観点から、棒状であることが好ましい。例えば、0.3~0.8μm×0.3~0.8μm×5~20μmの棒状の形状であることが好ましく、0.4~0.7μm×0.4~0.7μm×8~15μmの棒状の形状であることが特に好ましい。
上記実施形態において、炭酸カルシウム粉末(a2)の全てが0.3~0.8μm×0.3~0.8μm×5~20μmの棒状の形状を有していてもよく、その一部のみが0.3~0.8μm×0.3~0.8μm×5~20μmの棒状の形状を有していてもよい。
効率的に空孔を形成する観点からは、0.3~0.8μm×0.3~0.8μm×5~20μmの棒状の形状を有する粒子の割合は高いほど好ましく、例えば20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
粒子形状は、走査型電子顕微鏡で、20000倍程度の倍率で観察することで評価することができる。また、棒状の形状を有する粒子の割合は、走査型電子顕微鏡像を画像解析することで特定することができる。
【0029】
プロピレン重合体組成物(A)
本発明の延伸フィルムを構成するプロピレン重合体組成物(A)は、前記プロピレン重合体(a1)に前記炭酸カルシウム粉末(a2)を添加してなる組成物である。
本発明におけるプロピレン重合体組成物(A)は、プロピレン重合体(a1)を好ましくは70~95質量%、より好ましくは70~90質量%含有する。
本発明におけるプロピレン重合体組成物(A)は、炭酸カルシウムを好ましくは1~15質量%、より好ましくは5~15質量%含有する。
本発明におけるプロピレン重合体組成物(A)は、前記プロピレン重合体(a1)及び前記炭酸カルシウム粉末(a2)以外の成分を含有していても、していなくてもよい。
【0030】
炭酸カルシウム粉末(a2)の量が1質量%以上であると、得られる延伸フィルムの隠蔽性に一層優れるので好ましい。また、15質量%以下であると、得られる延伸フィルムの表面の不均一等が一層有効に抑制されるので好ましい。
【0031】
本発明におけるプロピレン重合体組成物(A)は、本発明の目的に反しない限りにおいて、前記プロピレン重合体(a1)及び前記炭酸カルシウム粉末(a2)以外の成分を含有していてもよい。例えば、プロピレン重合体(a1)以外の各種重合体、炭酸カルシウム粉末(a2)以外の無機化合物粉末、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料等の通常ポリオレフィンに用いる各種添加剤を本発明の目的に反しない範囲で添加してもよい。
【0032】
プロピレン重合体(a1)以外の各種重合体としては、ポリエチレン等の各種ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン等を挙げることができる。
炭酸カルシウム粉末(a2)以外の無機化合物粉末としては、酸化チタン、クレー(カオリン)、焼成クレー、タルク、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム等の粉末を挙げることができる。通常、平均粒径が5μm以下、好ましくは0.1ないし1.5μmの範囲のものが好適に用いられる。
これら無機化合物粉末の中でも、むらのない白色度に優れた延伸フィルムが得る等の観点から、酸化チタン粉末が好ましく用いられ、平均粒子径が0.1~0.5μm、より好ましくは0.2~0.3μmの酸化チタン粉末(a3)が、特に好ましく用いられる。
平均粒子径の定義、測定方法等は、炭酸カルシウム粉末(a2)に関連して上記で説明したものと同様である。
酸化チタンは、チタンホワイトとも呼ばれており、ルチル型とアナターゼ型があるが、上記酸化チタン粉末(a3)としては、ルチル型が隠蔽力が大きいので好ましい。
酸化チタン粉末(a3)は、アルミナ処理されていることが好ましい。さらには、白色度が95%以上のものが好ましい。酸化チタンの表面を処理したものを使用することにより、得られる延伸フィルムの外観が一層良好なものになる。
また、酸化チタン粉末(a3)、フィルムのピンホールや粗大突起を抑制する観点から各種表面処理を施してもよく、特に有機系アルコール処理、アルミナ処理等を施してもよい。
【0033】
酸化チタン粉末(a3)には疎水化処理してもよく、疎水化処理された粒子の乾燥減量としては、JIS-K5101の21(水分)に基づき試量2gで測定した際の乾燥減量が0.8%以下であることが好適である。
この乾燥減量を0.8%以下にするためには、二酸化チタン粒子に表面処理を施すこと
が有効である。たとえば、シランカップリング剤、イソプロピルチタネート等で処理する、あるいは、2種又はそれ以上の含水酸化物で処理しその後更に有機化合物で疎水化する、ことが有効である。
特に、シラン処理(シランカップリング剤処理)してなるルチル型二酸化チタン粒子が、上記範囲の乾燥減量を達成する上で有効である。
【0034】
酸化チタン(a3)の添加量は、プロピレン重合体組成物(A)の8質量%未満であることが好ましく、0.5質量%以上7質量%未満であることがより好ましく、0.8から6質量%であることが特に好ましい。
酸化チタン(a3)の添加量が0.5質量%以上であると、得られる延伸フィルムの隠蔽性が一層優れたものとなり、8.0質量%未満であると、得られる延伸フィルムの外観の劣化を一層効果的に防止することができる。
【0035】
耐熱安定剤(酸化防止剤)の好適な例としては、例えば、3,5-ジーt-ブチルー4-ヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジーt-ブチルー4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン、n-オクタデシルー3-(4'-ヒドロキシー3,5-ジーt-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系酸化防止剤、2(2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、置換ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系酸化防止剤、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、フェニルサルチレート、4-t-ブチルフェニルサリチレート等が挙げられる。
【0036】
帯電防止剤の好適な例としては、例えば、アルキルアミンおよびその誘導体、高級アルコール、高級脂肪酸のグリセリンエステル類、ピリジン誘導体、硫酸化油、石鹸類、オレフィンの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル類、脂肪酸エチルスルフォン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、琥珀酸エステルスルフォン酸塩、リン酸エステル塩、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0037】
滑剤の好適な例としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、高級アルコール、流動パラフィン等が挙げられる。
紫外線吸収剤の好適な例としては、例えば、エチレン-2-シアノ-3,3'-ジフェニルアクリレート、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2、2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4オクトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0038】
延伸フィルム
本発明の延伸フィルムは、プロピレン重合体組成物(A)を少なくとも一軸方向に延伸してなる延伸フィルムであって、二軸方向に延伸されていてもよい。プロピレン重合体組成物(A)は従来当業界において公知の方法で延伸して延伸フィルムを製造することが可能であり、その方法は特に限定されないが、例えば以下に記載の方法で一軸または二軸に延伸して延伸フィルムを製造することができる。
【0039】
未延伸フィルム製造工程
まず所定の割合で、プロピレン重合体(a1)及び炭酸カルシウム粉末(a2)、並びに所望によりそれ以外の成分、を混合し、プロピレン重合体組成物(A)を製造する。その際には、プロピレン重合体(a1)の一部と炭酸カルシウム粉末(a2)とからなるマスターバッチを使用してもよい。
次いで、プロピレン重合体組成物(A)押出機へ供給してTダイ法やインフレーション法などの方法よりフィルム状に溶融押出ししてから冷却固化して未延伸フィルムを得る。
この際に別の層を共押出しすることで多層にすることで、機能を付与することもできる。
【0040】
例えば、プロピレン重合体組成物(A)からなる層の両面上に、それぞれ延伸後厚み0.5から1.5μmの表面層及び裏面層を形成してもよい。これら表面層及び裏面層も、プロピレン重合体からなり、又はプロピレン重合体を含んでなることが好ましい。
また、プロピレン重合体組成物(A)より融点の低いポリオレフィン等の樹脂を共押出ししてヒートシール層を形成することもできる。
またヒートシール性以外の機能、例えば滑り性、易接着性、帯電防止性、自己粘着性、タック性、表面平滑性、光反射性等を有する層を形成することもできる。
【0041】
延伸工程
次に、上記方法で作製した未延伸フィルムをMD方向またはTD方向の少なくとも一方に延伸し、本発明の延伸フィルムを作製する。
二軸延伸することが好ましく、二軸延伸する場合には得られた未延伸フィルムはそのまま或は所定の幅にスリツトしたものを流れ方向又は幅方向に逐次二軸延伸、又は同時二軸延伸することにより、空孔を生成させるとともに機械的強度や耐熱性を向上することができる。
【0042】
逐次二軸延伸の場合は縦方向(フィルムの流れ方向)に延伸後に横方向(フィルムの幅方向)の延伸を行うか、又はその逆の順序で行なわれる。また同時二軸延伸は縦方向と横方向の延伸をほぼ同時進行で行う方法で、パンタグラフテンター法やリニアモーター駆動クリップを利用したテンター法やインフレーション法などが採用できる。
【0043】
特に縦方向にロール延伸した後テンターで横延伸する逐次二軸延伸法が効率よく空孔を生成させ、かつ機械的強度の高い延伸フィルムが得られる点で好ましい。
上記の逐次二軸延伸法で製造する場合の好ましい形態について、更に具体的に説明すると、未延伸フィルム製造工程で得られた未延伸フィルムを100~160℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用してタテ方向に2~8倍延伸し、次いでテンター延伸機に導入し、予熱した後140~170℃で横方向に5~12倍延伸を行った上で、フィルムワインダーにより巻き取ってフィルムを得る。この際、横延伸の後に幅を固定した状態、又は数%緩和させる条件で100~170℃で熱処理してもよい。
【0044】
本発明の延伸フィルムの厚みには特に制限はなく、用途及び要求される物性に応じて適切な厚みとすればよいが、例えば8~150μmであることが好ましく、10~100μmであることが特に好ましい。
また、プロピレン重合体組成物(A)からなる延伸フィルム(以下、「基材層」)ともいう。)の両面上に表面層及び裏面層が形成されている多層ポリプロピレンフィルムの場合には、基材層の厚みが10~100μmであり、表面層及び裏面層の厚みが0.5~1.5μmであることが好ましい。
【0045】
本発明の延伸フィルムは、通常、密度が0.5~0.9g/cm3、好ましくは0.52~0.79g/cm3、ヘイズ(曇価)が、通常、85%以上、好ましくは89%以上、全光線透過率が通常、30%以下、好ましくは25%以下、表面光沢度が通常、50%以上、好ましくは60%以上、表面粗度が通常、0.05~0.20μm、好ましくは0.07~0.19μm、白色度(L*値)が通常、85以上、好ましくは89以上の範囲にある。
【0046】
本発明の延伸フィルムは、空隙率が8%以上であることが好ましく、25%以上であることが特に好ましい。また、水蒸気透過度が3.0~15.0g/m2/dayであることが好ましく、4.0~13.0g/m2/dayであることが特に好ましく、酸素透過度が50~1000cc/m2/dayであることが好ましく、70~800cc/m2/dayの範囲にあることが特に好ましい。
【0047】
本発明の延伸フィルムは、必要に応じて片面あるいは両面をコロナ処理、火炎処理等の表面処理をしてもよい。また、用途により、ヒートシール性を付与するために高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、結晶性あるいは低結晶性のエチレンと炭素数3ないし10のα-オレフィンとのランダム共重合体あるいはプロピレンとエチレン若しくは炭素数4以上のα-オレフィンとのランダム共重合体、ポリブテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の低融点のポリマーを単独あるいはそれらの組成物からなるフィルムを積層してもよい。
【0048】
本発明の延伸フィルムは、乳白二軸延伸ポリプロピレンフィルム等として優れた性能を示すので、一般包装体、ラベル、ポスター、ステッカーなどの表示物、食品包装用、粘着テープ、紙器類とのラミネート用途、電気絶縁材料、光反射材料等および感熱転写記録体などの情報記録受容シートなどに特に好適に用いられる
【実施例0049】
以下、実施例/比較例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はいかなる意味においても、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0050】
実施例/比較例における物性、特性の評価は、以下の方法により行った。
。
【0051】
(1)密度(g/cm3)
二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの厚みおよび1m2あたりのフィルム重量を測定し、これらから算出した。
【0052】
(2)全光線透過率(%)
HazeMeter(日本電色工業社製、NDH-5000)を使用して、フィルム1枚の全光線透過率をJIS K 7136に準拠した試験を行うことにより測定した。
【0053】
(3)引張弾性率(MPa)
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、オリエンテック社製引張試験機を用いて、JIS K 7127(1999)に準拠し、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:5mm/分の条件で、引張弾性率(MPa)を求めた。測定値は5回の平均値である。
【0054】
(4)S(イオウ)含有量
試料を希酸で溶解し、純水で適宜希釈、ろ過したものを検液とし、ICP発光分光分析法にてイオウを定量した。
測定装置として、ICP・MS/MS Agilent8900 (アジレント・テクノロジー製)を使用し、JIS1317-4、1318-4に準じて測定した。
【0055】
(5)P(リン)含有量
試料を希酸にて溶解し、超純水で適宜希釈したものを検液とし、ICP質量分析法にてリンの定量分析を行った。
測定装置として、ICP発光分光分析装置:720-ES (アジレント・テクノロジー製)を使用し、し、JIS1317-4、1318-4に準じて測定した。
【0056】
(6)炭酸カルシウムの同定
以下の条件の広角X線回折により、炭酸カルシウムを同定した。
a.分析装置
X線回折装置 SmartLab(リガク)
b.分析条件
X線源:CuKα
出力:45kV、200mA
検出器:D/teX Ultra
【0057】
(7)平均粒子径
炭酸カルシウム粉末の粒子径は、超遠心式自動粒度分布測定装置(型式 CAPA-700、堀場製作所製)を用い遠心沈降による光透過測定方式にて測定した。
酸化チタン粉末の平均粒子径は散乱法により測定した。
【0058】
実施例/比較例で用いた材料/成分の詳細は、以下のとおりである。
プロピレン重合体
・PP-1
プロピレン単独重合体
融点:163℃
MFR:3.0g/10分
・PP-2(1-2)
プロピレン単独重合体
融点:159℃、
MFR:3.0g/10分
・PP-3
プロピレン・エチレンランダム共重合体
融点:131℃
MFR:7g/10分
・PP-4
プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体
融点:74℃、
MFR:7g/10分
【0059】
炭酸カルシウム
・石灰石由来(粉砕石灰石)
石灰石を高圧ジェット気流旋回渦方式のジェットミルを使用して粉砕・球形化した。
平均粒子径:2μm
形状:矩形(2μm×2μm×1~2μm、
図1(a))
無機分析
リン:16ppm
イオウ<10ppm
広角X線回折:炭酸カルシウムの結晶ピーク(カルサイト(三方晶系菱面体晶))が検出され、それ以外のピークは検出されず、実質的にすべてが炭酸カルシウムで構成されていることが確認できた。
【0060】
・調製炭酸カルシウム
炭酸カルシウムスラリーに微量の硫酸、リン酸を配合、分散し、乾燥後、ミルで粉砕したのちに600~1000℃で1時間の熱処理をし、酸化カルシウムとした。続いて焼成物に水を加えて水和させ、水酸化カルシウムを得た。
更に高圧ジェット気流旋回渦方式のジェットミルを使用して粉砕・微細化した。
ここで調整水酸化カルシウムパウダーは棒状及びその会合体の形状を示した(
図1(b))。
平均粒子径:2μm、
形状:棒状(0.5μm×0.5μm×10μm、及びその会合体、
図1(b))
無機分析
リン:500ppm
イオウ:1200ppm
広角X線回折:上記調製炭酸カルシウムをPP-1プロピレン単独重合体に160℃~220℃の条件のもと、二軸押出機(日本製鋼所製 TEX 44SS-38、58-3V 38mmφ)を用いて混錬し、40質量%のマスターバッチを得た。その後、本マスターバッチの広角X回折測定を行った。
炭酸カルシウムの結晶ピーク(カルサイト(三方晶系菱面体晶))が検出され、それ以外のピークは検出されず、実質的にすべてが炭酸カルシウムで構成されていることが確認できた。
【0061】
それ以外の成分
・酸化チタン
アルミナ処理されたルチル型酸化チタン粉末
平均粒子径:0.2μm
水分量:400ppm以下(カールフィッシャー法、200℃で測定)
・シリカ系アンチブロッキング剤
富士シリシア化学社製(平均粒径3μm)
【0062】
(実施例1)
<基材層用プロピレン系重合体組成物の調製>
PP-1、及びPP-1に予め調製炭酸カルシウムを40質量%混練した上記マスターバッチを用意し、表1記載の組成となる割合で、これらの組成物をドライブレンドして、基材層用プロピレン系重合体組成物を調製した。
【0063】
<表面層用プロピレン重合体組成物の調製>
PP-2にシリカ系アンチブロッキング剤を0.2質量%配合し、表面層用プロピレン重合体組成物を調製した。
【0064】
<裏面層用プロピレン系重合体組成物の調製>
PP-3およびPP-4をドライブレンドして、PP-3を70質量%、PP-4を30質量%含む組成物を用意し、さらにシリカ系アンチブロッキング剤を0.2質量%配合して、裏面層用プロピレン系重合体組成物を調製した。
【0065】
<二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムの製造>
前記表面層用プロピレン系重合体組成物、基材層用プロピレン重合体組成物及び裏面層用プロピレン系重合体組成物を押出量比(表面層/基材層/裏面層:7/85/8)になるよう各々スクリュー押出機を用いて溶融押出し、マルチマニホールドタイプT-ダイから押出後、冷却ロール上にて急冷し厚さ約1.1mmの多層シートを得た。このシートを110℃で加熱しフィルムの流れ方向(縦方向)に5倍延伸した。この5倍延伸したシートを160℃で加熱し流れ方向に対して直交する方向(横方向)に10倍延伸して、基材層の厚さ:25.5μm、表面層の厚さ:2.0μm、裏面層の厚さ:2.5μm(合計フィルム厚さ:30.0μm)の二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを製造し、上記の方法にしたがい評価した。
結果を表1に示す。
【0066】
(比較例1から4、及び実施例2から4)
基材層用プロピレン重合体組成物の配合をそれぞれ表1に示すものに変更したことを除くほか、実施例1と同様にして二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを製造し、上記の方法にしたがい評価した。
結果を表1に示す。
【表1】
本発明において特定される条件を満たす調製炭酸カルシウムを使用した各実施例は、同量の粉砕石灰石を使用した各比較例よりも低密度化が実現できた。また、ヤング率も低下し、各種用途に好適な柔軟性が実現できた。
これは、本発明により、同量の炭酸カルシウム粉末で効率的に空孔が形成されたことを示している。
【0067】
(実施例5及び6)
基材層用プロピレン重合体組成物の配合をそれぞれ表1に示すものに変更したことを除くほか、実施例1と同様にして二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを製造し、上記の方法にしたがい評価した。
結果を、比較例3及び実施例3についての結果と共に、表1に示す。
【表2】
炭酸カルシウムの合計量が5質量%で統一された比較例3、及び実施例5、6、及び3において、調製炭酸カルシウムの割合が増加するに従い、密度が単調減少し、引張弾性率も単調減少した。
これは、本発明において特定される条件を満たす調製炭酸カルシウムの割合が増えることで、一層効率的に空孔が形成されたことを示している
【0068】
(比較例5及び実施例7)
基材層用プロピレン重合体組成物の配合をそれぞれ表1に示すものに変更したこと、より具体的には酸化チタン5.5質量%を添加したこと、を除くほか、それぞれ比較例4及び実施例3と同様にして二軸延伸多層ポリプロピレンフィルムを製造し、上記の方法にしたがい評価した。
結果を、表3に示す。
【0069】
【表3】
実施例7においては、比較例5よりも格段に少ない炭酸カルシウムの添加量で、同程度の低密度及び柔軟性が実現できている。これは、酸化チタンを併用した材料系においても、本発明による効率的な空孔形成の効果が実現できることを示している。
本発明の延伸フィルムは、従来技術と比較してより少量の炭酸カルシウム粉末で同等の空孔形成による軽量化が可能であり、乳白二軸延伸ポリプロピレンフィルム等において炭酸カルシウムの使用量を大幅に低減するなど実用上高い価値を有する技術的効果を実現するので、食品包装用、粘着テープ、紙器類とのラミネート用途、電気絶縁材料、光反射材料等に好適に使用することが可能であり、食品産業、包装産業、電気電子産業等の産業の各分野において高い利用可能性を有する。